JP2561869B2 - 結晶性樹脂粉体 - Google Patents

結晶性樹脂粉体

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JP2561869B2 JP2073520A JP7352090A JP2561869B2 JP 2561869 B2 JP2561869 B2 JP 2561869B2 JP 2073520 A JP2073520 A JP 2073520A JP 7352090 A JP7352090 A JP 7352090A JP 2561869 B2 JP2561869 B2 JP 2561869B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、新規な結晶性芳香族ポリカーボネート粉体
に関するものである。
(従来の技術) 近年、芳香族ポリカーボネートは、耐熱性、耐衝撃
性、透明性などに優れたエンジニアリングプラスチック
として、多くの分野において幅広く用いられている。
一般に、工業的に大量に使用されている芳香族ポリカ
ーボネートは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)
プロパン(以下、ビスフェノールAという)に基づくも
のであり、通常、この芳香族ポリカーボネートは、非晶
性のペレット状で使用されている。
しかし、一方では、ペレット化せずに直接成形が可能
な粉体への要求が増加している。粉体のまま直接成形が
出来ると、粉体のペレット化の工程が省略される。それ
によって、ペレット化工程でのポリマーの着色、劣化と
いう品質低下がなくなり、成形品の性能も向上する。ま
た、エネルギーの消費量が削減され、工業的に非常に有
用な効果が得られる。
具体的な粉体の成形使用例としては、従来ポリカーボ
ネートの成形に通常よく用いられている射出成形、押出
し成形が挙げられる。
更に、ポリマーアロイでポリカーボネートと他の樹脂
との混練ペレット化の際には、粉体のままで使用する方
がペレット化が一度で済み便利である。
回転成形、焼結成形は、粉体からの直接成形方法であ
り、これらの成形に適したポリカーボネート粉体に対す
る要求も増加して来ている。
これらの粉対からの成形を行う用途に対しては、粉体
が良好な耐熱安定性、耐加水分解安定性を持つことが要
求されている。
即ち、成形時において、粉体が熱劣化したり、着色し
たりする原因となるような、不純物及び不安定な末端基
等を粉体が含有しないことが要求されている。
また、ポリカーボネートの場合は、粉体が含有する水
分が、主鎖の炭酸結合を加水分解するために、成形時に
厳密な予備乾燥が必要であり、これが他のプラスチック
と比較して問題とされていた。
従って、短時間の簡単な予備乾燥で成形しても、分子
量が下がらず、成形物に着色もなく、金型の腐食もない
ような粉体が望まれていた。
更に、回転成形等においては、粉体の溶融挙動も重要
になる。
即ち、粉末加工のエンゲル法、回転成形等において
は、金型界面からの距離にかかわらず、均一に熱が伝達
され、均一に溶融溶着することが必要である。
従来、ビスフェノールAとホスゲンとを塩化メチレン
と苛性ソーダ水溶液中で反応させる界面重縮合(ホスゲ
ン法)により得られたポリカーボネートの塩化メチレン
溶液から、結晶性ポリカーボネート粉体を得る方法が提
案されている。
しかし、粉体を製造するための重縮合反応自体におい
て、下記の問題点が指摘されている。
即ち、 (1) 有毒なホスゲンを用いなければならないこと、 (2) 副生する塩化水素や塩化ナトリウムなどの含塩
素化合物により装置が腐食すること、 (3) 樹脂中に混入する塩化ナトリウムなどのポリマ
ー物性に悪影響を及ぼす不純物の分離が困難なことな
ど、工業的に実施する場合に多くの問題を伴う(「ポリ
カーボネート樹脂」日刊工業新聞社刊行、第62〜67頁参
照)。
更に、重合終了後のポリマー溶液からポリカーボネー
トを粉体化する方法として種々の方法が記載されている
が、これらの方法は繁雑である上に、重合溶媒である塩
化メチレンを完全に除去することができず、粉体中に溶
媒の塩化メチレンや反応により生成する塩化ナトリウム
等の塩素原子が残存するのを避けることが出来なかっ
た。
例えば、界面活性剤でエマルジョン化して粒状物を取
り出す方法(特公昭44−11031号公報)、ポリカーボネ
ートの塩化メチレン溶液を噴射する方法や、加熱・濃縮
等による粉末化(特公昭45−9875号公報、特公昭46−31
468号公報、特公昭47−33485号公報)が挙げられている
が、界面活性剤のような材料を使用する必要があった
り、溶液を噴出させるための複雑な装置が必要であった
り、また加熱濃縮では多大のエネルギーが必要である。
上記のような繁雑な操作により、ポリカーボネートの
溶液から粉体を取り出しても、塩化メチレンのようなポ
リカーボネートの良溶媒はポリマーとの親和性が良く、
完全に除去することは困難であり、塩素化合物が粉体に
残存することになる。
特公昭59−22743号公報の記載によると、実施困難な
工程を使用せずに製造できるポリカーボネートの塩素含
有量は約0.005〜0.2重量%とされている。
さらに、該公報の実施例中には、帝人化成製L−1250
P(ポリカーボネート粉末)の塩素含有量は0.03重量%
と記載されている。
このようにホスゲン法では、工業的な製法において塩
素含有量を0.005重量%より低減することは不可能であ
った。
ホスゲン法で重合したポリマーの塩化メチレン溶液に
トルエンを加えてから溶媒を留去し、粒状のポリカーボ
ネートを得る方法が示されている(特公昭46−31468号
公報)。
この方法により得られたポリマーは、「結晶体を多く
含んだ非結晶体との混合物である」と記載されている。
この粉体の結晶化度は該公報の実施例によると28〜31
%(測定方法記載なし)の範囲であり、結晶化度は低い
ものである。更に、この粉体では前述したように塩素原
子が残っている。この粉体中に残存する塩素原子は金型
の腐食及び成形品の着色の原因になる。
従って、この方法により製造された粉体から無着色の
製品を、金型の腐食もなしに得ることはできなかった。
このように、ホスゲン法から製造されたポリカーボネ
ート粉体には、次のような欠点があった。
(1) 粉体に残存する塩素化合物は、成形時におけ
る、成形品の着色、金型の腐食の原因となる。
(2) 粉体中に残存している塩素化合物は、成形品の
長期の耐熱安定性も低下させる。
(3) 粉体は、結晶化度が低く、又、オリゴマーの含
有量が多いために、溶融開始から溶融終了までの温度巾
が広い。従って、均一な溶融を要求される成形について
は、特に不適当である。
一方、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボ
ネートとから芳香族ポリカーボネートを製造する方法も
以前から知られており、この方法から結晶性粉体をつく
ることも可能である。
例えば、ビスフェノールAとジフェニルカーボネート
との溶融状態におけるエステル交換反応によってフェノ
ールを脱離してポリカーボネートを製造する方法が、い
わゆるエステル交換法又は別名溶融法として、工業化さ
れていた。
しかしながら、この方法においては、高粘度のポリカ
ーボネートの溶融体の中からフェノール及び最終的には
ジフェニルカーボネートを留去していかなければ重合度
が上がらないことから、通常280〜310℃の高温下で、か
つ1mmHg以下の高真空下で長時間反応させる必要があ
る。
従って、(1) 高温高真空下に適した特殊な装置
と、生成物の高粘性による強力なかきまぜ装置を必要と
すること、 (2) 生成物の高粘性のために、プラスチック工業界
で通常使用されている反応機及びかきまぜ形式のもので
は、重量平均分子量が30,000程度の重合体しか得られな
いこと、 (3) 高温で反応させるため、副反応によって分岐や
架橋が起こりやすく、品質の良好なポリマーが得にくい
こと、 (4) 高温での長時間滞留によって着色を免れないこ
となど種々の欠点を有している。
また、この溶融法によって得られたポリカーボネート
は、ポリマー末端に−OH基が、0.009〜0.14%も残存し
ている〔「ポリカーボネート樹脂」日刊工業社刊、第62
〜67頁参照、特開昭63−43924号公報〕。
さらに加えて、この方法で得られるポリカーボネート
は、高温長時間の反応のために、副反応により−COOH基
が0.05〜0.11%生成している。このようにして得られた
ポリカーボネートは着色しており、完全に無色ではな
い。
末端−OH基に加えて副反応で生成した−COOHの存在は
免れず、この2種類の基が得られるポリカーボネートを
着色させたり、耐熱安定性、耐加水分解性を低下させて
いるものと考えられる。
更に、ポリカーボネート中にに残されていた触媒(一
般に、二価のフェノールのアルカリ金属塩が使用され、
これは重合終了後に除去することが出来ないため、必ず
ポリカーボネート中に残存する)が、ポリカーボネート
の高温成形に際して、成形品に著しい着色を生じさせ、
水蒸気テストや耐湿テストにおいては、重合体の加水分
解を促進するとの記載がある(特開昭62−235357号公
報)。
また、溶融法により得られたポリカーボネートは、分
子量分布が広いこと、分岐構造が多いことなどが知られ
ており、そのために、ホスゲン法で製造されたポリカー
ボネートに比べて物性面で劣ること、例えば強度適にや
や劣ること、特に脆性破壊性が大きいこと、成形性が劣
ることが指摘されている〔松金幹夫著「高分子」第27
巻、第521頁、1978年参照〕。
従って、溶融法によって得られた、非晶性ポリカーボ
ネートを公知の方法(加熱結晶化、溶媒による結晶化)
により結晶化させたとしても、得られた結晶性粉体は成
形前はすでに着色が起こったものであり、さらに耐熱
性、耐加水分解安定性、成形性共に以上に劣っており、
粉体としての使用は全く不適当である。
以上述べたように、充分な耐熱性、耐加水分解性を有
しており、しかも成形時の成形品や着色や、金型の腐食
の問題などがなく、成形性が良好である直接成形用ポリ
カーボネート結晶性粉耐は従来全く得られていなかった
のが現状である。
(発明が解決しようとする課題) 本発明は、前述の如く従来のポリカーボネートの結晶
性粉体が持っていた欠点を改良しようとするものであ
る。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは、ポリカーボネートの結晶性粉体の組成
及び構造について検討を重ねた結果、 新規の組成及び構造をもつポリカーボネート粉体が前
記目的を満足することを見出し、この知見に基づいて本
発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は; (1)1) 平均粒径が50μm〜2mmの範囲であり、 2) 結晶化度が30〜70%であり、 3) 重合体の末端が、 −O−Ar1単独又は −O−Ar1、及び−Ar2−OHの (ただし、Ar1、Ar2は芳香族基を表す。)末端であっ
て、の場合、末端のうちの−OH部分が、重合体に対し
て重量比で0.05%以下で、 4)実質的に塩素原子を含まず、 5)表面積が0.1m2/g以上であり、 で表される繰返し単位(ただし、Ar3は二価の芳香族基
を表す。)をもつ結晶性芳香族ポリカーボネート粉体を
提供するものである。また、 (2) で表される繰返し単位中85モル%以上が、 の繰返し単位をもつ点にも、 (3) 重量平均分子量が10,000〜150,000の範囲であ
って、分子量2,000以下の重量分率が2.5%以下である点
にも、特徴がある。
以下本発明を詳細に説明する。
(i) 本発明でいう結晶性芳香族ポリカーボネートと
は、式; で表される繰返し単位を持つものである。
式中Ar3は二価の芳香族残基を表す。
このような芳香族残基としては、例えばフェニレン
(各種)、ナフチレン(各種)、ビフェニレン(各
種)、ピリジレン(各種)、及び一般式; −Ar4−Z−Ar5 ・・(II) で表される2価の芳香族基が挙げられる。
ここで、Ar4及ひAr3同一であっても、異なっていても
よい2価の芳香族基であって、例えば、フェニレン(各
種)、ナフチレン(各種)、ビフェニレン(各種)、ピ
リジレン(各種)などの基を表す。Zは単なる結合、又
は−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−CO2−、 −CON(R1)−、 などの2価の基を表す。
(ここで、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なってい
てもよく、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ
基、シクロアルキル基を表し、kは3〜11の整数を表
す。) さらには、このような2価の芳香族基(即ち、Ar3
又はAr4、Ar5)において、1つ以上の水素原子が、反応
に悪影響を及ぼさない他の置換基、例えば、ハロゲン原
子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フェニル基、
フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミ
ド基、ニトロ基などによって置換されたものであっても
よい。
このような芳香族基としては、例えば、 で表される置換又は非置換のフェニレン基: で表される置換又は非置換のビフェニレン基: (式中のR5及びR6はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、
炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級ア
ルコキシ基、シクロアルキル基又はフェニル基であっ
て、これらは同じであってもよいし互いに異なっていて
もよく、m及びnは1〜4の整数で、mが2以上の場合
にはR5はそれぞれ異なるものであってもよいし、nが2
以上の場合にはR6はそれぞれ異なるものであってもよ
い) で表される置換又は非置換の二価芳香族基等が挙げられ
る。
これらの構造の中でAr3としては、 が好ましい。
さらに、 の繰返し単位を85モル%以上含むものが好ましい。
(ii) 本発明の粉体の結晶化度について説明する。
本発明の粉体の結晶化度は30%以上であり、好ましく
は30〜70%の範囲である。
結晶化度が30%未満の場合は、予備乾燥での乾燥速度
が遅くなり、残留水分量も多くなる。また、溶融温度巾
が広くなり好ましくない。結晶化度が70%より大きい場
合は、粉体の使用上特に問題はないが、高度に結晶化し
た粉体を得るのにアニール等の操作に長時間を要するも
のが多く、製造上不適当である。
粉体の非晶部は水分を通しやすいために、粉体の結晶
化度が低いと粉体の吸着水分が多くなる。本発明の製法
では、表面から結晶化が起こり、そのために表面積が高
くなっているものと思われる。
従って、粉体全体の結晶化度が高いのみでなく、表面
が結晶化しているために、表面に付着した水分は予備乾
燥で短時間に簡単に除去される。
また、結晶化度が低いと、後述のように分子量2,000
以下の部分の重量が2.5%以下であっても、ガラス転移
点(以下Tgと略す)以上、結晶融点(以下Tmと略す)以
下の温度範囲で、徐々に融着が起こる。従って、回転成
形等の場合のように狭い温度範囲で溶融することが必要
な成形に対して不適当である。
本発明の結晶化度の範囲でかつ分子量20,000以下の部
分の重量が2.5%以下の場合において、溶融温度巾が狭
くなり、回転成形、焼結成形に有利である。
結晶化度は、広角X線回折法により回折チャートの非
晶部、結晶部の面積から、 の式により求めた。
(iii)本発明の粉体における末端の構造について説明
する。
重合体の末端が、 −O−Ar1単独又は −O−Ar1、及び−Ar2−OHの(ただし、Ar1、Ar2は芳
香族基を現す。)末端である。
ここでAr1は一価の芳香族残基を表し、1つ以上の水
素原子が反応に悪影響を及ぼさない他の置換基、例え
ば、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ
基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、
エステル基、アミド基、ニトロ基などによって置換され
たものであっても良い。
このような末端としては、例えば、式; (式中のR7は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素
数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコ
キシ基、シクロアルキル基又はフェニル基であり、p及
びqは1〜5の整数で、pが2以上の場合にはR7はそれ
ぞれ異なるものであってもよい。)で表されるものであ
る。
この中で、 の場合が好ましい。
次に、−Ar2−OH末端について説明する。Ar2は二価の
芳香族残基を表す。
このような芳香族残基としては、例えば、式: (式中のR5は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素
数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコ
キシ基、シクロアルキル基又はフェニル基であって、こ
れらは同じであってもよいし、互いに異なっていてもよ
く、m及びnは1〜4の整数で、mが2以上の場合には
R5はそれぞれ異なるものであってもよい。) で表されるものである。
この中で、R5が水素原子、及び低級アルキル基の場合
が好ましく、更に好ましいのはR5が水素原子である の場合である。
本発明において、重合体の末端が上記の場合、末端
のうちの−OH部分、すなわち上記Ar2−OH末端のヒドロ
キシ基が重合体に対して重合比で0.05%以下であること
が好ましい。更に好ましくは0.03%以下である。
なお、ヒドロキシ基の測定は、四塩化チタンによる比
色法(Makromol.Chem.,88,215('65)によった。
ヒドロキシ基が0.05%より多くなると、粉体の耐熱
性、耐加水分解性が悪くなり、成形時のみならず、高温
での成形品の使用時においても劣化を引き起こし不適当
である。
(iv)次に塩素含量について説明する。
本発明の粉体は、後述の好ましい実施態様において明
確な如く、単量体、溶媒等に塩素化合物を一切使用する
必要がないために、本質的に粉体中に塩素原子は含まれ
ない。
本発明の粉体の塩素原子含有量の測定値は、燃焼法の
測定限界以下で0.003%未満である。
塩素原子が0.003%以上、特に、0.005%以上では、成
形時に耐熱性、耐加水分解性が低下する。更に、成形物
の着色が起こり、また金型腐食も起こるために好ましく
ない。
又、AgNO3により滴定法で求めた本発明の粉体中の塩
素イオンは、この方法の測定限界の0.00001%以下であ
った。
(v)本発明の粉体の表面積は、0.1m2/g以上であり、
好ましくは0.2m2/g以上である。表面積は、島津製作所
製アキュアソープ2100−02型を使用して、クリプトンガ
スを用いて測定した。
本発明の粉体は、表面が結晶化された多孔質の粉体で
あると思われる。多孔質であるために、成形前の乾燥が
非常に容易に短時間で行われて好適である。この効果
は、表面積が0.2m2/g以上において更に顕著となり好ま
しい。
粉体の水分量についてまとめて説明すると、本発明の
粉体は、結晶化度が高く、多孔質であるために容易に乾
燥が行われ、乾燥後に残存する水分量も少なくなる。
従って、成形時において水分により重合体が加水分解
されるという問題が容易に解決される。
(vi)次に分子量及び分子量分布について説明する。
本発明の結晶性粉体の重量平均分子量は、10,000〜15
0,000の範囲である。成形性の良好な範囲として15,000
〜70,000の範囲が好ましい。
分子量が10,000より小さいと、成形体の機械的強度が
小さく不適当である。また、分子量が150,000より大き
いと、溶融粘度が高くなり成形性が悪くなり不適当であ
る。
さらに、この粉体は分子量2,000以下のオリゴマーを
含量が2.5重量%以下である。オリゴマー含量がこれ以
上の場合、下記に示す結晶化度が30〜70%の範囲であっ
ても、粉体の溶融温度巾が広がり不適当である。
DSCで測定した溶融温度巾について説明する。
本発明の粉体の溶融開始(DSCにおける吸熱のピーク
の開始点)から溶融終了(DSCにおける吸熱のピークの
終了点)の温度巾は20〜35℃である。温度巾が35℃より
広い場合、回転成形の場合等において特に成形性が悪く
なり不適当である。
芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを
100%使用した本発明のポリカーボネート単独重合体の
粉体のTmは240〜275℃の範囲であり、従来のホスゲン法
による粉体のTm227〜245℃と比較して高くなっている。
分子量及び分子量分布の測定はゲルバーミエーション
クロマトグラフィー(以下GPCと略す)を使用し、測定
条件は下記の方法によった。
テトラヒドロフラン溶媒、ポリスチエンゲルを使用
し、標準単分散ポリスチレンの補正曲線から、下記式
(1)による換算分子量較正曲線を用いた。
式(1);Mpc=0.359MPS 1.0388 (式中Mpcはポリカーボネートの分子量で、Mpsはポリス
チレンの分子量である。) なお、DSCの測定は、以下の方法によった。
不活性気体(N2)下、10℃/分の昇温、サンプル量5
〜10mgである。
(vii)本発明の粉体の粒径は、制御することが可能で
ある。
すなわち、予備重合終了後に所望の粒径の粉体を粉砕
などの公知の方法により得る。これは結晶化工程及び固
相重合工程を経た後も、かなりの部分が保持されること
が明らかとなった。
本発明のポリカーボネート粉体の篩分けにより測定し
た平均粒径は50μm〜2mmの範囲である必要がある。こ
の範囲の平均粒径を持つポリカーボネート粉体を用いる
と、他の樹脂との配合工程を伴う工業的な製造工程及び
粉体の回転成形のような直接成形を考えた場合の粉体の
取扱上で好適である。
なお、粒径は、筒井化学機器製ミクロ型電磁振動ふる
い器を用いて、50%積算粒径(メジアン径)を求め、平
均粒径とした。
以上述べてきたように、本発明の構造及び組成を全て
満足する粉体において、はじめて以下の要件を満たし、
直接成形の可能な粉体が得られたものである。即ち、本
発明の粉体は: (1) 成形時の熱安定性が良好であり、又成形時に重
合体の着色が起こらない。
(2) 粉体に吸着する水分は短時間に容易に乾燥出来
る。従って、成形時に加水分解が起こるという問題がな
い。
(3) 成形時における金型腐食がない。
(4) 溶融温度巾が狭く、均一な溶融が必要な回転成
形等に特に有効である。
(5) 本発明の粉体による成形品は、高温、高湿度下
の使用時における、耐熱性、耐加水分解性が良好であ
り、又成形品の着色もない。
のような特長を有している。
(viii)次に、本発明の結晶性粉体の製造の一例として
好適な実施態様について述べる。
使用する単量体は、ジアリールカーボネート、2,2−
ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフ
ェノールAと略す)及び、共単量体として使用する芳香
族ジヒドロキシ化合物である。
ジアリールカーボネートは、一般式; で表される芳香族モノヒドロキシ化合物の炭酸エステル
であり、 該式中のAr6及びAr7はアリール基であって、これらは
同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。ま
た、前記Ar6及びAr7おいて、1つ以上の水素原子が、反
応に悪影響を及ぼさない他の置換基、例えば、ハロゲン
原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フェニル
基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、
アミド基、ニトロ基などによって置換されたものであっ
てもよい。
このようなジアリールカボネートとしては、例えば、 (式中のR7およびR8は、それぞれ水素原子、ハロゲン原
子、酸素数1〜4の低級アルキル基、炭酸数1〜4の低
級アルコキシ基、シクロアルキル基又はフェニル基であ
り、p及びqは1〜5の整数で、pが2以上の場合には
R7はそれぞれ異なるものであってもよいし、qが2以上
の場合にはR8はそれぞれ異なるものであってもよい) で表される置換又は非置換のジフェニルカーボネート類
が挙げられる。
このジフェニルカーボネト類の中でも、ジフェニルカ
ーボネートや、ジトリルカーボネート、ジ−t−ブチル
フェニルカーボネートのような低級アルキル置換ジフェ
ニルカーボネートなどの対称型ジアリールカーボネート
が好ましいが、特に最も簡単な構造のジアリールカーボ
ネートであるジフェニルカーボネートが好適である。
これらのジアリールカーボネート類は単独で用いても
よいし、2種以上を組合せて用いてもよいが、反応系が
複雑になりあまり利点がないので、対称型のジアリール
カーボネート1種を用いるのがよい。
ビスフェノールAと芳香属ジヒドロキシ化合物との使
用割合は、モル比で85:15〜100:0の範囲である。
使用する芳香族ジヒドロキシ化合物は、 一般式; HO−Ar3−OH ・・・(V) で表されるものであり、 ここでAr3は芳香族ジヒドロキシ化合物の2価の芳香族
残基を表すが、このような芳香族残基としては、例え
ば、フェニレン(各種)、ナフチレン(各種)、ビフェ
ニレン(各種)、ピリジレン(各種)、及び一般式; −Ar4−Z−Ar5 ・・・(VI) で表される2価の芳香族基が挙げられる。
ここで、Ar4及びAr5は同一であっても異なっていてもよ
い2価の芳香族基であって、例えば、フェニレン(各
種)、ナフチレン(各種)、ビフェニレン(各種)、ピ
リジレン(各種)などの基を表す。
Zは、単なる結合、又は−O−、−CO−、−S−、−
SO2−、−CO2−、−CON(R1)−、 などの2価の基を表す。
(ここで、R1,R2,R3,R4は同一であっても異なっていて
もよく、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ
基、シクロアルキル基を表し、kは3〜11の整数を表
す)。
さらには、このような2価の芳香族基(すなわち、Ar
3、又はAr4、Ar5)において、1つ以上の水素原子が、
反応に悪影響を及ぼさない他の置換基、例えば、ハロゲ
ン原子、低級アルキル基、低級アルオキシ基、フェニル
基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、
アミド基、ニトロ基などによって置換されたものであっ
てもよい。
このような芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例え
ば、 で表されるジヒドロキシフェノール類; で表されるジヒドロキシビフェニル類; (式中のR5及びR6はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、
炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級ア
ルコキシ基、シクロアルキル基又はフェニル基であっ
て、これらは同じであってもよいし、互いに異なってい
てもよく、m及びnは1〜4の整数で、mが2以上の場
合にはR5はそれぞれ異なるものであってもよいし、nが
2以上の場合にはR6はそれぞれ異なるものであってもよ
い)(ただしビスフェノールAは除く) 等のビスフェノール類などが好ましく用いられる。
また、分岐構造を導入するために三官能以上のフェノ
ール類を使用することも可能である。
(iX)まず予備重合工程において、上記単量体を加熱下
に処理することによってジアリールカーボネートから生
成する芳香族モノヒドロキシ化合物を脱離させながら、
フレポリマーを調製する。
この予備重合反応における単量体の使用割合は、ジア
リールカーボネートがビスフェノール1モルに対し、通
常1.0〜2.0モル、好ましくは1.01〜1.5モル、より好ま
しくは、1.02〜0.3モルの割合で使用される。
通常は、該プレポリマーの末端のうち−OH末端の比
率、即ち の式において、0〜45モル%の範囲となるように予備重
合反応を行うのが好ましい。
この予備重合工程で製造されるプレポリマーの重量平
均分子量は、通常1,000〜10,000、好ましくは2,000〜8,
000の範囲で選ばれる。この重量平均分子量が1,000未満
では次の結晶化工程での結晶化が困難となり好ましくな
い。また、10,000より大きくすると、次第に予備重合の
溶融粘度が高くなり、予備重合時間が長くなり、次工程
での結晶化にも時間がかかり好ましくない。
該予備重合反応は、溶融状態で実施されるのが好まし
い。このような分子量の範囲のプレポリマーは、その溶
融粘度がそれほど高くならないため、工業的に実施する
ことは容易である。
予備重合工程を実施する際の反応温度及び反応時間
は、通常50〜350℃、好ましくは100〜280℃の範囲の温
度で通常1分〜数十時間、好ましくは数分〜数時間の範
囲で選ばれる。
予備重合工程においては、反応の進行に伴って芳香族
モノヒドロキシ化合物が生成してくるが、これを反応系
外へ除去することによってその速度が高められる。
従って、効果的な撹拌を行うと同時に窒素、アルゴ
ン、ヘリウム、二酸化炭素などの不活性ガスや低級炭化
水素ガスなどを導入して、生成してくる該芳香族モノヒ
ドロキシ化合物をこれらのガスに同伴させて除去する方
法や、減圧下に反応を行う方法、及びこれらを併用した
方法などが好ましく用いられる。
この予備重合反応は、触媒を加えずに実施することが
でき、最終的に得られる粉体の、特に耐加水分解等を改
良する効果が大きく、特に好ましい実施形態の1つでは
あるが、最終的に得られる粉体の耐加水分解等を損なわ
ない範囲内において、必要に応じて重合速度を速めるた
めに重合触媒を用いることもできる。
このような重合触媒としては、この分野で用いられて
いる重縮合触媒であれば特に制限はないが、水酸化リチ
ウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カル
シウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸
化物類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カ
ルシウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水
素化合物類;水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ
素ナトリウム、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウム
などのホウ素やアルミニウムの水素化物のアルカリ金属
塩、アルリ土類金属塩、第四級アンモニウム塩類;リチ
ウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カルシウムメ
トキシドなどのアルカリ金属、及びアルカリ土類金属の
アルコキシド類;リチウムフェノキシド、ナトリウムフ
ェノキシド、マグネシウムフェノキシド、LiO−Ar−OLi
−NaO−Ar−ONa(Arはアリール基)などのアルカリ金属
及びアルカリ土類金属のアリーロキシド類;酢酸リチウ
ム、酢酸カルシウム、安息香酸ナトリウムなどのアルカ
リ金属及びアルカリ土類金属の有機酸塩類;酸化亜鉛、
酢酸亜鉛、亜鉛フェノキシドなどの亜鉛化合物類;酸化
ホウ素、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸トリメチ
ル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニルなどのホウ
素の化合物類;酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、テトラ
アルキルケイ素、テトラアリールケイ素、ジフェニル−
エチル−エトキシケイ素などのケイ素の化合物類;酸化
ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムエト
キシド、ゲルマニウムフェノキシドなどのゲルマニウム
の化合物類;酸化スズ、ジアルキルスズオキシド、ジア
リールスズオキシド、ジアルキルスズカルボキレート、
酢酸スズ、エチルスズトリブトキシドなどのアルコシシ
基又はアリーロキシ基と結合したスズ化合物、有機スズ
化合物などのスズの化合物類;酸化鉛、酢酸鉛、炭酸
鉛、塩基性炭酸鉛、鉛及び有機鉛のアルコキシド又はア
リーロキシドなどの鉛の化合物;第四級アンモニウム
塩、第四級ホスホニウム塩、第四級アルソニウム塩など
のオニウム化合物類;酸化アンチモン、酢酸アンチモン
などのアンチモンの化合物類;酢酸マンガン、炭酸マン
ガン、ホウ酸マンガンなどのマンガンの化合物類;酸化
チタン、チタンのアルコキシド又はアリーロキシドなど
のチタンの化合物類;酢酸ジルコニウム、酸化ジルコニ
ウム、ジルコニウムのアルコキシド又はアリーロキシ
ド、ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウム
の化合物類などの触媒を用いることができる。
触媒を用いる場合、これらの触媒は1種だけで用いて
もよいし、2種以上の組合せて用いてもよい。また、こ
れらの触媒の使用量は、原料の芳香族ジヒドロキシ化合
物に対して、通常0.00001〜1.0重量%、好ましくは0.00
003〜0.1重量%の範囲で選ばれる。
(X)次に結晶化工程について説明する。
該予備重合反応の好ましい実施態様においては、溶媒
を用いないで溶融状態で行われるが、このようにして得
られたプレポリマーを室温付近までそのまま冷却したも
のは、一般的に結晶化度の低い非晶質状態である。
しかしながら、このような非晶質状態のプレポリマー
は、目的とする芳香族ポリカーボネートのガラス転移温
度付近の温度で溶融したり、融着してしまうので、その
ままでは、固相重合を実施することは困難である。比較
的低分子量のプレポリマー、例えば重量平均分子量が約
10,000以下、殊に約8,000以下の非晶質状態のプレポリ
マーにおいては、特にその傾向が大きいので、そのまま
固相重合を実施することは実質的に不可能である。その
ために、プレポリマーを結晶化させる結晶化工程が実施
される。
このようなプレポリマーを結晶化させる方法について
は、プレポリマーに対する溶解力の小さい溶媒を用い
て、その溶媒がプレポリマー中に浸透して、プレポリマ
ーを結晶化させるのに必要な時間、該プレポリマーを液
状の溶媒又は溶媒蒸気に接触させる方法が好適に用いら
れる。
このような溶媒の例としては、アセトン、メチル、エ
チルケトン、酢酸エチル、トルエン、アセトニトリル、
ニトロメタン等が挙げられる。
結晶化の時間、温度は使用する溶媒によって異なる
が、通常数秒〜数時間の範囲で選ばれる。また、温度は
通常−10〜200℃の範囲で選ばれる。
結晶化を行った後の溶媒は、濾過、遠心分離、蒸留等
で除くことが好ましい。
かくして得られた結晶化プレポリマーのTmは、ビスフ
ェノールAを100%用いた場合、210〜240℃であり、結
晶化度は5〜40%である。
(Xi)このようにして結晶化したプレポリマーを、その
溶融温度より低く、ガラス転移温度より高い温度で固相
状態に保ちながら固相重縮合させることによって、容易
に高分子量の芳香族ポリカーボネートにすることができ
る。
この固相重合工程において、芳香族モノヒドロキシ化
合物、及びジアリールカーボネートが副生する。
従って、これらの化合物を系外に抜き出すことによっ
て、その反応が促進される。そのためには、窒素、アル
ゴン、ヘリウム、二酸化炭素などの不活性ガスや、低級
炭化水素ガスなどを導入して、ジアリールカーボネート
や芳香族モノヒドロキシ化合物をこれらのガスに随伴さ
せて除去する方法や、減圧下に反応を行う方法、及びこ
れらを併用した方法などが好ましく用いられる。また、
同伴用のガスを導入する場合には、これらのガスを、反
応温度付近の温度に加熱しておくことが好ましい。
この固相重合反応を実施する場合のプレポリマー形状
については特に制限はないが、大きな塊状のものは反応
速度が遅くかつ取扱が面倒であるなどの点から好ましく
なく、ペレット状、ビーズ状、顆粒状、粉末状などの形
状のものが好適である。また、結晶化後の固体状のプレ
ポリマーを適当な大きさに破砕したものが好ましく用い
られる。この場合の平均粒径が10μm〜5mmの範囲であ
ると、得られる本発明の結晶生粉体が粉体成形に適した
平均粒径をもつので好ましい。
該固体重合反応を実施する際の反応温度及び反応時間
については、プレポリマーの分子量、結晶化度、Tm(結
晶融点)、形状、触媒の優無、必要とする到達分子量な
どによって異なるが、通常反応温度はTg(ガラス転移
点)以上であって、結晶が溶融融着しないような温度以
下の範囲で選ばれる。好ましくは150〜230℃である。
また、反応時間は、数10分〜100時間である。この範
囲より短いと分子量を上げる効果が小さく、この範囲よ
り長いと重合中のポリマーの劣化が生じ好ましくない。
好ましい範囲は3時間〜50時間である。
該固相重合反応は触媒なしでも進行させることがで
き、これが最も好ましい実施態様であるが、本発明の粉
体の特長のうちの、特に耐加水分解性を低下させない範
囲で、さらに反応速度を高める目的で触媒を使用するこ
ともできる。
前記予備重合工程で触媒を使用したならば、通常、生
成するプレポリマー中に触媒が残存するので、新たに触
媒を加える必要もないが、何らかの理由で触媒が除去さ
れたり、活性が低下している場合もあるので、その際に
は必要に応じて適当な触媒を加えることもできる。この
場合、液状又は気相状態にした触媒成分をプレポリマー
に加えることも好ましい方法である。このような触媒成
分としては、予備重合工程で用いることのできる前記の
ようなものを挙げることができる。
このように固相重合を実施することにより、結晶性プ
レポリマーの重合度を上げ、重量平均分子量10,000〜15
0,000のポリカーボネート結晶性粉体が得られる。
以上の述べてきた如く、本発明の粉体を製造する方法
においては、有毒なホスゲンを使用することもないし、
塩素化炭化水素溶媒を使用しないために、副生する塩化
水素等による装置の腐食の問題もないし、また、高温高
真空下に適した特殊な装置も必要とせずに、工業的に簡
単な装置を用いて簡単な方法でポリカーボネートの結晶
性粉体が得られるものである。
本発明を実施するに当たって、使用される反応装置の
形式は、予備重合、結晶化及び固相重合のいずれの工程
においても、回分式、流通式、およびこれらを併用した
方式のものなどいずれの方法のものであってもよい。
本発明の粉体には、成形加工の際に公知の種々の添加
剤を加えることが出来る。例えば、熱安定剤、耐候安定
剤、離型剤、充填剤(シリカ、カーボンブラック、ガラ
ス繊維等)顔料、染料等が挙げられる。
(実施例) 次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、
本発明はこれらの例によってなんら限定されるものでは
ない。
なお、分子量はGPCで測定した重量平均分子量(Mw)
の値で示し、また、−OH量は四塩化チタンを使用した比
色法を用いて測定した。
Tm(結晶融点)、及び溶融開始から終了までの温度巾
(以下溶融温度巾と略す)は、DSCによりサンプル5mg、
N2下10℃/分の昇温により測定した。
また、予備重合反応装置、固相重合反応装置のいずれ
も、脱酸素及び乾燥に十分留意し、かつ反応中の酸素や
水などの混入をできるだけ少なくするように工夫したも
のを用いた。
実施例1 2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以
下、ビスフェノールAと略す)600g、ジフェニルカーボ
ネート648gを撹拌装置、ガス導入口、ガス吸引口付の2
の三つ口セパラブルフラスコに入れ、減圧脱気、乾燥
窒素導入を数回繰返した後、該フラスコを180〜190℃の
油浴に入れ、内容物を溶融後、減圧脱気、乾燥室素導入
を行った。次いで、浴温を250℃に上げ、かきまぜ下
に、乾燥窒素を80N/hrで導入して、生成してくるフェ
ノール及びジフェニルカーボネートを留出させた。約90
分後に、反応系を減圧にし、2〜5mmHgで約40分間かき
まぜることによって、フェノール及びジフェニルカーボ
ネートを留出させた。
この結果、Mw=7,800の無色透明なプレポリマーが得
られた。このプレポリマーをフラスコより取出し、粉砕
した後、アセトン中に浸漬することによって結晶化させ
た。得られた白色の粉末状のプレポリマーを濾過したの
ち、乾燥した。次に、この粉末状の結晶化プレポリマー
(結晶化度約19%)を予備重合装置と全く同様なフラス
コに入れ、3〜4mmHgの減圧下、少量の乾燥窒素を導入
しながら、フラスコを190℃の油浴に入れ、かきまぜな
がら5℃/hrで昇温した。220℃に達した後、さらに10時
間この操作を続けた。
得られたポリカーボネート粉体は、Mw=25,200、−OH
の重量比率0.01%、Tm257℃、溶融開始温度241℃、溶融
終了温度268℃で溶融温度巾27℃、結晶化度40%、分子
量2000以下のオリゴマーが1.5%、塩素原子含有量0.003
重量%以下、塩素イオン(AgNO3滴定法)含有量0.00001
重量%以下、表面積0.3m2/g、平均粒径1.3mmであった。
得られた粉体を120℃で熱風乾燥したところ、乾燥時
間1時間で水分0.01重量%であった。比較例1の粉体A
を同様に乾燥したところ、1時間で水分0.06重量%であ
った。
120℃で1時間乾燥した粉体を、小型射出成形機(モ
ダンマショナリー社製 M−JECIO)によりシリンダー
温度300℃で成形を行った。
成形品に着色や銀状は認められず、良好な外観を呈し
ていた。成形品のMwは25,100であり、成形前後の分子量
の変化はなかった。
成形品の引張降伏強度は610kg/cm2であった。
実施例2 予備重合工程において、乾燥窒素の導入から減圧を開
始する迄の時間を70分にした以外は、実施例1と同様に
予備重合工程、結晶化工程を行った。
得られた結晶プレポリマーは−OHの末端割合が31モル
%であった。
このプレポリマーを実施例1と同様に固相重合を行
い、220℃に達してから8時間で固相重合を終了させ
た。
得られた結晶性分体は、Mw=29.300、−OHの重量比率
0.02%、Tm255℃、溶融温度巾30℃、結晶化度37%、分
子量2,000以下のオリゴマーが1.3%、塩素原子含有量0.
0030重量%以下、塩素イオン(AgNo3滴定法)0.00001重
量%以下、表面積0.4m2/g、平均粒径900μmであった。
得られた粉体を実施例1と同様に120℃で1時間乾燥
したところ、1時間で水分は0.009重量%であった。
実施例3 ジフェニルカーボネートの使用量を620gに変え、実施
例1と同様に180〜190℃で溶融脱気、窒素置換まで行っ
た後、浴温230℃でかきまぜ下に、乾燥窒素を25N/hr
で導入し、徐々に100N/hrまで上げていき、生成する
フェノール及びジフェニルカーボネートを留出させた。
約160分後に反応系を減圧にし、2〜4mmHgで約3分間減
圧して、フェノール及びジフェニルカーボネートを留出
させた。この結果、Mwが6,800であった。このプレポリ
マーを実施例1と同様に結晶化した。
更に、実施例1と同様に固相重合を行ない、油浴が22
0℃に達した後19時間反応を行い、Mwが45,000、−OH重
量比率0.02%、Tm253℃、溶融温度巾32℃、結晶化度36
%、分子量2,000以下のオリゴマーが1.2%、塩素上子含
有量0.003重量%以下、塩素イオン含有量(AgNO3滴定
法)0.00001重量%以下、表面積0.5m2/g、平均粒径2mm
のポリカーボネート結晶性粉体を得た。また、実施例1
と同様に乾燥を行い、水分は0.008重量%であった。
実施例4 ジフェニルカーボネート704gを使用した以外は実施例
1と同様に予備重合を行い、Mw=7,300のプレポリマー
を得た。このプレポリマーを酢酸エチルにより結晶化さ
せ、濾別、乾燥した。
油浴が220℃に達してから12時間反応させた以外は、
実施例1と同様に固相重合を行い、Mwが16,400、−OH重
量比率0.01%、溶融温度巾25℃、結晶化度45%、分子量
2,000以下のオリゴマーが2.0%、塩素原子含有量0.003
重量%以下、塩素イオン含有量(AgNO3滴定法)0.00001
重量%以下、表面積0.6m2/g、平均粒径300μmのポリカ
ーボネート結晶粉体を得た。
実施例5 ビスフェノールA600gを、ビスフェノールA540g及び4,
4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン66gを変えた以外
は、実施例1と同様にして、粉体を得た。
Mw=24,500、−OH重量比率0.03%、塩素原子含有量0.
003重量%以下、塩素イオン含有量(AgNO3滴定法)0.00
001重量%以下、表面積0.2m2/g、平均粒径1.3mmであっ
た。
比較例1 市販品ポリカーボネート粉末A、B、Cについて同様
な測定を行った。
以上、実施例及び比較例の結果を表1にまとめた。
(発明の効果) 従来から得られている結晶性粉体では、直接成形に充
分な要件を満足するものが得られていなかった。
すなわち、従来の粉体は、成形時の熱安定性、加水分
解安定性が不充分であったり、成形時に重合体の着色が
起こったり、金型を腐食させたり、粉体の乾燥に多大な
時間を要したり、溶融温度巾が広く、特に回転成形のよ
うな均一な溶融が必要な成形に不適当であったりしてい
た。
本発明は、上記の全ての問題点を解決し、粉体からの
直接成形に適した新規な結晶性粉体を与えるものであ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例1で得られた粉体粒子の微細構造を示
す電子顕微鏡写真である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1) 平均粒径が50μm〜2mmの範囲であ
    り、 2) 結晶化度が30〜70%であり、 3) 重合体の末端が、 −O−Ar1単独又は −O−Ar1、及び−Ar2−OHの (ただし、Ar1、Ar2は芳香族基を表す。)末端であっ
    て、の場合、末端のうちの−OH部分が、重合体に対し
    て重量比で0.05%以下で、 4)実質的に塩素原子を含まず、 5)表面積が0.1m2/g以上であり、 で表される繰返し単位(ただし、Ar3は二価の芳香族基
    を表す。)をもつ結晶性芳香族ポリカーボネート粉体。
  2. 【請求項2】式; で表される繰返し単位中85モル%以上が、 の繰返し単位をもつ、請求項(1)項記載の結晶性芳香
    族ポリカーボオネート粉体。
  3. 【請求項3】重量平均分子量が10,000〜150,000の範囲
    であって、分子量2,000以下の重量分率が2.5%以下であ
    る、請求項(1)又は(2)記載の結晶性芳香族ポリカ
    ーボネート粉体。
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