JP7327406B2 - 膜電極接合体 - Google Patents
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Description
燃料電池は、電解質の種類によって、アルカリ形、リン酸形、高分子形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形などに分類される。固体高分子形燃料電池(PEFC)は、低温作動、高出力密度であり、小型化・軽量化が可能であることから、携帯用電源、家庭用電源、車載用動力源としての応用が期待されている。
アノード:H2 → 2H+ + 2e- ・・・(1)
カソード:1/2O2 + 2H+ + 2e- → H2O ・・・(2)
特許文献1では、電解質膜の破断強度が大きく、加湿膨潤と乾燥収縮の繰り返しによる環境下であっても破膜しにくい電解質膜が提案されている。
しかしながら、特許文献1では触媒層の柔軟性について十分に検証されておらず、膜電極接合体の耐久性は十分と言えない。
図1に示すように、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係る固体高分子形燃料電池用の触媒層、即ちアノード側触媒層及びカソード側触媒層は、触媒13を担持した炭素粒子14、高分子電解質15、及び繊維状物質16を含む。繊維状物質16を含むことにより、形成時にクラックが発生せず、また触媒層内の空孔を増加させることが出来る。
図2に示すように、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体12は、前述のアノード側触媒層3(以下、単に「触媒層3」とも称する)と、カソード側触媒層2(以下、単に「触媒層2」とも称する)とにより、プロトン伝導性の高分子電解質膜1を挟持した構成の膜電極接合体である。
図4に示すように、触媒層2又は触媒層3の表面上に生じたクラック19を、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で観察し、最も長いクラック19の長さを「クラックの最大長さ」とした。クラック19の定義として、クラック19はクラック幅が0.5μm以上のものとした。
また、上述の折り曲げ試験後に形成される、膜電極接合体12の触媒層2及び触媒層3の少なくとも一方のクラック19の最大長さは、1500μm以下であってもよい。
この単セル11は、一方のセパレータ10のガス流路8を通って空気や酸素などの酸化剤がカソード6に供給され、他方のセパレータ10のガス流路8を通って水素を含む燃料ガスもしくは有機物燃料がアノード7に供給されることによって、発電するようになっている。
高分子電解質15のプロトン供与性基1モル当たりの乾燥質量値(当量重量;EW)は、400以上1200以下の範囲内が好ましく、より好ましくは600以上1000以下の範囲内である。EWが小さ過ぎるとフラッディングにより発電性能が低下し、EWが大き過ぎるとプロトン伝導性が低下し発電性能が低下することがある。
また、これらの触媒13の粒径は、大きすぎると触媒13の活性が低下し、小さすぎると触媒13の安定性が低下するため、0.5nm以上20nm以下の範囲内が好ましく、1nm以上5nm以下の範囲内がより好ましい。
炭素粒子14には、触媒13が担持されていることが好ましい。高表面積の炭素粒子14に触媒13を担持することで、高密度で触媒13が担持でき、触媒活性を向上させることが出来る。
なお、繊維状物質16は、酸素還元電極用の電極活物質を繊維状に加工したものであってもよく、例えば、Ta、Nb、Ti、Zrから選択される、少なくとも一つの遷移金属元素を含む物質を使用してもよい。これらの遷移金属元素の炭窒化物の部分酸化物、または、これらの遷移金属元素の導電性酸化物や導電性酸窒化物が例示できる。
繊維状物質16の繊維長は1μm以上200μm以下の範囲内が好ましく、1μm以上50μm以下の範囲内がより好ましい。上記範囲にすることにより、触媒層2、3の強度(柔軟性)を高めることができ、形成時もしくは折り曲げ試験後にクラック19が生じることを抑制出来る。また、触媒層2、3内の空孔を増加させることができ、高出力化が可能になる。
触媒層2、3の厚さは、5μm以上30μm以下が好ましく、10μm以上20μm以下がより好ましい。触媒層2、3の厚さが5μmより薄いとフラッディングが生じ出力が低下することがあり、また、30μmより厚いと、触媒層2、3の抵抗が大きくなり、出力が低下することがある。
触媒層2、3は、触媒層用スラリーを作製し、作製した触媒層用スラリーを基材や高分子電解質膜1などに塗工・乾燥することで製造出来る。
触媒層用スラリーは、触媒13、炭素粒子14、高分子電解質15、繊維状物質16及び溶媒を含む。溶媒としては、特に限定しないが、高分子電解質15を分散又は溶解出来るものがよい。一般的に用いられる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイゾブチルケトン、メチルアミルケトン、ペンタノン、へプタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトニルアセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、メトキシトルエン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル類、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミン、アニリンなどのアミン類、蟻酸プロピル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチルなどのエステル類、その他酢酸、プロピオン酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどが挙げられる。また、グリコール、グリコールエーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノールなどが挙げられる。
触媒層用スラリーの塗工方法としては、例えば、ドクターブレード法、ダイコーティング法、ディッピング法、スクリーン印刷法、ラミネータロールコーティング法、スプレー法などが挙げられるが、特に限定しない。
触媒層用スラリーの乾燥時間は、0.5分以上1時間以下の範囲内が好ましく、1分以上30分以下の範囲内がより好ましい。乾燥時間が短すぎると溶媒の残留が生じ、長すぎると高分子電解質膜1の乾燥による変形などが生じる可能性がある。
膜電極接合体12の製造方法としては、例えば、転写基材又はガス拡散層4、5に触媒層2、3を形成した後、高分子電解質膜1に熱圧着で触媒層2、3を形成する方法や高分子電解質膜1に直接触媒層2、3を形成する方法が挙げられる。高分子電解質膜1に直接触媒層2、3を形成する方法は、高分子電解質膜1と触媒層2、3との密着性が高く、触媒層2、3が潰れる恐れがないため、好ましい。
折り曲げ試験後にクラックが形成されにくい膜電極接合体12は、触媒層用スラリーの組成や塗工・乾燥条件、触媒層構造の最適化などによって得ることが出来る。例として、触媒層2、3に含まれる繊維状物質16の配向を高分子電解質膜1に対し平行に近づけることにより、繊維状物質同士の平面方向での絡まりの度合いが高くなり、クラックが形成されにくくなる。ここにおいて「平面方向」とは、触媒層の厚み方向に対し垂直な方向を指す。
次に、本発明に基づく実施例について説明する。
[折り曲げ試験]
折り曲げ試験はMIT耐折疲労試験機(MIT-S、東洋精機製作所株式会社製)を用いて行った。試験片は以下のように準備した。50mm四方の触媒層を有する膜電極接合体を、触媒層部が中央となるよう、幅15.0±1mm、長さ約110mmに切り出した。試験は、荷重を0.30kgf、折り曲げ回数を200回まで、と設定した以外は、JIS P 8115(国際標準化機構:ISO5256)に従って行った。
JIS P 8115は紙及び板紙に適用する規格であるが、膜電極接合体に対して適用を行った。
以下に試験条件を記載する。
折曲げ角度:±135°
折曲げ速度:175cpm
折曲げクランプ
先端曲率半径:R=0.38±0.02mm
開き:0.25mm
その後、静かにプランジャの留めねじを緩め、試験片に荷重を加えた。荷重指示器の読みが変化した場合は、もう一度所定の荷重を加え、試験片を再度取り付け直した。試験片を、垂直線の左右へ135±2°の角度に、毎分175±10回の速度で折り曲げ、カウンタで200回の往復折曲げ回数を記録したところで装置を停止した。
走査型電子顕微鏡(SIGMA500、カールツァイスマイクロスコピー社製)を用いて、膜電極接合体の表面を観察した。検出器としてInLens Duoを用い、Gridを0Vとし、加速電圧は1.0kV、倍率は80倍で観察した。また、Blightnessは57%、Contrastは40%とした。得られた顕微鏡写真から、最長のクラックの長さ、即ちクラックの最大長さを算出した。図6におけるクラックの最大長さは220μm、図7におけるクラックの最大長さは330μmであった。折り曲げ試験の前後に観察を行うことで、クラックの最大長さの差を算出した。
クラックは幅が0.5μm以上の触媒層中の亀裂を指す。クラックの長さは、クラックの両端を直線で結んだ際の長さと規定した。クラックの幅および端は、倍率を5000倍へと上げて観測した。また、途中で幅が0.5μm以下になったクラックについては、5μm以上連続で幅が0.5μmを下回った場合のみ、別々のクラックと見なす事とした。
折り曲げ試験において、触媒層が破断してしまったサンプルは、図8のように光学顕微鏡を用いて破断したことを確認し、クラック長は1500000μmとした。
密度は、触媒層2、3の質量と厚さから求めた。触媒層2、3の質量は、触媒層用スラリー塗布量から求めた質量又は乾燥質量を用いた。触媒層2、3の質量を塗布量から求める場合は、予め触媒層用スラリーの固形分(質量%)を求めておき、所定の塗布量と固形分質量から求めた。また、触媒層2、3の質量を乾燥質量から求める場合は、触媒層2、3を所定の大きさに加工し、その質量を計量し求めた。触媒層2、3の厚さは、走査型電子顕微鏡(SIGMA500、カールツァイスマイクロスコピー社製)で断面を観察することで厚さを計測し、その平均値求めた。
空孔率を算出するために必要な細孔容積Vpの分布を、水銀圧入法により測定した。具体的には、略25平方cmの膜電極接合体を用意し、自動ポロシメーター(マイクロメリティックス社製、オートポアIV9510)を用いて、細孔容積Vpを測定した。測定セルの容積は約5cm3であり、水銀圧入の圧力を3kPaから400MPaまで昇圧した。これにより、各圧力における水銀の圧入量、つまり細孔容積Vpを得た。水銀圧入の圧力をWashburnの式を用いて細孔直径Dに換算し、細孔直径Dに対する細孔容積Vpの分布関数dVp/dlogD(Log微分細孔容積分布)のプロットを作成した。なお、表面張力γを0.48N/mとし、かつ、接触角θを130°とした。そして、このプロットのピークに対応する細孔直径Dを細孔直径Dpとして読み取った。
触媒層2、3の外側にガス拡散層(SIGRACET(登録商標) 35BC、SGL社製)を配置して、市販のJARI標準セルを用いて発電性能の評価を行った。セル温度は80℃として、アノードに水素(100%RH)とカソードに空気(100%RH)を供給した。
触媒層2、3の外側にガス拡散層(SIGRACET(登録商標) 39BC、SGL社製)を配置して、市販のJARI標準セルを用いて湿度サイクル試験により耐久性の評価を行った。なお、この評価は、新エネルギー・産業技術総合開発機構の定めるプロトコル(セル評価解析プロトコル 平成24年(2012年)12月)に従って行った。セル温度は80℃として、アノードとカソードに窒素を供給し、湿度は150%RHと0%RHとし、各2分保持した。
白金担持カーボン(TEC10E50E、田中貴金属社製)20gを容器にとり、水150gを加えて混合後、1-プロパノール150g、高分子電解質(Nafion(登録商標)分散液、和光純薬工業)10gと繊維状物質としてカーボンナノファイバー(昭和電工社製、商品名「VGCF-H」、繊維径約150nm、繊維長約10μm)5gを加えて撹拌して、触媒層用スラリーを得た。なお、本実施例で使用した白金担持カーボン20g中、カーボン成分は10gであった。
得られた触媒層用スラリーを高分子電解質膜(デュポン社製、Nafion212)の両面にダイコーティング法で、乾燥後の触媒層厚みが20μmになるように塗工し、80℃の炉内で乾燥することで、実施例1に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。
繊維状物質としてカーボンナノチューブ(Nanocyl社製、商品名「NC7000」、繊維径約9.5nm、繊維長約1.5μm)2gを用いた以外は、実施例1と同様の手順で実施例2に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。なお、実施例2では、触媒層用スラリーを、乾燥後の触媒層厚みが25μmになるように塗工した。
[実施例3]
繊維状物質として、針葉樹クラフトパルプより既知の方法で製造したセルロースナノファイバー(繊維径約4nm、繊維長約300nm)0.5gを用いた以外は、実施例1と同様の手順で実施例3に係る高分子形燃料電池用膜電極接合体を製造した。なお、実施例3では、触媒層用スラリーを、乾燥後の触媒層厚みが20μmになるように塗工した。
繊維状物質を加える量を0.5gに変更した以外は、実施例1と同様の手順で実施例4に係る高分子形燃料電池用膜電極接合体を製造した。なお、実施例4では、触媒層用スラリーを、乾燥後の触媒層厚みが10μmになるように塗工した。
[実施例5]
繊維状物質を加える量を1gに変更した以外は、実施例1と同様の手順で実施例5に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。なお、実施例5では、触媒層用スラリーを、乾燥後の触媒層厚みが12μmになるように塗工した。
繊維状物質を加える量を20gに変更した以外は、実施例1と同様の手順で実施例6に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。なお、実施例6では、触媒層用スラリーを、乾燥後の触媒層厚みが25μmになるように塗工した。
[実施例7]
繊維状物質を加える量を30gに変更した以外は、実施例1と同様の手順で実施例7に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。なお、実施例7では、触媒層用スラリーを、乾燥後の触媒層厚みが30μmになるように塗工した。
乾燥後の触媒層厚みが15μmになるように塗工した以外は、実施例1と同様の手順で実施例8に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。
[実施例9]
乾燥後の触媒層厚みが10μmになるように塗工した以外は、実施例1と同様の手順で実施例9に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。
高分子電解質を加える量を5gに変更した以外は、実施例1と同様の手順で実施例10に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。
[実施例11]
高分子電解質を加える量を18gに変更した以外は、実施例1と同様の手順で実施例11に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。
高分子電解質を加える量を4gに変更した以外は、実施例1と同様の手順で実施例12に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。
[実施例13]
高分子電解質を加える量を20gに変更した以外は、実施例1と同様の手順で実施例13に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。
触媒層用スラリーを、乾燥後の触媒層の密度が400g/cm3以下、厚みが40μmになるように塗工した以外は、実施例1と同様の手順で実施例14に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。
[実施例15]
触媒層用スラリーを、乾燥後の触媒層の密度が1000g/cm3以上、厚みが8μmになるように塗工した以外は、実施例1と同様の手順で実施例15に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。
塗工前に触媒層用スラリーを脱泡する手順を加えた以外は、実施例1と同様の手順で実施例16に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。なお、実施例16では、触媒層用スラリーを、乾燥後の触媒層厚みが15μmになるように塗工した。
[実施例17]
塗工前に触媒層用スラリーを、空気を含ませるように撹拌する手順を加えた以外は、実施例1と同様の手順で実施例17に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。なお、実施例16では、触媒層用スラリーを、乾燥後の触媒層厚みが25μmになるように塗工した。
白金担持カーボン(TEC10E50E、田中貴金属社製)20gを容器にとり、水150gを加えて混合後、1-プロパノール150g、高分子電解質(Nafion(登録商標)分散液、和光純薬工業)10gと繊維状物質としてカーボンナノファイバー(昭和電工社製、商品名「VGCF-H」、繊維径約150nm、繊維長約10μm)5gを加えて撹拌して、触媒層用スラリーを得た。なお、本実施例で使用した白金担持カーボン20g中、カーボン成分は10gであった。
得られた触媒層用スラリーをPETフィルムにダイコーティング法で、乾燥後の触媒層厚みが20μmになるように塗工し、80℃の炉内で乾燥することで触媒層を得た。上記触媒層を2つ製造し、高分子電解質膜(デュポン社製、Nafion212)を挟んで両面から熱圧着により転写することで、実施例18に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。
繊維状物質を加える量を20gに変更した以外は、実施例18と同様の手順で実施例19に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。なお、実施例19では、触媒層用スラリーを、乾燥後の触媒層厚みが25μmになるように塗工した。
繊維状物質の代わりに板状物質グラフェン(厚み約15μm、横幅約5μm)5gを添加した以外は、実施例1と同様の手順で比較例1に係る高分子形燃料電池用膜電極接合体を製造した。なお、比較例1では、触媒層用スラリーを、乾燥後の触媒層厚みが20μmになるように塗工した。
[比較例2]
繊維状物質を加えないこと以外は、実施例1と同様の手順で比較例2に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。なお、比較例2では、触媒層用スラリーを、乾燥後の触媒層厚みが10μmになるように塗工した。
繊維状物質を加える量を0.5gに変更した以外は、実施例18と同様の手順で比較例3に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。なお、比較例3では、触媒層用スラリーを、乾燥後の触媒層厚みが10μmになるように塗工した。
[比較例4]
繊維状物質を加えないこと以外は、実施例18と同様の手順で比較例4に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。なお、比較例4では、触媒層用スラリーを、乾燥後の触媒層厚みが10μmになるように塗工した。
[比較例5]
乾燥後の触媒層厚みが10μmになるように塗工した以外は、実施例18と同様の手順で比較例5に係る固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体を製造した。
電流値が1.0A/cm2のときの電圧が、
◎:0.61V以上
○:0.58V以上
△:0.55V以上
×:0.55V未満
なお、評価が「×」であっても、実用上は問題ない。
◎:クラックなし
○:折り曲げ試験前後におけるクラックの最大長さの差が600μm以下
△:折り曲げ試験前後におけるクラックの最大長さの差が1200μm以下
×:折り曲げ試験前後におけるクラックの最大長さの差が1200μm超
なお、評価が「×」であっても、実用上は問題ない。
◎:20001サイクル以上
○:10001サイクル~20000サイクル
△:5001サイクル~10000サイクル
×:5000サイクル以下
なお、評価が「×」であっても、実用上は問題ない。
◎:「発電性能」、「柔軟性」、「耐久性」のいずれかの評価において、「◎」が2つ以上あり、「△」および「×」がない。
○:「発電性能」、「柔軟性」、「耐久性」のいずれかの評価において、「〇」が2つ以上あり、「△」および「×」がない。
△:「発電性能」、「柔軟性」、「耐久性」のいずれかの評価において、1つ以上の「△」があり、「×」がない。
×:「発電性能」、「柔軟性」、「耐久性」のいずれかの評価において、1つ以上の「×」がある。
なお、評価が「×」であっても、実用上は問題ない。
触媒層の厚みを薄くした場合、ダイコーティング法で製造した膜電極接合体はクラックが生じなかったが、熱圧着で製造した膜電極接合体はクラックが大きくなった。触媒層厚みが薄い場合は、触媒層にかかる応力が空孔により大きく緩和されるためである。
実施例1および10~13に示すように、加える高分子電解質の量により、膜電極接合体の性能を適正化することが出来る。同様に、実施例1および実施例14~17には、密度と空孔率を調整した場合の結果を示したが、いずれも膜電極接合体の性能を適正化することが出来る。
表1に示す通り、折り曲げ試験前後のクラック長の差が小さかった、即ち触媒層の柔軟性が高かった実施例1~19では高い耐久性が示された。クラック長の差が大きかった、即ち触媒層の柔軟性が低かった比較例1~5では、耐久性が低かった。
2 カソード側触媒層
3 アノード側触媒層
4 カソード側ガス拡散層
5 アノード側ガス拡散層
6 カソード
7 アノード
8 ガス流路
9 冷却水流路
10 セパレータ
11 単セル
12 膜電極接合体
13 触媒
14 炭素粒子
15 高分子電解質
16 繊維状物質
17 ばね荷重クランプ
18 折曲げクランプ
19 クラック
Claims (13)
- 触媒を担持した炭素粒子、高分子電解質、及び繊維状物質を含む、アノード側触媒層とカソード側触媒層とにより、プロトン伝導性の高分子電解質膜を挟持した構成の固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体であって、
折り曲げ試験前と折り曲げ試験後で、前記触媒層に形成されるクラックの最大長さの差が、1200μm以下であり、
前記繊維状物質が、前記触媒の質量を除いた前記炭素粒子の質量に対して、0.5倍以 上3.0倍以下で含有されていることを特徴とする膜電極接合体。 - 前記膜電極接合体の折り曲げ試験後、前記触媒層に形成されるクラックの最大長さが、1500μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の膜電極接合体。
- 前記繊維状物質が、炭素繊維、遷移金属元素、遷移金属元素の炭窒化物の部分酸化物、遷移金属元素の導電性酸化物、遷移金属元素の導電性酸窒化物、及びプロトン伝導性を有する高分子電解質繊維の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の膜電極接合体。
- 前記繊維状物質が、前記触媒の質量を除いた前記炭素粒子の質量に対して、2.0倍以上3.0倍以下で含有されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
- 前記触媒層に含まれる前記高分子電解質の前記炭素粒子に対する質量比(高分子電解質/炭素粒子)が、0.4倍以上1.8倍以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
- 前記触媒層に含まれる前記高分子電解質の前記炭素粒子に対する質量比(高分子電解質 /炭素粒子)が、0.4倍以上1.0倍以下であることを特徴とする請求項1から請求項 4のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
- 前記触媒層に含まれる前記高分子電解質の前記炭素粒子に対する質量比(高分子電解質 /炭素粒子)が、1.8倍以上2.0倍以下であることを特徴とする請求項1から請求項 4のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
- 前記アノード側触媒層及びカソード側触媒層の少なくとも一方の密度が、400mg/cm3以上1000mg/cm3以下であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
- 前記膜電極接合体の前記アノード側触媒層及びカソード側触媒層の少なくとも一方の体積に対する、触媒層中に含まれる3nm以上5.5μm以下の直径を有する細孔の容積の割合である空孔率が、55%以上85%以下であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
- 前記繊維状物質が、Ta、Nb、Ti、Zrから選択される少なくとも一つの金属元素 を含むことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
- 前記触媒層の厚さが、5μm以上30μm以下であることを特徴とする請求項1から請 求項10のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
- 前記繊維状物質が、遷移金属元素、遷移金属元素の炭窒化物の部分酸化物、遷移金属元 素の導電性酸化物、遷移金属元素の導電性酸窒化物、及びプロトン伝導性を有する高分子 電解質繊維の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか 1項に記載の膜電極接合体。
- 触媒を担持した炭素粒子、高分子電解質、及び繊維状物質を含む、アノード側触媒層とカソード側触媒層とにより、プロトン伝導性の高分子電解質膜を挟持した構成の固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体であって、
折り曲げ試験前と折り曲げ試験後で、前記触媒層に形成されるクラックの最大長さの差が、1200μm以下であり、
前記繊維状物質が炭素繊維を含み、
前記繊維状物質の繊維径が4nm以上9.5nm以下であり、
前記繊維状物質の繊維長が300nm以上1.5μm以下であることを特徴とする膜電極接合体。
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