JP2007299705A - 固体高分子型燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明では、低温度で電解質膜と触媒層とを接合でき、膜電極接合体を作製した後燃料電池に用いた場合、運転条件が変化した時に発生する電解質膜への機械的なストレスにより電解質膜が破断しない、耐久性に優れた膜電極接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、高分子電解質膜の両側に一対の電極触媒層が設けられた膜電極接合体の製造方法において、
カチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質と、一種以上のカチオンを含む化合物と、を混合し、前記高分子電解質膜を調製する段階と(I)、
前記高分子電解質膜と電極触媒層とを接合する段階と(II)、
を有する膜電極接合体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、膜電極接合体の製造方法、特に燃料電池用の膜電極接合体の製造方法に関し、より詳細には非フッ素系高分子電解質を用いた耐久性に優れた、特に燃料電池用の膜電極接合体の製造方法に関する。
現在、地球に優しいエネルギー源として水素エネルギーを利用した燃料電池が脚光を浴びている。かような燃料電池は、一般的にリン酸型燃料電池(PAFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)、固体高分子型燃料電池(PEFC)などがあり、なかでも固体高分子型燃料電池(PEFC)は、常温で起動でき、電解質の散逸の問題が少なく、高電流密度などの利点を有する。現在、固体高分子型燃料電池の多くが、一般的に炭化水素系高分子電解質より高いイオン伝導度を有するフッ素系高分子電解質を使用しているが、このようなフッ素系高分子電解質自体が破損、消耗などの理由で廃棄される場合が存在する。かかる場合、フッ素系樹脂が燃焼すると非常に有毒物質へと変化し、廃棄方法が非常に問題となる。
そこで、非フッ素系高分子を用いた高分子電解質膜から固体高分子型燃料電池を実用化に耐えうるものにすることは、真に地球に優しくエネルギー社会を変革することに他ならない。
特許文献1では、スルホン化ポリアリーレン系ポリマーの溶液から高分子電解質膜を形成した後、触媒粒子と、パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物の有機溶媒溶液と、孔部形成材料とからなる触媒ペーストをシート状支持体上に塗布および乾燥させて電極触媒層を形成して、当該高分子電解質膜の両面に該電極触媒層を、例えば160℃で熱転写して接合する膜−電極構造体の製造方法が開示されている。
現在使用されている非フッ素系電解質膜のガラス転移温度が200℃以上と高く、フッ素系電解質膜で一般的な130℃程度の温度では電解質が溶解せず、フッ素系電解質膜と触媒層が接合できないため、160℃以上の温度で接合する必要があった。そのため、フッ素系電解質膜と触媒層とを接合する際の熱により高分子電解質膜が変色・脆化してしまう問題があった。
特開2004−193109号
そこで、本発明では、低温度で電解質膜と触媒層とを接合でき、膜電極接合体を作製した後燃料電池に用いた場合、運転条件が変化した時に発生する電解質膜への機械的なストレスにより電解質膜が破断しない、耐久性に優れた膜電極接合体の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、高分子電解質膜の両側に一対の電極触媒層が設けられた膜電極接合体の製造方法において、
カチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質と、一種以上のカチオンを含む化合物と、を混合し、前記高分子電解質膜を調製する段階と(I)、
前記高分子電解質膜と電極触媒層とを接合する段階と(II)、
を有する膜電極接合体の製造方法を見出した。
本発明に係る膜電極接合体の製造方法を用いると、従来よりも低温、低圧力で触媒層を電解質膜に接合することができるため、電解質膜に化学的、機械的ダメージを与えることなく、耐久性を伸ばすことができる。
本発明は、高分子電解質膜の両側に一対の電極触媒層が設けられた膜電極接合体の製造方法において、
カチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質と、一種以上のカチオンを含む化合物と、を混合し、前記高分子電解質膜を調製する段階と(I)、
前記高分子電解質膜と電極触媒層とを接合する段階と(II)、
を有する膜電極接合体の製造方法である。
以下、各段階について詳説する。
「段階(I)」
本発明に係るカチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質と、一種以上のカチオンとを混合することで、高分子内における水素結合の影響が減少し、軟化温度(いわゆる溶融温度をいい、高分子鎖のミクロブラウン運動が許容される温度をいう)が低下すると考えられる。例えば、水溶液中においてスルホン化ポリエーテルスルホン(S−PESとも称する)とナトリウムイオン(具体的には水酸化ナトリウムなどとしてナトリウムイオンを供給できる物質)とを混合した場合、スルホン基のプロトンがナトリウムと置換されるため高分子内における水素結合の影響が減少すると考えられる。それによって、高分子全体の軟化温度が減少すると考えられる。換言すると、塩型の非フッ素系高分子電解質膜を作製すると、水素結合の数が減少するため軟化温度が低下する。なお、本明細書における「塩型の高分子電解質」とは、酸とアルカリとの中和による塩だけではなく、例えばエタノールなどのアルコールとナトリウムとの反応により生成されるナトリウムアルコキシドなども含む官能基を有する高分子電解質である。
一方、カチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有するフッ素系高分子、例えばナフィオン(デュポン社製、登録商標)とナトリウムイオンなどのカチオンと混合した場合、炭素から電子を吸引しているフッ素などが、分極したナトリウムカチオンと電気的相互作用を起こすため軟化温度が上昇すると考えられる。
以上の点から、本発明に係るカチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質および一種以上のカチオンを混合することで軟化温度が低下できるため、従来より低温での高分子電解質膜と電極触媒層との接合が可能であるので温度による高分子電解質膜が変色・脆化する現象を抑制・防止することができる。
本発明に係るカチオンは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、アンモニウム(NH4)、テトラブチルアンモニウム(以下、テトラブチルアンモニアはTBAと称する)(TBA))、マグネシウム(Mg2+)、カルシウム(Ca2+)、ストロンチウム(Sr2+)、およびバリウム(Ba2+)からなる群から選択される少なくとも一つのイオンであることが好ましい。なかでも、ナトリウム(Na)、カリウム(K)が好ましい。
本発明に係るカチオンを含む化合物と、カチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質とを混合する際、公知の方法を実施することができ、混合する際の前記カチオンの状態は何ら制限されることはなく、例えば、本発明に係るカチオンを含む化合物は、カチオンである金属イオンおよびアンモニウムイオンなどのイオンを容易に供給できる金属水酸化物(NaOH、KOH、RbOH、CsOH、MgOH2、CaOH2、SrOH2、およびBaOH2、水酸基含有有機物(NH4−OH、水酸化テトラブチルアンモニアTBA−OH)または金属ハロゲン化物(NaCl、KCl、RbCl、CsCl、MgCl2、CaCl2、SrCl2、およびBaCl2、NaF、KF、RbF、CsF、MgF2、CaF2、SrF2、およびBaF2、NaBr、KBr、RbBr、CsBr、MgBr2、CaBr2、SrBr2、およびBaBr2、NaI、KI、RbI、CsI、MgI2、CaI2、SrI2、およびBaI2、ハロゲン化有機物(NH4−Cl、TBA−Clなど)、金属塩(Na2SO4、K2SO4、MgSO4、CaSO4、およびBaSO4、NaNO3、KNO3、Mg(NO3)2、Ca(NO3)2、およびBa(NO3)2)、有機塩((NH4)2SO4、(TBA)2SO4、NH4NO3、TBA−NO3)などが挙げられ、さらに直接水や有機溶媒などに金属もしくは有機物を溶解させてカチオン状態にしても良い。なお、本発明に係るカチオンを含む化合物は、上記の例示した化合物には限定されない。以上の点からすなわち、カチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質とカチオンを混合する際に、前記官能基の数に対してカチオンの数が好ましくは1〜2倍、より好ましくは1〜1.5倍、さらに好ましくは1〜1.2倍存在していればよい。
また、前記非フッ素系高分子電解質および前記カチオンを含む化合物は、水また有機溶媒に含浸させた状態で混合することが好ましい。
本発明に係るカチオンと置換可能な水素原子を有する官能基とは、例えば水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基(−SO3H)、スルフィン酸基(−SO2H)、スルフェン酸基(−SOH)、スルホンアミド基(−SO2NH3)、リン酸基、ボロン酸基などが挙げられるが、必ずしもこれらに限定される必要はない。また本発明に係るカチオンと置換可能な水素原子を有する官能基は、高分子電解質中に1種または2種以上の官能基を組み合わせてもよい。
本発明に係るカチオンと置換可能な水素原子を有する官能基は、高分子電解質1gあたり、好ましくは1.0〜3.0m(ミリ)mol、より好ましくは1.5〜3.0mmol、さらに好ましくは2.0〜3.0mmol導入されている。
本発明に係るカチオンと置換可能な水素原子を有する官能基の高分子電解質1gあたりの導入率が1mmol未満だと燃料電池として十分なプロトン伝導度を得ることができず、3mmol超だと膜としての形状を保持できないからである。
本発明に係るカチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質と、一種以上のカチオンを含む化合物とを混合する際の置換率、すなわち前記官能基の水素原子とカチオンとの置換率(実際にカチオンを混合した際に水素原子と置換したカチオンの数/カチオンと置換可能な水素原子の数)は、好ましくは50〜100%、より好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%である。
前記置換率が50%未満だとカチオン置換効果が十分に発揮されないからである。なお、本発明に係るカチオンと置換可能な水素原子を有する官能基の高分子鎖中への導入率および本発明に係るカチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質と、一種以上のカチオンとを混合する際の置換率は、例えばNMR、ESR、IRなどの分光計や中和滴定法を用いれば容易に算出することができる。本発明については中和滴定法により行った。
前記段階(I)のカチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質と一種以上のカチオンを含む化合物と混合する際の温度は、20〜80℃が好ましく、40〜50℃がより好ましい。また、上記の混合する際の時間は、10〜30時間が好ましく、20〜30時間がより好ましい。なお、混合する際には、必要により適宜撹拌してもよい。
本発明に係るカチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質とは、例えば、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化されたPBI(ポリベンズイミダゾール),スルホン化されたPBO(ポリベンゾオキサゾール),スルホン化されたPPBP(ポリフェノキシベンゾイルフェニレン),スルホン化されたPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、スルホンアミド型ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホンアミド型ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化架橋ポリスチレン、スルホンアミド型架橋ポリスチレン、スルホン化ポリトリフルオロスチレン、スルホンアミド型ポリトリフルオロスチレン、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホンアミド型ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリ(アリールエーテルスルホン)、スルホンアミド型ポリ(アリールエーテルスルホン)、ポリイミド、スルホン化ポリイミド、スルホンアミド型ポリイミド、スルホン化4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン、スルホンアミド型4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン、ホスホン酸型4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホンアミド型ポリベンゾイミダゾール、ホスホン酸型ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリフェニレンスルフィド、スルホンアミド型ポリフェニレンスルフィド、スルホン化ポリビフェニレンスルフィド、スルホンアミド型ポリビフェニレンスルフィド、スルホン化ポリフェニレンスルホン、スルホンアミド型ポリフェニレンスルホン、スルホン化ポリフェノキシベンゾイルフェニレン、スルホン化ポリスチレン−エチレン−プロピレン、スルホン化ポリフェニレンイミド、ポリベンゾイミダゾール−アルキルスルホン酸、スルホアリル化ポリベンズイミダゾールなどを用いることができる。ただし、これらに何ら制限されるものではなく、従来公知のあらゆる電解質につき適用することができるものである。これらは1種単独で用いてもよいが、2種以上を併用してもよい。
なかでもスルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化されたPBI(ポリベンゾイミダゾール),スルホン化されたPBO(ポリベンゾオキサゾール),スルホン化されたPPBP(ポリフェノキシベンゾイルフェニレン),スルホン化されたPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)が非フッ素系高分子電解質として好ましい。
本発明に係るカチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質膜の膜厚は、好ましくは20〜100μm、より好ましくは25〜50μm、特に好ましくは25〜30μmである。前記高分子電解質膜の膜厚が、25〜30μmの範囲だと耐久性と発電性能を両立することができるからである。
「段階(II)」
本発明に係る高分子電解質膜と電極触媒層とを接合する方法としては、公知の方法が適用され、例えば転写法、直接塗布法などが挙げられるが、好ましくは転写法である。
前記転写法とは、Pt担持カーボン微粒子などの導電性材料の表面に触媒成分を担持させた電極触媒及びプロトン伝導性を有する高分子電解質を、水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールの溶剤中に分散した触媒インクを、予め転写用台紙に塗布・乾燥して電極触媒層を形成させて、これを熱圧着(ホットプレスとも称する。)することによって電極触媒層と電解質膜とを接合して一体化させる方法をいい、電極触媒層と電解質膜とを接合して一体化させた後、転写用台紙を電極触媒層から剥離させれば、膜電極接合体を作製することができる。この方法は、電極触媒層を転写用台紙から電解質膜に転写する方法であるため、転写法と称される。
なお、本明細書において「膜電極接合体」とは、非フッ素系高分子電解質膜、カソード側電極触媒層およびアノード側電極触媒層からなるものである。
本発明に係る膜電極接合体の製造方法において、転写法を用いて高分子電解質膜と電極触媒層とを接合する場合、80℃以上150℃以下で熱圧着することが好ましく、より好ましくは100℃以上130℃以下であり、さらに好ましくは120℃以上130℃以下である。80℃以上150℃以下で熱圧着する場合、温度が低すぎると剥離シート上の触媒層が電解質膜に充分に転写されず、温度が高すぎると電解質膜を脆化させるからである。
また、本発明に係る膜電極接合体の製造方法において、転写法を用いて非フッ素系高分子電解質膜と電極触媒層とを接合する場合、0.5MPa以上10MPa以下で熱圧着することが好ましく、より好ましくは1MPa以上5MPa以下であり、さらに好ましくは1MPa以上3MPa以下である。0.5MPa以上10MPa以下で熱圧着する場合、プレス圧力が低すぎると剥離シート上の触媒層が電解質膜に充分に転写されず、高すぎると電解質膜に機械的ストレスを与え、電解質膜の破れの原因となるからである。
上記転写法を用いて非フッ素系高分子電解質膜と電極触媒層とを接合する際、接合部には高分子電解質を用いることが好ましく、前記高分子電解質は、高分子骨格にフッ素原子を含む高分子電解質を用いてもよいが、高分子骨格にフッ素原子を含まない非フッ素系高分子電解質が好ましい。
前記段階(II)を行なった後、いわゆる塩型の高分子電解質を水素型の高分子電解質膜に変換する操作を行なう。
本発明の膜電極接合体の製造方法を以下、詳説する。本発明に係るカチオンは、容易に水素原子と置換することができ、また再度水素原子と置換できることから、非フッ素系高分子電解質における官能基の水素原子が、金属イオンやアンモニウムイオンなどのカチオンと置換し、いわゆる塩型の高分子電解質になる。この塩型の高分子電解質の状態で電極触媒層と熱圧着(以下、ホットプレスとも称する。)すると、上記の理由により溶融温度が減少し、高分子電解質膜の脆化が少ない高分子電解質膜と電極触媒層との接合体を得ることができる。この膜電極接合体は、塩型の高分子電解質膜を含むものであるため、酸性溶液や有機塩または金属塩などに膜電極接合体を浸漬させると、非フッ素系高分子電解質膜における官能基の水素原子と置換した金属イオンやアンモニウムイオンなどのカチオンが水素原子に容易に戻ることができる。
前記酸性溶液とは、硫酸、塩酸、硝酸などの水溶液が挙げられるがこれらに限定されることはなく、塩、すなわち水素原子と置換したカチオンを水素原子戻すために置換できるものであればよい。
前記高分子骨格にフッ素原子を含む高分子電解質としては、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系高分子、パーフルオロカーボンホスホン酸系高分子、トリフルオロスチレンスルホン酸系高分子、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系高分子、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子などが好適な例として挙げられる。
前記非フッ素系高分子は上記に例示したように、本発明に係るカチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質と同様のものであるためここでは省略する。
前記塗布法とは、Pt担持カーボン微粒子などの導電性材料の表面に触媒成分を担持させた電極触媒及びプロトン伝導性を有する高分子電解質を、水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールの溶剤中に分散した触媒インクを高分子電解質膜に直接塗布した後、乾燥することによって、膜電極接合体が形成される方法をいう。
上記直接塗布する方法は、例えば、スクリーンプリンタ、バーコーター、ダイコーター、リバースコーター、コンマコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ドクターナイフなどの塗布装置を用いることができる。
本発明に係る非フッ素系高分子電解質膜と電極触媒層とを接合する段階(II)前において、電極触媒層が溶剤で浸潤していることが好ましい。
溶剤により熱圧着(ホットプレス)中の電解質膜が柔軟になっているため、触媒層が転写しにくい材料の電解質膜であっても本発明に係る非フッ素系高分子電解質膜と触媒層との接合が可能となる。
前記溶剤は、公知の物質を適宜使用することができるが、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、i−ブタノール、およびtert−ブタノールからなる群から選択される少なくとも一つの溶剤であることが好ましい。
本発明に係る膜電極接合体の製造方法により得られる膜電極接合体は、非フッ素系高分子電解質膜、カソード側電極触媒層、およびアノード側電極触媒層を含むものである。また本発明において電極触媒は、触媒成分が導電性材料に担持されてなるものであり、本発明に係るアノード側電極触媒層およびカソード側電極触媒層は、触媒成分、プロトン伝導性を有する高分子電解質、必要により撥水材料を含む。
本発明に係る電極触媒層に用いられる触媒成分として、カソード触媒層では、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。また、アノード触媒層に用いられる触媒成分もまた、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、およびそれらの合金等などから選択される。これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。
前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金が30〜90原子%、合金化する金属が10〜70原子%とするのがよい。カソード触媒をして合金を使用する場合の合金の組成は、合金化する金属の種類などによって異なり、当業者が適宜選択できるが、白金が30〜90原子%、合金化する他の金属が10〜70原子%とすることが好ましい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。
合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。この際、カソード触媒層に用いられる触媒成分およびアノード触媒層に用いられる触媒成分は、上記の中から適宜選択できる。以下の説明では、特記しない限り、カソード触媒層およびアノード触媒層用の触媒成分についての説明は、両者について同様の定義であり、一括して、「触媒成分」と称する。しかしながら、カソード触媒層およびアノード触媒層用の触媒成分は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択される。
触媒成分の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状および大きさが使用できるが、触媒成分は、粒状であることが好ましい。この際、触媒スラリーに用いられる触媒成分の平均粒子径は、小さいほど電気化学反応が進行する有効電極面積が増加するため酸素還元活性も高くなり好ましいが、実際には平均粒子径が小さすぎると却って酸素還元活性が低下する現象が見られる。従って、触媒スラリーに含まれる触媒成分の平均粒子径は、1〜30nm、より好ましくは1.5〜20nm、さらにより好ましくは2〜10nm、特に好ましくは2〜5nmの粒状であることが好ましい。担持の容易さという観点から1nm以上であることが好ましく、触媒利用率の観点から30nm以下であることが好ましい。なお、本発明における「触媒成分の平均粒径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径あるいは透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒成分の粒子径の平均値により測定することができる。
前記導電性材料としては、触媒成分を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであるのが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。また、かようなカーボン材料として、より具体的には、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ブラックパール、黒鉛化アセチレンブラック、黒鉛化バルカン、黒鉛化ケッチェンブラック、黒鉛化カーボン、黒鉛化ブラックパール、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、およびカーボンフィブリルから選ばれる少なくとも一種を主成分として含むものなどが挙げられる。なお、本発明において「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
前記導電性材料のBET比表面積は、触媒成分を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m/g、より好ましくは80〜1200m/gとするのがよい。前記比表面積が、20m/g未満であると前記導電性材料への触媒成分および高分子電解質の分散性が低下して十分な発電性能が得られない恐れがあり、1600m/gを超えると触媒成分および高分子電解質の有効利用率が却って低下する恐れがある。
また、前記導電性材料の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、電極触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径が5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。
前記導電性材料に触媒成分が担持された電極触媒において、触媒成分の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%とするのがよい。前記担持量が、80質量%を超えると、触媒成分の導電性材料上での分散度が下がり、担持量が増加するわりに発電性能の向上が小さく経済上での利点が低下する恐れがある。また、前記担持量が、10質量%未満であると、単位質量あたりの触媒活性が低下して所望の発電性能を得るために多量の電極触媒が必要となり好ましくない。なお、触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
本発明に係る電極触媒層におけるプロトン伝導性を有する高分子電解質は、特に限定されず公知のものを用いることができるが、上記高分子電解質膜に用いられたものと同様の材料が挙げられ、少なくとも高いプロトン伝導性を有する材料であればよい。本発明のカソード触媒層/アノード触媒層(以下、単に「触媒層」とも称する)には、電極触媒の他に、高分子電解質が含まれる。この際使用できる高分子電解質は、高分子骨格にフッ素原子を含む高分子電解質を用いてもよく、高分子骨格にフッ素原子を含まない非フッ素系高分子電解質を用いてもよい。
また、導電性材料への触媒成分の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。または、電極触媒は、市販品を用いてもよい。
尚、電解質膜と電極層とで用いる高分子電解質は、異なってもよいが、膜と電極の接触抵抗などを考慮すると同じものを用いるのが好ましい。
前記高分子電解質は、接合の役割をする高分子として電極触媒を被覆しているのが好ましい。これにより、電極の構造を安定に維持できるとともに、電極反応が進行する三相界面を十分に確保して、高い触媒活性を得ることができる。電極中に含まれる前記固体高分子電解質の含有量は、特に限定されないが、触媒成分の全量に対して25〜35質量%とするのがよい。
前記電極触媒層の空孔率は、30〜70%が好ましく、より好ましくは40〜60%である。空孔率が30%未満では、ガスの拡散が十分ではなく、高電流域でのセル電圧が低下する。また、空孔率が70%超では、電極触媒層の強度が十分ではなく、例えば転写プロセスにおいて空孔率が低下する。
本発明に係る燃料電池は、本発明の製造方法で得られる膜電極接合体にガス拡散層(以下GDLと称する)、およびガスケット層などをさらに含むものであり、ガス拡散層に用いられる材料としては、カーボンペーパー、不織布、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルトなどからなるシート状材料が提案されている。GDLが優れた電子伝導性を有していると、発電反応により生じた電子の効率的な運搬が達成され、燃料電池の性能が向上する。またGDLが優れた撥水性を有していると、生成した水が効率的に排出される。
高い撥水性を確保するために、GDLを構成する材料を撥水処理する技術も提案されている。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂を含む溶液中にカーボンペーパーなどのGDLを構成する材料を含浸させ、大気中または窒素などの不活性ガス中に乾燥させる。場合によっては、親水化処理がGDLを構成する材料に施されてもよい。
その他に、カーボンペーパー、不織布、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルトなどからなるシート状GDL上に、カーボン粒子およびバインダーを配置して、両者をガス拡散層として使用してもよく、カーボン粒子およびバインダーからなるフィルム自体をガス拡散層として使用してもよい。この結果、フィルム自体に均一に撥水材料、カーボン粒子が形成されているため、上記の塗布に比較して撥水効率の上昇がみられる。
前記撥水材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系樹脂が好ましい。尚、「バインダー」とは接合の役割を有する物質をいう。
前記電極触媒層中に含まれる撥水材料の含有量は、全電極触媒層を構成する材料の合計質量に対して5〜50質量%が好ましく、より好ましくは10〜20質量%である。撥水材料の含有量が5%未満であると電極触媒層の撥水性が十分でなく、50%超えると電極触媒層の強度が十分でないため、本発明の膜電極接合体の作製ができない。
本発明に係る上記膜電極接合体は、燃料電池に用いられる。
前記燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では高分子電解質型燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、リン酸型燃料電池に代表される酸型電解質の燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、固体高分子電解質型燃料電池が好ましく挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用であるが、特にシステムの起動/停止や出力変動が頻繁に発生する自動車用途で特に好適に使用できる。
前記高分子電解質型燃料電池は、定置用電源の他、搭載スペースが限定される自動車などの移動体用電源などとして有用である。なかでも、比較的長時間の運転停止後に高い出力電圧が要求されることによるカーボン担体の腐食、および、運転時に高い出力電圧が取り出されることにより高分子電解質の劣化が生じやすい自動車などの移動体用電源として用いられるのが特に好ましい。
前記燃料電池の構成としては、特に限定されず、従来公知の技術を適宜利用すればよいが、一般的には膜電極接合体をセパレータで挟持した構造を有する。
前記セパレータとしては、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、従来公知のものであれば制限なく用いることができる。セパレータは、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するための流路溝が形成されてもよい。セパレータの厚さや大きさ、流路溝の形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
また、各触媒層に供給されるガスが外部にリークするのを防止するために、ガスケット層上の触媒層が形成されていない部位にさらにガスシール部が設けられてもよい。前記ガスシール部を構成する材料としては、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。また、ガスシール部の厚さとしては、2mm〜50μm、望ましくは1mm〜100μm程度とすればよい。
さらに、燃料電池が所望する電圧等を得られるように、セパレータを介して膜電極接合体を複数積層して直列に繋いだスタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
以下、本発明に係る最良の実施態様について作製方法を説明する。
まず、カチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系固体電解質膜を水酸化金属水溶液に6時間含浸後、乾燥してプロトンが金属カチオンに置換された非フッ素系高分子電解質膜を調製する(段階I)。材料によっては、いわゆる塩型の高分子電解質膜として入手できるものもあるが、その場合はこの過程を省略することができる。
次いで、本発明の触媒スラリーを転写用台紙上に塗布・乾燥して、電極触媒層を形成する。この際、転写用台紙としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シート、PET(ポリエチレンテレフタレート)シート、ポリエステルシートなどの公知のシートが使用できる。なお、転写用台紙は、使用する触媒スラリー(特にインク中のカーボン等の導電性材料)の種類に応じて適宜選択される。また、上記工程において、電極触媒層の厚みは、水素の酸化反応(アノード側)及び酸素の還元反応(カソード側)の触媒作用が十分発揮できる厚みであれば特に制限されず、従来と同様の厚みが使用できる。具体的には、電極触媒層の厚みは、1〜20μm、より好ましくは5〜15μmである。
転写用台紙上への触媒スラリーは、特に制限されず、スクリーン印刷法、沈積法、あるいはスプレー法などの公知の方法が同様にして適用できる。また、塗布された電極触媒層乾燥条件もまた、電極触媒層から極性溶剤を完全に除去できる条件であれば特に制限されない。具体的には、触媒スラリーの塗布層(電極触媒層)を真空乾燥機内にて、室温〜100℃、より好ましくは50〜80℃で、30〜60分間、乾燥する。この際、触媒層の厚みが十分でない場合には、所望の厚みになるまで、上記塗布・乾燥工程を繰り返す。そして次に下記の工程に進む。
前記官能基の水素原子(プロトンとも称する)が金属カチオンに置換された非フッ素系高分子電解質膜を転写用台紙に形成された触媒層で挟持した後、熱圧着(ホットプレス)を行なう。この際、ホットプレス条件は、電極触媒層及び固体高分子電解質膜が十分密接に接合できる条件であれば特に制限されないが、80〜150℃、より好ましくは〜℃で、電極面に対して0.5〜10MPaのプレス圧力で行なうのが好ましい。これにより非フッ素系高分子電解質膜および電極触媒層との接合性を高めることができる。ホットプレスを行い、転写用台紙を剥がすことにより、電極触媒層およびプロトンがカチオンに置換された非フッ素系高分子電解質膜を含む膜電極接合体を得た後、硫酸などの酸性溶液または有機塩もしくは金属塩などを溶解させた溶液中に前記膜電極接合体を浸漬する。そうすると、金属イオンなどのカチオンがプロトンと置換するため、当初のカチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質膜に戻り、その結果カチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質膜と電極触媒層との接合体を得る。
なお、熱圧着(ホットプレス)を行なう際に、本発明に係る非フッ素系高分子電解質を接合面に塗布してもよい。
材料によっては上記方法では充分な接合性を得られない場合があるが、その場合はエタノール等の溶剤で触媒層を浸潤させた転写シートを使用することも可能である。触媒層中の溶剤によりホットプレス時に電解質膜を柔軟にさせ、触媒層の転写を容易にさせることができる。プロトン型電解質膜でこの方法を使用すると、ホットプレス時に電解質膜が溶剤を吸収、膨潤して変形するため、浸潤させた溶剤をある程度乾燥させる必要があるが、塩型電解質膜の膨潤性は低いため、この方法を採用しても電解質膜の変形は最小限に抑えられる。
ホットプレス後、積層体を室温まで冷却し、剥離シートをはがして膜電極接合体を作製する。
次いで、二枚のガス拡散基材を用いて、カチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質膜と電極触媒層との接合体を挟持した。次に、二枚のグラファイト製セパレータで挟持し、さらに金メッキしたステンレス製集電板で挟持して、単セルとした。
前記ガス拡散基材としては、カーボンペーパーまたはカーボン不織布またはカーボンクロスを用いる。
本発明の触媒スラリーにおいて、電極触媒は、所望の作用、即ち、水素の酸化反応(アノード側)及び酸素の還元反応(カソード側)を触媒する作用を十分発揮できる量であればいずれの量で、使用されてもよい。電極触媒が、触媒スラリー中、10〜50質量%、より好ましくは20〜30質量%となるような量で存在することが好ましい。
本発明の触媒スラリーには、電極触媒、プロトン伝導性を有する高分子、及び溶剤に加えて、必要があれば撥水性高分子、増粘剤などが含まれてもよい。これにより、得られる電極触媒層の撥水性を高めることができ、発電時に生成した水などを速やかに排出することができる。撥水性高分子を使用する際の、撥水性高分子の添加量は、本発明の上記効果を妨げない程度の量であれば特に制限されないが、触媒スラリーの全質量に対して、好ましくは1〜10質量%である。
上記撥水性高分子に代えてまたは上記撥水性高分子に加えて、本発明の触媒スラリーは、増粘剤を含んでもよい。増粘剤の使用は、触媒スラリーなどが転写用台紙上にうまく塗布できない場合などに有効である。この際使用できる増粘剤は、特に制限されず、公知の増粘剤が使用できるが、例えば、グリセリン、(EG(エチレングリコール)、PVA(ポリビニルアルコール))などが挙げられる。増粘剤を使用する際の、増粘剤の添加量は、本発明の上記効果を妨げない程度の量であれば特に制限されないが、触媒スラリーの全質量に対して、好ましくは1〜5質量%である。さらに、本発明で使用される触媒スラリーを構成する溶剤としては、特に制限されず、触媒層を形成するのに使用される通常の溶剤が同様にして使用できる。具体的には、水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールが使用できる。
本発明で使用される溶剤の量は、電解質を完全に溶解できる量であれば特に制限されないが、電解質が、溶剤中、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%の濃度になるような量である。この際、電解質の濃度が70質量%を超えると、電解質を完全には溶解せずに一部コロイドが形成される可能性があり、逆に30質量%未満であると、含まれる電界質量が少なすぎて、電解質高分子の分子鎖がよく絡まりあいきれずに、形成される電極触媒層の機械的強度が劣る可能性がある。また、触媒スラリーにおいて、電極触媒および固体高分子電解質などを合わせた固形分の濃度は、触媒スラリー中、10〜50質量%、より好ましくは20〜30質量%程度とするのがよい。
本発明の触媒スラリーは、カソード側電極触媒層またはアノード側電極触媒層のいずれか一方のみに使用されてもあるいは双方に使用されてもよいが、カソード側は特に出力変動による生成水量の変化により乾湿の変化を受けて、初期状態における電極触媒層の多孔構造が崩れ、空隙率が低下して、電極触媒層への反応ガス供給量が低下する危険性が高いため、少なくともカソード側電極触媒層に使用されることが好ましく、特にカソード及びアノード双方の側の電極触媒層に使用されることが好ましい。
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
「高分子電解質膜の準備」
非フッ素系固体電解質膜として、本実施例ではS−PES(スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホン)を使用した。用意したプロトン型S−PES電解質膜を1mol/lのNaOH水溶液に6時間含浸後、乾燥してNa型S−PES電解質膜(置換率95%)を得た。
「触媒インク調製」
市販されているNafion溶液(アルドリッチ社製5wt%溶液)にPt担持カーボンの微粒子を、カーボンとNafionの重量比がカーボン:Nafion=1:0.8となるように混合して触媒インクを作成した。
「触媒層転写シート作製」
調製したインクを,スクリーンプリンタを使用して,剥離シートとして使用するテフロンシート上に塗布して、カソード用およびアノード用触媒層転写シートを作成した.剥離シートとしてはテフロンシートの他にポリエステルシートやPET(ポリエチレンテレフタレート)シートなどが優れている.Pt担持量が0.5mg/cmとなるまで塗布、乾燥を繰り返すことで、白金量0.5mg/cmの触媒層転写シートを2枚作製した。
「触媒層の転写」
作成した2枚の触媒層転写シートの触媒層面をS−PES電解質膜側に向けて、S−PES電解質膜を挟みこみ、130℃、5MPa、保持時間10分にてホットプレスを行なった。
(比較例1)
電解質膜にプロトン型のS−PESを使用し、ホットプレス温度を180℃にする以外は実施例と同様に膜−触媒層接合体を作成した。
(比較例2)
電解質膜にプロトン型のS−PESを使用し、ホットプレス温度を130℃にする以外は実施例と同様に膜−触媒層接合体を作成した。
触媒層の転写率
触媒層の転写率(=電解質膜へ転写できた触媒層重量/ホットプレス前の剥離シート上触媒層重量)は、実施例と比較例1がほぼ100%なのに対し、比較例2は8%とほとんどの触媒層が転写できなかった。これは比較例2のホットプレス温度が130℃と低いことに起因しており、プロトン型S−PESでは180℃程度まで温度を上げないと、安定した転写が行なえない(他の非フッ素系電解質膜でも同様の傾向である)。
膜−触媒層接合体の機械的耐久性
膜−触媒層接合体が作成できた実施例1と比較例1については、機械的耐久性を比較するため、湿潤−乾燥サイクル試験を実施した。この試験はセルに組み上げた膜−触媒層接合体に、湿潤窒素ガスと乾燥窒素ガスを交互に流し、定期的に電解質膜の破れを差圧法によりチェックするものである。電解質膜は吸水性があり乾燥・湿潤を繰り返すと、その結果、実施例1で作成した膜−触媒層接合体は600−625回の間で膜の破れが発生したのに対し、比較例1で作成した膜−触媒層接合体では、25−50回で破れが発生した。比較例1では180℃でホットプレスを行なっているため、膜−触媒層接合後の電解質膜が脆くなっており、サイクル回数の低下につながったと考えられる。
単セルの評価
作成した膜−触媒層接合体を2枚のカーボンペーパーで挟み込んだ後、二枚のグラファイト製セパレータで挟持し、さらに金メッキしたステンレス製集電板で挟持して、単セルとした。
このセルのアノード側に相対湿度50%の水素ガスを、カソード側に同じく相対湿度50%の空気を供給し発電試験を行なった。
電流密度と電圧との関係を示した説明図である。

Claims (10)

  1. 高分子電解質膜の両側に一対の電極触媒層が設けられた膜電極接合体の製造方法において、
    カチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質と、一種以上のカチオンを含む化合物と、を混合し、前記高分子電解質膜を調製する段階と(I)、
    前記高分子電解質膜と電極触媒層とを接合する段階と(II)、
    を有する膜電極接合体の製造方法。
  2. 前記高分子電解質膜と前記電極触媒層とを接合する段階(II)は、80℃以上150℃以下で転写により行なうことを特徴とする、請求項1に記載の膜電極接合体の製造方法。
  3. 前記高分子電解質膜と前記電極触媒層とを接合する段階(II)は、0.5MPa以上10MPa以下で転写により行なうことを特徴とする、請求項1または2に記載の膜電極接合体の製造方法。
  4. 前記カチオンは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、アンモニウム(NH4)、テトラブチルアンモニウム(TBA)、マグネシウム(Mg2+)、カルシウム(Ca2+)、ストロンチウム(Sr2+)、およびバリウム(Ba2+)からなる群から選択される少なくとも一つのイオンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜電極接合体の製造方法。
  5. 前記カチオンと置換可能な水素原子を有する官能基を含有する非フッ素系高分子電解質は、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化されたPBI(ポリベンゾイミダゾール),スルホン化されたPBO(ポリベンゾオキサゾール),スルホン化されたPPBP(ポリフェノキシベンゾイルフェニレン),スルホン化されたPEEK(ポエーテルエーテルケトン)からなる群から選択される少なくとも一つの高分子電解質であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の膜電極接合体の製造方法。
  6. 前記高分子電解質膜と電極触媒層とを接合する段階(II)は、電極触媒層を溶剤で浸潤した後、前記高分子電解質膜と前記電極触媒層との接着を行なうことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の膜電極接合体の製造方法。
  7. 前記溶剤が、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、i−ブタノール、およびtert−ブタノールからなる群から選択される少なくとも一つの溶剤であることを特徴とする、請求項6に記載の膜電極接合体の製造方法。
  8. 前記高分子電解質膜と電極触媒層とを接合する段階(II)において少なくとも一つの水素原子がカチオンと置換した非フッ素系高分子電解質を用いて接合することを特徴とする、請求項1〜7にいずれか1項に記載の膜電極接合体の製造方法。
  9. 請求項1〜8に記載の製造方法から得られる膜電極接合体。
  10. 請求項9に記載の膜電極接合体を含む燃料電池。
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