JP7225691B2 - 膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池 - Google Patents

膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池に関する。
近年、環境問題やエネルギー問題の有効な解決策として、燃料電池が注目を浴びている。燃料電池とは、水素などの燃料を酸素などの酸化剤を用いて酸化し、これに伴う化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。
燃料電池は、電解質の種類によって、アルカリ形、リン酸形、高分子形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形などに分類される。高分子形燃料電池(PEFC)は、低温作動、高出力密度であり、小型化・軽量化が可能であることから、携帯用電源、家庭用電源、車載用動力源としての応用が期待されている。
固体高分子形燃料電池(PEFC)は、電解質膜である高分子電解質膜を燃料極(アノード)と空気極(カソード)とで挟んだ構造となっており、燃料極側に水素を含む燃料ガス、空気極側に酸素を含む酸化剤ガスを供給することで、下記の電気化学反応により発電する。
アノード:H → 2H+ + 2e- ・・・(1)
カソード:1/2O + 2H+ + 2e- → HO ・・・(2)
アノード及びカソードは、それぞれ触媒層とガス拡散層の積層構造からなる。アノード触媒層に供給された燃料ガスは、触媒によりプロトンと電子となる(反応1)。プロトンは、アノード触媒層内の高分子電解質、高分子電解質膜を通り、カソードに移動する。電子は、外部回路を通り、カソードに移動する。カソード触媒層では、プロトンと電子と外部から供給された酸化剤ガスが反応して水を生成する(反応2)。このように、電子が外部回路を通ることにより発電する。
現在、燃料電池の低コスト化に向けて、高出力特性を示す燃料電池が望まれている。
しかし、燃料電池は、高出力運転においては多くの生成水が発生するため、触媒層やガス拡散層に水が溢れ、ガスの供給が妨げられるフラッティングが生じる。このことにより、燃料電池の出力が著しく低下する課題がある。この出力低下は、高電流密度域での運転を行う場合、特に生成水が発生しやすくなるため、問題となっている。また、この生成水により、触媒層のカーボンが酸化され耐久性能が低下する問題も抱えている。
上記課題に対し、特許文献1、2では、異なる粒子径のカーボン又はカーボン繊維を含む触媒層が提案されている。
特開平10-241703号公報 特許第5537178号公報
特許文献1、2の構成では、異なるカーボン材料を含むことにより触媒層内に空孔が生じ、排水性やガス拡散性の向上が期待できる。しかし、カーボン材料の大きさ、形状や含有量についての記載はあるが、触媒層の構造についての記載がなく、その効果については具体的には検証されてはいない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、排水性やガス拡散性が向上でき、高出力が可能な膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池を提供することを目的とする。また、本発明では、排水性が高いことで、水によるカーボン材料の劣化も低減することができるため、耐久性能の向上も可能となる。
課題を解決するため、本発明の一態様は、高分子電解質膜と、上記高分子電解質膜の両面にそれぞれ配置された触媒層と、を有する膜電極接合体であって、上記触媒層は、触媒、炭素粒子、高分子電解質、及び繊維状物質を含み、上記触媒層の上記高分子電解質膜とは反対側の面の水に対する接触角が115°以上であることを要旨とする。
本発明の一態様によれば、高電流密度域での運転においても、生成水の排水性やガス拡散性が向上でき、高出力で高耐久の高分子形燃料電池用の膜電極接合体、更には、固体高分子形燃料電池を提供することが出来る。
本発明の実施形態に係る触媒層の構成例を示す断面図である。 本発明の実施形態に係る膜電極接合体の構成例を示す断面図である。 本発明の実施形態に係る固体高分子形燃料電池の構成例を示す概略図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、本発明は、以下に記載する各実施の形態に限定されうるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれるものである。また、各図面は、理解を容易にするため適宜誇張して表現している。
まず、本発明の一実施形態が適用されうる電極層及び膜電極接合体を使用した、固体高分子形燃料電池について説明する。
図3は、本実施形態の固体高分子形燃料電池11を示す概略図である。図3に示されるように、本実施形態にかかる固体高分子形燃料電池11は、高分子電解質膜1の両面にアノード触媒層2及びカソード触媒層3を有し、アノード触媒層2及びカソード触媒層3の外周に枠状のガスケット4を具備した膜電極接合体12を備え、アノード触媒層2及びカソード触媒層3と対向してガス拡散層5が配置された構成からなる。また、本実施形態の固体高分子形燃料電池11は、ガス拡散層5の外側にセパレータ10を備える。セパレータ10は、導電性を有し、かつ不透過性の材料よりなる。該セパレータ10には、ガス流通用のガス流路8と、該ガス流路8の形成された面と相対する主面に冷却水流通用の冷却水流路9が形成されてなる。図3に示されるように、セパレータ10はガス拡散層5に隣接し、膜電極接合体12を挟持するよう配置される。
アノード触媒層2側のセパレータ10のガス流路8からは燃料ガスが供給される。燃料ガスとしては、例えば水素ガスが挙げられる。カソード触媒層3側のセパレータ10のガス流路8からは、酸化剤ガスが供給される。酸化剤ガスとしては、例えば空気などの酸素を含むガスが供給される。
図3に示すように、本実施形態の固体高分子形燃料電池11は、1組のセパレータ10に、高分子電解質膜1と、アノード触媒層2と、カソード触媒層3と、ガスケット4と、ガス拡散層5とが挟持された、いわゆる単セル構造の固体高分子形燃料電池である。しかしながら、本実施の形態では、セパレータ10を介して複数のセルを直列に積層したスタック構造を採用することも出来る。
図1に示すように、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係る高分子形燃料電池用触媒層2、3は、触媒21、炭素粒子22、高分子電解質23及び炭素繊維24からなり、触媒層表面(即ち、高分子電解質膜1と接していない側の面)の水の接触角が115°以上となっている。
触媒層2、3表面の水の接触角が上記の範囲にあると、固体高分子形燃料電池11の出力を向上させることが出来る。
上述したように、固体高分子形燃料電池11では燃料ガス及び酸化剤ガスが持続的に供給されるため、ガスを触媒層の深奥部まで充分に侵入させることにより反応点を増やすことが出来る。しかし、高出力運転時には発生した生成水で触媒層2、3が満たされ、ガスの供給が妨げられるフラッティングが生じる。したがって発電性能を高めるには発生した生成水を触媒層外(ガス拡散層5側)へ効率的に排出する必要がある。本発明者は触媒層2、3外へ生成水を効率的に排出する方法として触媒層2、3表面の状態を検討した。すなわち、触媒層2、3表面の状態(=水の接触角)が一定以上であることで、ガス拡散層5へ一度排出された生成水が再度触媒層に戻ることを抑制できることを見出した。結果、触媒層2、3の排水性を確保し、高分子形燃料電池の効率低下を抑制できる。加えて、触媒層中の炭素粒子22の生成水による酸化が引き起こす耐久性能低下も抑制可能である。
ここで、炭素繊維24を含まず、触媒、炭素粒子、高分子電解質のみからなる触媒層の場合、触媒層表面の接触角を大きくすると、激しいクラックが誘発されて触媒層の形成が困難になるなど、好ましくない。
しかしながら、本実施形態のように、触媒層2、3に炭素繊維24を含有させることで、触媒層2、3の構造的な強度が増し、触媒層2、3の表面の接触角を大きくしてもクラックを抑制することが可能となる。 また、高分子電解質膜1表面(触媒層と接する面)における水の接触角は、触媒層2、3の表面における水の接触角よりも小さいことが好ましい。本条件を満たすことにより、触媒層2、3で生成した水により高分子電解質膜1を保水することができるので、高分子電解質膜1の表面が乾くことによる発電性能の低下を抑制できる。より好ましくは、高分子電解質膜1の表面の水接触角が90°以上100°未満である。
本実施形態に係る膜電極接合体12の断面図を、図2に示す。触媒層2、3表面の水の接触角が上記の範囲になっていれば、触媒層2、3は単層でも良いし、複層構造でも良い。
触媒層2、3を複層構造にする場合、各層における触媒21、炭素粒子22、高分子電解質23、炭素繊維24、溶媒等の組成は同じであっても良いし、互いに異なっていても良い。
また、膜電極接合体12に対し、アノード触媒層2及びカソード触媒層3と対向してガス拡散層5が配置されていてもよい。
ガス拡散層5は、撥水性を有することが好ましい。
その理由は、カソード触媒層5で生成した水がガス拡散層5に留まることで、ガス拡散層が目詰まりし、ガス供給が阻害され、発電性能、ひいては耐久性能の低下が発生するため、ガス拡散層5には撥水性を有することが好ましい。
触媒21としては、白金族元素の他、金属又はこれらの合金、又は酸化物、複酸化物等が使用できる。白金族元素としては、白金やパラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムが挙げられる。金属としては、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどが挙げられる。又はその中でも、触媒21としては、白金や白金合金が好ましい。また、これらの触媒の粒径は、大きすぎると触媒の活性が低下し、小さすぎると触媒の安定性が低下するため、0.5nm以上20nm以下が好ましい。更に好ましくは、1nm以上5nm以下が良い。
炭素粒子22としては、微粒子状で導電性を有し、触媒におかされないものであれば特に限定は無い。炭素粒子22としては、例えば、カーボンブラック(アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等)、グラファイト、黒鉛、活性炭、フラーレン等が挙げられる
炭素粒子22の粒径は、小さすぎると電子伝導パスが形成されにくくなり、また大きすぎると触媒層が厚くなり抵抗が増加することで、出力特性が低下したりするので、10nm以上1000nm以下が好ましい。更に好ましくは、10nm以上100nm以下が良い。
高表面積の炭素粒子に触媒21を担持することで、高密度で触媒21が担持でき、触媒活性を向上させることができる。
高分子電解質23としては、プロトン伝導性を有する樹脂成分であれば特に限定は無く、なかでもフッ素系高分子電解質若しくは炭化水素系高分子電解質が好適に用いられる。
フッ素系高分子電解質23としては、例えば、デュポン社製Nafion(登録商標)等を用いることができる。
炭化水素系高分子電解質としては、例えば、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等の電解質を用いることができる。
また、高分子電解質23としては、触媒層2、3と高分子電解質膜1との密着性の観点から、高分子電解質膜1と同質の材料を選択することが好ましい。
高分子電解質膜1の平均厚みは、例えば1μm以上500μm以下、好ましくは3μm以上200μm以下、更に好ましくは5μm以上100μm以下である。
炭素繊維24としては、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブが使用できる。
炭素繊維24の繊維径としては、0.5nm以上500nm以下が好ましく、10nm以上300nm以下がより好ましい。上記範囲にすることにより、触媒層2、3表面の水の接触角を増加させることができ、高出力化が可能になる。
炭素繊維の繊維長は1μm以上200μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましい。上記範囲にすることにより、触媒層の強度を高めることができ、形成時にクラックが生じることを抑制できる。また、触媒層表面の水の接触角を増加させることができ、高出力化、高耐久化が可能になる。
触媒層の強度確保には必要な炭素繊維24が炭素粒子22に対し、質量比で1:3以上であることが好ましい。
(触媒層の製造方法)
本実施形態の高分子形燃料電池用の触媒層2、3は、触媒層用スラリーを作製し、基材又はガス拡散層に塗工・乾燥した後、高分子電解質膜へ触媒層を熱圧着することで製造できる。
触媒層用スラリーは、触媒21、炭素粒子22、高分子電解質23、炭素繊維24及び溶媒からなる。
触媒層用スラリーの溶媒としては、高分子電解質23と触媒21を溶解又は分散できるものであれば特に限定はない。
溶媒は、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、3-ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、ジアセトンアルコール、1-メトキシ-2-プロパノールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等が挙げられ、単独若しくは複数種を組み合わせて使用できる。
また、触媒層用スラリー(触媒インク)に用いられる溶媒は加熱によって除去しやすいものが好ましく、特に沸点が150℃以下のものが好適に用いられる。
触媒層用スラリー中の溶質(導電性粒子、触媒粒子、高分子電解質)の濃度は、例えば、1質量%以上80質量%以下、好ましくは5質量%以上60質量%以下、更に好ましくは10質量%以上40質量%以下で用いられる。
触媒層用スラリーに用いられる高分子電解質23としては、プロトン伝導性を有する樹脂成分であれば特に限定は無く、なかでもフッ素系高分子電解質若しくは炭化水素系高分子電解質が好適に用いられる。
フッ素系高分子電解質としては、例えば、デュポン社製Nafion(登録商標)等を用いることができる。
炭化水素系高分子電解質としては、例えば、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等の電解質を用いることができる。
触媒層用スラリーは、上記の触媒21、炭素粒子22、高分子電解質23、炭素繊維34、溶媒を混合し、分散処理を加えることで作製できる。分散方法としては、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、剪断ミル、湿式ミル、超音波分散、ホモジナイザー等が挙げられる。
触媒層用スラリーを基材上に塗布する手法として、慣用的なコーティング法を用いることが出来る。
具体的なコーティング法として、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーター、スクリーンコーター、スプレー、スピナーなどが挙げられる。
なお、最終的に同様の、触媒層用スラリー(触媒インク)を塗布できるならば、その塗工手段については特に制限は無い。
触媒層用スラリーを基材上に塗布し、加熱によって触媒層用スラリー(触媒インク)中の溶媒を揮発させることによって、所望の触媒層を得ることができる。
触媒層用スラリーの乾燥方法としては、温風乾燥、IR乾燥などが挙げられる。乾燥温度は、40~200℃、好ましくは40~120℃程度である。乾燥時間は、0.5分~1時間、好ましくは1分~30分程度である。
また乾燥工程は、単一の乾燥機構であっても良いし、複数の乾燥機構を組み合わせて使用しても良い。
触媒層用スラリーを乾燥することで得られる触媒層2、3の平均厚みは、例えば0.1μm以上100μm以下、好ましくは0.5μm以上50μm以下、更に好ましくは1μm以上20μm以下である。
転写工程に用いられる基材としては、少なくとも片面に触媒層用スラリーを塗布することができ、加熱によって触媒層を形成でき、形成した触媒層を高分子電解質膜1に転写できるものであれば特に限定はない。
基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリパルバン酸アラミド等の高分子フィルム、若しくはポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等の耐熱性フッ素樹脂フィルムを用いることができる。
またこれらの基材に離型処理したもの、若しくは共押出等により離型層が一体となった複層構造のものを用いても良い。
上記の基材は、同様に使用できるものであれば、シート、フィルム、板、膜、若しくは箔、又はこれらのうち少なくとも1つを粘着、接着、癒着、若しくは貼合したものであっても良い。
基材が複層構造である場合、最表面に位置するフィルムが開口部を有していてもよい。ここでいう開口部とは、断裁や打ち抜き等の手段によりフィルムの一部を取り除いた箇所を指す。
また開口部の形状によって乾燥後の触媒インク(即ち、電極)の形状を成形してもよい。
(膜電極接合体の製造方法)
膜電極接合体12の製造方法としては、転写基材に触媒層2、3を形成し、高分子電解質膜1に熱圧着で触媒層2、3を形成する方法や、高分子電解質膜1に直接、触媒層2、3を形成する方法が挙げられる。高分子電解質膜1に直接、触媒層2、3を形成する方法は、高分子電解質膜1と触媒層2、3との密着性が高く、触媒層2、3が潰れる恐れがないため、好ましい。
ガスケット4に用いられる部材としては、少なくとも片面に粘着材を塗布若しくは貼合することができ、高分子電解質膜1に貼合で切るものであれば特に限定は無い。
ガスケット4に用いられる部材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリパルバン酸アラミド等の高分子フィルム、若しくはポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等の耐熱性フッ素樹脂フィルムを用いることができる。
またこれらの基材に離型処理したもの、若しくは共押出等により離型層が一体となった複層構造のものを用いても良い。
上記の部材は、同様に使用できるものであれば、シート、フィルム、板、膜、若しくは箔、又はこれらのうち少なくとも1つを粘着、接着、癒着、若しくは貼合したものであっても良い。
ガスケット4の平均厚みは、例えば1μm以上500μm以下、好ましくは3μm以上200μm以下、更に好ましくは5μm以上100μm以下である。
ガス拡散層5に用いられる部材としては、ガス拡散層基材及び微細多孔質層からなるものが知られている。
ここで、微細多孔質層は、ガス拡散層5と触媒層2、3との間の電気抵抗を下げると共にガスの流れを良くするための中間層として機能し、ガス拡散層の触媒層側に配置される。微細多孔質層は、ガス拡散層基材と共に、ガス拡散層全体と同様に、ガス透過性、排水性に優れていることが要求される。そのため、微細多孔質層は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの撥水性のフッ素系樹脂をバインダとして用いるのが一般的である。
以上のように作製した膜電極接合体は、触媒層表面の表面粗さが大きいことに起因して空孔率が増大し、ガス透過性や排水性を確保したままクラックを抑制し、これを用いて製造された単セル若しくは固体高分子形燃料電池は従来より高い発電性能を発揮出来る。
以下、本発明に基づく実施例に係る膜電極接合体と比較例に係る膜電極接合体について説明する。
[実施例1]
実施例1では、白金担持カーボン触媒(TEC10E50E、田中貴金属工業社製)と水と1-プロパノールと高分子電解質(ナフィオン(登録商標)分散液、和光純薬工業社製)とカーボンナノファイバー(VGCF-H(登録商標)、昭和電工社製)とを混合し、遊星型ボールミルで30分間分散処理を行い、触媒インク(触媒層用スラリー)を調製した。触媒インクにおける組成比(質量比)は、触媒インク中の揮発成分(水、アルコール)と残りの不揮発成分の比率を1:1、不揮発成分中の高分子電解質と白金担持カーボン触媒中のカーボンの比率を1:1、カーボンナノファイバーと上記カーボンの比を1:1となるように調整した。
調整した触媒インクを、高分子電解質膜(ナフィオン211(登録商標)、Dupont社製)の両表面にスリットダイコーターを用いて塗布し、80℃の温風オーブンに入れて触媒インクのタックがなくなるまで乾燥させ、実施例1の膜電極接合体を得た。
[実施例2]
実施例2では、カーボンナノファイバー量を1.5倍とした以外は、上記実施例1と同様にして、実施例2の膜電極接合体を得た。
[比較例1]
比較例1では、カーボンナノファイバー量を0.25倍とした以外は、上記実施例1と同様の手順で比較例1の膜電極接合体を得た。
[比較例2]
比較例2では、炭素繊維を添加せずに、実施例1と同様にして調整した触媒インクを、PTFEフィルムの表面にスリットダイコーターを用いて塗布し、100℃の温風オーブンに入れて触媒インクのタックがなくなるまで乾燥させ、触媒層付き基材を得た。カソード触媒層とアノード触媒層とを、高分子電解質膜(ナフィオン211(登録商標)、Dupont社製)の両面それぞれに対向するように配置し、この積層体を120℃、5MPaの条件でホットプレスして接合した後にPTFEフィルムを剥離することで、比較例2の膜電極接合体を得た。
以下、実施例1、2の膜電極接合体及び比較例1、2の膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池の、カソード側の触媒層表面における水の接触角と、発電性能及び耐久性能を比較した結果を説明する。
[接触角の計測]
上記の手法で作製した膜電極接合体の、カソード側の触媒層表面における水の接触角は、接触角計を用いて計測した。具体的には、協和界面科学社製「PCA-1」を使用し、純水を用いて触媒層表面に水が着滴して1秒後を測定し、一般的なθ/2法にて算出した。
触媒層表面に接触した水の液滴の半径rと高さhを求め、下式(3)及び(4)に代入して接触角を求めた。
ここで、θ/2法は、液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度θ1を求め、これを2倍することでも接触角θを求めることができる。
tanθ1 =h/r ・・・(3)
θ =2・arctan(h/r) ・・・(4)
[発電性能、耐久性能の測定]
発電性能の測定には、膜電極接合体の両面にガス拡散層及びガスケット、セパレータを配置し、所定の面圧となるように締め付けたセルを評価用単セルとして用いた。そして、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の刊行している小冊子である「セル評価解析プロトコル」に記載のI-V測定、電位サイクル(起動停止)試験を実施した。
[比較結果]
実施例1~3の膜電極接合体及び比較例1、2の膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池の、カソード側の触媒層表面における水の接触角と、発電性能、耐久性能を表1に示す。
発電性能については、電流密度1.0A/cm2のときの電圧が0.6V以上である場合を「○」、0.6V未満である場合を「×」とした。
耐久性能については、60,000サイクル終了時に触媒のECA(電気化学的有効表面積)が初期値の50%以上である場合を「○」、50%以下である場合を「×」とした。
Figure 0007225691000001
表1から分かるように、触媒層表面の水の接触角が115°以上の膜電極接合体である実施例1、2では、高い発電性能を発揮していた。
本発明によれば、固体高分子形燃料電池の高電流密度域での運転において問題となるフラッディング現象を回避するのに必要十分な排水性及びガス拡散性を有し、高い発電性能と耐久性能を発揮することが可能な触媒層、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池を提供することができる。したがって、本発明は、固体高分子形燃料電池を利用した、定置型コジェネレーションシステムや燃料電池自動車等に好適に用いることができ、産業上の利用価値が大きい。
1・・・高分子電解質膜
2・・・アノード触媒層
3・・・カソード触媒層
4・・・ガスケット
5・・・ガス拡散層
8・・・ガス流路
9・・・冷却水流路
10・・・セパレータ
11・・・固体高分子形燃料電池
12・・・膜電極接合体
21・・・触媒
22・・・炭素粒子
23・・・高分子電解質
24・・・炭素繊維

Claims (9)

  1. 高分子電解質膜と、上記高分子電解質膜の両面にそれぞれ配置された触媒層と、を有する膜電極接合体であって、
    上記触媒層は、触媒、炭素粒子、高分子電解質、及び繊維状物質を含み、
    上記触媒層の上記高分子電解質膜とは反対側の面の水に対する接触角が115°以上であり、
    上記繊維状物質は、炭素繊維であり、
    上記触媒層に含まれる上記炭素繊維の合計質量は、上記触媒層に含まれる上記炭素粒子の合計質量以上であることを特徴とする膜電極接合体。
  2. 上記触媒層の上記高分子電解質膜とは反対側の面側に、撥水性を有するガス拡散層を備えることを特徴とする請求項1に記載した膜電極接合体。
  3. 上記触媒層の接触角よりも、上記高分子電解質膜の上記触媒層と接する面における水に対する接触角が小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した膜電極接合体。
  4. 上記高分子電解質膜の接触角が90°以上100°未満であることを特徴とする請求項3に記載した膜電極接合体。
  5. 上記繊維状物質は、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーであることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載した膜電極接合体。
  6. 上記炭素繊維と上記炭素粒子との質量比(炭素繊維:炭素粒子)は、1:1~1.5:1であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載した膜電極接合体。
  7. 上記炭素繊維の繊維径は、0.5nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載した膜電極接合体。
  8. 上記炭素繊維の繊維径は、10nm以上300nm以下であることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載した膜電極接合体。
  9. 請求項1~請求項のいずれか一項に記載の膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池。
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