JP2686140B2 - 高温ボルト用合金およびその製造方法 - Google Patents

高温ボルト用合金およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は高温で利用されるボルト用の合金およびその
製造方法に関するものである。
〔従来の技術〕
高温で使用されるボルトには、クリープ強度の優れた
材料が要求される。600℃付近の高温で使用されるボル
ト用の素材としては、A286(JIS SUH660)の名で知られ
る合金や、特公平1−8697号記載の合金等が用いられて
いる。また特開平1−25919号には、リラクゼーション
特性(全歪一定の条件で負荷された部材の応力が時間の
経過と共に減少していく現象で、クリープに起因する現
象)を改善するために、棒または線材に固溶化熱処理を
行なった後、冷間加工を行なう方法が記載されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
近年、耐熱ボルトの性能およびコストに対する要求は
ますます厳しくなっており、安価で高性能の材料が求め
られている。性能を向上させるためには、例えば材料の
化学成分を換えることが考えられるが、この場合、通常
は合金元素量が多くなり、価格あるいは製造性の面で好
ましくない。
このような背景から、従来高温ボルト用合金として用
いられている。A286合金や前述の特開平1−25919号に
記載の合金と同等の性質を有し、さらに省資源型の合金
に対する要求がますます高まってきた。前述の特公平1
−8697号は省資源型の合金でありながら、従来合金のA2
86に比較して性質は同等であるが、製造性、特に棒また
は線材の加工に必要な潤滑皮膜の密着性が不十分である
ということが判明してきた。
本発明の目的は、A286より合金添加量を少なくした省
資源型の合金をベースとして、製造性を改善するととも
に、その組織を最適化することによりクリープ強度の優
れた合金、およびそのための製造方法を提供することで
ある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、重量%にてC 0.1%以下、Si 0.5%以
下、Mn 2.0%以下、Ni 17.0〜20.0%、Cr 13.0〜15.0
%、Al 0.20〜0.40%、Ti 2.00〜3.00%、Mo 1.00%以
下、およびB 0.02%以下、Zr 0.20%以下の1種また
は2種を含有し、残部Feおよび不純物からなり、結晶粒
度がASTM No.で3〜6、かつ再結晶温度以下の温度で加
工率にして6〜18%に相当する加工歪が残存することを
特徴とする高温ボルト用合金である。また、本合金にNb
1.00%以下を含有することができる。さらに本発明
は、上記合金の製造方法として、上記組成の合金の棒ま
たは線材に、1020〜1070℃の固溶化熱処理を行なった
後、再結晶温度以下の温度で6〜18%の加工を行なうこ
とを特徴とする高温ボルト用合金の製造方法である。
本発明の重要な点は、固溶化熱処理と冷間加工を最適
の条件で組み合わせることにより、結晶粒度と残存加工
歪量を最適とし、それによって優れたクリープ強度を得
ることである。
〔作用〕
以下に本発明合金の成分限定理由について述べる。
CはTiと結びついてTiCを生成し、オーステナイト結
晶粒の粗大化を防ぐので若干量は必要であるが、0.1%
を越えるCはTiCの過度の生成により合金の析出強化能
を低下させるので、Cは0.1%以下とする。
Siは脱酸剤として0.5%以下まで合金中に含まれるこ
とが許容されるが、0.5%より多いSiは有害な金属間化
合物をつくりやすいので0.5%以下とする。
Mnは脱酸剤として2.0%まで合金中に含まれることが
許容されるが、2.0%より多いMnはオーステナイト組織
を不安定にするので2.0%以下に限定する。
Niは合金の母相を安定なオーステナイト組織にするた
めに不可欠の元素であり、また、Al、Tiと結びつくこと
によりNi3(Al、Ti)で表わされる通常γ′と呼ばれる金属
間化合物を生成し合金の析出強度に寄与する重要な元素
である。しかし、Niは17%未満ではオーステナイト組織
を不安定にするので好ましくないが、オーステナイト組
織を安定にしまた所要の強度を得るためには20%以下で
十分である。20%を越えるNiは本発明の目的である合金
量の低減という観点から好ましくない。それゆえ、Niは
17.0%〜20.0%に限定する。
Crは本発明合金においては耐食耐酸化性を付与すると
同時にオーステナイト組織を安定化させるために不可欠
の元素であり、最低13.0%を必要とするが、15.0%を越
えるCrは逆にオーステナイト組織を不安定にするので1
3.0〜15.0%に限定する。
Alは本発明合金においてはγ′相を安定化させる作用
があり、最低0.20%必要であるが、0.40%を越えるとオ
ーステナイト組織が不安定になるので0.20〜0.40%に限
定する。
Tiは本発明合金においてはγ′相を形成し、合金を析
出強化させるための基本元素であり、最低2.00%は必要
であるが、3.00%を越えるTiはオーステナイト組織を不
安定化させるので2.00〜3.00%に限定する。
Moは、本合金を高温ボルト用素材として製造する場合
に必要とされる元素である。すなわちボルトを成形する
場合は、素材に潤滑皮膜を施す必要があるが、これは通
常、素材の加工プロセス中に、蓚酸を主体とする皮膜を
密着させることにより行なわれる。Moはこの皮膜の密着
性を大きく改善する効果がある。しかしながら、1.00%
を越えるとオーステナイト組織を不安定にするので1.00
%以下に限定する。
BおよびZrは粒界を強化し、合金の高温における延性
を高める作用があるので若干量は必要であるが、過度に
多量に添加すると低融点の共晶を生成し熱間加工性を劣
化させるので、それぞれ0.02%以下および0.20%以下に
限定する。
Nbはγ′相中に固溶してγ′相を固溶強化する作用を
持つ。しかしながら、1.00%を越えるNbは、δ相(Ni3N
bよりなる相で合金の強化には寄与しない)を形成する
ので、1.00%以下に限定する。
次に本発明の重要な要件である、結晶粒度と残存加工
歪量について述べる。
クリープ強度に対する結晶粒度の効果については、一
般にクリープ試験温度が低い場合は結晶粒度No.が大き
い(より細粒である)方がクリープ強度が高く、クリー
プ試験温度が高い場合は、その逆であることが知られて
いる。しかし、本発明が対象とする600℃付近の温度は
上記傾向が逆転する付近の温度と思われるため、結晶粒
度はクリープ強度にあまり影響しないと考えられてい
た。事実、本発明者が固溶化処理後に冷間加工を行なっ
ていない試料について、結晶粒度の効果を調べたとこ
ろ、結晶粒度はクリープ強度にはほとんど影響しないと
いう結果が得られた。
ところが本発明者は、残存加工歪量の効果について、
系統的な検討を行ない、固溶化熱処理後に6〜18%の冷
間加工を施すことにより、リラクゼーション特性(すな
わちクリープ強度)が増加することを明らかにした(特
開平1−25919号に記載の通りである)。
次に本発明者は、適正な冷間加工を受けた試料につい
て結晶粒度の効果を調べたところ、予想以上に大きな影
響があり、結晶粒度と残存加工歪量の組み合わせを最適
化することにより、より優れたクリープ強度が得られる
ことがわかった。
すなわち、固溶化処理後に冷間加工を受けた試料のク
リープ強度は、結晶粒度Noが小さく(粗粒に)なるほど
増加するので、クリープ強度増加のためには、結晶粒度
はASTM Noにて6以下(粗粒側)にすることが必要であ
る。しかし、3未満(粗粒側)になると引張強度が低下
し、かつボルトの成形性が悪くなる。したがって、結晶
粒度はASTM Noで3〜6に限定する。
残存加工歪量は、特開平1−25919号に記載のように
再結晶温度以下の温度で加工量にして6%未満の場合お
よび18%を越える場合ともにクリープ強度が低下する。
この理由は、6%以上の歪を付与することにより、オー
ステナイトマトリックスが強化されるとともに、時効処
理あるいはクリープ試験中にγ′などの析出強化相の析
出が促進されるが、歪量が18%を越えて過度に多くなる
と、時効処理あるいはクリープ試験中にオーステナイト
マトリックスの回復および析出強化相の粗大化が進むこ
とによる。
本合金の製造方法は、結晶粒度をASTM Noで3〜6に
するために、固溶化熱処理を1020〜1070℃の範囲で行な
い、次に適正な加工歪を残存させるために再結晶温度以
下の温度で6〜18%の加工を行なうことよりなる。
〔実施例〕
第1表に示す組成の合金について、真空中でインゴッ
トを溶製後、熱間圧延および冷間引抜により直径7〜8m
mの線材を作製した。これを、第2表に示す温度で1時
間保持後水冷の固溶化熱処理を行なった後、同じく第2
表に示す引抜率で冷間引抜を行ない、その後700〜720℃
で4時間保持後空冷の時効処理を行なって試料を作製し
た。
クリープ試験は温度600℃、応力70kgf/mm2および温度
600℃、応力60kgf/mm2の2条件で行ない、100h(時間)
後のクリープ歪および、クリープ変形が速い場合には1
%クリープ歪(応力70kgf/mm2の場合)または0.2%クリ
ープ歪(応力60kgf/mm2の場合)に達するまでの時間を
測定した。第2表にその結果を示す。
本発明を適用した場合は、試料A、B共優れたクリー
プ強度を示す。一方、比較例に示すように試料Aで固溶
化処理温度が1000℃以下の場合は、冷間加工率が12%で
あってもクリープ強度は低い。また、試料Bで固溶化処
理温度が1000℃と低く、結晶粒度が9.0の場合は、冷間
加工率が8%であってもクリープ強度は低く、また固溶
化処理温度が1040℃で結晶粒度が4.0の場合でも冷間加
工率が4%の場合はクリープ強度が低い。
したがって、結晶粒度と残存歪量、すなわち固溶化処
理温度と再結晶温度以下での加工量を適切にすることに
より、クリープ強度が増大することがわかる。
〔発明の効果〕
本発明によれば、耐熱ボルト用合金のクリープ強度を
大幅に改善することが可能であり、高温で用いられるボ
ルトの性能向上に大きく寄与するものである。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%にてC 0.1%以下、Si 0.5%以
    下、Mn 2.0%以下、Ni 17.0〜20.0%、Cr 13.0〜15.0
    %、Al 0.20〜0.40%、Ti 2.00〜3.00%、Mo 1.00%
    以下、およびB 0.02%以下、Zr 0.20%以下の1種ま
    たは2種を含有し、残部Feおよび不純物からなり、結晶
    粒度がASTM No.で3〜6、かつ再結晶温度以下の温度で
    加工率にして6〜18%に相当する加工歪が残存すること
    を特徴とする高温ボルト用合金。
  2. 【請求項2】重量%にてC 0.1%以下、Si 0.5%以
    下、Mn 2.0%以下、Ni 17.0〜20.0%、Cr 13.0〜15.0
    %、Al 0.20〜0.40%、Ti 2.00〜3.00%、Mo 1.00%以
    下、Nb 1.00%以下、およびB 0.02%以下、Zr 0.20%
    以下の1種または2種を含有し、残部Feおよび不純物か
    らなり、結晶粒度がASTM No.で3〜6、かつ再結晶温度
    以下の温度で加工率にして6〜18%に相当する加工歪が
    残存することを特徴とする高温ボルト用合金。
  3. 【請求項3】重量%にてC 0.1%以下、Si 0.5%以
    下、Mn 2.0%以下、Ni 17.0〜20.0%、Cr 13.0〜15.0
    %、Al 0.20〜0.40%、Ti 2.00〜3.00%、Mo 1.00%以
    下、およびB 0.02%以下、Zr 0.20%以下の1種また
    は2種を含有し、残部Feおよび不純物からなる合金の棒
    または線材に、1020〜1070℃の固溶化熱処理を行なった
    後、再結晶温度以下の温度で6〜18%の加工を行なうこ
    とを特徴とする高温ボルト用合金の製造方法。
  4. 【請求項4】重量%にてC 0.1%以下、Si 0.5%以
    下、Mn 2.0%以下、Ni 17.0〜20.0%、Cr 13.0〜15.0
    %、Al 0.20〜0.40%、Ti 2.00〜3.00%、Mo 1.00%以
    下、Nb 1.00%以下、およびB 0.02%以下、Zr 0.20%
    以下の1種または2種を含有し、残部Feおよび不純物か
    らなる合金の棒または線材に、1020〜1070℃の固溶化熱
    処理を行なった後、再結晶温度以下の温度で6〜18%の
    加工を行なうことを特徴とする高温ボルト用合金の製造
    方法。
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CN105132825A (zh) * 2015-09-18 2015-12-09 钢铁研究总院 一种耐热紧固件用钢
CN111607749B (zh) * 2020-06-17 2021-06-04 大连理工大学 一种立方形态b2纳米粒子共格析出的高温700℃用铁基超合金

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