JPH06102721B2 - 芳香族ポリカーボネートの製法 - Google Patents

芳香族ポリカーボネートの製法

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JPH06102721B2
JPH06102721B2 JP30880388A JP30880388A JPH06102721B2 JP H06102721 B2 JPH06102721 B2 JP H06102721B2 JP 30880388 A JP30880388 A JP 30880388A JP 30880388 A JP30880388 A JP 30880388A JP H06102721 B2 JPH06102721 B2 JP H06102721B2
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伊三郎 府川
伸典 福岡
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旭化成工業株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は芳香族ポリカーボネートの製法の改良に関する
ものである。さらに詳しくいえば、本発明は、ジヒドロ
キシジアリール化合物とジアリールカーボネートとか
ら、物性上優れた高分子量の芳香族ポリカーボネートを
効率よく製造するための工場的に実施するのに適した方
法に関するものである。
従来の技術 近年、芳香族ポリカーボネートは、耐熱性、耐衝撃性、
透明性などに優れたエンジニアリングプラスチックスと
して、多くの分野において幅広く用いられている。この
芳香族ポリカーボネートの製造方法については、従来種
々の研究が行われ、その中で、芳香族ジヒドロキシ化合
物、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロ
パン(以下、ビスフェノールAという)とホスゲンとの
界面重縮合法が工業化されている。
しかしながら、このホスゲンを用いる界面重縮合法にお
いては、有毒なホスゲンを用いなければならないこと、
副生する塩化水素や塩化ナトリウムなどの含塩素化合物
により装置が腐食すること、樹脂中に混入する塩化ナト
リウムなどのポリマー物性に悪影響を及ぼす不純物の分
離が困難なことなどの問題があり、さらには、反応溶媒
として通常用いられている塩化メチレンは、ポリカーボ
ネートの良溶媒であって、親和生が極めて高いために、
生成したポリカーボネート中に、該塩化メチレンが残存
するのを免れず、その結果成形時の加熱などによって、
該残存塩化メチレンが分解して塩化水素を発生し、成形
機の腐食やポリマーの品質低下をもたらすおそれがあ
る。この残存塩化メチレン量を低下させることを工業的
に実施するには多大の費用を要し、しかも該残存塩化メ
チレンを完全に除去することは不可能に近い。
このように、ホスゲン法においては、工業的に実施する
場合、多くの問題を伴っている。
一方、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネ
ートとから、芳香族ポリカーボネートを製造する方法
も、以前から知られており、例えばビスフェノールAと
ジフェニルカーボネートとの溶融状態におけるエステル
交換反応によってフェノールを脱離してポリカーボネー
トを製造する方法が、いわゆるエステル交換法あるいは
別名溶融法として、工業化されていた。しかしながら、
この方法においては、高粘度のポリカーボネートの溶融
体の中から、フェノール及び最終的にはジフェニルカー
ボネートを留去していかなければ重合度が上がらないこ
とから、通常280〜310℃の高温下で、かつ1mmHg以下の
高真空下で長時間反応させる必要があり、したがって、
(1)高温高真空下に適した特殊な装置と、生成物の高
粘性による強力なかきまぜ装置を必要とすること、
(2)生成物の高粘性のために、プラスチック工業界で
通常使用されている反応機及びかきまぜ形式のもので
は、重量平均分子量が30,000程度の重合体しか得られな
いこと、(3)高温で反応させるため、副反応によって
分枝や架橋が起こりやすく、品質の良好なポリマーが得
にくいこと、(4)高温での長時間滞留によって着色を
免れないことなどの種々の欠点を有している〔松金幹夫
他、プラスチック材料講座〔5〕「ポリカーボネート樹
脂」日刊工業新聞社刊行(昭和44年)、第62〜67ページ
参照〕。
さらには、この溶融法によって得られたポリカーボネー
トは、構造的にみてヒドロキシル末端基(−OH基)が多
く含まれていること、分子量分布が広いこと、分枝構造
が多いことなどが知られており、そのためにホスゲン法
で製造されたポリカーボネートに比べて、例えば強度的
にやや劣ること、特にゼイ性破壊性が大きいこと、流動
挙動が非ニュートン性であることなど、物性面で劣るこ
とが指摘されている〔「高分子」第27巻、第521ページ
(1978年)参照〕。珠に、ポリマー末端基としてヒドロ
キシル基を多く含有していることは、該溶融法で得られ
たポリカーボネートが、耐熱性や耐熱水性などのエンジ
ニアリングプラスチックとしての基本的物性に劣ってい
ることを意味している。
また、エステル交換法の一変法として、ジフェニルカー
ボネートの代りに、ビスフェノールAのビス・フェニル
カーボネート を使用して、ビスフェノールAと反応させる方法も知ら
れている〔「ケミストリ・アンド・フィジクス・オブ・
ポリカーボネート(CHEMISTRY AND PHYSICS OF POLYCAR
BONATES)」H.シュネル(H.Schnell)著、1964年刊
行〕。しかしながら、この方法においても、前記と同じ
溶融法であるために、前記と同様に、プロセス上及び製
品品質上の問題は避けられないという欠点を有してい
る。
ところで縮合系ポリマーとして最も一般的なポリヘキサ
メチレンアジパミド(ナイロン66)やポリエチレンテレ
フタレート(PET)などは、プラスチックや繊維として
十分な機械的特性を有する分子量まで、通常、溶融重合
法によって重合が行われているが、このようにして製造
された高分子量のポリマーを、減圧下又は乾燥窒素など
の流通下に、固相状態を保持しうる温度に加熱すること
によって、固相重合を行い、さらに重合度を高めること
が可能であることは、すでに知られている。この固相重
合においては、固体ポリマー中で、末端カルボキシル基
が近くに存在する末端アミノ基又は末端ヒドロキシル基
と反応して、脱水縮合が進行しているものと思われる。
また、ポリエチレンテレフタレートの場合には脱エチレ
ングリコールによる縮合反応も一部併発している。
このように、ナイロン66やポリエチレンテレフタレート
が固相重合によって高重合度化が可能であるのは、これ
らのポリマーが高い融点(それぞれ265℃及び260℃)を
有する元来結晶性のポリマーであり、固相重合が進行す
る温度(例えば230〜250℃)で十分に固相状態を保持し
うるからである。さらに重要なことは、脱離すべき化合
物が、水やエチレングリコールのように分子量が小さく
て、沸点の比較的低い物質であって、それらが固体のポ
リマー中を容易に移動し、気体として系外に除去されう
るからである。
一方、芳香族のエステル結合とカーボネート結合とを合
わせもつ高融点の芳香族ポリエステルカーボネートを溶
融重合後、固相重合を行うことによって製造する方法も
提案されている。この方法は、ナフタレンジカルボン
酸、p−ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸などの芳香
族ジカルボン酸や芳香族ヒドロキシカルボン酸を、ジヒ
ドロキシ芳香族化合物及びジアリールカーボネートとを
溶融状態で反応させることによって得られたプレポリマ
ーを結晶化させたのち、固相重合を行うものである(た
だし、p−ヒドロキシ安息香酸を用いる場合は、溶融重
合である程度重合度があがれば、もはや溶融状態を保ち
えない固体状となり、このものは高融点の高結晶性プレ
ポリマーであるので、さらに結晶化させる必要がない)
(特開昭48-22593号公報、特開昭49-31796号公報、米国
特許第4,107,143号明細書、特開昭55-98224号公報)。
しかしながら、これらの方法はエステル結合を30%以
上、通常は約50%以上含む芳香族ポリエステルカーボネ
ートを製造する場合に適用できる方法であって、エステ
ル結合が30%より少ない場合には、固相重合時、プレポ
リマーの溶融が起こり、固相重合が不可能であったこと
も知られている(特開昭55-98224号公報)。
一方、このようなエステル結合が、芳香族ポリエステル
カーボネートを製造する際のカーボネート結合生成の反
応を促進する効果を有していることも知られている(特
公昭52-36797号公報)。この特公昭52-36797号公報によ
れば、溶融重縮合法で、エステル結合を含む高分子量の
芳香族ポリカーボネートを製造する場合に、低重合度の
芳香族ポリカーボネートの分子鎖中にあらかじめエステ
ル結合を導入しておくことにより溶融重縮合反応が著し
く促進されることが明らかにされている。当然のことな
がら、固相重合においても、エステル結合のこのような
重縮合反応促進効果があるものと推定される。したがっ
て、高融点をもつ元来結晶性の芳香族ポリエステルカー
ボネートや、若干の結晶化操作により容易に高融点の結
晶性ポリマーとなりうる芳香族ポリエステルカーボネー
トを固相重合によって、より高重合度化させることは、
比較的容易なことである。
しかしながら、エステル結合を全く含まない高分子量の
芳香族ポリカーボネートを溶融重合後、固相重合を行う
ことにより製造しようとする試みは、280℃以上の高融
点を有する高結晶性の特殊なポリカーボネートを固相重
合によって得ようとする例(特開昭52-109591号公報、
実施例3)を除いて、ほとんど知られていなかった。特
開昭52-109591号の方法は、ヒドロキノン約70モル%、
ビスフェノールA約30モル%から成る芳香族ジヒドロキ
シ化合物とジフェニルカーボネートとの溶融重合を280
℃の温度において、0.5mmHgの高真空下で行い、固化し
た融点280℃以上のプレポリマーを温度280℃、真空度0.
5mmHg、反応時間4時間の条件で固相重合させるもので
ある。
しかしながら、ビスフェノールAのようなジヒドロキシ
ジアリールアルカンを主成分とする実質的に非晶性のポ
リマーである芳香族ポリカーボネートを比較的低分子量
のプレポリマーの固相重合によって製造しようとする試
みは全くなされていなかった。例えば、芳香族ポリカー
ボネートを製造する最も一般的な方法である、酸結合剤
を用いるホスゲン法においては、脱離すべきものが、通
常塩化ナトリウムのように無溶媒では固体であって、こ
れが固体のポリマー中を移動して系外に抜け出ることは
極めて困難であり、したがってこの方法を固相で実施す
ることは本質的に不可能である。
また、最も一般的な芳香族ポリカーボネートであるビス
フェノールAのポリカーボネートを、ビスフェノールA
とジフェニルカーボネート(又はビスフェノールAのビ
ス・フェニルカーボネート)とのエステル交換反応によ
って製造する方法においても、すべて高温、高真空下で
の溶融重合法が検討されており、本発明のようにプレポ
リマーの固相重合による高重合化については、全く検討
されていなかった。このことは、ビスフェノールAのポ
リカーボネートが、ガラス転移温度(Tg)149〜150℃の
非晶性のポリマーであるため、固相重合を行うことが不
可能であると考えられていたことによる。すなわち、一
般的に固相重合を可能にするには、ガラス転移温度以上
の温度で、そのポリマーが融着などを起こさないで固相
状態を保持しうることが必要であるが、非晶性の該ポリ
カーボネートの場合、150℃以上の温度では融着などが
起こり、そのままでは固相重合が実質的に不可能であっ
たためである。
発明が解決しようとする課題 本発明は、このような従来のホスゲン法や溶融法による
ポリカーボネートの製造方法が有している種々の欠点を
克服し、塩素化合物のような不純物を実質的に含まない
優れた品質の高分子量ポリカーボネートを効率よく製造
する方法を提供することを目的としてなされたものであ
る。
課題を解決するための手段 本発明者らは、エステル交換反応を利用する芳香族ポリ
カーボネートの製造方法について鋭意研究を重ねた結
果、一般式 HO−Ar1−Y−Ar2−OH …(I) (式中のAr1及びAr2は、それぞれアリーレン基、Yはア
ルキレン又は置換アルキレン基である)で表わされるジ
ヒドロキシジアリールアルカンを主体とするジヒドロキ
シジアリール化合物と特定のジアリールカーボネートと
を予備重合させて得られる実質的に非晶性の比較的低分
子量のプレポリマーは、容易に結晶化することができ、
この結晶化プレポリマーを結晶融点以下の所定の温度に
加熱して、固相重合させることにより、前記目的を容易
に達成し得ること、さらに、特定のジアリルカーボネー
トを使用することにより、ジフェニルカーボネートを使
用した場合に比べて、副生フェノールの発生量が半分で
あるので、予備重合器の体積当りの効率がよく、しかも
プレポリマーの末端基コントロールも容易であることを
見い出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至っ
た。
すなわち、本発明は、一般式 HO−Ar1−Y−Ar2−OH …(I) (式中のAr1及びAr2は、それぞれアリーレン基、Yはア
ルキレン又は置換アルキレン基である)で表わされるジ
ヒドロキシジアリールアルカンを主体とするジヒドロキ
シジアリール化合物と、一般式 (式中のAr3及びAr4は、それぞれアリーレン基、Xは二
価のアルキレン基、二価の置換アルキレン基、スルホニ
ル結合、スルホキシド結合、カルボニル結合、アミド結
合、カルボキシ結合、エーテル結合又はチオエーテル結
合、R1及びR2はそれぞれアルキル基、nは0又は1、n1
及びn2は、それぞれ0又は1〜3の整数であり、n1が2
又は3の場合、R1はそれぞれ異なるものであってもよ
く、n2が2又は3の場合、R2はそれぞれ異なるものであ
ってもよい) で表わされるジアリールカーボネートとを反応させて芳
香族ポリカーボネートを製造するに当り、 (a)該ジヒドロキシジアリール化合物と、該ジアリー
ルカーボネートとを加熱下に予備重合させて、重量平均
分子量(Mw)が2,000〜20,000の範囲にあるプレポリマ
ーを形成させる予備重合工程、 (b)該プレポリマーを結晶化させて、結晶化プレポリ
マーを形成させる結晶化工程、及び (c)該結晶化プレポリマーを、製造すべき芳香族ポリ
カーボネートのガラス転移温度以上で、かつ該結晶化プ
レポリマーが固相状態を保持しうる範囲の温度に加熱し
て、さらに重合度を高める固相重合工程を順次行うこと
を特徴とする芳香族ポリカーボネートの製法を提供する
ものである。
本発明の製造方法の好適な実施態様としては、特に、 (1)予備重合を無触媒で行うこと、 (2)固相重合を無触媒で行うこと、 (3)予備重合及び固相重合ともに、無触媒で行うこ
と、 (4)予備重合を溶融状態で行うこと、 (5)プレポリマーの全末端基中に占めるアリールカー
ボネート基末端の割合が50モル%以上であること、 (6)結晶化プレポリマーの結晶化度が5〜55%の範囲
にあること、 (7)プレポリマーの結晶化が、その溶媒処理によって
行われること、 (8)プレポリマーの結晶化が、プレポリマーを加熱下
に結晶化させることによって行われること、 (9)ジヒドロキシジアリールアルカンが2,2−ビス
(4−ヒドロキシフェニル)プロパンであること、 (10)ジアリールカーボネートが、ビスフェノールAの
ビス・フェニルカーボネート であること、 などを挙げることができる。
また、前記本発明に係る芳香族ポリカーボネートは、特
に塩素原子を含まないジヒドロキシジアリール化合物と
ジアリールカーボネートを原料とし、かつプレポリマー
の結晶化を非塩素系溶媒を用いて行うことにより、得ら
れた実質的に塩素原子を含まないものが望ましい。
本発明は、このように実質的に非晶性のプレポリマーで
あっても、結晶化工程を実施することによって、このプ
レポリマーの固相重合を可能にしたものである。
一般的に、プレポリマーの重合度を固相で高めるための
固相重合が可能になるためには、重合が進行する温度
で、プレポリマーが溶融したり、融着しないことが必要
である上に、しかも、固相重合は固相中での物質の移動
及び反応を起こす必要があるが、一般的に固相重合反応
速度はそれほど大きくないので、反応温度をできるだけ
上げて反応速度を速くする必要があり、そのためにもプ
レポリマーの溶融温度を高くする必要がある。本発明
は、このような固相重合を可能にするための問題を、本
発明の結晶化工程を実施することによって解決したもの
である。
従来の溶融法によるエステル交換法においては、高粘度
の溶融液から、フェノールやジフェニルカーボネートを
脱離させるために、最終的には300℃以上の高温で0.1mm
Hg以下の高真空にする必要があるのに対し、300℃より
もはるかに低い温度で固相状態の結晶化プレポリマーか
ら、比較的高沸点の芳香族モノヒドロキシ化合物やジア
リールカーボネートを脱離しながら、該プレポリマーが
容易に高分子量化していくことは、全く予想外であっ
た。
本発明方法において、原料として用いられるジヒドロキ
シジアリール化合物は、一般式 HO−Ar1−Y−Ar2−OH …(I) で表わされるジヒドロキシジアリールアルカンを主体と
するもの、すなわちこの化合物を少なくとも60モル%含
んでいるジヒドロキシジアリール化合物である。前記一
般式(I)におけるAr1及びAr2は、それぞれアリーレン
基であって、例えばフェニレン、ナフチレン、ビフェニ
レン、ピリジレンなどの基を表わし、またAr1及びAr2
同一であってもよいし、たがいに異なっていてもよい。
Yは のアルキレン又は置換アルキレン基を表わす(ここで、
R3、R4、R5及びR6は、それぞれ水素原子、低級アルキル
基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基であ
って、場合によりハロゲン原子、アルコキシ基で置換さ
れていてもよく、kは3〜11の整数を表わし、上式 の水素原子は、低級アルキル基、シクロアルキル基、ア
リール基、アラルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子
等によって置換されていてもよい)。
該原料のジヒドロキシジアリール化合物は、前記の一般
式(I)で表わされるジヒドロキシジアリールアルカン
に加えて、40モル%を超えない範囲において、一般式 HO−Ar1−Z−Ar2−OH …(III) 〔式中のAr1及びAr2は前記と同じ意味をもち、Zは化学
結合、又は−O−、−CO−、−S−、 −SO2−、−CO2−、 −CON(R3)(R3は前記と同じ意味をもつ)などの二価
の基である〕 で表わされるジヒドロキシジアリール化合物を含有して
いてもよい。
さらには、このようなアリーレン基(Ar1,Ar2)におい
て、1つ以上の水素原子が、反応に悪影響を及ぼさない
他の置換基、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、
低級アルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル
基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基などに
よって置換されたものであってもよい。
前記一般式(I)で表わされるジヒドロキシジアリール
アルカンとしては、例えば (式中のR7及びR8は、それぞれ水素原子、ハロゲン原
子、炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低
級アルコキシ基、シクロアルキル基又はフェニル基であ
って、これらは同じであってもよいし、たがいに異なっ
ていてもよく、m及びnは1〜4の整数で、mが2以上
の場合にはR7はそれぞれ異なるものであってもよいし、
nが2以上の場合にはR8はそれぞれ異なるものであって
もよい)などのビスフェノール類などが好ましく用いら
れる。
これらの化合物の中で、2,2−ビス(4−ヒドロキシフ
ェニル)プロパンであるビスフェノールA及び置換ビス
フェノールA類が特に好適である。また、これらのジヒ
ドロキシジアリールアルカンは単独で用いてもよいし、
2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上のジヒ
ドロキシジアリールアルカンを用いる場合には、通常こ
れらの2種以上の骨格を有する共重合体の芳香族ポリカ
ーボネートが得られる。
また、前記一般式(III)で表わされるジヒドロキシジ
アリール化合物としては、例えば で表わされるジヒドロキシビフェニル類; (式中のR7、R8、m及びnは前記と同じ意味をもつ)な
どが挙げられる。
さらに本発明においては、前記のジヒドロキシジアリー
ルアルカンが60モル%以上から成るジヒドロキシジアリ
ール化合物とともに、分子内にフェノール性ヒドロキシ
ル基3個以上を含有する化合物を、該ジヒドロキシジア
リール化合物に対して、0.01〜3モル%程度の割合で用
いることもできる。
このような3価以上の多価フェノールとしては、例えば
フロログルシン;フロログルシド;4,6-ジメチル‐2,4,6
-トリ(4′‐ヒドロキシフェニル)へプテン‐2;2,6-
ジメチル‐2,4,6-トリ(4′‐ヒドロキシフェニル)へ
プテン‐3;2,6-ジメチル‐2,4,6-トリ(4′‐ヒドロキ
シフェニル)へプタン;1,3,5-トリ(4′‐ヒドロキシ
フェニル)ベンゼン;1,1,1-トリ(4′‐ヒドロキシフ
ェニル)エタン;2,2-ビス〔4,4-ビス(4′‐ヒドロキ
シフェニル)シクロヘキシル〕プロパン;2,6-ビス
(2′‐ヒドロキシ‐5′‐メチルベンジル)‐4-メチ
ルフェノール;2,6-ビス(2′‐ヒドロキシ‐5′‐イ
ソプロピルベンジル)‐4-イソプロピルフェノール;ビ
ス〔2-ヒドロキシ‐3-(2′‐ヒドロキシ‐5′‐メチ
ルベンジル)‐5-メチルフェニル〕メタン;テトラ(4-
ヒドロキシフェニル)メタン;トリ(4-ヒドロキシフェ
ニル)フェニルメタン;ビス(2,4-ヒドロキシフェニ
ル)ケトン;1,4-ビス(4′,4″‐ジヒドロキシトリフ
ェニルメチル)ベンゼン;1,4-ジメチル‐1,4-ビス
(4′‐ヒドロキシ‐3-メチルフェニル)‐6-ヒドロキ
シ‐7-メチル‐1,2,3,4-テトラリン;2,4,6-トリ(4′
‐ヒドロキシフェニルアミノ)‐S-トリアジンなどが挙
げられる。
一方、本発明方法におけるもう1つの原料であるジアリ
ールカーボネートは、一般式 (式中のAr3、Ar4、R1、R2、n、n1、n2及びXは前記と
同じ意味をもつ) で表わされる構造を有している。前記一般式(II)にお
けるAr3及びAr4は、同一であってもよいし、たがいに異
なっていてもよく、また、(R1)n1及び(R2)n2は同一
であってもよいし、たがいに異なっていてもよい。Ar3
及びAr4は、それぞれアリーレン基であって、前記一般
式(I)におけるAr1、Ar2で説明したものと同じものを
挙げることができる。また、R1及びR2は、それぞれアル
キル基であって、炭素数1〜22のものが好ましく、また
該アルキル基は直鎖状、分枝鎖状、環状のいずれのもの
であってもよい。
前記一般式(II)で表わされるジアリールカーボネート
の好ましいものとしては、例えば などが挙げられる。これらの中で、特にビスフェノール
Aのビス・フェニルカーボネート が好適である。これらのジアリールカーボネートは、そ
れぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて
用いてもよい。
本発明方法においては、予備重合工程で得られたプレポ
リマーを結晶化させたのち、固相重合させるが、該予備
重合工程においては、シヒドロキシジアリール化合物と
ジアリールカーボネートとを加熱下に処理することによ
って、ジアリールカーボネートに基づくアリール基にヒ
ドロキシル基の結合した化合物である芳香族モノヒドロ
キシ化合物を脱離させながら、プレポリマーを調製す
る。この予備重合工程で製造されるプレポリマーの重量
平均分子(Mw)量は、2,000〜20,000、好ましくは2,500
〜15,000、より好ましくは4,000〜12,000の範囲で選ば
れる。この重量平均分子量が2,000未満では固相重合の
反応時間が長くなって好ましくないし、また、20,000よ
り大きくする必要もない。
該予備重合反応は溶融状態で実施されるのが好ましい。
このような分子量の範囲のプレポリマーは、その溶融粘
度がそれほど高くならないため、工業的に実施すること
は容易である。
もちろん、この予備重合反応を実施する場合、反応に不
活性な溶媒、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,
2-ジクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロベン
ゼン、テトラヒドロフラン、ジフェニルメタン、ジフェ
ニルエーテルなどを用いてもよいが、通常は無溶媒かつ
溶融状態で実施される。
この予備重合反応におけるジアリールカーボネートと、
ジヒドロキシジアリール化合物との使用割合(仕込比
率)については、用いられるジアリールカーボネートと
ジヒドロキシジアリール化合物の種類や、反応温度、そ
の他の反応条件によって異なるが、該ジアリールカーボ
ネートは、ジヒドロキシジアリール化合物1モルに対し
て、通常0.5〜2.5モル、好ましくは0.5〜2.0モル、より
好ましくは0.7〜1.5モルの割合で用いられる。
このようにして得られるプレポリマーの末端は、通常、
例えば一般式 (式中のR1及びn1は前記と同じ意味をもつ)で表わされ
るアリールカーボネート基末端と、例えば一般式 HO−Ar1− …(V) (式中のAr1は前記と同じ意味をもつ) で表わされるジヒドロキシジアリール化合物に基づくヒ
ドロキシル基末端とから成っている。このプレポリマー
の全末端基中に占めるアリールカーボネート基末端の割
合を50モル%より多くする場合には、ジアリールカーボ
ネートがジヒドロキシジアリール化合物に対して、反応
系中で実質的にある程度過剰量存在させて反応させるこ
とが必要である。このような意味において、反応系中に
実質的に存在させるジアリールカーボネートの量はジヒ
ドロキシジアリール化合物1モルに対して、1.00〜1.10
モルとなるように反応させることが好ましい。反応条件
によっては、予備重合反応途中で、いずれかの成分の一
部又は両方の成分の一部が留出してくる場合があるが、
その場合には、所定の量比となるように、いずれかの成
分を予備重合反応途中で追加することも好ましい方法で
ある。
本発明で用いるジアリールカーボネートは、ジフェニル
カーボネートよりも沸点がはるかに高くて、予備重合時
において留出が少ないので、仕込みモル比が実質的反応
のモル比と大きくずれないために、プレポリマーの末端
基のコントロールが容易であり、したがって、最終的に
得られる固相重合体の末端基のコントロールが容易であ
るという大きな長所を有している。
アリールカーボネート基末端を全末端中の50モル%より
多くなるようにして予備重合を行うと、この工程でのプ
レポリマーの着色及び固相重合工程での芳香族ポリカー
ボネートの着色が大巾に抑制されるばかりでなく、得ら
れた芳香族ポリカーボネートは、末端ヒドロキシル基の
量が後記のように極めて少ないために耐熱性、耐熱水性
などにおいて優れた物性を有することが分かった。
また、予備重合工程を実施する際の反応温度及び反応時
間は、原料であるジヒドロキシジアリール化合物及びジ
アリールカーボネートの種類や量、必要に応じて用いら
れる触媒の種類や量、得られるプレポリマーの必要重合
度、あるいは他の反応条件などによって異なるが、通常
50〜350℃、好ましくは100〜320℃の範囲の温度で、通
常1分ないし100時間、好ましくは2分ないし10時間の
範囲で選ばれる。
プレポリマーを着色させないためには、できるだけ低温
で、かつ短時間で予備重合反応を行うことが望ましく、
したがって特に好ましい条件は、反応温度が150〜280℃
の範囲で、かつ反応時間が数分ないし数時間の範囲で選
ばれる。本発明方法においては、この予備重合で比較的
低分子量のプレポリマーを製造すればよいので、前記条
件下で容易に必要な重合度を有する無色透明なプレポリ
マーを得ることができる。
この予備重合反応においては、反応の進行に伴って、ジ
アリールカーボネートに基づくアリール基にヒドロキシ
ル基の結合した化合物である芳香族モノヒドロキシ化合
物が生成してくるが、これを反応系外へ除去することに
よってその速度が高められるので、効果的なかきまぜを
行うと同時に、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素
などの不活性ガスや低級炭化水素ガスなどを導入して、
生成してくる該芳香族モノヒドロキシ化合物をこれらの
ガスに同伴させて除去する方法や、減圧下に反応を行う
方法、及びこれらを併用した方法などが好ましく用いら
れる。
この予備重合反応は、触媒を加えずに実施することもで
き、このことは特に好ましい実施形態の1つではある
が、必要に応じて重合速度を速めるために重合触媒を用
いることもできる。このような重合触媒として、この分
野で用いられている重縮合触媒であればよく、特に制限
はないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化
カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属及びア
ルカリ土類金属の水酸化物類;水酸化アルミニウムリチ
ウム、水酸化ホウ素ナトリウム、水酸化ホウ素テトラメ
チルアンモニウムなどのホウ素やアルミニウムの水酸化
物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第四級アン
モニウム塩類;リウチムメトキシド、ナトリウムエトキ
シド、カルシウムメトキシドなどのアルカリ金属及びア
ルカリ土類金属のアルコキシド類;リチウムフェノキシ
ド、ナトリウムフェノキシド、マグネシウムフェノキシ
ド、Lio−Ar−OLi,NaO−Ar−ONa(Arはアリール基)な
どのアルカリ金属及びアルカリ土類金属のアリーロキシ
ド類;酢酸リチウム、酢酸カルシウム、安息香酸ナトリ
ウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の有機酸
塩類;酸化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛フェノキシドなどの亜
鉛化合物類;酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、
ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェ
ニル、(R1R2R3R4)NB(R1R2R3R4)又は(R1R2R3R4)PB
(R1R2R3R4)で表わされるアンモニウムボレート類又は
ホスホニウムボレート類(R1、R2、R3、R4は前記のとお
り)などのホウ素の化合物類;酸化ケイ素、ケイ酸ナト
リウム、テトラアルキルケイ素、テトラアリールケイ
素、ジフェニル−エチル−エトキシケイ素などのケイ素
の化合物類;酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、
ゲルマニウムエトキシド、ゲルマニウムフェノキシドな
どのゲルマニウムの化合物類;酸化スズ、ジアルキルス
ズオキシド、ジアリールスズオキシド、ジアルキルスズ
カルボキシレート、酢酸スズ、エチルスズトリブトキシ
ドなどのアルコキシ基又はアリーロキシ基と結合したス
ズ化合物、有機スズ化合物などのスズの化合物類;酸化
鉛、酢酸鉛、炭酸鉛、塩基性炭酸鉛、鉛及び有機鉛のア
ルコキシド又はアリーロキシドなどの鉛の化合物類;第
四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第四級ア
ルソニウム塩などのオニウム化合物類;酸化アンチモ
ン、酢酸アンチモンなどのアンチモンの化合物類;酢酸
マンガン、炭酸マンガン、ホウ酸マンガンなどのマンガ
ンの化合物類;酸化チタン、チタンのアルコキシド又は
アリールオキシドなどのチタン化合物類;酢酸ジルコニ
ウム、酸化ジルコニウム、ジルコニウムのアルコキシド
又はアリールオキシド、ジルコニウムアセチルアセトン
などのジルコニウムの化合物類などの触媒を用いること
ができる。
触媒を用いる場合、これらの触媒は1種だけを用いても
よいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、
これらの触媒の使用量は、原料のジヒドロキシジアリー
ル化合物に対して、通常、0.000001〜1重量%、好まし
くは0.000005〜0.5重量%の範囲で選ばれる。
このような触媒は、通常の場合、最終製品である芳香族
ポリカーボネートの中にそのまま残存する。そして、通
常、このような残存触媒はポリマー物性に悪影響を及ぼ
す場合があるので、触媒の使用量はできるだけ少い方が
好ましい。
本発明の方法では、予備重合工程では、比較的低分子量
のプレポリマーを製造するだけでよいので、このような
触媒を添加することなく、実質的に無触媒で実施するの
が有利である。このことは本発明方法の大きな特徴の1
つである。
このような予備重合工程を実施することによって、重量
平均分子量(Mw)が2,000〜20,000の範囲のプレポリマ
ーが得られる。また、全末端基中に占めるアリールカー
ボネート基末端の割合が50モル%より多いプレポリマー
も容易に得られる。
該予備重合反応の好ましい実施態様においては、溶媒を
用いないで溶融状態で行われるが、このようにして得ら
れたプレポリマーを室温付近までそのまま冷却したもの
は、一般的に結晶化度の低い実質的に非晶質状態のもの
が多い。しかしながら、このような非晶質状態のプレポ
リマーは、目的とする芳香族ポリカーボネートのガラス
転移温度付近の温度で溶融したり、融着してしまうの
で、そのままでは固相重合を実施することは実質的に不
可能である。そのためにプレポリマーを結晶化させる結
晶化工程が実施される。
本発明の予備重合工程では、比較的低分子量のプレポリ
マーが得られるが、ホスゲン法で製造された高分子量の
芳香族ポリカーボネートの結晶化挙動が種々研究されて
いるのとは対照的に、このような比較的低分子量のプレ
ポリマーを結晶化させようとする試みは、これまでほと
んどなされていなかった。
このようなプレポリマーを結晶化させる方法については
特に制限はないが、本発明においては、溶媒処理法及び
加熱結晶化法が好ましく用いられる。特に無触媒で重合
した場合、前者の方法が好ましい。前者の溶媒処理法
は、適当な溶媒を用いてプレポリマーを結晶化させる方
法であり、具体的にはプレポリマーを溶媒に溶解させた
のち、この溶液から結晶性のプレポリマーを析出させる
方法や、プレポリマーに対する溶解力の小さい溶媒を用
いて、その溶媒がプレポリマー中に浸透して、プレポリ
マーを結晶化させるのに必要な時間、該プレポリマーを
液状の溶媒又は溶媒蒸気に接触させる方法などが好まし
く用いられる。
前記のプレポリマー溶液から結晶性のプレポリマーを析
出させる方法としては、例えば、その溶液から溶媒を蒸
発させるなどの手段によって除去する方法や、プレポリ
マーの貧溶媒を加える方法などがあるが、単に溶媒を除
去する方法が簡単で好ましい。また、プレポリマー中に
溶媒を浸透させてプレポリマーを結晶化させるのに必要
な時間は、プレポリマーの種類や分子量、形状、あるい
は用いる溶媒の種類、処理温度などによって異なるが、
通常数秒ないし数時間の範囲で選ばれる。また処理温度
は、通常−10〜200℃の範囲で選ばれる。
このようなプレポリマーの溶媒処理のために使用できる
好ましい溶媒としては、例えば、クロロメタン、塩化メ
チレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロエタン、ジ
クロロエタン(各種)、トリクロロエタン(各種)、ト
リクロロエチレン、テトラクロロエタン(各種)などの
脂肪族ハロゲン化炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロ
ロベンゼンなどの芳香族ハロゲン化炭化水素類;テトラ
ヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;酢酸メチ
ル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエ
チルケトンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシ
レンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これら
の溶媒1種用いてもよいし、2種以上を混合して用いて
もよい。
プレポリマーの溶媒処理に用いられる溶媒の使用量は、
プレポリマーや溶媒の種類、必要結晶化度、処理温度な
どによっても異なるが、通常プレポリマーに対して、重
量基準で0.05〜100倍、好ましくは0.1〜50倍の範囲で選
ばれる。
なお、塩化メチレンのような塩素系溶媒をプレポリマー
の溶媒処理に用いても、本発明においてはプレポリマー
の分子量が比較的低いため、該塩化メチレンを結晶化プ
レポリマー中に残存させないようにすることは比較的容
易である。ホスゲン法においては、高分子量の芳香族ポ
リカーボネート中から塩化メチレンを留去する必要があ
るが、これを完全に除去することが困難である。これに
対し、本発明方法においては、結晶化工程での留去がた
とえ不完全であっても、引続いて実施される固相重合工
程で塩化メチレンをほぼ完全に除去することができる。
したがって、このようにして製造された芳香族ポリカー
ボネート中には塩素系溶媒に起因する塩素化合物は実質
的に含有されない。非塩素系の溶媒を用いる場合には、
原料として塩素原子を含むジヒドロキシジアリール化合
物又はジアリールカーボネートを用いないかぎり、全く
塩素原子を含まない芳香族ポリカーボネートが得られる
のはもちろんのことである。なお、本発明でいう実質的
に塩素原子を含まないポリカーボネートとは、塩素原子
の含有量がポリマーに対して、重量基準で1ppm以下であ
るポリカーボネートを意味する。
一方、加熱結晶化法は、該プレポリマーを目的とする芳
香族ポリカーボネートのガラス転移温度以上で、かつ該
プレポリマーが溶融しはじめる温度未満の範囲の温度に
おいて加熱することによって、結晶化させる方法であ
る。この方法は、単にプレポリマーを加熱下で保持する
のみで、結晶化させることができるので、極めて容易に
工業的に実施しうる。特に、重合触媒を使用した場合に
は、この方法が望ましい。このような簡単な方法によっ
て、比較的低分子量の実質的に非晶性のプレポリマーを
結晶化できることは、全く予想外のことであった。
この加熱結晶化を行う温度Tc(℃)については、前記し
たように、目的とする芳香族ポリカーボネートのガラス
転移温度以上で、かつ該プレポリマーの溶融温度Tm
(℃)未満の範囲であればよく特に制限はないが、低い
温度ではプレポリマーの結晶化速度が遅いので、特に好
ましい加熱結晶化温度Tc(℃)は、式 Tm−50≦Tc<Tm …(VI) で示される範囲で選ばれる。
このプレポリマーの加熱結晶化は、前記範囲におけるあ
る温度を一定に保持して実施してもよいし、温度を連続
的又は不連続的に変化させながら実施してもよく、ま
た、これらを組み合わせた方法で実施することもでき
る。温度を変化させながら実施する方法としては、加熱
結晶化の進行に伴って、一般にプレポリマーの溶融温度
が上昇していくので、この上昇速度と同じような速度で
温度を上昇させながら加熱結晶化させる方法が特に好ま
しい。
このように温度を変化させながら加熱結晶化させる方法
は、一定の温度下での加熱結晶化法に比べて、プレポリ
マーの結晶化速度が速く、かつその溶融温度をより高め
ることができる。加熱結晶化の時間は、プレポリマーの
化学組成や触媒の有無、結晶化温度や結晶化方法などに
より異なるが、通常1〜200時間の範囲である。
このような結晶化工程を経たプレポリマーが結晶化して
いることは、該プレポリマーの透明性がなくなっている
ことからも容易に判定することができるが、もちろんX
線回折によっても確認することができる。例えばジヒド
ロキシジアリール化合物としてビスフェノールAを、ジ
アリールカーボネートとしてビスフェノールAのビス・
フェニルカーボネートを用いて、予備重合を行うことに
よって得られたプレポリマーは、非晶性であってX線回
折パターンには結晶性を示すピークは認められないが、
結晶化工程後のプレポリマーのX線回折パターンには、
2θ=約17度を主ピークとする結晶性パターンが出現し
ている。
このように、結晶化工程によって非晶性であったプレポ
リマーは結晶化するが、その結晶化の度合は、原料とし
て用いるジヒドロキシジアリール化合物及びジアリール
カーボネートの種類や、プレポリマーの重合度や、触媒
の有無、結晶化条件などによって異なるが、結晶化度と
して通常3〜75%の範囲である。
このような範囲の結晶化度を有する結晶化プレポリマー
を用いて、次の固相重合工程によって、高分子量化させ
ていくことは、もちろん可能であるが、本発明において
は、工業的に実施する場合に有利な点から、該結晶化度
は好ましくは5〜55%、より好ましくは10〜45%の範囲
で選ばれる。この結晶化度が5%未満の結晶化プレポリ
マーでは、その溶融温度があまり高くならないので、固
相重合時に融着して固相重合ができなくなったり、さも
なければ該プレポリマーを融着させないような比較的低
い温度で極めて長時間固相重合を行う必要があり、工業
的に実施するには不利であるし、55%を超えると固相重
合速度が遅くなるので、長時間を要して固相重合させな
ければならず、工業的に実施するには不利となる。
本発明でいう結晶化プレポリマーの結晶化度とは、完全
非晶性プレポリマーと結晶化プレポリマーの粉末X線回
折図(例えば第1図と第2図)を用いて、次に示す方法
により得られた値のことを意味するものとする。
一般的に、結晶性高分子にX線を投射すると、散乱X線
が観測されるが、これは結晶部分に起因する結晶散乱
と、非晶部分に起因する非晶散乱の和として現れるもの
である。結晶部分及び非晶部分の重量をそれぞれMc、Ma
とし、それらに比例するX線散乱強度をそれぞれIc、Ia
とし、IcとIaとが分離できたとすると結晶化度Xc(%)
(I100cは完全結晶も単位質量当りの結晶散乱強度を、
またI100aは完全非晶の単位質量当りの非晶散乱強度を
表わす)で与えられる。
しかしながら。本発明においてはすべての結晶化プレポ
リマーはK=1の値をもつのであると仮定し、次の式に
より結晶化度Xc(%)を求めた。
X線回折計を用いて得られる全回折強度曲線は空気によ
る散乱、原子の熱運動に起因する散乱、コンプトン散乱
などにもとずく、いわゆるバックグラウンドと、結晶散
乱強度と非晶散乱強度の和として表わされたものである
から、これから結晶化度を求めるには各成分を分離する
必要がある。
本発明で用いた具体的な方法は、例えば第1図と第2図
を用いて次のような方法で行った。
結晶化プレポリマーの粉末X線回折図(第2図)におい
て、2θ=10°の点(P)と2θ=35°の点(Q)を結
ぶ直線PQ(ベースライン)を引く。結晶散乱強度がゼロ
と考えられる2θ=15°での回折強度曲線上及びベース
ライン上の点をそれぞれ(R)、(S)とする。
同様にして、完全非晶性プレポリマー(プレポリマーを
280〜300℃で溶融させて厚さ約1mmの膜状にしたもの
を、その温度から0℃に旧例させて完全に非晶化させた
の)の粉末X線回折図(第1図)において、直線KL(ベ
ースライン)と2θ=15°での回折強度曲線上及びベー
スライン上の点(M)及び(N)を得る。
I1=点(M)での回折強度 B1=点(N)での回折強度 I2=点(R)での回折強度 B2=点(S)での回折強度 y=回折強度曲線KMLと直線KLで囲まれた面積 z=回折強度曲線PRQと直線PQで囲まれた面積 とすれば、本発明でいう結晶化度Xc(%)は次式で与え
られる。
この方法で得られた参考例1の結晶化プレポリマーの結
晶化度は約30%であった。
このようにして得られた結晶化したプレポリマーを、そ
の溶融温度より低い温度で固相状態に保ちながら固相重
縮合させることによって、容易に高分子量の芳香族ポリ
カーボネートにすることができる。
この固相重合工程においては、結晶化プレポリマー中に
存在する2種類の末端基、すなわち、アリールカーボネ
ート末端基とヒドロキシル末端基が、主として次に示す
2つの型の反応を行いながら、重縮合が進行しているも
のと考えられる。すらわちヒドロキシル末端基がアリー
ルカーボネート末端基と反応して、ジアリールカーボネ
ートに基づくアリール基にヒドロキシル基の結合した芳
香族モノヒドロキシ化合物を脱離させながら重縮合する
反応と、アリールカーボネート末端基が他のアリールカ
ーボネート末端基と反応して、ジアリールカーボネート
を脱離させながら重縮合が進行する自己縮合反応の2つ
の型の反応が起っているものと考えられる。
本発明において、固相重合が実施できる温度範囲では、
芳香族モノヒドロキシ化合物を脱離させながら重縮合す
る反応速度が、ジアリールカーボネートを脱離させなが
ら重縮合する反応速度に対して、通常、数倍ないし数十
倍も大きいことが分かった。
したがって、アリールカーボネート末端基の存在量がヒ
ドロキシ末端基の存在量よりも多い結晶化プレポリマー
を固相重合させることを特徴とする本発明の方法におい
ては、目的の分子量に到達した階段でヒドロキシル末端
基の量を極めて少なくすることができる。本発明方法で
製造される芳香族ポリカーボネートの末端ヒドロキシル
基の量は、用いられる結晶化プレポリマーの分子量とア
リールカーボネート末端基の量や、固相重合温度、固相
重合時間、固相重合方法などの固相重合条件や、到達目
的分子量などによって異なるが、好ましくは、ポリマー
に対して0,03重量%以下である。このようにヒドロキシ
ル末端基の少ない芳香族ポリカーボネートが容易に得ら
れる。
このことは、本発明方法によれば、大部分の末端基が、
安定な末端基であるアリールカーボネート基から成って
いる物性的に優れた芳香族ポリカーボネートが容易に得
られることを表わしている。
該固相重合工程においては、反応によって副生してくる
芳香族モノヒドロキシ化合物又はジアリールカーボネー
ト若しくはその両方を系外に抜き出すことによってその
反応が促進される。そのためには、窒素、アルゴン、ヘ
リウム、二酸化炭素などの不活性ガスや、低級炭化水素
ガスなどを導入して、ジアリールカーボネートや芳香族
モノヒドロキシ化合物をこれらのガスに随伴させて除去
する方法や、減圧下に反応を行う方法、及びこれら併用
した方法などが好ましく用いられる。また、同伴用のガ
スを導入する場合には、これらのガスを、反応温度付近
の温度に加熱しておくことが好ましい。
この固相重合反応を実施する場合の結晶化プレポリマー
の形状については特に制限はないが、大きな塊状のもの
は反応速度が遅くかつ取扱いが面倒であるなどの点から
好ましくなく、ペレット状、ビーズ状、顆粒状、粉末状
などの形状のものが好適である。また、結晶化後の固体
状のプレポリマーを適当な大きさに破砕したものも好ま
しく用いられる。溶媒処理によって結晶化させた結晶化
プレポリマーは通常、多孔質の顆粒状又は粉末状で得ら
れ、このような多孔質のプレポリマーは、固相重合の際
に副生してくる芳香族モノヒドロキシ化合物やジアリー
ルカーボネートの抜出しが容易であるので、特に好まし
い。
該固相重合反応を実施する際の反応温度Tp(℃)及び反
応時間については、結晶化プレポリマーの種類(化学構
造、分子量など)や形状、結晶化プレポリマー中の触媒
の有無や種類や量、必要に応じて追加される触媒の種類
や量、結晶化プレポリマーの結晶化の度合や溶融温度T
m′(℃)の違い、目的とする芳香族ポリカーボネート
の必要重合度、あるいは他の反応条件などによって異な
るが、通常目的とする芳香族ポリカーボネートのガラス
転移温度以上で、かつ固相重合中の結晶化プレポリマー
が溶融しないで固相状態を保つ範囲の温度、好ましく
は、式 Tm′−50≦Tp<Tm′ …(VII) で示される範囲の温度において、1分ないし100時間、
好ましくは0.1〜50時間程度加熱することにより、固相
重合反応が行われる。
このような温度範囲としては、例えばビスフェノールA
のポリカーボネートを製造する場合には、約150〜260℃
が好ましく、特に約180〜23℃が好ましい。
該固相重合工程では、重合中のポリマーにできるだけ均
一に熱を与えるためや、あるいは副生する芳香族モノヒ
ドロキシ化合物やジアリールカーボネートの抜き出しを
有利に進めるために、有効なかくはんを行うことは好ま
しい方法である。このかくはん方法としては、例えばか
くはん翼による方法や反応器自身が回転する構造の反応
器を用いる方法などの機械的かくはんによる方法、ある
いは、加熱ガスによって流動させる方法などが好ましく
用いられる。
また、プレポリマーの結晶化を加熱結晶によって実施す
る場合は、所定の結晶化度に到達させるための単なる加
熱操作に引続いて、系を減圧にしたり、系中に随伴用の
加熱ガスを導入することによって系中から芳香族モノヒ
ドロキシ化合物やジアリールカーボネートを抜き出し、
固相重合を行うこともできる。
本発明における固相重合反応は、触媒を添加しなくても
十分な速度で進行させることができ、これが最も好まし
い実施態様であるが、さらに反応速度を高める目的で触
媒を使用することもできる。前記予備重合工程で触媒を
使用したならば、通常、生成するプレポリマー中に触媒
が残存するので、新たに触媒を加える必要もないが、な
んらかの理由で触媒が除去されたり、活性が低下してい
る場合もあるので、その際には必要に応じて、適当な触
媒を加えることもできる。この場合、液状又は気相状態
にした触媒成分をプレポリマーに加えることも好ましい
方法である。このような触媒成分としては、予備重合工
程で用いることのできる前記のようなものを挙げること
ができる。
このようにして、固相重合工程を実施することによっ
て、プレポリマーの重合度を上げることができる。一般
に工業的に有用な芳香族ポリカーボネートの重量平均分
子量は、6,000〜300,000程度であり、好ましくは10,000
〜200,000程度、より好ましくは10,000〜50,000程度、
さらにより好ましくは15,000〜40,000程度であるが、本
発明のプレポリマーの固相重合法によって、このような
重合度のポリカーボネートが容易に得られる。
このような固相重合によって製造された芳香族ポリカー
ボネートの形状は、用いた結晶化プレポリマーの形状に
も依存する場合があるが、通常、ビーズ状、顆粒状、粉
末状などのいわゆる粉体である。結晶化プレポリマーの
固相重合によって得られた芳香族ポリカーボネートの結
晶化度は、通常、元のプレポリマーの結晶化度より増大
していることから、本発明方法では通常、結晶性芳香族
ポリカーボネート粉体が得られることになる。
もちろん、固相重合によって所定の分子量に達した結晶
性芳香族ポリカーボネート粉体を冷却せずに、そのまま
押出機に導入してペレット化して、非晶性芳香族ポリカ
ーボネートを得ることもできるし、冷却せずに直接成形
機に導入して成形することも可能である。
本発明方法は、予備重合と固相重合によって所望の平均
分子量を有する芳香族ポリカーボネートを製造する方法
であるが、重合に寄与する予備重合と固相重合の割合を
広い範囲で変えることが可能である。
本発明を実施するに当って、使用される反応装置の形式
は、予備重合、結晶化及び固相重合のいずれの工程にお
いても、回分式、流通式、及びこれらを併用した方法の
ものなど、いずれの方法のものであってもよい。
また予備重合工程では比較的低分子量のプレポリマーを
製造するだけであるので、溶融法といわれるいわゆるエ
ステル交換法などの高温溶融重合で必要とされるような
高粘度流体用の高価な反応装置は不要である。さらに、
結晶化工程ではプレポリマーを単に溶媒処理や加熱処理
をすれば結晶化できるので特別な装置はなんら必要とし
ない。さらに固相重合工程では、実質的に結晶化プレポ
リマーを加熱でき、副生する芳香族モノヒドロキシ化合
物やジアリールカーボネートなどを除去できるような装
置であれば重合が可能である。
このように本発明方法は特別な工夫を要しない簡単な装
置で実施することができ、工業的に極めて有利である。
また、本発明方法では、芳香族ポリカーボネートの分子
量分布が小さいものから、大きいものまで比較的自由に
製造できる。これは、例えば分子量分布の小さいプレポ
リマーを用いれば、分子量分布の小さい芳香族ポリカー
ボネートが得られ、分子量分布の広いプレポリマーを用
いれば分子量分布の広い芳香族ポリカーボネートが得ら
れるからである。このことは本発明の大きな特徴の1つ
である。分子量分布を表わす尺度としては通常、重量平
均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnの値
が用いられており、縮合系ポリマーの場合、この値が2
のときが理論的に最も小さい分子量分布とされている。
分子量分布の小さいポリマーは優れた特徴をもつことは
予測されているが、実際的にはMw/Mnの値が2.5以下、特
に2.4以下のポリマーを製造することは困難である。既
存の方法、例えばいわゆる溶融法といわれるエステル交
換法では、重合末期に非常に著しく高粘度になるため
に、反応が不均一になりやすく、そのために分子量分布
を小さくすることは不可能であり、得られるポリカーボ
ネートは、通常Mw/Mn>2.6である。また、現在工業的に
実施されているホスゲン法でも、この値は2.4〜3.5であ
り、通常は2.5〜3.2の範囲である。これに対し、本発明
方法では、Mw/Mn=2.2〜2.5の芳香族ポリカーボネート
も容易に得られる。このことは、プレポリマーのように
比較的低分子量体では、分子量分布の小さいものが容易
に得られることに起因していると考えられる。
さらに、本発明方法で結晶性の芳香族ポリカーボネー
ト、例えば最も重要なポリカーボネートであるビスフェ
ノールAのポリカーボネートを製造する場合、無色透明
なものが得られることも、本発明の大きな特徴である。
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートから、ビス
フェノールAのポリカーボネートを製造するいわゆる溶
融法では、300℃付近の高温下で、高粘度物を1mmHg以下
の高真空下で長時間反応させる必要があるため、ポリマ
ーの熱分解や微量の酸素のために、生成するポリカーボ
ネートがどうしても淡黄色に着色するという欠点があっ
たが、本発明の方法では、予備重合工程が例えば250℃
以下、好ましくは240℃以下の比較的低温で短時間で実
施できることと、結晶化工程及び固相重合工程も例えば
230℃以下の比較的低温度で実施できることから、溶融
法のエステル交換法でみられるようなポリマーの変性が
ほとんど起らないからである。したがって、固相重合後
の結晶性のポリマーは黄色味のない白色であり、また、
この結晶性のポリマーを溶融温度以上に加熱すれば、容
易に非晶質化し、無色透明のビスフェノールAのポリカ
ーボネートが得られる。
本発明方法においては、前記一般式(I)で表わされる
ジヒドロキシジアリールアルカン60モル%以上及び該ア
ルカン以外のジヒドロキシジアリール化合物40モル%以
下から成るジヒドロキシジアリール化合物の骨格を含む
高分子量の種々の芳香族ポリカーボネートが容易に製造
されるが、これらの中で特に重量平均分子量(Mw)が1
0,000〜200,000でかつヒドロキシル基末端がポリマーに
対して、0.03重量%以下である結晶性芳香族ポリカーボ
ネート粉体は、ペレット化することも可能であるし、ま
たペレット化せずに直接成形することによって物性的に
優れた芳香族ポリカーボネート成形体を製造することも
でき、さらには他のポリマーとの混練によるポリマーア
ロイの製造にも粉体であるため直接混合性良く混練でき
るので、工業的に使用する場合、特に重要である。
また、塩素原子を含まないジヒドロキシジアリール化合
物とジアリールカーボネートからは、全く塩素原子を含
まない芳香族ポリカーボネート粉体も得られ、これらの
芳香族ポリカーボネート粉体は特に、光学機器やエレク
トロニクス用材料として重要である。
発明の効果 芳香族ポリカーボネートの既存の工業的製法であるホス
ゲン法においては、塩化ナトリウムなどの電解質や塩素
を含む副性物が生成し、これらの不純物が必然的に樹脂
中に含まれている。また、溶媒として大量に用いている
塩化メチレンなどの含塩素化合物も樹脂中に残存してい
る。これらの不純物は樹脂性に悪影響を及ぼすので、ホ
スゲン法においては樹脂中のこれらの含有量を低下させ
るために、複雑で費用のかかる洗浄や除去工程を実施し
ているが、これらの不純物を完全に除去することは不可
能である。
これに対して、本発明方法で得られる芳香族ポリカーボ
ネートには、このような不純物は全く存在しないので、
品質的に優れているだけでなく、当然のことながら、こ
れらを分離する面倒な工程が不要であるため、本発明方
法は工業的に有利である。
さらに、溶融法のエステル交換法では高温・高真空が可
能な高価な高粘度リアクターが必要であり、しかも、ポ
リマーが高温での熱劣化を受けて黄変しやすいという欠
点があるが、本発明の方法は、特別な装置も不要であ
り、また得られる芳香族ポリカーボネートも優れた品質
のものである。
さらに、前記一般式(II)で表わされるジアリールカー
ボネートを使用することにより、ジフェニルカーボネー
トを使用する場合に比べて、(1)副生フェノールの生
成量が半分であることから、重合器体積当りのポリマー
生産量が約1.5倍に向上する、(2)該ジアリールカー
ボネートは、ジフェニルカーボネートに比べて沸点がは
るかに高いことから、予備重合時副生するフェノール類
(芳香族モノヒドロキシ化合物)とともに、留出する量
が大幅に抑制され、その結果、ジヒドロキシジアリール
化合物との反応におけるモル比調整が極めて容易となる
ため、プレポリマーの末端基コントロール、ひいては最
終の固相重合ポリマーの末端基コントロールが著しく容
易になる、などの利点も生じる。
実施例 次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本
発明はこれらの例によってなんら限定されるものではな
い。
なお、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ
ー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)の値で示
し、数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)もGPCで得られ
た値である。また、予備重合反応装置、固相重合反応装
置のいずれも、脱酸素及び乾燥に十分留意し、かつ反応
中の酸素や水などの混入をできるだけ少なくするように
工夫したものを用いた。
また、プレポリマー及び芳香族ポリカーボネート中の末
端基であるアリールカーボネート基とヒドロキシル基の
割合は、高速液体クロマトグラフィーによる測定と、A.
Horbachらの方法(フェノール性−OH基の定量方法で、
プレポリマー又はポリマーを酢酸酸性塩化メチレンに溶
解させたのち、TiCl4を加え、生成した赤色錯体を546nm
の波長の光で比色定量する方法、MaKaromol.Chem.,88,2
15(1965))で測定したものである。結晶化度は、非晶
性プレポリマーと結晶化プレポリマーの粉末X線回折図
を用いて、前記の方法により算出した値である。
なお、W%は重量%を表わす。
参考例1 2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビ
スフェノールAという)68.4g、ジフェニルカーボネー
ト77.0gをかくはん装置、ガス導入口、ガス吸引口付の5
00mlの三つ口フラスコに入れ、減圧脱気、乾燥窒素導入
を数回繰り返したのち、該フラスコを180〜190℃の油浴
に入れ、内容物を溶融後、減圧脱気、乾燥窒素導入を行
った。次いで浴温を230℃に上げ、かきまぜ下に、乾燥
窒素を25Nl/hrで導入して、生成してくるフェノールを
留出させた。約50分後に、反応系を減圧にし、2〜5mmH
gで約15分間かきまぜることによって、フェノール及び
ジフェニルカーボネートを留出させた。この結果、Mw=
6,200の無色透明なプレポリマー76gが得られた。
このプレポリマーの末端基の割合は (Phはフェニル基)が72モル%で、−OH基が28モル%で
あった。
次に、このプレポリマーをフラスコより取り出し、粉砕
したのち、アセトン(250ml)中に浸せきすることによ
って、結晶化させた。結晶化はただちに進行しはじめ、
約30分間で十分結晶化していたが、さらに、1時間浸せ
きしておいた。このようにして得られた白色の粉末状の
プレポリマーをろ過したのち乾燥した。このプレポリマ
ーの結晶化工程前後のX線回折パターンをそれぞれ第1
図及び第2図に示す。また、結晶化プレポリマー中の末
端基の割合は、非晶性のプレポリマーとほとんど変化し
ていなかった。
次に、この粉末状の結晶化プレポリマー(結晶化度は、
第1図及び第2図を用いて前記の方法から算出して約30
%であった)を予備重合装置と全く同様なフラスコに入
れ、2〜5mmHgの減圧下、少量の乾燥窒素を導入しなが
ら、フラスコを190度の油浴に入れ、かきまぜながら5
℃/hrで昇温した。220℃に達したのち、さらに8時間こ
の操作を続けることによって固相重合を行ったところ、
Mw=28,000(Mw/Mn=2.4)の白色の結晶性ポリカーボネ
ート粉体が得られた。
比較例1 参考例1と同様な方法に予備重合操作と類似の操作を行
うことによって、溶融重縮合反応を行った。すなわち、
230℃で乾燥窒素25Nl/hrを導入しながらかきまぜ下に約
50分間反応させたのち、反応系を2〜5mmHgの減圧に
し、約15分間、次いで反応温度を280℃に上げた。次に2
80℃、1mmHgで1時間反応させたのち、300℃、1mmHgで
3時間反応させた。冷却後、非晶性のポリカーボネート
(Mw=26,000、Mw/Mn=2.8)が得られた。このポリカー
ボネートは淡黄色に着色しており、ヒドロキシル基末端
はポリマーに対して0.08W%であった。このポリカーボ
ネートを射出成形した試験片を用いて、120℃の熱水で5
0時間耐熱水性試験を行った結果、分子量(Mw)は18,00
0に低下しており、しかも一部クレーズが発生してい
た。また、黄色の着色度も増加していた。
実施例1 ビスフェノール46gとビスフェノールAのビス・フェニ
ルカーボネート98gを用いた以外は、参考例1と同様に
して予備重合を行った。その結果、Mw=7,800の無色透
明なプレポリマー111gが得られた。このプレポリマーの
末端基の割合は (Phはフェニル基)69モル%で、−OH基31モル%であっ
て。この予備重合物を参考例1と同様にして結晶化させ
た。得られた結晶化プレポリマーの結晶化度は28%であ
った。次いでこの結晶化プレポリマーを参考例1と同様
にして固相重合したところMw=24,000(Mw/Mn=2.4)の
白色の結晶性ポリカーボネート粉体が得られた。この粉
体を300度で溶融押出すると、透明な非晶性ポリカーボ
ネート樹脂が得られた。
実施例2 ビスフェノールA46g、ビスフェノールAのビスフェニル
カーボネート101gを使用した以外は、実施例1と同様に
予備重合し、プレポリマーの末端基の割合が −OH基22モル%であり、Mw=6,800の無色透明なプレポ
リマーが得られた。
次いで実施例1と同様に結晶化した。得られた結晶化粉
体をロータリーエバポレーターのフラスコに入れ、これ
を190℃の油浴に入れ、かきまぜながら5℃/hrで昇温し
た。220℃に達したのち、さらに12時間、固相重合を行
ったところ、Mw=26,000(Mw/Mn=2.3)の白色ポリカー
ボネートが得られた。このポリカーボネートの−OH基は
5モル%であった。このポリマーは、120℃熱水中で50
時間放置しても、分子量は25,000と若干低下するのみで
クレーズは発生していなかった。
実施例3〜6 表に示す量のビスフェノールAとビスフェノールAのビ
ス・フェニルカーボネートを使用し、実施例1と同様に
予備重合、結晶化を行い、結晶化プレポリマーを得た。
次いで、この結晶化プレポリマーを該表に示す条件で固
相重合を行った。結果も合わせて該表に示す。
実施例7 触媒として、ビスフェノールAのジナトリウム塩2mgを
加えて予備重合を行った以外は、実施例1と同様な条件
で重合を行い、Mw6,800のプレポリマーを得た。このプ
レポリマーをフラスコに入れ、180℃の浴温中24時間静
置することにより、加熱結晶化した。
次に、この結晶化プレポリマーを、ロータリーエバポレ
ーターを用いて、2〜5mmHgの減圧下に少量の窒素を導
入しながら190℃に昇温し、さらに5℃/hrで昇温して、
220℃に達した時点で、この温度で4時間反応させて、M
w24,000のポリカーボネート粉体を得た。
実施例8 実施例1において、ビスフェノールA46gの代りに、ビス
フェノールA30gとジヒドロキシジフェニルスルホン18g
との混合物を使用した以外は、実施例1と同様な方法で
重合を行い、Mw20,100のポリカーボネート共重合体を得
た。
この共重合体は で表わされる繰り返し単位と、 で表わされる繰り返し単位とから成っている。
実施例9 ビスフェノールA9.2kg及びビスフェノールAのビス・フ
ェニルカーボネート19.2kgを、40lのガラスライニング
製のリアクターに入れ、減圧脱気と乾燥窒素導入を数回
繰り返したのち、該リアクターを180〜190℃に加熱し、
内容物を溶融後、減圧脱気と乾燥窒素導入を数回繰り返
した。次いでリアクター内部の温度を230〜235℃に上
げ、かきまぜ下に、乾燥窒素を200Nl/hrで2時間導入し
たのち、反応系を減圧にし、5〜10mmHgで2時間反応さ
せることによってフェノールを留出させた。その後、リ
アクター内を乾燥窒素で2〜3kg/cm2に加圧することに
よって、リアクターの下部よりプレポリマーを窒素雰囲
気下で、アセトン25l中に排出した。排出とともに、ア
セトン中でプレポリマーをかきまぜて、粉砕と結晶化を
同時に行った。
このようにして得られた無色透明なプレポリマーは、Mw
6,000で、 の割合は70モル%であった。次に、このプレポリマーを
実施例1と同様に固相重合し、Mw26,000のポリカーボネ
ートを得た。
【図面の簡単な説明】 第1図及び第2図は、それぞれ結晶化プレポリマーの結
晶化度を測定するための、プレポリマーの1例の結晶化
前及び結晶化後のX線回折パターンである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−158033(JP,A) 特開 昭63−205318(JP,A) 特開 昭63−223035(JP,A) 特開 昭64−4617(JP,A)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 HO−Ar1−Y−Ar2−OH (式中のAr1及びAr2は、それぞれアリーレン基、Yはア
    ルキレン又は置換アルキレン基である)で表わされるジ
    ヒドロキシジアリールアルカンを主体とするジヒドロキ
    シジアリール化合物と、一般式 (式中のAr3及びAr4は、それぞれアリーレン基、Xは二
    価のアルキレン基、二価の置換アルキレン基、スルホニ
    ル結合、スルホキシド結合、カルボニル結合、アミド結
    合、カルボキシ結合、エーテル結合又はチオエーテル結
    合、R1及びR2はそれぞれアルキル基、nは0又は1、n1
    及びn2は、それぞれ0又は1〜3の整数であり、n1が2
    又は3の場合、R1はそれぞれ異なるものであってもよ
    く、n2が2又は3の場合、R2はそれぞれ異なるものであ
    ってもよい) で表わされるジアリールカーボネートとを反応させて芳
    香族ポリカーボネートを製造するに当り、 (a)該ジヒドロキシジアリール化合物と、該ジアリー
    ルカーボネートとを加熱下に予備重合させて、重量平均
    分子量(Mw)が2,000〜20,000の範囲にあるプレポリマ
    ーを形成させる予備重合工程、 (b)該プレポリマーを結晶化させて、結晶化プレポリ
    マーを形成させる結晶化工程、及び (c)該結晶化プレポリマーを、製造すべき芳香族ポリ
    カーボネートのガラス転移温度以上で、かつ該結晶化プ
    レポリマーが固相状態を保持しうる範囲の温度に加熱し
    て、さらに重合度を高める固相重合工程を順次行うこと
    を特徴とする芳香族ポリカーボネートの製法。
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EP0584801A3 (en) * 1992-08-26 1994-09-14 Mitsubishi Chem Ind Aromatic polycarbonate resins and process for the preparation thereof
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