JP7067136B2 - 触媒層、膜電極接合体、固体高分子形燃料電池 - Google Patents
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Description
燃料電池は、電解質の種類によって、アルカリ形、リン酸形、固体高分子形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形などに分類される。固体高分子形燃料電池(PEFC)は、低温作動、高出力密度であり、小型化・軽量化が可能であることから、携帯用電源、家庭用電源、車載用動力源としての応用が期待されている。
アノード:H2 → 2H++ 2e-・・・(1)
カソード:1/2O2 + 2H+ + 2e- → H2O ・・・(2)
このような固体高分子形燃料電池には、高電流密度域で運転した場合でも、高い出力を実現することが求められている。しかし、高電流密度域での運転では、多くの生成水が発生するため、触媒層やガス拡散層に水が溢れ、ガスの供給が妨げられるフラッディングが生じる。これに起因して、燃料電池の出力が著しく低下する課題がある。
特許文献2では、固体高分子形燃料電池の耐久性を十分に確保しながら、触媒層における電気伝導性及びガス拡散性の両方の向上を実現させるために、触媒層の触媒担持体として、カーボン粒子とカーボン繊維とを混合して用いることが提案されている。
特許文献2の提案では、触媒が担持されたカーボン粒子の他に繊維状カーボンを添加しているため、触媒層のクラックを抑制しながら高い発電効率を実現できると期待できる。しかし、繊維状カーボンを使用すると触媒層の体積が大きくなるため、多数の膜電極接合体を積層(スタック)した際に、燃料電池そのものが巨大化し、車載用を始めとする多くの燃料電池で求められる小型化・軽量化が実現し難いという問題がある。
(1)繊維状物質として第一の繊維状物質を含む。第一の繊維状物質の繊維長分布は、横軸を繊維長、縦軸を体積としたヒストグラムで、繊維長が最頻値よりも長い領域での第一標準偏差σ1と、繊維長が最頻値よりも短い領域における第二標準偏差σ2と、の関係が、σ1<σ2を満たす。
(2)繊維状物質として第二の繊維状物質をさらに含む。第二の繊維状物質の繊維長分布は、横軸を繊維長、縦軸を体積としたヒストグラムで、繊維長が最頻値よりも長い領域での第三標準偏差σ3と、繊維長が最頻値よりも短い領域における第四標準偏差σ4と、の関係が、σ3<σ4を満たす。第二の繊維状物質の繊維長の最頻値は、第一の繊維状物質の繊維長の最頻値より短い領域に存在する。
(3)第一の繊維状物質の体積は、第一の繊維状物質と第二の繊維状物質との合計体積の60%以上を占める。
また、固体高分子形燃料電池11は、一対のガス拡散層5と一対のセパレータ10を備えている。各ガス拡散層5は、アノード触媒層2及びカソード触媒層3と対向して配置されている。
アノード触媒層2側のセパレータ10のガス流路8からは燃料ガスが供給される。燃料ガスとしては、例えば水素ガスが挙げられる。カソード触媒層3側のセパレータ10のガス流路8からは、酸化剤ガスが供給される。酸化剤ガスとしては、例えば空気などの酸素を含むガスが供給される。
図3に示すように、アノード触媒層2及びカソード触媒層3は、触媒21、炭素粒子22、高分子電解質23、及び炭素繊維(繊維状物質)24からなる。以下では炭素繊維24が図4の繊維長分布を有する場合(第一例)と、図5の繊維長分布を有する場合(第二例)について説明する。
これにより、触媒層内に含有する炭素繊維24の繊維長分布がσ1<σ2を満たさないものと比較して、固体高分子形燃料電池の出力を向上させることが出来、且つ触媒層の厚みも薄くすることができる。
ここでいう炭素繊維の体積とは、炭素繊維の直径と長さから算出されるものであって、例えば直径が等しく長さが2倍の炭素繊維を考える場合には、その体積は2倍とする。また、例えば直径が等しく長さが3:2となる二種類の炭素繊維を同数混在させた場合、その体積比は60:40となる。
繊維長分布の異なる炭素繊維を複数混在させてもよい。繊維長分布の異なる複数の炭素繊維を混在させることにより、繊維長に対する度数分布を描いた際に、複数の極大値を有する多峰性ヒストグラムとなることが多い。
ここでいう多峰性とは、ある系において、各区間に該当する頻度もしくは存在確率をプロットしたとき、複数の極大値を持つことを指す。また単峰性とは、単一の極大値を持つことを指す。
第二例の炭素繊維は、繊維長分布の最頻値が10μmの第二の炭素繊維と繊維長分布の最頻値が15μmの第一の炭素繊維を混合したものである。図5に示すように、各炭素繊維の繊維長分布は非対称分布となるが、最頻値を境に大きい側と小さい側をそれぞれ異なる正規分布(ガウス分布)に近似できる。
炭素繊維の繊維長は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて実測することが出来る。繊維長を正確に測定・算出できるのであれば、湿式測定であっても良いし乾式測定であっても良い。
粉砕ビーズ等を用いて炭素繊維を粉砕する方法や、フィルター等を用いて炭素繊維を篩い分けすることにより、繊維長分布・存在確率を変動させることも出来る。篩い分けをした場合であっても、上記炭素繊維の体積割合の範囲内であれば有用性を発揮することが出来る。
上述したように、固体高分子形燃料電池では燃料ガス及び酸化剤ガスが持続的に供給されるため、ガスを触媒層の深奥部まで充分に侵入させることにより反応点を増やすことが出来る。
同様に、膜電極接合体内に発生した水が充分に排出されず、発電効率が低下するフラッディング(水詰まり)に関しても、触媒層に含まれる炭素繊維が寄与する。
炭素繊維を含まない触媒層と比較して、炭素繊維を含む触媒層は多数の空孔を有し、特に触媒層内を貫通する長い空孔を有することから、触媒層内の排水性が確保され、高分子形燃料電池の効率低下を抑制できる。
しかしながら、炭素繊維を用いた場合には触媒層の構造的な強度が増し、触媒層内の空孔が多い場合でもクラックを抑制することが可能となる。
炭素繊維を含まない触媒層と比較して、炭素繊維を含む触媒層は体積が大きく、作製した膜電極接合体の厚みが増すことによって、スタックした燃料電池の大型化に直結する。これを抑制するため、繊維長分布の異なる複数の炭素繊維を混在させることにより膜電極接合体の厚みを増減させることが出来、発電性能と膜厚のバランスを調整することが可能となる。
この実施形態では繊維状物質として炭素繊維を用いているが、炭素繊維以外の繊維状物質を用いてもよい。
繊維状物質としては、電子伝導性繊維およびプロトン伝導性繊維が使用できる。繊維状物質の例を以下に示す。これらの繊維のうち一種のみを単独で使用してもよいが、二種以上を併用してもよく、電子伝導性繊維とプロトン伝導性繊維を併せて用いても良い。
固体高分子形燃料電池の空気極として用いられる場合には、カーボンナノファイバーから作製したカーボンアロイ触媒が例示できる。また、酸素還元電極用の電極活物質を繊維状に加工したものであってもよく、Ta、Nb、Ti、Zrから選択される、少なくとも一つの遷移金属元素を含む物質を使用してもよい。これらの遷移金属元素の炭窒化物の部分酸化物、または、これらの遷移金属元素の導電性酸化物や導電性酸窒化物が例示できる。
炭化水素系高分子電解質としては、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレンなどの電解質を用いることができる。中でも、高分子電解質としてデュポン社製Nafion(登録商標)系材料を好適に用いることができる。炭化水素系高分子電解質としては、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレンなどの電解質を用いることができる。
触媒としては、白金やパラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素の他、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属又はこれらの合金、または酸化物、複酸化物等が使用できる。その中でも、白金や白金合金が好ましい。また、これらの触媒の粒径は、大きすぎると触媒の活性が低下し、小さすぎると触媒の安定性が低下するため、0.5nm~20nmが好ましい。更に好ましくは、1nm~5nmが良い。
炭素粒子の粒径は、小さすぎると電子伝導パスが形成されにくくなり、また大きすぎると触媒層が厚くなり抵抗が増加することで、出力特性が低下したりするので、10nm~1000nm程度が好ましい。更に好ましくは、10nm~100nmが良い。
高表面積の炭素粒子に触媒を担持することで、高密度で触媒が担持でき、触媒活性を向上させることができる。
フッ素系高分子電解質としては、例えば、デュポン社製Nafion(登録商標)等を用いることができる。
炭化水素系高分子電解質としては、例えば、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等の電解質を用いることができる。
高分子電解質としては、触媒層と電解質膜の密着性の観点から、高分子電解質膜と同質の材料を選択することが好ましい。
高分子電解質膜の平均厚みは、例えば1μm~500μm、好ましくは3μm~200μm、更に好ましくは5μm~100μm程度である。
触媒層を複層構造にする場合、界面抵抗による極端な発電性能の低下を抑制するため、多くとも四層以下にすることが好ましい。また、各層の厚みは全て同じであっても良いし、各層の厚みが異なっていても良い。
触媒層を複層構造にする場合、各層における触媒、炭素粒子、高分子電解質、炭素繊維、溶媒等の組成は同じであっても良いし、異なっていても良い。
触媒層を複層構造にする場合、各層の境界面は平坦であっても良いし、曲面を含んでいても良い。
触媒層は、触媒層用スラリーを作製し、転写基材またはガス拡散層に塗工・乾燥することで製造できる。
触媒層用スラリーは、触媒、炭素粒子、高分子電解質、炭素繊維及び溶媒からなる。触媒層用スラリーの溶媒としては、高分子電解質と触媒を溶解または分散できるものであれば特に限定は無い。
触媒層用スラリー中の溶質(導電性粒子、触媒粒子、高分子電解質)の濃度は、例えば、1~80重量%、好ましくは5~60重量%、更に好ましくは10~40重量%程度で用いられる。
触媒層用スラリーに用いられる高分子電解質としては、プロトン伝導性を有する樹脂成分であれば特に限定は無く、なかでもフッ素系高分子電解質若しくは炭化水素系高分子電解質が好適に用いられる。
炭化水素系高分子電解質としては、例えば、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等の電解質を用いることができる。
触媒層用スラリーは上記の触媒、炭素粒子、高分子電解質、炭素繊維、溶媒を混合し、分散処理を加えることで作製できる。分散方法としては、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、剪断ミル、湿式ミル、超音波分散、ホモジナイザー等が挙げられる。
具体的なコーティング法として、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーター、スクリーンコーター、スプレー、スピナーなどが挙げられる。
なお、最終的に同様の触媒インクを塗布できるならば、その塗工手段については特に制限は無い。
触媒層用スラリーの乾燥方法としては、温風乾燥、IR乾燥などが挙げられる。乾燥温度は、40~200℃、好ましくは40~120℃程度である。乾燥時間は、0.5分~1時間、好ましくは1分~30分程度である。
また乾燥工程は、単一の乾燥機構であっても良いし、複数の乾燥機構を組み合わせて使用しても良い。
転写基材としては、少なくとも片面に触媒層用スラリーを塗布することができ、加熱によって触媒層を形成でき、形成した触媒層を高分子電解質膜1に転写できるものであれば特に限定は無い。
基材は、シート、フィルム、板、膜、若しくは箔、又はこれらのうち少なくとも1つを粘着、接着、癒着、若しくは貼合したものであっても良い。
基材が複層構造である場合、最表面に位置するフィルムが開口部を有していてもよい。ここでいう開口部とは、断裁や打ち抜き等の手段によりフィルムの一部を取り除いた箇所を指す。
また、開口部の形状によって乾燥後の触媒インク(即ち、電極)の形状を成形してもよい。
膜電極接合体の製造方法としては、転写基材またはガス拡散層に触媒層を形成し、高分子電解質膜に熱圧着で触媒層を形成する方法や、高分子電解質膜に直接触媒層を形成する方法が挙げられる。また、高分子電解質膜に直接触媒層を形成する方法は、高分子電解質膜と触媒層との密着性が高く、触媒層が潰れる恐れがないため、好ましい。
ガスケット4に用いられる部材としては、少なくとも片面に粘着材を塗布若しくは貼合することができ、高分子電解質膜1に貼合で切るものであれば特に限定は無い。
ガスケット4に用いられる部材は、シート、フィルム、板、膜、若しくは箔、又はこれらのうち少なくとも1つを粘着、接着、癒着、若しくは貼合したものであっても良い。
ガスケット4の平均厚みは、例えば1μm~500μm、好ましくは3μm~200μm、更に好ましくは5μm~100μm程度である。
以上のように作製された膜電極接合体は、触媒層に炭素繊維を含有することに起因して、触媒層内を貫通する空孔の割合が増大し、ガス透過性や排水性を確保したままクラックが抑制されるとともに、繊維長分布が異なる炭素繊維を混在させることで触媒層の厚みを制御できる。よって、この膜電極接合体を用いて製造された単セル若しくは固体高分子形燃料電池は、従来品より高い発電性能を発揮出来る。
[サンプルNo.1]
白金担持カーボン触媒(TEC10EA50E,田中貴金属工業社製)と、水と、1-プロパノールと、高分子電解質である「ナフィオン(登録商標)分散液」(和光純薬工業社製)と、図4に示す繊維長分布を有する第一の炭素繊維(つまり、最頻値が15μmであって、σ1<σ2を満たす炭素繊維)と、を混合し、遊星型ボールミルで30分間分散処理を行い、触媒インクを調製した。
調製した触媒インクを、高分子電解質膜である「ナフィオン211(登録商標)」(Dupont社製)の両表面にスリットダイコーターを用いて塗布し、80℃の温風オーブンに入れて触媒インクのタックがなくなるまで乾燥させ、実施例1の膜電極接合体を得た。
白金担持カーボン触媒(TEC10EA50E,田中貴金属工業社製)と、水と、1-プロパノールと、高分子電解質である「ナフィオン(登録商標)分散液」(和光純薬工業社製)と、No.1と同じ第一の炭素繊維と、最頻値が10μmであって、σ3<σ4を満たす第二の炭素繊維とを混合し、遊星型ボールミルで30分間分散処理を行い、触媒インクを調製した。その際に、第一の炭素繊維の添加体積を、第一の炭素繊維および第二の炭素繊維の合計体積の95%とした。
第二の炭素繊維としては、カーボンナノファイバー(気相成長炭素繊維)である「VGCF(登録商標)-H」(昭和電工社製)であって、上記繊維長分布を有し、繊維径が10nm~30nmであるものを用いた。
これ以外の点はNo.1と同様の手順で、No.2の膜電極接合体を得た。
第一の炭素繊維の添加体積を、第一の炭素繊維および第二の炭素繊維の合計体積の90%とした以外は、No.2と同様の手順でNo.3の膜電極接合体を得た。
[サンプルNo.4]
第一の炭素繊維の添加体積を、第一の炭素繊維および第二の炭素繊維の合計体積の80%とした以外は、No.2と同様の手順でNo.4の膜電極接合体を得た。
第一の炭素繊維の添加体積を、第一の炭素繊維および第二の炭素繊維の合計体積の70%とした以外は、No.2と同様の手順でNo.5の膜電極接合体を得た。
[サンプルNo.6]
第一の炭素繊維の添加体積を、第一の炭素繊維および第二の炭素繊維の合計体積の60%とした以外は、No.2と同様の手順でNo.6の膜電極接合体を得た。図5のグラフは、このサンプルの触媒層に含まれる炭素繊維の繊維長分布を示す。
第一の炭素繊維の添加体積を、第一の炭素繊維および第二の炭素繊維の合計体積の50%とした以外は、No.2と同様の手順でNo.7の膜電極接合体を得た。
[サンプルNo.8]
第一の炭素繊維の添加体積を、第一の炭素繊維および第二の炭素繊維の合計体積の30%とした以外は、No.2と同様の手順でNo.8の膜電極接合体を得た。
第一の炭素繊維(つまり、最頻値が15μmであって、σ1<σ2を満たす炭素繊維)の代わりに第三の炭素繊維(つまり、最頻値が15μmであって、σ1=σ2を満たす炭素繊維)を使用して、触媒インクを調製した以外は、No.1と同様の手順でNo.9の膜電極接合体を得た。
[サンプルNo.10]
炭素繊維を添加しないで触媒インクを調製した以外は、No.1と同様の手順でNo.10の膜電極接合体を得た。
第一および第二の炭素繊維の含有比調整では、繊維長分布の異なる二種の気相成長炭素繊維を混錬しており、それらの繊維長分布の中心(最頻値)は第二の炭素繊維で約10μm、第一の炭素繊維で15μmである。しかし、調液を繰り返す際、各繊維長分布の中心が正確に10μm及び15μmとなるものではなく、それぞれ8.5μm以上11.5μm以下及び13.5μm以上16.5μm以下程度にばらつきが生じるが、同様に体積比の調整を行うものとした。
このようにして得られた各サンプルの膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池の発電性能と、カソード側の触媒層の厚み(μm)を、以下のようにして測定した。
ガス拡散層としてカーボンクロスを用い、各膜電極接合体の両面にカーボンクロスを配置し、これらを一対のセパレータで挟持することにより、単セル構造の各固体高分子形燃料電池を得た。そして、燃料電池測定装置(東陽テクニカ社製APMT-02)を用い、各固体高分子形燃料電池のI-V特性を計測した。この際、燃料ガスとして純水素を、酸化剤ガスとして空気を、参照電極に可逆水素電極(RHE)を用い、0.5A/cm2出力時の出力電圧を計測した。測定はN=3で実施し、平均値を算出した。
また、各サンプルの触媒層に含まれる炭素繊維中の第一の炭素繊維の比率(含有比)と、発電性能の相対値(性能比)と、の関係を図6のグラフに示す。図6のグラフには、実測値(相対値)の中央値及び誤差範囲が記載してある。
触媒層の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて触媒層の断面を観察して計測した。具体的には、日立ハイテクノロジー社製FE-SEM S-4800を使用して1000倍で観察し、5カ所の観察点における触媒層の厚みを計測して、その平均値を電極触媒層の厚みとした。この値も表1に示す。
その際、触媒層内に含有される炭素繊維が全て第三の炭素繊維である膜電極接合体を用いた場合(No.9)を基準とし、基準よりも触媒層の厚みが小さかった場合に、膜電極接合体が嵩張ることを抑制できる効果が認められるものと判断した。
高分子電解質膜に、各サンプルの触媒インクを塗工・乾燥して触媒層を形成した後に、反射光及び透過光による触媒層の目視検査を行った。
その結果、触媒層内に炭素繊維を含まない膜電極接合体を用いた場合(No.10)には多くのクラックが生じていたが、サンプルNo.1~9の膜電極接合体は、No.10との比較において、全てクラックが減少していることが確認できた。
さらに、触媒層内に繊維長分布が異なる第一の炭素繊維および第二の炭素繊維(最頻値が10μmであって、σ3<σ4を満たす炭素繊維)が混在し、第一の炭素繊維が炭素繊維全体の60体積%以上である膜電極接合体を用いることで、触媒層にクラックを抑制することができるとともに、固体高分子形燃料電池の発電性能を特に高くすることができ、膜電極接合体が嵩張ることを抑制できる効果が高いことが分かる。
したがって、本発明は、固体高分子形燃料電池を利用した、定置型コジェネレーションシステムや燃料電池自動車等に好適に用いることができるため、産業上の利用価値が大きい。
2・・・アノード触媒層
3・・・カソード触媒層
4・・・ガスケット
5・・・ガス拡散層
8・・・ガス流路
9・・・冷却水流路
10・・・セパレータ
11・・・固体高分子形燃料電池
12・・・膜電極接合体
13・・・単位セル
21・・・触媒
22・・・炭素粒子
23・・・高分子電解質
24・・・炭素繊維
31・・・第一の炭素繊維の繊維長分布で繊維長が最頻値よりも長い領域
32・・・第一の炭素繊維の繊維長分布で繊維長が最頻値よりも短い領域
41・・・第二の炭素繊維の繊維長分布で繊維長が最頻値よりも長い領域
42・・・第二の炭素繊維の繊維長分布で繊維長が最頻値よりも短い領域
201・・・アノード触媒層の表面(高分子電解質膜とは反対側の面)
301・・・カソード触媒層の表面(高分子電解質膜とは反対側の面)
Claims (6)
- 固体高分子形燃料電池の膜電極接合体を構成する触媒層であって、
炭素粒子、前記炭素粒子に担持された触媒、高分子電解質、および繊維状物質を含み、
前記繊維状物質として第一の繊維状物質を含み、
前記第一の繊維状物質の繊維長分布は、横軸を繊維長、縦軸を体積としたヒストグラムで、繊維長が最頻値よりも長い領域での第一標準偏差σ1と、繊維長が前記最頻値よりも短い領域における第二標準偏差σ2と、の関係が、σ1<σ2を満たし、
前記第一の繊維状物質の繊維長は0.1~200μmであり、
前記第一の繊維状物質の繊維長の最頻値は、13.5μm以上16.5μm以下である触媒層。 - 前記繊維状物質として第二の繊維状物質をさらに含み、
前記第二の繊維状物質の繊維長分布は、横軸を繊維長、縦軸を体積としたヒストグラムで、繊維長が最頻値よりも長い領域での第三標準偏差σ3と、繊維長が前記最頻値よりも短い領域における第四標準偏差σ4と、の関係が、σ3<σ4を満たし、
前記第二の繊維状物質の繊維長は0.1~200μmであり、
前記第二の繊維状物質の繊維長の最頻値は、前記第一の繊維状物質の繊維長の最頻値より短い領域に存在し、
前記第一の繊維状物質の体積は、前記第一の繊維状物質と前記第二の繊維状物質との合計体積の60%以上を占める請求項1記載の触媒層。 - 前記第一の繊維状物質は、電子伝導性繊維およびプロトン伝導性繊維の少なくともいずれかである請求項1または2記載の触媒層。
- 前記第一の繊維状物質は電子伝導性繊維であり、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、および遷移金属含有繊維から選択される少なくとも一種である請求項3記載の触媒層。
- 高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の両面にそれぞれ配置されたアノード側触媒層およびカソード側触媒層と、を有する膜電極接合体であって、
前記アノード側触媒層および前記カソード側触媒層の少なくともいずれかが、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の触媒層である膜電極接合体。 - 請求項5記載の膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池。
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