JPH072979B2 - 強化アルミニウムマトリックス複合材料 - Google Patents

強化アルミニウムマトリックス複合材料

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は公知の複合材料に比べその強度と剛性をそこな
うことなく、しかもよりすぐれた靭性と延性とを有する
強化アルミニウムマトリックス複合材料に関する。更に
詳しくは、主要な合金元素として可溶量の銅とマグネシ
ウムとを含む強化アルミニウム合金に関するものであ
る。
又、本発明の合金は、その他に、ケイ素、銀、亜鉛等の
可溶性の合金元素も単独あるいは組み合わせてベースア
ロイに可溶な限りの限度の量まで含むことができる。但
し、マンガン、クロム、鉄、ジルコニウムのような不溶
性の金属元素は除去するか、又は最小限の含有量とす
る。
従来の技術 アルミニウム合金は工業材料としてよく知られ、広く使
用されている。又、粒子・ホイスカー又はチョップトフ
ァイバー状とした不連続炭化ケイ素強化材をアルミニウ
ム合金マトリックスとに含ませることにより、マトリッ
クス合金単独の場合に比べ、降伏強さ、引張り強さ及び
弾性率の点に於いてはるかにすぐれた複合材料が得られ
ることも知られている。しかし、従来の合金に炭化ケイ
素ホイスカーを添加すると延性及び靱性が低下すること
から工業的利用には限りがあった。
公知の炭化ケイ素ホイスカーによって強化されたアルミ
ニウム合金の延性と靱性とが優れないことの理由として
は、これまでいくつかの研究が示しているように、ホイ
スカーの端に発生するボイド核形成が挙げられる。尚、
ホイスカーの端は応力の集中する場所と考えられてい
る。よって、このような場所にミクロ構造上の損傷が生
じるとボイドが発生し界面の反凝集、ひいてはホイスカ
ーの亀裂に至り、これが広がって最終的には破壊路を形
成してしまう。1986年,S.R.ナットによる“Al−SiC複合
材料における界面と破壊のメカニズム”と題する研究で
も同上の観察が成され、損傷の生じ始めるほとんどの場
所にはホイスカー補強材が含まれる為、ホイスカー強化
のアルミニウム合金の延性には基本的に限界があり、合
金の成分を変えることによっては克服することのできな
いという結論が出されている。こうした公知の見解に反
し、本発明者はアルミニウムマトリックスの合金成分を
変えることにより従来の合金マトリックスを使用した複
合材料に比べより優れた延性と破壊靱性とを有するセラ
ミック強化アルミニウムマトリックス複合材料を得るこ
とに成功した。更にこの複合材料はその強度と剛性を損
なうことなく靱性と延性の改善を達成しているものであ
る。
又、以前に、種類の異なる従来のセラミック強化アルミ
ニウム合金マトリックスを測定した別の合金開発プログ
ラムもSiCw補強材が破壊プロセスを支配するものである
とする仮説に同意し、マトリックス合金自体はせいぜい
割れに至る伸びに対してわずかな影響を及ぼすものでし
かないとの結論に至っている。更に、採用するマトリッ
クス合金やテンパーにかかわらず従来のアルミニウム合
金で作られた強化複合材料はどれも割れに至るまでの伸
びが約2.5%であることが判明したことから、複合材料
の強化と延性とは別のアルミニウム合金を使っても改善
できないものと考えられてきた。尚、本発明はこの点に
於いても従来の見解に反する結果を得たものである。
これまでの複合材料ではセラミック物質による補強材用
マトリックスとしてアルミニウム協会分類系(Alumuniu
m Association Classification System)により定義さ
れている従来の熱処理可能なアルミニウム合金を採用し
てきた。もっともよく使用されてきたアルミニウム合金
は2124合金で、銅3.8〜4.0%、マグネシウム1.2〜1.8
%、マンガン0.3〜0.9%、最高0.2%までのケイ素及び
最高0.3%までの鉄とを本質的に含むものである。この
合金は一般に炭化ケイ素ホイスカーにて強化されてい
る。強化用炭化ケイ素は不連続性の為、この複合材料は
従来の金属加工法にて成形することができる。炭化ケイ
素強化アルミニウムマトリックス複合材料はしばしばSX
A(登録商標)として知られている。例えばSXA24/SiCは
SiCによって強化された2124合金の複合材料である。押
出成形・鍛造又は圧延したSXA24/SiCの強度及び剛性は
現行の強化アルミニウム合金に比べはるかに優れたもの
であり、軽量なこと、及びこの優れた強度及び剛性とに
より幅広い工業利用が可能となっている。例えば航空機
のライフサイクルコスト減及びそ性能の向上などはその
一例として挙げられる。しかし、このSXA24/SiCの延性
と靱性も、破損許容度及び延性とが何よりも需要である
航空機の部品にはまた充分とは言えないものであった。
このことがなければ理想的であると思われているにもか
かわらず、このことによりこれまで従来のセラミック強
化合金を航空機その他に使用することが大きく妨げられ
てきた。2124の様な従来のマトリックス合金を使ったSX
A複合材料の場合、引張荷重を加えるとネック生成が始
まるまでもなく、突発的に破壊されてしまう。SXA24/Si
Cwの場合、破壊された試料を調べたところ破壊はSiCwに
伴う粗粒の炭化ケイ素粒子異物や不溶性の金属間化合の
粒子、及びSiCwの凝集物のような50μm以下の直径をも
つ大きな粒子部から通常発生し始めることがわかった。
亀裂が生じ始めるとディンプル破裂メカニズムによって
割れが伝わり、ここではSiC強化材がミクロボイド核形
成の本源地となる。SiCw15容量%を使って補強した2124
合金から作られた複合材料による研究では上記の事実が
“大きな不溶性の金属間化合の分散質の粒子と成分の粒
子とが破壊核形成の中心でありマトリックス内の多種の
析出物と分散質の粒子とが割れをもたらす小規模な歪の
主たる原因であること”を示していると示唆している。
又、金属間化合の分散質が除去されると破壊現象は強化
ファイバーによって支配されることになろうとの仮説も
たてられた。
従来のマトリックス用合金を使って作られた複合材料中
に形成される大きな不溶性金属間粒子のうちの或る物
は、非強化合金において不可欠の合金元素であるところ
の遷移元素によって形成される。この遷移元素は強度・
破損許容度及び耐蝕性とを最良のレベルに保つ役割を果
すものである。例えば、マンガンは2124になくてはなら
ぬ添加物であり、インゴットの予熱段階及び合金を作成
する際の均質化処理段階においてサブミクロンのAl20Mn
3Cu2粒子を析出させる働きをする。これらの粒子は一般
に分散質とよばれておりこの分散質の粒子は実質的に不
溶性で、しかしながら強化されていない合金においては
二重の矛盾する役割を果たしている。分散質は再結晶及
び結晶成長を抑制することによって高い靱性と関連のあ
る粒内割れを促進する。しかしながら、分散質はミクロ
ボイドを形成することによって割れを促進し、結果とし
て、粒内割れのエネルギーを減ずる。2124のAl20Mn3Cu2
のような、分散質はセラミック強化合金マトリックス複
合材料を作る際に採用される典型的な複合材料強化プロ
セスには適しない。これは、液体/固体のホットプレス
圧縮温度から冷却するまでの冷却速度が遅い為、ガス噴
霧をした合金粉末の均質かつ急速に凝固させたミクロ構
造が破壊され、(Mn,Fe,Cu)Al6もしくはAl20(MnFe)3Cu
2の大きな金属間化合の粒子が分散質に加えて形成され
てしまうからである。
別のタイプとして不溶性の金属間化合粒子には銅が含ま
れており、これは時効硬化して2124を強化する上で欠か
せない元素である。2124合金の配合を制限することによ
りCuはAl−Cu−Mg系の可溶性限度を超えることが可能と
なる。こうして、X線回折により溶体化処理・冷水急冷
及びSXA24/SiCの自然時効の後Al2Cuが確認された。Al20
Mn3Cu2に結合する銅の場合、自然時効あるいは人工時効
して強化相を析出させる為に約3.9%の銅(公称組成に
て)を使用することができる。この濃度では1図から明
らかなとおり三元系Al−Cu−Mgソルバスにおいて溶解不
可能な可溶性元素が複合材料中に存在する可能性を示し
ている。共融を避ける為に用いられる2124の溶体化処理
温度として通常最高温度である920゜F(493℃)では可
溶性相の完全な溶解はできない。
しかし本発明によると、強化材及び分散された酸化アル
ミニウム(アルミニウム粉末によってもたらされる不純
物)とが結晶粒のサイズを適切にコントロールしている
ようである為、分散質の粒子は強化アルミニウム複合材
料の中に必要でないことが判明した。従って2124からマ
ンガンの様な不溶性の金属元素を除去し、一方時効硬化
によって強化する為に必要な元素は保持することにより
早期に割れを生じさせる原因となっている大きな金属間
化合の粒子をとりのぞくことになる。分散質を除去すれ
ばマトリックス合金の粒内割れエネルギーを増すことに
より複合材料の破壊靱性を改善することができよう。セ
ラミック強化材の量は変わらない為、複合材料の強度と
剛性は維持される。
つまり2124のような従来の合金によって作られたセラミ
ック強化アルミニウム合金は不溶性の成分の粒子と未溶
解の可溶性の粒子とを形成し、これは長期の均質化によ
っても除去することができないものである。これらの粒
子は永久にとどまってしまいマトリックスのミクロ構造
にとって有害な成分となる。従って本発明によれば割れ
が生じ小規模歪み(2.0%〜2.5%)が拡がる場所となる
成分を取り除く上で合金の量とタイプをコントロールす
ることが必要であることがわかる。
問題を解決しようとする手段 本発明の強化アルミニウム合金マトリックス複合材料
は、主な合金元素として銅及びマグネシウムとを含む本
質的にアルミニウムから成るアルミニウム合金マトリッ
クスを含む。この合金は、その他に、ケイ素、銀、亜鉛
などの可溶性合金元素もベースアロイに可溶な限りの量
において含むことができる。又、マンガン、クロム、
鉄、ジルコニウムのような不溶性の金属元素の本発明の
合金中における含有量は、最少限であることがのぞまし
い。尚、強度・剛性・延性及び破壊靱性は合金元素の含
有量、不溶性の金属元素の含有量、テンパー、強化材の
タイプ及び量によって変わる。できれば不溶性の金属元
素は合金から完全にとりのぞかれていることがのぞまし
い。但し実際には複合材料に含まれるその他の成分・複
合材料の最終用途・延性及び破壊靱性の条件などによ
り、合金はパーセンテージにして少量の不溶性の金属元
素を含んでもよいと考えられる。本発明の合金ではその
含有量が約0.2%未満であることがのぞましい。
又、本発明の強化複合材料では、それぞれ2.0〜4.5%、
0.3〜1.8%の銅とマグネシウムを可溶量として含むアル
ミニウム合金を使用することがのぞましい。更に本発明
の合金は粒子、ホイスカーもしくはチョップトファイバ
ーのセラミックによって強化されていることがのぞまし
い。但し、タングステンのような金属強化材も使用する
ことができる。
以上のとおり本発明は強度と剛性をそこなうことなく、
従来の合金マトリックスを使って得られる複合材料に比
べよりすぐれた延性と靱性とを複合材料に与える強化複
合材料用マトリックス合金複合材料を提供するものであ
る。
強化アルミニウムマトリックス複合材料の延性及び破壊
靱性とは、従来の、もしくは粉末冶金されたアルミニウ
ム合金中に金属間化合の分散質粒子を形成する元素を取
り除くか、又は少なくともこれを最少限とすることによ
り大幅に改善されることが判明した。これらの元素は延
性及び靱性にとって不必要且つ有害なものである。尚、
本発明の銅/マグネシウムマトリックス合金は強化に必
要な元素のみから本質的に成るものであり、この強化元
素の合計濃度は安全な溶体化処理最高温度によって定め
られた溶解度限を超えるものであってはならない。すな
わちこのことにより均質化処理及び溶体化処理の間に金
属間化合の粒子を完全に固溶させることが可能となるか
らである。本発明のマトリックス合金の性質としてのぞ
ましいのは、自然時効したT3又はT4状態である。T6又は
T8状態への人工時効は強度の改善には貢献するが、従来
のSXA24/SiCの制限特性である延性を損なうことになっ
てしまう。本発明において、アルミニウム中に含まれる
低溶解度の元素は不溶性の分散質及び可溶性だが未溶解
の成分の粒子の形成を制限もしくは避ける為に除去され
る。これらの要素が微量に残っていても靱性に悪影響を
与えることはないかも知れないが高純度の原料の方が不
溶性の金属間化合の粒子の量を最少とする上では望まし
いものである。本発明の複合材料の強度・剛性・延性及
び靱性とは、合金の含有量・不溶性の金属間化合の元素
の比率・テンパー・強化材の種類と量に左右される。望
ましい複合材料中においては合金中に存在する可溶性の
微量元素が約0.4%未満、望ましくは0.2%未満が良い。
又、不溶性の金属元素の比率は約0.2%未満が望まし
い。不溶性の金属元素の比率が増加するに従って、延性
及び靱性とは劣化する。
表1は本発明による複合材料の名称と組成とを示したも
のである。ここでは異なる2種のグループの複合材料に
ついて試験が行われた。第1のグループは約20容量%の
炭化ケイ素ホイスカーによって強化され、T6テンパーに
時効された合金を含むものである。これらの複合材料は
試験の為ロッド及びバーに成形された。又、これらの引
張り特性は最低1週間室温に放置されたあとで測定され
たものである。第2グループは約15容量%炭化ケイ素ホ
イスカーで強化されT3テンパーに時効された合金を含む
ものである。こちらは0.1インチ(0.25cm)厚のシート
素材に成形され、引張特性の測定は225゜F(107℃)の
温度下に10〜100時間放置されたあと行なわれた。尚、
どの例も望ましいセラミック強化材である炭化ケイ素ホ
イスカーによって強化し、試験を行ったものである。但
し、他のセラミック材の粒子・ホイスカー又はチョップ
トファイバーも合金マトリックスを強化する為に使用す
ることが可能である。又、マトリックス合金はタングス
テンのような金属によって強化することもできる。尚、
表1に記載した合金の他にCu/Mg率の高いもしくは低い
(又は、ケイ素、銀・亜鉛もしくはその他の可溶性金属
元素を加えた)マトリックス合金も本発明の用件にみあ
うものであり、以下で詳述するとおり従来の合金に比べ
これらもすぐれた特性を有するものと考えられる。
表1中、SXA220/20W A及び20W B複合材料の第1グループ
とする。これらはT−6テンパーに時効された試験用と
してロッド状及びバー状に成形されたものである。一
方、上記2つを除いた残りの複合材料を第2グループと
し、これらはT−3テンパーに時効され、0.1インチ
(0.25cm)厚のシート素材に成形されたものである。こ
のように、試料が何より豊富であることが本発明の応用
性の幅の広さを示している。
表1に示すように本発明のマトリックス合金は、主たる
合金添加物としては可溶量の銅及びマグネシウムとから
本質的に成って、ベースアロイを形成している。
SXA266から分かるとおり合金は、その他に、可溶性の合
金元素を含むこともできる。但し、これらの可溶性元素
はベースアロイに対する溶解度限を超えない量の範囲内
で含まれることとする。例えば、SXA266では0.27%のケ
イ素を含んでいる。本発明の合金は更に不溶性の金属元
素を少量含むことができる。例えばSXA221では0.08%の
ジルコニウムを含んでいる。なお不溶性金属元素の含有
量は、以下に説明されるように、約0.2%未満に抑えら
れることが望ましい。但し、不溶性金属元素の正確な量
は複合材料中の他の元素の含有量・テンパー・強化材・
希望の延性及び靱性等によって決定される。概して、不
溶性の金属間化合の元素の比率は延性・靱性が悪影響を
受けることなないよう、できるだけ小さいな比率に抑え
られるべきである。
第1図には合金複合材料ソルバスが示されている。SXA2
20マトリックス合金の複合材料の組成範囲は約932゜F
(500℃)で、恒温ソルバスによって拘束される単相領
域内に存在する。この溶解度限度をこえる複合材料はど
れも残存する可溶性の金属間化合の成分を形成してしま
い、これによって望ましい靱性・延性が損なわれること
となる。残存する金属間化合の成分の量がふえるにつれ
靱性の劣化度は進むものであり、又、強化要素の濃度が
約932゜F(500℃)で溶ける量以下となると強化も次第
に低下するものと考えられる。同じ溶体化処理及び析出
熱処理により、本発明のマトリックス合金は2124マトリ
ックスに匹敵する時効硬化を示し、しかも、靱性を低下
させる原因となる不溶性の金属間化合の粒子及び残存す
る可溶性の金属間化合粒子の含有量は大幅に少ないもの
となる。
第1図に示すとおりA点・B点はそれぞれSXA220A,SXA
220B合金を示す。第1図のC点は20用量%炭化ケイ素ホ
イスカーによって強化された従来の2124合金を示してい
る。又、第1図に示されている銅及びマグネシウム合金
元素の他に、従来の2124合金は約0.55%のマンガンと第
1図には示されていない他の金属元素(表3を参照のこ
と)を含むものであった。
強度を維持する為、本発明のマトリックス合金は可溶性
の銅とマグネシウムをそれぞれ約2.0〜4.5%、0.3〜1.8
%の範囲で含むことが望ましい。但し、両者とも高い方
の比率で含有されている場合には不溶性の金属がかなり
含まれることとなり延性が損なわれる;一方逆に低い方
の比率で含有されている場合には強度が減少する。表2
は、本発明によって作られた第2グループに属する複合
材料の極限引張強さ(Ftu)・引張降伏強さ(Fty)及び
破断までの伸び(e)とを示している。表2の複合材料
はT3E1テンパーに時効されたものであり、第7〜10図は
表2の複合材料の引張特性を示したグラフである。第5
図は20容量%炭化ケイ素ホイスカーで強化しT6状態に時
効させた従来の2124合金マトリックス(SXA24/20W−T
6)と、同様に強化・時効された本発明による合金(SXA
220/20W−T6)とのデータを示すものである。
表1・2からSXA214とSXA264の引張特性を比較すると、
マグネシウムを少量加えることにより合金元素として銅
のみを含むアルミニウムに比べ、強度が大幅に増加する
ことがわかる。又、SXA264・266・221の強度は、本発明
の教示と基本原則に従った合金複合材料がこれだけ多種
にわたるにもかかわらず、すべて本質的に同じであっ
た。
セラミック強化材の量は、強化材の種類、ホイスカー、
粒子又はチョップトファイバー、及びマトリックス合金
の強度に従って5〜40容量%の範囲で加えることができ
る。但し、10〜30容量%が望ましい。表1は15〜20容量
%の炭化ケイ素ホイスカー強化材を使用した場合の試料
を示している。合金マトリックスの強化には炭化ケイ素
ホイスカー(SiCw)もしくは炭化ケイ素粒子(SiCp)を
使用することが望ましい。但し窒化ケイ素・窒化チタン
・炭化チタン・窒化アルミ・アルミナ・炭化硼素・硼素
・酸化マグネシウム及び黒鉛などの他のセラミック材料
も粒子・ホイスカー・又はチョップトファイバーの形状
にて強化材として使用することができる。又、タングス
テンのような金属強化材も同様に使用することができ
る。
第2図にはSXA24/SiCと、本発明にもとづいて作られたS
XA220とのミクロ構造における差異が示されている。な
お第2(a)図では、矢印はSXA24/SiCの大きな成分の
粒子をあらわし、X線回折によりAl,SiC,大きな未溶解
のAl2Cu,及び不詳の回折ピークとが確認された。但
し、2124にみられる相から判断してこの不詳のピークは
Al20Mn3Cu2からのものと考えられる。尚、第2図(b)
に示すとおり同一の光学的金属組織検査及びX線回折に
よる検査のあとでは、これらの成分の粒子は本発明の複
合材料中に検出されなかった。
本発明のマトリックス合金の長所を示す為、本発明によ
り作られた或る複合材料(第1グループの複合材料)の
特性と、従来の複合材料の特性とを第5図に於いて比較
した。データがマトリックスの化学成分の影響のみを識
別したものとなるよう、強化材(20%SiCw)の種類と量
はつねに一律とした。又、成形加工のモードの違いによ
り生ずるポテンシャル差を排除する為、押出についても
同じパラメーターを採用し、複合材料は0.75インチ(1.
9cm)のロッドと0.25インチ(0.63cm)×1.5インチ(3.
8cm)のバーに成形した。第5図に示す複合材料の正確
な組成は表3に記載のとおりである。又、これらの引張
り特性は表4に示すとおりである。
典型的な引張試験データ(表4)によると本発明の複合
材料はSXA24/SiCと同程度の降伏強さ及び剛性とを達成
するが押出成形したロッドとバーの場合は、延性がそれ
ぞれ52%,75%高くなる。
本発明のマトリックス合金複合材料が破壊靱性に与える
影響についても第5図に示すとおりであるが、この第5
図ではSXA220/SiCとSXA24/SiCについて典型的な荷重対
荷重点オープニングカーブを比較している。SXA24/SiC
(第5(a)図)のカーブからは亀裂伝播は亀裂が発生
し始めたあとすぐに起こりこれによって靱性を正確に測
定することが不可能となることがわかる。しかしそれで
もこれは亀裂伝播エネルギーが亀裂の発生し始めるエネ
ルギーよりも小さいことを示している。
これとは対照的にSXA220/SiC(第5(b)図)のカーブ
からは短ロッドの破壊靱性を測定することができる。一
旦亀裂が生じ始めると亀裂を広げ靱性を測定する為の余
分なエネルギーが必要となる。
2124は通常の溶体化処理温度である920゜F(439℃)に
て溶解度限度を超える量の銅を含有することができる
為、最高の過飽和が可能となり最大限の強度を発揮する
こととなる。本発明の複合材料を920゜F(493℃)にま
で熱し、その後室温にまで急冷する(通常、水あるいは
水とグリコールの溶液中にて)ことにより、合金は自然
時効及び人工時効による一層の強化にさらされることと
なる。自然時効は室温にて自然に生じ、一方人工時効は
少々高い温度(通常400゜F(204℃)以下)にて行われ
る。本発明の合金の強度はこのようにして2124に匹敵す
るものとなる。
従来の複合材料であるSXA24/SiCの熱処理及び時効に関
する条件は本発明の複合材料の場合と同様とする。又、
各複合材料をT6状態とする為、それぞれの熱硬化処理法
及び析出硬化処理法を決定する。
溶体化処理はまず各複合材料を可溶相が固溶するに充分
な時間をかけて920゜F(493℃)〜932゜F(500℃)の温
度に加熱することから始まる。溶体化処理ののち本発明
の複合材料は室温の水にて急冷された。こののち、急冷
された複合材料は320゜F(160℃)に再び加熱され、10/
24時間均熱させて、同様の降伏強さを可能とする同様の
人工的に時効させたミクロ構造(強化析出物から成る)
を形成させる。
尚、表2及び第6図〜第10図に示すとおり本発明の第2
グループの複合材料についても同様の結果が得られた。
これらの材料は0.1インチ(0.25cm)厚のシート素材に
成形され自然時効によりT−3テンパーとした。表2に
示す引張特性は10〜100時間放置後に225゜F(107℃)の
温度下で測定した値である。これらの複合材料を従来の
SXA24複合材料から同様にして作った試料と比較した。
表2の引張特性は温度の関数として第7図〜第9図にも
図式にて示してある。又、温度の関数としてのヤング率
は第10図に示すとおりである。なお以上からここに示し
た複合材料についてはすべて降伏強さと引張強さとが約
500゜F(260℃)にて有効範囲となる傾向にあることが
判る。
本発明の複合材料はSXA24/SiCと同じ自然時効・人工時
効の特徴を示すことがそれぞれ第3・4図からわかる。
0.1%のジルコニウムを含み、15vol.%の炭化ケイ素ホ
イスカーによって強化された銅とマグネシウムとを主要
な合金元素として含むマトリックス合金から成るSXA221
/15Wとして知られる複合材料の時効と、同様に強化され
た従来の複合材料SXA24/15Wの時効とを比較した。示さ
れるように、2つの複合材料は同様に時効する。
時効は熱によって活性化されるプロセスである為、ある
物性上の変化に必要な時間(例えば硬化/時効曲線にお
ける最大値)は次のような指数関係をあらわす; log t=A/RT+B なお、ここでtは時間、Tは時効の絶対温度(ケルビ
ン)、Rはユニバーサルガス定数、Aは時効プロセスに
必要な活性化エネルギーの量をあらわすと仮定される定
数、及びBは定数である。SXA24/SiCとSXA221/SiCに関
する1000/T対logtのプロットにおける直線分勾配によっ
てあらわされるAの値が同じである為(第4図)、これ
によって人工時効されたミクロ構造が同じであることが
わかる。尚、合金中のCu/Mgの比率が同じであり(約2.
2:1)、析出に使われるCuとMgの量が溶体化処理温度に
よって決定されることから(第1図)、上述のミクロ構
造の類似性は予想されていたものである。Al−Cu−Mg合
金の時効による硬化特性に関する初期のころのミクロ構
造試験は、SXA220マトリックス(但しジルコニウムは含
まない)と類似の組成物を使って行われていた。尚、こ
れら合金と2124の自然時効及び人工時効に関する特徴は
一般に同様であると認められていた。
更に、2124にSiCを添加しても時効中に形成される相の
種類に変化は生じない。ミクロ構造試験によると2124及
びSXA24/SiCの自然及び人工時効のどちらにも同じタイ
プの強化相が存在することがわかる。
人工時効の前に複合材料を冷間加工し、急冷による応力
を緩和し成形箇所のひずみを取ることができる。この冷
間加工は通常延伸によって(但しこの方法に限るもので
はない)行われる。(溶体化処理温度から冷水急冷した
のち)約1.2%の延伸により約30ksi引張降伏強さが増し
(SiCの種類と量による)、延伸の量にほぼ比例する分
だけ延性が低下する。約0.06%までの伸びは延性にそれ
ほど影響を与えることなく、引張り降伏強さを10〜15ks
iまで増大する。よって、延性をそれほど損なうことな
く複合材料の引張降伏強さを改良することができる為、
溶体化処理後に冷間加工することは望ましいといえる。
又、最高の延性を示す(第6図)自然時効状態において
更に靱性が強化されることも期待される。どのような共
通強度においてもSXA22/SiCの延性は超時効させたテン
パーの場合より、充分に時効させていないテンパーの場
合の方が良好である。強度と延性(第6(b)図)の関
係は未強化のAl−Cu合金(第6(a)図)に関する強度
と破壊靱性との関係に類似している。
本発明の複合材料は未強化の2124と異なり自然時効のテ
ンパー状態でほぼその最大達成強度にあたる強度に達す
る。又、未強化の2124を人工時効する場合よりもSXA24/
SiCもしくはSXA220/SiCを人工時効することによる方が
比較的硬化度が小さくなる。第6図から推察されるとお
り人工時効により強度が増すことにともなって延性が低
下するという点を考察すると本発明では人工時効のテン
パーより自然時効のテンパーが望ましいことがわかる。
以上より強化アルミニウムマトリックスの靱性と延性
は、非常に少量の不溶性金属元素を含んだマトリックス
合金複合材料によって左右されるものであることが明ら
かである。本発明のマトリックス合金は不溶性の金属間
化合の成分と未溶解の可溶性の金属間化合の成分とを除
去することにより従来の複合材料の場合と同じ降伏強さ
と弾性率を保ちながら、しかもよりすぐれた靱性と延性
とを有する複合材料を提供するものである。
尚、特定の例により本発明の説明を行ったがこれらに限
られるものではなく、更に本発明は特許請求の範囲によ
ってのみ定義されるものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の2つの複合材料と従来の複合材料の特
徴とを比較したAl−Cu−Mgソルアヴァスダイアグラムで
ある。 第2(a)図及び(b)は本発明による複合材料と従来
の複合材料とを比較した光学的金属組織である。 第3図は本発明による複合材料と従来の複合材料との自
然時効の結果による硬度を比較したグラフである。 第4図は本発明による複合材料と従来の複合材料との人
工時効の結果による最高硬度に至るまでの時間を比較し
てあらわした図である。 第5(a)図は従来の複合材料の破壊靱性に関するデー
タを示す図である。 第5(b)図は本発明の複合材料の破壊靱性に関するデ
ータを示す図である。 第6(a)図は従来合金の破壊靱性に時効が与える影響
を示した図である。 第6(b)図は本発明の複合材料の延性に時効が与える
影響を示した図である。 第7図は本発明によるいくつかの複合材料に関する温度
の関数としての降伏強さを示したグラフである。 第8図は本発明によるいくつかの複合材料に関する温度
の関数としての破断までの伸びを示す図である。 第9図は本発明によるいくつかの複合材料に関する温度
の関数としての引張強さを示したグラフである。 第10図は本発明によるいくつかの複合材料に関する温度
の関数としてのヤング率を示したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ポール・ダブリュー・ニスカネン アメリカ合衆国デラウェア州19711,ニュ ーアーク,シルバーウッド・ブールヴァー ド 31 (56)参考文献 特開 昭62−199740(JP,A)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)2.0〜4.5重量%の銅と、 0.3〜1.8重量%のマグネシウムと、 合計で0.2重量%未満のクロム、鉄、マンガン及びジル
    コニウムの不溶性の元素と、 合計で0.4重量%未満のケイ素、銀又は亜鉛の可溶性の
    元素とを含み、 残部がアルミニウムからなるマトリックスと、 (b)前記マトリックスに対して5〜40容量%の、ホイ
    スカー、粒子又はチョップトファイバーの形態の強化材
    料とを、 含む強化複合材料。
  2. 【請求項2】前記強化材料が炭化ケイ素、窒化ケイ素、
    炭化チタン、窒化チタン、窒化アルミ、アルミナ、硼
    素、炭化硼素及び酸化マグネシウムからなる群から選択
    される請求項1記載の複合材料。
  3. 【請求項3】前記強化材料がホイスカー状の炭化ケイ素
    である請求項1記載の複合材料。
  4. 【請求項4】前記強化材料が粒子状の炭化ケイ素である
    請求項1記載の複合材料。
  5. 【請求項5】前記強化材料が黒鉛とタングステンとから
    なる群から選択されるものである請求項1記載の複合材
    料。
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