JP3124786B2 - 高分子量芳香族ポリカーボネート - Google Patents

高分子量芳香族ポリカーボネート

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JP3124786B2
JP3124786B2 JP03131416A JP13141691A JP3124786B2 JP 3124786 B2 JP3124786 B2 JP 3124786B2 JP 03131416 A JP03131416 A JP 03131416A JP 13141691 A JP13141691 A JP 13141691A JP 3124786 B2 JP3124786 B2 JP 3124786B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な高分子量芳香族
ポリカーボネートに関するものである。さらに詳しく言
えば、流動性、カラーが優れ、高温での成形時に劣化や
着色がなく、溶融張力が強く、特に押出成形、ブロー成
形に好適な高分子量芳香族ポリカーボネート及びその組
成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】芳香族ポリカーボネートは、耐衝撃性、
透明性、寸法安定性などに優れるエンジニアリングプラ
スチックとして、種々の分野において多用されている。
従来提供されている芳香族ポリカーボネートは、通常重
量平均分子量(以下Mwと略す)が35000迄のもの
である。Mwが35000以上の芳香族ポリカーボネー
トは、耐溶剤性が優れるが、溶融粘度が高く、成形性に
劣っていた。溶融粘度を低下させるために成形温度を高
くすると、ポリカーボネートが劣化、着色する。
【0003】Mwが70000以上では、押出機でフィ
ルムに出来ないと記載されている。 (特公昭61−57860号公報)特開昭61−238
823号公報に、高分子量ポリカーボネートの製造法が
記載されている。この中で粘度平均分子量(以下Mvと
略す。)70000〜110000、分子量分布〔Mw
/Mn(ここでMnは数平均分子量を表わす。)3.0〜
3.3の高分子量芳香族ポリカーボネートが製造されて
いる。
【0004】しかし該ポリカーボネートは、流動性が悪
く、成形性に劣っていた。また、高温度で成形すると、
該ポリカーボネートは、着色や劣化が起こり、更に成形
機や金型の腐食、汚染をひき起こした。以上述べたよう
に、成形性が良好で、かつ高温時の成形で、着色や劣化
が起こらず、成形機・金型・ダイ等の腐食、汚染を起こ
さず、溶融張力の強いポリカーボネートは得られていな
かった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、溶融成形に
適した流動性を持ち、カラーが優れ、高温での成形時に
ポリカーボネートの着色や劣化がなく、溶融張力が強
く、特に押出成形、ブロー成形に好適な高分子量ポリカ
ーボネート及びその組成物を提供しようとするものであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】先に本発明者らは、ポリ
カーボネートの新規な製造法を開発した(特開平1−1
58033号公報、特開平3−68627号公報)。こ
れらの方法により高分子量芳香族ポリカーボネートが製
造出来ることを見出した。これらの技術を基に、本発明
者らは従来流動性が悪く、成形出来ないとされていた範
囲の高分子量ポリカーボネートの流動性を改良し、かつ
成形時にポリカーボネートの着色や劣化がなく、溶融張
力が強く押出、ブロー成形に適した高分子量芳香族ポリ
カーボネートを得ることを目的に検討を重ねたところ、
低分子量、高分子量部分の含有量が特定値以下で、分子
量分布の狭いポリカーボネートが非常に流動性が優れて
いること、実質的に塩素原子を含まないポリカーボネー
トが成形時にポリカーボネートの着色や劣化がないこ
と、即ち、これらの全ての要件を満たした高分子量芳香
族ポリカーボネートが、始めて前記の課題を達成するこ
とを見出し、本発明に到達した。
【0007】即ち本発明は、 1.下記化2で表わされる繰返し単位からなり、重量平
均分子量(Mw)が40000以上の高分子量芳香族ポ
リカーボネートであって、
【0008】
【化2】
【0009】(1) 分子量2000以下の部分が、全
重合体に対して1.0重量%以下、 (2) 分子量300000以上の部分が、全重合体に
対して5.0重量%以下、下、 (3) 分子量分布(Mw/Mn)がMw/Mn≦3.
6×10-5×Mw+1.38の範囲、 (ただし、Mw,Mnはそれぞれ重量平均分子量、数平
均分子量を表わす。) (4) Mw/Mpの値がMw/Mp≦1.5の範囲
〔ただしMpはゲルパーミエーションクロマトグラフィ
ー(GPC)で測定したクロマトグラムのピークトップ
の分子量を表わす。〕 (5) 実質上塩素原子を含まない、ことを満足してい
ることを特徴とする高分子量芳香族液ポリカーボネー
ト。 2.請求項1記載の高分子量芳香族ポリカーボネート1
00重量部とリン系安定剤0.0001〜0.5重量部
とからなる高分子量芳香族ポリカーボネート組成物。 3.メルトインデックス値(MI)がlog MI≧−
1.33×10-5×Mw+0.50を満たすことを特徴
とする請求項1記載の芳香族ポリカーボネート又は請求
項2記載の高分子量芳香族ポリカーボネート組成物。を
提供するものである。
【0010】本発明において高分子量芳香族ポリカーボ
ネートの繰り返し単位は下記化3で表わされる。
【0011】
【化3】
【0012】Ar1 は2価の芳香族残基を表わし、例え
ばフェニレン、ナフチレン、ピリジレン及び下記(II)
式で示されるものである。 −Ar2 −Y−Ar3 − ─── (II) 〔式中Ar2 及びAr3 は、それぞれアリーレン基であ
って、例えばフェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、
ピリジレンなどの基を表わし、Yは下記化4で示される
アルキレン基又は置換アルキレン基を表わす。
【0013】
【化4】
【0014】(ここでR1 ,R2 ,R3 及びR4 はそれ
ぞれ水素原子、低級アルキル基、シクロアルキル基、ア
リール基、アリールアルキル基であって、場合によりア
ルコキシ基で置換されていてもよい。Kは3〜11の整
数であり、このメチレン基の水素が炭素数1〜5の炭化
水素基で置換されていてもよい。)〕またAr1 は、(I
II) 式で示される構造を、含有するものであってもよ
い。
【0015】 −Ar2 −Z−Ar3 − ─── (III) 〔式中Ar2 、Ar3 は前記と同じであり、Zは単なる
結合、又は、−O−、−CO−、−S−、−SO2 −、
−CO2 −、−CON(R1 )−(R1 は前記と同様)
などの二価の基である。〕さらには、このようなアリー
レン基(Ar2、Ar3 )において1つ以上の水素原子
が、反応に悪影響を及ぼさない他の置換基、例えば、低
級アルキル基、低級アルコキシ基、フェニル基、フェノ
キシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、
ニトロ基などによって置換されたものであってもよい。
【0016】これらの中でAr1 は下記化5の構造を持
つものが流動性と衝撃強度が良好で好ましい。さらに、
Ar1 として下記化6の構造をもつものが特に好まし
く、流動性、衝撃強度等が特に良好な範囲はこの化6の
構造をもつものが85重量%以上含有される場合であ
る。
【0017】
【化5】
【0018】
【化6】
【0019】重量平均分子量(Mw)とはゲルパーミエ
ーションクロマトグラフィー(以下GPCと略す)によ
り測定したものであり、高分子量芳香族ポリカーボネー
トとは、Mwが40000以上である。好ましくは45
000〜300000更に好ましくは45000〜15
0000である。
【0020】Mwが40000未満であると耐溶剤性が
劣り好ましくない。Mwが1000000以上のような
あまり高いものは溶融粘度が高くなり、実質上有利でな
い。本発明の高分子量芳香族ポリカーボネートは、以下
の5つの要件を全て満たすことが必要である。これらの
うちの1つでも満たさないポリカーボネートは本発明に
示した効果が得られず好ましくない。 (1)本発明のポリカーボネートは、分子量2000以
下の部分が1.0重量%以下であることが必要である。
【0021】更に好ましくは、0.8重量%以下であ
る。(分子量2000以下の重量%はGPCの積分分布
曲線より求めた。)分子量2000以下の部分が1.0
重量%を越えると溶融成形の際に金型やダイの汚染が起
こる。又分子量分布が広がり好ましくない。 (2)分子量300000以上の部分は5.0重量%以
下であることが必要である。(分子量300000以上
の重量%は、GPCの積分分布曲線より求めた。)5.
0重量%を越えると、分子量分布が広がり、溶融流動性
が低下し好ましくない。即ち分子量300000以上の
部分が5.0重量%以下のものは、同一のMwを持ち、
かつ分子量300000以上の部分が5.0重量%を越
えるものより溶融流動性が大巾に改良される。 (3)分子量分布(Mw/Mn)はMw/Mn≦3.6
×10-5×Mw+1.38を満足することが必要であ
る。
【0022】分子量が増大すると、Mw/Mnが増大す
ることは一般的に知られている。Mw/Mnが3.6×
10-5×Mw+1.38を越えると溶融流動性が低下す
る。通常使用されているポリカーボネート(Mw200
00〜30000)の範囲ではMw/Mnが大きい程、
溶融流動性が良いと記載されている。〔NOVAREX
技術資料,9 P.10 三菱化成工業(株)〕。
【0023】本発明のMwの範囲ではこれとは全く逆の
傾向を示すことが明らかになった。即ち本発明の範囲で
は、Mw/Mnが大きくなると分子量の大きい部分が増
加し、これが溶融流動性低下の原因となっているものと
推測される。本明細書中に記載の製法で行った場合Mw
/Mnは通常2.2以上である。 (4)MwとMp(GPCのピークトップの分子量)の
比がMw/Mp≦1.5を満足することが必要である。
好ましくはMw/Mp≦1.3である。Mw/Mpが
1.5を越えると、溶融流動性が低下する。本明細書中
に記載の製法で行った場合Mw/Mpは通常1.0以上
である。
【0024】なお、分子量、分子量分布等の測定はGP
Cを使用し、測定条件は下記の方法によった。テトラヒ
ドロフラン溶媒、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分
散ポリスチレンの較正曲線から下記式による換算分子量
較正曲線を用いて求めた。MPC=0.359MPS 1.0388
(MPCはポリカーボネートの分子量、MPSはポリスチレ
ンの分子量である。)これら(1)〜(4)の要件を満
たした分子量分布の狭い高分子量芳香族ポリカーボネー
トを用いて、始めて良好な流動性、強い溶融張力等の本
発明の効果が得られる。(1)〜(4)の1つでも満た
さないものは本発明の効果が見られない。 (5)本発明のポリカーボネートは、実質的に塩素原子
を含まないことが必要である。
【0025】実質的に塩素原子を含まないということは
以下に示したことを意味する、即ちAgNO3 溶液を用
いた電位差滴定法による塩素イオンの測定方法で、塩素
イオンが0.00005重量%以下であり、同時に燃焼
法による塩素原子の測定方法で塩素原子が検出限界の
0.001重量%以下である。好ましくは、塩素イオン
が、上記測定法の検出限界以下の0.00002重量%
以下であり、同時に塩素原子が0.001重量%以下で
ある。
【0026】塩素イオンが0.00005重量%を越え
る、及び/又は塩素原子が0.001重量%を越える
と、加熱溶融時に組成物の着色や劣化が起こり,また成
形時に成形機や金型等を腐食させ好ましくない。本発明
のポリカーボネートは、着色の非常に少ないものであ
る。
【0027】着色の少ないものとは、以下で示した測定
法で吸光度が一定値以下のもののことである。測定は、
該ポリカーボネート1gを塩化メチレン7mlに溶解さ
せ、光路長1cm、400nmの吸光度の値を求めた。
吸光度0.01以下のものが着色が少なく好ましい。
【0028】ポリカーボネートには、通常ヒドロキシ基
が末端に存在している。この末端のヒドロキシ基は、高
温成形時にポリカーボネートの着色や、分子量低下を起
こす原因となる。本発明のポリカーボネートは、高分子
量体であるためポリカーボネートの末端基の重量%は小
さくなる。従って末端のヒドロキシ基によるポリマーの
着色や分子量低下は起こりにくい。しかしながら末端の
ヒドロキシ基重量%は小さい方がより好ましい。
【0029】本発明のポリカーボネートにおいて、末端
ヒドロキシ基の重量%は0.15重量%以下が好まし
い。なおヒドロキシ基の重量%の測定は、四塩化チタン
による比色法(Makromol.Chem.,88
P.215(1965))によった。本発明の高分子量
芳香族ポリカーボネートは、実質的に塩素原子を含まな
いため、高温成形時に着色や分子量低下はほとんど起こ
らない。
【0030】しかしリン系安定剤を添加した組成物は、
更に着色や分子量低下が少なく好ましい。リン系安定剤
の添加量は、高分子量芳香族ポリカーボネート100重
量部に対して0.0001〜0.5重量部の範囲であ
る。0.0001重量部未満ではその効果が小さく、ま
た0.5重量部を越えると耐加水分解性が低下し好まし
くない。
【0031】添加するリン系安定剤としては例えば、亜
リン酸モノエステル、亜リン酸ジエステル、亜リン酸ト
リエステル、有機フォスフォナイト等が挙げられる。亜
リン酸モノエステルは、亜リン酸(H2 PHO3 )の1
個の水素原子が炭化水素基に置換された構造をもつもの
であり、例として R8 −O−P(OH)2 (式中R8 はアルキル基、アリール基、又はアルキルア
リール基を示す。)で表わされる亜リン酸モノエステル
がある。
【0032】上式に於てアルキル基の例としては、エチ
ル基、ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、2−
エチルヘキシル基、デシル基、トリデシル基、ラウリル
基、ペンタエリスリトール基、ステアリル基等が挙げら
れる。又、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基
等が挙げられる。アルキルアリール基としては、トリル
基、パラターシャリ−ブチルフェニル基、2,4−ジタ
ーシャリ−ブチルフェニル基、2,6−ジターシャリ−
ブチルフェニル基、パラ−ノニルフェニル基、ジノニル
フェニル基等が挙げられる。
【0033】好ましい具体例としてフェニルジハイドロ
ゲンホスファイト(R8 ≡フェニル)、ノニルフェニル
ジハイドロゲンホスファイト(R8 ≡ノニルフェニ
ル)、2,4−ジタ−シャリ−ブチルフェニルジハイド
ロゲンホスファイト等が挙げられる。これらの亜リン酸
モノエステルは単独で使用しても良いし混合物で使用し
ても良い。
【0034】亜リン酸ジエステルは、亜リン酸(H2
HO3 )の2個の水素原子が炭化水素基に置換された構
造をもつものであり、例として下記化7で表わされる亜
リン酸ジエステルがある。
【0035】
【化7】
【0036】(式中R8 は前記と同じ、R9 はアルキル
基、アリール基、又はアルキルアリール基を示す。)上
式に於てアルキル基の例としては、エチル基、ブチル
基、オクチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシ
ル基、デシル基、トリデシル基、ラウリル基、ペンタエ
リスリトール基、ステアリル基等が挙げられる。又、ア
リール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられ
る。
【0037】アルキルアリール基としては、トリル基、
パラターシャリ−ブチルフェニル基、2,4−ジタ−シ
ャリ−ブチルフェニル基、2,6−ジタ−シャリ−ブチ
ルフェニル基、パラ−ノニルフェニル基、ジノニルフェ
ニル基等が挙げられる。好ましい具体例としては、ジフ
ェニルハイドロゲンホスファイト(R8 ,R9 ≡フェニ
ル)、ビス(ノニルフェニル)ハイドロゲンホスファイ
ト(R8 ,R9 ≡ノニルフェニル)、ビス(2,4−ジ
ターシャリ−ブチルフェニル)ハイドロゲンホスファイ
ト、ジクレジルハイドロゲンホスファイト、ビス(p−
ターシャリ−ブチルフェニル)ハイドロゲンホスファイ
ト、ビス(p−ヘキシルフェニル)ハイドロゲンホスフ
ァイト等が挙げられる。
【0038】本発明に使用される亜リン酸ジエステルは
上記一般式で表わされるもの以外にも、例えば下記化8
のようなリン原子を2つ含む亜リン酸ジエステルも使用
できる。
【0039】
【化8】
【0040】(式中R8 は前記に同じ、R10はアルキレ
ン、アリレン、又はアリールアルキレンを示す。)更に
下記化9の一般式で表わされるものも使用できる。
【0041】
【化9】
【0042】(式中R8 ,R10は上記と同じ。)これら
の亜リン酸ジエステル中で、芳香族亜リン酸ジエステル
が好ましい。特に好ましいものの例としては、ジフェニ
ルハイドロゲンホスファイト、ビス(ノニルフェニル)
ハイドロゲンホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブ
チルフェニル)ハイドロゲンホスファイト等が挙げられ
る。
【0043】これらの亜リン酸ジエステルは単独で使用
しても良いし、混合物で使用しても良い。亜リン酸トリ
エステルは、亜リン酸の3個の水素原子が炭化水素基に
置換された構造をもつものであり、例として下記化10
で表わされる。
【0044】
【化10】
【0045】(式中R11,R12,R13は同一であって
も、異なっていてもよくアルキル基、アリール基又はア
ルキルアリール基を示す。)上式でアルキル基として
は、エチル基、ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル
基、2−エチルヘキシル基、デシル基、トリデシル基、
ラウリル基、ペンタエリスリトール基、ステアリル基等
が挙げられる。
【0046】アリール基としてはフェニル基、ナフチル
基等が挙げられる。アルキルアリール基としてはトリル
基、パラターシャリ−ブチルフェニル基、2,4−ジタ
−シャリ−ブチルフェニル基、2,6−ジタ−シャリ−
ブチルフェニル基、パラノニルフェニル基、ジノニルフ
ェニル基等が挙げられる。好ましいものの例としては、
トリス(2,4ジタ−シャリ−ブチルフェニル)ホスフ
ァイト、トリスノニルフェニルフォスファイト、トリス
ジノニルフェニルフォスファイト、トリフェニルフォス
ファイト、が挙げられる。
【0047】又下記化11で表わされる亜リン酸トリエ
ステルも使用できる。
【0048】
【化11】
【0049】(式中R14,R15,R16,R17は同一であ
っても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基又
はアルキルアリール基を示し、R18はアルキレン基、ア
リーレン基又はアリールアルキレン基を示す。)具体例
として、テトラフェニルジプロピレングリコールジホス
ファイト、テトラ(トリデシル)4,4´−イソプロピ
リデンジフェニルジホスファイト、等が挙げられる。
【0050】又下記化12で表わされる亜リン酸トリエ
ステルも使用できる。
【0051】
【化12】
【0052】(式中R14,R15は上記に同じ。)で表わ
される亜リン酸トリエステルも使用できる。具体例とし
てビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホフファ
イト、ビス(ノニルフェニルペンタエリスリトールジホ
スファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)
ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,
6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリ
スリトール−ジホスファイト、ジステアリルペンタエリ
スリトールジホスファイト、水添ビスフェノールA・ペ
ンタエリスリトールホスファイトポリマー、等が挙げら
れる。
【0053】更に下記化13で表わされる亜リン酸トリ
エステルも使用できる。
【0054】
【化13】
【0055】(式中R14,R15,R18は前記に同じ。)
具体例としてテトラフェニルテトラ(トリデシル)ペン
タエリスリトールテトラホスファイトが挙げられる。こ
れらは単独で使用しても良いし混合物として使用しても
よい。2,4−ジターシャリ−ブチルフェニル基、2,
6−ジターシャリ−ブチルフェニル基を持つものが、該
組成物の耐加水分解性を向上させ特に好ましい。
【0056】具体例としては、トリス(2,4−ジター
シャリ−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4
−ジターシャリ−ブチルフェニル)ペンタエリスリトー
ルジホスファイト、ビス(2,6−ジタ−シャリ−ブチ
ル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホス
ファイトが挙げられる。有機フォスフォナイトは、亜リ
ン酸P(OH)3 の1つの水酸基を炭化水素基で置換
し、更に残りの2つの水素原子を炭化水素基で置換した
ものである。例として下記化14で表わされる。
【0057】
【化14】
【0058】(式中R19,R20,R21は同一であって
も、異なっていてもよく、アルキル基、アリール基又は
アルキルアリール基を示す。)アルキル基としては、エ
チル基、ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、デ
シル基、トリデシル基、ウラリル基、ステアリル基等が
挙げられる。
【0059】アリール基としてはフェニル基、ナフチル
基等が挙げられる。アルキルアリール基としては、トリ
ル基、パラターシャリ−ブチルフェニル基、2,4−ジ
タ−シャリ−ブチルフェニル基、パラノニルフェニル
基、ジノニルフェニル基等が挙げられる。上記化14で
表わされる一般式以外に、下記化15で表わされるよう
なリン原子を2つ含む有機フォスフォナイトが挙げられ
る。
【0060】
【化15】
【0061】(式中R22,R23,R24,R25は同一であ
っても、異なっていてもよく、アルキル基、アリール
基、又はアルキルアリール基を表わす。R18は前記に同
じ。)このような化合物の具体例としては、4,4´−
ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−
ターシャリ−ブチルフェニル)が挙げられる。
【0062】これらは単独で使用してもよいし混合物と
して使用しても良い。これらのリン系安定剤は単独で用
いても、混合して用いてもよい。亜リン酸モノエステル
及び亜リン酸ジエステルから選ばれた1種以上の化合物
と亜リン酸トリエステル及び有機フォスフォナイトから
選ばれた1種以上の化合物を混合して使用することが特
に着色及び分子量低下を防ぐ上で効果があり好ましい。
【0063】本発明の組成物に更にフェノール系安定剤
を添加することも可能である。本発明の高分子量芳香族
ポリカーボネートの他の大きな特長の一つは、優れた溶
融流動性である。従来のポリカーボネートではメルトイ
ンデックス値(以下MIと略す)とMwの関係は式の
範囲にある。
【0064】−5.40×10-5×Mw+2.24≦l
ogMI≦−5.40×10-5×Mw+2.46 ─
── 式によると、例えばMwが70000になるとMIは
0.05迄小さくなりこのポリカーボネートは成形性が
非常に悪くなる。前述のMw70000以上では押出機
でフィルムに出来ないという事実と一致している。
【0065】本発明の高分子量芳香族ポリカーボネート
は、従来のポリカーボネート(式)と比較して、同一
Mwでは予想外にMIが大きく大巾に溶融流動性が優れ
ている。MI値が式を満たすものが、押出成形、ブロ
ー成形に適しており、特に好ましい。 logMI≧−1.33×10-5×Mw+0.50 ─── 本発明の高分子量芳香族ポリカーボネートの更に他の大
きな特長は、溶融張力の強いことである。溶融張力が強
いとブロー成形時のパリソンが安定し、ブロー成形性が
良好になる。
【0066】溶融強度の尺度として下記数1で表わした
ドローダウン値(以下DDと略す)が特定の範囲にある
ものが特に好ましい。
【0067】
【数1】
【0068】式より明らかなようにドローダウンが大
きいとDD値は大きくなりドローダウンが小さいとDD
値は小さくなる。DD値は0又は負の数が好ましい。D
D値がこの範囲にあるとブロー成形時、パリソンの安定
性が特に良好であり好ましい。
【0069】なお、MI及びドローダウンの測定は共に
メルトインデクサーを用いた。測定条件は下記によっ
た。 シリンダー温度 280℃ ,荷重2.16kg オリフィス径 2.06mm MIは、10分間に押出されたポリマー重量 DDは、10cmの長さのポリマー重量を測定し、式
に従って算出した。
【0070】本発明の高分子量芳香族ポリカーボネート
は、分岐構造を含むものであっても、前述した5つの条
件を満たすものであれば問題ない。しかし、分岐構造の
量が多くなると、同一Mwの直鎖状のポリカーボネート
と比較して力学強度や耐溶剤性が低下し好ましくない。
本発明の高分子量芳香族ポリカーボネートで分岐構造の
尺度の一つと考えられるηm/ηs(ただしηmは溶融
粘度を、ηsは溶液粘度を表わす。)がηm/ηs≦3
0000の範囲のものが力学強度や耐溶剤性が優れてお
り,特に好ましい。
【0071】本明細書中に記載の製法で行なった場合η
m/ηsは通常15000以上である。なおηm,ηs
は下記方法により測定した。ηmは、キャピラリーレオ
メーターを用い、シリンダー温度335℃、せん断速度
120sec-1、ノズル径1mmで測定した。ηsは、
回転粘度計を用い、ポリカーボネート/塩化メチレン1
/15重量比、温度30℃、せん断速度220sec-1
で測定した。
【0072】本発明の高分子量芳香族ポリカーボネート
を製造する方法には特に制限はない。従来公知のホスゲ
ン法では、高分子量ポリカーボネートを製造すると反応
溶液がモチ状になるために、反応が不均一となる、また
ポリカーボネートの精製の際に溶媒の塩化メチレン及び
副生する塩化ナトリウム等の洗浄が困難になる。従って
該方法で得られたものは、通常分子量分布が広く、塩素
原子を含むものである。
【0073】しかしこのポリカーボネートを分別し、塩
素原子を実質的に含有しなくなるまで洗浄することによ
り本発明のポリカーボネートを得ることも可能である。
以下に示した製法を用いると、上記のような繁雑な操作
なしで本発明の高分子量芳香族ポリカーボネートが得ら
れ好ましい。この製法は以下の工程より成る。即ち (1)ジアリールカーボネートとHO−Ar1 −OH
(Ar1 は前記に同じ。)を加熱処理し非晶質状態のプ
レポリマーを得る。──予備重合工程 (2)非晶質状態のプレポリマーを結晶化させる。──
結晶化工程 (3)結晶質状態のプレポリマーを高分子量化させる。
──固相重合工程 の3工程である。
【0074】これらの3工程では、分子量分布のシャー
プなものが得られる方法を選ぶことが好ましい。特に結
晶化工程においては、均一に結晶化を行なうことが重要
である。均一に結晶化されたプレポリマーは後工程の固
相重合工程で均一な重合が行われ、分子量分布のシャー
プなものが得られやすい。この方法で使用するジアリー
ルカーボネートとは下記化16で表される芳香族モノヒ
ドロキシ化合物の炭酸エステルである。
【0075】
【化16】
【0076】該式中のAr4 及びAr5 はアリール基で
あって、これらは同じであってもよいし、互いに異なっ
ていてもよい。また、上記Ar4 及びAr5 において、
1つ以上の水素原子が、反応に悪影響を及ぼさない他の
置換基、例えば、低級アルキル基、低級アルコキシ基、
フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エス
テル基、アミド基、ニトロ基などによって置換されたも
のであってもよい。
【0077】このようなジアリールカーボネートとして
は、例えば、下記化17で表される置換又は非置換のジ
フェニルカーボネート類が挙げられる。
【0078】
【化17】
【0079】(式中のR6 及びR7 は、それぞれ水素原
子、炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低
級アルコキシ基、シクロアルキル基又はフェニル基であ
り、p及びqは1〜5の整数で、pが2以上の場合には
6 はそれぞれ異なるものであってもよいし、qが2以
上の場合にはR7 はそれぞれ異なるものであってもよ
い)このジフェニルカーボネート類の中でも、ジフェニ
ルカーボネートや、ジトリルカーボネート、ジ−t−ブ
チルフェニルカーボネートのような低級アルキル置換ジ
フェニルカーボネートなどの対称型ジアリールカーホネ
ートが好ましいが、特に最も簡単な構造のシアリールカ
ーボネートであるジフェニルカーボネートが好適であ
る。
【0080】これらのジアリールカーボネート類は単独
で用いもよいし、2種以上を組合せて用いてもよいが、
反応系が複雑になりあまり利点がないので、対称型のジ
アリールカーボネート1種を用いるのがよい。使用する
芳香族ジヒドロキシ化合物は、一般式;HO−Ar1
OH─(V)で表されるものであり、Ar1 は前記のと
おりである。
【0081】このような芳香族ジヒドロキシ化合物とし
ては、例えば、下記化18で表されるジヒドロキシフェ
ノール類;
【0082】
【化18】
【0083】下記化19で表れるジヒドロキシビフェニ
ル類;
【0084】
【化19】
【0085】下記化20,化21等で表われるビスフェ
ノール類;
【0086】
【化20】
【0087】
【化21】
【0088】(式中のR5 及びR6 は、それぞれ水素原
子、炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低
級アルコキシ基、シクロアルキル基又はフェニル基であ
って、これらは同じであってもよいし、互いに異なって
いてもよく、m及びnは1〜4の整数で、mが2以上の
場合にはR5 はそれぞれ異なるものであってもよいし、
nが2以上の場合にはR6 はそれぞれ異なるものであっ
てもよい。R26,R27,R28及びR29はそれぞれ水素原
子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数5〜8のシク
ロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基等を表わ
す。)などが好ましく用いられる。
【0089】まず予備重合工程において、上記単量体を
加熱下に処理することによってジアリールカーボネート
から生成する芳香族モノヒドロキシ化合物を脱離させな
がら、プレポリマーを調製する。この予備重合反応にお
ける単量体の使用割合は、ジアリールカーボネートが芳
香族ジヒドロキシ化合物1モルに対し、通常0.9〜
2.0モル、好ましくは0.95〜1.5モル、より好ま
しくは1.0〜1.3モルの割合で使用される。
【0090】通常は、該プレポリマーの末端のうち−O
H末端の比率、即ち(−OH末端/全末端)×100
(%)の式において、35〜65モル%の範囲となるよ
うに予備重合反応を行うのが好ましい。この予備重合工
程で製造されるプレポリマーの重量平均分子量は、通常
1000〜10000、好ましくは2000〜8000
の範囲で選ばれる。この重量平均分子量が1000未満
では次の結晶化工程での結晶化が困難となり好ましくな
い。また、10000より大きくすると、次第に予備重
合の際の溶融粘度が高くなり、予備重合時間が長くな
り、次工程での結晶化にも時間がかかり好ましくない。
【0091】該予備重合反応は、溶融状態で実施される
のが好ましい。このような分子量の範囲のプレポリマー
は、その溶融粘度がそれほど高くならないため、工業的
に実施することは容易である。予備重合工程を実施する
際の反応温度及び反応時間は、通常50〜350℃、好
ましくは100〜280℃の範囲の温度で通常1分〜数
十時間、好ましくは数分〜数時間の範囲で選ばれる。
【0092】予備重合工程においては、反応の進行に伴
って芳香族モノヒドロキシ化合物が生成してくるが、こ
れを反応系外へ除去することによってその速度が高めら
れる。従って、効果的な攪拌を行うと同時に窒素、アル
ゴン、ヘリウム、二酸化炭素などの不活性ガスや低級炭
化水素ガスなどを導入して、生成してくる該芳香族モノ
ヒドロキシ化合物をこれらのガスに同伴させて除去する
方法や、減圧下に反応を行う方法、及びこれらを併用し
た方法などが好ましく用いられる。
【0093】この予備重合反応は、触媒を加えずに実施
することができ、最終的に得られる粉体の、特に耐加水
分解性等を改良する効果が大きく、特に好ましい実施形
態の1つではあるが、最終的に得られる粉体の耐加水分
解性等を損なわない範囲内において、必要に応じて重合
速度を速めるために重合触媒を用いることもできる。こ
のような重合触媒としては、この分野で用いられている
重縮合触媒であれば特に制限はないが、水酸化リチウ
ム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシ
ウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化
物類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素カルシ
ウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水素化
合物類;水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナ
トリウム、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウムなど
のホウ素やアルミニウムの水素化物のアルカリ金属塩、
アルカリ土類金属塩、第四級アンモニウム塩類;リチウ
ムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カルシウムメト
キシドなどのアルカリ金属、及びアルカリ土類金属のア
ルコキシド類;リチウムフェノキシド、ナトリウムフェ
ノキシド、マグネシウムフェノキシド、LiO−Ar−
OLi、NaO−Ar−ONa(Arはアリール基)な
どのアルカリ金属及びアルカリ土類金属のアリーロキシ
ド類;酢酸リチウム、酢酸カルシウム、安息香酸ナトリ
ウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の有機酸
塩類;酸化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛フェノキシドなどの亜
鉛化合物類;酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、
ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェ
ニルなどのホウ素の化合物類;酸化ケイ素、ケイ酸ナト
リウム、テトラアルキルケイ素、テトラアリールケイ
素、ジフェニル−エチル−エトキシケイ素などのケイ素
の化合物類;酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、
ゲルマニウムエトキシド、ゲルマニウムフェノキシドな
どのゲルマニウムの化合物類;酸化スズ、ジアルキルス
ズオキシド、ジアリールスズオキシド、ジアルキルスズ
カルボキシレート、酢酸スズ、エチルスズトリブトキシ
ドなどのアルコキシ基又はアリーロキシ基と結合したス
ズ化合物、有機スズ化合物などのスズの化合物類;酸化
鉛、酢酸鉛、炭酸鉛、塩基性炭酸鉛,鉛及び有機鉛のア
ルコキシド又はアリーロキシドなどの鉛の化合物;第四
級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第四級アル
ソニウム塩などのオニウム化合物類;酸化アンチモン、
酢酸アンチモンなどのアンチモンの化合物類;酢酸マン
ガン、炭酸マンガン、ホウ酸マンガンなどのマンガンの
化合物類、酸化チタン、チタンのアルコキシド又はアリ
ーロキシドなどのチタンの化合物類;酢酸ジルコニウ
ム、酸化ジルコニウム、ジルコニウムのアルコキシド又
はアリーロキシド、ジルコニウムアセチルアセトンなど
のジルコニウムの化合物類などの触媒を用いることがで
きる。
【0094】触媒を用いる場合、これらの触媒は1種だ
けで用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよ
い。また、これらの触媒の使用量は、原料の芳香族ジヒ
ドロキシ化合物に対して、通常0.00001〜1.0
重量%、好ましくは0.00003〜0.1重量%の範
囲で選ばれる。次に結晶化工程において非晶質状態のプ
レポリマーの結晶化を行なう。
【0095】該予備重合反応の好ましい実施態様におい
ては、溶媒を用いないで溶融状態で行われるが、このよ
うにして得られたプレポリマーを室温付近までそのまま
冷却したものは、一般的に結晶化度の低い非晶質状態で
ある。しかしながら、このような非晶質状態のプレポリ
マーは、目的とする芳香属ポリカーボネートのガラス転
移温度付近の温度で溶融したり、融着してしまうので、
そのままでは固相重合を実施することは困難である。比
較的低分子量のプレポリマー、例えば重量平均分子量が
約10000以下、殊に約8000以下の非晶質状態の
プレポリマーにおいては、特にその傾向が大きいので、
そのまま固相重合を実施することは実質的に不可能であ
る。そのために、プレポリマーを結晶化させる結晶化工
程が実施される。
【0096】結晶化工程では、特願平2−407912
号に記載された方法、即ち溶媒の存在下に、プレポリマ
ーを粉砕機や混練機で粉砕を行ないながら結晶化させる
方法が用いられる。例えば2軸混練機等を用いて結晶化
を行なうことが出来る。この方法によると粉末の内部迄
均一に結晶化させるために後工程の固相重合工程で均一
な重合が行われ、分子量分布が狭く低分子量や高分子量
部分の重量%が少ない高分子量芳香族ポリカーボネート
が得られる。
【0097】前述の如く、結晶化工程では、均一な結晶
化を起こさせることが重要である。上記の方法以外の方
法においても均一な結晶化が行われる方法であれば特に
制限はない。かくして得られた結晶化プレポリマーの結
晶融点(以後Tmという。)は、ビスフェノールAを1
00%用いた場合、210〜240℃であり、結晶化度
は5〜40%である。
【0098】このようにして結晶化したプレポリマー
を、その溶融温度より低く、ガラス移転温度より高い温
度で固相状態に保ちながら固相重縮合させることによっ
て、容易に高分子量の芳香族ポリカーボネートにするこ
とができる。この固相重合工程において、芳香族モノヒ
ドロキシ化合物、及びジアリールカーボネートが副生す
る。
【0099】従って、これらの化合物を系外に抜き出す
ことによって、その反応が促進される。そのためには、
窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素などの不活性ガ
スや、低級炭化水素ガスなどを導入して、ジアリールカ
ーボネートや芳香族モノヒドロキシ化合物をこれらのガ
スに随伴させて除去する方法が用いられる。また、同伴
用のガスを導入する場合には、これらのガスを、反応温
度付近の温度に加熱しておくことが好ましい。固相重合
工程では反応機の極部加熱、ポリマーの長期滞留等は不
均一な重合となり分子量分布を広げるので好ましくな
い。
【0100】この固相重合反応を実施する場合のプレポ
リマーの形状については特に制限はないが、大きな塊状
のものは反応速度が遅くかつ取扱が面倒であり、均一な
重合が起こりにくく、分子量分布が広がるので好ましく
なく、ペレット状、ビーズ状、顆粒状、粉末状などの形
状のものが好適である。また、結晶化後の固体状のプレ
ポリマーを適当な大きさに破砕したものも好ましく用い
られる。この場合の平均粒径が10μm〜5mmの範囲
であると、得られる本発明の結晶性粉体が粉体成形に適
した平均粒径をもつので好ましい。
【0101】該固相重合反応を実施する際の反応温度及
び反応時間については、プレポリマーの分子量、結晶化
度、Tm、形状、触媒の有無、必要とする到達分子量な
どによって異なるが、通常反応温度はTg(ガラス転移
点)以上であって、結晶が溶融融着しないような温度以
下の範囲で選ばれる。好ましくは150〜230℃であ
る。
【0102】また、反応時間は、数10分〜100時間
である。この範囲より短いと分子量を上げる効果が小さ
く、この範囲より長いと重合中のポリマーの劣化が生じ
好ましくない。好ましい範囲は3時間〜50時間であ
る。該固相重合反応は触媒なしでも進行させることがて
き、これが最も好ましい実施態様であるが、本発明の粉
体の特長のうちの、特に耐加水分解性を低下させない範
囲で、さらに反応速度を高める目的で触媒を使用するこ
ともできる。
【0103】前記予備重合工程で触媒を使用したなら
ば、通常、生成するプレポリマー中に触媒が残存するの
で、新たに触媒を加える必要もないが、何らかの理由で
触媒が除去されたり、活性が低下している場合もあるの
で、その際には必要に応じて適当な触媒を加えることも
できる。この場合、液体又は気相状態にした触媒成分を
プレポリマーに加えることも好ましい方法である。この
ような触媒成分としては、予備重合工程で用いることの
できる前記のようなものを挙げることができる。このよ
うに固相重合を実施することにより、結晶性プレポリマ
ーの重合度を上げ、Mwが40000以上の高分子量芳
香族ポリカーボネートが得られる。
【0104】該ポリカーボネート及びその組成物は、溶
融成形、特に押出成形、ブロー成形に適したものである
が、溶媒を用いたキャスト成形を行なうことも当然可能
である。該ポリカーボネート及びその組成物に、公知の
種々の添加剤を加えることが出来る。これらは例えば、
耐候安定剤、離型剤、難燃剤、充填剤(シリカ、カーボ
ンブラック、ガラス繊維、炭酸繊維等)、顔料、染料等
が挙げられる。
【0105】
【実施例】次に実施例により本発明をさらに詳細に説明
するが、本発明はこれらの例によってなんら限定される
ものではない。
【0106】
【実施例1】2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)
プロパン13.0kgとジフェニルカーボネート12.
9kgを用い、230℃で3.5時間N2 を100Nl
/Hr流した後1.5時間かけて減圧度を3mmHgま
で下げ、その圧力で1時間攪拌することにより、非晶質
プレポリマーを得た。このプレポリマーは、Mw=81
00であり、全末端に対するヒドロキシ末端の割合は4
8%であった。この非晶質プレポリマーを溶融状態23
0℃でダイスより押し出し、アンダーウォーターカット
造粒を行い、約3mm径の非晶性プレポリマーペレット
を得た。
【0107】該ペレットとアセトンを、各々1.5kg
/Hr、0.8kg/Hrの量比で、同方向2軸混練機
に投入し連続的に機械的粉砕を行った。得られた粉体
は、平均粒径300μm、比表面積が2.4m2/g、
結晶化度が23%の結晶性プレポリマーであった。
お、結晶化度は、粉末X線回折法により特開平1−15
8033号公報に記載の方法で測定した。得られた結晶
性プレポリマーを小型押出機〔不二パウダル(株)製、
EXKF−1型ペレッター〕で成形し、2mm径、平均
長3mmのペレットを作製した。このペレットを120
℃で2時間乾燥した。
【0108】該ペレット100gを、G4のガラスフィ
ルターを備えた内径50mmのガラス製ガス流通式重合
器に仕込み、N2 ガスを150Nl/Hrフィードして
常圧、220℃で固相重合を行った。重合時間6時間で
Mw45000の高分子量芳香族ポリカーボネートを得
た。測定結果を表1にまとめて示した。
【0109】
【実施例2】固相重合時間を8時間とした以外は、実施
例1と同様にして重合を行ない、Mw65000の高分
子量芳香族ポリカーボネートを得た。測定結果を表1に
まとめて示した。
【0110】
【実施例3】ジフェニルカーボネート12.85gを
用いた以外は実施例2と同様にしてMw83000の高
分子量芳香族ポリカーボネートを得た。得られた非晶質
プレポリマーはMw=8050、全末端に対するヒドロ
キシ末端の割合が53%であった。測定結果を表1に示
した。
【0111】
【実施例4】混練機で粉砕、結晶化させた粉体を、ペレ
ット化せずに120℃で2時間乾燥したこと、及び固相
重合時間を10時間とした以外は、実施例3と同様にし
てMw97000の高分子量芳香族ポリカーボネートを
得た。測定結果を表1に示した。
【0112】
【実施例5】固相重合時間を15時間としたこと、及び
固相重合時のN2 ガスの量を250Nl/Hrとした以
外は実施例3と同様に重合を行ない、Mw131000
の高分子量芳香族ポリカーボネートを得た。測定結果を
表1に示した。
【0113】
【比較例1】特開昭61−238823号公報の方法に
従い、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパ
ンとホスゲンからMw45000の高分子量芳香族ポリ
カーボネートを得た。測定結果を表1に示した。
【0114】
【比較例2】α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシ
フェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼンを
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに対
して0.6モル%用いた以外は比較例1と同様にしてM
w253,000の高分子量芳香族ポリカーボネートを
得た。測定結果を表1に示した。
【0115】
【比較例3】p−ターシャリ−ブチルフェノールの添加
量を変えた以外は、実施例1と同様にしてMw8500
0の高分子量芳香族ポリカーボネートを得た。測定結果
を表1に示した。
【0116】
【比較例4】実施例3と同様に予備重合工程を行ない、
Mw8150の非晶性プレポリマーを得た。該非晶性プ
レポリマー100gをN2 下190℃で3時間攪拌を行
ない、溶融結晶化を行なった。得られた結晶性プレポリ
マーの、結晶化度27%全末端に対するヒドロキシ末端
の割合は51%であった。該結晶性プレポリマーを乳鉢
で粉砕した。得られた粉体をN2 ガス量200Nl/H
r、225℃、重合時間を25時間とした以外は、実施
例1と同様に固相重合を行ない、Mw115000の高
分子量芳香族ポリカーボネートを得た。測定結果を表1
に示した。
【0117】なお、MI及びDD測定は、全て得られた
該ポリカーボネートに対して、以下の安定剤を所定量添
加したものを用いた。ビス−ノニルフェニルハイドロゲ
ンホスファイト 10ppmトリス(2,4−
t−ブチルフェニル)ホスファイト 200ppm表
2に、実施例、比較例の結果を更に明確にするために、
本発明の特許請求の範囲内に入る場合を○で、特許請求
の範囲外になる場合を×で表わした。
【0118】比較例1〜4は、全てMI値が低く、溶融
流動性が非常に悪いことを示している。 比較例1〜3は、塩素原子が残存しており、MI測定後
のポリマーは着色し、かつ分子量低下が起こっていた。
その結果を表3に示した。なお着色は、明細書中に記載
の方法で測定を行ない、400nmでの吸光度の値を求
めた。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
【発明の効果】本発明の高分子量芳香族ポリカーボネー
ト及びその組成物は、溶融流動性が優れており、かつ高
温での成形において、分子量低下や着色がなく、かつ溶
融張力が高いものである。押出成形、ブロー成形等に特
に適したポリカーボネートである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 64/04 - 64/14

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記化1で表わされる繰返し単位からな
    り、重量平均分子量(Mw)が40000以上の高分子
    量芳香族ポリカーボネートであって、 【化1】 (1) 分子量2000以下の部分が、全重合体に対し
    て1.0重量%以下、 (2) 分子量300000以上の部分が、全重合体に
    対して5.0重量%以下、 (3) 分子量分布(Mw/Mn)がMw/Mn≦3.
    6×10-5×Mw+1.38の範囲、(ただし、Mw,M
    nはそれぞれ重量平均分子量、数平均分子量を表わ
    す。) (4) Mw/Mpの値がMw/Mp≦1.5の範囲、
    〔ただしMpはゲルパーミエーションクロマトグラフィ
    ー(GPC)で測定したクロマトグラムのピークトップ
    の分子量を表わす。〕 (5) 実質上塩素原子を含まない、ことを満足してい
    ることを特徴とする高分子量芳香族液ポリカーボネー
    ト。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の高分子量芳香族ポリカー
    ボネート 100重量部とリン系安定剤 0.0001
    〜0.5重量部とからなる高分子量芳香族ポリカーボネ
    ート組成物。
  3. 【請求項3】 メルトインデックス値(MI)がlog
    MI≧−1.33×10-5×Mw+0.50を満たす
    ことを特徴とする請求項1記載の高分子量芳香族ポリカ
    ーボネート又は請求項2記載の高分子量芳香族ポリカー
    ボネート組成物。
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