JP6960083B2 - 耐熱板材 - Google Patents

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Description

本発明は、部品形状への冷間成形性が良好で、高温で使用したときに高い高温強度をもたらす耐熱板材に関するものである。
自動車エンジン等の内燃機関においては、近年、自動車の燃費向上、排ガス規制強化などにより、エンジンの燃焼温度が高温化する傾向にある。また、高温の排ガスを利用するターボチャージャーやEGRを装着するエンジンも増加している。自動車エンジンの燃焼温度の高温化により、エンジン部材の耐熱性の向上が要求されており、排気エンジンバルブ、点火プラグ、ターボチャージャー用ホイールなどに使用される金属材料として、より高温強度や耐酸化性の高い耐熱材料の適用が進んでいる。ターボチャージャー、EGR等を含むエンジンの接合部分に使用される排気系の金属ガスケット、ボルト、金属ばね等も例外ではなく、高い高温強度が要求されている。例えば、約593℃を超える運転温度で使用される耐熱メタルガスケット用途へ適用可能な冷間圧延、析出硬化の組み合わせによって強化されたFe−Ni−Cr合金からなるメタルガスケットおよびその製造方法が開示されている(特許文献1)。
特開2011−80598号公報
特許文献1に示されるFe−Ni−Cr合金からなるメタルガスケットについては、種々の合金および製造方法が開示されている。析出硬化可能なFe−Ni−Cr合金については、使用前に析出硬化処理を行うことによって金属ガスケットの硬さを高めている。つまり、高温での使用に耐える十分な強度を付与するため、使用前に析出硬化熱処理を行うことが推奨されている。しかし、Al、Ti、Nb等を含む析出硬化型Fe−Ni−Cr合金の析出硬化熱処理は、一般に長時間を要するため、析出硬化熱処理のコスト、熱処理時の変形、表面酸化、着色などの課題があった。また、自動車エンジンの燃焼温度の高温化に伴い、さらに燃焼温度、排ガス温度が上昇する傾向があり、特許文献1に開示される析出硬化型Fe−Ni−Cr合金においても高温強度が不足する場合がある。
本発明の目的は、自動車エンジン等の高温にさらされる部品用の耐熱板材であって、高温強度の優れた耐熱板材を提供することである。
本発明者は、かかる問題点を解決すべく、熱間加工および冷間加工が可能でかつ、γ’相(ガンマプライム相)を多く有する析出強化型Ni基超耐熱板材について鋭意検討を行った。その結果、固溶化処理ままの析出強化型Ni基超耐熱板材は、固溶化処理まま、および固溶化処理後に軽度の冷間成形したままで、600〜850℃程度の高温にさらされると、時効硬化処理を行った状態と同様な時効析出強化が起こり、次第に強化されることを見出した。また、冷間加工が可能でかつ、使用中の時効析出強化により強化できる耐熱板材の金属組織を見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、0次近似組織分析法によって計算されるγ’相がモル%で30〜40%のNi基合金でなる耐熱板材であって、前記板材は、厚さが1mm以下であり、前記板材の金属組織がγ’相の最大直径が円相当径で100nm以下、平均直径が円相当径で1〜50nmであり、かつ最大直径と平均直径の比が1.3以上である耐熱板材である。
前記耐熱板材の硬さは410HV以下であることが好ましい。
本発明によれば、自動車エンジンの排気系のような高温にさらされる部品に使用される耐熱板材として、高温での使用中における高い強度をもたらすことができ、より高い信頼性を奏するものである。
固溶化処理後および時効処理後の700℃での熱へたり量の比較を示す図である。
まず、本発明で規定したNi基合金について説明する。
Ni基合金において、高い高温強度を得るために組織をオーステナイト母相と析出γ’相からなる組織とするが、γ’相の量が多い方が高温強度は高くなる。γ’相の量は熱処理条件によって変化し、固溶化処理後には完全に固溶したり、時効処理後には多くが析出したりする。このため、γ’相の量を規定する基準として、ここでは0次近似組織分析法によって計算されるγ’相量を規定することとする。Ni基合金の化学成分から、Cは全てTi、Nb、Ta等とMC型炭化物を形成し、残りのAl、Ti、Nb、Ta等のγ’相形成元素は全てNi(Al,Ti、Nb、Ta)という形のγ’相を形成し、Co、Cr、Mo、W等のオーステナイト相形成元素は全て残りのNiと共にオーステナイト相を形成すると仮定して各合金成分をγ’相とオーステナイト相に配分し、配分した成分の総原子数の比からγ’相の量を計算する0次近似(オーステナイト相の組成とγ’相の組成の平衡関係を0次近似するという意味)の組織分析法を用いる。
γ’相は、モル%で30%より少ないと十分な高温強度が得られず、一方、40%を超えると、高温強度は十分高くなるものの、固溶化処理によって固溶させることが困難となり、硬さを下げることが難しくなるため、冷間圧延による板材の製造や部品形状への冷間成形が困難となることから、γ’相のモル%は、30〜40%とする。
また、本発明のNi基合金でなる耐熱板材の厚さは1mm以下とする。冷間圧延を適用して1mm以下のNi基合金製の耐熱板材を得ることができる。なお、本発明で耐熱板材の厚さを1mm以下とするのは、厚さが1mmを超えると冷間プレス加工等による成形が難しくなるからである。耐熱板材の下限については、その用途によって適宜設定すれば良いが、おおよそ0.05mmであれば良い。
本発明で用いるNi基合金の化学成分の一例としては、質量%で、C:0.005〜0.06%、Si:0.15%以下、Mn:0.15%以下、S:0.005%以下、Cr:18.0〜20.0%、Mo:5.5〜7.0%、W:0.8〜1.2%、Co:11.0〜14.0%、Al:1.8〜2.3%、Ti:2.9〜3.3%、Fe:2.0%以下、B:0.004〜0.015%、残部:Niおよび不可避的不純物である。但し、Ni基合金の化学成分は、これに限定されるものではなく、上記のγ’相量を満足するものであればよい。
一例として挙げたNi基合金の化学成分の限定理由を述べる。なお、特に記載のない限り含有量は質量%として記す。
Cは、TiとMC型炭化物を形成し、結晶粒を微細化することで常温および高温での強度と延性をバランスよく向上させる効果を有するため、少量添加するのが好ましい。しかし、0.005%より少ないと生成する炭化物が少ないため効果が乏しく、一方、0.06%を超えて添加すると粗大なMC型炭化物を生じて延性を低下させたり、後述する高温で使用する間に生じる時効硬化に必要なTi量を減少させることから、Cは0.005〜0.06%の範囲が好ましい。Cのより好ましい上限は0.05%であり、さらに好ましいCの上限は0.04%である。
SiおよびMnは、脱酸元素として添加されしてもよいが、過度の添加は高温強度を低下させるおそれがあることから、Siは0.15%以下、Mnは0.15%以下が好ましい。より好ましくは、Siは0.10%以下、Mnは0.10%以下が良い。なお、SiおよびMnは原料や溶解技術によって十分脱酸が可能な場合には必ずしも添加する必要はない。
Sは不純物元素であって少ない方が好ましく、0%であってもよい。Sは積極的に添加はしないが、原料等から混入する場合がある。混入した場合、Sは0.005%以下であれば、本発明の耐熱板材の特性に有害な影響を与えないことから、Sは0.005%以下とする。なお、Sの好ましい上限は0.003%が良い。
Crは、耐熱板材の耐酸化性を維持するのに有効な元素である。Crが18.0%より少ないと耐熱板材に必要な耐酸化性が得にくくなる。一方、20.0%を超えて添加すると基地のオーステナイト相が不安定となり、長時間使用中にσ相(シグマ相)などの有害脆化相を生成して耐熱板材の強度や延性を低下させるおそれがある。このことから、Crは18.0〜20.0%の範囲が好ましい。より好ましいCrの下限は18.5%であり、より好ましいCrの上限は19.5%である。
Moは、本発明の耐熱板材においては、オーステナイト相を固溶強化して常温および高温強度を高めるのに有効な元素である。特に、本発明の耐熱板材では、使用中に転位との相互作用によって高温での変形を抑制する作用をもたらすため、重要な元素のひとつである。Moは5.5%より少ないと高温強度向上効果が少なく、一方、7.0%を超えて添加すると冷間成形性が低下するだけでなく、Laves相等の脆化相が生成するおそれがあることから、Moは5.5〜7.0%の範囲が好ましい。Moのより好ましいMoの上限は6.5%である。
Wは、本発明の耐熱板材においては、Moと同様、オーステナイト相を固溶強化して常温および高温強度を高めるのに有効な元素である。特に、本発明の耐熱板材では、使用中に転位との相互作用によって高温での変形を抑制する作用をもたらす重要な元素のひとつである。Wは0.8%より少ないと高温強度向上効果が少なく、一方、1.2%を超えて添加すると冷間成形性が低下するだけでなく、高温での使用中にLaves相等の脆化相が生成するおそれがあることから、Wは0.8〜1.2%の範囲が好ましい。より好ましいWの下限は0.9%であり、より好ましいWの上限は1.05%である。
Coは、オーステナイト相に固溶して、固溶強化により強度を高めるだけでなく、Mo、W、AlおよびTi等を多く固溶させ、間接的に固溶強化および時効硬化を促進させて強度を向上させるのに有効な元素である。Coは11.0%より少ないと効果が不十分となりやすく、一方14.0%より多く添加すると加工硬化が大きくなり冷間成形性が低下しやすくなるだけでなく、高温での使用中に脆化相が生成しやすくなるため、Coは11.0〜14.0%の範囲が好ましい。より好ましいCoの下限は12.0%であり、より好ましいCoの上限は13.0%である。
Alは、時効処理中および高温での使用中にNi、Tiとともにγ’相を形成する主要な構成元素のひとつであり、使用中の高温強度を高めるのに有効な元素である。γ’相を析出させて強化に寄与するには、1.8%以上の添加が好ましく、一方、2.3%を超えて添加すると冷間成形性や熱間加工性が低下しやすくなることから、Alは1.8〜2.3%の範囲が好ましい。より好ましいAlの下限は1.9%であり、より好ましいAlの上限は2.2%である。
Tiは、時効処理中および高温での使用中に時効析出する金属間化合物であるγ’相の主要な構成元素の一つであり、使用中の高温強度を高めるのに有効な元素である。γ’相を析出させて強化に寄与するには、2.9%以上の添加が好ましく、一方、3.3%を超えて添加すると高温加熱時に粗大な金属間化合物であるη相(イータ相)が生成しやすくなり、高温での強度や延性が低下しやすくなることから、Tiは2.9〜3.3%の範囲が好ましい。より好ましいTiの下限は3.0%であり、より好ましいTiの上限は3.2%である。
Feは、必ずしも添加する必要はないが、不純物として少量混入する場合がある。少量の混入は特性、製造性に影響を及ぼさないが、2.0%を超えると高温強度や耐酸化性が低下しやすくなることから、Feは2.0%以下とする。なお、Feの好ましい上限は1.0%以下が良い。
Bは、少量添加すると粒界強化作用により高温での強度と延性を高めるのに有効な元素である。しかし、0.004%より少ないと粒界への偏析量が少ないため効果が不十分となりやすく、一方、0.015%を超えて添加すると加熱時の初期溶融温度が低下して熱間加工性が低下しやすくなることから、Bは0.004〜0.015%の範囲が好ましい。より好ましいBの上限は0.010%である。
Niは、基地のオーステナイト相を安定化するのに必須の元素である。また、時効中および使用中に析出する時効析出相であるγ’相の構成元素でもあるので、常温および高温強度を高めるのに必要な元素である。上記の好ましい組成とした場合、残部の成分は実質的にNiとする。残部に存在する不可避的不純物としては、以下に示す元素は以下に示す範囲であれば、実質的な影響は少ないため、以下の範囲で許容することができる。
Mg:≦0.01%、Ca:≦0.01%、Cu:≦0.1%、Nb:≦0.1%、V:≦0.1%、Zr:≦0.1%、REM:≦0.1%、N:≦0.01%、O:≦0.005%
また、Ag、Sn、Pb、As、Bi、Inもオーステナイト粒界に偏析して高温強度の低下を招く不純物元素であり、これらの元素は合計で0.002%以下に制限することが好ましい。
次に耐熱板材の組織について説明する。
本発明の耐熱板材は、部品形状に冷間成形されることを考慮すると、固溶化処理を行った状態、あるいは部品形状に冷間成形できる程度に小さい加工度で冷間圧延等の冷間加工を行った、軟らかい状態とする必要があり、積極的な析出硬化をもたらす時効処理をしない状態が好ましい。
このような状態の金属組織とは、基地がオーステナイト組織からなる組織であり、オーステナイト基地中には時効析出強化相であるγ’相が析出していない組織が好ましいが、600℃における平衡状態でのγ’相がモル%で30〜40%である耐熱板材の場合、固溶化処理温度に加熱保持してγ’相を完全に固溶させても冷却中にγ’相が析出する。固溶化処理の冷却中に析出するγ’相は、析出強化作用が十分でない程度にそのサイズが小さい状態である。この状態で耐熱板材を600〜850℃程度の高温で使用すると、使用中の高温にさらされることによって、自然にオーステナイト基地中にγ’相が時効析出し、耐熱板材が析出強化されて強度を高めることができる。
オーステナイト基地中に析出するγ’相の大きさは、走査型電子顕微鏡によって測定することができる。測定のための視野面積は、100個以上のγ’相粒子が明瞭に判別できる倍率で選定すればよい。γ’相粒子の最大直径および平均直径は、任意の100個以上を測定して決めればよい。使用前の状態にあたる本発明の耐熱板材の組織において、オーステナイト基地中に析出するγ’相の最大直径が円相当径で100nmを超えると、冷間成形時の強度が大きくなり、部品形状への冷間成形加工が困難になるだけでなく、使用中にγ’相の粗大化が速く進み軟化して耐熱へたり性が低下することから、オーステナイト基地中にγ’相が析出する場合、そのγ’相の最大直径は円相当径で100nm以下とする。好ましくは80nm以下が良い。
また、使用前のオーステナイト基地中に析出するγ’相の平均直径を円相当径で1nmより小さくするには、固溶化処理において試験片レベルの小さいサイズでの急冷に相当する非常に速い冷却速度で急冷する必要があり、工業的な製造が困難である一方、γ’相の平均直径が円相当径で50nmを超えると、時効処理を行った場合のγ’相のサイズに相当することから析出強化量が大きくなり、部品形状への冷間成形加工が困難になることから、γ’相の平均直径は円相当径で1〜50nmとする。好ましいγ’相の平均直径の下限は円相当径で5nm、好ましいγ’相の平均直径の上限は円相当径で40nmである。
γ’相粒子は固溶化処理後の冷却中に析出するか、あるいは短時間の時効処理によって析出させることでγ’相を本来析出できる量、直径よりも少量で小さい状態を得ることができ、使用中に時効が進行して強化することで耐熱へたり性が向上するが、この状態は析出途中の状態であるため、γ’相の直径には比較的大きな分布が生じる。最大直径、平均直径が上記条件を満足し、かつ最大直径と平均直径の比が1.3以上とすることが丁度この状態を表す。
最大直径と平均直径の比を1.3以上とすることは、例えば、長時間の2段時効処理によっても得られるが、この場合、最大直径、平均直径が本発明の規定より大きくなるため、耐熱へたり性は十分ではなくなる。なお、オーステナイト基地は歪のない状態でもよいし、冷間加工による少量の歪を加えられた状態でもよいが、冷間歪が25%より大きくなると熱へたりしやすくなるため、冷間歪は25%以下が好ましい。
本発明は、積極的な時効処理を行わない状態で使用し、使用中に高温にさらされることにより析出硬化して強化することができるものであるが、部品形状に成形後の実使用前に簡易的な短時間の時効処理を行うことによって、使用前においてオーステナイト基地中のγ’相の最大直径が円相当径で100nm以下でかつ、平均直径が円相当径で1〜50nmである組織とすれば、使用前の強度を適度に上昇させることができ、初期の変形を抑えることが可能となるので、短時間の時効処理を行うことは除外しない。短時間の時効処理は、部品形状に成形加工前に実施することもできるし、部品形状に成形加工後に行うこともできる。
耐熱板材の硬さは、部品形状への冷間成形を可能にするため、ある程度低くする必要があり、冷間圧延等による板形状またはコイル形状への加工後に、加工硬化により上昇した硬さを低下させるために固溶化処理、あるいは固溶化処理後に短時間の時効処理を行う。硬さが410HVを超えると、冷間プレス加工等により部品形状に成形することが難しくなることから、硬さは410HV以下とすることが好ましい。より好ましい硬さは400HV以下である。さらに好ましい硬さは380HV以下である。なお、硬さの下限ついては低ければ低いほど好ましが、本発明が対象とする合金がγ’相がモル%で30〜40%のNi基合金であることから、200HV程度が下限となる。
表1に本発明の実施形態(No.1)の耐熱板材および比較例の合金No.2の耐熱板材の合金組成を示す。表1に示す本発明合金No.1の0次近似の組織分析法によって計算したγ’相量は、32モル%であった。これらの合金組成を有するNi基合金は真空誘導溶解し、10kgインゴットを製造することによって得た。
なお、比較合金No.2は、γ’相とγ’’相(ガンマダブルプライム相)により析出強化する合金であるが、その600℃における平衡状態での析出強化相の合計量(600℃ではγ’’相は平衡相ではなく、δ相(デルタ相)として計算されるので、γ’相とδ相の合計量)は、熱力学計算シミュレーションの計算によると、21モル%であり、本発明の規定量より低くはずれている。
Figure 0006960083
No.1およびNo.2のインゴットを用いて、1180℃で20時間の均質化熱処理を行い、分塊鍛造を行った後、1000〜1040℃で20時間保持後、800℃まで約200℃/hで冷却し、その後空冷する軟化焼鈍を行い、再度、1020℃に加熱して熱間圧延により厚さ2mmまで圧延して熱間圧延材とした。
本発明で規定するγ’相を満足するNo.1の熱間圧延材を用いて、1100℃で1時間保持後に急冷する固溶化処理を行ない、さらに厚さ約1.3mmまで冷間圧延を行った。さらに1100℃で1時間保持後に急冷する固溶化処理を行ない、さらに厚さ0.7mmまで冷間圧延を行って0.7mmの冷間圧延材とした。その後、1100℃で1時間保持後に急冷する固溶化処理を行なって厚さが0.7mmの耐熱板材Aとした。
さらに0.7mmの耐熱板材Aを厚さ0.4mmまで冷間圧延後、1100℃で5分保持後に急冷する固溶化処理を行ない、さらに厚さ0.2mmまで圧下率50%の冷間圧延を行って冷間圧延材とした。
厚さ0.2mmの冷間圧延材に対して、1100℃で5分保持の後に急冷する最後の固溶化処理を行って厚さが0.2mmの耐熱板材Bとした。さらに、前記最後の固溶化処理の後、840℃で4時間保持の短時間時効処理を行って耐熱板材Cとした。また、最後の固溶化処理Aの後、840℃で24時間保持後、空冷し、さらに760℃で16時間保持後、空冷する時効処理を行って耐熱板材Dとした。
比較例No.2の熱間圧延材を用いて、980℃で1時間保持後に急冷する固溶化処理を行なって、厚さ約1.0mmまで冷間圧延を行い、さらに980℃で1時間保持後に急冷する固溶化処理を行なって、厚さ0.4mmまで冷間圧延を行った後、さらに980℃で5分保持後に急冷する固溶化処理を行なって、さらに厚さ0.2mmまで圧下率50%の冷間圧延を行い、さらに、980℃で1時間保持後に急冷する固溶化処理を行なった。固溶化処理の後、720℃で8時間保持後、620℃まで冷却し、620℃で8時間保持後、空冷する時効処理を行って「比較例耐熱板材」とした。
次に、厚さ0.7mmの耐熱板材A、厚さ0.2mmの耐熱板材B、840℃で4時間の短時間時効処理を行なった耐熱板材C、および、840℃で24時間保持後、さらに760℃で16時間保持した耐熱板材Dについて、縦断面での走査型電子顕微鏡によるγ’相粒子の直径の測定を行った。測定視野、測定方法は前述のとおりである。また、これらの板材について縦断面の硬さをビッカーズ硬度計を用いて測定した。
表2に本発明の耐熱板材および比較例の耐熱板材A〜Dのγ’相粒子の直径の円相当径を示す。表2より、固溶化処理状態および短時間時効処理状態の本発明例では、γ’相の最大直径は100nm以下であり、平均直径は1〜50nmの範囲となっているだけでなく、最大直径と平均直径の比も1.3以上を満足している。一方、長時間の時効処理を行った比較例では、γ’相の最大直径が100nmを超えており、かつ平均直径は50nmを超えている。
Figure 0006960083
表3に耐熱板材の硬さを示す。「本発明例」として示す耐熱板材は、最後の固溶化処理(ST)後および短時間時効処理(Ag1)後で、410HV以下の硬さを示すことがわかる。長時間の時効処理(Ag2)後(表3中では「比較例1」と記す)では410HVより高い硬さとなっている。また、比較例耐熱板材(表3中では「比較例2、3」と記す)は、固溶化処理後では本発明例の固溶化処理後の耐熱板材より低い硬さを示すが、長時間時効処理(Ag3)後では410HVより高い硬さを示す。
Figure 0006960083
次に、表3に示す各熱処理を行った耐熱板材を用いて熱へたり試験を行った。熱へたり試験は,幅10mm×長さ100mmの板状試験片の長さ方向の中央部を80mm長さに対して5mmだけたわませた状態で700℃で4時間加熱し,冷却後のたわみ変形量(ここでは熱へたり量と呼ぶ)を測定することで評価した。図1に固溶化処理後および時効処理後の熱へたり量を示す。
表1に示す合金組成No.1の熱間圧延材から得られた耐熱板材の700℃での熱へたり量は、固溶化処理(ST)後(本発明例1)が最も小さく、ついで短時間時効(Ag1)後(本発明例2)が小さく、長時間時効(Ag2)後(比較例1)が最も大きい。また、比較例2、3の耐熱板材に比べれば本発明例の耐熱板材は、いずれの熱処理条件でも小さい熱へたり量を示しており、耐熱へたり性が良好である。
本発明例の耐熱板材が比較例の耐熱板材に比べて耐熱へたり性が大幅に良好なのは、γ’相等の析出強化相の量が多いこと、およびγ’’相に比べて高温まで安定なγ’相によって強化されていること、等により、高温での強度が高いためと考えられる。また、本発明例の耐熱板材の耐熱へたり性が熱処理条件に大きく影響を受けないのは、試験温度が時効処理温度に近いため、試験中に時効析出が促進されるためであり、初期状態を時効処理しない状態、即ち、固溶化処理状態、または短時間時効処理としてγ’相の大きさが小さい状態としても、長時間時効処理を行った場合と同等レベルの耐熱へたり性が得られるからである。
また、初期状態を時効処理しない状態、即ち、固溶化処理状態、または短時間時効処理としてγ’相の大きさが小さい状態とすることで、熱処理に余分な工数を割く必要がなく、かつ硬さを低く維持できるため、部品形状への成形が容易となり、実用性が向上する。
以上のように、本発明の耐熱板材は、自動車エンジンの排気系のような高温にさらされる部品に使用すると、部品形状への冷間成形性と高温での使用中における高い強度を兼ね備えることができ使用中の熱へたりを抑制できることから、より高い信頼性を奏するものである。

Claims (2)

  1. 0次近似組織分析法によって計算されるγ’相がモル%で30〜40%のNi基合金でなる耐熱板材であって、前記板材は、質量%で、C:0.005〜0.06%、Si:0.15%以下、Mn:0.15%以下、S:0.005%以下、Cr:18.0〜20.0%、Mo:5.5〜7.0%、W:0.8〜1.2%、Co:11.0〜14.0%、Al:1.8〜2.3%、Ti:2.9〜3.3%、Fe:2.0%以下、B:0.004〜0.015%、残部:Niおよび不可避的不純物からなる化学成分を有し、前記板材は、厚さが1mm以下であり、前記板材の金属組織がγ’相の最大直径が円相当径で100nm以下、平均直径が円相当径で1〜50nmであり、かつ最大直径の平均直径に対する比が1.3以上であることを特徴とする耐熱板材。
  2. 硬さが410HV以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱板材。
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