JP2022134588A - 膜電極接合体、および、固体高分子形燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】電極触媒層におけるクラックの発生を抑えることが可能であり、かつ、安定して高い発電性能を得ることができる膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を提供する。【解決手段】膜電極接合体10は、高分子電解質膜11と、高分子電解質膜11を挟んで当該高分子電解質膜11の面に接する一対の電極触媒層12A,12Cと、一対の電極触媒層12A,12Cの各々に積層されたガス拡散層13A,13Cと、を備える。電極触媒層12A,12Cは、触媒物質、炭素粒子、高分子電解質の凝集体、および、繊維状物質を含み、ガス拡散層13A,13Cにおける厚さ方向の透気抵抗度を示すガーレー値は、1.0秒以上3.0秒以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、膜電極接合体、および、固体高分子形燃料電池に関する。
環境問題やエネルギー問題の解決に寄与する電池として、燃料電池が注目されている。燃料電池は、水素等の燃料と酸素等の酸化剤との化学反応を利用して、電力を生成する。燃料電池のなかでも、固体高分子形燃料電池は、低温での作動や小型化が可能であるため、携帯用電源、家庭用電源、車載用電源等としての利用が期待されている。
固体高分子形燃料電池は、アノードである燃料極と、カソードである空気極と、燃料極と空気極との間に挟まれた高分子電解質膜とを有する膜電極接合体を備えている。燃料極と空気極との各々は、電極触媒層とガス拡散層との積層体を備えている。燃料極には、水素を含む燃料ガスが供給され、空気極には、酸素を含む酸化剤ガスが供給される。その結果、燃料極と空気極とにおいて下記(式1)および(式2)に示す電極反応が生じ、電力が生じる。
燃料極:H → 2H + 2e ・・・(式1)
空気極:1/2O+ 2H+ 2e→ HO ・・・(式2)
すなわち、式1が示すように、燃料極に供給された燃料ガスから、電極触媒層が含む触媒の作用によりプロトンと電子とが生じる。プロトンは、電極触媒層と高分子電解質膜とが含む高分子電解質によって伝導され、高分子電解質膜を通って空気極に移動する。電子は、燃料極から外部回路に取り出され、外部回路を通って空気極に移動する。空気極では、式2が示すように、酸化剤ガスと、燃料極から移動してきたプロトンおよび電子とが反応して水が生成される。このように、電子が外部回路を通ることにより電流が生じる(例えば、特許文献1参照)。
一般に、電極触媒層は、白金等の触媒物質を担持した炭素材料と、高分子電解質とを含む。炭素材料は電子の伝導に寄与し、高分子電解質はプロトンの伝導に寄与する。それゆえ、炭素材料と高分子分解質との種類や比率は、固体高分子形燃料電池の発電性能を高めるための重要な因子である。さらに、電極触媒層内でのガスの拡散性や、発電時に生成した水分の排水性の向上も、発電性能の向上に寄与する。
一方、ガス拡散層は、電極触媒層へのガスの供給、電極反応で生じる電子の集電、発電時に生成した水分の排出による電池内の水分量の管理に関わる。それゆえ、ガス拡散層の特性もまた、固体高分子形燃料電池の発電性能を高めるための重要な因子である。
特開2003-115299号公報
ところで、電極触媒層の形成の際の乾燥による収縮等に起因して、電極触媒層にクラックが生じることがある。電極触媒層にクラックが存在すると、膜電極接合体において、クラックの部分から高分子電解質膜が露出する。こうした高分子電解質膜の露出は、膜電極接合体の耐久性の低下や、固体高分子形燃料電池の発電性能の低下を招く。
また、ガス拡散層の電気抵抗も、発電性能に影響を与える因子の1つである。ガス拡散層の電気抵抗は、ガス拡散層の材料や厚さや密度等によって変わる。特に、ガス拡散層の厚さについては、ガス拡散層内でばらつきが生じることや、燃料電池の駆動中に、膜電極接合体の保水状態に応じて変動することが起こり得る。そのため、ガス拡散層の電気抵抗が発電性能に与える影響が大きいと、発電性能の安定性が得られ難くなる。
上記課題を解決するための膜電極接合体は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜を挟んで当該高分子電解質膜の面に接する一対の電極触媒層と、前記一対の電極触媒層の各々に積層されたガス拡散層と、を備え、前記電極触媒層は、触媒物質、炭素粒子、高分子電解質の凝集体、および、繊維状物質を含み、前記ガス拡散層における厚さ方向の透気抵抗度を示すガーレー値が、1.0秒以上3.0秒以下である。
上記構成によれば、電極触媒層が繊維状物質を含むため、電極触媒層の強度が高められて、クラックの発生が抑えられる。また、ガス拡散層における透気性が十分に高く、ガスの拡散性および排水性が十分に得られるため、ガス拡散層の電気抵抗が燃料電池の発電性能に与える影響を小さく抑えられる。したがって、電気抵抗のムラに関わらず、安定した発電性能が得られる。
上記構成において、前記繊維状物質は、プロトン伝導性を有する高分子電解質繊維、および、炭素繊維の少なくとも一方を含んでもよい。
上記構成によれば、繊維状物質が高分子電解質繊維を含むことにより、電極触媒層におけるプロトン伝導性が高められる。一方、繊維状物質が炭素繊維を含むことにより、電極触媒層における電子伝導性が高められる。
上記構成において、前記炭素繊維を構成する炭素材料が、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、および、カーボンナノチューブのいずれかであってもよい。
上記構成によれば、電極触媒層の電子伝導性が好適に高められる。
上記構成において、前記繊維状物質の平均繊維径が0.1μm以下であり、前記繊維状物質の平均繊維長が1μm以上200μm以下であってもよい。
上記構成によれば、繊維状物質が、電極触媒層に含有させることに適した細さとなる。また、電極触媒層中において繊維状物質の絡み合う構造が好適に形成されるため、電極触媒層の強度が高められ、クラックの発生を抑える効果が高められる。
上記構成において、前記繊維状物質は、プロトン伝導性を有する高分子電解質繊維を含み、前記電極触媒層が含む前記高分子電解質繊維の質量が、前記電極触媒層が含む前記炭素粒子の質量の0.01倍以上0.3倍以下であってもよい。
上記構成によれば、電極触媒層におけるプロトンの伝導が促進されるため、固体高分子形燃料電池の出力の向上が可能である。
上記構成において、前記触媒物質は粒子状であり、その平均粒径が0.5nm以上20nm以下であってもよい。
上記構成によれば、触媒の安定性および活性が高められる。
上記構成において、前記炭素粒子の平均粒径が10nm以上1000nm以下であってもよい。
上記構成によれば、電極触媒層中に電子伝導のパスが形成されやすくなる。また、抵抗が過大にならない程度に電極触媒層を薄く形成できるため、燃料電池の出力の低下が抑えられる。
上記課題を解決するための固体高分子形燃料電池は、上記膜電極接合体と、前記膜電極接合体を挟む一対のセパレータと、を備える。
上記構成によれば、安定して高い発電性能が得られる。
本発明によれば、電極触媒層におけるクラックの発生を抑えることが可能であり、かつ、安定して高い発電性能を得ることができる。
膜電極接合体の一実施形態について、膜電極接合体の断面構造を示す図。 一実施形態の電極触媒層の第1の構成を模式的に示す図。 一実施形態の電極触媒層の第2の構成を模式的に示す図。 一実施形態の固体高分子形燃料電池の斜視構造を分解して示す図。
図1~図4を参照して、膜電極接合体、および、固体高分子形燃料電池の一実施形態を説明する。
[膜電極接合体]
図1~図3を参照して、膜電極接合体の構成を説明する。
図1が示すように、膜電極接合体10は、高分子電解質膜11、一対の電極触媒層、および、一対のガス拡散層を備えている。一対の電極触媒層は、燃料極触媒層12Aおよび空気極触媒層12Cである。一対のガス拡散層は、燃料極拡散層13Aおよび空気極拡散層13Cである。
高分子電解質膜11は、燃料極触媒層12Aと空気極触媒層12Cとの間に挟まれている。燃料極触媒層12Aは、高分子電解質膜11が有する2つの面の一方に接触し、空気極触媒層12Cは、高分子電解質膜11が有する2つの面の他方に接触している。
燃料極拡散層13Aは、燃料極触媒層12Aに積層され、空気極拡散層13Cは、空気極触媒層12Cに積層されている。言い換えれば、高分子電解質膜11と燃料極触媒層12Aと空気極触媒層12Cとの積層体が、燃料極拡散層13Aと空気極拡散層13Cとの間に挟まれている。
燃料極触媒層12Aと燃料極拡散層13Aとは、固体高分子形燃料電池のアノードである燃料極を構成する。空気極触媒層12Cと空気極拡散層13Cとは、固体高分子形燃料電池のカソードである空気極を構成する。
高分子電解質膜11が有する一方の面と対向する位置から見たとき、燃料極触媒層12A、空気極触媒層12C、燃料極拡散層13A、空気極拡散層13Cの外形はほぼ同形である。そして、これらの触媒層12A,12Cおよび拡散層13A,13Cの外形よりも、高分子電解質膜11の外形は大きい。高分子電解質膜11の外形や触媒層12A,12Cおよび拡散層13A,13Cの外形の形状は特に限定されず、例えば、矩形であればよい。
高分子電解質膜11は高分子電解質を含む。高分子電解質膜11に用いられる高分子電解質は、プロトン伝導性を有する高分子電解質であればよく、例えば、フッ素系高分子電解質や炭化水素系高分子電解質であればよい。フッ素系高分子電解質の一例は、Nafion(登録商標:デュポン社製)、Flemion(登録商標:旭硝子社製)、Aciplex(登録商標:旭化成社製)、Aquivion(登録商標:ソルベイ社製)である。炭化水素系高分子電解質の一例は、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン、スルホン化ポリイミド、酸ドープ型ポリベンゾアゾール類等である。
図2は、本実施形態の電極触媒層の第1の構成を模式的に示す。図2が示すように、燃料極触媒層12Aと空気極触媒層12Cとの各々は、触媒物質21と、炭素粒子22と、高分子電解質の凝集体23と、繊維状の高分子電解質である高分子電解質繊維24とを含む。触媒層12A,12Cにおいては、分散した炭素粒子22の周囲に凝集体23や高分子電解質繊維24が位置し、かつ、これらの構成物の間に空孔Hlが形成されている。
触媒物質21としては、例えば、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素や、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属や、これらの合金、酸化物、複酸化物等が用いられる。特に、触媒物質21は、白金または白金合金であることが好ましい。触媒物質21は粒子状であって、その平均粒径は、0.5nm以上20nm以下であることが好ましく、1nm以上5nm以下であることがさらに好ましい。触媒物質21の平均粒径が上記下限値以上であれば、触媒としての安定性が高められ、触媒物質21の平均粒径が上記上限値以下であれば、触媒としての活性が高められる。
炭素粒子22は、微粒子状で導電性を有し、触媒に侵されない担体であればよい。炭素粒子22として用いられる炭素材料は、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ、フラーレン等からなる粉末状の炭素材料である。炭素粒子22の平均粒径は、10nm以上1000nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下であることがより好ましい。炭素粒子22の平均粒径が上記下限値以上であれば、電極触媒層中に電子伝導のパスが形成されやすく、炭素粒子22の平均粒径が上記上限値以下であれば、抵抗が過大にならない程度に電極触媒層を薄く形成できるため、燃料電池の出力の低下が抑えられる。
触媒物質21は、炭素粒子22に担持されていることが好ましい。触媒物質21を担持する炭素材料が粒子状であることにより、炭素材料における触媒物質21を担持可能な面積の増大が可能であり、炭素材料に高密度に触媒物質21を担持させることができる。そのため、触媒活性の向上が可能である。
高分子電解質の凝集体23は、アイオノマーである高分子電解質が凝集力によって凝集した塊である。凝集力は、アイオノマー間に働くクーロン力やファンデルワールス力を含む。高分子電解質繊維24は、架橋等によって細長く延びる形状を構成している高分子電解質である。
凝集体23および高分子電解質繊維24を構成する高分子電解質は、プロトン伝導性を有する高分子電解質であればよく、例えば、フッ素系高分子電解質や炭化水素系高分子電解質であればよい。フッ素系高分子電解質の一例は、Nafion(登録商標:デュポン社製)、Flemion(登録商標:旭硝子社製)、Aciplex(登録商標:旭化成社製)、Aquivion(登録商標:ソルベイ社製)である。炭化水素系高分子電解質の一例は、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン、スルホン化ポリイミド、酸ドープ型ポリベンゾアゾール類等である。
凝集体23を構成する高分子電解質と、高分子電解質繊維24を構成する高分子電解質とは、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、凝集体23および高分子電解質繊維24の各々を構成する高分子電解質と、高分子電解質膜11を構成する高分子電解質とは、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。触媒層12A,12Cと高分子電解質膜11との密着性を高めるためには、触媒層12A,12Cが含む高分子電解質と、高分子電解質膜11が含む高分子電解質とは、同種の材料であることが好ましい。
触媒層12A,12Cに高分子電解質繊維24が含まれていることにより、高分子電解質繊維24同士が絡み合って電極触媒層中で支持体として機能するため、触媒層12A,12Cの割れ等が抑えられる。それゆえ、従来のように、電極触媒層が触媒物質21を担持した炭素粒子22と高分子電解質の凝集体23とから構成される場合と比較して、触媒層12A,12Cにクラックが生じることを抑制できる。
高分子電解質繊維24の平均繊維径は、2μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。平均繊維径が上記範囲内であれば、高分子電解質繊維24の繊維径が、触媒層12A,12Cに含有させることに適した細さとなる。
固体高分子形燃料電池の出力の向上のためには、触媒層12A,12Cに供給されるガスが、触媒層12A,12Cの有する空孔Hlを通じて触媒層12A,12C中に適切に拡散されること、および、特に空気極では電極反応により生成される水が空孔Hlを通じて適切に排出されることが望ましい。また、空孔Hlの存在により、ガスと触媒と高分子電解質とが接する界面が形成されやすくなり、電極反応が促進されるため、これによっても固体高分子形燃料電池の出力の向上が可能である。
以上の観点から、触媒層12A,12Cは、的確な大きさおよび量の空孔Hlを有していることが好ましい。高分子電解質繊維24の平均繊維径が1μm以下であれば、電極触媒層において高分子電解質繊維24が絡まり合う構造のなかに十分な間隙が形成されて十分に空孔Hlが確保されるため、燃料電池の出力の向上が可能である。さらに、高分子電解質繊維24の平均繊維径が100nm以上500nm以下であると、燃料電池の出力が特に高められる。
高分子電解質繊維24の平均繊維長は、平均繊維径よりも大きく、1μm以上200μm以下であることが好ましく、1μm以上150μm以下であることがより好ましい。平均繊維長が上記範囲内であれば、触媒層12A,12C中での高分子電解質繊維24の凝集が抑制され、空孔Hlが形成されやすい。また、平均繊維長が上記範囲内であれば、触媒層12A,12C中において高分子電解質繊維24の絡み合う構造が好適に形成されるため、触媒層12A,12Cの強度が高められ、クラックの発生を抑える効果が高められる。
触媒層12A,12Cが含む高分子電解質繊維24の総質量は、触媒層12A,12Cが含む炭素粒子22の総質量の0.01倍以上3.0倍以下であることが好ましい。炭素粒子22と高分子電解質繊維24との質量比が上記範囲内であれば、触媒層12A,12Cにおけるプロトンの伝導が促進されるため、固体高分子形燃料電池の出力の向上が可能である。
図3は、本実施形態の電極触媒層の第2の構成を模式的に示す。図3が示すように、燃料極触媒層12Aと空気極触媒層12Cとの各々は、触媒物質21、炭素粒子22、高分子電解質の凝集体23、および、高分子電解質繊維24に加えて、炭素繊維25を含んでいてもよい。
炭素繊維25は、炭素を構成元素とする繊維状の構造体である。炭素繊維25として用いられる炭素材料は、例えば、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等からなる繊維状の炭素材料である。特に、カーボンナノファイバーもしくはカーボンナノチューブが用いられることが好ましい。
炭素繊維25の平均繊維径は、0.1μm以下であることが好ましい。平均繊維径が0.1μm以下であれば、炭素繊維25の繊維径が、触媒層12A,12Cに含有させることに適した細さとなる。
炭素繊維25の平均繊維長は1μm以上200μm以下であることが好ましい。炭素繊維25の平均繊維長が上記範囲内であれば、触媒層12A,12C中において高分子電解質繊維24および炭素繊維25の絡み合う構造が好適に形成されるため、触媒層12A,12Cの強度が高められ、クラックの発生を抑える効果が高められる。
第2の構成においては、高分子電解質繊維24および炭素繊維25である繊維状物質が絡み合って触媒層12A,12C中で支持体として機能するため、第1の構成と同様に触媒層12A,12Cにクラックが生じることを抑制できる。なお、第2の構成では、炭素繊維25が触媒物質21を担持していてもよい。あるいは、炭素粒子22と炭素繊維25との各々が触媒物質21を担持していてもよい。ただし、炭素粒子22が触媒物質21を担持していれば、炭素繊維25によって形成された隙間が発電によって生成した水の排出経路となって触媒層12A,12Cの排水性が向上するため、好ましい。
なお、触媒層12A,12Cは、繊維状物質として炭素繊維25のみを含み、高分子電解質繊維24を含まなくてもよい。こうした形態であっても、炭素繊維25の絡み合う構造が形成されることにより、クラックの発生を抑えることは可能である。しかしながら、炭素繊維25は電子伝導にのみ寄与し、プロトン伝導に寄与しないため、触媒層12A,12Cの含む繊維状物質が炭素繊維25のみであると、触媒層12A,12Cが含む高分子電解質の割合が小さくなり、触媒層12A,12Cにおけるプロトン伝導性が低下する。高分子電解質の凝集体23を増量することでプロトン伝導性を補うことは可能ではあるが、凝集体23を増量すると、空孔Hlが低減してガスの拡散性や排水性等が低下してしまう。
これに対し、触媒層12A,12Cが含む繊維状物質に高分子電解質繊維24が含まれる形態であれば、繊維状物質が炭素繊維25のみである形態と比較して、空孔Hlを確保しつつ触媒層12A,12Cにおけるプロトンの伝導を促進することができる。
さらに、電極反応で生じた電子の取り出しのためには、触媒層12A,12Cには電子の伝導性も必要である。触媒層12A,12Cが繊維状物質として高分子電解質繊維24と炭素繊維25とを含む形態であれば、触媒層12A,12Cにおけるプロトン伝導性、電子伝導性、空孔Hlの形成状態、これらが好適となることにより、固体高分子形燃料電池の出力の向上が可能である。
なお、高分子電解質繊維24および炭素繊維25の平均繊維径および平均繊維長は、例えば、走査型電子顕微鏡を用いて電極触媒層の断面を観察することによって計測可能である。例えば、平均繊維径は、上記断面における30μm×30μmの大きさの3個以上の測定領域に含まれる各繊維についての繊維ごとの最大径の平均値である。また例えば、平均繊維長は、上記断面における30μm×30μmの大きさの3個以上の測定領域に含まれる各繊維についての繊維ごとの最大長の平均値である。
拡散層13A,13Cとしては、例えば、カーボンクロス、カーボンペーパー、不織布等が用いられる。拡散層13A,13Cには撥水処理が施されていてもよい。拡散層13A,13Cの厚さ方向における透気抵抗度を示すガーレー値は、1.0秒以上3.0秒以下である。特に、拡散層13A,13Cのガーレー値は、1.0秒であることが好ましい。ガーレー値は、単位面積および単位圧力差当たり、規定された体積の空気が透過するのに要する時間であって、100mL当たりの時間で表されるパラメータであり、JIS P8117:2009に規定される測定方法に従って測定される。
拡散層13A,13Cのガーレー値が1.0秒以上3.0秒以下であれば、拡散層13A,13Cにおけるガスの拡散性や水の排出性が的確に得られる。その結果、拡散層13A,13Cにおける電気抵抗の大きさが固体高分子形燃料電池の発電性能に与える影響が小さくなる。したがって、例えば、拡散層13A,13Cの厚さのばらつきや、燃料電池の駆動中における拡散層13A,13Cの厚さの変化に起因して、拡散層13A,13Cの電気抵抗にムラが生じる場合であっても、こうした電気抵抗のムラが発電性能に与える影響を小さく抑えることができる。そのため、固体高分子形燃料電池の発電性能の安定性が高められる。
なお、拡散層13A,13Cは、1つの層から構成されていてもよいし、複数の層から構成されていてもよい。例えば、拡散層13A,13Cは、カーボンクロスやカーボンペーパー等のカーボン基材と、多孔質材料からなる層であるマイクロポーラス層との積層体であってもよい。マイクロポーラス層の材料は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレン-プロペンコポリマー(FEP)、4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂(ETFE)等のフッ素樹脂と、カーボンブラック粒子、カーボン繊維、グラファイトなどカーボン材料との混合物である。
拡散層13A,13Cのガーレー値は、拡散層13A,13Cの材料、厚さ、拡散層13A,13Cに含まれる空隙の割合等によって調整できる。
[固体高分子形燃料電池]
図4を参照して、上述の膜電極接合体10を備える固体高分子形燃料電池の構成を説明する。
図4が示すように、固体高分子形燃料電池30は、膜電極接合体10と、一対のセパレータ31A,31Cとを備えている。さらに、固体高分子形燃料電池30は、一対のガスケット34A,34Cを備えていてもよい。
膜電極接合体10は、セパレータ31Aとセパレータ31Cとの間に挟持されている。セパレータ31A,31Cは、導電性で、かつ、ガス不透過性の材料から形成されている。セパレータ31Aは、燃料極拡散層13Aと向かい合い、セパレータ31Cは、空気極拡散層13Cと向かい合う。セパレータ31Aにて、燃料極拡散層13Aと向かい合う面には、ガス流路32Aが形成され、燃料極拡散層13Aとは反対側の面には、冷却水流路33Aが形成されている。同様に、セパレータ31Cにて、空気極拡散層13Cと向かい合う面には、ガス流路32Cが形成され、空気極拡散層13Cとは反対側の面には、冷却水流路33Cが形成されている。
ガスケット34Aは、高分子電解質膜11とセパレータ31Aとの間で、燃料極触媒層12Aおよび燃料極拡散層13Aの外周を囲む。ガスケット34Cは、高分子電解質膜11とセパレータ31Cとの間で、空気極触媒層12Cおよび空気極拡散層13Cの外周を囲む。ガスケット34A,34Cは、触媒層12A,12Cおよび拡散層13A,13Cに供給されたガスが固体高分子形燃料電池30の外部に漏れることを抑える機能を有する。なお、ガスケット34A,34Cは、膜電極接合体10の構成部材の1つであってもよい。
固体高分子形燃料電池30の使用時には、セパレータ31Aのガス流路32Aに水素等の燃料ガスが流され、セパレータ31Cのガス流路32Cに酸素等の酸化剤ガスが流される。また、各セパレータ31A,31Cの冷却水流路33A,33Cには、冷却水が流される。そして、ガス流路32Aから燃料極に燃料ガスが供給され、ガス流路32Cから空気極に酸化剤ガスが供給されることによって、電極反応が進行し、燃料極と空気極との間に起電力が生じる。なお、燃料極には、メタノール等の有機物燃料が供給されてもよい。
固体高分子形燃料電池30は、図4に示した単セルの状態で用いられてもよいし、複数の固体高分子形燃料電池30が積層されて直列接続されることにより1つの燃料電池として用いられてもよい。
[膜電極接合体の製造方法]
膜電極接合体10の製造方法を説明する。
触媒層12A,12Cは、触媒層12A,12Cの材料を含む触媒層用スラリーを基材に塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥することによって形成される。
触媒層用スラリーは、粉末状の高分子電解質、もしくは、粉末状の高分子電解質が溶解または分散された電解質液と、触媒物質21および炭素粒子22と、高分子電解質繊維24とを溶媒に加えて混合することによって生成される。高分子電解質繊維24は、例えば、エレクトロスピニング法等の利用によって形成される。第2の構成の電極触媒層を形成する場合には、触媒層用スラリーにさらに炭素繊維25が加えられる。
触媒層用スラリーの溶媒は、特に限定されない。溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイゾブチルケトン、メチルアミルケトン、ペンタノン、へプタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトニルアセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、メトキシトルエン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミン、アニリン等のアミン類、蟻酸プロピル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル類、酢酸、プロピオン酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンである。また、グリコール、グリコールエーテル系溶媒の例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等である。
触媒層12A,12Cの形成のための基材としては、例えば、触媒層12A,12Cを高分子電解質膜11に転写した後に剥離される転写基材が用いられる。転写基材は、例えば、樹脂フィルムである。また、触媒層12A,12Cの形成のための基材は、高分子電解質膜11であってもよいし、拡散層13A,13Cであってもよい。
基材への触媒層用スラリーの塗布方法は、特に限定されない。塗布方法は、例えば、ドクターブレード法、ダイコーティング法、ディッピング法、スクリーン印刷法、ラミネータロールコーティング法、スプレー法等である。
基材に塗布された触媒層用スラリーである塗膜の乾燥方法としては、例えば、温風乾燥、IR乾燥等が用いられる。乾燥温度は、40℃以上200℃以下の程度であることが好ましく、40℃以上120℃以下の程度であることがより好ましい。乾燥時間は、0.5分以上1時間以下の程度であることが好ましく、1分以上30分以下の程度であることがより好ましい。
触媒層12A,12Cの形成のための基材が転写基材である場合、熱圧着によって触媒層12A,12Cが高分子電解質膜11に接合された後、転写基材が触媒層12A,12Cから剥離される。そして、高分子電解質膜11上の触媒層12A,12Cに拡散層13A,13Cが圧着される。これにより、膜電極接合体10が形成される。
触媒層12A,12Cの形成のための基材が拡散層13A,13Cである場合、拡散層13A,13Cに支持された触媒層12A,12Cが熱圧着によって高分子電解質膜11に接合されることにより、膜電極接合体10が形成される。
触媒層12A,12Cの形成のための基材が高分子電解質膜11である場合、触媒層12A,12Cが高分子電解質膜11の面上に直接に形成され、その後、触媒層12A,12Cに拡散層13A,13Cが圧着される。これにより、膜電極接合体10が形成される。
触媒層12A,12Cの形成のための基材として、高分子電解質膜11が用いられる製造方法であれば、高分子電解質膜11と触媒層12A,12Cとの密着性が高く得られる。また、触媒層12A,12Cの接合のための加圧が不要であるため、触媒層12A,12Cが潰れることも抑えられる。したがって、触媒層12A,12Cの形成のための基材としては、高分子電解質膜11が用いられることが好ましい。
ここで、高分子電解質膜11は、膨潤および収縮の大きい特性を有するため、高分子電解質膜11を基材として用いると、転写基材や拡散層13A,13Cを基材として用いた場合と比較して、触媒層12A,12Cとなる塗膜の乾燥工程における基材の体積変化が大きい。それゆえ、従来のように電極触媒層が繊維状物質を含まない場合、電極触媒層にクラックが生じやすい。これに対し、本実施形態の触媒層12A,12Cであれば、繊維状物質の含有によりクラックの発生が抑えられるため、触媒層12A,12Cの形成のための基材として高分子電解質膜11を用いる製造方法の利用に適している。
なお、固体高分子形燃料電池30は、膜電極接合体10に、セパレータ31A,31Cが組み付けられ、さらに、ガスの供給機構等が設けられることにより製造される。
[実施例]
上述した膜電極接合体および固体高分子形燃料電池について、具体的な実施例および比較例を用いて説明する。
(実施例1)
触媒物質を担持した炭素粒子として白金担持カーボン(TEC10E50E:田中貴金属工業社製)を用い、20gの白金担持カーボンを水に加えて混合後、高分子電解質繊維(酸ドープ型ポリベンゾアゾール類)、高分子電解質の分散液(Nafion分散液:和光純薬工業社製)、1-プロパノールを加えて撹拌して、触媒層用スラリーを作製した。高分子電解質繊維の平均繊維径は400nmであり、平均繊維長は30μmであった。なお、平均繊維径は一の位を四捨五入した値、平均繊維長は小数第一位を四捨五入した値で示している。
触媒層用スラリー中において、高分子電解質の質量は炭素粒子の質量に対して100質量%、高分子電解質繊維の質量は炭素粒子の質量に対して10質量%、分散媒中の水の割合は50質量%、固形分濃度は10質量%となるように調整した。
触媒層用スラリーを高分子電解質膜(Nafion212:デュポン社製)にダイコーティング法を用いて塗布し、80℃の炉内で乾燥することによって、一対の電極触媒層と高分子電解質膜との積層体を形成した。この積層体を2つのガス拡散層で挟むことにより、実施例1の膜電極接合体を得た。ガス拡散層としては、カーボン基材とマイクロポーラス層との積層体を用いた。ガス拡散層について、ガーレー値は1.0秒であり、電気抵抗は8.0mΩ・cmである。
さらに、膜電極接合体とJARI標準セルとを用いて、実施例1の固体高分子形燃料電池を形成した。
(実施例2)
ガス拡散層を変更したこと以外は、実施例1と同様の材料および工程によって、実施例2の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。実施例2のガス拡散層について、ガーレー値は1.0秒であり、電気抵抗は11.5mΩ・cmである。
(実施例3)
ガス拡散層を変更したこと以外は、実施例1と同様の材料および工程によって、実施例3の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。実施例3のガス拡散層について、ガーレー値は3.0秒であり、電気抵抗は9.8mΩ・cmである。
(比較例1)
ガス拡散層を変更したこと以外は、実施例1と同様の材料および工程によって、比較例1の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。比較例1のガス拡散層について、ガーレー値は4.5秒であり、電気抵抗は11.0mΩ・cmである。
(比較例2)
ガス拡散層を変更したこと以外は、実施例1と同様の材料および工程によって、比較例2の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。比較例2のガス拡散層について、ガーレー値は5.0秒であり、電気抵抗は8.0mΩ・cmである。
(比較例3)
ガス拡散層を変更したこと以外は、実施例1と同様の材料および工程によって、比較例3の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。比較例3のガス拡散層について、ガーレー値は5.0秒であり、電気抵抗は15.0mΩ・cmである。
(比較例4)
ガス拡散層を変更したこと以外は、実施例1と同様の材料および工程によって、比較例4の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。比較例4のガス拡散層について、ガーレー値は17.0秒であり、電気抵抗は10.4mΩ・cmである。
(比較例5)
触媒層用スラリーに高分子電解質繊維を加えないこと以外は、実施例1と同様の材料および工程によって、比較例5の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。
(評価方法)
<クラック>
各実施例および各比較例について、電極触媒層の表面を顕微鏡(倍率:200倍)で観察して、クラックの発生状態を確認した。10μm以上の長さのクラックが生じていた場合を×、10μm以上の長さのクラックが生じていない場合を○とした。
<発電性能>
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の刊行物である「セル評価解析プロトコル」に準拠し、膜電極接合体の両面にガスケットおよびセパレータを配置して所定の圧力がかかるように締め付けたJARI標準セルを評価用単セルとして用いた。そして、「セル評価解析プロトコル」に記載のIV測定を標準条件で実施し、最大の出力密度を求めた。
(評価結果)
表1に、各実施例および各比較例について、ガス拡散層のガーレー値、電気抵抗、クラックおよび発電性能の評価結果を示す。なお、比較例5については、電極触媒層にクラックが発生していたため、発電性能の評価を行わなかった。
Figure 2022134588000002
表1が示すように、電極触媒層が高分子電解質繊維を含む実施例1~3および比較例1~4では、クラックの発生が抑えられていることに対し、電極触媒層が繊維状物質を含んでいない比較例5では、クラックの発生が確認された。したがって、電極触媒層が繊維状物質を含有していることによって、クラックの発生を抑えることが可能であることが確認された。
また、ガーレー値が1.0秒である実施例1と実施例2とを比較すると、電気抵抗に差があっても、同等の発電性能が得られている。さらに、ガーレー値が3.0秒である実施例3でも、実施例1,2と同等の発電性能が得られている。一方で、ガーレー値が5.0秒である比較例2と比較例3とを比較すると、電気抵抗の大きい比較例3の方が、最大出力密度が低く、すなわち発電性能が低い。また、実施例2と比較例1とを比較すると、電気抵抗が同程度であっても、ガーレー値が大きい比較例1の方が、発電性能が低い。そして、ガーレー値が他よりも顕著に大きい比較例4では、電気抵抗は比較例1や比較例3よりも小さいにも関わらず、発電性能が大きく低下している。
これらのことから、ガス拡散層の透気性と電気抵抗とはいずれも発電性能に影響を与えるものの、透気性の影響がより大きいことが示唆される。そして、透気性が十分に大きい場合には、電気抵抗の大きさは発電性能に影響を与え難いことが示唆される。すなわち、ガス拡散層のガーレー値が1.0秒以上3.0秒以下であれば、電気抵抗のばらつきや変動が生じたとしても、安定して高い発電性能が得られることが示された。
以上、実施例を用いて説明したように、上記実施形態の膜電極接合体、および、固体高分子形燃料電池によれば、以下の効果が得られる。
(1)触媒層12A,12Cが繊維状物質を含むため、触媒層12A,12Cの強度が高められて、クラックの発生が抑えられる。また、拡散層13A,13Cのガーレー値が1.0秒以上3.0秒以下であることにより、ガスの拡散性および排水性が十分に得られるため、拡散層13A,13Cの電気抵抗が燃料電池の発電性能に与える影響を小さく抑えることができる。したがって、固体高分子形燃料電池30にて、拡散層13A,13Cの電気抵抗のムラに関わらず、安定した発電性能が得られる。
(2)触媒層12A,12Cが、プロトン伝導性を有する高分子電解質繊維24を含むことにより、触媒層12A,12Cにおけるプロトン伝導性が高められる。一方、触媒層12A,12Cが炭素繊維25を含むことにより、触媒層12A,12Cにおける電子伝導性が高められる。また、炭素繊維25を構成する炭素材料が、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、および、カーボンナノチューブのいずれかであれば、触媒層12A,12Cの電子伝導性が好適に高められる。
(3)繊維状物質の平均繊維径が0.1μm以下であれば、繊維状物質が、触媒層12A,12Cに含有させることに適した細さとなる。また、繊維状物質の平均繊維長が1μm以上200μm以下であれば、触媒層12A,12C中において繊維状物質の絡み合う構造が好適に形成されるため、触媒層12A,12Cの強度が高められ、クラックの発生を抑える効果が高められる。
(4)触媒層12A,12Cが含む高分子電解質繊維24の質量が炭素粒子22の質量の0.01倍以上0.3倍以下であれば、触媒層12A,12Cにおけるプロトンの伝導が促進されるため、固体高分子形燃料電池30の出力の向上が可能である。
(5)触媒物質21の平均粒径が0.5nm以上20nm以下であれば、触媒の安定性および活性が高められる。また、炭素粒子22の平均粒径が10nm以上1000nm以下であれば、触媒層12A,12C中に電子伝導のパスが形成されやすくなるとともに、抵抗が過大にならない程度に触媒層12A,12Cを薄く形成できるため、燃料電池の出力の低下が抑えられる。
10…膜電極接合体
11…高分子電解質膜
12A…燃料極触媒層
12C…空気極触媒層
13A…燃料極拡散層
13C…空気極拡散層
21…触媒物質
22…炭素粒子
23…凝集体
24…高分子電解質繊維
25…炭素繊維
30…固体高分子形燃料電池
31A,31C…セパレータ
34A,34C…ガスケット

Claims (8)

  1. 高分子電解質膜と、
    前記高分子電解質膜を挟んで当該高分子電解質膜の面に接する一対の電極触媒層と、
    前記一対の電極触媒層の各々に積層されたガス拡散層と、を備え、
    前記電極触媒層は、触媒物質、炭素粒子、高分子電解質の凝集体、および、繊維状物質を含み、
    前記ガス拡散層における厚さ方向の透気抵抗度を示すガーレー値が、1.0秒以上3.0秒以下である
    膜電極接合体。
  2. 前記繊維状物質は、プロトン伝導性を有する高分子電解質繊維、および、炭素繊維の少なくとも一方を含む
    請求項1に記載の膜電極接合体。
  3. 前記炭素繊維を構成する炭素材料が、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、および、カーボンナノチューブのいずれかである
    請求項2に記載の膜電極接合体。
  4. 前記繊維状物質の平均繊維径が0.1μm以下であり、前記繊維状物質の平均繊維長が1μm以上200μm以下である
    請求項1~3のいずれか一項に記載の膜電極接合体。
  5. 前記繊維状物質は、プロトン伝導性を有する高分子電解質繊維を含み、
    前記電極触媒層が含む前記高分子電解質繊維の質量が、前記電極触媒層が含む前記炭素粒子の質量の0.01倍以上0.3倍以下である
    請求項1~4のいずれか一項に記載の膜電極接合体。
  6. 前記触媒物質は粒子状であり、その平均粒径が0.5nm以上20nm以下である
    請求項1~5のいずれか一項に記載の膜電極接合体。
  7. 前記炭素粒子の平均粒径が10nm以上1000nm以下である
    請求項1~6のいずれか一項に記載の膜電極接合体。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の膜電極接合体と、
    前記膜電極接合体を挟む一対のセパレータと、
    を備える固体高分子形燃料電池。
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