JP5978842B2 - ポリイミド被膜の製造方法 - Google Patents

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本発明は、環境負荷が小さく安定して製造することが可能であり、耐熱性や表面平滑性や耐薬品性等の優れた被膜を得ることができる、電着塗装法によるポリイミド被膜の製造方法に関するものである。
電着塗装とは、外部から印加される電圧により電荷をもった塗料樹脂が溶液中で電気泳動し、塗装面である電極での水の電気分解によるpH変化により、塗装面上に塗料樹脂を凝集させる方法で膜を形成する塗装システムである。この塗装方法は、複雑な形状をした被塗装物の均一塗装を可能にする、優れたつきまわり性をはじめ、高い塗着効率、防食性の向上、塗装の自動化・省力化が容易であるなどの諸特性を有する、生産性の高い塗装システムである。
近年、マイクロエレクトロニクスの急速な発展に伴う素子の高密度化、機器の高集積化により、高機能樹脂絶縁材料の開発が要求されている。スーパーエンジニアリングプラスチックであるポリイミド樹脂はその優れた電気絶縁性、耐熱性、機械特性や耐溶剤性(耐薬品性)のためエレクトロニクスや航空宇宙産業などの分野において不可欠な材料となっている。
ポリイミド樹脂の電着塗装法は、複雑な形状をした導電性被塗装物上への塗膜形成が可能であることから、機能性被膜形成の手段として注目されている。近年、塗料の安定性など使いやすさの観点から、有機溶剤に可溶なポリイミドを用いた電着塗装が検討されている(特許文献1)。しかしながら、このポリイミドは、アミド系溶剤など特定の溶剤にしか分散できず、また得られる被膜は、耐溶剤性に劣るという問題があった。このような問題を解決するため、電着塗料に、有機溶剤に可溶なポリイミド、熱架橋ポリイミド、親水性カチオンポリマーを用い、電着塗装後、焼き付け処理をおこなうことで、被膜の耐溶剤性を改善する方法が見出されている(特許文献2)。しかしながら、この方法でもポリイミドは、アミド系溶剤など特定の溶剤を用いる方法でしか分散できず、依然として、十分な有機溶剤の低減には至らなかった。また、親水性カチオンポリマーを含むため、耐熱性に劣るという問題があった。これら有機溶剤に可溶なポリイミドは水に不溶なため、電着塗料として用いる場合、水分散に分散したコロイド溶液となる。このため、被膜に欠陥部が生じやすく、被膜の均一性を保証できるものではなかった。(特許文献3)
一方、耐熱性、耐溶剤性に優れるポリイミド被膜は、溶剤に不要なため、その前駆体であるポリアミド酸の段階で電着塗装をおこない、その後、高温処理によるポリアミド酸の脱水環化により、ポリイミド被膜が得られる(特許文献4〜6)。しかしながら、これらのポリイミド前駆体のポリアミド酸は、加水分解反応が生じやすく、塗料の保存安定性が低く、また、アミド系溶剤など特定の溶剤にしか溶解できず、近年、アミド系溶剤の環境負荷へ懸念が問題視されていた。
上述のとおり、電着塗装法でのポリイミド被膜の製造方法において、耐熱性、耐薬品性(耐溶剤性)、表面平滑性等の優れた被膜特性が発現可能で且つ、安定した製造が可能であり、環境負荷も小さい製造方法は、見出せていない。
特開2003−327905号公報 特開2003−268235号公報 特開2005−187914号公報 特開昭63−111199号公報 特開平6−252003号公報 特開平9−124978号公報
本発明は、環境負荷が小さく安定して製造することが可能であり、耐熱性や表面平滑性や耐薬品性等の優れた被膜を得ることができる、電着塗装法によるポリイミド被膜の製造方法を提供することを目的とする。
1.ポリイミド前駆体溶液組成物を用い、電着塗装法によってポリイミド前駆体被膜を形成後、これをイミド化するポリイミド被膜の製造方法であって、
ポリイミド前駆体溶液組成物が、
a)下記一般式(1)で表されるポリアミド酸塩を含み、
(一般式(1)中、Aは4価の芳香族基もしくは脂肪族基であり、Bは2価の芳香族基もしくは脂肪族基であり、X、Xは、いずれか一方または両方が塩基性化合物である。)
b)溶媒中のアミド系溶剤の含有量が5質量%以下である、
ことを特徴とするポリイミド被膜の製造方法。
2.溶媒が、実質的に、アミド系溶剤を含有しないことを特徴とする項1記載のポリイミド被膜の製造方法。
3.溶媒が、水、アルコール系溶剤、多価アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、カーボネート系溶剤のいずれかもしくは、これらを2種以上の組み合わせて用いることを特徴とする項1〜2いずれかに記載のポリイミド被膜の製造方法。
4.溶媒の沸点が、200℃以下であることを特徴とする項1〜3いずれかに記載のポリイミド被膜の製造方法。
5.前記一般式(1)中のAが、一般式(2)中記載の4価の芳香族基であることを特徴とする項1〜4いずれかに記載のポリイミド被膜の製造方法。
6.前記一般式(1)中のBが、一般式(3)記載の2価の芳香族基であることを特徴とする項1〜5いずれかに記載のポリイミド被膜の製造方法。
(一般式(3)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン基、水酸基、カルボキシル基であり、Rは、直接結合、エーテル基、アルキレン基、スルフィド基、スルホニル基、ケトン基である。)
7.電着塗装法における印加電圧が、400V以下であることを特徴とする項1〜6いずれかに記載のポリイミド被膜の製造方法。
8.a)下記一般式(1)で表されるポリアミド酸塩を含み、
(一般式(1)中、Aの成分として、4価の芳香族基もしくは脂肪族基であり、Bの成分として、2価の芳香族基もしくは脂肪族基であり、X、Xは、いずれか一方または両方が塩基性化合物である。)
b)溶媒中のアミド系溶剤の含有量が5質量%以下である、
ことを特徴とする電着塗料。
本発明のポリイミド被膜の製造方法は、安定した製造が可能であり、環境負荷も小さい。さらに本発明により得られるポリイミド被膜は、耐熱性、耐薬品性、表面平滑性等に優れることから、電子回路基板の絶縁層、コンデンサ絶縁膜、MEMS用絶縁層、電線被覆材、燃料電池部材、金属の防錆膜、耐熱塗料、耐熱コーティング、金属/樹脂接合のプライマー、研磨パットのコーティング、摺動部品のコーティングなどとして好適に用いることができる。
ハロセル試験に用いた電着浴の例である。
本発明で用いるポリイミド前駆体は、特に限定されるわけではないが、ポリアミック酸やポリイソイミド及び、これらとポリイミドの組合せで得られる共重合体(ランダム、ブロック、グラフト共重合体)や混合物、複合物など、何らかの化学反応を伴い、ポリイミド被膜を生成することが可能であるポリイミドの前駆体(化合物、混合物、複合物)である。
本発明では、ポリイミド前駆体としてポリアミド酸塩を用いるのが好適である。ポリアミド酸塩とは、ポリアミド酸分子構造中のカルボン酸が塩基性化合物と中和塩を形成した構造であり、例えば、下記一般式(1)で表すことができる。
(一般式(1)中、Aは4価の芳香族基もしくは脂肪族基であり、Bは2価の芳香族基もしくは脂肪族基であり、X、Xは、いずれか一方または両方が塩基性化合物である。)
一般式(1)中のAは、テトラカルボン酸類の4つのカルボン酸基を除いた4価基であり、特に制限されないが、ポリイミドに用いる公知のテトラカルボン酸類を好適に用いることができる。その中でも、4価の芳香族基もしくは脂肪族基が好ましく、4価の芳香族基もしくは脂環族基がより好ましく、4価の芳香族基が特に好ましい。4価の芳香族基もしくは脂肪族基は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは97モル%以上、特に好ましくは98モル%以上含まれる。Aとして、芳香族基もしくは脂肪族基を用いることで、耐溶剤性に優れるため好ましく、芳香族基もしくは脂環族基を用いることで、耐熱性に優れるため、より好ましい。
特に、一般式(1)中のAは、一般式(2)中記載の4価の芳香族基を有するものが好ましく、より好ましくは、4価のビフェニル構造、4価のオキシジベンゼンである。これらの4価の芳香族基を有するポリアミド酸では、加水分解が抑制されるため、電着塗料とした場合の保存安定性に優れ、安定した連続電着塗装を可能にする。
一般式(1)中のBは、ジアミン類の2つのアミン基を除いた2価基であり、特に制限されないが、ポリイミドに用いる公知のジアミン類を好適に用いることができる。その中でも、2価の芳香族基もしくは脂肪族基が好ましく、2価の芳香族基もしくは脂環族基がより好ましく、2価の芳香族基が特に好ましい。2価の芳香族基もしくは脂肪族基は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは97モル%以上、特に好ましくは98モル%以上含まれる。Bとして、芳香族基もしくは脂肪族基を用いることで、耐溶剤性に優れるため好ましく、芳香族基もしくは脂環族基を用いることで、耐熱性に優れるため、より好ましい。
特に、一般式(1)中のBは、一般式(3)記載の2価の芳香族基であることが好ましい。
(一般式(3)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン基、カルボキシル基、水酸基であり、Rは、直接結合、エーテル基、アルキレン基、スルフィド基、スルホニル基、ケトン基である。)
また、ポリアミド酸組成物の製造方法の観点から、25℃における水に対する溶解度が0.1g/L以上であるジアミン類があることが特に好ましい。このようなジアミンを用いることで、後記のii)の製造方法を可能し、実質的にアミド系溶剤を使用せずに、水、アルコール類、多価アルコール類など環境負荷の少ない溶媒を用い、均一なポリイミド前駆体組成物を得ることができる。そのような芳香族ジアミン成分としては、例えば、p−フェニレンジアミン(25℃における水に対する溶解度は120g/L、以下同様)、m−フェニレンジアミン(77g/L)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(0.19g/L)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(0.24g/L)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(0.54g/L)、2,4−トルエンジアミン(62g/L)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(1.3g/L)、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)メタン(200g/L)、2,4−TDA:2,4−ジアミノトルエン(62g/L)などを例示できるが、水溶性が高く、且つ得られるポリイミドの結晶性が高くて優れた特性を得ることができるので、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、及びそれらの混合物が好ましく、さらにp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、及びそれらの混合物がより好ましい。
なお、25℃おける水に対する溶解度は、当該物質が、25℃の水1L(リットル)に溶解する限界量(g)を意味する。この値は、ケミカル・アブストラクトなどのデータベースに基づいた検索サービスとして知られるSciFinder(登録商標)によって容易に検索することもできる。ここでは、種々の条件下での溶解度のうち、Advanced Chemistry Development(ACD/Labs)Software V11.02(Copyright 1994−2011 ACD/Labs)によって算出されたpHが7における値を採用した。
一般式(1)中、X、Xにあたる塩基性化合物は、特に限定されないが、アミン化合物、アルカリ金属、アルカリ土類金属が好ましく、より好ましくは、アミン化合物であり、更に好ましくは、イミダゾール化合物または3級アミン化合物である。イミダゾール化合物としては、例えば、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−エチル−2−メチルイミダゾール、及び1−メチル−4−エチルイミダゾールなどが挙げられ、3級アミン化合物としては、例えば、トリエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジエチルピペラジン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン四酢酸、N,N−ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン等が挙げられるが、特に1,2−ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、N−メチルモルホリンが好ましい。これらは、単独で用いても2種以上を混合しても用いてもよい。これらの塩基性化合物を用いることにより、ポリイミド前駆体が、水、アルコール類、多価アルコール類など環境負荷の少ない溶媒に溶けるようになり、また、イミド化反応の触媒となるため、低温焼成が可能となる。
また、一般式(1)で示されるポリアミド酸分子構造の中に占めるカルボン酸塩構造の割合としては、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸の官能基総モル数に対し、カルボン酸塩として存在する官能基モル数の比(カルボン酸塩として存在する官能基モル数/ポリアミド酸に含まれるカルボン酸の官能基総モル数)として、0.3以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上である。0.3以上とすることによって、ポリイミド前駆体が、水、アルコール類、多価アルコール類など環境負荷の少ない溶媒に溶けるようになり、アミド類などの溶媒の添加を少なくでき、更には無くすことができるので好ましい。さらに必要に応じで、電着塗料の溶液安定性を改善する目的で、塩基性化合物を過剰に添加することが可能であり、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸の官能基総モル数に対し、好ましくは3.0モル当量以下、より好ましくは2.0モル当量以下、特に好ましくは1.5モル当量以下である。この官能基の比率(もしくは塩基性化合物の添加量)は、使用する塩基化合物の添加量(モル数)により、調整可能であり、また、中和滴定、NMR測定、FT−IR測定、ガスクロマトグラフィーなど公知の分析方法により、その比率や含有量を求めることができる。
一般式(1)で表されるポリアミド酸塩は、有機溶剤への溶解性に優れるため、ポリイミド前駆体溶液組成物中に含まれる溶剤として、低沸点の有機溶剤を用いることが可能である。溶媒の沸点として、200℃以下が好ましく、より好ましくは190℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。特に好ましくは120℃以下且つ100℃以上である。低沸点の溶媒を用いることで、電着塗装後の熱処理工程の温度を下げることが可能となる。
また、一般式(1)で表されるポリアミド酸塩は、水への溶解性にも優れるため、電着塗料中の水の含有率を上げることが可能であり、溶媒もしくは揮発成分中に水が50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは、80質量%以上含まれる。
本発明で用いるポリイミド前駆体溶液組成物中に含まれる溶剤としては、例えば、水、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルプロパンジオールなどの多価アルコール系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールなどのエーテル系溶媒、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、プチルセロソルブ、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトンなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロへキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、その他、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホオキシド、スルホラン、ジメチルスターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒などが挙げられる。
しかし、用いる溶剤については、揮発した場合の環境負荷の観点から、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド結合を有するアミド系溶媒の含有量が、5質量%以下であり、実質的にアミド系溶剤を含有しないことが好ましい。ここでの実質的にアミド系溶剤を含有しないとは、アミド系溶剤の含有率が、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは、0.5質量%以下、特に好ましくは、0.1質量%以下である。環境負荷を低減するため、アミド系溶剤は、5質量%以下であることが好ましい。また、さらに環境負荷を低減するという観点から、フェノール系溶剤を含まないことが好ましい。なお、電着塗料中に含まれるアミド系溶剤、その他溶剤の含有量は、ガスクロマトグラフィーや、H−NMR、FT−IRなど既存の分析方法を用いて、定量できる。
本発明において、ポリイミド前駆体溶液組成物中に含まれる溶剤としては、水、アルコール系溶剤、多価アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、カーボネート系溶剤のいずれかもしくは、これらを2種以上の組み合わせて用いることが好ましく、水、アルコール系溶媒、多価アルコール系溶媒のいずれかもしくは、これらを2種以上の組み合わせて用いることがより好ましく、水を用いるのが特に好ましい。これら溶媒を使用することで、環境負荷の大きい化合物の排出を低減できる。さらに、アルコール系溶媒、多価アルコール系溶媒、特に水を用いることで、ポリイミド前駆体組成物の電気伝導率を高くすることが可能となり、低い電圧で電着塗装を可能とするため、生産性に優れる。
一般式(1)で表されるポリアミド酸塩を含むポリイミド前駆体溶液組成物は、例えば、以下の方法で製造することができる。
i)溶媒にジアミンを溶解させ、この溶液にテトラカルボン酸二無水物を、攪拌しながら徐々に添加し、さらに、温度0〜100℃の範囲で攪拌してポリアミド酸を得た後、塩基性化合物を添加する方法。
ii)あらかじめ、溶媒に塩基性化合物とジアミンを溶解させ、この溶液にテトラカルボン酸二無水物を、攪拌しながら徐々に添加し、さらに、温度0〜100℃の範囲で攪拌する方法。
特に、ii)の製造方法は、直接、分子構造の中にカルボン酸塩構造を含むポリアミド酸が合成されるため、溶剤性に優れ、環境負荷の小さい、水、アルコール系溶媒、多価アルコール系溶媒などの溶媒を用いて製造できるため、好ましい。
本発明の電着塗料は、一般式(1)で表されるポリアミド酸塩を含み、使用する溶媒中のアミド系溶剤の含有量が5質量%以下であることを特徴とする。特に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド結合を有するアミド系溶剤の含有量が、5質量%以下であり、実質的にアミド系溶剤を含有しないことが好ましい。ここでの実質的にアミド系溶剤を含有しないとは、アミド系溶剤の含有率が、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは、0.5質量%以下、特に好ましくは、0.1質量%以下である。本発明の電着塗料は前述のポリイミド前駆体溶液組成物と同様にして、あるいは、上記で得られたポリイミド前駆体溶液組成物に、水、有機溶剤(例えば、前述の有機溶剤)を添加して製造することができる。
本発明の電着塗料は、必要に応じて、さらに、触媒(例えば、アミン化合物、イミダゾール化合物)、化学イミド化剤(例えば、無水酢酸などの酸無水物や、ピリジン、イソキノリンなどのアミン化合物)、硬化性樹脂(例えば、熱架橋性ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂)、酸化防止剤(フェノール系、リン系酸化防止剤)、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン系安定剤)、帯電防止剤(例えば、界面活性剤、カーボン、金属酸化物)、可塑剤(例えば、エステル系可塑剤、エポキシ化植物油)、油溶性溶媒(例えば、1−アセトナフトン、アセトフェノン、ベンジルアセトン、メチルアセトフェノン、ジメチルアセトフェノン、プロピオフェノン、バレロフェノン、アニソール、安息香酸メチル、安息香酸ベンジル)、防錆剤(例えば、亜鉛化合物,鉛化合物、ジフェニルアミンなど、アジピン酸、エタノールアミンおよびモノエタノールアミン、エチレングリコールモノエチルエーテル,トリメチルアミン、ノニルフェノール、ヘキサメチレンジアミン,ペンタエリスリトールなど、ジシクロヘキシルアンモニュームナイトライト、ジイソプロピルアンモニュームナイトライトおよびこれらの混合物など、ジシクロヘキシルアンモニュームのカプレート、ラウレート、カーボネートなど、ベンゾトリアゾールおよびアルキルベンゾトリアゾールなど、アミン塩類,低級脂肪酸およびこれらの塩類など。)、フィラー(例えば、シリカ、アルミナなどの絶縁性フィラー、カーボン、金属粒子などの導電性フィラー、アルミナ、窒化ホウ素、窒化ケイ素などの高熱伝導性フィラー、チタン酸バリウムなどの誘電体フィラー、)、染料、顔料、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、難燃材(例えば、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム。)、消泡剤(例えば、シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡材)、レベリング剤(例えば、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤)、平滑化剤(例えば、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、4−メトキシベンジルアルコール、4−クロルベンジルアルコール、4−ニトロベンジルアルコール、フェノキシ−2−エタノール、シンナミルアルコール、フルフリルアルコールおよびナフチルカルビノールポリエチレングリコール、クマリン、2−ブチン−1,4−ジオール、2−プロピン−1−オール、3−フェニルプロピオン酸)、レオロジーコントロール剤(流動制御目的の添加剤)、剥離剤、界面活性剤(例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤)、金属石鹸(例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、リシノール酸、オクチル酸などの脂肪酸と、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛などの金属との塩)、支持電解質(例えば、アルカリ金属のハロゲン化物や硝酸塩など、テトラアルキルアンモニウムの過塩素酸塩やテトラフルオロホウ酸など強酸との塩)などを添加することができる。
本発明の電着塗料の固形分濃度は、特に限定されないが、実施例記載の方法で求められるものであり、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは3〜45質量%、さらに好ましくは5〜40質量%である。固形分濃度が1質量%未満では、電着塗装の生産性が十分でない場合があり、50質量%を超えると、溶液の流動性が劣るため製造安定性に問題が生じる場合がある。
本発明の電着塗料の溶液粘度は、特に限定されないが、実施例記載の方法で求められるものであり、好ましくは0.001〜100Pa・s、より好ましくは0.01〜50Pa・s、さらに好ましくは0.01〜10Pa・sである。溶液粘度をこの範囲とすることによって、製膜性に優れ、安定した製造が可能となる。溶液粘度は固形分濃度、並びに、ポリイミド前駆体の対数粘度および分子量を調整することにより所望の範囲に設定できる。
本発明の電着塗料で用いるポリイミド前駆体(分子構造にカルボン酸塩構造を含むポリアミド酸、ポリアミド酸等)の対数粘度は、特に限定されないが、実施例記載の方法で求められるものであり、0.2以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.8以上、特に好ましくは1.0以上が好適である。また、ポリイミド前駆体のGPCで求められる重量平均分子量は、1,000〜1,000,000、好ましくは、5,000〜500,000である。これら対数粘度および分子量は、用いるテトラカルボン酸成分とジアミン成分のモル比を調整することで任意に設定できる。
本発明の電着塗料は、特に限定されないが、均一な溶液であることが好ましい。電着塗料として、均一な溶液を用いることで、均一な被膜が形成できる。なお、ここでの均一な溶液とは、懸濁液ではない(コロイド等の相分離構造を有しない)ことを意味し、濁度(JIS K0101)等を用いて、分析可能である。
本発明の電着塗料は、特に限定されないが、電気伝導度が1000μS/cm以上であることが好ましい。特に本発明の電着塗料では、水の含有率が高くできることから、電気伝導度を容易に高くすることができる。電気伝導度が高いと、低い電圧で電着塗装を可能とするため、生産性に優れる。
本発明の電着塗料は、特に限定されないが、水素イオン指数(pH)が、6以上、好ましくは7〜9、より好ましくは、7〜8.5である。この範囲の水素イオン指数であると、塗料の保存安定性にすぐれるため、好ましい。
本発明の電着塗料は、特に限定されないが、保存安定性に優れることが好ましい。保存安定性は、温度0℃〜50℃で、好ましくは1日以上、より好ましくは1ヶ月以上精置した場合でも、析出、沈殿等の異常が確認されない。
本発明のポリイミド被膜の製造方法は、特に限定されないが、公知のアニオン電着塗装の方法を採用することができる。即ち、本発明のポリイミド前駆体組成物を温度5〜50℃に調整して、導電性被塗物を浸漬し、印可する電圧としては、好ましくは400V以下、より好ましくは1.6〜200V、更に好ましくは1.6〜100V、特に好ましくは、1.6〜50Vであり、通電時間は30秒〜10分間、好ましくは1〜5分間の条件で、導電性被塗装物の表面に被膜を形成させる。経済面や、発生ガスの抑制、被膜の平滑性といった観点から、印可する電圧としては、好ましくは1.6〜50V、より好ましくは1.6〜30V、特に好ましくは1.6〜10Vである。また、電着塗装後、必要に応じて、水洗、乾燥、熱処理することで、平滑で密着性のよい塗膜を形成できる。
一例として、図1に示すハルセル試験法を用いた電着塗装を行う場合について以下に説明する。図1において、ハルセル1は断面が台形の形状をした箱型の電解槽である。このハルセルの内部に、電着塗料2(ポリイミド前駆体組成物)を入れる。さらに、ハルセル1 内部の電着塗料2は窒素等の不活性ガスの吹き込み、又はスターラーによって撹拌することもでき、温度制御装置等(図中に示していない。)を設けることができる。
上記ハルセル試験装置で、電着塗料2を入れたハルセル1に通電すると、ハルセルのアノード面3とカソード面4が平行になっておらず、アノード面3がカソード面4に対して傾斜しているため、電着を行うとカソード面4に近い方のアノード面3の部分に流入する単位面積あたりの電流、すなわち電流密度は高く、カソード面4に遠い方のアノード面3の部分ほど流入する電流密度は徐々に低くなる。したがって、ハルセル試験法によると、電着時間を数分程度にして、広い範囲の電流密度の変化に対してアノード面3に析出した被膜の状態を観察することができる。このように、ハルセル試験は、電着塗料2として用いたポリイミド前駆体組成物の判定に有効である。例えば、被膜の平滑性、つきまわり不良、或いは焼け又は密着不良が観察できる。
一般にハルセル試験法において、電流分布は、次の式で求めることが可能である。

また、前述のハルセル試験では、電流密度をDr.R.O.Hull関係式およびドイツ規格(DIN50957)を参考に以下の式から算出される。
本発明のポリイミド被膜の製造方法は、前述の電着塗装によってポリイミド前駆体被膜を得た後、これをイミド化して製造する。イミド化工程は特に限定されず、ポリイミド前駆体からポリイミドを得るための公知のイミド化法、例えば、熱イミド化法、化学イミド化法を用いることができる。熱イミド化法では、ポリイミド前駆体被膜を、空気もしくは窒素中、常圧もしくは減圧下で、最高温度150℃〜500℃、好ましくは200℃〜400℃、より好ましくは200℃〜350℃で、特に好ましくは200℃〜250℃で、0.1〜60分間、好ましくは0.1〜20分間、更に好ましくは0.5〜5分間、熱処理するとよい。本発明のポリイミド被膜の製造方法では、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)の被膜中に、塩基性化合物を含有するため、低温、短時間でイミド化が完了でき、また、従来のアミド系溶媒に比べ、低沸点の溶媒を用いることができるので、低温、短時間で溶媒を除去することができる。
本発明で用いる被塗工物は、特に限定されないが、例えば、ステンレス、銅、アルミニウム、鉄、亜鉛、その他各種合金などの金属のみからなるものや、樹脂やガラス、セラミックなどの表面に金属箔を貼り合せたり、蒸着、めっき及びその他導電処理を施すなどして表面を導電性にしたものが好ましい。また、被塗工物の形状は、板状、筒状、その他種々の立体構造をもったものなどとされ特に特定されない。また、被塗工物は、あらかじめ公知の洗浄をおこなうことが好ましい。
本発明のポリイミド被膜は、厚さ0.1〜100μmであり、特に限定されるわけではないが、耐熱性、耐薬品性に優れ、さらに、アミド系溶媒の残溶剤を実質的に含有しない。(ここでの実質的にアミド系溶剤を含有しないとは、アミド系溶剤の含有率が、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは、0.5質量%以下、特に好ましくは、0.1質量%以下である。)なお、ポリイミド被膜中の残溶剤は、ヘッドスペースGC/MS法(加熱条件350℃)にて、好適に測定できる。
本発明のポリイミド被膜は、特に限定されないが、表面粗さRaが、1000nm以下が好ましく、500nmがより好ましく、100nm以下が特に好ましく、また、特に限定されないが、表面粗さSaが、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、250nmが更に好ましく、100nm以下が特に好ましい。
本発明のポリイミド被膜は、耐熱性、耐薬品性、表面平滑性(表面粗さが小さい)等の優れることから、電子回路基板の絶縁層、コンデンサ絶縁膜、MEMS用絶縁層、電線被覆材、燃料電池部材、金属の防錆膜、耐熱塗料、耐熱コーティング、研磨パットのコーティング、摺動部品のコーティングなどとして好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
以下の例で用いた測定方法を以下に示す。
<固形分濃度>
サンプル(その質量をw1とする)を、熱風乾燥機中120℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で30分間加熱処理して、加熱処理後の質量(その質量をw2とする)を測定する。固形分濃度[質量%]は、次式によって算出した。
<対数粘度>
ポリイミド前駆体溶液を、固形分濃度に基づいて濃度が0.5g/dl(溶媒は水)になるように希釈した。この希釈液を、30℃にて、キャノンフェンスケNo.100を用いて流下時間(T1)を測定した。対数粘度は、ブランクの水の流下時間(T0)を用いて、次式から算出した。
<溶液粘度(回転粘度)>
ポリイミド前駆体溶液、電着塗料(ポリイミド前駆体組成物)の溶液粘度は、東機産業株式会社製コーンプレートのE型粘度計を用いて、標準ローター、回転速度 10rpmもしくは1rpm(せん断速度 38.3/sもしくは3.83/s)、サンプル温度 30℃の条件で測定した。
<電着塗料のpH>
堀場製作所製pHメーター コンパクトpHメータB−211を用いて、25℃のpHを測定した。
<電着塗料の保存安定性>
ポリエチレン製容器に塗料 500mlを入れ、25℃で24hr以上精置した。異常がない場合を○、析出、分離等が確認された場合を×と表2に記した。
<電着塗装での光沢塗面の位置>
実施例の条件でハルセル試験を実施した後、アノード面3に形成した被膜の状態を目視で観察した。表2には、良好な光沢塗面が形成したアノード面3上の位置を、カソード面4に近い端辺からの距離(cm)で記した。なお、この距離を用い、前述の式2及び式3より、良好な光沢塗面が形成可能な電流密度を求めることができる。
<ポリイミド被膜の膜厚>
ポリイミド被膜の膜厚は、マクロメーターを用い測定した。
<ポリイミド被膜の表面粗さSa,表面粗さRa>
菱化システム製三次元非接触表面形状計測システムMM3000を用い、ポリイミド被膜の表面粗さを以下の条件で測定した。特に記載ない条件は、マニュアル記載の条件で測定した。
対物レンズ: 10倍
表面粗さ Sa: 測定範囲 623,386nm × 817,491nm
表面粗さ Ra: 測定範囲 500,000nm
以下の例で使用した化合物の略号について説明する。
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
OPDA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物
PPD:p−フェニレンジアミン
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
1,2−DMZ:1,2−ジメチルイミダゾ−ル
TEA:トリエチルアミン
DABCO:1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
PG:プロピレングリコール
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
水: 特に記載のない限り、純水を使用した。
〔参考例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水を、目標濃度となる量(予めPPD及びs−BPDAの投入量から所定の濃度となるよう計算された量。ここでは、9質量%の450g)を加え、これにジアミンとしてPPDを、0.124モル(13.44g)と、1,2−DMZの0.31モル(29.87g ジアミンに対して2.5倍モル)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にまず、s−BPDAを、0.118モル(34.73g ジアミンに対して0.95倍モル)を加え、25℃で8時間撹拌した。さらに、目標の溶液粘度(ここでは、5Pa・s)、固形分濃度(ここでは、9質量%)となるように、s−BPDAを段階的に加え(実質的にジアミンと等モルとなる)、必要に応じ、溶媒で希釈した。さらに、2時間攪拌し、均一なポリイミド前駆体溶液を得た。得られたポリイミド前駆体溶液の特性を表1に示した。
〔参考例2〜8〕
表1に記載したジアミン成分、アミン類、溶媒を用いた以外は、参考例1と同様にして、ポリイミド前駆体溶液を得た。得られたポリイミド前駆体溶液の特性を表1に示した。なお、実施例5では、溶媒として、水/PG(質量比:7/3)で混合した溶媒を用いた。
〔実施例1〕
参考例1で得られたポリイミド前駆体溶液 100g質量部に対し、水 100質量部を加え、十分に撹拌し、均一な溶液の電着塗料(ポリイミド前駆体組成物)を得た。この電着塗料の固形分濃度、pH、保存安定性、またアミド系溶剤の有無を表2に示した。
前述の図1に示すハルセル試験法を用いた電着塗装により、得られた電着塗料を用いたポリイミド被膜を製造した。
ハルセル試験法の条件は、以下の通りである。
アノード面:SUS430(サイズ約103mm×63.5mm 厚さ0.5mm)
カソード面:SUS430(サイズ約63.5mm×63.5mm 厚さ0.5mm)
電着塗料の量: 267ml
電着塗料の温度: 30℃
印加電圧/印加電流/印加時間: 5V/0.1A/10分

電着塗装の結果を表1に示した。なお、被塗装物(アノード面3)、カソード電極(カソード面4)として、SUS430板の表面を平滑に研磨し、付着物を除去した後、純水で洗浄した。
得られたポリイミド前駆体の被膜は、純水で洗浄した後、熱風循環オーブンを用い、空気中160℃10分、250℃10分の加熱処理をおこない、ポリイミドの被膜を得た。(FT−IRにて、イミド化が完了していることを確認した。)
ポリイミド塗膜の評価結果を表2に示した。
〔実施例2〜9〕
実施例1と同様にして、実施例2〜9では、表2記載の参考例2〜7のポリイミド前駆体溶液を用い、ポリイミド被膜を製造した。なお、実施例2〜9において、実施例1と異なる条件を用いた場合や、異なる結果を得たものについては、表2にそれを示した。
表2に示した結果から分かるとおり、本発明のポリイミド被膜の製造方法では、非常に平滑な塗膜が得られた。これは、均一な水溶液を電着塗料として用いているためと推察される。さらに、電着塗料に使用する溶媒として、アミド系溶媒を含まないことから、製造工程で発生する揮発成分として、環境負荷の大きいアミド系溶媒が低減可能である。
1 ハルセル
2 電着塗料(ポリイミド前駆体組成物)
3 アノード面
4 カソード面

Claims (8)

  1. ポリイミド前駆体溶液組成物を用い、電着塗装法によってポリイミド前駆体被膜を形成後、これをイミド化するポリイミド被膜の製造方法であって、
    ポリイミド前駆体溶液組成物が、
    a)下記一般式(1)で表されるポリアミド酸塩を含み、
    (一般式(1)中、Aは4価の芳香族基もしくは脂肪族基であり、Bは2価の芳香族基もしくは脂肪族基であり、X、Xは、いずれか一方または両方がイミダゾール化合物である。)
    b)溶媒中のアミド系溶剤の含有量が5質量%以下である、
    ことを特徴とするポリイミド被膜の製造方法。
  2. 溶媒が、実質的に、アミド系溶剤を含有しないことを特徴とする請求項1記載のポリイミド被膜の製造方法。
  3. 溶媒が、水、アルコール系溶剤、多価アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、カーボネート系溶剤のいずれかもしくは、これらを2種以上の組み合わせて用いることを特徴とする請求項1〜2いずれかに記載のポリイミド被膜の製造方法。
  4. 溶媒の沸点が、200℃以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のポリイミド被膜の製造方法。
  5. 前記一般式(1)中のAが、一般式(2)中記載の4価の芳香族基であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のポリイミド被膜の製造方法。
  6. 前記一般式(1)中のBが、一般式(3)記載の2価の芳香族基であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載のポリイミド被膜の製造方法。
    (一般式(3)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン基、水酸基、カルボキシル基であり、Rは、直接結合、エーテル基、アルキレン基、スルフィド基、スルホニル基、ケトン基である。)
  7. 電着塗装法における印加電圧が、400V以下であることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載のポリイミド被膜の製造方法。
  8. a)下記一般式(1)で表されるポリアミド酸塩を含み、
    (一般式(1)中、Aは4価の芳香族基もしくは脂肪族基であり、Bは2価の芳香族基もしくは脂肪族基であり、X、Xは、いずれか一方または両方がイミダゾール化合物である。)
    b)溶媒中のアミド系溶剤の含有量が5質量%以下である、
    ことを特徴とする電着塗料。
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