JP7106347B2 - トナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真および静電印刷などの画像形成方法に用いられる静電荷像(静電潜像)を現像するためのトナーに関する。
近年、コンピューターやマルチメディアの発展に伴い、電子写真方式の画像形成方法が用いられる環境は多様化してきており、低温低湿環境や高温高湿環境などの過酷な環境下においても、長期にわたって安定した画像を出力できることが求められている。上記目的のために、トナーには長期の使用時にも安定した帯電性を示すことが求められており、トナーの耐久性と帯電性を改良する検討が広く行われている。
特許文献1には、現像耐久性と帯電の環境安定性改良のため、特定の構造を有する有機ケイ素化合物の縮合体を表層に有するトナーが開示されている。
特許文献2には、低温低湿環境下での過帯電抑制のために、有機ケイ素化合物で表面処理されたアルミナの微粒子を外部に添加したトナーが開示されている。
特許文献3には、過帯電抑制のために、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂からなる表層を有し、トナーの電荷減衰定数を制御したトナーが開示されている。
特許文献4には、無機粒子が固着されたトナー表面をシランカップリング剤で被覆したトナーが開示されている。
特開2016-021041号公報 特開平08-184988号公報 特開2015-219388号公報 特開平08-292599号公報
特許文献1に記載のトナーは、高強度かつ高帯電性の有機ケイ素化合物の縮合体を有するために、低温低湿環境や高温高湿環境においても現像耐久性に優れる。さらに、安定して高い帯電性を有している。しかし、有機ケイ素化合物の縮合体は高抵抗なため、低温低湿環境においてトナーが過帯電する場合があった。トナーの過帯電は、現像部材やキャリアへのトナー付着等の弊害を引き起こす場合があり、改善の余地があるものである。
トナーの過帯電を抑制する方法として、特許文献2では有機ケイ素化合物で表面処理されたアルミナの微粒子をトナーに外部から添加する方法が検討されている。また、特許文献3では、トナーにメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂からなる表層を形成することで、電荷減衰定数を制御する方法が検討されている。しかしながら、これらのトナーは有機ケイ素化合物の縮合体を有していないため、現像耐久性や帯電性が低い場合があった。加えて、過帯電抑制の性能も今後の要求に対しては十分ではない場合があった。
特許文献4に挙げられているように、無機粒子が固着されたトナー表面をシランカップリング剤で被覆したトナーも検討されているが、このトナーも現像耐久性や帯電性が十分でない場合があることに加え、低温低湿環境下でトナーが過帯電する場合があった。
上記した通り、現像耐久性、高帯電性と低温低湿環境下での過帯電抑制を高いレベルで満足するトナーは得られておらず、改良が求められている。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、現像耐久性、高帯電性と低温低湿環境下での過帯電抑制とを高いレベルで満足するトナーを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、
結着樹脂を含むトナー母粒子と、
該トナー母粒子の表面に存在する有機ケイ素縮合体と、
を含むトナー粒子を有するトナーであって、
該トナー粒子が、表面が該有機ケイ素縮合体で被覆された無機微粒子を該トナー母粒子の表面に有し、
該無機微粒子の体積抵抗率が、1.0×10 (Ω・cm)以上1.0×10 11 (Ω・cm)以下であり、
トナーの電荷減衰定数が3.5×10-3以上1.0×10以下であることを特徴とするトナーに関する。
本発明によれば、現像耐久性、高帯電性と低温低湿環境下におけるトナーの過帯電抑制とを高いレベルで満足するトナーを提供することができる。
評価用紙の上に形成される各画像部を説明するための図である。
以下、本発明を実施するための形態を例示的に説明する。
本発明のトナーは、結着樹脂を含むトナー母粒子と、該トナー母粒子の表面に存在する有機ケイ素縮合体と、を含むトナー粒子を有するトナーであって、
前記トナーの電荷減衰定数が3.5×10-3以上1.0×10以下であることを特徴とする。
上記構成で、現像耐久性、高帯電性と低温低湿環境下におけるトナーの過帯電抑制を高いレベルで満足するトナーを提供できた要因について、本発明者らは以下のように推測している。
従来のトナーでは、高帯電性と過帯電抑制を両立することは難しい。これは、従来は、トナーの最表面に抵抗率の低い外添剤や表層樹脂を配置し、そのリーク性を利用して電荷をトナーの外にリークすることで過帯電を抑制していたために、同時に帯電量も低下してしまっていたためである。
そこで、本発明者らは、電荷をトナーの外にリークするのではなく、トナー表面に均一に分散させることで高帯電性を維持しながら過帯電を抑制できると考えた。
具体的には、トナー母粒子の表面に高抵抗の有機ケイ素縮合体を形成することにより、電荷がトナー外にリークすることを抑制できる。加えて、トナー中で電荷が移動しやすくすることで、過剰な電荷はトナー表面に均一に分散する。よって、高帯電性と過帯電抑制を高いレベルで満足することができる。
より具体的には、トナー母粒子の表面に有機ケイ縮合体を有し、同時に、上記トナーの電荷減衰定数を3.5×10-3以上1.0×10以下とすることで、高帯電性と過帯電抑制を両立することができる。トナーの電荷減衰定数が3.5×10-3未満であると、過剰な電荷がトナー表面に均一に分散しにくくなり、トナーが過剰に帯電しやすくなってしまう。また、トナーの電荷減衰定数が1.0×10より大きいと、トナーの高帯電性を維持しにくくなる。トナーの電荷減衰定数は、好ましくは5.0×10-3以上であり、より好ましくは1.0×10-2以上である。
続いて、以下に本発明をより詳細に説明する。
本発明のトナーは、トナー表面の有機ケイ素縮合体の一部のみが過剰な電荷を持った場合、その過剰な電荷がトナー表層全体に分散することで、帯電を均一化し、過帯電を抑制することができる。
このとき、電荷の分散速度は、トナー中に存在する材料の抵抗率に反比例し、電荷の分散経路の断面積に比例する。よって、トナーを構成する材料の抵抗率と各材料間の接触面積を制御する必要がある。
トナーの電荷減衰定数を上記範囲に制御する方法としては、例えば、二つの方法が挙げられる。1つは、トナー粒子が、表面が有機ケイ素縮合体で被覆された無機微粒子をトナー母粒子の表面に有することである。もう1つは、トナー粒子が、表面に有機ケイ素縮合体を有する樹脂微粒子をトナー母粒子の表面に有し、樹脂微粒子がイオン性官能基を有する樹脂を含むことである。
一つ目の手段は、トナー母粒子の表面に、表面を有機ケイ素縮合体で被覆した無機微粒子を存在させることである。その無機微粒子の体積抵抗率が、1.0×10(Ω・cm)以上1.0×1011(Ω・cm)以下であることが好ましい。この体積抵抗率の範囲にある無機微粒子は、シリカ微粒子などの高抵抗の無機微粒子よりも抵抗の低い、中抵抗の無機微粒子である。この中抵抗の無機微粒子の表面を有機ケイ素縮合体で被覆することにより、トナー母粒子の表面に存在する有機ケイ素縮合体とトナー母粒子との間に、中抵抗の無機微粒子を十分な接触面積を以て配置することができる。すなわち、中抵抗の無機微粒子の表面が有機ケイ素縮合体で被覆されることで、中抵抗の無機微粒子とトナー母粒子の間に有機ケイ素縮合体を介在させて、中抵抗の無機微粒子とトナー母粒子との密着性を向上させ、十分な接触面積が得られていると考えている。
特許文献4に記載されたトナーは、有機ケイ素縮合体を表面に有さないトナー粒子(以下、「トナー母粒子」とも記載する。)に中抵抗の無機微粒子を外部から添加し、その後、有機ケイ素縮合体を表面に形成してトナーを得ることが記載されている。
しかしながら、上記のような方法で得られたトナーでは電荷減衰定数が上記範囲外(5.0×10-3未満となる)となり、本発明の効果も得られなかった。これは、中抵抗の無機微粒子とトナー母粒子との親和性が低いために、中抵抗の無機微粒子とトナー母粒子とが十分に密着しておらず、中抵抗の無機微粒子とトナー母粒子との間に空間が存在し、十分な接触面積が確保されていないもの考えている。これにより、電荷の分散が阻害され、トナーの電荷減衰定数が範囲外となっていると推測している。
ここで、本発明に用いられる中抵抗の無機微粒子について詳細に述べる。
<中抵抗の無機微粒子>
具体的には、中抵抗の無機微粒子として、体積抵抗率が1.0×10(Ω・cm)以上1.0×1011(Ω・cm)以下の無機微粒子を用いることが好ましい。体積抵抗率が上記範囲であると、過帯電抑制と高帯電性を両立しやすい。
体積抵抗率が上記範囲内である具体的な無機微粒子としては、以下のものが挙げられる。
アルミナ(酸化アルミニウム:Al)、アルミナ水和物、チタニア(酸化チタン:TiO)、チタン酸ストロンチウム(TiSrO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化鉄(Fe、Fe)、酸化インジウム(In)、酸化インジウムスズ等に代表される金属酸化物の微粒子;
ケイ素、ゲルマニウム等に代表される半導体の微粒子;
ハイドロタルサイトに代表される粘土鉱物等。
これらの微粒子は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルに代表される処理剤により表面処理を施してもよい。
中でも、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、チタン酸ストロンチウム微粒子が好ましく、アルミナ微粒子がより好ましい。
無機微粒子を用いる場合、無機微粒子の一次粒子の個数平均粒径は3nm以上500nm以下であることが好ましく、5nm以上200nm以下であるとより好ましい。上記範囲であると、電荷が分散しやすいため、さらに過帯電抑制性能が向上する。加えて、トナー表面に形成される凹凸により、トナーの流動性が向上する。よって、トナーへの帯電付与機会が増加し、帯電の立ち上がりが良化する。
無機微粒子の含有量は、トナー母粒子100質量部に対し、0.01~5.0質量部となる範囲で用いることが好ましい。より好ましくは、0.02~2.0質量部であり、さらに好ましくは、0.03~2.0質量部である。上記、無機微粒子の体積抵抗率と、含有量によって、トナーの電荷減衰定数を制御することが可能である。
二つ目の手段は、トナー母粒子の表面に、表面に有機ケイ素縮合体を有する樹脂微粒子を存在させ、樹脂微粒子が、イオン性官能基を有する樹脂を有することである。
樹脂微粒子は一般的に体積抵抗率が高いが、イオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子は、樹脂微粒子の表面のイオン性官能基が電荷を受け渡すことで、樹脂微粒子の表面を介して電荷を分散させることが可能となる。また、イオン性官能基を有する樹脂は有機ケイ素縮合体との親和性が高いために、樹脂微粒子と有機ケイ素縮合体との密着性が高まりやすい。これにより、トナーの電荷減衰定数を上記範囲内に制御しやすくなる。
また、イオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子とトナー母粒子との親和性は高い。したがって、当該樹脂微粒子は、有機ケイ素縮合体を介さずにトナー母粒子に直接接していると、樹脂微粒子とトナー母粒子との密着性をさらに高めることができ、より好ましい。
<イオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子>
イオン性官能基を有する樹脂としては、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等のうちイオン性官能基を有するものが挙げられる。
ビニル系樹脂の合成に用いることのできる重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。
スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系単量体;
アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル;
メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル;
アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸;
マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;
マレイン酸無水物等の不飽和ジカルボン酸無水物;
アクリロニトリル等のニトリル系ビニル単量体;塩化ビニル等の含ハロゲン系ビニル単量体;
ニトロスチレン等のニトロ系ビニル単量体等。
ビニル系樹脂としては、これらの重合性単量体の重合体またはそれらの共重合体を用いることが可能である。
イオン性官能基としては、例えばスルホ基、カルボキシ基、フェノール性水酸基等の酸性の官能基;アミノ基、4級アンモニウム基等の塩基性の官能基等が挙げられる。
中でも、スルホ基またはカルボキシ基を有する樹脂を用いることが好ましい。スルホ基およびカルボキシ基は帯電性に優れるため、トナーの帯電性がさらに向上する。
イオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子の個数平均粒径は、10nm以上500nm以下であることが好ましい。樹脂微粒子の個数平均粒径が上記範囲であると、電荷の分散性に優れ、過帯電抑制性能がさらに向上する。
イオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子の含有量はトナー母粒子100質量部に対し、0.1~15.0質量部の範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.1~5.0質量部である。
上記、イオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子の添加量によって、トナーの電荷減衰定数を制御することが可能である。
続いて、以下に本発明に用いられるイオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子の製造方法について詳細に述べる。
<樹脂微粒子の製造方法>
樹脂微粒子の製造方法は、特に限定されず、従来公知の製造方法を用いることができる。例えば、乳化重合法やソープフリー乳化重合法、転相乳化法、機械式乳化法等の方法が挙げられる。
中でも、水系媒体中で得られた樹脂微粒子であることが好ましい。水系媒体中で樹脂微粒子を得ることで、粒子表面にイオン性官能基が配向するため、より効率的な電荷受け渡しが可能となり、過帯電を抑制する性能がさらに向上する。
続いて、有機ケイ素縮合体について詳細に述べる。
<有機ケイ素化合物>
トナー母粒子の表面には、有機ケイ素縮合体が存在する。有機ケイ素縮合体は、下記式(1)で表わされる有機ケイ素化合物の縮合体であることが好ましい。この有機ケイ素化合物は、式(1)で表される化合物であれば、2種以上の有機ケイ素化合物を併用して用いてもよい。
(Ra)-Si-(Rb)4-n (1)
(式(1)中、Raは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を示し、Rbはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基または(メタ)アクリロキシアルキル基を示す。なお、本発明において(メタ)アクリロキシアルキル基とは、「アクリロキシアルキル基」または「メタクリロキシアルキル基」から選ばれる置換基を表す。nは2から4の整数を示す。ただし、RaおよびRbが複数存在する場合、複数のRa、複数のRbは、それぞれ、同一でも異なってもよい。より好ましくは、Raは、ハロゲン原子、又はアルコキシ基である。)
該式(1)において、アルキル基の炭素数は、1以上12以下であることが好ましく、1以上6以下であることがより好ましい。
アルケニル基の炭素数は、2以上6以下であることが好ましく、2以上4以下であることがより好ましい。
アシル基の炭素数は、1以上7以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、であることが好ましく、フェニル基がより好ましい。
(メタ)アクリロキシアルキル基におけるアルキル基の炭素数は、1以上6以下であることが好ましい。より好ましくは、アルキル基がプロピル基である。
アルコキシ基の炭素数は、1以上6以下であることが好ましく、1以上4以下であることがより好ましい。
以降、式(1)中のRaを官能基、Rbを置換基と呼称する。
式(1)で表わされる有機ケイ素化合物としては、特段の制限なく、公知の有機ケイ素化合物を用いることができる。具体的には、以下の、官能基を二つ有する二官能シラン化合物、官能基を三つ有する三官能シラン化合物、官能基を四つ有する四官能シラン化合物が挙げられる。
二官能シラン化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
三官能シラン化合物として、以下のものが挙げられる。
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、等の置換基としてアルキル基を有する三官能シラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、等の置換基としてアルケニル基を有する三官能シラン化合物;
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等の置換基としてアリール基を有する三官能シラン化合物;
γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルジエトキシメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルエトキシジメトキシシラン等の置換基としてメタクリロキシアルキル基を有する三官能シラン化合物等;
γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルジエトキシメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルエトキシジメトキシシラン等の、置換基としてアクリロキシアルキル基を有する三官能シラン化合物等が挙げられる。
四官能シラン化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
中でも、式(1)で示される有機ケイ素化合物は、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
(Ra)-Si-(Rb) (2)
(式(2)中、Raは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を示し、Rbは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基または(メタ)アクリロキシアルキル基を示す。ただし、Raの置換基は、それぞれ、同一でも異なってもよい。)
適度な架橋性を有するために、縮合の初期は柔軟性を有し、縮合の進行とともに硬くなる。したがって、縮合の初期に無機微粒子や樹脂微粒子とトナー母粒子の樹脂との間をしっかりと埋めやすく、縮合が進行することで無機微粒子や樹脂微粒子とトナー母粒子の樹脂との間をしっかりと接着することができる。よって、過帯電抑制性能に優れる。
さらに、上述の通り、式(2)で表される化合物は、架橋性を有するために現像耐久性に優れる。また、縮合によって疎水化が進行するために、疎水化度の高い有機ケイ素縮合体を得ることができる。よって、高温高湿環境下でも高い帯電性を有するため、好ましい。
式(2)中のRbは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、フェニル基または(メタ)アクリロキシプロピル基であることが好ましい。Rbが上記官能基であると、トナー表面の表面自由エネルギーを低下させやすく、トナーの流動性が向上する。よって、トナーへの帯電付与機会が増加し、帯電の立ち上がりが良化する。また、帯電サイトであるケイ素原子が電荷を受け取りやすく、帯電性がさらに向上する。
有機ケイ素縮合体の含有量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.2~20.0質量部であることが好ましく、0.5~10.0質量部であることがより好ましく、2.0~10.0質量部がさらに好ましい。上記範囲であると、長期間の使用によってもトナーが劣化しにくく、帯電性を良好に保つことができる。
続いて、以下にトナーの製造方法について詳細に述べる。
<中抵抗の無機微粒子を含むトナーの製造方法>
上記中抵抗の無機微粒子を含む本発明のトナーを製造する場合、以下の第一の製造方法または第二の製造方法で製造するとよい。
第一の製造方法として、水系媒体中に式(1)で表される有機ケイ素化合物又はその加水分解物、中抵抗の無機微粒子、及び、トナー母粒子を含む混合液を調製する工程と、その後、有機ケイ素化合物を縮合させる工程とを有する方法が挙げられる。
有機ケイ素化合物は、任意の方法で水系媒体に添加及び混合することができる。有機ケイ素化合物は、そのまま添加してもよいが、水系媒体と混合して有機ケイ素化合物を加水分解した後に添加することが好ましい。
有機ケイ素化合物の加水分解及び縮合反応はpH依存性があることが知られており、加水分解反応には、pHは2.0以上7.0以下であることが好ましく、縮合反応には水系媒体のpHは7.0以上12.0以下であることが好ましい。
水系媒体又は混合液のpHは、既存の酸又は塩基で調製すればよい。pH調整用の酸としては、以下のものが挙げられる。
塩酸、臭酸、ヨウ素酸、過塩素酸、過臭素酸、メタ過ヨウ素酸、過マンガン酸、チオシアン酸、硫酸、硝酸、ホスホン酸、リン酸、二リン酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸、トリポリリン酸、アスパラギン酸、o-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、イソニコチン酸、オキサロ酢酸、クエン酸、2-グリセリンリン酸、グルタミン酸、シアノ酢酸、シュウ酸、トリクロロ酢酸、o-ニトロ安息香酸、ニトロ酢酸、ピクリン酸、ピコリン酸、ピルビン酸、フマル酸、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸、o-ブロモ安息香酸、マレイン酸、マロン酸。
pH調整用の塩基としては、以下のものが挙げられる。
水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物及びそれらの水溶液;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属の炭酸塩及びそれらの水溶液、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウム等のアルカリ金属の硫酸塩及びそれらの水溶液;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム等のアルカリ金属のリン酸塩及びそれらの水溶液;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物及びそれらの水溶液;アンモニア;ヒスチジン、アルギニン、リシン等の塩基性アミノ酸及びそれらの水溶液;トリスヒドロキシメチルアミノメタン。
これらの酸及び塩基は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中抵抗の無機微粒子は、そのまま用いてもよいし、事前に中抵抗の無機微粒子の水分散体を作製してから、用いてもよい。混合液の調製は、どのような混合手段を用いてもかまわない。
混合液中の中抵抗の無機微粒子を分散する工程を行ってもよい。
中抵抗の無機微粒子を均一に分散させることにより、微粒子をより均一に分散した状態でトナー母粒子に付着させることができる。
中抵抗の無機微粒子の分散は、例えば、高圧式ホモジナイザー、回転せん断型ホモジナイザー、超音波分散機、高圧衝撃式分散機等を用いることができる。
ここで、加水分解された有機ケイ素化合物を用い、該有機ケイ素化合物の縮合反応を実施した場合に、トナー母粒子に対する中抵抗の無機微粒子の密着性を向上することができるメカニズムを以下のように推察する。
加水分解された有機ケイ素化合物の縮合時に、有機ケイ素縮合体は水系媒体への安定性が低下した状態で、中抵抗の無機微粒子の表面に付着する。
中抵抗の無機微粒子の表面に付着した有機ケイ素縮合体に対し、さらに縮合反応が進行する。縮合反応が進んで親水的な水酸基が疎水的なシロキサン結合に変化することで、有機ケイ素縮合体はより疎水化される。すなわち、中抵抗の無機微粒子の表面は、疎水化された有機ケイ素縮合体で被覆されることになる。
疎水化された有機ケイ素縮合体で被覆された中抵抗の無機微粒子は、水系媒体中で安定的に存在することが困難になり、その表面を水系媒体中からなくそうと、トナー母粒子に埋めこまれていく。また、この時、有機ケイ素縮合体が中抵抗の無機微粒子とトナー母粒子の界面の接着剤として働くため、中抵抗の無機微粒子とトナー母粒子が強固に固着する。そして、有機ケイ素縮合体が、中抵抗の無機微粒子とトナー母粒子との間に介在するため、中抵抗の無機微粒子とトナー母粒子との間に十分な接触面積が確保され、電荷の分散に優れたトナーを得ることができる。
ここで、該縮合反応時の温度をトナー母粒子のガラス転移温度(Tg)以上に調整しておくことが好ましい。具体的には、トナー母粒子のガラス転移温度以上トナー母粒子のガラス転移温度+40℃以下であることが好ましく、より好ましくはトナー母粒子のガラス転移温度以上トナー母粒子のガラス転移温度+30℃以下である。
第二の製造方法として、水系媒体中に式(1)で表される有機ケイ素化合物又はその加水分解物、中抵抗の無機微粒子、及びトナー母粒子の前駆体を含む混合液を調製する工程と、その後、有機ケイ素化合物を縮合させる工程とを有する方法が挙げられる。
トナー母粒子の前駆体は、結着樹脂を形成し得る重量性単量体を含むものが例示できる。また、トナー母粒子の前駆体の重合と、有機ケイ素化合物の縮合は、同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。
第二の製造方法においても、第一の製造方法によるメカニズムと同様にして、中抵抗の無機微粒子のトナー母粒子に対する密着性が向上する。そして、有機ケイ素縮合体が、中抵抗の無機微粒子とトナー母粒子の前駆体との間に介在するため、中抵抗の無機微粒子とトナー母粒子の前駆体との間に十分な接触面積が確保され、電荷の分散に優れたトナーを得ることができる。
<イオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子を含むトナーの製造方法>
イオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子を含むトナーを製造する場合、以下の密着工程および縮合工程を有する製法を用いるとよい。
密着工程は、トナー母粒子およびイオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子を含む分散液を調製し、トナー母粒子にイオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子を密着させる工程である。トナー母粒子に上記樹脂微粒子を密着させる方法としては、上記分散液に、機械的衝撃力を与えて樹脂微粒子をトナー母粒子に埋め込む方法、水系媒体を加熱して樹脂微粒子をトナー母粒子に密着させる方法が挙げられる。また、凝集剤を添加して樹脂微粒子をトナー母粒子に密着させる方法でもよく、上記方法を組み合わせてもよい。いずれの方法においても水系媒体を撹拌することが好ましい。
より好ましくは、イオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子とトナー母粒子との接触面積を大きくする観点から、水系媒体をトナー母粒子のガラス転移温度(Tg)以上に加熱する方法である。水系媒体を上記ガラス転移温度以上に加熱することで、トナー母粒子が軟化し、イオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子がトナー母粒子に接触した際に一体化することができる。
イオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子とトナー母粒子とを水系媒体中に共存させた状態で、イオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子が水系媒体中に分散しやすいpHに調整し、加熱することにより密着させることが好ましい。この方法によって、イオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子が分散した状態でトナー母粒子に密着させることができる上に、トナー母粒子同士の凝集も起こりにくい。
縮合工程は、上記分散液に上記有機ケイ素化合物又はその加水分解物を加え、上記分散液中で有機ケイ素化合物を縮合させて有機ケイ素縮合体を得る工程である。縮合させる方法としては、水系媒体中に上記有機ケイ素化合物またはその加水分解物、及びイオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子が密着したトナー母粒子を含む混合液を調製し、その後、前記有機ケイ素化合物を縮合させる方法がある。
有機ケイ素化合物は、任意の方法で水系媒体に添加及び混合することができる。有機ケイ素化合物をそのまま添加してもよいが、水系媒体と混合して有機ケイ素化合物を加水分解した後に添加することが好ましい。有機ケイ素化合物の加水分解及び縮合反応におけるpHの制御について、上記第一の製造方法で述べたことと同様の方法が好ましい。
水系媒体又は混合液のpHは、既存の酸又は塩基で調整すればよい。pH調整用の酸および塩基としては、上述の酸および塩基が挙げられる。
<トナー母粒子の製造方法>
トナー母粒子の製造方法は、特に限定されることなく、懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法、及び粉砕法などを用いることができる。水系媒体中でトナー母粒子を製造した場合はそのまま水分散液として用いてもよく、洗浄や濾過、乾燥を行った後、水系媒体中に再分散させても良い。
乾式でトナー母粒子を製造した場合は公知の方法によって水系媒体に分散させることができる。トナー母粒子を水系媒体中に分散させるために、水系媒体が分散安定剤を含有することが好ましい。
以下、懸濁重合法を用い、トナー母粒子を製造する方法を述べる。
まず、結着樹脂を生成しうる重合性単量体、及び必要に応じて各種材料を加え、分散機を用いて、溶解又は分散させた重合性単量体組成物を調製する。各種材料として、着色剤、ワックス、荷電制御剤、粘度調整のための溶剤、結晶性樹脂、重合性開始剤、連鎖移動剤などが挙げられる。分散機としては、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、又は、超音波分散機が挙げられる。
次いで、重合性単量体組成物を、難水溶性無機微粒子を含有する水系媒体中に投入し、高速撹拌機もしくは超音波分散機などの高速分散機を用いて、重合性単量体組成物の液滴を調製する(造粒工程)。
その後、液滴中の重合性単量体を重合してトナー母粒子を得る(重合工程)。
重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に混合してもよく、水系媒体中に液滴を形成させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。また、液滴の造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。重合性単量体を重合して樹脂粒子を得たあと、必要に応じて脱溶剤処理を行い、トナー母粒子の分散液を得るとよい。
続いて、以下にトナーに用いられるその他の材料について詳細に述べる。
<その他の微粒子>
トナーには、上記中抵抗の無機微粒子や上記樹脂微粒子に加えて、さらに別の微粒子を同時に用いてもよい。
具体的には、以下の微粒子のうち、体積抵抗率が1.0×10(Ω・cm)未満の微粒子、または1.0×1011(Ω・cm)を超える微粒子が挙げられる。
水ガラス法シリカ(酸化ケイ素:SiO)、ゾルゲル法シリカ、乾式製法シリカ等に代表されるシリカ微粒子;
ケイ素、ゲルマニウム等に代表される半導体の微粒子;
ハイドロタルサイトに代表される粘土鉱物等。
これらの微粒子は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルに代表される処理剤により表面処理を施してもよい。
中でも、体積抵抗率が1.0×1011(Ω・cm)を超える微粒子を同時に用いるとよい。体積抵抗率が1.0×1011(Ω・cm)を超える微粒子を同時に用いることで、トナーの帯電量をより高めることができる。体積抵抗率が1.0×1011(Ω・cm)を超える微粒子としては、シリカ微粒子が好ましい。シリカ微粒子を用いることで、トナー粒子は、さらに、表面が有機ケイ素縮合体で被覆されたシリカ微粒子をトナー母粒子の表面に有する。
<結着樹脂>
トナー母粒子を構成する結着樹脂としては、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビニル系樹脂が好ましい。
ビニル系樹脂としては、下記単量体の重合体又はそれらの共重合体が挙げられる。中でも、スチレン系単量体と不飽和カルボン酸エステルとの共重合体が好ましい。
スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸;マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;マレイン酸無水物等の不飽和ジカルボン酸無水物;アクリロニトリル等のニトリル系ビニル単量体;塩化ビニル等の含ハロゲン系ビニル単量体;ニトロスチレン等のニトロ系ビニル単量体等。
また、トナー母粒子には、イオン性官能基を有する樹脂をさらに含有することが好ましい。イオン性官能基を有する樹脂は有機ケイ素縮合体との親和性が高いため、有機ケイ素縮合体によって被覆されやすく、トナー外への電荷のリークをさらに抑制できる。よって、さらに高い帯電性を得ることができる。
<重合開始剤>
重合開始剤としては、特段の制限なく公知の重合開始剤を用いることができる。
具体的には以下のものが挙げられる。
過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化-tert-ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1-フェニル-2-メチルプロピル-1-ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸-tert-ヒドロペルオキシド、過ギ酸-tert-ブチル、過酢酸-tert-ブチル、過安息香酸-tert-ブチル、過フェニル酢酸-tert-ブチル、過メトキシ酢酸-tert-ブチル、過N-(3-トルイル)パルミチン酸-tert-ブチルベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレ-ト、t-ブチルパーオキシイソブチレ-ト、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等に代表される過酸化物系重合開始剤;
2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等に代表されるアゾ系またはジアゾ系重合開始剤等。
<着色剤>
トナー母粒子に含有させる着色剤としては、特段の制限なく従来公知のブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各色および他の色の顔料および染料、磁性体等を用いることができる。
ブラック着色剤としては、具体的にはカーボンブラック等に代表されるブラック顔料等が用いられる。
イエロー着色剤としては、具体的には以下のものが挙げられる。
モノアゾ化合物;ジスアゾ化合物;縮合アゾ化合物;イソインドリノン化合物;ベンズイミダゾロン化合物;アンスラキノン化合物;アゾ金属錯体;メチン化合物;アリルアミド化合物等に代表されるイエロー顔料およびイエロー染料等。具体的には以下の、C.I.ピグメントイエロー74,93,95,109,111,128,155,174,180,185,C.I.ソルベントイエロー162等が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、具体的には以下のものが挙げられる。
モノアゾ化合物;縮合アゾ化合物;ジケトピロロピロール化合物;アントラキノン化合物;キナクリドン化合物;塩基染料レーキ化合物;ナフトール化合物:ベンズイミダゾロン化合物;チオインジゴ化合物;ペリレン化合物等に代表されるマゼンタ顔料およびマゼンタ染料等。具体的には以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2,3,5,6,7,23,48:2,48:3,48:4,57:1,81:1,122,144,146,150,166,169,177,184,185,202,206,220,221,238,254,269、C.I.ピグメントバイオレッド19等。
シアン着色剤としては、具体的には以下の銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物;塩基染料レーキ化合物等に代表されるシアン顔料およびシアン染料等が挙げられる。具体的には以下の、C.I.ピグメントブルー1,7,15,15:1,15:2,15:3,15:4,60,62,66等が挙げられる。
着色剤の含有量は、結着樹脂または重合性単量体100質量部に対して1.0~20.0質量部であることが好ましい。
トナー母粒子には、磁性体を含有させて磁性トナーとすることも可能である。この場合、磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。
磁性体としては、以下のものが挙げられる。
マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等に代表される酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケル等に代表される金属あるいはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金及びその混合物等。
<ワックス>
トナー母粒子に含有させるワックスとしては、具体的には、以下のものが挙げられる。ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチルなどの1価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル、あるいは、1価カルボン酸と脂肪族モノアルコールとのエステル;
セバシン酸ジベヘニル、ヘキサンジオールジベヘネートなどの2価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル、あるいは、2価カルボン酸と脂肪族モノアルコールとのエステル;
グリセリントリベヘネートなどの3価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル、あるいは、3価カルボン酸と脂肪族モノアルコールとのエステル;
ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテートなどの4価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル、あるいは、4価カルボン酸と脂肪族モノアルコールとのエステル;
ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテートなどの6価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル、あるいは、6価カルボン酸と脂肪族モノアルコールとのエステル;
ポリグリセリンベヘネートなどの多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル、あるいは、多価カルボン酸と脂肪族モノアルコールとのエステル;
カルナバワックス、ライスワックスなどの天然エステルワックス;
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどの石油系ワックス及びその誘導体;
フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;
ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス及びその誘導体;高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸;酸アミドワックス。
ワックスの含有量は、結着樹脂または重合性単量体100質量部に対して1.0~30.0質量部であることが離型性の観点から好ましい。5.0~20.0質量部であると更に好ましい。
<荷電制御剤>
トナー母粒子は更に荷電制御剤を含有してもよい。
荷電制御剤としては、特段の制限なく従来公知の荷電制御剤を用いることができる。具体的には、負帯電制御剤として以下のものが挙げられる。
サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸等の芳香族カルボン酸の金属化合物または上記芳香族カルボン酸の金属化合物を有する重合体または共重合体;
スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体;
アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩または金属錯体;
ホウ素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等。
また、正帯電制御剤として以下の、四級アンモニウム塩、四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物;グアニジン化合物;ニグロシン系化合物;イミダゾール化合物等が挙げられる。
なお、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体としては、以下のものを用いることができる。
スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸等のスルホン酸基含有ビニル系モノマーの単重合体あるいは結着樹脂の項に示したビニル系単量体と上記スルホン酸基含有ビニル系モノマーの共重合体等。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂または重合性単量体100質量部に対して0.01~5.0質量部であることが好ましい。
<外部添加剤>
トナー粒子は、表面に有機ケイ素縮合体を有することによって、外部添加剤がない場合においても、優れた流動性等の特性を示す。しかし、更なる改善を目的として、外部添加剤を含有してもよい。
外部添加剤としては特段の制限なく従来公知の外部添加剤を用いることができる。具体的には以下のものが挙げられる。
湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の原体シリカ微粒子またはそれら原体シリカ微粒子にシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等の処理剤により表面処理を施したシリカ微粒子;
酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化亜鉛微粒子、チタン酸ストロンチウム微粒子等の金属酸化物微粒子または上記金属酸化物を疎水化処理した金属酸化物微粒子;
ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩;
サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸等の芳香族カルボン酸の金属錯体;ハイドロタルサイト等の粘土鉱物;
フッ化ビニリデン微粒子、ポリテトラフルオロエチレン微粒子等の樹脂微粒子等。
外部添加剤を含有する場合の含有量は、トナー粒子100質量部に対して0.1~5.0質量部であることが好ましい。
続いて、以下に本発明のトナーの測定方法について説明する。
<トナーの電荷減衰測定と電荷減衰定数の算出>
トナーの電荷減衰定数の算出は、熱刺激電流測定システム(商品名:TS-POLAR、リガク(株)製)付属のコロナ荷電装置 KTK-2001、および表面電位計 Model347(トレック社製)を用いて以下のように行う。なお、ここでは、負帯電性トナーの場合について説明する。正帯電性トナーの場合には、極性の設定をすべて逆極性に変更すればよい。
(1)試料ホルダのセット
(1-1)前記熱刺激電流測定システムに付属の試料ホルダを本体の試料部にセットし、ホルダガードを閉める。
(1-2)コロナ荷電装置の表面電位計設置部に、表面電位計のプローブを設置する。
(1-3)表面電位計の電源を入れ、試料ホルダを表面電位計の下部に移動させ、表面電位計のZero Adjustつまみを回して表面電位を0.0Vに合わせる。このとき、試料ホルダと表面電位計との間隔は3mmに設定する。
(2)試料のセット
(2-1)試料パン(アルミニウム製)にトナーを700mg秤量し、試料ホルダに乗せる。
(2-2)ターンテーブルを回転させ、試料をコロナ電極の下部に移動し、カバーを閉める。
(3)帯電
(3-1)グリッド側、コロナ側ともに、極性切り替えコネクタの-(マイナス)側に高圧ケーブルを差し込む(+(プラス)側にはダミーコネクタを差し込む)。
(3-2)グリッド側、コロナ側の極性切り替えスイッチを、-(マイナス)側にし、コロナ荷電装置の電源を入れる。
(3-3)グリッド側の高圧ONスイッチを押し、グリッド電圧調整ダイアルを回して、グリッド側電圧が1kvになるよう設定する。
(3-4)コロナ側の高圧ONスイッチを押し、コロナ電圧調整ダイアルを回して、コロナ側電圧が20kvになるよう設定する。
(3-5)この状態で、試料を30秒間帯電させる。
(4)電位測定
(4-1)ターンテーブルを回転させ、試料を表面電位計のプローブの下部に移動させる。この時点を測定開始時刻とする。
(4-2)この状態で、1800秒間表面電位を測定する。測定開始から900秒経過時の表面電位を初期表面電位Vとし、900秒から1800秒までの表面電位推移から、下記式(3)に従い電荷減衰定数を算出する。
V=Vexp(-α√t) (3)
(上記式(3)中、Vは、表面電位(V)を示し、Vは、初期表面電位(V)を示し、αは、電荷減衰定数を示し、tは、減衰時間(秒)を示す。)
<透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナーの断面観察>
トナーの断面観察は以下の方法により行う。
可視光硬化性包埋樹脂(商品名:D-800、東亜合成社製)中にトナーを十分分散させた後、光照射器(商品名:LUXSPOT II、日本電子社製)を用いて可視光を照射し、可視光硬化性包埋樹脂を硬化させて硬化物を得る。得られた硬化物からダイヤモンド刃を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出す。このサンプルを透過型電子顕微鏡(TEM)(商品名:JEM2800、日本電子社製)を用いて、加速電圧200kVで10万倍の倍率に拡大し、トナー一粒の断面を観察する。元素分析は、EDX(エネルギー分散型X線分光法)を利用して各元素をマッピングすることによって行う。EDXの検出器としてはドライSD100GV検出器(日本電子社製)を用い、アナライザーとしてはノーランシステム7(サーモフィッシャー社製)を用いる。
<微粒子の体積抵抗率の測定>
微粒子の体積抵抗率は、以下のようにして測定する。
装置としては6430型サブフェムトアンペア・リモートソースメーター(ケースレーインスツルメンツ社製)を用いる。前記装置のFORCE端子にSH2-Z 4端子測定可能サンプルホルダ(Bio-Logic社製)を接続し、電極部にサンプル微粒子を0.2g乗せてトルクレンチを用いて123.7kgfの荷重をかけた状態で、電極間の距離を測定する。
サンプルに20Vの電圧を1分間印加した時の抵抗値を測定し、下記式(4)を用いて体積抵抗率を算出する。
体積抵抗率(Ω・cm)=R/L (4)
(R:抵抗値(Ω)、L:電極間距離(cm))
<トナー中の有機ケイ素縮合体の構造確認>
[NMR測定用のトナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分の分離法]
トナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分は、以下のように分離する。
トナー粒子10.0gを秤量し、円筒濾紙(東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mLを用いて20時間抽出する。そして、円筒濾紙中の濾物を40℃で数時間真空乾燥を行って得られたものをNMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分とする。なお、本発明において、上記有機微粒子または無機微粒子でトナー粒子表面が外部添加されている場合は、下記方法によって、該有機微粒子または無機微粒子を除去し、トナー粒子を得る。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに上記ショ糖濃厚液を31.0gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20分で振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて3500rpm、30分の条件で分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥させる。乾燥品をスパチュラで解砕してトナー粒子を得る。
(式(1)で表される構造の確認方法)
トナー粒子に含有される有機ケイ素縮合体における、式(1)で表される部分構造の確認には以下の方法を用いる。
式(1)のRbで表されるアルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基または(メタ)アクリロキシアルキル基の有無は、13C-NMRにより確認する。また、式(1)の詳細な構造はH-NMR、13C-NMRおよび29Si-NMRにより確認する。使用した装置および測定条件を以下に示す。
(測定条件)
装置:BRUKER製 AVANCE III 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れる。
当該方法にて、式(1)のRbで表されるアルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基または(メタ)アクリロキシアルキル基の有無を確認する。シグナルが確認できたら、式(1)の構造は“あり”とする。
13C-NMR(固体)の測定条件)
測定核周波数:125.77MHz
基準物質:Glycine(外部標準:176.03ppm)
観測幅:37.88kHz
測定法:CP/MAS
コンタクト時間:1.75ms
繰り返し時間:4s
積算回数:2048回
LB値:50Hz
(29Si-NMR(固体)の測定方法)
(測定条件)
装置:BRUKER製 AVANCE III 500プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れる。
測定核周波数:99.36MHz
基準物質:DSS(外部標準:1.534ppm)
観測幅:29.76kHz
測定法:DD/MAS、CP/MAS
29Si 90° パルス幅:4.00μs-1dB
コンタクト時間:1.75ms~10ms
繰り返し時間:30s(DD/MASS)、10s(CP/MAS)
積算回数:2048回
LB値:50Hz
<トナー中の有機ケイ素縮合体量>
トナー中の有機ケイ素縮合体量を以下の方法で評価する。
有機ケイ素縮合体の測定は、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mm、測定時間は10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
測定サンプルとして、専用のプレス用アルミリングの中にトナー粒子4gを入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」((株)前川試験機製作所製)を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ2mm、直径39mmに成型したペレットを用いる。
有機ケイ素縮合体を含まないトナー粒子100質量部に対して、シリカ(SiO)微粉末を0.5質量部となるように添加し、コーヒーミルを用いて充分混合する。同様にして、シリカ微粉末を5.0質量部、10.0質量部となるようにトナー粒子とそれぞれ混合し、これらを検量線用の試料とする。
それぞれの試料について、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにして検量線用の試料のペレットを作製し、PET(ペンタエリスリトール)を分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°に観測されるSi-Kα線の計数率(単位:cps)を測定する。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値はそれぞれ、24kV、100mAとする。得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中のSiO添加量を横軸として、一次関数の検量線を得る。
次に、分析対象のトナー粒子を錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにしてペレットとし、そのSi-Kα線の計数率を測定する。そして、上記の検量線からトナー粒子中の有機ケイ素縮合体量を求める。なお、シリカ粒子を添加したサンプルについては、添加したシリカ粒子はすべてトナー中に含まれるものとして、得られたケイ素縮合体量から添加したシリカ粒子の量を減じたものを有機ケイ素縮合体量として用いる。
<トナー・トナー粒子・トナー母粒子の重量平均粒径(D4)の測定>
トナー等の重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1質量%となるようにしたもの、例えば、「商品名:ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行った。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1,600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「商品名:Ultrasonic DispensionSystem Tetra150」(日科機バイオス(株)製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間、超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明する。しかし、これは本発明をなんら限定するものではない。以下にトナー及びトナーの製造方法について記載する。実施例中及び比較例中の「部」および「%」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
<有機ケイ素化合物液の製造例>
・イオン交換水 70.0部
・メチルトリエトキシシラン 30.0部
上記材料を200mLのビーカーに秤量し、電極(9615S-10D:(株)堀場製作所製)を装着したpHメーター(D-74:(株)堀場製作所製)でpHを確認しながら、10%塩酸でpHを3.5に調整した。その後、ウォーターバスで60℃に加熱しながら1.0時間撹拌し、有機ケイ素化合物液1を作製した。また、有機ケイ素化合物の種類を表1に示すように変更した以外は同様にして、有機ケイ素化合物液2~7を作製した。なお、以降pHの測定の際には、上記pHメーターおよび電極を用いて行った。
Figure 0007106347000001
<樹脂微粒子分散液の製造例>
<樹脂微粒子分散液1>
・スチレン 59.5部
・n-ブチルアクリレート 7.7部
・2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸 2.8部
上記材料をジメチルホルムアミド42.0部に溶解させ、窒素バブリングをしながら1.0時間撹拌した後、110℃まで加熱した。この反応液に、開始剤としてtert-ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日油(株)製、商品名 パーブチルI)2.1部とトルエン37.0部の混合液を滴下した。更に温度110℃にて4.0時間反応させた。その後、冷却しメタノール1,000.0部に滴下し、析出物を得た。得られた析出物をテトラヒドロフラン120.0部に溶解後、メタノール1,800部に滴下し、白色析出物を析出させ、濾過し、減圧下、温度90℃にて乾燥させることで、樹脂1を得た。
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、メチルエチルケトン200.0部を仕込み、樹脂1を100.0部加えて溶解した。次いで、1.0mol/L水酸化カリウム水溶液をゆっくり加え、10分間撹拌を行った後、イオン交換水500.0部をゆっくり滴下し、乳化させた。
得られた乳化物を減圧蒸留して脱溶剤し、イオン交換水を加えて樹脂濃度が20.0%になるように調製して、イオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子1が分散した樹脂微粒子分散液1を得た。樹脂微粒子1の個数平均粒径は100nmであった。
<樹脂微粒子分散液2>
樹脂微粒子分散液1の製造例において、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸に替えてメタクリル酸を用いた以外は樹脂微粒子分散液1の製造例と同様にして、イオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子2が分散した樹脂微粒子分散液2を得た。樹脂微粒子2の個数平均粒径は100nmであった。
<トナー母粒子分散液の製造例>
(水系媒体B1の製造)
・イオン交換水 390.0部
・リン酸ナトリウム(12水和物) 14.0部
反応容器に上記材料を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。
下記の分散機を用いて、12,000rpmにて撹拌しながら、イオン交換水10.0部に塩化カルシウム(2水和物)9.2部を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。
分散機:商品名 T.K.ホモミクサー、特殊機化工業(株)製
さらに、水系媒体に10%塩酸を投入し、pHを6.0に調整し、水系媒体B1を得た。
<トナー母粒子分散液1>
(重合性単量体組成物の製造例)
・スチレン 60.0部
・着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3) 6.5部
上記材料をアトライタ(日本コークス工業(株)製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、着色剤が分散された着色剤分散液B1を調製した。
上記着色剤分散液B1に下記材料を加えた。
・スチレン 20.0部
・n-ブチルアクリレート 20.0部
・ポリエステル樹脂B1(Tg:75℃、酸価:8.0mgKOH/g) 5.0部
(ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物・テレフタル酸・トリメリット酸の縮合物)
・フィッシャートロプシュワックス(融点:78℃) 7.0部
これを65℃に保温し、T.K.ホモミクサーを用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物B1を調製した。
(造粒工程)
水系媒体B1の温度を70℃、撹拌装置の回転数を12,000rpmに保ちながら、水系媒体B1中に重合性単量体組成物B1を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート9.0部を添加した。そのまま上記撹拌装置にて12,000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
(重合工程)
高速撹拌装置からプロペラ撹拌羽根を備えた撹拌機に変更し、150rpmで撹拌しながら温度70℃を保持して5.0時間重合を行い、85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行った。イオン交換水を加えて分散液中のトナー母粒子濃度が20.0%になるように調整し、トナー母粒子1が分散したトナー母粒子分散液1を得た。トナー母粒子1の重量平均粒径(D4)は、6.7μm、個数平均粒径(D1)は5.9μm、ガラス転移温度(Tg)は56℃であった。
<トナー母粒子分散液2>
(樹脂微粒子分散液の製造例)
下記材料を秤量し、混合・溶解させた。
・スチレン 80.0部
・アクリル酸n-ブチル 18.5部
・アクリル酸 1.5部
この溶液に界面活性剤(商品名:ネオゲンRK、第一工業製薬(株)製)の10%水溶液を添加して、分散させた。さらに10分間ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.15部をイオン交換水10.0部に溶解させた水溶液を添加した。窒素置換をした後、温度70℃で6.0時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度が12.5%の樹脂微粒子分散液B1を得た。
(ワックス分散液の製造工程)
以下の材料を秤量し混合した。
・フィッシャートロプシュワックス(融点:78℃) 100.0部
・界面活性剤(商品名:ネオゲンRK、第一工業製薬(株)製) 15.0部
・イオン交換水 385.0部
湿式ジェットミル(商品名:ナノジェットパル JN100、(株)常光製)を用いて1時間分散してワックス分散液を得た。ワックス分散液B1の濃度は20.0%であった。
(着色剤分散液の製造工程)
以下の材料を秤量し混合した。
・着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3) 100.0部
・界面活性剤(商品名:ネオゲンRK、第一工業製薬(株)製) 15.0部
・イオン交換水 885.0部
湿式ジェットミル(商品名:ナノジェットパル JN100、(株)常光製)を用いて1時間分散して着色剤分散液B2を得た。
(トナー母粒子分散液の製造工程)
・樹脂微粒子分散液B1 160.0部
・ワックス分散液B1 10.0部
・着色剤分散液B2 10.0部
・硫酸マグネシウム 0.2部
上記材料を反応容器に入れ、ホモジナイザー(商品名:ウルトラタラックスT50、IKA社製)を用いて分散させた後、撹拌させながら、65℃まで加温した。温度65℃で1.0時間撹拌した後、光学顕微鏡にて観察すると、個数平均粒径が6.0μmである凝集体粒子が形成されていることが確認された。界面活性剤(商品名:ネオゲンRK、第一工業製薬(株)製)2.2部加えた後、80℃まで昇温して2.0時間撹拌して、融合した球形のトナー母粒子を得た。冷却後、濾過し、濾別した固体を720.0部のイオン交換水で、1.0時間撹拌洗浄した。トナー母粒子を含む溶液を濾過し、真空乾燥機を用いて乾燥させ、トナー母粒子2を得た。トナー母粒子2の重量平均粒径(D4)は、7.1μm、個数平均粒径(D1)は6.4μm、Tgは58℃であった。
水系媒体B1中にトナー母粒子2を100.0部投入し、温度60℃にてT.K.ホモミクサーを用いて5,000rpmで回転させながら15分間分散した。イオン交換水を加えて分散液中のトナー母粒子濃度が20.0%になるように調整し、トナー母粒子分散液2を得た。
<トナー母粒子分散液3>
・イオン交換水 660.0部
・48.5%ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液 25.0部
上記材料を反応容器に入れ、混合撹拌し、T.K.ホモミクサーを用いて、10,000rpmにて撹拌して水系媒体B2を調製した。
下記の材料を酢酸エチル500.0部へ投入し、プロペラ式撹拌装置にて100rpmで溶解して溶解液を調製した。
・スチレンアクリル樹脂B1
(Tg:60℃、酸価:8.0mgKOH/g) 100.0部
(スチレン/アクリル酸n-ブチル=80.0/20.0の共重合体)
・ポリエステル樹脂B1(Tg:75℃、酸価:8.0mgKOH/g) 5.0部
(ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物・テレフタル酸・トリメリット酸の縮合体)
・着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3) 6.5部
・フィッシャートロプシュワックス(融点:78℃) 7.0部
次に水系媒体B2 150.0部を容器に入れ、T.K.ホモミクサーを用い、回転数12,000rpmで撹拌し、これに上記溶解液100.0部を添加し、10分間混合して樹脂粒子分散液B1を調製した。
その後、脱気用配管、撹拌機及び温度計をセットしたフラスコに、樹脂粒子分散液B1100.0部を仕込み、撹拌周速20m/分間で撹拌しながら温度30℃にて12.0時間減圧下、脱溶剤し温度45℃で4.0時間熟成させた。熟成後、減圧濾過を行い、イオン交換水300.0部で洗浄した。温度45℃で48.0時間乾燥し、目開き75μmのメッシュで篩いトナー母粒子3を得た。トナー母粒子3の重量平均粒径(D4)は、6.9μm、個数平均粒径(D1)は6.2μm、Tgは55℃であった。
水系媒体B1中にトナー母粒子3を100.0部投入し、温度60℃にてT.K.ホモミクサーを用いて5,000rpmで回転させながら15分間分散した。イオン交換水を加えて分散液中のトナー母粒子濃度が20.0%になるように調整し、トナー母粒子分散液3を得た。
<トナー母粒子分散液4>
・低密度ポリエチレン(融点 100℃) 20.0部
・スチレン 64.0部
・n-ブチルアクリレート 13.5部
・アクリロニトリル 2.5部
上記材料をオートクレーブに仕込み、系内をN置換後、昇温撹拌しながら180℃に保持した。系内に、2.0%のt-ブチルハイドロパーオキシドのキシレン溶液50.0部を4.5時間連続的に滴下し、冷却後に溶媒を分離除去し、ポリエチレンに共重合体がグラフトしたグラフト重合体B1を得た。
・スチレンアクリル樹脂B2(Tg:60℃、酸価:8.0mgKOH/g)
100.0部
(スチレン/アクリル酸ブチル/メタクリル酸=80.0/18.5/1.5の共重合体)
・フィッシャートロプシュワックス(融点 78℃) 7.0部
・グラフト重合体B1 5.0部
・着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3) 6.5部
上記材料をヘンシェルミキサ(FM-75型:三井三池化工機(株)製)でよく混合した後、温度100℃に設定した二軸混練機(PCM-30型:池貝鉄工(株)製)にて溶融混練した。得られた混練物を冷却し、アトマイザーミル(TAP-1型:東京アトマイザー製造(株)製)にて直径1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。次に、得られた粗砕物を、ターボ・ミル(T-250型:ターボ工業(株)製)を用いて、直径5.5μm程度に微粉砕した。気流式分級機を用いて微粗粉をカットしてトナー母粒子4を得た。トナー母粒子4の重量平均粒径(D4)は6.4μm、個数平均粒径(D1)は5.4μm、Tgは59℃であった。
水系媒体B1中にトナー母粒子4を100.0部投入し、温度60℃にてT.K.ホモミクサーを用いて5,000rpmで回転させながら15分間分散した。イオン交換水を加えて分散液中のトナー母粒子濃度が20.0%になるように調整し、トナー母粒子分散液4を得た。
<トナー母粒子分散液5>
トナー母粒子分散液4の製造例において、スチレンアクリル樹脂B2に替えて下記のスチレンアクリル樹脂B3を使用した以外はトナー母粒子分散液4の製造例と同様にしてトナー母粒子5が分散したトナー母粒子分散液5を得た。
・スチレンアクリル樹脂B3:スチレンアクリル樹脂B2中のメタクリル酸を2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸に置き換えたもの
トナー母粒子5の重量平均粒径(D4)は6.2μm、個数平均粒径(D1)は5.2μm、Tgは59℃であった。
<トナー母粒子分散液6>
トナー母粒子分散液4の製造例において、スチレンアクリル樹脂B2に替えて下記のスチレンアクリル樹脂B4を使用した以外はトナー母粒子分散液4の製造例と同様にしてトナー母粒子6が分散したトナー母粒子分散液6を得た。
・スチレンアクリル樹脂B4:スチレンアクリル樹脂B2中のメタクリル酸をアクリル酸ブチルに置き換えたもの
トナー母粒子6の重量平均粒径(D4)は6.3μm、個数平均粒径(D1)は5.3μm、Tgは58℃であった。
<トナー粒子の製造例>
<トナー粒子1>
反応容器内に下記サンプルを秤量し、プロペラ撹拌翼を用いて混合した。
・有機ケイ素化合物液1 20.0部
・中抵抗の無機微粒子(アルミナ:個数平均粒子径16nm) 0.2部
・シリカ微粒子(水ガラス法によって製造:個数平均粒子径80nm) 2.0部
・トナー母粒子分散液1 500.0部
次に、プロペラ撹拌翼を用いて混合しながら、混合液のpHを5.5に調整した後、温度を70℃に昇温し、3.0時間保持した。その後、1.0mol/L NaOH水溶液を用いてpHを9.5に調整し、撹拌しながら2.0時間保持した。10%塩酸でpHを1.5に調整して1.0時間撹拌し、その後、イオン交換水で洗浄しながら、濾過し、表面が有機ケイ素縮合体で被覆された無機微粒子を有するトナー粒子1を得た。
<トナー粒子2~10、13~28>
トナー粒子1の製造方法のうち、有機ケイ素化合物の種類および量、微粒子の種類および量、トナー母粒子種を表2に示すように変更した以外は、トナー粒子1の製造方法と同様にトナー粒子2~10、13~28を製造した。
<トナー粒子11>
反応容器内に下記サンプルを秤量し、プロペラ撹拌羽根を用いて混合した。
・樹脂微粒子分散液1 20.0部
・トナー母粒子分散液1 500.0部
次に、混合液のpHを5.5に調整した。混合液の温度を70℃にした後に、プロペラ撹拌羽根を用いて混合しながら、1.0時間保持した。
その後、有機ケイ素化合物液1を50.0部添加し、1.0mol/L NaOH水溶液を用いてpHを8.3に調整した。更に、撹拌しながら4時間保持した後に、温度が25℃になるまで空冷した。
得られた混合液に希塩酸を加えてpHを1.5に調整してから2時間撹拌した後、濾過、水洗、乾燥を行うことで、表面に有機ケイ素縮合体を有する樹脂微粒子を有するトナー粒子11を得た。
<トナー粒子12>
トナー粒子11の製造例において、樹脂微粒子分散液1に替えて樹脂微粒子分散液2を用いた以外はトナー粒子11の製造例と同様にしてトナー粒子12を得た。
<トナー粒子29>
トナー母粒子分散液1を、10%塩酸でpHを1.5に調整して1.0時間撹拌し、その後、イオン交換水で洗浄しながら、濾過し、トナー粒子29を得た。
<トナー粒子30>
反応容器内に下記サンプルを秤量し、プロペラ撹拌翼を用いて混合した。
・メチルトリエトキシシラン 6.0部
・シリカ微粒子(水ガラス法によって製造:個数平均粒子径80nm) 2.0部
・トナー母粒子分散液1 500.0部
次に、プロペラ撹拌翼を用いて混合しながら、混合液のpHを5.5に調整した後、温度を70℃に昇温し、3.0時間保持した。その後、1.0mol/L NaOH水溶液を用いてpHを9.5に調整し、撹拌しながら2.0時間保持した。10%塩酸でpHを1.5に調整して1.0時間撹拌し、その後、イオン交換水で洗浄しながら、濾過し、トナー粒子30を得た。
<トナーの製造例>
<トナー1~28、34>
トナー粒子1~28をそのままトナー1~28として用いた。トナー粒子30をそのままトナー34として用いた。
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナーの断面観察において、トナー1~10、13~27は、無機微粒子(アルミナ、チタニア、チタン酸ストロンチウム)の表面に、Si原子が覆われていることを示すシグナルが観察された。したがって、無機微粒子(アルミナ、チタニア、チタン酸ストロンチウム)の表面が、有機ケイ素縮合体で被覆されていることを示している。さらに、トナー1~10、15~27は、シリカ微粒子の表面に有機ケイ素縮合体で被覆されていることも確認された。
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナーの断面観察において、トナー11、12は、イオン性官能基を有する樹脂を有する樹脂微粒子とトナー母粒子との界面には、樹脂微粒子の表面がSi原子に覆われていることを示すシグナルは観察されなかった。したがって、樹脂微粒子が、有機ケイ素化合物の縮合生成物を介さずにトナー母粒子に接していることを示している。
<トナー29>
(中抵抗の無機微粒子分散液の調製工程)
・中抵抗の無機微粒子(チタニア:個数平均粒子径30nm) 10.0部
・イオン交換水 45.0部
・メタノール 45.0部
上記材料を混合し、4mm径のジルコニアボールを入れたボールミルで5.0時間分散して中抵抗の無機微粒子分散液を得た。
(トナーの製造工程)
トナー粒子29 100部をイオン交換水/メタノール=30/70の混合溶液900部に添加し、超音波分散機で分散させた。ここに、中抵抗の無機微粒子分散液5.0部を加え、撹拌しながらステアリルアミンアセテートの0.4%メタノール溶液33部を滴下した。その後、撹拌しながら50℃で1.0時間加熱した。そこに、有機ケイ素化合物液1を1.0部添加し、50℃で5.0時間加熱撹拌した。その後、吸引濾過して粉体を得た。得られた粉体をイオン交換水/メタノール=50/50の混合溶液300部に再分散した。この分散液を20℃で30分間撹拌した後に吸引濾過し、これを50℃で5.0時間減圧乾燥してトナー29を得た。トナー29は、トナー母粒子と無機微粒子(チタニア)との界面において、無機微粒子の表面がSi原子で覆われていることを示すシグナルが観察されなかった。したがって、無機微粒子(チタニア)の表面が、有機ケイ素縮合体で被覆されていないことを示す。
<トナー30>
トナー29の製造例において、中抵抗の無機微粒子の種類をアルミナ(個数平均粒子径16nm)に、中抵抗の無機微粒子分散液の添加量を20.0部に、有機ケイ素化合物液1の添加量を6.0部に変更した以外はトナー29の製造例と同様にしてトナー30を得た。トナー30は、トナー母粒子と無機微粒子(アルミナ)との界面において、無機微粒子の表面がSi原子で覆われていることを示すシグナルが観察されなかった。したがって、無機微粒子(アルミナ)の表面が、有機ケイ素縮合体で被覆されていないことを示す。
<トナー31>
トナー30の製造例において、中抵抗の無機微粒子分散液を用いない以外はトナー30の製造例と同様にしてトナー31を得た。
<トナー32>
トナー31 100.0部に対し、ヘキサメチルジシラザンで処理されたアルミナ微粒子(個数平均粒子径16nm)2.0部をヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製)で混合することでトナー32を得た。
<トナー33>
トナー粒子29 100.0部に対し、下記の材料をヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製)で混合することでトナー33を得た。
ヘキサメチルジシラザンで処理されたアルミナ微粒子(個数平均粒子径16nm)
0.2部
ヘキサメチルジシラザンで処理されたシリカ微粒子(個数平均粒子径80nm)
2.0部
各トナーの電荷減衰測定を行った。電荷減衰測定の結果から、電荷減衰定数の算出を行った。各トナーの物性を表3に示す。
Figure 0007106347000002
(表2中、有機ケイ素化合物名は表1中の略称を使用した。シリカ微粒子はトナー粒子1の製造例で用いたもの(水ガラス法によって製造:個数平均粒子径80nm)と同様のものを使用した。)
Figure 0007106347000003
表3中、有機ケイ素縮合体の列は、TEMを用いた断面観察により、トナー母粒子の表面に有機ケイ素縮合体が観察された場合を「有」、観察されない場合を「無」とした。
式(1)の構造の列は、トナー粒子中の有機ケイ素縮合体の構造確認の項の方法に基づき、式(1)の構造が確認された場合を「有」、確認されない場合を「無」とした。
有機ケイ素量の列は有機ケイ素縮合体の量(質量%)を表す。
有機ケイ素化合物名は表1中の略称を使用した。
[実施例1~27、比較例1~6]
上記トナー1~33を用いて、過帯電抑制、帯電性及び帯電立ち上がりについて評価を行った。評価結果を表4に示す。
以下に、本発明の評価方法及び評価基準について説明する。
画像形成装置としては、下記のレーザープリンター改造機及びプロセスカートリッジを使用した。
・市販のレーザープリンターであるLBP-7700C(キヤノン(株)製)をプロセススピードが240mm/秒となるように改造した改造機
・市販のプロセスカートリッジであるトナーカートリッジ323(ブラック)(キヤノン(株)製)
カートリッジ内部からは製品トナーを抜き取り、エアブローによって清掃した後、トナー1~33をそれぞれ150g充填した。なお、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各ステーションにはそれぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたイエロー、マゼンタ及びシアンの各カートリッジを挿入して評価を行った。
〈1.過帯電抑制の評価〉
上記プロセスカートリッジ、上記レーザープリンターの改造機および下記の転写紙を低温環境(温度0℃/相対湿度10%)にて48時間静置した。
・転写紙:GF-C081(キヤノン(株)製、A4:81.4g/m)低温環境において、転写紙の上に印字率0.5%の画像を10,000枚連続で出力した。その後、載り量0.20mg/cmのハーフトーン画像を1枚出力し、画像を目視で観察し、濃度ムラの有無を確認した。同時に、現像ローラの表面を目視で観察し、現像ローラ上のトナー層の状態を確認した。以下の評価基準に基づき、過帯電抑制の性能を評価した。
低温環境では過帯電が生じやすい。過帯電が生じた場合、トナーと現像ローラの付着力が高まることで、規制ブレードでの規制が困難となる。よって、現像ローラ上のトナー層が厚くなることで画像の上に濃度ムラが発生する場合がある。過帯電抑制に優れるトナーの場合には、上記条件においても良好な画像を得ることが可能である。
(過帯電抑制の評価基準)
A:現像ローラ上のトナー層は均一であり、画像にも濃度ムラがない。過帯電抑制に非常に優れる。
B:現像ローラ上のトナー層は端部がやや厚くなっているが、画像には濃度ムラがない。過帯電抑制に優れる。
C:現像ローラ上のトナー層は全体的にややムラがあるが、画像には濃度ムラがない。
D:現像ローラ上のトナー層は全体的にややムラがあり、画像端部に微小な濃度ムラが生じる。
〈2.帯電性の評価〉
上記プロセスカートリッジ、上記レーザープリンターの改造機、下記の印字用紙および下記の評価用紙を常温常湿環境(温度25℃/相対湿度50%:以下、N/N環境)に48時間静置した。
・印字用紙:GF-C081(キヤノン(株)製、A4:81.4g/m
・評価用紙:Color Laser Photo Paper,glossy(HP製、Letter:220g/m
(N/N 初期)
N/N環境において、評価用紙の上に0%印字比率の全白画像を出力した。
(N/N 耐久後)
続いて、N/N環境において、印字用紙の上に印字率0.5%の画像を20,000枚連続で出力した後、評価用紙の上に0%印字比率の全白画像を出力した。
(H/H 静置後)
続いて、出力後のプロセスカートリッジ、レーザープリンターの改造機および評価用紙を高温高湿環境(温度30℃/相対湿度80%:以下、「H/H環境」とも記載する。)に移動し、48時間静置した。続いて、H/H環境において、評価用紙の上に0%印字比率の全白画像を出力した。
各全白画像の上のカブリ濃度を算出し、帯電性を以下の基準で評価した。表4に算出値と評価を示した。「白色光度計 TC-6DS」((有)東京電色製)を用いて測定した評価用紙の白地部分(全白画像)の白色度と転写紙の白色度との差を算出し、カブリ濃度(%)とした。フィルターは、アンバーフィルターを用いた。
帯電性が低下すると、画像の上のカブリ濃度が高くなることが知られている。帯電性に優れるトナーでは、カブリの少ない良好な画像を得ることができる。また、現像耐久性に優れるトナーでは、長時間の使用後においても帯電性が悪化しにくい。さらに、表層の吸湿性が低いトナーでは、高湿の環境においても帯電性が悪化しにくい。
(帯電性の評価基準)
A:カブリ濃度0.5%未満。
B:カブリ濃度0.5%以上1.0%未満。
C:カブリ濃度1.0%以上2.0%未満。
D:カブリ濃度2.0%以上。
〈3.帯電立ち上がりの評価〉
上記プロセスカートリッジ、上記レーザープリンターの改造機、および下記の評価用紙を低温低湿環境(温度15℃/相対湿度10%、以下「L/L環境」とも記載する。)に48時間静置した。
・評価用紙:GF-C081(キヤノン(株)製、A4:81.4g/m
L/L環境において、図2に示すように、評価用紙の上に、評価用紙20を縦に見たときに、下記の全黒画像部21、全白画像部22及びハーフトーン画像部23を有する画像を出力した。
・全黒画像部:用紙先頭から10mmの位置から20mmの位置にかけて、長さ10mmの横帯状の画像部(載り量0.45mg/cm
・全白画像部:全黒画像部の下端から下流方向に長さ10mmの画像部(載り量0.00mg/cm
・ハーフトーン画像部:全白画像部の下端からさらに下流方向に長さ100mmの画像部(載り量0.20mg/cm
ハーフトーン画像部23の一部であって、
全黒画像部21から現像ローラの外周一周分の長さ(L)だけ下流にあたる部分(第1の測定部24)の画像濃度と、
全白画像部22から現像ローラの外周一周分の長さ(L)だけ下流にあたる部分(第2の測定部25)の画像濃度との差に基づいて、帯電立ち上がり性能を以下の基準で評価した。
画像濃度の測定は、アンバーフィルターを取り付けたマクベス反射濃度計 RD918(マクベス社製)を用い、付属の取扱説明書に沿って、画像濃度が0.00である白地部分の画像に対する相対濃度を測定することによって行った。得られた相対濃度を各測定部の画像濃度の値とした。
帯電の立ち上がりが良好であると、帯電ローラ上に供給されたトナーが速やかに帯電するため、前記第1の測定部24の画像濃度と、前記第2の測定部25の画像濃度との差が小さい、良好な画像が得られる。
(帯電立ち上がりの評価基準)
A:画像濃度差が0.03未満。
B:画像濃度差が0.03以上0.06未満。
C:画像濃度差が0.06以上0.10未満。
D:画像濃度差が0.10以上。
Figure 0007106347000004

Claims (7)

  1. 結着樹脂を含むトナー母粒子と、
    該トナー母粒子の表面に存在する有機ケイ素縮合体と、
    を含むトナー粒子を有するトナーであって、
    該トナー粒子が、表面が該有機ケイ素縮合体で被覆された無機微粒子を該トナー母粒子の表面に有し、
    該無機微粒子の体積抵抗率が、1.0×10 (Ω・cm)以上1.0×10 11 (Ω・cm)以下であり、
    トナーの電荷減衰定数が3.5×10-3以上1.0×10以下であることを特徴とするトナー。
  2. 前記トナーの電荷減衰定数が5.0×10-3以上1.0×10以下である請求項1に記載のトナー。
  3. 前記無機微粒子が、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、又はチタン酸ストロンチウム微粒子である請求項またはに記載のトナー。
  4. 結着樹脂を含むトナー母粒子と、
    該トナー母粒子の表面に存在する有機ケイ素縮合体と、
    を含むトナー粒子を有するトナーであって、
    トナー粒子が、表面に有機ケイ素縮合体を有する樹脂微粒子をトナー母粒子の表面に有し、
    該樹脂微粒子が、イオン性官能基を有する樹脂を含み、
    該樹脂微粒子が、該有機ケイ素縮合体を介さずに該トナー母粒子に直接接しており、
    該トナーの電荷減衰定数が3.5×10 -3 以上1.0×10 以下であることを特徴とするトナー。
  5. 前記有機ケイ素縮合体が、下記式(1)で表わされる有機ケイ素化合物の縮合体である請求項1からのいずれか1項に記載のトナー:
    (Ra)-Si-(Rb)4-n (1)
    (式(1)中、Raは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を示し、Rbは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基または(メタ)アクリロキシアルキル基を示す。nは2から4の整数を示す。ただし、RaおよびRbが複数存在する場合、複数のRa、複数のRbは、それぞれ、同一でも異なってもよい。)
  6. 前記有機ケイ素化合物が、下記式(2)で表される化合物である請求項に記載のトナー。
    (Ra)-Si-(Rb) (2)
    (式(2)中、Raは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を示し、Rbは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基または(メタ)アクリロキシアルキル基を示す。ただし、Raの置換基は、それぞれ、同一でも異なってもよい。)
  7. 前記式(2)において、Rbが、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基またはフェニル基である請求項6に記載のトナー。
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