JP3414479B2 - 製膜溶液及びそれから得られる多孔質フィルム又は多孔質フィルムの被覆物 - Google Patents
製膜溶液及びそれから得られる多孔質フィルム又は多孔質フィルムの被覆物Info
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Description
ィルムを得ることができる製膜溶液及びそれから得られ
る多孔質フィルム又はこの多孔質フィルムが基材上に形
成されている被覆物に関するものである。
れており、フィルム、コーティング材、成形体などに広
く利用されている。さらに、このようなポリイミドの優
れた特性を活かして、気体または液体の分離用膜も開発
されている。ジャーナルオブサイエンス,マクロモレキ
ュラーレビュー〔Journal of Polymer Science, Macrom
olecular Reviews〕第11巻 (1976) ,第164頁
表2には、ポリイミドの代表的な前駆体であるポリアミ
ド酸を溶解する溶媒が記載されている。この表には、具
体的な溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミド(D
MF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ヘキ
サメチルホスホルアミド(HMPA)、N−メチルカプ
ロラクタム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−
アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトア
ミド(DMAc)等が列挙されている。これらの溶媒
は、単独ではポリイミド前駆体を溶解する溶媒で、いわ
ゆる非プロトン系極性溶媒と称されるものである。ま
た、これらの溶媒は、ポリアミド酸を溶解する溶媒であ
ると共にジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを重合
させて、ポリアミド酸を得る際の重合溶媒として使用で
きることも記載されている。
これら非プロトン系極性溶媒に溶解したポリアミド酸溶
液から溶媒を除去してイミド化すると、ポリイミド膜が
得られることや、この溶液を基材上にコーテイングし
て、溶媒除去、イミド化するとポリイミド被覆物が得ら
れることが記載されている。また、米国特許第4238
528号、特公平3−4588号公報及び1977年1
1月のIBM「Technical Disclosure Bulletin 」,
第20巻,第6号,第2041頁にも、DMAc、NMP、D
MSO、DMFのような非プロトン系極性溶媒を用いた
ポリイミド前駆体溶液が記載されている。しかし、これ
らの溶媒は双極子モーメントが大きく、溶質であるポリ
イミド前駆体と強く会合しており〔ジャーナルオブサイ
エンスA−1(Journal of Polymer Science, A-1) 第
4巻第2607〜2616頁(1966) 同誌A第25
巻第2005〜2020頁(1987), 同誌A第25
巻第2479〜2491頁(1987), 工業化学雑誌
第71巻9号第1559〜1564頁(1968),AN
TEC'91の予稿集第1742〜1745) 、溶媒と溶質
との溶媒和が強いので、ポリイミド膜や被覆物を製造す
る際、次に述べるような問題があった。すなわち、前記
従来使用されてきた非プロトン系極性溶媒にポリイミド
前駆体を溶解した溶液においては、ポリイミド前駆体と
溶媒とが強く溶媒和しているので成形時や被覆時におけ
る溶媒除去が難しく、残留溶媒が多く、得られる成形体
や被覆物の力学的特性や電気的特性等が十分でないとい
う問題があった。また、成形体に残留している溶媒は使
用時に高温になると分解して、一酸化炭素等の有害なガ
スを発生するという問題があった。
これらの溶媒を重合溶媒として用いた場合、溶媒中に水
が共存すると、酸無水物が加水分解したり、生成したポ
リイミド前駆体溶液が経時変化したりするので、厳密な
脱水系で反応を行う必要があり、反応装置が複雑になる
という問題があった。さらに、これらの溶媒は、特公平
3−4588号公報に記載されているように、その大き
な双極子モーメントの故に表面張力が大きく、かつ粘性
が高いので、膜や被覆物においては十分に均一な膜が得
られなかったり、基材に対して被膜の密着性が十分でな
かった。これに対し、本発明者らはこれらの非プロトン
系極性溶媒に起因する多くの問題点を解決する画期的な
溶媒系を見いだし、非プロトン系極性溶媒を用いないポ
リイミド前駆体溶液に関する発明を特開平6−1915
号として開示した。
イミド前駆体と強く溶媒和しない溶媒の混合溶媒を使用
すれば、例え水が共存していても高重合度のポリイミド
前駆体溶液が簡単に安価に製造できること、この溶液中
のポリイミド前駆体は溶媒と強く溶媒和していないこ
と、この溶液からは良好な特性を有する糸や膜のような
ポリイミド成形体や被覆物が得られることを見いだし
た。しかし、これらの溶媒を用いた溶液を基材上に流延
などして溶媒を除去したのち、イミド化して得られる膜
は無孔の膜であり、多孔質フィルムは得られなかった。
又は液体の分離用膜として利用されている。特開昭57
−170934号公報、特開昭57−170935号公
報には、ビフェニルテトラカルボン酸と芳香族ジアミン
とから得られるポリイミドと、このポリイミドの良溶媒
及び貧溶媒からなるポリイミド溶液を使用して得られる
ポリイミド多孔質フィルム及びその製造法が開示されて
いる。しかしながら、これらの方法で得られたポリイミ
ド膜は、ガス透過度が充分でなかった。また、特公昭6
1−53086号公報には、前記した非プロトン系極性
溶媒のポリアミド酸溶液から形成させた膜を水あるいは
低級アルコールからなる凝固液に接触させ、凝固膜と
し、この凝固膜を乾燥、加熱イミド化してポリイミド多
孔質フィルムを製造する方法が開示されている。この製
造法によれば、耐熱性、耐薬品性に優れたポリイミド多
孔質フィルムを得ることができるが、ガス透過度は、例
えば水素の場合には、高々0.011cm3 /cm2 ・
sec・cmHgであり、ガス透過度が充分なものでは
なかった。
は、ポリイミド前駆体をポリイミド前駆体の良溶媒と貧
溶媒の混合溶媒に溶解した溶液を用いてポリイミド前駆
体膜を作成し、これを加熱することにより溶媒の除去と
ともにイミド化したポリイミド多孔質フィルム及びその
製造法が開示されている。これらのポリイミド多孔質フ
ィルムは、ポリ(4,4’−オキシジフェニレンピロメ
リットイミド)等の構造からなり、耐熱性、耐薬品性に
優れるため、ガス分離膜として有用であることが示され
ている。しかし、この方法では、ポリイミド前駆体の良
溶媒である前記の非プロトン系極性溶媒を用いており、
先に述べたような、これら非プロトン系極性溶媒に起因
する様々な問題を有していた。これに加え、ポリイミド
前駆体の膜を加熱して閉環処理する際、膜に残存する非
プロトン系極性溶媒が膜を柔軟化させるので、ポリマー
分子の動きが容易になり、再配列が起こり易いことが次
の文献に開示されている〔ポリマーエンジニアリングサ
イエンス(Polm. Eng. Sci.,)第29巻第347〜35
1頁(1989)、アドバンスインポリイミドサイエン
スアンドテクノロジー(Advances in Polyimide Scienc
e and Technology,Tecnomic Publishing Co., Inc.,)
第360〜373頁(1991)〕。このように膜が柔
軟化し、ポリマーの再配列が起こるので、ポリイミド前
駆体膜の作成時に、形成した微細孔構造が失われ、充分
なガス透過性を得ることは難しかった。このことは次の
文献に指摘されている。〔膜、第15巻第139〜14
6頁(1990)〕。
139〜146頁(1990)及び膜、第17巻第42
〜47頁(1992)には、高沸点溶媒中で熱処理を行
うことにより、ポリイミド前駆体膜の作成時に、形成さ
せた微細孔構造を維持したままイミド化して、ポリ
(4,4’−オキシジフェニレンピロメリットイミド)
からなるガス分離膜用ポリイミド多孔質フィルムを得る
方法が開示されている。しかし、この方法を用いてもガ
ス透過性は充分には改良されていない。また、ポリイミ
ド前駆体溶液を使用して、ガラス板上にポリイミド前駆
体膜を形成し、これをポリイミドに化学変換する液体中
に浸漬してポリイミド多孔質フィルムを製造する方法
が、特公昭58−25690号公報に開示されている
が、この方法によっても、ガス透過性は充分に改良され
ない。
いるので、半導体素子の絶縁層やフレキシブル回路基板
の絶縁膜として、電子材料としても有用である。しか
し、近年、半導体素子や回路の集積化及び信号の高速化
に伴い、誘電特性をはじめとする電気的特性がより優れ
た材料が求められている。誘電特性を向上させるひとつ
の方法は、例えば、ポリイミドの膜内に微細気孔を導入
し、多孔質とすることである。この方法によればポリイ
ミドとしての十分な特性を維持しつつ、誘電率を低下さ
せることができる。
ンスアンドテクノロジー(Advancesin Polyimide Scienc
e and Technology, Tecnomic Publishing Co., Inc.,)
第184〜197頁(1991)には、耐熱性ポリマー
であるポリキノキサリンとポリエチレンオキシドとのコ
ポリマー溶液から膜を成形後、加熱焼成することにより
ポリエチレンオキシドを分解除去し、多孔質フィルムを
製造する方法が開示されている。この方法により得られ
る多孔質フィルムは半導体の絶縁膜として有用であるこ
とが述べられているが、このポリマーは基本的にポリイ
ミドとは構造が異なる。また、製膜の際にポリマーを溶
解させる溶媒の毒性が強く、得られた膜に残留する溶媒
が問題となる。さらに、フレキシブル回路基板の絶縁膜
として、化学構造を変えることにより誘電率を低下させ
たポリイミド膜が知られている。化学構造を変えること
により誘電的特性の向上は望めるが、その他の特性の低
下が伴う。フレキシブル回路基板用のポリイミド膜を多
孔質とすることにより、誘電率を低下させることは極め
て有用であると考えられるが、優れた誘電特性を有し、
かつ充分な力学的特性を有するポリイミドからなるポリ
イミド多孔質フィルムは、現在まで報告されていない。
るDMF、NMP、DMAc、DMSO等の非プロトン
系極性溶媒を用いずに製造され、極めて優れた耐熱性及
び耐薬品性を兼ね備えたポリイミドで構成された多孔質
フィルムは現在まで存在しない。
は、DMF、NMP、DMAc、DMSO等の非プロト
ン系極性溶媒を用いない製膜溶液及びそれから得られる
耐熱性、耐薬品性に優れ、膜内の気孔率及び気孔サイズ
を制御することができ、電気的特性に優れたポリイミド
の多孔質フィルム又はこの多孔質フィルムが基材上に形
成された被覆物を提供することにある。
を解決すべく鋭意検討した結果、ポリイミドの前駆体
が、単独ではこのポリイミド前駆体の貧溶媒である溶媒
のうちから選ばれる3種以上の混合物に溶解すること、
この溶液から、ポリイミド前駆体の多孔質フィルムが製
造できること、この前駆体の多孔質フィルムを閉環処理
することにより微多孔構造を損なうことなく、ポリイミ
ドの多孔質フィルムやこの多孔質フィルムが基材上に形
成された被覆物が得られること、また貧溶媒の組み合わ
せ、混合比を変えることにより気孔率、気孔のサイズを
制御することができ、実質的にガス透過度のないフィル
ムからガス透過度の極めて高い多孔質フィルムまで製造
できることを見いだし、本発明に到達した。
ドの前駆体及び単独ではこの前駆体の貧溶媒である貧溶
媒のうちから選ばれる3種以上の混合溶媒からなること
を特徴とする製膜溶液であり、第二にこの製膜溶液か
ら、ポリイミドの前駆体の多孔質フィルムを形成し、こ
の膜を構成しているポリイミド前駆体を閉環してなるイ
ミドの多孔質フィルムであり、第三に前記多孔質フィル
ムが基材上に形成されている被覆物である。
ず、本発明における用語について説明する。 (1)貧溶媒 25℃におけるポリイミド前駆体に対する溶解性が1g
/100ml以下の溶媒を言う。
て形成された多孔質フィルムを意味する。
の多孔質フィルムを設置し、温度20℃において、窒素
ガス、水素ガスを0.2〜1Kg/cm2 に加圧して多
孔質フィルムの片側より供給し、ポリイミド多孔質フィ
ルムを透過するガス容量を流量計で測定し、次式で示す
算出式で算出した。(ここで定義したガス透過度は膜厚
を考慮しない値であるが、測定に用いる膜厚は17〜4
1μmが好ましく、測定時間によって透過度は変化しな
いが、測定時間は3秒〜5分が好ましい。)
し、この多孔質フィルム上に銀ペーストを直径6.2c
mの円形に塗布し、80℃で10時間乾燥し、銅と銀ペ
ーストで挟まれたポリイミドの多孔質フィルムのコンデ
ンサーを作成し、インピーダンスアナライザー(ヒュー
レットパッカー社、モデル 4194A)で、このコン
デンサーの1MHZにおける静電容量を測定し、次式に
より比誘電率を算出し、誘電率とした。なお、式におい
て、真空の誘電率はMKSA単位系で8.85419×
10-12 C2 N-1M-2で定数である。
ポリアミド酸又は部分的にイミド化したものをいい、加
熱又は化学作用により閉環してポリイミドとなり、ポリ
マー鎖の繰り返し単位の60モル%以上、好ましくは7
0モル%以上、より好ましくは80モル%以上がポリイ
ミド構造となる有機ポリマーをいい、閉環して非熱可塑
性のポリイミドとなるものであればいかなるものでもよ
い。閉環させる方法としては、加熱による方法、無水酢
酸やピリジンのような閉環剤を用いる方法など、従来知
られている方法が適用できる。
としては全芳香族系のポリイミド前駆体が挙げられ、特
に一般式(1)で表される繰り返し単位を有する芳香族
ポリアミド酸のホモポリマー又はコポリマーが好まし
い。
を含む4価の芳香族残基を示し、4価のうちの2価ずつ
は炭素6員環内の隣接する炭素原子に結合している。R
の具体例としては次のようなものが挙げられる。
2価の芳香族残基を示す。R′の具体例としては次のよ
うなものが挙げられる。
しい。
粘度〔η〕が0.3以上のものが好ましい。より好まし
くは0.7以上、特に1.0以上が好ましい。上限につ
いては特に制限はないが6ぐらいが好ましい。固有粘度
〔η〕が0.3未満では充分な強度の高い多孔質フィル
ムが得られない傾向にある。〔η〕は、重合体の分子量
と直接関係する値であり、N,N−ジメチルアセトアミ
ド溶媒におけるポリイミド前駆体の濃度を0.5重量%
とし、30℃で重合体の溶液が標準粘度計の一定容積の
毛細管を流れる時間と溶媒のみが流れる時間を測定する
ことにより、次式を使用して計算することができる。た
だし、cはポリイミド前駆体の濃度である。
マー主鎖の繰り返し単位の少なくとも70モル%以上が
イミド構造となっている有機ポリマーを言う。本発明で
はポリマー主鎖の繰り返し単位の100モル%がイミド
構造となっているものが好ましい。
は、単独ではポリイミド前駆体の貧溶媒であり、貧溶媒
のうちから選ばれる3種以上、好ましくは3〜5種の混
合溶媒からなるものである。これらの貧溶媒の組合せと
しては、(1)水溶性エーテル系化合物、水溶性アルコ
ール系化合物及び水、(2)水溶性エーテル系化合物、
水溶性アルコール系化合物及び芳香族系炭化水素、
(3)水溶性エーテル系化合物、水溶性アルコール系化
合物及び脂肪族炭化水素等が挙げられる。
素数をエーテル基の数で割った値が4以下であるものが
好ましく、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジ
オキサン、トリオキサン、1,2−ジメトキシエタン、
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレング
リコールジエチルエーテル等が挙げられ、好ましくはT
HFである。
数を水酸基の数で割った値が4以下であるものが好まし
く、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノー
ル、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール、
エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,
3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,
4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5
−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、
2−メチル−2,4−ペンタンジオールグリセリン、2
−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジ
オール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げら
れ、好ましくはメタノールである。
ルエン、キシレン等が挙げられ、より好ましくはトルエ
ンである。脂肪族炭化水素としては、炭素数が6から2
0までの脂肪族炭化水素が好ましく、より好ましくは炭
素数10のデカンである。本発明の製膜溶液は、例え
ば、水溶性エーテル系化合物と水溶性アルコール系化合
物を含む2種以上の混合溶媒中で、テトラカルボン酸二
無水物とジアミンとを常圧、−30〜60℃、1〜20
0分間で重合して、ポリイミド前駆体の溶液を得、これ
に水、芳香族系炭化水素又は脂肪族炭化水素等の他の貧
溶媒を添加して後述するような組成になるよに調製する
ことが好ましい。
度としては、0.1〜60重量%が好ましく、より好ま
しくは、1〜25重量%である。また、水溶性エーテル
系化合物と水溶性アルコール系化合物の混合比率は9
0:10〜56:44(重量比)が好ましい。また、水
溶性エーテル系化合物と水溶性アルコール系化合物以外
の貧溶媒の濃度は、0.1〜35重量%、特に4〜30
重量%が好ましい。水溶性エーテル系化合物と水溶性ア
ルコール系化合物に対して、水、芳香族系炭化水素又は
脂肪族炭化水素の割合が増加すると、製膜溶液から得ら
れる多孔質フィルムは気孔率の大きなものとなるが、上
記割合以上添加するとポリイミド前駆体が沈澱し、均一
な溶液が得られない。
の製膜方法によってポリイミド前駆体の多孔質フィルム
を得ることができる。例えば、 (a)製膜溶液を表面が平滑な面を有する基材の表面に
塗布し、10〜80℃で0.1〜4時間乾燥し、基材上
にポリイミド前駆体の多孔質フィルムを形成し、基材か
ら剥離し、ポリイミド前駆体の多孔質フィルムを150
〜300℃で0.5〜5時間加熱し(あるいはポリイミ
ド前駆体の多孔質フィルムを無水酢酸及びピリジンから
なる閉環剤中に10〜40℃で1〜20時間浸漬し)、
イミド化してポリイミドの多孔質フィルムを得る。表面
が平滑な面を有する基材としては、例えば、金属箔、金
属線、ガラス、プラスチックフィルム等が挙げられ、金
属としては、金、銀、銅、白金、アルミニウム等が挙げ
られる。
多孔質フィルムが形成されている被覆物を、150〜3
00℃で0.5〜5時間加熱し(あるいはポリイミド前
駆体の多孔質フィルムが形成されている被覆物を無水酢
酸及びピリジンからなる閉環剤中に10〜40℃で1〜
20時間浸漬し)、ポリイミドの多孔質フィルムで被覆
された被覆物を得る。 (c)さらに、この被覆物からポリイミド多孔質フィル
ムを基材から剥離し、ポリイミドの多孔質フィルムを得
る。
化合物及び水溶性アルコール系化合物以外の貧溶媒の種
類すなわち水、芳香族系炭化水素及び脂肪族炭化水素を
変えることにより、また、製膜溶液における各成分の割
合を変えることにより、フィルムの気孔率及び気孔のサ
イズを変化させることができ、透過度が10-7cm3/
cm2 ・sec・cmHg以下と実質的にガス透過度の
ほとんどない多孔質フィルムからガス透過度が7.0c
m3 /cm2 ・sec・cmと極めて高いものまでバラ
エティーに富んだ多孔質フィルムが得られる。例えば、
水を添加せず芳香族系炭化水素を添加すると小さい気孔
を有する膜が得られ、水を添加すると大きい気孔を有す
る膜が得られる。
合を変えることにより、多孔質フィルムの気孔サイズや
気孔率を変えることができ、例えば、気孔のサイズが長
径0.1〜10μm、短径0.05〜5μm程度のもの
を、気孔率が0.02〜0.7のものを得ることができ
る。多孔質フィルムの厚さは5〜100μm程度のもの
が好ましい。ガス透過度の高い多孔質フィルムはガス分
離膜あるいは液体分離膜として好適に利用できる。ま
た、イミド化の方法によっては多孔質フィルムが密度の
異なる層で構成されている多孔質フィルムを得ることが
できる。さらに、多孔質フィルム内の気孔率を調整する
ことにより、誘電率を調整することができて誘電率が
1.5以上から3.0未満である多孔質フィルムを得る
ことができる。低誘電率の多孔質フィルムはフレキシブ
ル回路基板等の絶縁膜として好適に使用できる。
前駆体及び単独ではこのポリイミド前駆体の貧溶媒から
選ばれる3種以上の混合溶媒からなるので成形時や被覆
時に溶媒除去が容易であり、従来の非プロトン系極性溶
媒を用いた方法と比べ、極めて簡便にポリイミドの多孔
質フィルムを製造でき、残留溶媒のない多孔質フィルム
が得られる。さらに、加熱イミド化の際、非プロトン系
極性溶媒を用いた場合のように、イミド化前におけるポ
リイミド前駆体の多孔質フィルム内に形成されている微
多孔構造は、損なわれることがない。したがって、従来
の非プロトン系極性溶媒を用いた方法と比べ、極めて簡
便にポリイミドの多孔質フィルムを製造できる。また、
得られる多孔質フィルムはその化学構造上からも耐熱性
及び耐薬品性に優れている。
本発明はこれら実施例に限定されない。 実施例1〜4 THF119.2gとメタノール31.8gからなる混
合溶媒に4,4’−ジアミノジフェニルエーテル8.0
0gを溶解し、13℃に保った。これにピロメリット酸
二無水物8.80gを一度に加え、20℃で18時間攪
拌を続けたところ、均一な黄色の溶液が得られた。この
ときのポリアミド酸の固有粘度は1.42であった。こ
の溶液に表1に示す重量の水を加えて、均一な製膜溶液
を調製した。
プリケーター(安田精機社製)を用いて、ガラス基板上
に40mm/sの速度で500μmの厚さに均一に流延
した。その後、25℃で20分間乾燥した後、ガラス面
より剥離し、80℃で2時間、続いて300℃で3時間
加熱しイミド化した。このようにして、ポリ(4,4’
−オキシジフェニレンピロメリットイミド)多孔質フィ
ルムを得た。この膜の断面SEM像を観察したところ、
フィルム全体にわたって長径5〜7μm、短径1〜3μ
mの楕円状気孔が多数観測された。これらのフィルムの
密度、水素のガス透過度を表1に示す。なお、気孔のな
いポリ(4,4’−オキシジフェニレンピロメリットイ
ミド)フィルムの密度は1.42g/cm3 である。
ス透過度及び水素/窒素の分離比(水素のガス透過度/
窒素のガス透過度)を示す。表1及び図1から明らかな
ように、この方法で製膜すると、水の添加量を変えるこ
とによりガス透過度の低いものからガス透過度の高いも
のまで製造することができる。特に実施例4に示すよう
に、従来得られていなかったガス透過度の高いものまで
製造することができ、水素のガス透過度が、7.0cm
3 /cm2 ・sec・cmHgと極めて高い場合であっ
ても水素/窒素分離能を有していることがわかる。
gからなる混合溶媒にジアミノジフェニルエーテル8.
0gを溶解し、30℃に保った。これにピロメリット酸
二無水物8.78gを一度に加え、1時間攪拌を続けた
ところ、均一な黄色の溶液が得られた。この溶液を減圧
下にて固形分濃度が15.1%となるまで濃縮を行っ
た。このときのポリアミド酸溶液の固有粘度は0.9で
あった。この溶液100.0gに表2に示す重量のトル
エンを加えて、均一な製膜溶液を調製した。
ガラス基板上に固定した均一な表面を持つ厚さ35μm
の銅箔上に40mm/secの速度で200μmの厚さ
に均一に流延した。その後、室温で3分間、60℃で1
時間乾燥した後、窒素雰囲気下300℃で3時間加熱
し、イミド化した。この銅/ポリ(4,4’−オキシジ
フェニレンピロメリットイミド)の多孔質フィルムの断
面SEM像を観察したところ、ポリ(4,4’−オキシ
ジフェニレンピロメリットイミド)多孔質フィルムは、
銅と膜の界面側約半分のみに長径2〜3μm、短径約1
μmの楕円状気孔が多数観測され、他半分は緻密な均一
層であった。得られたポリ(4,4’−オキシジフェニ
レンピロメリットイミド)多孔質フィルムの厚さ、密
度、1MHzにおける誘電率を表2に示す。
ンピロメリットイミド)多孔質フィルムの気孔率と1M
Hzにおける誘電率の関係を図2に示す。またこれらの
銅/ポリ(4,4’−オキシジフェニレンピロメリット
イミド)多孔質被覆物からエッチングにより銅を除去
し、ポリ(4,4’−オキシジフェニレンピロメリット
イミド)多孔質フィルムを得た。この多孔質フィルムの
水素のガス透過度を測定したところ、10-7cm3 /c
m2 ・sec・cmHg以下であった。
gからなる混合溶媒にジアミノジフェニルエーテル8.
0gを溶解し、30℃に保った。これにピロメリット酸
二無水物8.78gを一度に加え、1時間攪拌を続けた
ところ、均一な黄色の溶液が得られた。この溶液を減圧
下にて固形分濃度が15.1%となるまで濃縮を行っ
た。このときのポリアミド酸の固有粘度は0.9であっ
た。この溶液100.0gに15gの水を加えて、均一
な製膜溶液を調製した。得られた製膜溶液を、実施例3
と同様に、ガラス基板上に固定した均一な表面を持つ厚
さ35μmの銅箔上に40mm/secの速度で200
μmの厚さに均一に流延した。その後、室温で3分間、
60℃で1時間乾燥した後、窒素雰囲気下300℃で3
時間加熱し、イミド化した。得られたポリ(4,4’−
オキシジフェニレンピロメリットイミド)の多孔質フィ
ルムは黄色不透明であった。この銅/ポリ(4,4’−
オキシジフェニレンピロメリットイミド)多孔質フィル
ムの断面SEM像を観察したところ、ポリ(4,4’−
オキシジフェニレンピロメリットイミド)多孔質フィル
ムは、銅と膜の界面側約半分のみに長径4〜5μm、短
径約1μmの楕円状気孔が多数観測され、他半分は緻密
な均一層であった。得られたポリ(4,4’−オキシジ
フェニレンピロメリットイミド)多孔質フィルムの厚
さ、密度及び1MHzにおける誘電率を表2に示す。ポ
リ(4,4’−オキシジフェニレンピロメリットイミ
ド)多孔質フィルムの気孔率と1MHzにおける誘電率
の関係を実施例5〜8の結果と併せて図2に示す。
ェニレンピロメリットイミド)多孔質フィルムからエッ
チングにより銅を除去し、ポリ(4,4’−オキシジフ
ェニレンピロメリットイミド)の多孔質フィルムを作成
した。多孔質フィルムのガス透過度を測定したところ、
10-7cm3 /cm2 ・sec・cmHg以下であっ
た。
gからなる混合溶媒にジアミノジフェニルエーテル8.
0gを溶解し、30℃に保った。これにピロメリット酸
二無水物8.78gを一度に加え、1時間攪拌を続けた
ところ、均一な黄色の溶液が得られた。この溶液を減圧
下にて固形分濃度が15.1%となるまで濃縮を行っ
た。このときのポリアミド酸の固有粘度は0.9であっ
た。この溶液100.0gに3.0gのn−デカンを加
えて、均一な製膜溶液を調製した。得られた製膜溶液
を、実施例3と同様に、ガラス基板上固定した均一な表
面を持つ厚さ35μmの銅箔上に40mm/secの速
度で200μmの厚さに均一に流延した。その後、室温
で3分間、60℃で1時間乾燥した後、窒素雰囲気下3
00℃で3時間加熱し、イミド化した。得られたポリ
(4,4’−オキシジフェニレンピロメリットイミド)
の多孔質フィルムは黄色不透明であった。このポリイミ
ド多孔質フィルムの厚さは30μm、密度は1.00g
/cm2 、1MHzにおける誘電率は2.25であっ
た。この銅/ポリ(4,4’−オキシジフェニレンピロ
メリットイミド)多孔質フィルムからエッチングにより
銅を除去し、ポリ(4,4’−オキシジフェニレンピロ
メリットイミド)の多孔質フィルムを作成した。多孔質
フィルムのガス透過度を測定したところ、10-7cm3
/cm2 ・sec・cmHg以下であった。
gからなる混合溶媒にジアミノジフェニルエーテル4.
97gを溶解し、13℃に保った。これに3,3’,
4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物7.5
3gを一度に加え、20℃で3時間攪拌を続け、得られ
た溶液に12.5gの水を加えて均一な製膜溶液を調製
した。このときのポリアミド酸溶液の固有粘度は0.9
であった。得られた製膜溶液をオートマティック膜アプ
リケーター(安田精機社製)を用いて、ガラス基板上に
40mm/sの速度で300μmの厚さに均一に流延し
た。その後、25℃で20分間乾燥した後、ガラス面よ
り剥離し、80℃で2時間、続いて200℃で3時間加
熱しイミド化した。
に、ガラス基板上に固定した均一な表面を持つ厚さ35
μmの銅箔上に40mm/secの速度で300μmの
厚さに均一に流延した。その後、室温で3分間、60℃
で1時間乾燥した後、窒素雰囲気下200℃で3時間加
熱し、イミド化した。得られたポリ(4,4’−オキシ
ジフェニレン−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラ
カルボキシイミド)の多孔質フィルムは黄色不透明であ
り、厚さは23μm、密度は0.89g/cm3 、1M
Hzにおける誘電率は1.95であった。これらの銅/
ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−3,3’,4,
4’−ビフェニルテトラカルボキシイミド)の多孔質フ
ィルムからエッチングにより銅を除去し、得られた多孔
質フィルムのガス透過度を測定したところ、10-7cm
3 /cm2 ・sec・cmHg以下であった。
び単独ではこのポリイミド前駆体の貧溶媒から選ばれる
3種以上の混合溶媒からなるので、成形時や被覆時に溶
媒除去が容易であり、実質的に残留溶媒のないポリイミ
ドの多孔質フィルムが得られる。また、この溶液の貧溶
媒の組み合わせ、各成分の混合比を変えることにより気
孔率、気孔のサイズを変化させることができ、ガス透過
度のないものからガス透過度が高いものまでバラエティ
ーに富んだものが得られる。また、多孔質フィルムが密
度の異なる層で構成されているものを得ることができ
る。さらに、多孔質フィルム内の気孔率を調整すること
により、誘電率を調整することができて誘電率が低い多
孔質フィルムを得ることができる。
ジフェニレンピロメリットイミド)の多孔質フィルムの
水素ガス透過度と分離比の関係を示す図である。
リットイミド)の多孔質フィルムの気孔率に対する誘電
率の関係を示す図である。
Claims (15)
- 【請求項1】 ポリイミドの前駆体及び単独ではこの前
駆体の貧溶媒である貧溶媒のうちから選ばれる3種以上
の混合溶媒からなることを特徴とする製膜溶液。 - 【請求項2】 ポリイミドの前駆体がポリ(4,4’−
オキシジフェニレンピロメリットイミド)の前駆体であ
る請求項1記載の製膜溶液。 - 【請求項3】 ポリイミドの前駆体がポリ(4,4’−
オキシジフェニレン−3,3’,4,4’−ビフェニル
テトラカルボキシイミド)の前駆体である請求項1記載
の製膜溶液。 - 【請求項4】 混合溶媒が水溶性エーテル系化合物、水
溶性アルコール系化合物及び水である請求項1記載の製
膜溶液。 - 【請求項5】 混合溶媒が水溶性エーテル系化合物、水
溶性アルコール系化合物及び芳香族系炭化水素である請
求項1記載の製膜溶液。 - 【請求項6】 混合溶媒が水溶性エーテル系化合物、水
溶性アルコール系化合物及び脂肪族炭化水素である請求
項1記載の製膜溶液。 - 【請求項7】 混合溶媒がテトラヒドロフラン、メタノ
ール及び水である請求項4記載の製膜溶液。 - 【請求項8】 混合溶媒がテトラヒドロフラン、メタノ
ール及びトルエンである請求項5記載の製膜溶液。 - 【請求項9】 混合溶媒がテトラヒドロフラン、メタノ
ール及びデカンである請求項6記載の製膜溶液。 - 【請求項10】 請求項1記載の製膜溶液から、ポリイ
ミドの前駆体の多孔質フィルムを形成し、この多孔質フ
ィルムを構成しているポリイミド前駆体を閉環してなる
ポリイミドの多孔質フィルム。 - 【請求項11】 ガス透過度が0.1cm3 /cm2 ・
sec・cmHg以上である請求項10記載のポリイミ
ドの多孔質フィルム。 - 【請求項12】 誘電率が3.0未満である請求項10
記載のポリイミドの多孔質フィルム。 - 【請求項13】 多孔質フィルムが密度の異なる層で構
成されている請求項10記載のポリイミドの多孔質フィ
ルム。 - 【請求項14】 請求項10記載のポリイミドの多孔質
フィルムが基材上に形成されている被覆物。 - 【請求項15】 基材が銅である請求項14記載の被覆
物。
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