JPH0794546B2 - 芳香族ポリカーボネートの製造方法及びそれによって得られた結晶性芳香族ポリカーボネート粉体 - Google Patents

芳香族ポリカーボネートの製造方法及びそれによって得られた結晶性芳香族ポリカーボネート粉体

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JPH0794546B2
JPH0794546B2 JP63240785A JP24078588A JPH0794546B2 JP H0794546 B2 JPH0794546 B2 JP H0794546B2 JP 63240785 A JP63240785 A JP 63240785A JP 24078588 A JP24078588 A JP 24078588A JP H0794546 B2 JPH0794546 B2 JP H0794546B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は芳香族ポリカーボネートの製造方法の改良及び
それによって得られた結晶性芳香族ポリカーボネート粉
体に関するものである。さらに詳しくいえば、本発明
は、ジヒドロキシジアリール化合物とジアリールカーボ
ネートとから、物性上優れた高分子量の芳香族ポリカー
ボネートを効率よく製造するための工業的に実施するの
に適した方法、及びそれによって得られた結晶性芳香族
ポリカーボネート粉体に関するものである。
従来の技術 近年、芳香族ポリカーボネートは、耐熱性、耐衝撃性、
透明性などに優れたエンジニアリングプラスチックスと
して、多くの分野において幅広く用いられている。この
芳香族ポリカーボネートの製造方法については、従来種
々の研究が行われ、その中で、芳香族ジヒドロキシ化合
物、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロ
パン(以下、ビスフェノールAという)とホスゲンとの
界面重縮合法が工業化されている。
しかしながら、このホスゲンを用いる界面重縮合法にお
いては、有毒なホスゲンを用いなければならないこと、
副生する塩化水素や塩化ナトリウムなどの含塩素化合物
により装置が腐食すること、樹脂中に混入する塩化ナト
リウムなどのポリマー物性に悪影響を及ぼす不純物の分
離が困難なことなどの問題があり、さらには、反応溶媒
として通常用いられている塩化メチレンは、ポリカーボ
ネートの良溶媒であって、親和性が極めて高いために、
生成したポリカーボネート中に、該塩化メチレンが残存
するのを免れず、その結果成形時の加熱などによって、
該残存塩化メチレンが分解して塩化水素を発生し、成形
機の腐食やポリマーの品質低下をもたらすおそれがあ
る。この残存塩化メチレン量を低下させることを工業的
に実施するには多大の費用を要し、しかも該残存塩化メ
チレンを完全に除去することは不可能に近い。
このように、ホスゲン法においては、工業的に実施する
場合、多くの問題を伴っている。
一方、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネ
ートとから、芳香族ポリカーボネートを製造する方法
も、以前から知られており、例えばビスフェノールAと
ジフェニルカーボネートとの溶融状態におけるエステル
交換反応によってフェノールを脱離してポリカーボネー
トを製造する方法が、いわゆるエステル交換法あるいは
別名溶融法として、工業化されていた。しかしながら、
この方法においては、高粘度のポリカーボネートの溶融
体の中から、フェノール及び最終的にはジフェニルカー
ボネートを留去していかなければ重合度が上がらないこ
とから、通常280〜310℃の高温下で、かつ1mmHg以下の
高真空下で長時間反応させる必要があり、したがって、
(1)高温高真空下に適した特殊な装置と、生成物の高
粘性による強力なかきまぜ装置を必要とすること、
(2)生成物の高粘性のために、プラスチック工業界で
通常使用されている反応機及びかきまぜ形式のもので
は、重量平均分子量が30,000程度の重合体しか得られな
いこと、(3)高温で反応させるため、副反応によって
分枝や架橋が起こりやすく、品質の良好なポリマーが得
にくいこと、(4)高温での長時間滞留によって着色を
免れないことなどの種々の欠点を有している〔松金幹夫
他、プラスチック材料講座〔5〕「ポリカーボネート樹
脂」日刊工業新聞社刊行(昭和44年)、第62〜67ページ
参照〕。
さらには、この溶融法によって得られたポリカーボネー
トは、構造的にみてヒドロキシル末端基(−OH基)が多
く含まれていること、分子量分布が広いこと、分枝構造
が多いことなどが知られており、そのためにホスゲン法
で製造されたポリカーボネートに比べて、例えば強度的
にやや劣ること、特にゼイ性破壊法が大きいこと、流動
挙動が非ニュートン性であることなど、物性面で劣るこ
とが指摘されている〔「高分子」第27巻、第521ページ
(1978年)参照〕。殊に、ポリマー末端基としてヒドロ
キシル基を多く含有していることは、該溶融法で得られ
たポリカーボネートが、耐熱性や耐熱水性などのエンジ
ニアリングプラスチックとしての基本的物性に劣ってい
ることを意味している。
ところで、縮合系ポリマーとして最も一般的なポリヘキ
サメチレンアジパミド(ナイロン66)やポリエチレテレ
フタレート(PET)などは、プラスチックや繊維として
十分な機械的特性を有する分子量まで、通常、溶融重合
法によって重合が行われているが、このようにして製造
された高分子量のポリマーを、減圧下又は乾燥窒素など
の流通下に、固相状態を保持しうる温度に加熱すること
によって、固相重合を行い、さらに重合度を高めること
が可能であることは、すでに知られている。この固相重
合においては、固体ポリマー中で、末端カルボキシル基
が近くに存在する末端アミノ基又は末端ヒドロキシル基
と反応して、脱水縮合が進行しているものと思われる。
またポリエチレンテレフタレートの場合には脱エチレン
グリコールによる縮合反応も一部併発している。
このように、ナイロン66やポリエチレンテレフタレート
が固相重合によって高重合度化が可能であるのは、これ
らのポリマーが高い融点(それぞれ265℃及び260℃)を
有する元来結晶性のポリマーであり、固相重合が進行す
る温度(例えば230〜250℃)で十分に固相状態を保持し
うるからである。さらに重要なことは、脱離すべき化合
物が、水やエチレングリコールのように分子量が小さく
て、沸点の比較的低い物質であって、それらが固体のポ
リマー中を容易に移動し、気体として系外に除去されう
るからである。
一方、芳香族のエステル結合とカーボネート結合とを合
わせもつ高融点の芳香族ポリエステルカーボネートを溶
融重合後、固相重合を行うことによって製造する方法も
提案されている。この方法は、ナフタレンジカルボン
酸、p−ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸などの芳香
族ジカルボン酸や芳香族ヒドロキシカルボン酸を、ジヒ
ドロキシ芳香族化合物及びジアリールカーボネートとを
溶融状態で反応させることによって得られたプレポリマ
ーを結晶化させたのち、固相重合を行うものである(た
だし、p−ヒドロキシ安息香酸を用いる場合は、溶融重
合である程度重合度があがれば、もはや溶融状態を保ち
えないで固体状となり、このものは高融点の高結晶性プ
レポリマーであるので、さらに結晶化させる必要がな
い)(特開昭48−22593号公報、特開昭49−31796号公
報、米国特許第4,107,143号明細書、特開昭55−98224号
公報)。しかしながら、これらの方法はエステル結合を
30%以上、通常は約50%以上含む芳香族ポリエステルカ
ーボネートを製造する場合に適用できる方法であって、
エステル結合が30%より少ない場合には、固相重合時、
プレポリマーの溶融が起こり、固相重合が不可能であっ
たことも知られている(特開昭55−98224号公報)。
一方、このようなエステル結合が、芳香族ポリエステル
カーボネートを製造する際のカーボネート結合生成の反
応を促進する効果を奏していることも知られている(特
公昭52−36797号公報)。この特公昭52−36797号公報に
よれば、溶融重縮合法で、エステル結合を含む高分子量
の芳香族ポリカーボネートを製造する場合に、低重合度
の芳香族ポリカーボネートの分子鎖中にあらかじめエス
テル結合を導入しておくことにより溶融重縮合反応が著
しく促進されることが明らかにされている。当然のこと
ながら、固相重合においても、エステル結合のこのよう
な重縮合反応促進効果があるものと推定される。したが
って、高融点をもつ元来結晶性の芳香族ポリエステルカ
ーボネートや、若干の結晶化操作により容易に高融点の
結晶性ポリマーとなりうる芳香族ポリエステルカーボネ
ートを固相重合によって、より高重合度化させること
は、比較的容易なことである。
しかしながら、エステル結合を全く含まない高分子量の
芳香族ポリカーボネートを溶融重合後、固相重合を行う
ことにより製造しようとする試みは、280℃以上の高融
点を有する高結晶性の特殊なポリカーボネートを固相重
合によって得ようとする例(特開昭52−109591号公報、
実施例3)を除いて、ほとんど知られていなかった。特
開昭52−109591号の方法は、ヒドロキノン約70モル%、
ビスフェノールA約30モル%から成る芳香族ジヒドロキ
シ化合物とジフェニルカーボネートとの溶融重合を280
℃の温度において、0.5mmHgの高真空下で行い、固化し
た融点280℃以上のプレポリマーを温度280℃、真空度0.
5mmHg、反応時間4時間の条件で固相重合させるもので
ある。
しかしながら、ビスフェノールAのようなジヒドロキシ
ジアリールアルカンを主成分とする実質的に非晶性のポ
リマーである芳香族ポリカーボネートを比較的低分子量
のプレポリマーの固相重合によって製造しようとする試
みは全くなされていなかった。例えば、芳香族ポリカー
ボネートを製造する最も一般的な方法である、酸結合剤
を用いるホスゲン法においては、脱離すべきものが、通
常塩化ナトリウムのように無溶媒では固体であって、こ
れが固体のポリマー中を移動して系外に抜け出ることは
極めて困難であり、したがってこの方法を固相で実施す
ることは本質的に不可能である。
また、最も一般的な芳香族ポリカーボネートであるビス
フェノールAのポリカーボネートを、ビスフェノールA
とジフェニルカーボネートとのエステル交換反応によっ
て製造する方法においても、すべて高温、高真空下での
溶融重合法が検討されており、本発明のようにプレポリ
マーの固相重合による高重合化については、全く検討さ
れていなかった。このことは、ビスフェノールAのポリ
カーボネートが、ガラス転移温度(Tg)149〜150℃の非
晶性のポリマーであるため、固相重合を行うことが不可
能であると考えられていたことによる。すなわち、一般
的に固相重合を可能にするには、ガラス転移温度以上の
温度で、そのポリマーが融着などを起こさないで固相状
態を保持しうることが必要であるが、非晶性の該ポリカ
ーボネートの場合、150℃以上の温度では融着などが起
こり、そのままでは固相重合が実質的に不可能であった
ためである。
発明が解決しようとする課題 本発明は、このような従来のホスゲン法や溶融法による
ポリカーボネートの製造方法が有している種々の欠点を
克服し、塩素化合物のような不純物を実質的に含まず、
かつ末端ヒドロキシル基の少ない優れた品質の高分子量
ポリカーボネートを効率よく製造する方法、及びそれに
よって得られた結晶性芳香族ポリカーボネート粉体を提
供することを目的としてなされたものである。
課題を解決するための手段 本発明者らは、エステル交換反応を利用する芳香族ポリ
カーボネートの製造方法について鋭意研究を重ねた結
果、一般式 HO−Ar1−Y−Ar2−OH …(I) (式中のAr1及びAr2は、それぞれアリーレン基、Yはア
ルキレン又は置換アルキレン基である) で表わされるジヒドロキシジアリールアルカン85モル%
以上及び該アルカン以外のジヒドロキシジアリール化合
物15モル%以下から成るジヒドロキシジアリール化合物
とジアリールカーボネートとを予備重合させて得られる
実質的に非晶性の比較的低分子量のプレポリマーが容易
に結晶化しうることに着目し、この結晶化プレポリマー
を結晶融点以下の所定の温度に加熱することによって固
相重合させうること、そしてその際にプレポリマーの分
子量、末端基の割合、結晶化プレポリマーの結晶化度を
所定の範囲にすることによって、前記目的を容易に達成
しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成
するに至った。
すなわち、本発明は、一般式 HO−Ar1−Y−Ar2−OH …(I) (式中のAr1及びAr2は、それぞれアリーレン基すなわち
二価の芳香族炭化水素基、Yはアルキレン基又は置換ア
ルキレン基すなわち、メチレン基、ポリメチレン基ある
いはそれらの水素の1個又は2個以上が置換されている
基である) で表わされるジヒドロキシジアリールアルカン85モル%
以上及び該アルカン以外のジヒドロキシジアリール化合
物15モル%以下から成るジヒドロキシジアリール化合物
とジアリールカーボネートとを反応させて芳香族ポリカ
ーボネートを製造するに当り、 (a) 該ジヒドロキシジアリール化合物と、該ジアリ
ールカーボネートとを加熱下に予備重合させて、重量平
均分子量(Mw)が2,000〜20,000の範囲にあり、かつ全
末端基中に占めるアリールカーボネート基末端の割合が
50モル%より多いプレポリマーを調製する予備重合工
程、 (b) 該プレポリマーを結晶化させて、結晶化度が5
〜55%の範囲にある結晶化プレポリマーを調製する結晶
化工程、及び (c) 該結晶化プレポリマーを、製造すべき芳香族ポ
リカーボネートのガラス転移温度以上で、かつ該結晶化
プレポリマーが固相状態を保持しうる範囲の温度に加熱
することによって、さらに重合度を上げるための固相重
合工程 を順次行うことを特徴とする芳香族ポリカーボネートの
製造方法、及び繰返し単位が一般式 〔式中のAr1及びAr2は、それぞれアリーレン基、Yはア
ルキレン基又は置換アルキレン基であり、Zは単なる結
合、又は−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−CO2−、
−CON(R1)−(R1は水素原子、低級アルキル基、シク
ロアルキル基、アリール基、アラルキル基であって、場
合によりハロゲン原子又はアルコキシ基で置換されてい
てもよい)であり、m、nはそれぞれ次式: m+n=1、0.85≦m≦1 を満足する1以下の数である〕 で表わされ、重量平均分子量(Mw)が10,000〜200,000
で、かつヒドロキシル基末端の含有量が、ポリマーに対
して0.01重量%以下である結晶性芳香族ポリカーボネー
ト粉体を提供するものである。
本発明の製造方法の好適な実施態様としては、特に (1) 予備重合を無触媒で行うこと、 (2) 固相重合を無触媒で行うこと、 (3) 予備重合及び固相重合ともに、無触媒で行うこ
と、 (4) 予備重合を溶融状態で行うこと、 (5) プレポリマーの全末端基中に占めるアリールカ
ーボネート基末端の割合(x%)とプレポリマーの重合
平均分子量(Mw)とが、式 50<x≦100 (ただし、2,000≦Mw≦5,000の場合) 又は 0.002Mw+40≦x≦100 (ただし、5,000≦Mw<20,000の場合) を満たす関係にあること、 (6) 結晶化プレポリマーの結晶化度が10〜45%の範
囲にあること、 (7) プレポリマーの結晶化が、その溶媒処理によっ
て行われること、 (8) 前記プレポリマーの溶媒処理がプレポリマーを
溶媒に溶解し、次いでこの溶液から該溶媒を除去する方
法によって行われること、 (9) 前記プレポリマーの溶媒処理が、プレポリマー
に対する溶解力の小さな溶媒を用いて、該溶媒がプレポ
リマー中に浸透して、プレポリマーを結晶化させるのに
必要な時間、該プレポリマーを液状の溶媒又は溶媒蒸気
に接触させる方法によって行われること、 (10) プレポリマーの結晶化が、プレポリマーを加熱
下に結晶化させることによって行われること、 (11) ジヒドロキシジアリールアルカンが2,2−ビス
(4−ヒドロキシフェニル)プロパンであること、 (12) ジアリールカーボネートがジフェニルカーボネ
ートであること などを挙げることができる。
また、前記本発明の結晶性芳香族ポリカーボネート粉体
は、特に塩素原子を含まないジヒドロキシジアリール化
合物とジアリールカーボネートを原料とし、かつプレポ
リマーの結晶化を非塩素系溶媒を用いて行うことによ
り、得られた実質的に塩素原子を含まないものが望まし
い。
本発明は、このように実質的に非晶性のプレポリマーで
あっても、結晶化工程を実施することによって、このプ
レポリマーの固相重合を可能にしたものである。
一般式に、プレポリマーの重合度を固相で高めるための
固相重合が可能になるためには、重合が進行する温度
で、プレポリマーが溶融したり、融着しないことが必要
である上に、しかも、固相重合は固相中での物質の移動
及び反応を起こす必要があるが、一般的に固相重合反応
速度はそれほど大きくないので、反応温度をできるだけ
上げて反応速度を速くする必要があり、そのためにもプ
レポリマーの溶融温度を高くする必要がある。本発明
は、このような固相重合を可能にするための問題を、本
発明の結晶化工程を実施することによって解決したもの
である。
従来の溶融法によるエステル交換法においては、高粘度
の溶融液から、フェノールやジフェニルカーボネートを
脱離させるために、最終的には300℃以上の高温で0.1mm
Hg以下の高真空にする必要があるのに対し、300℃より
もはるかに低い温度で固相状態の結晶化プレポリマーか
ら、比較的高沸点の芳香族モノヒドロキシ化合物やジア
リールカーボネートを脱離しながら、該プレポリマーが
容易に高分子量化していくことは、全く予想外であっ
た。
本発明方法において、原料として用いられるジヒドロキ
シアリール化合物は、その85モル%以上が一般式 HO−Ar1−Y−Ar2−OH …(I) で表わされるジヒドロキシジアリールアルカンである。
前記一般式(I)におけるAr1及びAr2は、それぞれアリ
ーレン基であって、例えばフェニルン、ナフチレン、ビ
フェニレン、ピリジレンなどの基を表わし、Yは のアルキレン又は置換アルキレン基を表わす(ここで、
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ水素原子、低級アルキル
基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基であ
って、場合によりハロゲン原子、アルコキシ基で置換さ
れていてもよく、kは3〜11の整数を表わし、上式 の水素原子は、低級アルキル基、シクロアルキル基、ア
リール基、アラルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子
等によって置換されていてもよい)。
また、該原料のジヒドロキシジアリール化合物は、前記
の一般式(I)で表わされるジヒドロキシジアリールア
ルカンに加えて、15モル%を超えない範囲において、一
般式 HO−Ar1−Z−Ar2−OH …(II) 〔式中のAr1及びAr2は前記と同じ意味をもち、Zは単な
る結合、又は−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−CO2
−、−CON(R1)(R1は前記と同じ意味をもつ)などの
二価の基である〕 で表わされるジヒドロキシジアリール化合物を含有して
いてもよい。
さらには、このようなアリーレン基(Ar1,Ar2)におい
て、1つ以上の水素原子が、反応に悪影響を及ぼさない
他の置換基、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、
低級アルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル
基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基などに
よって置換されたものであってもよい。
前記一般式(I)で表わされるジヒドロキシジアリール
アルカンとしては、例えば (式中のR5及びR6は、それぞれ水素原子、ハロゲン原
子、炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低
級アルコキシ基、シクロアルキル基又はフェニル基であ
って、これらは同じであってもよいし、たがいに異なっ
ていてもよく、m及びnは1〜4の整数で、mが2以上
の場合にはR5はそれぞれ異なるものであってもよいし、
nが2以上の場合にはR6はそれぞれ異なるものであって
もよい)などのビスフェノール類などが好ましく用いら
れる。
これらの化合物の中で、2,2−ビス(4−ヒドロキシフ
ェニル)プロパンであるビスフェノールA及び置換ビス
フェノールA類が特に好適である。また、これらのジヒ
ドロキシジアリールアルカンは単独で用いてもよいし、
2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上のジヒ
ドロキシジアリールアルカンを用いる場合には、通常こ
れらの2種以上の骨格を有する共重合体の芳香族ポリカ
ーボネートが得られる。
また、前記一般式(II)で表わされるジヒドロキシジア
リール化合物としては、例えば で表されるジヒドロキシビフェニル類; (式中のR5、R6、m及びnは前記と同じ意味をもつ)な
どが挙げられる。
さらに本発明においては、前記のジヒドロキシジアリー
ルアルカンが85モル%以上から成るジヒドロキシアリー
ル化合物とともに、分子内にフェノール性ヒドロキシル
基3個以上を含有する化合物を、該ジヒドロキシジアリ
ール化合物に対して、0.01〜3モル%程度の割合で用い
ることもできる。
このような3価以上の多価フェノールとしては、例えば
フロログルシン;フロログルシド;4,6−ジメチル−2,4,
6−トリ(4′−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2;2,6
−ジメチル−2,4,6−トリ(4′−ヒドロキシフェニ
ル)ヘプテン−3;4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4′−
ヒドロキシフェニル)ヘプタン;1,3,5−トリ(4′−ヒ
ドロキシフェニル)ベンゼン;1,1,1−トリ(4′−ヒド
ロキシフェニル)エタン;2,2−ビス〔4,4−ビス(4′
−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル〕プロパン;2,6
−ビス(2′−ヒドロキシ−5′−メチルベンジル)−
4−メチルフェノール;2,6−ビス(2′−ヒドロキシ−
5′−イソプロピルベンジル)−4−イソプロピルフェ
ノール;ビス−〔2−ヒドロキシ−3−(2′−ヒドロ
キシ−5′−メチルベンジル)−5−メチルフェニル〕
メタン;テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン;ト
リ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;ビス
(2,4−ヒドロキシフェニル)ケトン;1,4−ビス(4′,
4″−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン;1,4
−ジメチル−1,4−ビス(4′−ヒドロキシ−3−メチ
ルフェニル)−6−ヒドロキシ−7−メチル−1,2,3,4
−テトラリン;2,4,6−トリ(4′−ヒドロキシフェニル
アミノ)−S−トリアジンなどが挙げられる。
一方、本発明のもう1つの原料であるジアリールカーボ
ネートは、一般式 で表わされる芳香族モノヒドロキシ化合物の炭酸エステ
ルであり、該式中のAr3及びAr4はアリール基であって、
これらは同じであってもよいし、たがいに異なっていて
もよい。また、前記Ar3及びAr4において、1つ以上の水
素原子が、反応に悪影響を及ぼさない他の置換基、例え
ば、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ
基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、
エステル基、アミド基、ニトロ基などによって置換され
たものであってもよい。
このようなジアリールカーボネートとしては、例えば (式中のR7及びR8は、それぞれ水素原子、ハロゲン原
子、炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低
級アルコキシ基、シクロアルキル基又はフェニル基、p
及びqは1〜5の整数で、pが2以上の場合にはR7はそ
れぞれ異なるものであってもよいし、qが2以上の場合
にはR8はそれぞれ異なるものであってもよい) で表わされる置換又は非置換のジフェニルカーボネート
類が挙げられる。このジフェニルカーボネート類の中で
も、ジフェニルカーボネートや、ジトリルカーボネー
ト、ジ−t−ブチルフェニルカーボネートのような低級
アルキル置換ジフェニルカーボネートなどの対称型ジア
リールカーボネートが好ましいが、特に最も簡単な構造
のジアリールカーボネートであるジフェニルカーボネー
トが好適である。
これらのジアリールカーボネート類は単独で用いてもよ
いし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、反応系
が複雑になり、あまり利点がないので、対称型のジアリ
ールカーボネート1種を用いるのがよい。
本発明方法においては、予備重合工程で得られたプレポ
リマーを結晶化させたのち、固相重合させるが、該予備
重合工程においては、ジヒドロキシジアリール化合物と
ジアリールカーボネートとを加熱下に処理することによ
って、ジアリールカーボネートに基づくアリール基にヒ
ドロキシル基の結合した化合物である芳香族モノヒドロ
キシ化合物を脱離させながら、プレポリマーを調製す
る。この予備重合工程で製造されるプレポリマーの重合
平均分子量は、通常2,000〜20,000、好ましくは2,500〜
15,000、より好ましくは4,000〜12,000の範囲で選ばれ
る。この重量平均分子量が2,000未満では固相重合の反
応時間が長くなって好ましくないし、また、20,000より
大きくする必要もない。
該予備重合反応は、溶融状態で実施されるのが好まし
い。このような分子量の範囲のプレポリマーは、その溶
融粘度がそれほど高くならないため、工業的に実施する
ことは容易である。
もちろん、この予備重合反応を実施する場合、反応に不
活性な溶媒、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,
2−ジクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロベ
ンゼン、テトラヒドロフラン、ジフェニルメタン、ジフ
ェニルエーテルなどを用いてもよいが、通常は無溶媒か
つ溶融状態で実施される。
この予備重合反応におけるジアリールカーボネートと、
ジヒドロキシジアリール化合物との使用割合(仕込比
率)については、用いられるジアリールカーボネートと
ジヒドロキシジアリール化合物の種類や、反応温度、そ
の他の反応条件によって異なるが、該ジアリールカーボ
ネートは、ジヒドロキシジアリール化合物1モルに対し
て、通常0.9〜2.5モル、好ましくは0.95〜2.0モル、よ
り好ましくは1.01〜1.5モルの割合で用いられる。
このようにして得られるプレポリマーの末端は、通常、
例えば一般式 (式中のAr3は前記と同じ意味をもつ) で表わされるアリールカーボネート基末端と、例えば一
般式 HO−Ar1− …(VI) (式中のAr1は前記と同じ意味をもつ) で表わされるジヒドロキシジアリール化合物に基づくヒ
ドロキシル基末端とから成っている。このプレポリマー
の全末端基中に占めるアリールカーボネート基末端の割
合を50モル%より多くするためには、ジアリールカーボ
ネートがジヒドロキシジアリール化合物に対して、反応
系中で実質的にある程度過剰量存在させて反応させるこ
とが必要である。このような意味において、反応系中に
実質的に存在させるジアリールカーボネートの量はジヒ
ドロキシジアリール化合物1モルに対して、1.00〜1.10
モルとなるように反応させることが好ましい。反応条件
によっては、予備重合反応途中で、いずれかの成分の一
部又は両方の成分の一部が留出してくる場合があるが、
その場合には、所定の量比となるように、いずれかの成
分を予備重合反応途中で追加することも好ましい方法で
ある。
このように、アリールカーボネート基末端を全末端基中
の50モル%より多くなるようにして予備重合を行うと、
この工程でのプレポリマーの着色及び固相重合工程での
芳香族ポリカーボネートの着色が大巾に抑制されるばか
りでなく、得られた芳香族ポリカーボネートは、末端ヒ
ドロキシル基の量が後記のように極めて少ないために耐
熱水性などにおいて優れた物性を有することが分かっ
た。
このようにプレポリマーの全末端基中に占めるアリール
カーボネート基末端の割合は50モル%より多いことが必
要であるが、このプレポリマー中のアリールカーボネー
ト基末端の割合(xモル%)と、プレポリマー重量平均
分子量(Mw)とが、式 50<x≦100 …(VII) (ただし、2,000≦Mw≦5,000の場合) 又は 0.002Mw+40≦x≦100 …(VIII) (ただし、5,000<Mw≦20,000の場合) を満たす関係にある場合には、着色がなく、耐熱性や耐
熱水性などの物性の良好な芳香族ポリカーボネートが容
易に得られることが分かった。
また、予備重合工程を実施する際の反応温度及び反応時
間は、原料であるジヒドロキシジアリール化合物及びジ
アリールカーボネートの種類や量、必要に応じて用いら
れる触媒の種類や量、得られるプレポリマーの必要重合
度、あるいは他の反応条件などによって異なるが、通常
50〜350℃、好ましくは100〜320℃の範囲の温度で、通
常1分ないし100時間、好ましくは2分ないし10時間の
範囲で選ばれる。
プレポリマーを着色させないためには、できるだけ低温
で、かつ短時間で予備重合反応を行うことが望ましく、
したがって特に好ましい条件は、反応温度が150〜280℃
の範囲で、かつ反応時間が数分ないし数時間の範囲で選
ばれる。本発明方法においては、この予備重合で比較的
低分子量のプレポリマーを製造すればよいので、前記条
件下で容易に必要な重合度を有する無色透明なプレポリ
マーを得ることができる。
この予備重合反応においては、反応の進行に伴って、ジ
アリールカーボネートに基づくアリール基にヒドロキシ
ル基の結合した化合物である芳香族モノヒドロキシ化合
物が生成してくるが、これを反応系外へ除去することに
よってその速度が高められるので、効果的なかきまぜを
行うと同時に、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素
などの不活性ガスや低級炭化水素ガスなどを導入して、
生成してくる該芳香族モノヒドロキシ化合物をこれらの
ガスに同伴させて除去する方法や、減圧下に反応を行う
方法、及びこれらを併用した方法などが好ましく用いら
れる。
この予備重合反応は、触媒を加えずに実施することもで
き、このことは特に好ましい実施形態の1つではある
が、必要に応じて重合速度を速めるために重合触媒を用
いることもできる。このような重合触媒としては、この
分野で用いられている重縮合触媒であれば特に制限はな
いが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリ
ウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属及びアルカ
リ土類金属の水酸化物類;水素化リチウム、水素化ナト
リウム、水素化カルシウムなどのアルカリ金属及びアル
カリ土類金属の水素化物類;水素化アルミニウムリチウ
ム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素テトラメチ
ルアンモニウムなどのホウ素やアルミニウムの水素化物
のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第四級アンモ
ニウム塩類; リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カルシウ
ムメトキシドなどのアルカリ金属及びアルカル土類金属
のアルコキシド類;リチウムフェノキシド、ナトリウム
フェノキシド、マグネシウムフェノキシド、LiO−Ar−O
Li,NaO−Ar−ONa(Arはアリール基)などのアルカリ金
属及びアルカリ土類金属のアリーロキシド類;酢酸リチ
ウム、酢酸カルシウム、安息香酸ナトリウムなどのアル
カリ金属及びアルカリ土類金属の有機酸塩類;酸化亜
鉛、酢酸亜鉛、亜鉛フェノキシドなどの亜鉛化合物類;
酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸トリメ
チル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、(R1R2
R3R4)NB(R1R2R3R4)又は(R1R2R3R4)PB(R1R2R3R4
で表わされるアンモニウムボレート類又はホスホニウム
ボレート類(R1、R2、R3、R4は前記のとおり)などのホ
ウ素の化合物類;酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、テト
ラアルキルケイ素、テトラアリールケイ素、ジフェニル
−エチル−エトキシケイ素などのケイ素の化合物類;酸
化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムエ
トキシド、ゲルマニウムフェノキシドなどのゲルマニウ
ムの化合物類;酸化スズ、ジアルキルスズオキシド、ジ
アリールスズオキシド、ジアルキルスズカルボキシレー
ト、酢酸スズ、エチルスズトリブトキシドなどのアルコ
キシ基又はアリーロキシ基と結合したスズ化合物、有機
スズ化合物などのスズの化合物類;酸化鉛、酢酸鉛、炭
酸鉛、塩基性炭酸鉛、鉛及び有機鉛のアルコキシド又は
アリーロキシドなどの鉛の化合物類;第四級アンモニウ
ム塩、第四級ホスホニウム塩、第四級アルソニウム塩な
どのオニウム化合物類;酸化アンチモン、酢酸アンチモ
ンなどのアンチモンの化合物類;酢酸マンガン、炭酸マ
ンガン、ホウ酸マンガンなどのマンガンの化合物類;酸
化チタン、チタンのアルコキシド又はアリールオキシド
などのチタンの化合物類;酢酸ジルコニウム、酸化ジル
コニウム、ジルコニウムのアルコキシド又はアリールオ
キシド、ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニ
ウムの化合物類などの触媒を用いることができる。
触媒を用いる場合、これらの触媒は1種だけを用いても
よいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、
これらの触媒の使用量は、原料のジヒドロキシジアリー
ル化合物に対して、通常、0.000001〜1重量%、好まし
くは0.000005〜0.5重量%の範囲で選ばれる。
このような触媒は、通常の場合、最終製品である芳香族
ポリカーボネートの中にそのまま残存する。そして、通
常、このような残存触媒はポリマー物性に悪影響を及ぼ
す場合があるので、触媒の使用量はできるだけ少い方が
好ましい。
本発明の方法では、予備重合工程では、比較的低分子量
のプレポリマーを製造するだけでよいので、このような
触媒を添加することなく、実質的に無触媒で実施するの
が有利である。このことは本発明方法の大きな特徴の1
つである。
このような予備重合工程を実施することによって、重量
平均分子量(Mw)が2,000〜20,000の範囲にあり、か
つ、全末端基中に占めるアリールカーボネート基末端の
割合が50モル%より多いプレポリマーが容易に得られ
る。
該予備重合反応の好ましい実施態様においては、溶媒を
用いないで溶融状態で行われるが、このようにして得ら
れたプレポリマーを室温付近までそのまま冷却したもの
は、一般的に結晶化度の低い実質的に非晶質状態のもの
が多い。しかしながら、このような非晶質状態のプレポ
リマーは、目的とする芳香族ポリカーボネートのガラス
転移温度付近の温度で溶融したり、融着してしまうの
で、そのままでは固相重合を実施することは実質的に不
可能である。そのためにプレポリマーを結晶化させる結
晶化工程が実施される。
本発明の予備重合工程では、全末端基中のアリールカー
ボネート基末端が50モル%より多い比較的低分子量のプ
レポリマーが得られるが、ホスゲン法で製造された高分
子量の芳香族ポリカーボネートの結晶化挙動が種々研究
されているのとは対照的に、このような比較的低分子量
のプレポリマーを結晶化させようとする試みは、これま
でほとんどなされていなかった。
このようなプレポリマーを結晶化させる方法については
特に制限はないが、本発明においては、溶媒処理法及び
加熱結晶化法が好ましく用いられる。前者の溶媒処理法
は、適当な溶媒を用いてプレポリマーを結晶化させる方
法であり、具体的にはプレポリマーを溶媒に溶解させた
のち、この溶液から結晶性のプレポリマーを析出させる
方法や、プレポリマーに対する溶解力の小さい溶媒を用
いて、その溶媒がプレポリマー中に浸透して、プレポリ
マーを結晶化させるのに必要な時間、該プレポリマーを
液状の溶媒又は溶媒蒸気に接触させる方法などが好まし
く用いられる。
前記のプレポリマー溶液から結晶性のプレポリマーを析
出させる方法としては、例えば、その溶液から溶媒を蒸
発させるなどの手段によって除去する方法や、プレポリ
マーの貧溶媒を加える方法などがあるが、単に溶媒を除
去する方法が簡単で好ましい。また、プレポリマー中に
溶媒を浸透させてプレポリマーを結晶化させるのに必要
な時間は、プレポリマーの種類や分子量、形状、あるい
は用いる溶媒の種類、処理温度などによって異なるが、
通常数秒ないし数時間の範囲で選ばれる。また処理温度
は、通常−10〜200℃の範囲で選ばれる。
このようなプレポリマーの溶媒処理のために使用できる
好ましい溶媒としては、例えば、クロロメタン、塩化メ
チレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロエタン、ジ
クロロエタン(各種)、トリクロロエタン(各種)、ト
リクロロエチレン、テトラクロロエタン(各種)などの
脂肪族ハロゲン化炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロ
ロベンゼンなどの芳香族ハロゲン化炭化水素類;テトラ
ヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;酢酸メチ
ル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエ
チルケトンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシ
レンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これら
の溶媒は1種用いてもよいし、2種以上を混合して用い
てもよい。
プレポリマーの溶媒処理に用いられる溶媒の使用量は、
プレポリマーや溶媒の種類、必要結晶化度、処理温度な
どによっても異なるが、通常プレポリマーに対して、重
量基準で0.05〜100倍、好ましくは0.1〜50倍の範囲で選
ばれる。
なお、塩化メチレンのような塩素系溶媒をプレポリマー
の溶媒処理に用いても、本発明においてはプレポリマー
の分子量が比較的低いため、該塩化メチレンを結晶化プ
レポリマー中に残存させないようにすることは比較的容
易である。ホスゲン法においては、高分子量の芳香族ポ
リカーボネート中から塩化メチレンを留去する必要があ
るが、これを完全に除去することが困難である。これに
対し、本発明方法においては、結晶化工程での留去がた
とえ不完全であっても、引続いて実施される固相重合工
程で塩化メチレンをほぼ完全に除去することができる。
したがって、このようにして製造された芳香族ポリカー
ボネート中には塩素系溶媒に起因する塩素化合物は実質
的に含有されない。非塩素系の溶媒を用いる場合には、
原料として塩素原子を含むジヒドロキシジアリール化合
物又はジアリールカーボネートを用いないかぎり、全く
塩素原子を含まない芳香族ポリカーボネートが得られる
のはもちろんのことである。なお、本発明でいう実質的
に塩素原子を含まないポリカーボネートとは、塩素原子
の含有量がポリマーに対して、重量基準で1ppm以下であ
るポリカーボネートを意味する。
一方、加熱結晶化法は、該プレポリマーを目的とする芳
香族ポリカーボネートのガラス転移温度以上で、かつ該
プレポリマーが溶融しはじめる温度未満の範囲の温度に
おいて加熱することによって、結晶化させる方法であ
る。この方法は、単にプレポリマーを加熱下で保持する
のみで、結晶化させることができるので、極めて容易に
工業的に実施しうる。このような簡単な方法によって、
全末端基中のアリールカーボネート基末端が50モル%よ
り多い比較的低分子量の実質的に非晶性のプレポリマー
を結晶化できることは、全く予想外のことであった。
この加熱結晶化を行う温度Tc(℃)については、前記し
たように、目的とする芳香族ポリカーボネートのガラス
転移温度以上で、かつ該プレポリマーの溶融温度Tm
(℃)未満の範囲であればよく特に制限はないが、低い
温度ではプレポリマーの結晶化速度が遅いので、特に好
ましい加熱結晶化温度Tc(℃)は、式 Tm−50≦Tc<Tm …(IX) で示される範囲で選ばれる。
このプレポリマーの加熱結晶化は、前記範囲におけるあ
る温度を一定に保持して実施してもよいし、温度を連続
的又は不連続的に変化させながら実施してもよく、ま
た、これらを組み合わせた方法で実施することもでき
る。温度を変化させながら実施する方法としては、加熱
結晶化の進行に伴って、一般にプレポリマーの溶融温度
が上昇していくので、この上昇速度と同じような速度で
温度を上昇させながら加熱結晶化させる方法が特に好ま
しい。
このように温度を変化させながら加熱結晶化させる方法
は、一定の温度下での加熱結晶化法に比べて、プレポリ
マーの結晶化速度が速く、かつその溶融温度をより高め
ることができる。加熱結晶化の時間は、プレポリマーの
化学組成や触媒の有無、結晶化温度や結晶化方法などに
より異なるが、通常1〜200時間の範囲である。
このような結晶化工程を経たプレポリマーが結晶化して
いることは、該プレポリマーの透明性がなくなっている
ことからも容易に判定することができるが、もちろんX
線回折によっても確認することができる。例えばジヒド
ロキシジアリール化合物としてビスフェノールAを、ジ
アリールカーボネートとしてジフェニルカーボネートを
用いて、予備重合を行うことによって得られたプレポリ
マーは、非晶性であってX線回折パターンには結晶性を
示すピークは認められないが、結晶化工程後のプレポリ
マーのX線回折パターンには、2θ=約17度を主ピーク
とする結晶性パターンが出現している。
このように、結晶化工程によって、非晶性であったプレ
ポリマーは結晶化するが、その結晶化の度合は、原料と
して用いるジヒドロキシジアリール化合物及びジアリー
ルカーボネートの種類や、プレポリマーの重合度や、触
媒の有無、結晶化条件などによって異なるが、結晶化度
として通常3〜75%の範囲である。
このような範囲の結晶化度を有する結晶化プレポリマー
を用いて、次の固相重合工程によって、高分子量化させ
ていくことは、もちろん可能であるが、本発明において
は、工業的に実施する場合に有利な点から、該結晶化度
は5〜55%、好ましくは10〜45%の範囲で選ばれる。こ
の結晶化度が5%未満の結晶化プレポリマーでは、その
溶融温度があまり高くならないので、固相重合時に融着
して固相重合ができなくなったり、さもなければ該プレ
ポリマーを融着させないような比較的低い温度で極めて
長時間固相重合を行う必要があり、工業的に実施するに
は不利であるし、55%を超えると固相重合速度が遅くな
るので、長時間を要して固相重合させなければならず、
工業的に実施するには不利となる。
本発明でいう結晶化プレポリマーの結晶化度とは、完全
非晶性プレポリマーと結晶化プレポリマーの粉末X線回
折図(例えば第1図と第2図、又は第3図と第4図)を
用いて、次に示す方法により得られた値のことを意味す
るものとする。
一般的に、結晶性高分子にX線を投射すると、散乱X線
が観測されるが、これは結晶部分に起因する結晶散乱
と、非晶部分に起因する非晶散乱の和として現われるも
のである。結晶部分及び非晶部分の重量をそれぞれMc、
Maとし、それらに比例するX線散乱強度をそれぞれIc、
Iaとし、IcとIaとが分離できたとすると結晶化度Xc
(%)は (I100cは完全結晶の単位質量当りの結晶散乱強度を、
またI100aは完全非晶の単位質量当りの非晶散乱強度を
表わす) で与えられる。
しかしながら、本発明においてはすべての結晶化プレポ
リマーはK=1の値をもつものであると仮定し、次の式
により結晶化度Xc(%)を求めた。
X線回折計を用いて得られる全回折強度曲線は空気によ
る散乱、原子の熱運動に起因する散乱、コンプトン散乱
などにもとづく、いわゆるバックグラウンドと、結晶散
乱強度と非晶散乱強度の和として表わされたものである
から、これから結晶化度を求めるには各成分を分離する
必要がある。
本発明で用いた具体的な方法は、例えば第1図と第2図
を用いて次のような方法で行った。
結晶化プレポリマーの粉末X線回折図(第2図)におい
て、2θ=10゜の点(P)と2θ=35゜の点(Q)を結
ぶ直線PQ(ベースライン)を引く。結晶散乱強度がゼロ
と考えられる2θ=15゜での回折強度曲線上及びベース
ライン上の点をそれぞれ(R)、(S)とする。
同様にして、完全非晶性プレポリマー(プレポリマーを
280〜300℃で溶融させて厚さ約1mmの膜状にしたもの
を、その温度から0℃に急冷させて完全に非晶化させた
もの)の粉末X線回折図(第1図)において、直線KL
(ベースライン)と2θ=15゜での回折強度曲線上及び
ベースライン上の点(M)及び(N)を得る。
I1=点(M)での回折強度 B1=点(N)での回折強度 I2=点(R)での回折強度 B2=点(S)での回折強度 y=回折強度曲線KMLと直線KLで囲まれた面積 z=回折強度曲線PRQと直線PQで囲まれた面積 とすれば、本発明でいう結晶化度Xc(%)は次式で与え
られる。
この方法で得られた実施例1の結晶化プレポリマーの結
晶化度は約30%であった。
このようにして得られた結晶化したプレポリマーを、そ
の溶融温度より低い温度で固相状態に保ちながら固相重
縮合させることによって、容易に高分子量の芳香族ポリ
カーボネートにすることができる。
この固相重合工程においては、結晶化プレポリマー中に
存在する2種類の末端基、すなわち、アリールカーボネ
ート末端基とヒドロキシル末端基が、主として次に示す
2つの型の反応を行いながら、重縮合が進行しているも
のと考えられる。すなわちヒドロキシル末端基がアリー
ルカーボネート末端基と反応して、ジアリールカーボネ
ートに基づくアリール基にヒドロキシル基の結合した芳
香族モノヒドロキシ化合物を脱離させながら重縮合する
反応と、アリールカーボネート末端基が他のアリールカ
ーボネート末端基と反応して、ジアリールカーボネート
を脱離させながら重縮合が進行する自己縮合反応の2つ
の型の反応が起っているものと考えられる。
本発明において、固相重合が実施できる温度範囲では、
芳香族モノヒドロキシ化合物を脱離させながら重縮合す
る反応速度が、ジアリールカーボネートを脱離させなが
ら重縮合する反応速度に対して、通常、数倍ないし数十
倍も大きいことが分かった。
したがって、アリールカーボネート末端基の存在量がヒ
ドロキシル末端基の存在量よりも多い結晶化プレポリマ
ーを固相重合させることを特徴とする本発明の方法にお
いては、目的の分子量に到達した段階でヒドロキシル末
端基の量を極めて少なくすることができる。本発明方法
で製造される芳香族ポリカーボネートの末端ヒドロキシ
ル基の量は、用いられる結晶化プレポリマーの分子量と
アリールカーボネート末端基の量や、固相重合温度、固
相重合時間、固相重合方法などの固相重合条件や、到達
目的分子量などによって異なるが、通常、ポリマーに対
して0.03重量%以下、好ましくは0.01重量%以下であ
り、特に好ましくは0.005重量%以下である。このよう
なヒドロキシル末端基の極めて少ない芳香族ポリカーボ
ネートが容易に得られる。
このことは、本発明方法によれば、大部分の末端基が、
安定な末端基であるアリールカーボネート基から成って
いる物性的に優れた芳香族ポリカーボネートが容易に得
られることを表わしている。
該固相重合工程においては、反応によって副生してくる
芳香族モノヒドロキシ化合物又はジアリールカーボネー
ト若しくはその両方を系外に抜き出すことによってその
反応が促進される。そのためには、窒素、アルゴン、ヘ
リウム、二酸化炭素などの不活性ガスや、低級炭化水素
ガスなどを導入して、ジアリールカーボネートや芳香族
モノヒドロキシ化合物をこれらのガスに随伴させて除去
する方法や、減圧下に反応を行う方法、及びこれらを併
用した方法などが好ましく用いられる。また、同伴用の
ガスを導入する場合には、これらのガスを、反応温度付
近の温度に加熱しておくことが好ましい。
この固相重合反応を実施する場合の結晶化プレポリマー
の形状については特に制限はないが、大きな塊状のもの
は反応速度が遅くかつ取扱いが面倒であるなどの点から
好ましくなく、ペレット状、ビーズ状、顆粒状、粉末状
などの形状のものが好適である。また、結晶化後の固体
状のプレポリマーを適当な大きさに破砕したものも好ま
しく用いられる。溶媒処理によって結晶化させた結晶化
プレポリマーは通常、多孔質の顆粒状又は粉末状で得ら
れ、このような多孔質のプレポリマーは、固相重合の際
に副生してくる芳香族モノヒドロキシ化合物やジアリー
ルカーボネートの抜出しが容易であるので、特に好まし
い。
該固相重合反応を実施する際の反応温度Tp(℃)及び反
応時間については、結晶化プレポリマーの種類(化学構
造、分子量など)や形状、結晶化プレポリマー中の触媒
の有無や種類や量、必要に応じて追加される触媒の種類
や量、結晶化プレポリマーの結晶化の度合や溶融温度T
m′(℃)の違い、目的とする芳香族ポリカーボネート
の必要重合度、あるいは他の反応条件などによって異な
るが、通常目的とする芳香族ポリカーボネートのガラス
転移温度以上で、かつ固相重合中の結晶化プレポリマー
が溶融しないで固相状態を保つ範囲の温度、好ましく
は、式 Tm′−50≦Tp<Tm′ …(X) で示される範囲の温度において、1分ないし100時間、
好ましくは0.1〜50時間程度加熱することにより、固相
重合反応が行われる。
このような温度範囲としては、例えばビスフェノールA
のポリカーボネートを製造する場合には、約150〜260℃
が好ましく、特に約180〜230℃が好ましい。
該固相重合工程では、重合中のポリマーにできるだけ均
一に熱を与えるためや、あるいは副生する芳香族モノヒ
ドロキシ化合物やジアリールカーボネートの抜き出しを
有利に進めるために、有効なかくはんを行うことは好ま
しい方法である。このかくはん方法としては、例えばか
くはん翼による方法や反応器自身が回転する構造の反応
器を用いる方法などの機械的かくはんによる方法、ある
いは、加熱ガスによって流動させる方法などが好ましく
用いられる。
また、プレポリマーの結晶化を加熱結晶化によって実施
する場合は、所定の結晶化度に到達させるための単なる
加熱操作に引続いて、系を減圧にしたり、系中に随伴用
の加熱ガスを導入することによって系中から芳香族モノ
ヒドロキシ化合物やジアリールカーボネートを抜き出
し、固相重合を行うこともできる。
本発明における固相重合反応は、触媒を添加しなくても
十分な速度で進行させることができ、これが最も好まし
い実施態様であるが、さらに反応速度を高める目的で触
媒を使用することもできる。前記予備重合工程で触媒を
使用したならば、通常、生成するプレポリマー中に触媒
が残存するので、新たに触媒を加える必要もないが、な
んらかの理由で触媒が除去されたり、活性が低下してい
る場合もあるので、その際には必要に応じて、適当な触
媒を加えることもできる。この場合、液状又は気相状態
にした触媒成分をプレポリマーに加えることも好ましい
方法である。このような触媒成分としては、予備重合工
程で用いることのできる前記のようなものを挙げること
ができる。
このようにして、固相重合工程を実施することによっ
て、プレポリマーの重合度を上げることができる一般に
工業的に有用な芳香族ポリカーボネートの重量平均分子
量は、6,000〜300,000程度であり、好ましくは10,000〜
200,000程度、より好ましくは10,000〜50,000程度、さ
らにより好ましくは15,000〜40,000程度であるが、本発
明のプレポリマーの固相重合法によって、このような重
合度のポリカーボネートが容易に得られる。
このような固相重合によって製造れた芳香族ポリカーボ
ネートの形状は、用いた結晶化プレポリマーの形状にも
依存する場合があるが、通常、ビーズ状、顆粒状、粉末
状などのいわゆる粉体である。結晶化プレポリマーの固
相重合によって得られた芳香族ポリカーボネートの結晶
化度は、通常、元のプレポリマーの結晶化度より増大し
ていることから、本発明方法では通常、結晶性芳香族ポ
リカーボネート粉体が得られることになる。
もちろん、固相重合によって所定の分子量に達した結晶
性芳香族ポリカーボネート粉体を冷却せずにそのまま押
出機に導入してペレット化することもできるし、冷却せ
ずに直接成形機に導入して成形することも可能である。
本発明方法は、予備重合と固相重合によって所望の平均
分子量を有する芳香族ポリカーボネートを製造する方法
であるが、重合に寄与する予備重合と固相重合の割合を
広い範囲で変えることが可能である。
本発明を実施するに当って、使用される反応装置の形式
は、予備重合、結晶化及び固相重合のいずれの工程にお
いても、回分式、流通式、及びこれらを併用した方式の
ものなど、いずれの方法のものであってもよい。
また予備重合工程では比較的低分子量のプレポリマーを
製造するだけであるので、溶融法といわれるいわゆるエ
ステル交換法などの高温溶融重合で必要とされるような
高粘度流体用の高価な反応装置は不要である。さらに、
結晶化工程ではプレポリマーを単に溶媒処理や加熱処理
をすれば結晶化できるので特別な装置はなんら必要とし
ない。さらに固相重合工程では、実質的に結晶化プレポ
リマーを加熱でき、副生する芳香族モノヒドロキシ化合
物やジアリールカーボネートなどを除去できるような装
置であれば重合が可能である。
このように本発明方法は特別な工夫を要しない簡単な装
置で実施することができ、工業的に極めて有利である。
また、本発明方法では、芳香族ポリカーボネートの分子
量分布が小さいものから、大きいものまで比較的自由に
製造できる。これは、例えば分子量分布の小さいプレポ
リマーを用いれば、分子量分布の小さい芳香族ポリカー
ボネートが得られ、分子量分布の広いプレポリマーを用
いれば分子量分布の広い芳香族ポリカーボネートが得ら
れるからである。このことは本発明の大きな特徴の1つ
である。分子量分布を表わす尺度としては通常、重量平
均分子量(MW)と数平均分子量(MN)との比MW/MNの値
が用いられており、縮合系ポリマーの場合、この値が2
のときが理論的に最も小さい分子量分布とされている。
分子量分布の小さいポリマーは優れた特徴をもつことは
予測されているが、実際的にはMW/MNの値が2.5以下、特
に2.4以下のポリマーを製造することは困難である。既
存の方法、例えばいわゆる溶融法といわれるエステル交
換法では、重合末期に非常に著しく高粘度になるため
に、反応が不均一になりやすく、そのために分子量分布
を小さくすることは不可能であり、得られるポリカーボ
ネートは、通常MW/MN>2.6である。また、現在工業的に
実施されているホスゲン法でも、この値は2.4〜3.5であ
り、通常は2.5〜3.2の範囲である。これに対し、本発明
方法では、MW/MN=2.2〜2.5の芳香族ポリカーボネート
も容易に得られる。このことは、プレポリマーのように
比較的低分子量体では、分子量分布の小さいものが容易
に得られることに起因していると考えられる。
さらに、本発明方法で非晶性の芳香族ポリカーボネー
ト、例えば最も重要なポリカーボネートであるビスフェ
ノールAのポリカーボネートを製造する場合、無色透明
なものが得られることも、本発明の大きな特徴である。
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートから、ビス
フェノールAのポリカーボネートを製造するいわゆる溶
融法では、300℃付近の高温下で、高粘度物を1mmHg以下
の高真空下で長時間反応させる必要があるため、ポリマ
ーの熱分解や微量の酸素のために、生成するポリカーボ
ネートがどうしても淡黄色に着色するという欠点があっ
たが、本発明の方法では、予備重合工程が例えば250℃
以下、好ましくは240℃以下の比較的低温で短時間で実
施できることと、結晶化工程及び固相重合工程も例えば
230℃以下の比較的低温度で実施できることから、溶融
法のエステル交換法でみられるようなポリマーの変性が
ほとんど起らないからである。したがって、固相重合後
の結晶性のポリマーは黄色味のない白色であり、また、
この結晶性のポリマーを溶融温度以上に加熱すれば、容
易に非晶質化し、無色透明のビスフェノールAのポリカ
ーボネートが得られる。
本発明方法においては、前記一般式(I)で表わされる
ジヒドロキシジアリールアルカン85モル%以上及び該ア
ルカン以外のジヒドロキシジアリール化合物15モル%以
下から成るジヒドロキシジアリール化合物の骨格を含む
高分子量の種々の芳香族ポリカーボネートが容易に製造
されるが、これらの中で、繰返し単位が一般式 〔式中のAr1及びAr2は、それぞれアリーレン基、Yはア
ルキレン基又は置換アルキレン基であり、Zは単なる結
合、又は−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−CO2−、
−CON(R1)−(R1は水素原子、低級アルキル基、シク
ロアルキル基、アリール基、アラルキル基であって、場
合によりハロゲン原子又はアルコキシ基で置換されてい
てもよい)であり、m、nはそれぞれ次式: m+n=1、0.85≦m≦1 を満足する1以下の数である〕 で表わされ、重量平均分子量(MW)が10,000〜200,000
でかつヒドロキシル基末端がポリマーに対して、0.01重
量%以下である結晶性芳香族ポリカーボネート粉体は、
ペレット化することも可能であるし、またペレット化せ
ずに直接成形することによって物性的に優れた芳香族ポ
リカーボネート成形体を製造することもでき、さらには
他のポリマーとの混練によるポリマーアロイの製造にも
粉体であるため、直接混合性良く混練できるので、工業
的に使用する場合、特に重要である。
また、塩素原子を含まないジヒドロキシジアリール化合
物とジアリールカーボネートからは、全く塩素原子を含
まない芳香族ポリカーボネート粉体も得られ、これらの
芳香族ポリカーボネート粉体は特に、光学機器やエレク
トロニクス用材料として重要である。
発明の効果 芳香族ポリカーボネートの既存の工業的製法であるホス
ゲン法においては、塩化ナトリウムなどの電解質や塩素
を含む副生物が生成し、これらの不純物が必然的に樹脂
中に含まれている。また、溶媒として大量に用いている
塩化メチレンなどの含塩素化合物も樹脂中に残存してい
る。これらの不純物は樹脂物性に悪影響を及ぼすので、
ホスゲン法においては樹脂中のこれらの含有量を低下さ
せるために、複雑で費用のかかる洗浄や除去工程を実施
しているが、これらの不純物を完全に除去することは不
可能である。
これに対して、本発明方法で得られる芳香族ポリカーボ
ネートには、このような不純物は全く存在しないので、
品質的に優れているだけでなく、当然のことながら、こ
れらを分離する面倒な工程が不要であるため、本発明方
法は工業的に有利である。
さらに、溶融法のエステル交換法では高温・高真空が可
能な高価な高粘度リアクターが必要であり、しかも、ポ
リマーが高温での熱劣化を受けて黄変しやすいという欠
点があるが、本発明の方法は、特別な装置も不要であ
り、また得られる芳香族ポリカーボネートも優れた品質
のものである。
実施例 次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本
発明はこれらの例によってなんら限定されるものではな
い。
なお、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ
ー(GPC)で測定した重量平均分子量(MW)の値で示
し、数平均分子量(MN)との比(MW/MN)もGPCで得られ
た値である。また、予備重合反応装置、固相重合反応装
置のいずれも、脱酸素及び乾燥に十分留意し、かつ反応
中の酸素や水などの混入をできるだけ少なくするように
工夫したものを用いた。
また、プレポリマー及び芳香族ポリカーボネート中の末
端基であるアリールカーボネート基とヒドロキシル基の
割合は、高速液体クロマトグラフィーによる測定と、A.
Horbachらの方法(フェノール性−OH基の定量方法で、
プレポリマー又はポリマーを酢酸酸性塩化メチレンに溶
解させたのち、TiCl4を加え、生成した赤色錯体を546nm
の波長の光で比色定量する方法、Makaromol.Chem.,88,2
15(1965))で測定したものである。結晶化度は、非晶
性プレポリマーと結晶化プレポリマーの粉末X線回折図
を用いて、前記の方法により算出した値である。
なお、W%は重量%を表わす。
実施例1 2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以
下、ビスフェノールAという)68.4g、ジフェニルカー
ボネート77.0gをかくはん装置、ガス導入口、ガス吸引
口付の500mlの三つ口フラスコに入れ、減圧脱気、乾燥
窒素導入を数回繰り返したのち、該フラスコを180〜190
℃の油浴に入れ、内容物を溶融後、減圧脱気、乾燥窒素
導入を行った。次いで浴温を230℃に上げ、かきまぜ下
に、乾燥窒素を25Nl/hrで導入して、生成してくるフェ
ノールを留出させた。約50分後に、反応系を減圧にし、
2〜5mmHgで約15分間かきまぜることによって、フェノ
ール及びジフェニルカーボネートを留出させた。この結
果、MW=6,200の無色透明なプレポリマー76gが得られ
た。
このプレポリマーの末端基の割合は (Phはフェニル基)が72モル%で、−OH基が28モル%で
あった。
次に、このプレポリマーをフラスコより取り出し、粉砕
したのち、アセトン(250ml)中に浸せきすることによ
って、結晶化させた。結晶化はただちに進行しはじめ、
約30分間で十分結晶化していたが、さらに、1時間浸せ
きしておいた。このようにして得られた白色の粉末状の
プレポリマーをろ過したのち乾燥した。このプレポリマ
ーの結晶化工程前後のX線回折パターンをそれぞれ第1
図及び第2図に示す。また、結晶化プレポリマー中の末
端基の割合は、非晶性のプレポリマーとほとんど変化し
ていなかった。
次に、この粉末状の結晶化プレポリマー(結晶化度は、
第1図及び第2図を用いて前記の方法から算出して約30
%であった)を予備重合装置と全く同様なフラスコに入
れ、2〜5mmHgの減圧下、少量の乾燥窒素を導入しなが
ら、フラスコを190℃の油浴に入れ、かきまぜながら5
℃/hrで昇温した。220℃に達したのち、さらに8時間こ
の操作を続けることによって固相重合を行ったところ、
MW=28,000(MW/MN=2.4)の白色の結晶性ポリカーボネ
ート粉体が得られた。
このポリカーボネート中のヒドロキシル基末端は、ポリ
マーに対して0.001W%であった(市販のポリカーボネー
トは、この値が約0.01〜0.05W%であった)。
この白色の結晶性ポリカーボネート粉体を通常の手法に
より射出成形した試験片は無色透明で強靭なものであっ
た。
この試験片を、水の入ったオートクレーブに入れ、120
℃に加熱することによって耐熱水性試験は行ったとこ
ろ、50時間後、分子量(MW)は25,000に若干低下してい
たが、クレーズの発生や、着色は全く認められなかっ
た。
比較例1 実施例1と同様な方法により予備重合操作と類似の操作
を行うことによって、溶融重縮合反応を行った。すなわ
ち、230℃で乾燥窒素25Nl/hrを導入しながらかきまぜ下
に約50分間反応させたのち、反応系を2〜5mmHgの減圧
にし、約15分間、次いで反応温度を280℃に上げた。次
に280℃、1mmHgで1時間反応させたのち、300℃、1mmHg
で3時間反応させた。冷却後、非晶性のポリカーボネー
ト(MW=26,000、MW/MN=2.8)が得られた。このポリカ
ーボネートは淡黄色に着色しており、ヒドロキシル基末
端はポリマーに対して0.08W%であった。このポリカー
ボネートを射出成形した試験片を用いて、実施例1と同
様な方法により耐熱水性試験を行った結果、分子量
(MW)は18,000に低下しており、しかも一部クレーズが
発生していた。また、黄色の着色度も増加していた。
実施例2〜7、比較例2〜3 ビスフェノールA11.4kg、ジフェニルカーボネート11.6k
gを25のガラスライニング製のリアクターに入れ、減
圧脱気と乾燥窒素導入を数回繰り返したのち、該リアク
ターを180〜190℃に加熱し、内容物を溶融後、減圧脱気
と乾燥窒素導入を数回繰り返した。次いでリアクター内
部の温度を230〜235℃に上げ、かきまぜ下に、乾燥窒素
を200Nl/hrで2時間導入したのち、反応系を減圧にし、
5〜10mmHgで2時間反応させることによって一部ジフェ
ニルカーボネートを含むフェノールを留出させた。その
後、リアクター内を乾燥窒素で2〜3kg/cm2に加圧する
ことによって、リアクターの下部よりプレポリマーを窒
素雰囲気中に排出した。このようにして得られた無色透
明なプレポリマーは、MW=6,000で、 末端の割合は70モル%であった。このプレポリマーを粉
砕したのち、その100gずつを用いて、種々の結晶化度を
有する結晶化プレポリマーを得た。次いで、実施例1と
同様な方法により固相重合を行った。その結果を第1表
に示す。ただし、実施例2及び比較例2では、温度プロ
ファイルを、180℃で5時間保持後、5℃/hrで昇温、21
0℃で10時間保持とした。なお、比較例2では途中でプ
レポリマーの融着が起こり、固相重合を実施することは
不可能であったが、実施例2においては、一部プレポリ
マーの融着が起ったが、固相重合は可能であった。
また、比較例3は、結晶化度が55%を超える結晶化プレ
ポリマーの場合、固相重合速度が極端に遅くなることを
示している。
なお、結晶化度が10%以下の結晶化プレポリマーは、ア
セトン飽和蒸気中に非晶性プレポリマーを保持すること
によって製造した。また、結晶化度が45%以上の結晶化
プレポリマーは、アセトン浸せきによって得られた結晶
化度33%の結晶性プレポリマーを窒素雰囲気下、190℃
で所定時間静置しておくことによって製造した。
これらの実施例に用いられた非晶性プレポリマーは室温
の窒素雰囲気中に排出して得られたものであるが、完全
に非晶性であった。これは、このプレポリマーを280℃
で再溶融したのち、氷水中に入れて急冷した完全非晶性
プレポリマーの粉末X線回折パターン(第3図)と全く
同じパターンを示すことから確認された。なお実施例5
に用いた結晶化度33%の粉末X線回折パターンを第4図
に示す。
実施例8 実施例1と同様な方法により、予備重合を行いMW=6,20
0、末端 71モル%から成る非晶性プレポリマーを得た。次いで、
浴温を180℃に下げ、常圧の乾燥窒素雰囲気下で、36時
間静置することによって加熱結晶化を行った結果、結晶
化度約17%の結晶化プレポリマーを得た。この結晶化度
プレポリマーをフラスコより取り出し、粉砕したのち、
実施例1と同様な方法により固相重合を行った結果、MW
=25,500(MW/MN=2.35)の白色の結晶性ポリカーボネ
ート粉体が得られた。末端ヒドロキシル基は、ポリマー
に対して0.002W%であった。
なお、このポリマーの射出成形試験片の耐熱水性試験を
実施例1と同様な方法で行った結果、分子量の若干の低
下(MW=23,000)は認められたものの、クレーズの発生
や着色は全く認められなかった。
実施例9 ビスフェノールA68.4g、ジフェニルカーボネート90gを
用いた以外は、実施例1と同様な方法により、MW=4,00
0の無色透明なプレポリマーを得た。このプレポリマー
を粉砕したのち、メチルエチルケトンに浸せきすること
によって、結晶化度約28%の結晶化プレポリマーを得
た。この結晶化プレポリマー中の 末端の割合は、95モル%で、ヒドロキシル基末端は5モ
ル%であった。次いで、この結晶化プレポリマーを実施
例1と同様な方法によって固相重合を行った。ただし、
220℃では20時間反応させた。その結果、MW=21,000(M
W/MN=2.2)の白色の結晶性ポリカーボネート粉体が得
られた。このポリカーボネートのヒドロキシル基末端は
ほとんど検出することができなかった。
実施例10 ビスフェノールA68.4g、ジフェニルカーボネート70.6g
を用いた以外は、実施例1と同様な方法により予備重合
を行い、MW=8,100(MW/MN=1.82)の無色透明なプレポ
リマーを得た。このプレポリマーを230℃に加熱したま
まフラスコ下部のノズルより、かくはん翼を備えた1
フラスコ中に排出した。このフラスコ中にはアセトン50
0mlがはいっており、かきまぜ下にプレポリマーの結晶
化を行うことにより、結晶化と粉砕を同時に行った。こ
のようにして得られた結晶化プレポリマーは、結晶化度
が31%で、フェニルカーボネート基 の割合が62モル%であった。この結晶化プレポリマーを
用いて実施例1と同様な方法により、固相重合を行った
結果、MW=32,000(MN=2.45)の白色の結晶性ポリカー
ボネート粉体が得られた。このポリカーボネートのヒド
ロキシル基末端は、ポリマーに対して0.002W%であっ
た。
実施例11 ビスフェノールA68.4g、ジフェニルカーボネート67.5g
を用い、予備重合の減圧下での反応時間を約10分間にし
たこと以外は、実施例1と同様な予備重合及び結晶化操
作を行うことにより、MW=2,300(MW/MN=1.5)、結晶
化度35%、全末端基に対するフェニルカーボネート基末
端の割合が52モル%の結晶化プレポリマーを得た。次
に、この結晶化プレポリマーを190℃で4時間、200℃で
4時間、210℃で4時間反応させた以外は、実施例1と
同様な方法によって固相重合を行った結果、MW=25,000
(MW/MN=2.33)の白色の結晶性ポリカーボネート粉体
を得た。このポリカーボネートのヒドロキシル基末端
は、ポリマーに対して0.02W%であった。
実施例12 ビスフェノールA68.4g、ジフェニルカーボネート68.5g
を用い、予備重合の減圧下での反応時間を約20分間にし
たこと以外は、実施例1と同様な方法により予備重合及
び結晶化操作を行うことにより、MW=7,800、結晶化度3
1%、全末端基に対するフェニルカーボネート基末端の
割合が58モル%の結晶化プレポリマーを得た。この結晶
化プレポリマーを190℃から220℃まで6℃/hrで昇温及
び220℃で5時間保持しながら反応させた以外は、実施
例1と同様な方法によって固相重合を行った結果、MW
75,000(MW/MN=3.0)の白色の結晶性ポリカーボネート
粉体を得た。このポリカーボネートのヒドロキシル基末
端はポリマーに対して0.003W%であった。
比較例4 ビスフェノールA68.4g、ジフェニルカーボネート65.4g
を用いた以外は、実施例1と同様な操作により予備重合
と結晶化を行った結果、MW=3,500、フェニルカーボネ
ート基末端の割合が40モル%の結晶化プレポリマー(結
晶化度38%)を得た。この結晶化プレポリマーを220℃
で12時間反応させたこと以外は、実施例1と同様な操作
により固相重合を行ったが、生成したポリマーのMW=1
1,000(MW/MN=1.9)であり、ヒドロキシル基末端の全
末端基に対する割合は80モル%に達していた。また、こ
のポリマーはわずかではあるが、黄色に着色していた。
実施例13 ビスフェノールA68.4g、ジフェニルカーボネート77.0g
を用い、実施例1と同様な操作を行うことによって、予
備重合を行った。ただし、250℃で乾燥窒素の流通下に
フェノールを留出させたのち、2〜5mmHgの減圧下に約3
0分間かきまぜながら、フェノール及びジフェニルカー
ボネートを留出させた。この結果MW=15,000の無色透明
なプレポリマーが得られた。このプレポリマーを塩化メ
チレンに溶解させたのち、塩化メチレンを留去すること
によって、白色の結晶化プレポリマーを得た(結晶化度
35%、フェニルカーボネート基末端の割合80モル%)。
この結晶化プレポリマーを粉砕したのち、実施例1と同
様な方法で固相重合を行った結果、MW=38,000(MW/MN
=2.65)の白色の結晶性のポリカーボネート粉体が得ら
れた。このポリカーボネート中の、ヒドロキシル基末端
はほとんど検出できなかった。
実施例14 ビスフェノールA68.4g、ジフェニルカーボネート77.0g
を用い、実施例1と同様な方法で予備重合を行った。た
だし、2〜5mmHgの減圧下でのかきまぜを約5分間で行
った。この結果、MW=2,900の無色透明なプレポリマー
が得られた。このプレポリマーをテトラヒドロフランに
浸せきすることによって結晶化させた。次いで、テトラ
ヒドロフランを留去したのち、得られた粉末状の結晶化
プレポリマー(結晶化度26%、フェニルカーボネート基
末端の割合60モル%)を用いて、実施例1と同様な方法
で固相重合を行った結果、MW=21,000(MW/MN=2.23)
の白色の結晶性ポリカーボネート粉体が得られた。この
ポリカーボネートのヒドロキシル基末端はポリマーに対
して、0.008W%であった。
実施例15 ビスフェノールA1kgに0.5gのナトリウムメトキシドを加
え、溶融下に均一にかきまぜることによって触媒混合物
を調製した。この混合物0.5g、ビスフェノールA68.4g、
ジフェニルカーボネート77.0gを用いて、実施例1と同
様にして予備重合を行った結果、MW=8,800の無色透明
なプレポリマーを得た。このプレポリマーを160〜180℃
で15時間放置することによって加熱結晶化を行った。次
いでこの結晶化プレポリマー(結晶化度36%、フェニル
カーボネート基末端の割合75モル%)を粉砕したのち、
実施例1と同様の方法で固相重合を行った結果、MW=3
1,000(MW/MN=2.3)の白色の結晶性ポリカーボネート
粉体を得た。このポリカーボネートのヒドロキシル基末
端は、ポリマーに対して0.005W%であった。
実施例16 ビスフェノールA68.4g、ジ−p−トリルカーボネート7
8.5gを用いた以外は、実施例1と同様な方法で予備重合
を行った結果、MW=6,000の無色透明なプレポリマーを
得た。
このプレポリマーを粉砕したのち、アセトン蒸気を導入
することによって結晶化させた。次いで、この結晶化プ
レポリマー(結晶化度26%、 末端基の割合58モル%)を用いて、実施例1と同様な方
法で固相重合を行った。ただし、減圧度は1〜2mmHgに
保った。この結果、MW=26,000(MW/MN=2.3)の白色の
結晶性ポリカーボネート粉体が得られた。このポリカー
ボネートのヒドロキシル基末端はポリマーに対して、0.
003W%であった。
実施例17 1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン8
0.4g、ジフェニルカーボネート70.7gを用いて、240℃で
予備重合を行った以外は、実施例1の操作と同様な方法
により予備重合及び結晶化を行った結果、MW=8,500の
結晶化プレポリマー(結晶化度26%、フェニルカーボネ
ート基末端の割合80モル%)を得た。この結晶化プレポ
リマーをフラスコに入れ、2〜5mmHgの減圧下、少量の
乾燥窒素を導入しながら、フラスコを190℃の油浴に入
れ、かきまぜながら、5℃/hrで昇温した。235℃に達し
たのち、さらにこの時間で4時間この操作を続けること
によって固相重合を行ったところ、MW=29,000(MW/MN
=2.44)の白色の結晶性ポリカーボネート粉体が得られ
た。このポリカーボネートのヒドロキシル基末端はポリ
マーに対して、0.004W%であった。
実施例18 2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)
プロパン85.2g、ジフェニルカーボネート77.0gを用いた
以外は、実施例1と同様な操作により、予備重合及び結
晶化を行った結果、MW=5,800の白色の結晶化プレポリ
マー(結晶化度25%、フェニルカーボネート基末端の割
合70モル%)が得られた。この結晶化プレポリマーを用
いて実施例1と同様な方法により固相重合を行った結
果、MW=28,000(MW/MN=2.40)の白色の結晶性ポリカ
ーボネート粉体が得られた。このポリカーボネートのヒ
ドロキシル基末端はポリマーに対して、0.005W%であっ
た。
実施例19 ビスフェノールA68.4g、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4
−ヒドロキシフェニル)プロパン8.16g、ジフェニルカ
ーボネート80gを用いた以外は、実施例1と同様な方法
により、予備重合と結晶化を行った結果、MW=6,800の
結晶化プレポリマー(結晶化度29%、フェニルカーボネ
ート基末端の割合73モル%)を得た。
この結晶化プレポリマーの固相重合を実施例1と同様な
方法により行った結果、MW=29,000(MW/MW=2.3)で次
の(A)及び(B)の2つの単位がモル比でほぼ95対5
の割合で含有するランダムコポリカーボネートが得られ
た。このポリカーボネートのヒドロキシル基末端はポリ
マーに対して0.008W%であった。
(A/Bモル比=約95/5) 実施例20 ビスフェノールA68.4g(0.3モル)、4,4′−ジヒドロキ
シジフェニルエーテル9.09g(0.045モル)、ジフェニル
カーボネート80gを用いた以外は、実施例1と同様な方
法により予備重合及び結晶化を行った結果、MW=7,300
の結晶化プレポリマー(結晶化度27%、フェニルカーボ
ネート基末端の割合75モル%)を得た。この結晶化プレ
ポリマーを用いて、実施例1と同様な方法により固相重
合を行った結果、MW=28,500(MW/MN=2.36)で次の
(A)及び(C)の2つの単位がモル比でほぼ86対14の
割合で含有する結晶性のランダムコポリカーボネート粉
体が得られた。このポリカーボネートのヒドロキシル基
末端はポリマーに対して0.005W%であった。
実施例21〜24 ビスフェノールA68.4g(0.3モル)、ジフェニルカーボ
ネート80g(0.37モル)と種々のジヒドロキシジアリー
ル化合物(0.033モル)を用い、実施例1と同様な方法
により、予備重合、結晶化及び固相重合を行った。その
結果を第2表に示す。
なお、これらの結晶化プレポリマーの結晶化度はいずれ
も20〜38%の範囲であり、フェニルカーボネート基末端
の割合はいずれも60〜80モル%の範囲であった。また、
得られた結晶性コポリカーボネート粉体はいずれもビス
フェノールAに基づく骨格が約90モル%から成るもので
あった。
実施例25 ビスフェノールA68.4g(0.3モル)、トリ−(4−ヒド
ロキシフェニル)フェニルメタン0.15g、ジフェニルカ
ーボネート77.0gを用いた以外は、実施例1と同様な方
法により、予備重合及び結晶化操作を行うことによっ
て、MW=6,500でフェニルカーボネート基末端が70モル
%で結晶化度28%の結晶化プレポリマーを得た。この結
晶化プレポリマーを用いて、実施例1と同様な方法によ
り固相重合を行った結果、MW=33,000(MW/MN=3.2)の
白色の結晶性芳香族ポリカーボネート粉体を得た。この
ポリカーボネートのヒドロキシル基末端はポリマーに対
して、0.002W%であった。
なお、これらの実施例で得られた芳香族ポリカーボネー
ト中には、いずれの場合も塩素原子は実質的に含まれて
いなかった。
【図面の簡単な説明】 第1図及び第2図は、それぞれ本発明における実施例1
のプレポリマーの結晶化前及び結晶化後のX線回折パタ
ーンであり、第3図及び第4図は実施例5のプレポリマ
ーの結晶化前及び結晶化後のX線回折パターンである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特公 昭44−27984(JP,B1) 特公 昭47−14742(JP,B1) 特公 昭61−46007(JP,B2)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 HO−Ar1−Y−Ar2−OH (式中のAr1及びAr2は、それぞれアリーレン基、Yはア
    ルキレン基又は置換アルキレン基である) で表わされるジヒドロキシジアリールアルカン85モル%
    以上及び該ジヒドロキシジアリールアルカン以外のジヒ
    ドロキシジアリール化合物15モル%以下から成るジヒド
    ロキシジアリール化合物とジアリールカーボネートとを
    反応させて芳香族ポリカーボネートを製造するに当り、 (a)該ジヒドロキシジアリール化合物と、該ジアリー
    ルカーボネートとを加熱下に予備重合させて、重量平均
    分子量(Mw)が2,000〜20,000の範囲にあり、かつ全末
    端基中に占めるアリールカーボネート基末端の割合が50
    モル%より多いプレポリマーを調製する予備重合工程、 (b)該プレポリマーを結晶化させて、結晶化度が5〜
    55%の範囲にある結晶化プレポリマーを調製する結晶化
    工程、及び (c)該結晶化プレポリマーを、製造すべき芳香族ポリ
    カーボネートのガラス転移温度以上で、かつ該結晶化プ
    レポリマーが固相状態を保持しうる範囲の温度に加熱す
    ることによって、さらに重合度を上げるための固相重合
    工程 を順次行うことを特徴とする芳香族ポリカーボネートの
    製造方法。
  2. 【請求項2】繰返し単位が一般式 〔式中のAr1及びAr2は、それぞれアリーレン基、Yはア
    ルキレン基又は置換アルキレン基であり、Zは単なる結
    合、又は−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−CO2−、
    −CON(R1)−(R1は水素原子、低級アルキル基、シク
    ロアルキル基、アリール基、アラルキル基であって、場
    合によりハロゲン原子又はアルコキシ基で置換されてい
    てもよい)であり、m、nはそれぞれ次式: m+n=1、0.85≦m≦1 を満足する1以下の数である〕 で表わされ、重量平均分子量(Mw)が10,000〜200,000
    で、かつヒドロキシル基末端の含有量が、ポリマーに対
    して0.01重量%以下である結晶性芳香族ポリカーボネー
    ト粉体。
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