JP2004342393A - 燃料電池及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】出力特性を大きく向上できるとともに、大電流を長時間にわたって安定に供給することのできる燃料電池を提供すること。
【解決手段】燃料を収容した燃料貯留部と、該燃料貯留部に隣接して配置された電極構造体とを含む燃料電池において、電極構造体が、正極と、負極と、固体高分子からなる電解質層とを備え、かつ転写法で作製された触媒層と、該触媒層に積層された、前記触媒層で使用されている触媒と同一もしくは異なる触媒を前記触媒層側に含浸された触媒含浸拡散層とをさらに有しているように構成する。
【選択図】 図4
【解決手段】燃料を収容した燃料貯留部と、該燃料貯留部に隣接して配置された電極構造体とを含む燃料電池において、電極構造体が、正極と、負極と、固体高分子からなる電解質層とを備え、かつ転写法で作製された触媒層と、該触媒層に積層された、前記触媒層で使用されている触媒と同一もしくは異なる触媒を前記触媒層側に含浸された触媒含浸拡散層とをさらに有しているように構成する。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池に関し、さらに詳しく述べると、固体高分子からなる電解質層を、酸素を活物質として還元する正極と、燃料を酸化する負極との間に備えた固体高分子型燃料電池に関する。本発明はまた、かかる燃料電池の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば携帯電話、PDA、ノート型パソコンなどの携帯型電子機器において、小型化、軽量化、そして高機能化が進んでいることは周知の通りである。また、これらの電子機器の進展に伴い、駆動電源やメモリ保持電源となる電池も、小型化、軽量化、そして高容量化が確実に進んでいる。現在の携帯型電子機器においては、従来のニッケル・カドミウム電池や、ニッケル水素電池に代えて、リチウムイオン電池が駆動電源等として最も一般的に用いられている。リチウムイオン電池は、実用化の当初から、高い駆動電圧と電池容量をもち、携帯電子機器の進歩にあわせるように性能改善が図られてきた。しかし、リチウムイオン電池の性能改善にも限界があり、今後も高機能化が進む携帯型電子機器の駆動電源等としての要求を、リチウムイオン電池は満足できなくなりつつある。
【0003】
このような状況のもと、リチウムイオン電池に代わる新たな発電デバイスの開発が行われた結果、リチウムイオン電池の数倍の高容量化が期待される燃料電池が提案されるに至った。燃料電池は、触媒を含むアノード電極(負極)及びカソード電極(正極)と、これらの間において所定のイオンの移動を許容する電解質とからなる構造を有する。燃料電池においては、アノード電極に燃料ないし水素を供給するとともにカソード電極に空気ないし酸素を供給すると、電極に含まれる触媒の作用により各電極にて電気化学的な反応が起こり、燃料を供給源とする電子による直流電流を取り出すことができる。このようなメカニズムで発電する燃料電池においては、燃料及び酸素を供給し続けることにより連続発電が可能となる。したがって、燃料電池は、燃料及び酸素を補給することにより、充電操作により反復使用される二次電池と同様に、携帯型電子機器類の電源へと応用可能である。
【0004】
燃料電池は、その電解質の種類に基づいて、リン酸型、固体高分子型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型などに類別される。携帯型電子機器類の電源としては、室温付近の低温にて作動可能であること、小型に構成可能であること、振動に強く大量生産が容易な固体電解質を備えることなどから、固体高分子型の燃料電池(PEFC)が適している。
【0005】
固体高分子型燃料電池においては、燃料供給方法として、水素ガスを貯留して当該水素ガスをアノード電極に接触させる手法、有機燃料を貯留して当該有機燃料を改質することによって生ずる水素ガスをアノード電極に接触させる手法、水素を供給可能な液体燃料を貯留して当該液体燃料をアノード電極に対して直接に供給する手法などが知られている。水素ガスを使用する手法は、水素ガスの取り扱いが困難であったり、燃料を改質するための装置が必要であったりするため、携帯型電子機器等の小型電源としては適さない。そのため、携帯型電子機器等の小型電源を構成するという観点からは、液体燃料をアノード電極に直接に供給する方式を採用する燃料電池が注目を集めている。特に、液体燃料としてのメタノール水溶液を燃料極に対して直接に供給するダイレクトメタノール方式の燃料電池(DMFC)が注目を集めている。
【0006】
ダイレクトメタノール方式によると、メタノール水溶液が供給されたアノード電極では、下記の式(1)に示すように、メタノールと水が反応して、二酸化炭素(CO2 )、プロトン(H+ )及び電子(e− )が生ずる。すなわち、燃料電池ではメタノールが酸化分解される。アノード電極で生じたプロトンは高分子電解質膜を通ってカソード電極に向かい、電子は、アノード電極に接続された外部回路に流れる。外部回路にて仕事を終えた電子はカソード電極に向かう。また、二酸化炭素は系外に排出される。
【0007】
【化1】
【0008】
カソード電極では、下記の式(2)に示すように、空気から得られる酸素(O2 )と、アノード電極から電解質膜を経て到来したプロトン(H+ )と、カソード電極から外部回路を経て到来した電子(e− )とが反応して水(H2 O)が生成する。
【0009】
【化2】
【0010】
ダイレクトメタノール方式の固体高分子型燃料電池においては、アノード電極での式(1)の反応及びカソード電極での式(2)の反応が同時的に進行することによって、直流電流を取り出すことができる。また、メタノール水溶液及び酸素を供給し続けることにより、連続発電が可能である。
【0011】
ダイレクトメタノール方式を採用する従来の固体高分子型燃料電池では、アノード電極に供給される液体燃料に含まれるメタノールは、電解質膜に含浸している水中を拡散してカソード電極に達する場合がある。メタノールがアノード電極にて酸化分解されずに電解質膜を透過してカソード電極に到達してしまう現象、即ちメタノールのクロスオーバーが起こると、カソード電極に到達したメタノールがカソード電極で部分的に揮発するため、燃料が急速に減少し、理論容量に比べかなり小さい放電容量しか取り出せなくなってしまう。また、クロスオーバーによりカソード電極に到達したメタノールは部分的に触媒反応により分解されるため、カソード電位が低下し、ひいては燃料電池の出力が大きく低下してしまう。
【0012】
したがって、従来の固体高分子型燃料電池では、クロスオーバー等の問題を引き起こすことなく出力特性を高めるためには、燃料電池の触媒層を転写法で形成するのが最も効果的であると考えられている。例えば、少なくとも電極基材と電極触媒層とから構成される電極を備え、20μm以下の抑制された厚さで電極触媒層が電極基材の中に染み込んでいることを特徴とする固体高分子型燃料電池では、電極触媒塗液を転写基材上に塗布して電極触媒層を形成し、これをさらにプロトン交換膜上に転写する方法を提案している(特許文献1)。また、高分子電解質と溶媒とを含む溶液を液体の表面に展開した後、前記溶媒を蒸発させることで、前記液体表面に前記高分子電解質の固体膜を形成する工程と、触媒を担持した導電性炭素粒子を含む触媒層に前記固体膜を転写し、張り合せる工程を有することを特徴とする燃料電池用電解質膜−電極接合体の製造方法も提案されている(特許文献2)。
【0013】
【特許文献1】
特開2001−216972号公報(特許請求の範囲、段落0091〜0093)
【特許文献2】
特開2002−280014号公報(特許請求の範囲、段落0011〜0013)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記したような転写法によって燃料電池の触媒層を形成した場合、大電流を長時間にわたって安定に流すことができないという問題が新たに発生している。この問題の発生原因は、燃料電池中の燃料の濃度が時間の経過とともに薄くなるとともに、触媒中で発生する二酸化炭素(CO2)が燃料の供給を妨げることにあると考察される。つまり、燃料は、燃料電池の拡散層(例えば、カーボンペーパー)まではスムーズに到達することができるが、転写によって形成された触媒層までは、経過時間とともに到達しにくくなり、十分な反応ができなくなっているからである。
【0015】
本発明の目的は、したがって、出力特性に優れるとともに、大電流を長時間にわたって安定に供給することのできる燃料電池を提供することにある。
【0016】
また、本発明の目的は、上記のような燃料電池を簡単な手法で、容易にかつ歩留まりよく製造する方法を提供することにある。
【0017】
本発明の上記した目的やその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を解決すべく鋭意研究した結果、燃料電池の触媒層を転写法で作製するとともに、触媒層に積層される拡散層(例えば、カーボンペーパー)の触媒層側に触媒を集中的あるいは選択的に分布せしめるのが有効な手段であることを発見し、本発明を完成した。
【0019】
本発明は、その1つの面において、燃料を収容した燃料貯留部と、該燃料貯留部に隣接して配置された電極構造体とを含む燃料電池であって、前記電極構造体が、
酸素を活物質として還元する正極と、燃料を酸化する負極と、正極及び負極の間に配置された固体高分子からなる電解質層とを備え、かつ
転写法で積層された触媒層と、該触媒層に積層された、前記触媒層で使用されている触媒と同一もしくは異なる触媒を前記触媒層側に含浸させた触媒含浸拡散層とを有していることを特徴とする燃料電池にある。
【0020】
また、本発明は、そのもう1つの面において、燃料を収容した燃料貯留部と、該燃料貯留部に隣接して配置された電極構造体とを含む燃料電池を製造する方法であって、
前記電極構造体を、酸素を活物質として還元する正極と、燃料を酸化する負極と、正極及び負極の間に配置された固体高分子からなる電解質層とを備えるように作製する工程、及び
触媒層を転写法で作製した後、前記触媒層で使用されている触媒と同一もしくは異なる触媒を前記触媒層側に含浸させた触媒含浸拡散層を前記触媒層に積層する工程
を含むことを特徴とする燃料電池の製造方法にある。
【0021】
燃料電池で高出力を得ようとした場合、クロスオーバーの発生等を考慮すると、転写法により触媒層を形成するのが最も効果的であると考察される。しかし、従来の構成を採用した燃料電池の場合、燃料は、拡散層(例えば、カーボンペーパー)まではスムーズに到達できるけれども、転写法により形成された触媒層には到達しにくい。したがって、時間の経過とともに燃料濃度の低下や、触媒層中で発生する二酸化炭素(CO2)等の影響が顕著となり、下記の比較例1で図5を参照して説明するように、大電流を長時間維持することが困難となる。
【0022】
しかし、本発明に従い例えば触媒を塗布し、含浸させたカーボンペーパーを拡散層として燃料電池に組み込むと、燃料の供給がスムーズに進むカーボンペーパー中でも反応を行わせることができる。また、カーボンペーパー上に塗布した触媒にはプロトン伝導性高分子も含まれているので、カーボンペーパー中で発生したプロトンは、転写法による触媒層を通して電解質層に到達することができるため、より速やかな反応の進行が可能となる。すなわち、転写法によって触媒層を形成することにより高出力が得られ、かつプロトン伝導性高分子含有の触媒を塗布したカーボンペーパーを拡散層として積層することにより、燃料の供給がスムーズに進み、大電流を流すことが可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明は、上記したように、燃料電池及びその製造方法にある。以下、これらの発明を添付の図面を参照しながら、特にダイレクトメタノール方式の燃料電池(DMFC)に関して説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明による燃料電池で用いられる電極構造体は、通常、酸素を活物質として還元する正極(カソード電極)と、燃料を酸化する負極(アノード電極)と、これらの電極の間に配置された電解質層と、電解質層の両側に配置された触媒層とを含むように構成される。このような電極構造体の構成は、従来技術の項で一般的に説明した通りである。
【0025】
このような基本構成を備えた電極構造体は、転写法で作製された触媒層と、該触媒層に積層された、その触媒層で使用されている触媒と同一もしくは異なる触媒を前記触媒層側に集中的あるいは選択的に分布せしめた触媒含浸拡散層とを有していることを特徴とする。すなわち、拡散層は、従来の燃料電池のそれのように単層構造を有するのではなくて、触媒層側に位置する触媒含浸拡散層と、触媒層とは離れた側に位置する非触媒含浸拡散層との2層構造を有するように構成される。拡散層に含浸せしめられる触媒は、触媒層の触媒と同一であるのが一般的に好ましいが、必要ならば、触媒層の触媒と異なるものであってもよい。拡散層における触媒の含浸は、いろいろな手法に従って行うことができるけれども、触媒層の側に含浸させることと作業性などを考慮した場合、塗布法などが好適である。
【0026】
図1は、本発明による燃料電池で用いられる電極構造体の好ましい1実施形態を示した断面図である。電極構造体10は、特にDMFC用に設計されたもので、燃料極11、空気極12及び電解質層13ならびに集電体20A及び20Bからなっている。また、燃料極11は、触媒層11a及び拡散層11bによる積層構造を有し、触媒層11aの側で電解質層13と接合している。拡散層11bは、図2に一部を拡大して示すように、その内部に触媒が含浸せしめられていない拡散層(本発明では、単に「拡散層」と呼ぶか、さもなければ、「非触媒含浸拡散層」と呼ぶ)11bに加えて、本発明に従い触媒が含浸せしめられた触媒含浸拡散層11cを、触媒層11aの側に有している。また、空気極12は、触媒層12a及び拡散層12bによる積層構造を有し、触媒層12aの側で電解質層13と接合している。拡散層12bは、上記した拡散層11bと同様に、その内部に触媒が含浸せしめられていない拡散層(本発明では、単に「拡散層」と呼ぶか、さもなければ、「非触媒含浸拡散層」と呼ぶ)12bに加えて、本発明に従い触媒が含浸せしめられた触媒含浸拡散層12cを、触媒層12aの側に有している。なお、図示の例では、電解質層13の両側に配置された拡散層11b及び12bがそれぞれ触媒含浸拡散層11c及び12cを有しているけれども、触媒含浸拡散層は、所望ならば、正極及び負極のいずれか一方、すなわち、電解質層13の片側のみに配置してもよい。
【0027】
電極構造体10の構成についてさらに説明すると、燃料極11の触媒層11aは、上記した式(1)で表されるように、メタノールを酸化してプロトンと電子を取り出すためのものであり、導電粒子に触媒を担持させてなる触媒性粒子と、電解質層形成用の後述するプロトン伝導性高分子材料との混合物を含み、好ましくは多孔質構造を有している。導電粒子としては、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラックなどの炭素粒子が挙げられる。触媒としては、白金(Pt)−ルテニウム(Ru)合金などを採用することができる。導電粒子の粒径は、通常、約0.01〜0.1μmの範囲であり、また、触媒の粒径は、通常、約2〜5nmの範囲である。さらに、触媒層11aの厚さは、通常、約2〜30μmの範囲である。さらにまた、触媒層11aに多数含まれる細孔の孔径は、特に限定されるものではないけれども、通常、約0.05〜5.0μmの範囲であり、さらに好ましくは、約0.1〜1.0μmの範囲である。また、触媒層11aの空孔率(触媒層の全体積から触媒性粒子とプロトン伝導性高分子材料の占める体積を減じたものを、触媒層の全体積で除した百分率、%)は、特に限定されるものではないけれども、通常、約10〜95%の範囲であり、好ましくは、約50〜95%の範囲である。
【0028】
燃料極11の拡散層11bは、燃料極11に供給された液体燃料であるメタノール水溶液が触媒層11aに至る前に拡散する場を提供するためのものであり、多孔質導電膜よりなる。拡散層11bの多孔質導電膜は、いろいろな材料から形成することができるけれども、好ましくは、導電性粒子を含む導電性シート又はフィルムから形成することができる。導電性粒子は、好ましくは導電性の無機材料粒子であり、さらに好ましくは、繊維状もしくは粒子状のカーボンである。特に、カーボンペーパーやカーボンクロスがこの目的に好適である。燃料極11に供給されたメタノール水溶液は、拡散層11bにて拡散することにより、触媒層11aへと効率良く行き渡ることとなる。拡散層11bの厚さは、通常、約100〜400μmの範囲である。
【0029】
図示の電極構造体10では、拡散層11bの構成及び形成に特徴がある。まず、拡散層11bは、上記したように、その触媒層11aの側に触媒含浸拡散層11cを有している。すなわち、拡散層11bは、その膜厚全体について触媒を均一に有しているのでなくて、触媒層11aの側に触媒が集中的に分布するように有している。触媒含浸拡散層11cの触媒は、触媒層11aで使用されている触媒と同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0030】
触媒含浸拡散層11cは、電極構造体を製造する工程の任意の段階で形成し、転写法で作製された触媒層に積層することができる。触媒含浸拡散層11cは、電極構造体の製造工程の途中で現場で形成するのが一般的であるけれども、所望ならば、別の場所で触媒含浸拡散層11cを形成した後、電極構造体の製造工程に搬送して、触媒層に積層してもよい。触媒含浸拡散層11cは、前記した通り、正極及び負極の両方に設けてもよく、いずれか一方のみに設けてもよい。
【0031】
触媒含浸拡散層11cは、拡散層11bの流れをくむものであるので、好ましくは多孔質の導電性シート、例えば繊維状もしくは粒子状のカーボンからなるシート、例えばカーボンペーパー、カーボンクロスなどから形成することができる。
【0032】
拡散層11bとしてカーボンペーパー等の導電性シートを用意した後、それに触媒を適用して触媒含浸拡散層11cを形成する。導電性シートに対する触媒の適用は、得られる触媒含浸拡散層において触媒が所望の形で含浸せしめられる限りにおいて特に限定されるわけではないけれども、触媒の溶液やペーストを導電性シートの表面に塗布して、導電性シートの表面領域に触媒を選択的に含浸させる方法が一般的である。例えば、触媒ペーストは、白金、ルテニウム又はその混合物のような触媒を水、アルコールなどと混練して、塗布に好適な粘度とすることができる。塗布方法としては、バーコート、ディップコート、スクリーン印刷など、常用の方法を使用することができる。
【0033】
触媒含浸拡散層11cの厚さ、すなわち、拡散層全体の厚さに占める触媒の含浸深さは、所望とする効果などに応じて広い範囲で変更することができるけれども、通常、触媒含浸拡散層11cの厚さを拡散層全体の厚さ(触媒含浸拡散層と拡散層の厚さの合計)の1/3以下に調整することが好ましい。具体的には、例えば、拡散層の厚さが200μmである時、触媒含浸拡散層の厚さを100μm以下に調整することが好ましい。
【0034】
触媒層11aならびに拡散層11b及び触媒含浸拡散層11cによる積層構造を有する多孔質性の燃料極11は、いろいろな方法で作製することができる。一例を示すと、まず、触媒性粒子とプロトン伝導性高分子材料とを、水溶媒系、アルコール溶媒系、または、水−アルコール溶媒系にて混合し、これを脱泡して電極ペーストを調製する。次に、触媒層11a及び拡散層11bの上にそれぞれ電極ペーストを塗布ないし充填した後、例えば100℃にて加熱乾燥する。加熱乾燥には、好ましくは恒温槽が用いられる。拡散層11bである多孔質導電膜の上における電極ペーストのみに由来する材料厚さは、通常、約5〜50μmの範囲である。
【0035】
触媒層11a及び拡散層11bの硬化が完了した後、予め用意した電解質層に触媒層11aを電解ペースト側が電解質層に接するように張り合わせ、熱プレスする。この熱プレスは、触媒層11aにおける触媒量を所望値に調整するため、複数回にわたって反復することが好ましい。その後、張り合わせ後の触媒層11aに拡散層11bを積層し、再び熱プレスする。このようにして、触媒層11aならびに拡散層11b及び触媒含浸拡散層11cによる積層構造を有する多孔質性の燃料極11が得られる。
【0036】
空気極12の触媒層12aは、上記した式(2)で表されるように、空気中の酸素の還元反応を進行させるためのものであり、導電粒子に触媒を担持させてなる触媒性粒子と、電解質層形成用の後述するプロトン伝導性高分子材料との混合物を含み、多孔質である。触媒については、白金(Pt)や白金(Pt)−ルテニウム(Ru)合金などを採用することができる。触媒の粒径は、通常、約2〜5nmの範囲である。導電粒子については、触媒層11aの形成に使用したものと同様のものを使用することができる。触媒層12aの厚さは、通常、約2〜30μmの範囲である。
【0037】
空気極12の拡散層12bは、空気極12に流通接触する空気が触媒層12aに至る前に拡散する場を提供するためのものであり、上記した拡散層11bと同様に、好ましくはカーボンペーパー、カーボンクロスなどの多孔質導電膜よりなる。拡散層12bにて空気が拡散することにより、当該空気ひいては酸素は、触媒層12aへと効率良く行き渡ることとなる。拡散層12bの厚さは、通常、約100〜400μmの範囲である。
【0038】
図示の電極構造体10では、拡散層11bと同様に、拡散層12bの構成及び形成にも特徴がある。なお、拡散層11bの特徴と拡散層12bの特徴はほぼ同じであるので、以下、拡散層12bの特徴を簡単に説明する。
【0039】
まず、拡散層12bは、その触媒層12aの側に触媒含浸拡散層12cを有している。触媒含浸拡散層12cの触媒は、触媒層12aで使用されている触媒と同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0040】
触媒含浸拡散層12cは、電極構造体を製造する工程の任意の段階で形成し、転写法で作製された触媒層に積層することができる。触媒含浸拡散層12cは、電極構造体の製造工程の途中で現場で形成するのが一般的であるけれども、所望ならば、別の場所で触媒含浸拡散層12cを形成した後、電極構造体の製造工程に搬送して、触媒層に積層してもよい。触媒含浸拡散層12cは、正極及び負極の両方に設けてもよく、いずれか一方のみに設けてもよい。
【0041】
触媒含浸拡散層12cは、好ましくは多孔質の導電性シート、例えば繊維状もしくは粒子状のカーボンからなるシート、例えばカーボンペーパー、カーボンクロスなどから形成することができる。拡散層12bとしてカーボンペーパー等の導電性シートを用意した後、それに触媒を適用して触媒含浸拡散層12cを形成する。導電性シートに対する触媒の適用としては、触媒の溶液やペーストを導電性シートの表面に塗布して、導電性シートの表面領域に触媒を選択的に含浸させる方法が一般的である。塗布方法としては、バーコート、ディップコート、スクリーン印刷など、常用の方法を使用することができる。
【0042】
触媒含浸拡散層12cの厚さは、広い範囲で変更することができるけれども、通常、触媒含浸拡散層12cの厚さを拡散層全体の厚さの1/3以下に調整することが好ましい。具体的には、例えば、拡散層の厚さが200μmである時、触媒含浸拡散層の厚さを100μm以下に調整することが好ましい。
【0043】
触媒層12aならびに拡散層12b及び触媒含浸拡散層12cによる積層構造を有する多孔質性の空気極12は、燃料極11に関して上述した方法と同様な方法で作製することができる。
【0044】
電解質層13は、燃料極11におけるメタノール酸化反応で生成したプロトンを空気極12に輸送するための媒体であり、電子伝導性を有さずにプロトン伝導性を有する高分子材料よりなる。そのような高分子材料の好適な例としては、パーフルオロスルホン酸膜などが挙げられる。パーフルオロスルホン酸膜としては、例えば、Nafion膜(DuPont社製)、フレミオン膜(旭硝子製)、アシプレックス膜(旭化成工業製)、ダウ膜(ダウケミカル社製)などが挙げられる。電解質層13の厚さは、通常、約50〜250μmの範囲である。
【0045】
電極構造体10は、いろいろな手法によって作製することができる。好ましい一例を示すと、まず、電解質層13を、燃料極11及び空気極12により挟む。このとき、電解質層13に対して、燃料極11は触媒層11aを介して電解質層13に貼り合わせるとともに、空気極12は触媒層12aを介して電解質層13に貼り合わせる。次に、加熱条件下、当該貼り合せ体を積層方向に加圧して接合する。この接合処理のため、通常熱プレス機を有利に使用することができるけれども、所望ならば、その他の貼り合わせ手段を採用してもよい。
【0046】
集電体20Aは、燃料極11におけるメタノール酸化反応で発生する電子を取り出すためのものであり、例えばSUS製やNi製の金属メッシュである。集電体20Aとしては、液体燃料であるメタノール水溶液が容易に通過可能なメッシュ開口径ないしメッシュ開口率を有するものを採用する。集電体20Aは、図3及び図4に示す電池筐体40の表面に設けられた外部接続用端子(図示せず)と電気的に接続している。集電体20Aと電気的に接続する端子は、燃料電池50の負極である。
【0047】
集電体20Bは、触媒層12aに対して効率的に電子を供給するためのものであり、例えばSUS製やNi製の金属メッシュである。集電体20Bは、電極構造体10の空気極12と接合ないし面接触するとともに電気的に接続している。集電体20Bとしては、空気極12に対して空気ないし酸素が自然拡散により充分に接触可能であるとともに、空気極12における酸素還元反応で生成する水を適切に蒸散排出可能なメッシュ開口径ないしメッシュ開口率を有するものを採用する。集電体20Bは、図3及び図4に示す電気筐体40の表面に設けられた更なる外部接続用端子(図示せず)と電気的に接続している。集電体20Bと電気的に接続する端子は、燃料電池50の正極である。
【0048】
図3は、本発明による燃料電池の好ましい1実施形態を示した斜視図であり、また、図4は、図3に示した燃料電池の線分IV−IVにそった断面図である。これらの図面に示されるように、燃料電池50は、電極構造体10と、燃料貯留部30と、これらを収容する電池筐体40とを備える。また、電極構造体10は、図1を参照して先に説明したように、燃料極11、空気極12及び電解質層13からなる燃料電池本体と、集電体20A及び20Bとからなっている。また、燃料極11は、触媒層11aならびに拡散層11b及び触媒含浸拡散層11cによる積層構造を有し、触媒層11aの側で電解質層13と接合している。さらに、空気極12は、触媒層12aならびに拡散層12b及び触媒含浸拡散層12cによる積層構造を有し、触媒層12aの側で電解質層13と接合している。
【0049】
電極構造体10(集電体20A及び20Bを含む)による積層構造は、図4に示すように、スペーサ41及びパッキング材42及び43とともに電池筐体40に収容されている。収容状態において、電池筐体40の内部には燃料貯留部30が規定される。スペーサ41には、所定の開口部41aが設けられている。開口部41aは、円形であってもよいし、スリット状であってもよい。この開口部41aを介して、集電体20Aは燃料貯留部30に露出している。パッキング材42は、電極構造体10による積層構造における周縁部の略全体と電池筐体40との間の隙間を封止するためのものである。また、パッキング材43は、燃料貯留部30を規定しつつ、燃料貯留部30からの燃料漏れを防止するためのものである。
【0050】
燃料貯留部30は、メタノール水溶液(図示せず)が直接的に貯留される小型タンクとして構成されており、メタノール水溶液またはメタノールを適宜補充するための注入口(図示せず)を有する。本発明の実施において、メタノール水溶液は、いろいろなメタノール濃度で使用することができるけれども、通常、10体積%もしくはそれ以上のメタノール濃度が好ましく、さらに好ましくは、約10〜30体積%の範囲である。このようなメタノール水溶液は、高い発電効率を達成するための液体燃料として好適である。また、図示の例はDMFCであり、燃料としてメタノール水溶液を使用しているが、異なるタイプのPEFCの場合、メタノール水溶液以外の燃料を使用してもよい。
【0051】
電池筐体40は、開口部40aを有する。この開口部40aを介して、集電体20Bは燃料電池50の外部に露出している。また、電池筐体40において燃料貯留部30を規定する所定の箇所には、燃料貯留部30と電池外部との間の隔壁として、二酸化炭素透過膜(図示せず)が配設されている。二酸化炭素透過膜は、液体燃料を実質的に透過させずに二酸化炭素を選択的に透過させる膜であり、この膜を介して、燃料極11における電池反応で生成する二酸化炭素は排出される。二酸化炭素透過膜を構成する材料としては、例えば、シリコーンゴムやフッ素系樹脂、ポリイミドなどが挙げられる。
【0052】
燃料電池50においては、燃料貯留部30に液体燃料すなわちメタノール水溶液が貯留されていると、当該メタノール水溶液は、スペーサ41の開口部41aを介して燃料貯留部30から燃料極11に至る。そして、燃料極11では、メタノール水溶液は、メッシュ状の集電体20Aを通過して触媒層11aに至る。これとともに、電池筐体40の開口部40aを介して外気に触れる空気極12には、空気に含まれる酸素が常時的に接触する。空気極12では、酸素は、メッシュ状の集電体20Bを通過して触媒層12aに至る。燃料極11に対してメタノール水溶液が供給されるとともに空気極12に対して酸素が供給されると、燃料極11の触媒層11aでは、触媒の作用により、上記した式(1)で表されるメタノール酸化反応が起こり、二酸化炭素、プロトン及び電子が発生する。また、空気極12の触媒層12aでは、触媒の作用により、上記した式(2)で表される酸素還元反応が起こり、水が生成する。この水は、自然蒸散する。両極において、このような電気化学反応が進行することにより、燃料電池50が発電する。
【0053】
以上のような構成を有する燃料電池50において、燃料貯留部30から拡散層11bを経て触媒層11aに供給されたメタノールのうち触媒層11aで分解されなかったメタノールが電解質層13を介して触媒層12aに到達するおそれがある場合、空気極12と電解質層13との間に撥水層を挟み込むのが好ましい。撥水層は、好ましくは、撥水性を有する粒子と、プロトン伝導性高分子とから構成することができる。撥水性を有する粒子としては、例えば、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラック等の炭素粒子、上述した触媒性粒子、ポリスチレン等の高分子粒子などの粒子表面をシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、シラン系樹脂などの撥水性樹脂でコーティングすることにより撥水処理を施した粒子、あるいはシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、シラン系樹脂などの撥水性樹脂からなる粒子などが挙げられる。また、プロトン伝導性高分子としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系高分子などが挙げられる。パーフルオロスルホン酸系高分子としては、例えば、Nafion(DuPont社製)などが挙げられる。撥水層の厚さは、通常、約5〜50μmの範囲である。
【0054】
撥水層の存在によってメタノールのクロスオーバーを抑制することができ、したがって、クロスオーバーしたメタノールが部分的に触媒層12aでの触媒反応により分解されて空気極12側の電位が低下することに起因する燃料電池50の出力の低下、及びクロスオーバーしたメタノールが部分的に空気極12で揮発してメタノールが急速に減少することに起因する燃料電池50の放電容量の低下を、効果的に抑制することができる。
【0055】
【実施例】
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
実施例1
燃料電池の作製:
まず、燃料極の作製のため、一次粒子径40nm程度のケッチェンブラック粒子(商品名:EC、ライオン社製)に、触媒としての粒径2〜5nm程度の白金−ルテニウム合金(Pt:Ru=1:1.5、重量%比)を担持させた触媒性カーボン粒子(商品名:TEC61E54E、田中貴金属製)200mgと、20重量%のNafion溶液(商品名:Nafion SE20042、DuPont社製)1gとを、水0.5gの水溶媒系にて混合し、これを脱泡して電極ペーストを調製した。
【0056】
次に、拡散層として用意したカーボンペーパー(商品名:TGP−H−090、東レ製、膜厚290μm)の上に当該電極ペーストをバーコータ−で塗布ないし充填した後、100℃の恒温槽で加熱乾燥した。カーボンペーパー上における電極ペーストのみに由来する材料厚さ、すなわち触媒含浸拡散層の湿潤厚さは、180μmであった。
【0057】
さらに、上記燃料極の作製と同様な手法で空気極を作製した。但し、空気極の場合、白金−ルテニウム合金を担持する触媒性カーボン粒子に代えて、一次粒子径40nm程度のケッチェンブラック粒子(商品名:EC、ライオン社製)に、触媒としての粒径4nmの白金を担持させた触媒性カーボン粒子(商品名:TEC10E50E、田中貴金属製)を使用して電極ペーストを調製した。触媒性カーボン粒子における白金の含有率は、50重量%であった。カーボンペーパー上における電極ペーストのみに由来する材料厚さ、すなわち触媒含浸拡散層の湿潤厚さは、180μmであった。
【0058】
引き続いて、触媒層を転写法で形成するため、テフロンTMシートの上に燃料極の形成のために調製した前記電極ペーストをバーコータ−で塗布ないし充填した後、100℃の恒温槽で加熱乾燥した。テフロンTMシート上における電極ペーストの湿潤厚さは、180μmであった。
【0059】
引き続いて燃料電池を作製した。電解質層を構成するため、膜厚175μmのプロトン伝導性高分子電解質膜(商品名:Nafion NF117、DuPont社製)を用意した。先の工程で作製したテフロンTMシートを所定のサイズに切り出した後、プロトン伝導性高分子電解質膜の両面にそれぞれ電極ペーストが当接するように張り合わせ、得られたサンドイッチ構造体を積層方向に130℃で2分間熱プレスし、接合した。熱プレスは、転写される触媒量の増加のために3回にわたって反復した。
【0060】
最後の熱プレス工程が完了した後、テフロンTMシートを剥離除去し、サンドイッチ構造体の片面に上述のようにして作製した空気極を触媒層を介して貼り合わせ、また、そのもう1つの面に上述のようにして作製した燃料極を触媒層を介して貼り合わせた。次いで、積層後のサンドイッチ構造体を積層方向に130℃で2分間熱プレスし、接合した。
【0061】
上記のようにして電極構造体の本体を作製した後、燃料極及び空気極におけるカーボンペーパー露出面側に対して、集電体としてSUS製の金属メッシュ(厚さ:0.1mm、開口部形、〔対角線3mm×1.5mm〕、開口率:70%、商品名:エキスパンドメタル、サンク株式会社製)を積層した。
【0062】
得られた電極構造体を、先に図3及び図4を参照して説明した、空気極側に開口部を有する電池筐体に収容した。電池筐体の内部に規定された燃料貯留部には、液体燃料として、メタノール濃度が10体積%のメタノール水溶液を3.0mlの量で注入した。図4に構成を示した燃料電池が得られた。
出力電流の測定:
2枚のプロトン伝導性高分子電解質膜(Nafion NF117)を重ね合わせて電解質層を形成した違いを除いて、上記と同様な手法に従って供試燃料電池を作製した。
【0063】
次いで、得られた供試燃料電池について、次のような手順で出力電流を測定した。まず、10mAで10分間エージングを行った後、0.55Vで5分間、0.5Vで5分間、0.45Vで5分間、0.4Vで5分間、0.35Vで5分間、0.3Vで5分間、0.25Vで5分間、0.2Vで5分間、0.15Vで5分間、0.1Vで5分間、そして0.05Vで5分間、各電圧ごとに定電圧連続放電を行い、所定の放電時間に対する出力電流を測定した。得られた測定結果を放電時間に対する電圧及び出力電流としてプロットしたところ、図5に示すグラフが得られた。
比較例1
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、燃料極及び空気極の作製において電極ペーストの含浸によって触媒含浸拡散層を形成する工程を省略した。
【0064】
得られた供試燃料電池について、前記実施例1に記載の手法に従って出力電圧の測定を行った。得られた測定結果を放電時間に対する電圧及び出力電流としてプロットしたところ、図6に示すグラフが得られた。
[評価]
図6の測定結果を図5の測定結果と対比すると、図5(実施例1)の燃料電池の場合、800mA程度の大電流を安定に維持できたのに反して、図6(比較例1)の燃料電池の場合、たかだか400mA程度までしか電流を維持することができず、しかも電流値に経時変化があるということがわかる。換言すると、これらの測定結果から、触媒が含浸されたカーボンペーパーを電極構造体の拡散層として使用することにより、高出力のまま大電流を維持することが可能であることがわかる。
実施例2
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、燃料極の作製において、触媒含浸拡散層の湿潤厚さを180μmから60μmに変更した。
【0065】
得られた供試燃料電池について、前記実施例1に記載の手法に従って出力電圧の測定を行った。得られた測定結果を放電時間に対する電圧及び出力電流としてプロットしたところ、図7に示すグラフが得られた。
実施例3
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、燃料として使用したメタノール水溶液の濃度を10体積%から20体積%に増加させた。
【0066】
得られた供試燃料電池について、前記実施例1に記載の手法に従って出力電圧の測定を行った。得られた測定結果を放電時間に対する電圧及び出力電流としてプロットしたところ、図8に示すグラフが得られた。
【0067】
以上、本発明を特にその実施の形態について説明した。最後のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
(付記1)燃料を収容した燃料貯留部と、該燃料貯留部に隣接して配置された電極構造体とを含む燃料電池であって、前記電極構造体が、
酸素を活物質として還元する正極と、燃料を酸化する負極と、正極及び負極の間に配置された固体高分子からなる電解質層とを備え、かつ
転写法で積層された触媒層と、該触媒層に積層された、前記触媒層で使用されている触媒と同一もしくは異なる触媒を前記触媒層側に含浸させた触媒含浸拡散層とを有していることを特徴とする燃料電池。
(付記2)前記触媒層と前記触媒含浸拡散層の積層体が、前記正極及び前記負極のいずれか一方もしくは両方に設けられていることを特徴とする付記1に記載の燃料電池。
(付記3)前記触媒含浸拡散層が、多孔質の導電性シートからなることを特徴とする付記1又は2に記載の燃料電池。
(付記4)前記導電性シートが、繊維状もしくは粒子状のカーボンからなることを特徴とする付記3に記載の燃料電池。
(付記5)前記導電性シートが、カーボンペーパーであることを特徴とする付記4に記載の燃料電池。
(付記6)前記触媒含浸拡散層が、拡散層の形成後にその拡散層に前記触媒の溶液もしくはペーストを塗布して前記触媒を表面領域に選択的に含浸させたものであることを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池。
(付記7)前記触媒含浸拡散層の厚さが、前記拡散層及び前記触媒含浸拡散層の厚さの合計の1/3以下であることを特徴とする付記6に記載の燃料電池。
(付記8)前記触媒含浸拡散層の厚さが、100μm以下であることを特徴とする付記7に記載の燃料電池。
(付記9)前記燃料がメタノール水溶液であり、かつ前記燃料電池が、ダイレクトメタノール方式の燃料電池であることを特徴とする付記1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池。
(付記10)燃料を収容した燃料貯留部と、該燃料貯留部に隣接して配置された電極構造体とを含む燃料電池を製造する方法であって、
前記電極構造体を、酸素を活物質として還元する正極と、燃料を酸化する負極と、正極及び負極の間に配置された固体高分子からなる電解質層とを備えるように作製する工程、及び
触媒層を転写法で作製した後、前記触媒層で使用されている触媒と同一もしくは異なる触媒を前記触媒層側に含浸させた触媒含浸拡散層を前記触媒層に積層する工程
を含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。
(付記11)前記触媒層と前記触媒含浸拡散層の積層体を、前記正極及び前記負極のいずれか一方もしくは両方に設けることを特徴とする付記10に記載の燃料電池の製造方法。
(付記12)前記触媒含浸拡散層を多孔質の導電性シートから構成することを特徴とする付記10又は11に記載の燃料電池の製造方法。
(付記13)前記導電性シートを繊維状もしくは粒子状のカーボンから形成することを特徴とする付記12に記載の燃料電池の製造方法。
(付記14)前記導電性シートとしてカーボンペーパーを使用することを特徴とする付記13に記載の燃料電池の製造方法。
(付記15)拡散層の形成後にその拡散層の表面に前記触媒の溶液もしくはペーストを塗布して、前記触媒を表面領域に選択的に含浸させた前記触媒含浸拡散層を形成することを特徴とする付記10〜14のいずれか1項に記載の燃料電池の製造方法。
(付記16)前記触媒含浸拡散層の厚さを前記拡散層及び前記触媒含浸拡散層の厚さの合計の1/3以下に調整することを特徴とする付記15に記載の燃料電池の製造方法。
(付記17)前記触媒含浸拡散層の厚さを100μm以下に調整することを特徴とする付記16に記載の燃料電池の製造方法。
(付記18)メタノールの水溶液を燃料として前記燃料貯留部に装填し、ダイレクトメタノール方式の燃料電池となすことを特徴とする付記10〜17のいずれか1項に記載の燃料電池の製造方法。
(付記19)10体積%以上の濃度でメタノールを使用することを特徴とする付記18に記載の燃料電池の製造方法。
【0068】
【発明の効果】
以上に詳細に説明したように、本発明によれば、出力特性に優れるとともに、大電流を長時間にわたって安定に供給することのできる燃料電池を提供することができる。
【0069】
さらに、本発明によれば、上記のような燃料電池を簡単な手法で、容易にかつ歩留まりよく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による燃料電池で用いられる電極構造体の好ましい1実施形態を示した断面図である。
【図2】図2に示した電極構造体の主要部の拡大断面図である。
【図3】本発明による燃料電池の好ましい1実施形態を示した斜視図である。
【図4】図3に示した燃料電池の線分IV−IVにそった断面図である。
【図5】触媒含浸拡散層を備えた燃料電池(実施例1)の負荷特性をプロットしたグラフである。
【図6】触媒を含有しない拡散層を備えた燃料電池(比較例1)の負荷特性をプロットしたグラフである。
【図7】触媒含浸拡散層を備えた別の燃料電池(実施例2)の負荷特性をプロットしたグラフである。
【図8】触媒含浸拡散層を備えたさらに別の燃料電池(実施例3)の負荷特性をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
10…電極構造体
11…燃料極
11a…触媒層
11b…拡散層
11c…触媒含浸拡散層
12…空気極
12a…触媒層
12b…拡散層
12c…触媒含浸拡散層
13…固体電解質層
20A…燃料極集電体
20B…空気極集電体
30…燃料貯留部
40…電池筐体
41…スペーサ
42…パッキング材
43…パッキング材
50…燃料電池
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池に関し、さらに詳しく述べると、固体高分子からなる電解質層を、酸素を活物質として還元する正極と、燃料を酸化する負極との間に備えた固体高分子型燃料電池に関する。本発明はまた、かかる燃料電池の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば携帯電話、PDA、ノート型パソコンなどの携帯型電子機器において、小型化、軽量化、そして高機能化が進んでいることは周知の通りである。また、これらの電子機器の進展に伴い、駆動電源やメモリ保持電源となる電池も、小型化、軽量化、そして高容量化が確実に進んでいる。現在の携帯型電子機器においては、従来のニッケル・カドミウム電池や、ニッケル水素電池に代えて、リチウムイオン電池が駆動電源等として最も一般的に用いられている。リチウムイオン電池は、実用化の当初から、高い駆動電圧と電池容量をもち、携帯電子機器の進歩にあわせるように性能改善が図られてきた。しかし、リチウムイオン電池の性能改善にも限界があり、今後も高機能化が進む携帯型電子機器の駆動電源等としての要求を、リチウムイオン電池は満足できなくなりつつある。
【0003】
このような状況のもと、リチウムイオン電池に代わる新たな発電デバイスの開発が行われた結果、リチウムイオン電池の数倍の高容量化が期待される燃料電池が提案されるに至った。燃料電池は、触媒を含むアノード電極(負極)及びカソード電極(正極)と、これらの間において所定のイオンの移動を許容する電解質とからなる構造を有する。燃料電池においては、アノード電極に燃料ないし水素を供給するとともにカソード電極に空気ないし酸素を供給すると、電極に含まれる触媒の作用により各電極にて電気化学的な反応が起こり、燃料を供給源とする電子による直流電流を取り出すことができる。このようなメカニズムで発電する燃料電池においては、燃料及び酸素を供給し続けることにより連続発電が可能となる。したがって、燃料電池は、燃料及び酸素を補給することにより、充電操作により反復使用される二次電池と同様に、携帯型電子機器類の電源へと応用可能である。
【0004】
燃料電池は、その電解質の種類に基づいて、リン酸型、固体高分子型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型などに類別される。携帯型電子機器類の電源としては、室温付近の低温にて作動可能であること、小型に構成可能であること、振動に強く大量生産が容易な固体電解質を備えることなどから、固体高分子型の燃料電池(PEFC)が適している。
【0005】
固体高分子型燃料電池においては、燃料供給方法として、水素ガスを貯留して当該水素ガスをアノード電極に接触させる手法、有機燃料を貯留して当該有機燃料を改質することによって生ずる水素ガスをアノード電極に接触させる手法、水素を供給可能な液体燃料を貯留して当該液体燃料をアノード電極に対して直接に供給する手法などが知られている。水素ガスを使用する手法は、水素ガスの取り扱いが困難であったり、燃料を改質するための装置が必要であったりするため、携帯型電子機器等の小型電源としては適さない。そのため、携帯型電子機器等の小型電源を構成するという観点からは、液体燃料をアノード電極に直接に供給する方式を採用する燃料電池が注目を集めている。特に、液体燃料としてのメタノール水溶液を燃料極に対して直接に供給するダイレクトメタノール方式の燃料電池(DMFC)が注目を集めている。
【0006】
ダイレクトメタノール方式によると、メタノール水溶液が供給されたアノード電極では、下記の式(1)に示すように、メタノールと水が反応して、二酸化炭素(CO2 )、プロトン(H+ )及び電子(e− )が生ずる。すなわち、燃料電池ではメタノールが酸化分解される。アノード電極で生じたプロトンは高分子電解質膜を通ってカソード電極に向かい、電子は、アノード電極に接続された外部回路に流れる。外部回路にて仕事を終えた電子はカソード電極に向かう。また、二酸化炭素は系外に排出される。
【0007】
【化1】
【0008】
カソード電極では、下記の式(2)に示すように、空気から得られる酸素(O2 )と、アノード電極から電解質膜を経て到来したプロトン(H+ )と、カソード電極から外部回路を経て到来した電子(e− )とが反応して水(H2 O)が生成する。
【0009】
【化2】
【0010】
ダイレクトメタノール方式の固体高分子型燃料電池においては、アノード電極での式(1)の反応及びカソード電極での式(2)の反応が同時的に進行することによって、直流電流を取り出すことができる。また、メタノール水溶液及び酸素を供給し続けることにより、連続発電が可能である。
【0011】
ダイレクトメタノール方式を採用する従来の固体高分子型燃料電池では、アノード電極に供給される液体燃料に含まれるメタノールは、電解質膜に含浸している水中を拡散してカソード電極に達する場合がある。メタノールがアノード電極にて酸化分解されずに電解質膜を透過してカソード電極に到達してしまう現象、即ちメタノールのクロスオーバーが起こると、カソード電極に到達したメタノールがカソード電極で部分的に揮発するため、燃料が急速に減少し、理論容量に比べかなり小さい放電容量しか取り出せなくなってしまう。また、クロスオーバーによりカソード電極に到達したメタノールは部分的に触媒反応により分解されるため、カソード電位が低下し、ひいては燃料電池の出力が大きく低下してしまう。
【0012】
したがって、従来の固体高分子型燃料電池では、クロスオーバー等の問題を引き起こすことなく出力特性を高めるためには、燃料電池の触媒層を転写法で形成するのが最も効果的であると考えられている。例えば、少なくとも電極基材と電極触媒層とから構成される電極を備え、20μm以下の抑制された厚さで電極触媒層が電極基材の中に染み込んでいることを特徴とする固体高分子型燃料電池では、電極触媒塗液を転写基材上に塗布して電極触媒層を形成し、これをさらにプロトン交換膜上に転写する方法を提案している(特許文献1)。また、高分子電解質と溶媒とを含む溶液を液体の表面に展開した後、前記溶媒を蒸発させることで、前記液体表面に前記高分子電解質の固体膜を形成する工程と、触媒を担持した導電性炭素粒子を含む触媒層に前記固体膜を転写し、張り合せる工程を有することを特徴とする燃料電池用電解質膜−電極接合体の製造方法も提案されている(特許文献2)。
【0013】
【特許文献1】
特開2001−216972号公報(特許請求の範囲、段落0091〜0093)
【特許文献2】
特開2002−280014号公報(特許請求の範囲、段落0011〜0013)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記したような転写法によって燃料電池の触媒層を形成した場合、大電流を長時間にわたって安定に流すことができないという問題が新たに発生している。この問題の発生原因は、燃料電池中の燃料の濃度が時間の経過とともに薄くなるとともに、触媒中で発生する二酸化炭素(CO2)が燃料の供給を妨げることにあると考察される。つまり、燃料は、燃料電池の拡散層(例えば、カーボンペーパー)まではスムーズに到達することができるが、転写によって形成された触媒層までは、経過時間とともに到達しにくくなり、十分な反応ができなくなっているからである。
【0015】
本発明の目的は、したがって、出力特性に優れるとともに、大電流を長時間にわたって安定に供給することのできる燃料電池を提供することにある。
【0016】
また、本発明の目的は、上記のような燃料電池を簡単な手法で、容易にかつ歩留まりよく製造する方法を提供することにある。
【0017】
本発明の上記した目的やその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を解決すべく鋭意研究した結果、燃料電池の触媒層を転写法で作製するとともに、触媒層に積層される拡散層(例えば、カーボンペーパー)の触媒層側に触媒を集中的あるいは選択的に分布せしめるのが有効な手段であることを発見し、本発明を完成した。
【0019】
本発明は、その1つの面において、燃料を収容した燃料貯留部と、該燃料貯留部に隣接して配置された電極構造体とを含む燃料電池であって、前記電極構造体が、
酸素を活物質として還元する正極と、燃料を酸化する負極と、正極及び負極の間に配置された固体高分子からなる電解質層とを備え、かつ
転写法で積層された触媒層と、該触媒層に積層された、前記触媒層で使用されている触媒と同一もしくは異なる触媒を前記触媒層側に含浸させた触媒含浸拡散層とを有していることを特徴とする燃料電池にある。
【0020】
また、本発明は、そのもう1つの面において、燃料を収容した燃料貯留部と、該燃料貯留部に隣接して配置された電極構造体とを含む燃料電池を製造する方法であって、
前記電極構造体を、酸素を活物質として還元する正極と、燃料を酸化する負極と、正極及び負極の間に配置された固体高分子からなる電解質層とを備えるように作製する工程、及び
触媒層を転写法で作製した後、前記触媒層で使用されている触媒と同一もしくは異なる触媒を前記触媒層側に含浸させた触媒含浸拡散層を前記触媒層に積層する工程
を含むことを特徴とする燃料電池の製造方法にある。
【0021】
燃料電池で高出力を得ようとした場合、クロスオーバーの発生等を考慮すると、転写法により触媒層を形成するのが最も効果的であると考察される。しかし、従来の構成を採用した燃料電池の場合、燃料は、拡散層(例えば、カーボンペーパー)まではスムーズに到達できるけれども、転写法により形成された触媒層には到達しにくい。したがって、時間の経過とともに燃料濃度の低下や、触媒層中で発生する二酸化炭素(CO2)等の影響が顕著となり、下記の比較例1で図5を参照して説明するように、大電流を長時間維持することが困難となる。
【0022】
しかし、本発明に従い例えば触媒を塗布し、含浸させたカーボンペーパーを拡散層として燃料電池に組み込むと、燃料の供給がスムーズに進むカーボンペーパー中でも反応を行わせることができる。また、カーボンペーパー上に塗布した触媒にはプロトン伝導性高分子も含まれているので、カーボンペーパー中で発生したプロトンは、転写法による触媒層を通して電解質層に到達することができるため、より速やかな反応の進行が可能となる。すなわち、転写法によって触媒層を形成することにより高出力が得られ、かつプロトン伝導性高分子含有の触媒を塗布したカーボンペーパーを拡散層として積層することにより、燃料の供給がスムーズに進み、大電流を流すことが可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明は、上記したように、燃料電池及びその製造方法にある。以下、これらの発明を添付の図面を参照しながら、特にダイレクトメタノール方式の燃料電池(DMFC)に関して説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明による燃料電池で用いられる電極構造体は、通常、酸素を活物質として還元する正極(カソード電極)と、燃料を酸化する負極(アノード電極)と、これらの電極の間に配置された電解質層と、電解質層の両側に配置された触媒層とを含むように構成される。このような電極構造体の構成は、従来技術の項で一般的に説明した通りである。
【0025】
このような基本構成を備えた電極構造体は、転写法で作製された触媒層と、該触媒層に積層された、その触媒層で使用されている触媒と同一もしくは異なる触媒を前記触媒層側に集中的あるいは選択的に分布せしめた触媒含浸拡散層とを有していることを特徴とする。すなわち、拡散層は、従来の燃料電池のそれのように単層構造を有するのではなくて、触媒層側に位置する触媒含浸拡散層と、触媒層とは離れた側に位置する非触媒含浸拡散層との2層構造を有するように構成される。拡散層に含浸せしめられる触媒は、触媒層の触媒と同一であるのが一般的に好ましいが、必要ならば、触媒層の触媒と異なるものであってもよい。拡散層における触媒の含浸は、いろいろな手法に従って行うことができるけれども、触媒層の側に含浸させることと作業性などを考慮した場合、塗布法などが好適である。
【0026】
図1は、本発明による燃料電池で用いられる電極構造体の好ましい1実施形態を示した断面図である。電極構造体10は、特にDMFC用に設計されたもので、燃料極11、空気極12及び電解質層13ならびに集電体20A及び20Bからなっている。また、燃料極11は、触媒層11a及び拡散層11bによる積層構造を有し、触媒層11aの側で電解質層13と接合している。拡散層11bは、図2に一部を拡大して示すように、その内部に触媒が含浸せしめられていない拡散層(本発明では、単に「拡散層」と呼ぶか、さもなければ、「非触媒含浸拡散層」と呼ぶ)11bに加えて、本発明に従い触媒が含浸せしめられた触媒含浸拡散層11cを、触媒層11aの側に有している。また、空気極12は、触媒層12a及び拡散層12bによる積層構造を有し、触媒層12aの側で電解質層13と接合している。拡散層12bは、上記した拡散層11bと同様に、その内部に触媒が含浸せしめられていない拡散層(本発明では、単に「拡散層」と呼ぶか、さもなければ、「非触媒含浸拡散層」と呼ぶ)12bに加えて、本発明に従い触媒が含浸せしめられた触媒含浸拡散層12cを、触媒層12aの側に有している。なお、図示の例では、電解質層13の両側に配置された拡散層11b及び12bがそれぞれ触媒含浸拡散層11c及び12cを有しているけれども、触媒含浸拡散層は、所望ならば、正極及び負極のいずれか一方、すなわち、電解質層13の片側のみに配置してもよい。
【0027】
電極構造体10の構成についてさらに説明すると、燃料極11の触媒層11aは、上記した式(1)で表されるように、メタノールを酸化してプロトンと電子を取り出すためのものであり、導電粒子に触媒を担持させてなる触媒性粒子と、電解質層形成用の後述するプロトン伝導性高分子材料との混合物を含み、好ましくは多孔質構造を有している。導電粒子としては、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラックなどの炭素粒子が挙げられる。触媒としては、白金(Pt)−ルテニウム(Ru)合金などを採用することができる。導電粒子の粒径は、通常、約0.01〜0.1μmの範囲であり、また、触媒の粒径は、通常、約2〜5nmの範囲である。さらに、触媒層11aの厚さは、通常、約2〜30μmの範囲である。さらにまた、触媒層11aに多数含まれる細孔の孔径は、特に限定されるものではないけれども、通常、約0.05〜5.0μmの範囲であり、さらに好ましくは、約0.1〜1.0μmの範囲である。また、触媒層11aの空孔率(触媒層の全体積から触媒性粒子とプロトン伝導性高分子材料の占める体積を減じたものを、触媒層の全体積で除した百分率、%)は、特に限定されるものではないけれども、通常、約10〜95%の範囲であり、好ましくは、約50〜95%の範囲である。
【0028】
燃料極11の拡散層11bは、燃料極11に供給された液体燃料であるメタノール水溶液が触媒層11aに至る前に拡散する場を提供するためのものであり、多孔質導電膜よりなる。拡散層11bの多孔質導電膜は、いろいろな材料から形成することができるけれども、好ましくは、導電性粒子を含む導電性シート又はフィルムから形成することができる。導電性粒子は、好ましくは導電性の無機材料粒子であり、さらに好ましくは、繊維状もしくは粒子状のカーボンである。特に、カーボンペーパーやカーボンクロスがこの目的に好適である。燃料極11に供給されたメタノール水溶液は、拡散層11bにて拡散することにより、触媒層11aへと効率良く行き渡ることとなる。拡散層11bの厚さは、通常、約100〜400μmの範囲である。
【0029】
図示の電極構造体10では、拡散層11bの構成及び形成に特徴がある。まず、拡散層11bは、上記したように、その触媒層11aの側に触媒含浸拡散層11cを有している。すなわち、拡散層11bは、その膜厚全体について触媒を均一に有しているのでなくて、触媒層11aの側に触媒が集中的に分布するように有している。触媒含浸拡散層11cの触媒は、触媒層11aで使用されている触媒と同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0030】
触媒含浸拡散層11cは、電極構造体を製造する工程の任意の段階で形成し、転写法で作製された触媒層に積層することができる。触媒含浸拡散層11cは、電極構造体の製造工程の途中で現場で形成するのが一般的であるけれども、所望ならば、別の場所で触媒含浸拡散層11cを形成した後、電極構造体の製造工程に搬送して、触媒層に積層してもよい。触媒含浸拡散層11cは、前記した通り、正極及び負極の両方に設けてもよく、いずれか一方のみに設けてもよい。
【0031】
触媒含浸拡散層11cは、拡散層11bの流れをくむものであるので、好ましくは多孔質の導電性シート、例えば繊維状もしくは粒子状のカーボンからなるシート、例えばカーボンペーパー、カーボンクロスなどから形成することができる。
【0032】
拡散層11bとしてカーボンペーパー等の導電性シートを用意した後、それに触媒を適用して触媒含浸拡散層11cを形成する。導電性シートに対する触媒の適用は、得られる触媒含浸拡散層において触媒が所望の形で含浸せしめられる限りにおいて特に限定されるわけではないけれども、触媒の溶液やペーストを導電性シートの表面に塗布して、導電性シートの表面領域に触媒を選択的に含浸させる方法が一般的である。例えば、触媒ペーストは、白金、ルテニウム又はその混合物のような触媒を水、アルコールなどと混練して、塗布に好適な粘度とすることができる。塗布方法としては、バーコート、ディップコート、スクリーン印刷など、常用の方法を使用することができる。
【0033】
触媒含浸拡散層11cの厚さ、すなわち、拡散層全体の厚さに占める触媒の含浸深さは、所望とする効果などに応じて広い範囲で変更することができるけれども、通常、触媒含浸拡散層11cの厚さを拡散層全体の厚さ(触媒含浸拡散層と拡散層の厚さの合計)の1/3以下に調整することが好ましい。具体的には、例えば、拡散層の厚さが200μmである時、触媒含浸拡散層の厚さを100μm以下に調整することが好ましい。
【0034】
触媒層11aならびに拡散層11b及び触媒含浸拡散層11cによる積層構造を有する多孔質性の燃料極11は、いろいろな方法で作製することができる。一例を示すと、まず、触媒性粒子とプロトン伝導性高分子材料とを、水溶媒系、アルコール溶媒系、または、水−アルコール溶媒系にて混合し、これを脱泡して電極ペーストを調製する。次に、触媒層11a及び拡散層11bの上にそれぞれ電極ペーストを塗布ないし充填した後、例えば100℃にて加熱乾燥する。加熱乾燥には、好ましくは恒温槽が用いられる。拡散層11bである多孔質導電膜の上における電極ペーストのみに由来する材料厚さは、通常、約5〜50μmの範囲である。
【0035】
触媒層11a及び拡散層11bの硬化が完了した後、予め用意した電解質層に触媒層11aを電解ペースト側が電解質層に接するように張り合わせ、熱プレスする。この熱プレスは、触媒層11aにおける触媒量を所望値に調整するため、複数回にわたって反復することが好ましい。その後、張り合わせ後の触媒層11aに拡散層11bを積層し、再び熱プレスする。このようにして、触媒層11aならびに拡散層11b及び触媒含浸拡散層11cによる積層構造を有する多孔質性の燃料極11が得られる。
【0036】
空気極12の触媒層12aは、上記した式(2)で表されるように、空気中の酸素の還元反応を進行させるためのものであり、導電粒子に触媒を担持させてなる触媒性粒子と、電解質層形成用の後述するプロトン伝導性高分子材料との混合物を含み、多孔質である。触媒については、白金(Pt)や白金(Pt)−ルテニウム(Ru)合金などを採用することができる。触媒の粒径は、通常、約2〜5nmの範囲である。導電粒子については、触媒層11aの形成に使用したものと同様のものを使用することができる。触媒層12aの厚さは、通常、約2〜30μmの範囲である。
【0037】
空気極12の拡散層12bは、空気極12に流通接触する空気が触媒層12aに至る前に拡散する場を提供するためのものであり、上記した拡散層11bと同様に、好ましくはカーボンペーパー、カーボンクロスなどの多孔質導電膜よりなる。拡散層12bにて空気が拡散することにより、当該空気ひいては酸素は、触媒層12aへと効率良く行き渡ることとなる。拡散層12bの厚さは、通常、約100〜400μmの範囲である。
【0038】
図示の電極構造体10では、拡散層11bと同様に、拡散層12bの構成及び形成にも特徴がある。なお、拡散層11bの特徴と拡散層12bの特徴はほぼ同じであるので、以下、拡散層12bの特徴を簡単に説明する。
【0039】
まず、拡散層12bは、その触媒層12aの側に触媒含浸拡散層12cを有している。触媒含浸拡散層12cの触媒は、触媒層12aで使用されている触媒と同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0040】
触媒含浸拡散層12cは、電極構造体を製造する工程の任意の段階で形成し、転写法で作製された触媒層に積層することができる。触媒含浸拡散層12cは、電極構造体の製造工程の途中で現場で形成するのが一般的であるけれども、所望ならば、別の場所で触媒含浸拡散層12cを形成した後、電極構造体の製造工程に搬送して、触媒層に積層してもよい。触媒含浸拡散層12cは、正極及び負極の両方に設けてもよく、いずれか一方のみに設けてもよい。
【0041】
触媒含浸拡散層12cは、好ましくは多孔質の導電性シート、例えば繊維状もしくは粒子状のカーボンからなるシート、例えばカーボンペーパー、カーボンクロスなどから形成することができる。拡散層12bとしてカーボンペーパー等の導電性シートを用意した後、それに触媒を適用して触媒含浸拡散層12cを形成する。導電性シートに対する触媒の適用としては、触媒の溶液やペーストを導電性シートの表面に塗布して、導電性シートの表面領域に触媒を選択的に含浸させる方法が一般的である。塗布方法としては、バーコート、ディップコート、スクリーン印刷など、常用の方法を使用することができる。
【0042】
触媒含浸拡散層12cの厚さは、広い範囲で変更することができるけれども、通常、触媒含浸拡散層12cの厚さを拡散層全体の厚さの1/3以下に調整することが好ましい。具体的には、例えば、拡散層の厚さが200μmである時、触媒含浸拡散層の厚さを100μm以下に調整することが好ましい。
【0043】
触媒層12aならびに拡散層12b及び触媒含浸拡散層12cによる積層構造を有する多孔質性の空気極12は、燃料極11に関して上述した方法と同様な方法で作製することができる。
【0044】
電解質層13は、燃料極11におけるメタノール酸化反応で生成したプロトンを空気極12に輸送するための媒体であり、電子伝導性を有さずにプロトン伝導性を有する高分子材料よりなる。そのような高分子材料の好適な例としては、パーフルオロスルホン酸膜などが挙げられる。パーフルオロスルホン酸膜としては、例えば、Nafion膜(DuPont社製)、フレミオン膜(旭硝子製)、アシプレックス膜(旭化成工業製)、ダウ膜(ダウケミカル社製)などが挙げられる。電解質層13の厚さは、通常、約50〜250μmの範囲である。
【0045】
電極構造体10は、いろいろな手法によって作製することができる。好ましい一例を示すと、まず、電解質層13を、燃料極11及び空気極12により挟む。このとき、電解質層13に対して、燃料極11は触媒層11aを介して電解質層13に貼り合わせるとともに、空気極12は触媒層12aを介して電解質層13に貼り合わせる。次に、加熱条件下、当該貼り合せ体を積層方向に加圧して接合する。この接合処理のため、通常熱プレス機を有利に使用することができるけれども、所望ならば、その他の貼り合わせ手段を採用してもよい。
【0046】
集電体20Aは、燃料極11におけるメタノール酸化反応で発生する電子を取り出すためのものであり、例えばSUS製やNi製の金属メッシュである。集電体20Aとしては、液体燃料であるメタノール水溶液が容易に通過可能なメッシュ開口径ないしメッシュ開口率を有するものを採用する。集電体20Aは、図3及び図4に示す電池筐体40の表面に設けられた外部接続用端子(図示せず)と電気的に接続している。集電体20Aと電気的に接続する端子は、燃料電池50の負極である。
【0047】
集電体20Bは、触媒層12aに対して効率的に電子を供給するためのものであり、例えばSUS製やNi製の金属メッシュである。集電体20Bは、電極構造体10の空気極12と接合ないし面接触するとともに電気的に接続している。集電体20Bとしては、空気極12に対して空気ないし酸素が自然拡散により充分に接触可能であるとともに、空気極12における酸素還元反応で生成する水を適切に蒸散排出可能なメッシュ開口径ないしメッシュ開口率を有するものを採用する。集電体20Bは、図3及び図4に示す電気筐体40の表面に設けられた更なる外部接続用端子(図示せず)と電気的に接続している。集電体20Bと電気的に接続する端子は、燃料電池50の正極である。
【0048】
図3は、本発明による燃料電池の好ましい1実施形態を示した斜視図であり、また、図4は、図3に示した燃料電池の線分IV−IVにそった断面図である。これらの図面に示されるように、燃料電池50は、電極構造体10と、燃料貯留部30と、これらを収容する電池筐体40とを備える。また、電極構造体10は、図1を参照して先に説明したように、燃料極11、空気極12及び電解質層13からなる燃料電池本体と、集電体20A及び20Bとからなっている。また、燃料極11は、触媒層11aならびに拡散層11b及び触媒含浸拡散層11cによる積層構造を有し、触媒層11aの側で電解質層13と接合している。さらに、空気極12は、触媒層12aならびに拡散層12b及び触媒含浸拡散層12cによる積層構造を有し、触媒層12aの側で電解質層13と接合している。
【0049】
電極構造体10(集電体20A及び20Bを含む)による積層構造は、図4に示すように、スペーサ41及びパッキング材42及び43とともに電池筐体40に収容されている。収容状態において、電池筐体40の内部には燃料貯留部30が規定される。スペーサ41には、所定の開口部41aが設けられている。開口部41aは、円形であってもよいし、スリット状であってもよい。この開口部41aを介して、集電体20Aは燃料貯留部30に露出している。パッキング材42は、電極構造体10による積層構造における周縁部の略全体と電池筐体40との間の隙間を封止するためのものである。また、パッキング材43は、燃料貯留部30を規定しつつ、燃料貯留部30からの燃料漏れを防止するためのものである。
【0050】
燃料貯留部30は、メタノール水溶液(図示せず)が直接的に貯留される小型タンクとして構成されており、メタノール水溶液またはメタノールを適宜補充するための注入口(図示せず)を有する。本発明の実施において、メタノール水溶液は、いろいろなメタノール濃度で使用することができるけれども、通常、10体積%もしくはそれ以上のメタノール濃度が好ましく、さらに好ましくは、約10〜30体積%の範囲である。このようなメタノール水溶液は、高い発電効率を達成するための液体燃料として好適である。また、図示の例はDMFCであり、燃料としてメタノール水溶液を使用しているが、異なるタイプのPEFCの場合、メタノール水溶液以外の燃料を使用してもよい。
【0051】
電池筐体40は、開口部40aを有する。この開口部40aを介して、集電体20Bは燃料電池50の外部に露出している。また、電池筐体40において燃料貯留部30を規定する所定の箇所には、燃料貯留部30と電池外部との間の隔壁として、二酸化炭素透過膜(図示せず)が配設されている。二酸化炭素透過膜は、液体燃料を実質的に透過させずに二酸化炭素を選択的に透過させる膜であり、この膜を介して、燃料極11における電池反応で生成する二酸化炭素は排出される。二酸化炭素透過膜を構成する材料としては、例えば、シリコーンゴムやフッ素系樹脂、ポリイミドなどが挙げられる。
【0052】
燃料電池50においては、燃料貯留部30に液体燃料すなわちメタノール水溶液が貯留されていると、当該メタノール水溶液は、スペーサ41の開口部41aを介して燃料貯留部30から燃料極11に至る。そして、燃料極11では、メタノール水溶液は、メッシュ状の集電体20Aを通過して触媒層11aに至る。これとともに、電池筐体40の開口部40aを介して外気に触れる空気極12には、空気に含まれる酸素が常時的に接触する。空気極12では、酸素は、メッシュ状の集電体20Bを通過して触媒層12aに至る。燃料極11に対してメタノール水溶液が供給されるとともに空気極12に対して酸素が供給されると、燃料極11の触媒層11aでは、触媒の作用により、上記した式(1)で表されるメタノール酸化反応が起こり、二酸化炭素、プロトン及び電子が発生する。また、空気極12の触媒層12aでは、触媒の作用により、上記した式(2)で表される酸素還元反応が起こり、水が生成する。この水は、自然蒸散する。両極において、このような電気化学反応が進行することにより、燃料電池50が発電する。
【0053】
以上のような構成を有する燃料電池50において、燃料貯留部30から拡散層11bを経て触媒層11aに供給されたメタノールのうち触媒層11aで分解されなかったメタノールが電解質層13を介して触媒層12aに到達するおそれがある場合、空気極12と電解質層13との間に撥水層を挟み込むのが好ましい。撥水層は、好ましくは、撥水性を有する粒子と、プロトン伝導性高分子とから構成することができる。撥水性を有する粒子としては、例えば、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラック等の炭素粒子、上述した触媒性粒子、ポリスチレン等の高分子粒子などの粒子表面をシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、シラン系樹脂などの撥水性樹脂でコーティングすることにより撥水処理を施した粒子、あるいはシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、シラン系樹脂などの撥水性樹脂からなる粒子などが挙げられる。また、プロトン伝導性高分子としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系高分子などが挙げられる。パーフルオロスルホン酸系高分子としては、例えば、Nafion(DuPont社製)などが挙げられる。撥水層の厚さは、通常、約5〜50μmの範囲である。
【0054】
撥水層の存在によってメタノールのクロスオーバーを抑制することができ、したがって、クロスオーバーしたメタノールが部分的に触媒層12aでの触媒反応により分解されて空気極12側の電位が低下することに起因する燃料電池50の出力の低下、及びクロスオーバーしたメタノールが部分的に空気極12で揮発してメタノールが急速に減少することに起因する燃料電池50の放電容量の低下を、効果的に抑制することができる。
【0055】
【実施例】
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
実施例1
燃料電池の作製:
まず、燃料極の作製のため、一次粒子径40nm程度のケッチェンブラック粒子(商品名:EC、ライオン社製)に、触媒としての粒径2〜5nm程度の白金−ルテニウム合金(Pt:Ru=1:1.5、重量%比)を担持させた触媒性カーボン粒子(商品名:TEC61E54E、田中貴金属製)200mgと、20重量%のNafion溶液(商品名:Nafion SE20042、DuPont社製)1gとを、水0.5gの水溶媒系にて混合し、これを脱泡して電極ペーストを調製した。
【0056】
次に、拡散層として用意したカーボンペーパー(商品名:TGP−H−090、東レ製、膜厚290μm)の上に当該電極ペーストをバーコータ−で塗布ないし充填した後、100℃の恒温槽で加熱乾燥した。カーボンペーパー上における電極ペーストのみに由来する材料厚さ、すなわち触媒含浸拡散層の湿潤厚さは、180μmであった。
【0057】
さらに、上記燃料極の作製と同様な手法で空気極を作製した。但し、空気極の場合、白金−ルテニウム合金を担持する触媒性カーボン粒子に代えて、一次粒子径40nm程度のケッチェンブラック粒子(商品名:EC、ライオン社製)に、触媒としての粒径4nmの白金を担持させた触媒性カーボン粒子(商品名:TEC10E50E、田中貴金属製)を使用して電極ペーストを調製した。触媒性カーボン粒子における白金の含有率は、50重量%であった。カーボンペーパー上における電極ペーストのみに由来する材料厚さ、すなわち触媒含浸拡散層の湿潤厚さは、180μmであった。
【0058】
引き続いて、触媒層を転写法で形成するため、テフロンTMシートの上に燃料極の形成のために調製した前記電極ペーストをバーコータ−で塗布ないし充填した後、100℃の恒温槽で加熱乾燥した。テフロンTMシート上における電極ペーストの湿潤厚さは、180μmであった。
【0059】
引き続いて燃料電池を作製した。電解質層を構成するため、膜厚175μmのプロトン伝導性高分子電解質膜(商品名:Nafion NF117、DuPont社製)を用意した。先の工程で作製したテフロンTMシートを所定のサイズに切り出した後、プロトン伝導性高分子電解質膜の両面にそれぞれ電極ペーストが当接するように張り合わせ、得られたサンドイッチ構造体を積層方向に130℃で2分間熱プレスし、接合した。熱プレスは、転写される触媒量の増加のために3回にわたって反復した。
【0060】
最後の熱プレス工程が完了した後、テフロンTMシートを剥離除去し、サンドイッチ構造体の片面に上述のようにして作製した空気極を触媒層を介して貼り合わせ、また、そのもう1つの面に上述のようにして作製した燃料極を触媒層を介して貼り合わせた。次いで、積層後のサンドイッチ構造体を積層方向に130℃で2分間熱プレスし、接合した。
【0061】
上記のようにして電極構造体の本体を作製した後、燃料極及び空気極におけるカーボンペーパー露出面側に対して、集電体としてSUS製の金属メッシュ(厚さ:0.1mm、開口部形、〔対角線3mm×1.5mm〕、開口率:70%、商品名:エキスパンドメタル、サンク株式会社製)を積層した。
【0062】
得られた電極構造体を、先に図3及び図4を参照して説明した、空気極側に開口部を有する電池筐体に収容した。電池筐体の内部に規定された燃料貯留部には、液体燃料として、メタノール濃度が10体積%のメタノール水溶液を3.0mlの量で注入した。図4に構成を示した燃料電池が得られた。
出力電流の測定:
2枚のプロトン伝導性高分子電解質膜(Nafion NF117)を重ね合わせて電解質層を形成した違いを除いて、上記と同様な手法に従って供試燃料電池を作製した。
【0063】
次いで、得られた供試燃料電池について、次のような手順で出力電流を測定した。まず、10mAで10分間エージングを行った後、0.55Vで5分間、0.5Vで5分間、0.45Vで5分間、0.4Vで5分間、0.35Vで5分間、0.3Vで5分間、0.25Vで5分間、0.2Vで5分間、0.15Vで5分間、0.1Vで5分間、そして0.05Vで5分間、各電圧ごとに定電圧連続放電を行い、所定の放電時間に対する出力電流を測定した。得られた測定結果を放電時間に対する電圧及び出力電流としてプロットしたところ、図5に示すグラフが得られた。
比較例1
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、比較のため、燃料極及び空気極の作製において電極ペーストの含浸によって触媒含浸拡散層を形成する工程を省略した。
【0064】
得られた供試燃料電池について、前記実施例1に記載の手法に従って出力電圧の測定を行った。得られた測定結果を放電時間に対する電圧及び出力電流としてプロットしたところ、図6に示すグラフが得られた。
[評価]
図6の測定結果を図5の測定結果と対比すると、図5(実施例1)の燃料電池の場合、800mA程度の大電流を安定に維持できたのに反して、図6(比較例1)の燃料電池の場合、たかだか400mA程度までしか電流を維持することができず、しかも電流値に経時変化があるということがわかる。換言すると、これらの測定結果から、触媒が含浸されたカーボンペーパーを電極構造体の拡散層として使用することにより、高出力のまま大電流を維持することが可能であることがわかる。
実施例2
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、燃料極の作製において、触媒含浸拡散層の湿潤厚さを180μmから60μmに変更した。
【0065】
得られた供試燃料電池について、前記実施例1に記載の手法に従って出力電圧の測定を行った。得られた測定結果を放電時間に対する電圧及び出力電流としてプロットしたところ、図7に示すグラフが得られた。
実施例3
前記実施例1に記載の手法を繰り返したが、本例では、燃料として使用したメタノール水溶液の濃度を10体積%から20体積%に増加させた。
【0066】
得られた供試燃料電池について、前記実施例1に記載の手法に従って出力電圧の測定を行った。得られた測定結果を放電時間に対する電圧及び出力電流としてプロットしたところ、図8に示すグラフが得られた。
【0067】
以上、本発明を特にその実施の形態について説明した。最後のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
(付記1)燃料を収容した燃料貯留部と、該燃料貯留部に隣接して配置された電極構造体とを含む燃料電池であって、前記電極構造体が、
酸素を活物質として還元する正極と、燃料を酸化する負極と、正極及び負極の間に配置された固体高分子からなる電解質層とを備え、かつ
転写法で積層された触媒層と、該触媒層に積層された、前記触媒層で使用されている触媒と同一もしくは異なる触媒を前記触媒層側に含浸させた触媒含浸拡散層とを有していることを特徴とする燃料電池。
(付記2)前記触媒層と前記触媒含浸拡散層の積層体が、前記正極及び前記負極のいずれか一方もしくは両方に設けられていることを特徴とする付記1に記載の燃料電池。
(付記3)前記触媒含浸拡散層が、多孔質の導電性シートからなることを特徴とする付記1又は2に記載の燃料電池。
(付記4)前記導電性シートが、繊維状もしくは粒子状のカーボンからなることを特徴とする付記3に記載の燃料電池。
(付記5)前記導電性シートが、カーボンペーパーであることを特徴とする付記4に記載の燃料電池。
(付記6)前記触媒含浸拡散層が、拡散層の形成後にその拡散層に前記触媒の溶液もしくはペーストを塗布して前記触媒を表面領域に選択的に含浸させたものであることを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池。
(付記7)前記触媒含浸拡散層の厚さが、前記拡散層及び前記触媒含浸拡散層の厚さの合計の1/3以下であることを特徴とする付記6に記載の燃料電池。
(付記8)前記触媒含浸拡散層の厚さが、100μm以下であることを特徴とする付記7に記載の燃料電池。
(付記9)前記燃料がメタノール水溶液であり、かつ前記燃料電池が、ダイレクトメタノール方式の燃料電池であることを特徴とする付記1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池。
(付記10)燃料を収容した燃料貯留部と、該燃料貯留部に隣接して配置された電極構造体とを含む燃料電池を製造する方法であって、
前記電極構造体を、酸素を活物質として還元する正極と、燃料を酸化する負極と、正極及び負極の間に配置された固体高分子からなる電解質層とを備えるように作製する工程、及び
触媒層を転写法で作製した後、前記触媒層で使用されている触媒と同一もしくは異なる触媒を前記触媒層側に含浸させた触媒含浸拡散層を前記触媒層に積層する工程
を含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。
(付記11)前記触媒層と前記触媒含浸拡散層の積層体を、前記正極及び前記負極のいずれか一方もしくは両方に設けることを特徴とする付記10に記載の燃料電池の製造方法。
(付記12)前記触媒含浸拡散層を多孔質の導電性シートから構成することを特徴とする付記10又は11に記載の燃料電池の製造方法。
(付記13)前記導電性シートを繊維状もしくは粒子状のカーボンから形成することを特徴とする付記12に記載の燃料電池の製造方法。
(付記14)前記導電性シートとしてカーボンペーパーを使用することを特徴とする付記13に記載の燃料電池の製造方法。
(付記15)拡散層の形成後にその拡散層の表面に前記触媒の溶液もしくはペーストを塗布して、前記触媒を表面領域に選択的に含浸させた前記触媒含浸拡散層を形成することを特徴とする付記10〜14のいずれか1項に記載の燃料電池の製造方法。
(付記16)前記触媒含浸拡散層の厚さを前記拡散層及び前記触媒含浸拡散層の厚さの合計の1/3以下に調整することを特徴とする付記15に記載の燃料電池の製造方法。
(付記17)前記触媒含浸拡散層の厚さを100μm以下に調整することを特徴とする付記16に記載の燃料電池の製造方法。
(付記18)メタノールの水溶液を燃料として前記燃料貯留部に装填し、ダイレクトメタノール方式の燃料電池となすことを特徴とする付記10〜17のいずれか1項に記載の燃料電池の製造方法。
(付記19)10体積%以上の濃度でメタノールを使用することを特徴とする付記18に記載の燃料電池の製造方法。
【0068】
【発明の効果】
以上に詳細に説明したように、本発明によれば、出力特性に優れるとともに、大電流を長時間にわたって安定に供給することのできる燃料電池を提供することができる。
【0069】
さらに、本発明によれば、上記のような燃料電池を簡単な手法で、容易にかつ歩留まりよく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による燃料電池で用いられる電極構造体の好ましい1実施形態を示した断面図である。
【図2】図2に示した電極構造体の主要部の拡大断面図である。
【図3】本発明による燃料電池の好ましい1実施形態を示した斜視図である。
【図4】図3に示した燃料電池の線分IV−IVにそった断面図である。
【図5】触媒含浸拡散層を備えた燃料電池(実施例1)の負荷特性をプロットしたグラフである。
【図6】触媒を含有しない拡散層を備えた燃料電池(比較例1)の負荷特性をプロットしたグラフである。
【図7】触媒含浸拡散層を備えた別の燃料電池(実施例2)の負荷特性をプロットしたグラフである。
【図8】触媒含浸拡散層を備えたさらに別の燃料電池(実施例3)の負荷特性をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
10…電極構造体
11…燃料極
11a…触媒層
11b…拡散層
11c…触媒含浸拡散層
12…空気極
12a…触媒層
12b…拡散層
12c…触媒含浸拡散層
13…固体電解質層
20A…燃料極集電体
20B…空気極集電体
30…燃料貯留部
40…電池筐体
41…スペーサ
42…パッキング材
43…パッキング材
50…燃料電池
Claims (5)
- 燃料を収容した燃料貯留部と、該燃料貯留部に隣接して配置された電極構造体とを含む燃料電池であって、前記電極構造体が、
酸素を活物質として還元する正極と、燃料を酸化する負極と、正極及び負極の間に配置された固体高分子からなる電解質層とを備え、かつ
転写法で積層された触媒層と、該触媒層に積層された、前記触媒層で使用されている触媒と同一もしくは異なる触媒を前記触媒層側に含浸させた触媒含浸拡散層とを有していることを特徴とする燃料電池。 - 前記触媒含浸拡散層が、多孔質の導電性シートからなることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
- 前記導電性シートが、繊維状もしくは粒子状のカーボンからなることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池。
- 前記触媒含浸拡散層が、拡散層の形成後にその拡散層に前記触媒の溶液もしくはペーストを塗布して前記触媒を表面領域に選択的に含浸させたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池。
- 燃料を収容した燃料貯留部と、該燃料貯留部に隣接して配置された電極構造体とを含む燃料電池を製造する方法であって、
前記電極構造体を、酸素を活物質として還元する正極と、燃料を酸化する負極と、正極及び負極の間に配置された固体高分子からなる電解質層とを備えるように作製する工程、及び
触媒層を転写法で作製した後、前記触媒層で使用されている触媒と同一もしくは異なる触媒を前記触媒層側に含浸させた触媒含浸拡散層を前記触媒層に積層する工程
を含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。
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JP2008251179A (ja) * | 2007-03-29 | 2008-10-16 | Dainippon Printing Co Ltd | 固体高分子型燃料電池用電極 |
CN113169365A (zh) * | 2018-08-23 | 2021-07-23 | 凸版印刷株式会社 | 膜电极接合体 |
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2003
- 2003-05-14 JP JP2003135722A patent/JP2004342393A/ja active Pending
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