JP6745050B2 - Ni基合金およびそれを用いた耐熱板材 - Google Patents
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Description
従来より、自動車エンジンのシリンダーヘッド用の金属ガスケットにはSUS301系のオーステナイト系ステンレス鋼が多く用いられる。しかし、エンジンの高性能化に伴い、さらに強度、高温強度、耐酸化性などを改良した、Nを多く含む金属ガスケット用オーステナイト系ステンレス鋼が開発されている(特許文献1)。また、冷間圧延、析出硬化の組み合わせによって強化されたFe−Ni−Cr合金からなるメタルガスケット及びその製造方法が開示されている(特許文献2)。
そこで、718合金よりも高温強度が高く、かつWaspaloy合金より熱間加工性を改善した析出強化型Ni基超耐熱合金について鋭意検討を行った。その結果、Waspaloy合金のような高温強度の高い析出強化型Ni基合金において、熱間加工性を改善するには、析出強化相であるγ’相の固溶温度を下げる成分最適化を行うことが有効であり、また、高い高温強度を得るためには、γ’相の量を増加させる成分最適化が有効であることを知見し、良好な熱間加工性と高い高温強度を両立できる合金成分を見出した。
また、γ’相の固溶温度を下げると同時に析出量を増やすには、Ti、Nbを添加せずNiとAlのみからなるγ’相を生成させるのがよいことが知られている。しかし、Ti、Nbを全く添加しないとMC型炭化物を生成しないため、M6C型炭化物が生成しやすくなり、偏析が起こりやすくなることから、偏析を抑制するためにTiの少量添加が有効であることを見出した。これらの新規知見により、熱間加工及び冷間加工により容易に製造が可能で、高温強度の優れたNi基合金に最適な成分バランスを見出し、本発明に至った。
G=7+0.11Cr+8.23Al+4.66Ti−0.13(Ni+Co)…(1)
更に本発明は、γ’相の固溶温度が900〜1000℃であることが好ましい。
また、本発明は、Ni基合金からなる耐熱板材である。
<C:0.002〜0.10%>
Cは、TiとMC型炭化物を形成し、結晶粒を微細化することで常温及び高温での強度と延性をバランスよく向上させるだけでなく、Sと化合物を形成し、粒界強度を高める効果を有するため、少量添加する必要がある。しかし、0.002%より少ないと生成されるMC型炭化物の量は少なくなり、十分な効果が得られず、一方、0.10%を超えると粗大なMC型炭化物を生じて延性を低下させたり、使用中の時効硬化に必要なTi量を減少させることから、Cは0.002〜0.10%とした。好ましくはCの下限は0.005%、上限は0.05%がよい。また、上記のC添加による効果を確実に得るには、Cの下限を0.01%、Cの上限を0.04%とすると良い。
Si及びMnは、脱酸元素として添加されるが、過度の添加は高温強度を低下させるおそれがあることから、Siは1.0%未満、Mnは1.0%以下に制限する。より好ましくは、Siは0.5%以下、Mnは0.5%以下がよい。
<P:0.04%以下(0%を含む)、S:0.01%以下(0%を含む)>
P及びSは不純物元素であり少ない方が好ましく、それぞれ0%であってもよい。P及びSは積極的に添加はしないが、原料等から混入する場合がある。混入した場合、Pは0.04%以下、Sは0.01%以下であれば、本発明のNi基合金および耐熱板材の特性に有害な影響を与えないことから、PとSは、Pが0.04%以下、Sが0.01%以下とした。なお、Pは好ましくは0.03%以下、さらに好ましくは0.01%以下がよい。また、Sは好ましくは0.007%以下、さらに好ましくは0.005%以下がよい。
Crは、Ni基合金の耐酸化性を維持するのに必要な元素である。Crが15.0%より少ないとNi基合金に必要な耐酸化性が得られない。一方、25.0%を超えると基地のオーステナイト相が不安定となり、長時間使用中にσ(シグマ)相などの有害脆化相を生成してNi基合金の強度や延性を低下させる。このことから、Crは15.0〜25.0%とした。好ましくはCrの下限は16.0%が良く、好ましくはCrの上限は23.0%が良い。
<Co:0.1〜18.0%>
Coは、オーステナイト相に固溶して、固溶強化により強度を高めるだけでなく、Mo、Al及びTi等を多く固溶させ、間接的に固溶強化及び時効硬化を促進させて強度を向上させるのに有効な元素である。Coは0.1%より少ないと効果が不十分となりやすく、一方18.0%を超えると加工硬化が大きくなり冷間成形性が低下しやくなるだけでなく、高温での使用中に脆化相が生成しやすくなるため、Coは0.1〜18.0%とした。好ましくは4.0%以上であり、好ましくは17.0%以下、更に好ましくは15.0%未満であり、より好ましくは14.0%以下である。
<Mo:2.0%以上4.0%未満>
Moは、オーステナイト相に固溶することで固溶強化により常温及び高温強度を高めるのに有効な元素である。高温での使用中に、転位との相互作用によって高温での変形を抑制する作用をもたらすため、必要かつ重要な元素である。Moは2.0%より少ないと高温強度向上効果が少なく、一方、4.0%以上になるとM6C型炭化物やLaves相等の脆化相が生成するおそれがあることから、Moは、2.0%以上4.0%未満とした。Moの好ましい下限は、3.0%である。
Alは、Tiと共に時効処理中または使用中に時効析出する金属間化合物であるγ’相の構成元素の一つであり、使用中の高温強度を高めるのに必要な元素である。本発明においては、Ti量を低く抑えることで、γ’相中のTi量を低くし、γ’相の主要構成元素をNiとAlとし、かつAl量を高くすることによって、時効析出するγ’量を増加させて使用温度域での析出強化作用を大きくして強度を高めている。また、γ’相の主要構成元素をNiとAlにすることで、γ’相の固溶温度を低下させて、熱間鍛造温度域での強度を低下させることで熱間加工性を改善している。Alは、3.0%より少ないと使用温度域での十分な強度が得られず、一方、5.0%を超えて添加するとγ’の固溶温度が高くなり、熱間加工性が低下することから、Alは3.0%〜5.0%とした。好ましいAlの下限は3.5%である。
<Ti:0.01%以上0.5%未満>
Tiは、Alと共に時効処理中または使用中に時効析出する金属間化合物であるγ’相の構成元素の一つであり、使用中の高温強度を高めるのに有効な元素である。しかし、一方で、γ’相中のTi量が多くなると、γ’相の固溶温度が高くなり、熱間加工温度域でもγ’相が固溶しなくなり、熱間加工性が大きく低下するので、熱間加工性を重視する場合にはTi量は低めに抑えて、少量添加に留めることが有効である。また、TiはCとともにMC型炭化物を形成し、オーステナイト結晶粒の成長を抑制して、適正な結晶粒径を維持するのに有効である。また、Tiを含むMC型炭化物は、Sを固溶するため、オーステナイト粒界に偏析しやすいSを有効にトラップして清浄度を向上させて高温強度を高めるのに有効である。Tiは、0.01%より少ないと十分な効果が得られず、一方0.5%以上になるとγ’相の固溶温度が高すぎて熱間加工性が低下することから、Tiは0.01%以上0.5%未満とした。好ましいTiの下限は0.05%、好ましいTiの上限は0.3%である。
Zrは、結晶粒界強化のために添加する必要がある。Zrは基地を構成する原子であるNiより原子の大きさが著しく小さいため、結晶粒界に偏析し高温での粒界すべりを抑制する効果がある。特に切り欠きラプチャー感受性を大幅に緩和させる効果を有する。そのため、クリープ破断強度やクリープ破断延性が向上する効果が得られるが、過度に添加すると耐酸化性が劣化し、一方、0.01%より少ないと粒界への偏析量が少ないため、十分な効果が得られないことから、Zrは、0.01〜0.1%とした。好ましい下限は、0.02%、好ましい上限は、0.08%である。
<B:0.001〜0.015%>
Bは、少量添加すると粒界強化作用により高温での強度と延性を高めるのに有効な元素である。しかし、0.001%より少ないと粒界への偏析量が少ないため効果が十分でなく、一方、0.015%を超えると加熱時の初期溶融温度が低下して熱間加工性が低下することから、Bは0.001〜0.015%とした。好ましい下限は0.002%、好ましい上限は0.010%である。
<Fe:3.0%以下>
Feは、合金の熱間加工性、冷間加工性を改善する効果がある。しかし、Feが3.0%を超えると、高温強度が低下したり、耐酸化性が劣化したりすることから、3.0%以下に限定する。好ましくは2.0%以下である。Feの効果を確実に得るためにはFeの下限を0.3%とすることが好ましい。
Mgは、脱酸剤として酸素を低減する作用を有するだけでなく、粒界偏析したSと結合してSを固定して、熱間加工性を改善するために添加する。Mgは0.0005%より少ないとSを固定する効果が十分でなく、一方0.01%を超えると酸化物や硫化物が多くなり、清浄度を低下させたり、低融点のNiとの化合物が多くなり、熱間加工性を低下させることから、Mgは0.0005〜0.01%に限定する。好ましいMgの下限は0.001%であり、好ましいMgの上限は0.007%である。更に好ましいMgの上限は0.005%である。なお、Mgの一部または全てをCaに置換してもよく、その場合は(Mg+0.6×Ca)をMg単独の範囲に限定すればよい。
<S/Mg:1.0以下>
Mgの添加の目的は、粒界偏析するSの固定により熱間加工性を向上させることであるため、S量に応じて添加量が規定される。Sの熱間加工性に対する有害作用を抑制するためには、S/Mgの値を1.0以下に限定することが有効である。Mgの一部または全てをCaに置換した場合は、S/(Mg+0.6×Ca)を1.0以下に限定するのが好ましい。S/MgとS/(Mg+0.6×Ca)の関係については0.5以下が好ましい。
O及びNは、Al、Ti、Zr、B、Mg等と結合して酸化物系、窒化物系の介在物を形成して清浄度を低下させ、熱間加工性、冷間加工性を低下させるだけでなく、γ’相を形成するAl、Ti量を低減して使用中の析出強化による強度上昇を阻害するおそれがあることから、できるだけ低く抑えることが好ましく、0%であってもよい。好ましくは、Nを0.01%以下、Oを0.005%以下とすることがよく、更に好ましくは、Oを0.004%以下、Nを0.005%以下とすることがよい。
<残部Ni及び不可避不純物>
残部のNiはオーステナイト生成元素である。オーステナイト相は原子が稠密に充填されているため、高温でも原子の拡散が遅くフェライト相と比較して高温強度が高い。また、オーステナイト基地は合金元素の固溶限が大きく、析出強化の要であるγ’相の析出や、固溶強化によるオーステナイト基地自身の強化に有利である。Niは析出強化相であるγ’相の主要構成元素でもあり、必須の元素である。オーステナイト基地を構成する最も有効な元素はNiであるため、本発明では残部をNiとする。勿論、不可避的に含有する不純物は含まれる。
なお、残部には、不可避的不純物の他、以下に示す元素は以下に示す範囲であれば、実質的な影響は少ないため、以下の範囲で許容することができる。
W≦0.2%、Nb、Ta、REMの合計≦0.1%
また、Ag、Sn、Pb、As、Biもオーステナイト粒界に偏析して高温強度の低下を招く不純物元素であり、Ag、Sn、Pb、As、Biは合計で0.01%以下に制限することが好ましい。
高い高温強度を得るために必要なのは、時効析出する強化相であるγ’相であり、γ’相量が多いほど、高温強度が高くなる一方で、過度にγ’相を多くすると、γ’相の固溶温度が上昇して熱間加工温度での強度も高めてしまい、熱間加工性が低下する。このため、使用温度域での高い高温強度と熱間加工温度域での良好な熱間加工性を両立させるためには、特定の合金元素量を最適なバランスに調整する必要がある。本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の合金元素として、Cr、Al、Ti、Ni、Coを選び、その関係式である式(1)を導き、γ’量に関係した式(1)の値であるG値の最適な範囲を決定した。
G=7+0.11Cr+8.23Al+4.66Ti−0.13(Ni+Co)…(1)
ここで各元素記号は、その元素の質量%の値を表す。G値が30より小さいと、十分な高温強度が得られず、一方、45より大きいと良好な熱間加工性が得られないことから、G値は30〜45とした。
γ’相の固溶温度は、熱間加工性に大きく影響する。γ’相の固溶温度が低いほど、熱間加工性を阻害するγ’相が存在しない熱間加工温度域を低温まで拡張できるので、熱間加工しやすくなる。γ’相の固溶温度が1000℃を超えると、熱間加工できる温度域が狭くなり、熱間加工の工数が増加し生産性が悪くなったり、熱間加工時に割れが発生して所定形状に加工ができなかったりする一方、900℃より低くなると、使用温度域でのγ’相量が減少して耐熱温度が低下してしまうため、γ’相の固溶温度は900〜1000℃とする。好ましいγ’相の固溶温度の下限は920℃、好ましいγ’相の固溶温度の上限は980℃である。
耐熱板材の厚さは、一般的には1mm以下の場合が多いが、これに限定するものではない。また、耐熱板材や線材は、固溶化処理状態または固溶化処理後に時効処理を施して部品として使用される場合が多いが、精度の高い形状に成形する必要のある部品や、初期の硬さ、引張強度が必要な部品では、固溶化処理後に軽度の冷間加工を行った後、またはさらに時効処理を施して使用される場合もあり、必要とされる特性を大きく低下させない範囲で熱処理、冷間加工の条件を適宜選定することは許容される。
真空誘導溶解により10kgのインゴットを作製した。表1及び表2に作製した本発明で規定する組成の範囲内にある合金No.1〜5及び比較合金No.21〜22の化学成分を示す。なお、溶解方法については、一般的な超耐熱合金の溶解法を適用することができ、例えば、真空誘導溶解のみ、真空誘導溶解後、真空アーク再溶解を行う2重溶解、真空誘導溶解後、エレクトロスラグ再溶解を行う2重溶解、真空誘導溶解後、エレクトロスラグ再溶解と真空アーク再溶解を行う3重溶解、などが挙げられ、溶解方法はこれらに限定するものではない。表1及び表2に示すインゴットを1180℃で20時間の均質化処理の後、熱間鍛造(熱間塑性加工)を行い、断面が20mm×45mmの棒材に仕上げた。本発明で規定する組成の範囲内の合金は、熱間鍛造時に割れの発生は見られず、熱間加工性は良好であった。一方、比較合金No.21は、角部に割れの発生が見られた。また、棒材より平行部直径8mm、平行部長さ24mmの丸棒引張試験片を採取し、種々の高温で歪速度10/秒で引張試験を行い、破断絞りが60%以上となる温度範囲を測定し、熱間加工性を評価した。
厚さ0.2mmの本発明合金及び比較合金の板材に対して、1040℃で5分保持後に急冷する固溶化処理を行った。比較合金No.21の板材については、1080で5分保持後に急冷する固溶化処理を行った。また、本発明合金及び比較合金No.21の板材については、固溶化処理の後、840℃で4時間の短時間時効処理(時効処理A)及び760℃で4時間の短時間時効処理(時効処理B)を行い、空冷した。一方、比較合金No.22の板材については、980で1時間保持の固溶化処理を行い、急冷した。
固溶化処理の後、720℃で8時間保持後、620℃まで2時間かけて冷却し、そのまま620℃で8時間保持後、空冷する長時間の時効処理(時効処理C)を行った。固溶化処理材及び時効処理材について、ビッカース硬さ測定、熱へたり試験を行った。
熱へたり試験は,幅10mm×長さ100mmの板状試験片の長さ方向の中央部を80mm長さに対して5mmだけたわませた状態で700℃及び800℃で4時間加熱し,冷却後のたわみ変形量を測定し、加熱前後のたわみ量の差から熱へたり量を計算し、その大小で耐熱へたり性を評価した。
本発明合金の固溶化処理後の硬さはビッカース硬さで約300HVであり、時効処理によりやや硬さが上昇するが、ビッカース硬さで約310〜340HV程度である。固溶化処理後の硬さは、冷間圧延等の冷間塑性加工を行うことができる低い硬さである。一方、比較合金No.21は固溶化処理後の硬さはビッカース硬さで約300HVであるが、時効処理によって硬化し、約350〜360HVとなる。また、比較合金No.22は固溶化処理後の硬さはビッカース硬さで約270HVと低いが、時効処理によって大幅に硬化し、約500HV弱の硬さとなる。本発明合金の室温での硬さは、比較合金よりやや低い値となっている。
図2及び図3に示すように、本発明合金No.1〜5は、比較合金No.21に比べて、固溶化処理後及び時効処理後のいずれにおいても熱へたり量が同等であり、耐熱へたり性が良好である。しかし、比較合金No.21は、表3に示したように、熱間加工性が本発明合金より悪く、比較的薄い板状の部品に適用する場合には、製造性に課題が残る。また、比較合金No.22は固溶化処理後及び時効処理後のいずれにおいても熱へたり量が大きく、耐熱へたり性が本発明合金より大幅に悪いことがわかる。このように、本発明合金は、良好な製造性、良好な耐熱へたり性を兼ね備えていることがわかる。
固溶化処理材及び時効処理材について、前述と同じく700℃及び800℃で4時間加熱する方法で熱へたり試験を行った。図4及び図5に固溶化処理後及び時効処理後の熱へたり量を示す。
図4及び図5中の「固溶化処理後」の熱へたり量の結果は、左から順にNo.1〜5、No.22の順に示してある。「時効処理A」と「時効処理B」の熱へたり量の結果は、左から順にNo.1〜5の順に示してある。「時効処理C」の熱へたり量はNo.22である。図4及び図5に示すように、本発明合金No.1〜5は、比較合金No.22に比べて、固溶化処理後及び時効処理後のいずれにおいても熱へたり量が大幅に小さい結果であり、これは図2及び3に示す結果と同様である。しかし、図4に示すように、700℃での熱へたり試験において、高温での固溶化処理を行った方が、1040℃で固溶化処理した場合に比べて、時効処理Bにおいて熱へたり量が小さくなり、さらに耐熱へたり性が向上している。また、図5に示すように、800℃での熱へたり試験において、高温での固溶化処理を行った方が、1040℃で固溶化処理した場合に比べて、「固溶化処理後」、「時効処理A」、「時効処理B」にいずれの熱処理においても熱へたり量は多く低下しており、さらに耐熱へたり性が向上している。これは、高温で固溶化処理を行うことによって、析出強化に寄与する合金元素の固溶が進み、熱へたり試験中に時効硬化が進むこと、及び母相であるオーステナイト結晶粒が粗大化することで、クリープ変形が抑制されることによると考えられる。
以上の結果から、本発明のNi基合金は、例えば、金属ガスケット、高温用ばね用に好適な特性を有している。
真空誘導溶解により10kgのインゴットを作製した。表4及び表5に作製した本発明で規定する組成の範囲内にある合金No.6及び比較合金No.23の化学成分を示す。なお、溶解方法については、一般的な超耐熱合金の溶解法を適用することができ、例えば、真空誘導溶解のみ、真空誘導溶解後、真空アーク再溶解を行う2重溶解、真空誘導溶解後、エレクトロスラグ再溶解を行う2重溶解、真空誘導溶解後、エレクトロスラグ再溶解と真空アーク再溶解を行う3重溶解、などが挙げられ、溶解方法はこれらに限定するものではない。表3及び表4に示すインゴットを1180℃で20時間の均質化処理の後、熱間鍛造(熱間塑性加工)を行い、断面が20mm×45mmの棒材に仕上げた。
また、表7より、816℃、276MPaの条件下でのクリープ破断時間は、本発明合金No.6は、30h以上を示し、比較合金No.23に比べても長い時間を示しており、、比較合金No.23に対応する航空機材料の規格AMS5707Mのクリープ破断時間23h以上を十分満足している。また、表8より、本発明合金No.6は、比較合金No.23に比べて、大気中800℃及び954℃で100時間保持後の酸化増量が大幅に小さく、非常に良好な耐酸化性を有している。このように、本発明合金は、鍛造材においても、良好な室温、高温での引張特性、高温でのクリープ強度、高温での耐酸化性を兼ね備えていることがわかる。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.002〜0.10%、Si:1.0%未満、Mn:1.0%以下、P:0.04%以下(0%を含む)、S:0.01%以下(0%を含む)、Cr:15.0〜25.0%、Co:0.1〜18.0%、Mo:2.0%以上4.0%未満、Al:3.0〜5.0%、Ti:0.01%以上0.5%未満、Zr:0.01〜0.1%、B:0.001〜0.015%、Fe:3.0%以下、MgまたはMg+0.6×Ca:0.0005〜0.01%、N:0.01%以下(0%を含む)、O:0.005%以下(0%を含む)、残部Ni及び不可避的不純物からなり、S/MgまたはS/(Mg+0.6×Ca):1.0以下、下記の式(1)で表されるG値が30〜45であることを特徴とするNi基合金。
G=7+0.11Cr+8.23Al+4.66Ti−0.13(Ni+Co)…(1) - 前記Ni基合金が、質量%で、C:0.005〜0.05%、Si:0.5%以下、Mn:0.5%以下、P:0.03%以下(0%を含む)、S:0.007%以下(0%を含む)、Cr:16.0〜23.0%、Co:4.0%以上15.0%未満、Mo:3.0%以上4.0%未満、Al:3.0〜5.0%、Ti:0.05%〜0.3%、Zr:0.02〜0.08%、B:0.002〜0.010%、Fe:3.0%以下、MgまたはMg+0.6×Ca:0.0005〜0.01%、N:0.01%以下(0%を含む)、O:0.005%以下(0%を含む)、残部Ni及び不可避的不純物からなり、S/MgまたはS/(Mg+0.6×Ca):1.0以下である請求項1に記載のNi基合金。
- γ’相の固溶温度が900〜1000℃である請求項1または2に記載のNi基合金。
- 請求項1乃至3の何れかに記載のNi基合金からなる耐熱板材。
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