JP6395145B2 - ポリイミド−シリカ複合多孔体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
多孔質ポリイミドの製造技術として、例えば、特許文献1には、ポリイミド樹脂前駆体と分散性化合物とを含有し、これらがミクロ相分離構造を有するポリイミド樹脂前駆体膜を用い、この膜から超臨界二酸化炭素により分散性化合物を抽出除去することによって、多孔質ポリイミド膜を得ることが開示されている。
また、特許文献2には、ポリイミド樹脂前駆体と光硬化性樹脂前駆体とを含有する溶液から膜を形成し、溶媒の一部を除去したのち、高圧二酸化炭素雰囲気下で、光を照射することで光硬化性樹脂前駆体を硬化させ、その後、溶媒成分を蒸発させ、また光硬化性樹脂を加熱により気化させることによって、多孔質ポリイミド膜を得ることが開示されている。
しかしながら、このようにして得られた多孔質ポリイミド膜は、空隙率が増加するにつれて、破壊強度などの機械的強度が低下することが問題となっている。
しかしながら、この多孔質ポリイミドは、加工成形時または使用時の熱処理温度がポリイミド樹脂のガラス転移温度以上になる場合、空孔が閉塞してしまい、安定した電気特性(低誘電性)が得られないという問題がある。
このようにして得られたポリイミド−シリカハイブリッド膜は、シリカを含有しない通常のポリイミド膜に比べ、電気特性(低誘電性)、機械的強度や耐熱性が相対的に向上するが、その電気特性(低誘電性)は、多孔質ポリイミドには及ばないものであった。
そこで、特許文献4には、ポリイミド−シリカハイブリッドフィルムに6.0MPaの炭酸ガスを導入し、48時間放置して炭酸ガスを含浸させたのち、加熱および減圧を行うことで発泡させることが開示されている。しかしこの方法で得られるポリイミド−シリカハイブリッド発泡体フィルムは、発泡倍率が15%程度であり、高い空隙率を有するものではなく、電気特性(低誘電性)は、発泡していないポリイミド−シリカハイブリッド膜よりもやや向上するものの、やはり、高い空隙率を有する多孔質ポリイミドには及ばないものであった。
しかしながら、特許文献1〜3に記載されたポリイミド樹脂前駆体溶液にシリカ粒子を含有させる際に、特性向上を目指して、シリカ粒子として平均粒径がナノメーターサイズの球状シリカ粒子を用いると、ポリイミド樹脂前駆体溶液中でシリカ粒子は凝集して均一に分散せずまたポリイミド樹脂前駆体溶液の粘度が著しく上昇するので、塗布により膜などの成形体に成形することは困難であった。
また、ポリイミド樹脂前駆体とシリコンアルコキシドとを混合後に熱処理をして、イミド化とゾルゲル反応を同時に進行させても、得られるシリカ粒子の平均粒径はミクロンサイズと大きく、ポリイミド多孔体の特性を向上させる効果は不充分であった。
このように平均粒径が小さい球状シリカ粒子を含有することによって機械的強度などの特性を向上させた多孔質ポリイミドは得ることができないものであった。
一方、本発明の発明者は、ポリエステル系樹脂とシリコンアルコキシドと二酸化炭素との高圧均一混合物から、発泡構造内に球状シリカ粒子を生成させた、多孔質ポリエステルを形成することが可能であることを見出し、先に特許出願した(特許文献5)。
(1)平均孔径が11.1〜200μmのマクロ孔と平均孔径が200nmを超え500nm以下のメソ孔とを有する多孔質ポリイミドに、平均粒径が10nm以下のシリカ粒子が分散してなり、シリカ成分を0.1〜50質量%含むことを特徴とするポリイミド−シリカ複合多孔体。
(2)空隙率が15〜99%であることを特徴とする(1)に記載のポリイミド−シリカ複合多孔体。
(3)上記(1)に記載のポリイミド−シリカ複合多孔体を製造するための方法であって、単独ではポリイミド樹脂前駆体の貧溶媒であるテトラヒドロフランとメタノールとからなる、ポリイミド樹脂前駆体の良溶媒である混合溶媒と、ポリイミド樹脂前駆体と、シリコンアルコキシドまたはその誘導体とを含む混合溶液に、二酸化炭素を溶解させた後、シリコンアルコキシドの加水分解によるゾルゲル反応をおこない、その後、混合溶液の溶媒および二酸化炭素を除去することにより、ポリイミド樹脂前駆体内に空孔を形成し、次いでポリイミド樹脂前駆体をイミド化することを特徴とするポリイミド−シリカ複合多孔体の製造方法。
(4)ポリイミド樹脂前駆体内に空孔を形成した後、ポリイミド樹脂前駆体をイミド化する前に、ポリイミド樹脂前駆体にアンモニア水蒸気を吸収させることにより、ポリイミド樹脂前駆体内に含まれるシリコンアルコキシドおよびシリカ中に含まれるアルコキシド成分のさらなる加水分解、ゾルゲル反応を促進する工程を設けることを特徴とする(3)に記載のポリイミド−シリカ複合多孔体の製造方法。
(5)上記(1)または(2)に記載のポリイミド−シリカ複合多孔体を用いてなる低誘電率絶縁材料。
(6)上記(1)または(2)に記載のポリイミド−シリカ複合多孔体を用いてなる耐熱性断熱材料。
本発明のポリイミド−シリカ複合多孔体は、平均孔径が0.51〜200μmのマクロ孔と平均孔径が200nmを超え500nm以下のメソ孔とを有する多孔質ポリイミドに、平均粒径が10nm以下のシリカ粒子が分散してなり、シリカ成分を0.1〜50質量%含むものである。
本発明において、多孔質ポリイミドを構成するポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とがイミド結合した重合体である。本発明においては、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させて得られるポリイミド樹脂前駆体(ポリアミック酸)をイミド化することによって得られるポリイミド樹脂であることが好ましい。
本発明において、多孔質ポリイミドの上記マクロ孔とメソ孔の空隙容量の合計に対する上記マクロ孔の空隙容量の容量比率は20容量%以上であることが好ましく、40容量%以上であることがより好ましく、60容量%以上であることがさらに好ましい。前記マクロ孔の容量比率を20容量%以上とすることにより、高い空隙率を有し、かつ、機械的強度の低下を抑制することができる。
なお、本発明においては、孔径が0.51μm以上の細孔をマクロ孔と定義し、孔径が0.1〜500nmの細孔をメソ孔と定義する。よって、IUPACによる提唱に従って定義されるもの、すなわち、直径が50nm以上の細孔をマクロ細孔、直径が2〜50nmの範囲にある細孔をメソ細孔と指称するものとは異なる。
すなわち、ポリイミド樹脂前駆体とシリコンアルコキシドまたはその誘導体を含む混合溶液に、二酸化炭素を溶解させた後、シリコンアルコキシドの加水分解によるゾルゲル反応をおこない、その後、混合溶液の溶媒および二酸化炭素を除去することにより、ポリイミド樹脂前駆体内に空孔を形成し、次いでポリイミド樹脂前駆体をイミド化することによってポリイミド−シリカ複合多孔体を製造することができる。
工程(i)において用いられるポリイミド樹脂前駆体は、イミド化によってポリイミド樹脂となり得るポリイミド樹脂の前駆体およびその複合物を含むものであり、特に制限されることなく、公知のものを用いることができ、例えば、ポリアミック酸溶液が用いられる。ポリアミック酸溶液は、上記テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを、下記溶媒中反応させることによって製造することができる。
なお、本発明においては、25℃におけるポリイミド樹脂前駆体に対する溶解性が1g/100mL以下である溶媒を貧溶媒と定義し、溶解性が1g/100mLを超える溶媒を良溶媒と定義する。
本発明において、貧溶媒として、水溶性エーテル系化合物、水溶性アルコール系化合物等が挙げられ、混合溶媒として、これらを混合することによって良溶媒となるものを使用する。
水溶性エーテル系化合物としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、トリオキサン、1,2−ジメトキエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられ、その中でもTHFが好ましい。
また、水溶性アルコール系化合物としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられ、その中でもメタノールが好ましい。
また、重合性不飽和結合を有するアミン、ジアミン、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸の誘導体を添加して、熱硬化時に橋かけ構造を形成させることができる。ポリイミド樹脂前駆体の合成条件、乾燥条件、その他の理由等により、ポリイミド樹脂前駆体中に部分的にイミド化されたものが存在していても特に支障はない。
本発明において、シリコンアルコキシドは任意のものを使用することができ、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n―プロピルトリメトキシシラン、n―プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエチルシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等、およびこれら化合物のアルキル置換体等の化合物が挙げられる。このような化合物の一種又は二種以上が適宜に選択されて、用いられることとなる。また、シリコンアルコキシドの誘導体としては、例えば、テトラメトキシシランオリゴマーを挙げることができる。
二酸化炭素と溶媒成分が、均一相を形成することで、溶媒成分の極性が遮蔽されるため、溶媒成分からポリイミド樹脂前駆体および混合溶液中の水が相分離する。その結果、混合溶液内の溶媒および溶質は、図1(b)に示すように、二酸化炭素を含む溶媒成分の液滴3、ポリイミド樹脂前駆体2に分離した状態となる。ただし、溶媒成分はすべて液滴となるわけではなく、液滴とならないものはポリイミド樹脂前駆体内4に存在している。また、水は水素結合を介して、ポリイミド樹脂前駆体2の近傍に存在しているものと推測される。
混合溶液1に二酸化炭素を溶解させる方法としては、混合溶液1を加圧二酸化炭素雰囲気下に保持する方法が挙げられる。二酸化炭素の圧力は、3MPa以上であることが好ましい。
工程(ii)において、二酸化炭素を含む液滴が生成したままの状態で、長時間保持することにより、工程(iii)では、ポリイミド樹脂前駆体内4でシリコンアルコキシドの加水分解およびゾルゲル反応が進行し、ポリイミド樹脂前駆体内4に、図1(c)に示すように、シリカ粒子5が析出する。二酸化炭素を含む液滴が生成したままの状態を保持する時間、すなわち、混合溶液1を加圧二酸化炭素雰囲気下に保持する時間としては、0.5〜32時間であることが好ましく、1〜18時間であることがより好ましい。
二酸化炭素の加圧を止めることにより、液滴3およびポリイミド樹脂前駆体内4の二酸化炭素をシリカ粒子5およびポリイミド樹脂前駆体2の隙間から放出させることにより、図1(d)に示すように、液滴3が存在していた所にマクロ孔6が形成される。一方で、ポリイミド樹脂前駆体内4で溶媒成分および二酸化炭素が存在していた箇所には、図1(d)に示すように、メソ孔7が形成する。
加熱イミド化することで、ポリイミド樹脂前駆体内4に含まれる揮発性成分を気化させると同時に、ポリイミド樹脂前駆体2のイミド化の進行に伴い生成する縮合水により、シリカ粒子5のさらなる加水分解およびゾルゲル反応を促し構造を安定化させる。
このようにして、本発明のポリイミド−シリカ複合多孔体を得ることができる。
すなわち、上記製造方法において、ポリイミド樹脂前駆体とシリコンアルコキシドまたはその誘導体を含む混合溶液を二酸化炭素により加圧後、液滴3およびポリイミド前駆体内4に存在する溶媒成分を二酸化炭素に置換した後、溶媒および二酸化炭素を除去することによって、平均孔径が0.51〜200μmであるマクロ孔および平均孔径が200nmを超え500nm以下であるメソ孔を形成することができ、同時に、これら二種類の孔を有することでポリイミド−シリカ複合多孔体の空隙率を、15〜99%とすることができる。また、ポリイミド前駆体とシリコンアルコキシドまたはその誘導体を含む混合溶液を二酸化炭素により加圧した状態において、ポリイミド樹脂前駆体内4で、シリカ粒子5を生成することによって、その平均粒径を10nm以下とすることができる。
また、同様の理由から、一度液滴が形成されると、ポリイミド樹脂前駆体は混合溶媒に再溶解しにくくなるため、多孔構造を形成した際に、孔の凝集を抑制できる効果が得られる。とりわけその作用は、メソ孔の形成に関して効果的であり、それにより、空隙率の高いポリイミド樹脂前駆体を得ることができる。
さらに、この混合溶媒は、ポリイミド樹脂前駆体と溶媒和しにくいため、二酸化炭素を溶解させた際に、気相または超臨界相に拡散しやすい。そのため、セル同士の合一を抑制する効果が期待でき、それによりセル径の小さい多孔構造を得ることができる。
本発明のポリイミド−シリカ複合多孔体は、同様の理由から、耐熱性断熱材料として利用することもでき、航空機や車両部材等の耐熱性が要求される部位の断熱材をはじめ、防振材、吸音材、保温材、緩衝材、摺動材などの好適に用いることができる。
また、本発明のポリイミド−シリカ複合多孔体は、メソ孔を利用することにより、エアフィルター、触媒担体、燃料電池用膜材、カラム充填材としても好適に用いることができる。
ポリイミド−シリカ複合多孔体について、イオンミリングにより断面出しを行い、蒸着操作を行わずに、日立テクノロジーズ社製電解放射型走査電子顕微鏡SEM−8020を用い、加速電圧0.8〜3.0kVにて観察を行ない、図3の電子顕微鏡写真を撮影した。
また、ポリイミド−シリカ複合多孔体について、ミクロトームを用いて切り出した断面に対して、白金蒸着を行い、日立ハイテク社製電解放射型走査電子顕微鏡S−800を用い、加速電圧10kVにて観察を行ない、図2の電子顕微鏡写真を撮影した。
電子顕微鏡SEM−8020を用いて得られた40000〜150000倍の電子顕微鏡写真において、観測されるシリカ粒子をランダムに10個選択し、それぞれのシリカ粒子について、各粒子内に引くことができる最長の直線の長さを測定し、10個の平均値を、シリカ粒子の平均粒径とした。ランダムに選択した10個の球状シリカ粒子の粒径が、すべて10nm以下であった場合、もしくは、電子顕微鏡写真においてシリカ粒子が観察できなかった場合、シリカ粒子の平均粒径を「≦10」と表記した。
ポリイミド−シリカ複合多孔体5mgを白金パンに採り、Rigaku社製 Thermo plus EVOIIシリーズ TG−DTAスマートローダを用いて、空気雰囲気下で30℃から800℃まで10℃/分で昇温し、800℃での残存質量の割合をポリイミド−シリカ複合多孔体中に含まれるシリカ含有量とした。
ポリイミド−シリカ複合多孔体から試料を切り出し、試料の面積、厚み、質量を測定し、得られた値から多孔体の密度(ρs)を算出した。
上記(4)で求めたポリイミド−シリカ複合多孔体の密度(ρs)と、公知のデータから求めた前記ポリイミド−シリカ複合多孔体と同じ含有量のシリカ成分を含有するポリイミドシートの密度(ρc)とを用いて、下記の計算式を用いて空隙率を算出した。
空隙率(P)=[1−ρs/ρc]×100
メソ孔の平均孔径については、40000〜150000倍の電子顕微鏡写真中に観測される空孔をランダムに10個選択し、それぞれの空孔について、各空孔内に引くことができる最長の直線の長さをその空孔の孔径とし、10個の平均値を平均孔径とした。
マクロ孔の平均孔径については、100〜2000倍の電子顕微鏡写真中に観測される空孔をランダムに10個選択し、それぞれの空孔について、各空孔内に引くことができる最長の直線の長さをその空孔の孔径とし、10個の平均値を平均孔径とした。
試料5mgをアルミナパンに採り、島津製作所社製示差走査熱量計(DSC−60)を用いて、窒素雰囲気下で30℃から550℃まで20℃/分で昇温し、ガラス転移温度を測定した。ガラス転移温度が観測されない場合、「不検出」と表記した。
得られたポリイミド−シリカ複合多孔体について、Agilent社製LCRメーター(4284A)を用いて、1MHzにおける誘電率を、非接触法により測定した。
得られたポリイミド−シリカ複合多孔体について、英弘精機社製熱伝導率測定装置(HC-74/200VACUUM)を用いて、大気圧下、25℃付近の条件で、熱伝導率を測定した。
得られたポリイミド−シリカ複合多孔体について、33.0mm×5.0mmの長方形に切り出したものを試料とし、各試料について厚みの測定を行なった。
引張試験は、Instron社製2710−102装置を使用し、解析には、Bluehill Lite Softwareを使用し、2.0mm/分の条件で行なった。試験は六連で行い、計測値を試料の厚みで補正することにより、それぞれの引張弾性率(GPa)、引張強度(MPa)、破断強度(MPa)、および伸び(%)を算出したのち、それらの平均値を求めた。
厚みが0.5mm以下のポリイミド−シリカ複合多孔体膜を作製し、60.0mm(長辺)×5.0mm(短辺)の長方形に切り出したものを試料とし、その短辺同士が接するようにつまみ合わせて10秒間保持した際に、裂け目やひび割れが目視により確認されなかった試料に関して、曲げを「可」と評価した。
テトラカルボン酸成分としてピロメリット酸二無水物(PMDA)を、ジアミン成分として4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を(PMDAとODAの合計が1.5質量部)、重合溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)とメタノールの混合溶媒(THF/メタノール=4/1(質量比))8.5質量部を用い、ポリイミド樹脂前駆体溶液を作製した。得られたポリイミド樹脂前駆体溶液の粘度は4.4(Pa・s/22℃)であった。
ポリイミド樹脂前駆体溶液10.0質量部にテトラメトキシシラン(TMOS)1.5質量部を溶解し、常温で30分間攪拌したのち、得られた均一混合溶液のうち、4.5gをガラスシャーレに移し、内容積470mLの高圧容器に導入した。
高圧容器をヒーターにて40℃に加熱、保温し、容器内の圧力が15MPaになるまで二酸化炭素を導入し、加圧二酸化炭素雰囲気下で16時間保持した。その後、二酸化炭素を高圧容器外に放出することで、15MPaから8MPaまで急減圧し、ついで、8MPaから0.2MPaまで、0.4MPa/分の速度で減圧を行なった。
試料を密閉容器から取り出し、マッフル炉中、窒素雰囲気下にて、室温から130分かけて350℃まで昇温させ、さらに350℃で80分加熱してイミド化処理を行い、ポリイミド−シリカ複合多孔体を得た。
ピロメリット酸二無水物と4,4′−ジアミノジフェニルエーテルの合計を2.0質量部、重合溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)8.0質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、ポリイミド樹脂前駆体溶液を作製し、次いでポリイミド−シリカ複合多孔体を得た。なおポリイミド樹脂前駆体溶液の粘度は5.9(Pa・s/30℃)であった。
一方、ポリイミド前駆体溶液を構成する溶媒として、2種以上の貧溶媒からなる混合溶媒を使用しなかった比較例では、得られた多孔体は、メソ孔の平均孔径が200nm以下であり、またシリカ粒子の平均粒径が10nmを超えるものであった。
2 ポリイミド樹脂前駆体
3 液滴
4 ポリイミド樹脂前駆体内
5 シリカ粒子
6 マクロ孔
7 メソ孔
Claims (6)
- 平均孔径が11.1〜200μmのマクロ孔と平均孔径が200nmを超え500nm以下のメソ孔とを有する多孔質ポリイミドに、平均粒径が10nm以下のシリカ粒子が分散してなり、シリカ成分を0.1〜50質量%含むことを特徴とするポリイミド−シリカ複合多孔体。
- 空隙率が15〜99%であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド−シリカ複合多孔体。
- 請求項1に記載のポリイミド−シリカ複合多孔体を製造するための方法であって、単独ではポリイミド樹脂前駆体の貧溶媒であるテトラヒドロフランとメタノールとからなる、ポリイミド樹脂前駆体の良溶媒である混合溶媒と、ポリイミド樹脂前駆体と、シリコンアルコキシドまたはその誘導体とを含む混合溶液に、二酸化炭素を溶解させた後、シリコンアルコキシドの加水分解によるゾルゲル反応をおこない、その後、混合溶液の溶媒および二酸化炭素を除去することにより、ポリイミド樹脂前駆体内に空孔を形成し、次いでポリイミド樹脂前駆体をイミド化することを特徴とするポリイミド−シリカ複合多孔体の製造方法。
- ポリイミド樹脂前駆体内に空孔を形成した後、ポリイミド樹脂前駆体をイミド化する前に、ポリイミド樹脂前駆体にアンモニア水蒸気を吸収させることにより、ポリイミド樹脂前駆体内に含まれるシリコンアルコキシドおよびシリカ中に含まれるアルコキシド成分のさらなる加水分解、ゾルゲル反応を促進する工程を設けることを特徴とする請求項3に記載のポリイミド−シリカ複合多孔体の製造方法。
- 請求項1または2に記載のポリイミド−シリカ複合多孔体を用いてなる低誘電率絶縁材料。
- 請求項1または2に記載のポリイミド−シリカ複合多孔体を用いてなる耐熱性断熱材料。
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