JP2022182231A - トナーおよびその製造方法 - Google Patents

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大輔 吉羽
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友蔵 清野
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雄貴 増田
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Abstract

【課題】ベタ追従性良化と、過帯電抑制による画像の濃度ムラ抑制を達成でき、かつ長期の耐久を通してトナーの劣化が少ないトナーを提供すること。
【解決手段】結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記トナー粒子表面に、第3族から第13族に含まれる金属元素より選択される少なくとも1種の金属元素を含む化合物と多価酸との多価酸金属塩粒子が存在し、
走査型電子顕微鏡により倍率5万倍で撮影された前記トナーの反射電子像において、前記多価酸金属塩粒子の全個数に対する、前記多価酸金属塩粒子の面積100nm2以下の個数割合(%)をA、前記多価酸金属塩粒子の面積500nm2以上の個数割合(%)をBとしたとき、下記式(1)および式(2)を満たし、
83.0≦A (1)
1.7≦B≦17.0 (2)
前記反射電子像において、観察された視野におけるトナー粒子表面の総面積に対して、面積100nm2以下の前記多価酸金属塩粒子の面積の割合が0.3%以上16.0%以下である
ことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真法、静電記録法及びトナージェット方式記録法を利用した記録方法に用いられるトナーに関する。
近年、電子写真による画像形成が利用される分野はプリンターや複写機から商業印刷機にいたるまで多岐にわたってきている。それに伴い、電子写真に求められる高画質化、高速化、高耐久性の要求はますます高まってきている。加えて、使用用途の多様化に伴い、本体の小型化、軽量化に対する要求も高まってきている。
高画質化に関して、トナーには潜像を忠実に再現することが求められている。潜像を忠実に再現するためには、トナーの帯電を精密に制御することが有効である。トナーの帯電制御が不十分だと、低帯電のトナーが非画像部に現像してしまうカブリや、過帯電のトナーがトナー担持体に強く付着し、規制不良等による画像の濃度ムラなどの弊害が発生し、潜像の忠実な再現を妨げる要因となる。
そのため、画質改善を目的として、トナー表面に帯電性を精密に制御できる材料を付着させたり、トナー表面を帯電性に優れる材料で被覆したりすることでトナーの帯電を制御する検討が広く行われている。
特許文献1には、有機ケイ素化合物で表面処理されたアルミナの微粒子をトナーに外部から添加することで、過帯電抑制を達成したトナーが開示されている。
特許文献2には、トナー粒子の表面に、多価酸金属塩を含有する有機ケイ素重合体を含む層を有し、多価酸金属塩の面積の平均値と多価酸金属塩の面積の変動係数を制御することで、帯電立ち上がり性が向上するとともに、トナーの過帯電を抑制でき、さらに部材汚染も抑制できるトナーが開示されている。
一方、高速化に関しては、現像ローラーのような現像部材へ速やかにトナーを供給する必要があるため、特に印字率が非常に高い画像(以下、ベタ画像)の連続印刷時の、2枚目以降の濃度安定性(以下、ベタ追従性)が課題となる。ベタ画像の濃度を安定化させるためには、高速印刷時においても現像ローラーのような現像部材に必要量のトナーが供給され続けることが必要となる。
特許文献3には、トナーの二粒子間力を制御することで、現像ローラー上のトナーの凝集を抑制し、ベタ追従性良化を達成し、さらに、有機ケイ素重合体を表面に有することでトナー粒子内の表面帯電分布を均一化し、転写チリ(文字や線画像の周辺にトナーが散る現象)やハーフトーン再現性を良化させているトナーが開示されている。
特開平8-184988号公報 特開2019-128516号公報 特開2020-71363号公報
上記特許文献1に記載のトナーは画像の濃度ムラの抑制は優れているが、アルミナ粉体を機械的に外添するだけでは母体との付着力が不十分であり、プリンティングプロセスの高速化に伴いトナーに大きなシェアがかかる場合には耐久を通して外添剤が外れ、さらに外れた外添剤による部材汚染により現像スジなどの弊害を起こす課題があった。
上記特許文献2に記載のトナーは過帯電を抑制するとともに、多価酸金属塩が有機ケイ素縮合体を含む層とともに存在することで部材汚染の抑制を達成している。しかしながら、特許文献2は、多価酸金属塩の形態が微粒子であることが好ましい旨を記載しているものの、小粒径の多価酸金属塩粒子と大粒径の多価酸金属塩粒子の意義や作用には注目がなく、両者の個数割合を制御していない。そのため、近年の高速化や、小型化のためのトナー供給部材レスの要求に対しては、現像部材へのトナーの供給量が十分でなく、ベタ追従性が低下する課題は残されていた。
上記特許文献3に記載のトナーは、トナー粒子内の表面帯電分布の均一化を行っているが、単一トナー粒子内での表面帯電分布を均一化させるだけでは、トナー間の電荷の偏りを解消することができない。そのため、過帯電抑制による濃度ムラ抑制は不十分であり、今後求められる画質水準に到達するために更なる改善が求められていた。また、近年の高速化や、小型化のためのトナー供給部材レスの要求に対しては、現像部材へのトナーの供給量が十分でなく、ベタ追従性が低下する課題が残されていた。
本発明は、上記課題を解決し、過帯電の抑制による画像の濃度ムラ解消を達成でき、ベタ追従性が良好で、長期の耐久においても部材汚染が少ないトナーを提供するものである。
本発明は、結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記トナー粒子表面に、第3族から第13族に含まれる金属元素より選択される少なくとも1種の金属元素を含む化合物と多価酸との多価酸金属塩粒子が存在し、
走査型電子顕微鏡により倍率5万倍で撮影された前記トナーの反射電子像において、前記多価酸金属塩粒子の全個数に対する、前記多価酸金属塩粒子の面積100nm2以下の個数割合(%)をA、前記多価酸金属塩粒子の面積500nm2以上の個数割合(%)をBとしたとき、下記式(1)および式(2)を満たし、
83.0≦A (1)
1.7≦B≦17.0 (2)
前記反射電子像において、観察された視野におけるトナー粒子表面の総面積に対して、面積100nm2以下の前記多価酸金属塩粒子の面積の割合が0.3%以上16.0%以下であることを特徴とするトナーに関する。
また、本発明は、上記構成のトナーの製造方法であって、
前記第3族から第13族に含まれる金属元素より選択される少なくとも1種の金属元素を含む化合物と多価酸との多価酸金属塩粒子が、トナー母粒子および有機ケイ素化合物を含む水系媒体中で、前記金属元素を含む化合物と多価酸とを反応させることで生成させることを特徴とするトナーの製造方法に関する。
本発明によれば、ベタ追従性良化と、過帯電抑制による画像の濃度ムラ抑制を達成でき、かつ長期の耐久を通してトナーの劣化が少ないトナーを提供することができる。
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
トナー帯電プロセスでは帯電部材やキャリア(以下、帯電部材と総称する)とトナーとの摺擦が均一に起こらず、過帯電のトナーと低帯電のトナーが発生する場合がある。トナーの過帯電を抑制するためには、過帯電トナーと低帯電トナー間の導電パスを増加させ、トナー粒子の電荷分布を均一化させることが有効である。また、トナー内部の電荷を外部に速やかに伝達するために、トナー母体とシェル層(トナー粒子の表面層)間での導電性向上が必要である。
また、ベタ追従性の向上には従来のようにトナーの流動性や凝集性を制御するだけでは近年の高速化の要求には十分でなく、トナーをより積極的に現像部材へ移送できる力を利用することで、現像ローラーなどの現像部材へのトナーの供給力を更に高める必要がある。
さらに、過帯電制御とベタ追従性向上を外添剤(外部添加剤)により達成しようとした場合、長期の耐久を通して、外添剤が外れ、部材汚染が生じ、現像スジなどの弊害を発生させるため、外添以外の手段が必要である。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、過帯電抑制による画像の濃度ムラ抑制とベタ追従性良化を達成するためには、以下の構成のトナーであれば、上記の要求を満たすことを見出した。
すなわち、結着樹脂を有するトナー粒子を含有するトナーであって、前記トナー粒子表面に、第3族から第13族に含まれる金属元素より選択される少なくとも1種の金属元素を含む化合物と多価酸との多価酸金属塩粒子が存在し、
走査型電子顕微鏡により倍率5万倍で撮影された前記トナーの反射電子像において、前記多価酸金属塩粒子の全個数に対する、前記多価酸金属塩粒子の面積100nm2以下の個数割合(%)をA、前記多価酸金属塩粒子の面積500nm2以上の個数割合(%)をBとしたとき、下記式(1)および式(2)を満たし、
83.0≦A (1)
1.7≦B≦17.0 (2)
前記反射電子像において、観察された視野におけるトナー粒子表面の総面積に対して、面積100nm2以下の前記多価酸金属塩粒子の面積の割合が0.3%以上16.0%以下であることで、上記の要求を満たす。
本発明者らは、効果発現のメカニズムについて、次のように考察している。
帯電の制御にはトナー内部の電荷を速やかにシェル層及び過帯電トナー近傍に存在する低帯電トナーに伝達することが必要である。本発明のトナー粒子表面には、第3族から第13族に含まれる金属元素より選択される少なくとも1種の金属元素を含む化合物と多価酸との多価酸金属塩が存在する。第3族から第13族に含まれる金属元素は価数が2価以上であり、2価以上の酸が金属元素と架橋構造を作ることで、その架橋構造により電荷の移動を促進し、過帯電を抑制することができる。
特に、第3族から第13族に含まれる金属元素と多価酸によって構成される塩は、第1族及び第2族の金属元素のみを含有する塩に比べて、吸水性が低いため、長期使用時の過帯電抑制効果や後述するベタ追従性良化の性能変化が小さい。
上記金属元素は第4族元素であることがより好ましい。第4族元素は酸化数が+4の状態が最も安定である。そのため、多価酸と架橋構造を作り、その架橋構造により電荷の移動を促進し、過帯電を抑制することができる。
本発明に用いられる金属元素の具体例としては、チタン(第4族、電気陰性度:1.54)、ジルコニウム(第4族、電気陰性度:1.33)、アルミニウム(第13族、電気陰性度:1.61)、亜鉛(第12族、電気陰性度:1.65)、インジウム(第13族、電気陰性度:1.78)、ハフニウム(第4族、電気陰性度:1.30)、鉄(第8族、電気陰性度:1.83)、銅(第11族、電気陰性度:1.90)、銀(第11族、電気陰性度:1.93)などが挙げられる。
本発明に用いられる多価酸は、2価以上の酸であればどのようなものでも構わない。
2価以上の酸と、上記金属元素によって構成される塩は、金属元素を含む化合物と多価酸との間で架橋構造を作り、その架橋構造により電子の移動を促進し、過帯電の抑制を達成できる。
本発明に用いられる多価酸の具体例としては、リン酸(3価)、炭酸(2価)、硫酸(2価)などの無機酸;ジカルボン酸(2価)、トリカルボン酸(3価)などの有機酸があげられる。有機酸の具体例としては、以下の、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのジカルボン酸。クエン酸、アコニット酸、無水トリメリット酸などのトリカルボン酸などが挙げられる。中でもリン酸、炭酸、硫酸が好ましく、リン酸がさらに好ましい。
上記金属および上記多価酸を組み合わせた多価酸金属塩の具体例としては、リン酸チタン化合物、リン酸ジルコニウム化合物、リン酸アルミニウム化合物、リン酸銅化合物等のリン酸金属塩、硫酸チタン化合物、硫酸ジルコニウム化合物、硫酸アルミニウム化合物等の硫酸金属塩、炭酸チタン化合物、炭酸ジルコニウム化合物、炭酸アルミニウム化合物等の炭酸金属塩、シュウ酸チタン化合物等のシュウ酸金属塩等が挙げられる。中でもリン酸イオンが金属間を架橋することで強度が高いことからリン酸金属塩が好ましく、リン酸チタン化合物であることがさらに好ましい。
上記多価酸金属塩を得るための方法には特段の制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。中でも、水系媒体中で、金属源となる金属化合物と多価酸イオンを反応させて多価酸金属塩を得る方法が好ましい。
上記方法によって多価酸金属塩を得る場合の金属源としては、多価酸イオンとの反応によって多価酸金属塩を与える金属化合物であれば、特段の制限なく従来公知の金属化合物を用いることができる。
中でも、反応を制御しやすく、多価酸イオンと定量的に反応することから、金属キレートが好ましい。また、水系媒体への溶解性の観点からチタンラクテートやジルコニウムラクテート等の乳酸キレートがさらに好ましい。
本発明に用いられる金属源の具体例としては、チタンラクテート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタントリエタノールアミネート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩、アルミニウムラクテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、銅ラクテート等の金属キレート、チタンテトライソプロポキシド、チタンエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、アルミニウムトリスイソプロポキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。
上記方法によって多価酸金属塩を得る場合の多価酸イオンとしては、上述した多価酸のイオンを用いることができる。水系媒体に加える場合の形態としては、多価酸そのものを加えてもよく、水溶性の多価酸金属塩を水系媒体に加えて、水系媒体中で解離させてもよい。
上述したように、多価酸金属塩粒子がトナー粒子表面に存在することによりトナー粒子内外の電荷の移動を促進し、過帯電を抑制することができるが、この過帯電抑制効果を効果的に発現させるには小粒径の多価酸金属塩粒子が一定割合以上存在することが必要である。
本発明では小粒径の多価酸金属塩粒子が一定割合以上存在することで、過帯電を抑制している。
多価酸金属塩粒子の総体積が一定の場合、大粒径の多価酸金属塩粒子に対して、小粒径の多価酸金属塩粒子はトナー母体との接触面積が大きい。そのため小粒径の多価酸金属塩粒子が一定割合以上存在する場合、多価酸金属塩粒子とトナー母体間の導電パスが増加して、トナー内部の電荷をスムーズにトナー表面に移送することができる。
また、小粒径の多価酸金属塩粒子により、トナー間での多価酸金属塩粒子同士の接触面積も増大するため、トナー間での電荷の授受も促進される。特に、上記式(1)を満たし、かつ面積100nm2以下の前記多価酸金属塩粒子の面積の割合が0.3%以上16.0%以下であることで、小粒径の多価酸金属塩粒子が十分な導電パスを形成するのに最適な個数となる。その結果、過帯電が抑制されるものと考えられる。
一方で、前述したように、ベタ追従性の向上には、トナーをより積極的に現像部材へ移送できる力を発現させることが必要であり、これは小粒径の多価酸金属塩粒子の割合を制御するだけでは達成できない。
本発明では大粒径の多価酸金属塩粒子の割合が一定以上存在することで、トナーの供給力を増加させ、ベタ追従性向上を達成している。
本発明におけるトナーの供給力増加に関しては、グラディエント力が関与していると考えられる。グラディエント力とは電界中に導電体が存在する際に導電体に作用する力で、電界によって導電体内部で静電分極が生じ、正電荷の生じた所と負電荷の生じた所の電界の強さの差の分だけ電界が強い方向に力が働く。本発明においては、現像ローラーなどの現像部材に電圧を印加すると、現像部材の周辺で電界が形成される。その電界によって導電体である多価酸金属粒子内での静電分極が生じ、多価酸金属粒子に対して現像部材方向へのグラディエント力が働いているものと思われる。
特に、本発明のように多価酸金属塩粒子が第3族から第13族に含まれる金属元素を含む場合、金属元素と多価酸との極性差が生じやすく、多価酸金属塩粒子内での分極が大きくなるため、電界中でのグラディエント力を強めることができる。グラディエント力をより強めることができる点から、上記金属元素のポーリングの電気陰性度が、1.30以上1.60以下であることが好ましい。例としてはチタン(第4族、電気陰性度:1.54)、ジルコニウム(第4族、電気陰性度:1.33)などが挙げられる。金属元素の電気陰性度が上記範囲であると、吸湿が抑えられることに加え、多価酸との極性差が生じやすく、多価酸金属塩内での分極が大きくなるため、電界中でのグラディエント力をさらに強めることができる。
なお、ポーリングの電気陰性度は、「日本化学会編(2004)『化学便覧 基礎編』改訂5版、丸善出版」に記載の値を用いた。
また、グラディエント力Fは、比誘電率がεrの球の場合、下記式(6)で表されることが知られている。
F=2πε0{(εr-2)/(εr+2)}a3gradE2 (6)
ここで、ε0は真空の誘電率、gradEは電界の勾配、aは導電体粒子の半径である。
式(6)によれば、導電体粒子の半径aが大きいほどグラディエント力が大きく働くことになる。
このように、グラディエント力は導電体微粒子の粒径が大きいほど強く作用する。上記式(2)を満たす場合、大粒径の多価酸金属粒子の個数が十分に多くなるため、グラディエント力が有効に働く。その結果、現像部材へのトナーの供給力を十分に高め、ベタ追従性の良化を達成できたものと考えられる。このように、グラディエント力を向上させるためには一定割合以上大粒径の多価酸金属塩粒子が必要である。
以上のメカニズムをまとめると、小粒径の多価酸金属塩粒子と大粒径の多価酸金属塩粒子がそれぞれ一定個数以上存在することで、小粒径の多価酸金属塩粒子を主とする過帯電抑制と大粒径の多価酸金属塩粒子によるベタ追従性良化の両方の効果を得られているものと考えられる。
さらに、小粒径の多価酸金属塩粒子と大粒径の多価酸金属塩粒子併用の効果として、小粒径の多価酸金属塩粒子の間に大粒径の多価酸金属塩粒子が一定量以上存在することで、各トナーの表面に存在している多価酸金属塩粒子同士が噛みこみ、トナー間での導電パスが増加する。特に、式(1)、式(2)を満たすことで、小粒径の多価酸金属塩粒子と大粒径の多価酸金属塩粒子の個数割合が最適となり、噛みこみが生じやすくなると考えられる。
また、式(1)、式(2)を満たす場合、多価酸金属塩粒子の粒径差に起因するトナー表面の凹凸により、弾性体である現像ローラーが変形し、トナー表面との接触面積が増すことで、トナーと現像ローラー間での導電パスが増加することも過帯電抑制に寄与していると考えられる。
以下に、本発明のトナーを詳細に説明する。
<トナー粒子の表面の状態>
本発明のトナーは、結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、前記トナー粒子表面に、第3族から第13族に含まれる金属元素より選択される少なくとも1種の金属元素を含む化合物と多価酸との多価酸金属塩粒子が存在し、走査型電子顕微鏡により倍率5万倍で撮影された前記トナーの反射電子像において、前記多価酸金属塩粒子の全個数に対する、前記多価酸金属塩粒子の面積100nm2以下の個数割合(%)をA、前記多価酸金属塩粒子の面積500nm2以上の個数割合(%)をBとしたとき、下記式(1)および式(2)を満たし、前記反射電子像において、観察された視野におけるトナー粒子表面の総面積に対して、面積100nm2以下の前記多価酸金属塩粒子の面積の割合が0.3%以上16.0%以下である。また、上記Bに関し下記式(7)を満たすことが好ましい。
83.0≦A (1)
1.7≦B≦17.0 (2)
1.7≦B≦10.0 (7)
上記式(1)を満たすことで小粒径の多価酸金属塩粒子の個数割合が十分多く、十分な導電パスが形成される。そして上記式(2)を満たすことで、大粒径の多価酸金属塩粒子の個数割合が十分多く、グラディエント力の作用を高めるとともに、大粒径の多価酸金属塩粒子が過剰存在することに起因する多価酸金属塩粒子の母体表面からの脱離および、それに伴う部材汚染を抑制することができる。さらに、面積100nm2以下の前記多価酸金属塩粒子の面積の割合が0.3%以上であることで、上記式(1)及び式(2)により得られる効果を発現させるための十分な量の多価酸金属塩粒子をトナー粒子表面に存在させることができる。さらに面積100nm2以下の前記多価酸金属塩粒子の面積の割合が16.0%以下であることで、多価酸金属塩粒子のトナー粒子表面からの脱離に伴う部材汚染や、導電パスが過剰に形成されることに起因するリークによる帯電不良を抑制することができる。
なお、上記A、Bおよび面積100nm2以下の前記多価酸金属塩粒子の面積の割合は、トナー母粒子上に多価酸金属塩粒子を付着させる際の原材料の量や系中アルコール濃度などの製造方法などによって制御可能である。製造方法については後述する。
本発明のトナーは、走査型電子顕微鏡により倍率5万倍で撮影された前記トナーの反射電子像において、前記多価酸金属塩粒子の全個数に対する、前記多価酸金属塩粒子の面積100nm2以上500nm2以下の個数割合(%)をCとしたとき、下記式(3)を満たすことが好ましく、下記式(8)を満たすことがより好ましい。
3.0<C≦15.3 (3)
4.0<C≦15.3 (8)
面積100nm2以上500nm2以下の多価酸金属塩粒子は導電パスの形成とグラディエント力発現の双方に寄与するため、上記式(3)を満たす場合、面積100nm2以上500nm2以下の多価酸金属塩粒子の個数が最適となり、本発明の効果である過帯電抑制とベタ追従性良化の両立をより達成しやすくなる。
本発明のトナーは、前記多価酸金属塩粒子の面積の平均値が10nm2以上5000nm2以下であることが好ましく、14nm2以上3000nm2以下であることがより好ましい。多価酸金属塩粒子の面積の平均値が10nm2以上であることで、トナー表面に存在する多価酸金属塩粒子に作用するグラディエント力の総和が大きくなり、ベタ追良化を達成しやすくなる。また、多価酸金属塩粒子の面積の平均値が5000nm2以下であることで、トナー母体や後述する有機ケイ素重合体との接触面積が十分に大きくなるため、多価酸金属塩粒子がトナー粒子表面から他部材へ移行することを防ぐことができる。また、部材汚染により現像部材周辺の電場が乱れることを抑制することができ、グラディエント力の作用が低下することを防ぐことができる。
なお、多価酸金属塩粒子の面積の平均値は製造方法による粗粒個数割合の制御や、多価酸金属塩粒子の生成温度などによって制御可能である。
本発明のトナーは、多価酸金属塩粒子の面積の変動係数が10.0以下であることが好ましく、8.0以下であることがより好ましい。多価酸金属塩粒子の面積の変動係数が10.0以下であることで、多価酸金属塩粒子の分散性が高く、良好な導電パスが形成されやすい。また、多価酸金属塩粒子の帯電量のばらつきが少なくなるため、トナー粒子全体にグラディエント力が働き、ベタ追従性良化の効果がより高くなる。
なお、多価酸金属塩粒子の面積の変動係数は、多価酸金属塩粒子の生成速度などの製造方法によって制御可能である。
本発明のトナーは、走査型電子顕微鏡により倍率5万倍で撮影された前記トナーの反射電子像において、観察された視野におけるトナー粒子表面の総面積に対して、前記多価酸金属塩粒子の面積の割合が1.1%以上26.3%以下であることが好ましく、1.1%以上13.1%以下であることがより好ましい。
多価酸金属塩粒子の面積の割合が1.1%以上であることで、過帯電抑制に主に寄与する小粒径の多価酸金属塩粒子とベタ追従性良化に寄与する大粒径の多価酸金属塩粒子の絶対量が増加し、過帯電抑制とベタ追従性良化の効果が顕著に発現する。また、多価酸金属塩粒子の面積の割合が13.1%以下であることで、多価酸金属塩粒子の母体表面からの脱離および、それに伴う部材汚染を抑制することができる。
なお、トナー粒子表面の総面積に対する、多価酸金属塩粒子の面積の割合は、原材料の投入量などによって制御可能である。
本発明のトナーは、トナー粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナー粒子の断面についてのエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いたマッピング分析において、前記多価酸金属塩粒子における法線方向の高さの平均値をHa(nm)としたとき、下記式(4)を満たすことが好ましく、下記式(9)を満たすことがより好ましい。
2.5≦Ha≦50.0 (4)
10.0≦Ha≦40.0 (9)
Haが2.5以上であることで 各トナーの表面に存在している多価酸金属塩粒子同士で噛みこみが生じやすくなり、トナー間での導電パスを形成しやすくなるため、過帯電抑制の効果が大きい。また、Haが50.0以下であることで、多価酸金属塩粒子が高すぎて耐久を通して表面にシェアがかかりやすくなることによる、母体表面からの多価酸金属塩粒子の外れを抑制でき、部材汚染を抑制できる。
本発明のトナーは、前記多価酸金属塩粒子に含まれる金属元素を金属元素Mとし、蛍光X線分析により求められる前記トナーに含まれる金属元素Mの金属量をM1(検出強度kcps)とし、前記トナー1.0gを61.5質量%のショ糖水溶液31.0gと、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び有機ビルダーからなる10質量%の精密測定器洗浄用中性洗剤水溶液6.0gからなる混合水溶液に分散させ、シェーカーを用いて1分間に300回の振とうを20分行う処理(a)を施して得たトナーをトナー(a)とし、蛍光X線分析により求められる前記トナー(a)に含まれる金属元素Mの金属量をM2(検出強度kcps)とするとき、該M1とM2が以下の式(5)を満たすことが好ましく、式(10)を満たすことがより好ましい。
0.85≦M2/M1 (5)
0.90≦M2/M1 (10)
式(5)を満たすことで、長期の耐久を通して、トナー粒子表面からの多価酸金属塩粒子の離脱が少なく、部材汚染を抑制できるとともに、長期の使用を通して過帯電抑制およびベタ追従性向上の効果を発現することができる。
なお、M2の値は製造方法や有機ケイ素重合体の添加量などによって多価酸金属塩粒子のトナー粒子表面への固着力を制御することで制御可能である。
以下に、本発明のトナーに含まれる材料について詳細に述べる。
<有機ケイ素重合体および有機ケイ素化合物>
本発明のトナーはトナー粒子の表面に有機ケイ素化合物を有することが好ましい。該化合物は、有機ケイ素重合体であることが好ましい。
本発明に用いられる有機ケイ素重合体としては、特段の制限なく、従来公知の有機系重合体を用いることができる。中でも、式(11)で表される部分構造を有する有機ケイ素重合体を用いることが好ましい。
R-SiO3/2 式(11)
(式(11)中、Rはアルキル基、アルケニル基、アシル基、アリール基またはメタクリロキシアルキル基を示す。)
上記式(11)は、有機ケイ素重合体が有機基と、ケイ素重合体部を有することを表している。このことにより、上記式(11)で表される部分構造を含む有機ケイ素重合体は、有機基がトナー母粒子との親和性を有することでトナー母粒子と強く固着し、ケイ素重合体部が多価酸金属塩との親和性を有することで多価酸金属塩と強く固着する。このように、有機ケイ素重合体を通して、より強固に多価酸金属塩をトナー母粒子に固着させることができる。
また、金属元素が第3族から第13族までに属する金属元素の場合、金属元素の価数が2以上であり、有機ケイ素化合物と架橋構造を形成することができるため、トナー粒子表面で有機ケイ化合物の重合体との架橋構造を形成できる。この架橋構造によって多価酸金属塩粒子の現像部材への移行が抑制されるとともに、トナー表面及びトナー間での電荷の移動が促進され、過帯電抑制の効果が高くなる。
さらに、有機ケイ素化合物が多価酸金属塩粒子間を架橋することで、トナー粒子表面に有機ケイ素化合物と多価酸金属塩粒子によるネットワークが形成される。多価酸金属塩粒子は、熱伝導性が高いため、定着時に定着器の熱を速やかにトナーに移動させることができるが、特に上記のネットワークが存在している場合、トナー粒子の一部で受け取った熱を速やかに粒子表面全体に移動させることができる。特に小粒径の多価酸金属塩粒子はトナー粒子上に広く分散しており、ネットワーク形成に大きく寄与するため、一定個数以上存在することで定着性良化の効果が高い。上記効果の発現と、有機ケイ素化合物の高被覆化による定着悪化抑制を両立する観点で、好ましい有機ケイ素化合物の含有量としては、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して、0.3質量部以上20.0質量部以下である。
上記有機ケイ素重合体を得るための有機ケイ素化合物としては、特段の制限なく従来公知の有機ケイ素化合物を用いることができる。中でも、下記式(12)で表される有機ケイ素化合物からなる群より選択される少なくとも1つの有機ケイ素化合物であることが好ましい。
R-Si-(Ra)3 式(12)
(式(12)中、Raは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、又はアルコキシ基を示し、Rは、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基又はメタクリロキシアルキル基を示す。)
式(12)で表されるシラン化合物としては、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシランの三官能のメチルシラン化合物;エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシランなどの三官能のシラン化合物;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどの三官能のフェニルシラン化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどの三官能のビニルシラン化合物;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルジエトキシメトキシシラン、アリルエトキシジメトキシシランなどの三官能のアリルシラン化合物;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルジエトキシメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルエトキシジメトキシシランなどの三官能のγ-メタクリロキシプロピルシラン化合物;などの三官能のシラン化合物などが挙げられる。
<結着樹脂>
本発明のトナーは、結着樹脂を含有する。
上記結着樹脂としては、特段の制限なく従来公知の樹脂を用いることができる。具体的には、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。ビニル系樹脂の製造に用いることのできる重合性単量体としては、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルなどのメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸;マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸;マレイン酸無水物などの不飽和ジカルボン酸無水物;アクリロニトリルなどのニトリル系ビニル単量体;塩化ビニルなどの含ハロゲン系ビニル単量体;ニトロスチレンなどのニトロ系ビニル単量体;などが挙げられる。
中でも、結着樹脂として、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
<着色剤>
本発明のトナーは着色剤を含有してもよい。上記着色剤としては、特段の制限なく従来公知のブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各色及び他の色の顔料及び染料、磁性体などを用いることができる。
ブラック着色剤としては、カーボンブラックなどのブラック顔料が挙げられる。
イエロー着色剤としては、モノアゾ化合物;ジスアゾ化合物;縮合アゾ化合物;イソインドリノン化合物;ベンズイミダゾロン化合物;アントラキノン化合物;アゾ金属錯体;メチン化合物;アリルアミド化合物などのイエロー顔料及びイエロー染料が挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、111、128、155、174、180、185、C.I.ソルベントイエロー162などが挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、モノアゾ化合物;縮合アゾ化合物;ジケトピロロピロール化合物;アントラキノン化合物;キナクリドン化合物;塩基染料レーキ化合物;ナフトール化合物:ベンズイミダゾロン化合物;チオインジゴ化合物;ペリレン化合物などのマゼンタ顔料及びマゼンタ染料などが挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19などが挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物;塩基染料レーキ化合物などのシアン顔料及びシアン染料などが挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66などが挙げられる。
着色剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
また、トナーは、磁性体を含有させて磁性トナーとすることも可能である。
この場合、磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。
磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどに代表される酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルなどに代表される金属又はこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムなどの金属との合金及びその混合物などが挙げられる。
<ワックス>
本発明のトナーはワックスを含有してもよい。上記ワックスとしては特段の制限なく従来公知のワックスを用いることができる。具体的には、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチルなどの1価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;セバシン酸ジベヘニルなどの2価カルボン酸とモノアルコールのエステル類;エチレングリコールジステアレート、ヘキサンジオールジベヘネートなどの2価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;グリセリントリベヘネートなどの3価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテートなどの4価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテートなどの6価アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;ポリグリセリンベヘネートなどの多官能アルコールとモノカルボン酸とのエステル類;カルナバワックス、ライスワックスなどの天然エステルワックス類;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどの石油系炭化水素ワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィン系炭化水素ワックス及びその誘導体;高級脂肪族アルコール;ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸;酸アミドワックスなどが挙げられる。
ワックスの含有量は、離型性の観点から、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して、1.0質量部以上30.0質量部以下であることが好ましく、5.0質量部以上20.0質量部以下であることがより好ましい。
<荷電制御剤>
本発明のトナーは多価酸金属塩粒子によるグラディエント力発現や帯電制御を阻害しない範囲で荷電制御剤を含有してもよい。上記荷電制御剤としては、特段の制限なく公知の荷電制御剤を用いることができる。
具体的には、負帯電制御剤として以下の、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸などの芳香族カルボン酸の金属化合物又は該芳香族カルボン酸の金属化合物を有する重合体又は共重合体;スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体;アゾ染料若しくはアゾ顔料の金属塩又は金属錯体;ホウ素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンなどが挙げられる。
一方、正帯電制御剤として以下の、四級アンモニウム塩、四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物;グアニジン化合物;ニグロシン系化合物;イミダゾール化合物などが挙げられる。なお、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体としては、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸などのスルホン酸基含有ビニル系モノマーの単重合体又は結着樹脂の項に示したビニル系単量体と上記スルホン酸基含有ビニル系モノマーの共重合体などを用いることができる。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して、0.01質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
<外部添加剤>
トナー粒子が、有機ケイ素重合体を表面に有する場合、外部添加剤がない場合においても、優れた流動性などの特性を示す。しかし、更なる改善を目的として、外部添加剤を含有してもよい。
上記外部添加剤としては特段の制限なく従来公知の外部添加剤を用いることができる。
具体的には以下の;湿式製法シリカ、乾式製法シリカなどの原体シリカ微粒子又はそれら原体シリカ微粒子にシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルなどの処理剤により表面処理を施したシリカ微粒子;フッ化ビニリデン微粒子、ポリテトラフルオロエチレン微粒子などの樹脂微粒子などが挙げられる。
外部添加剤の含有量は、トナー粒子100.0質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
続いて、以下に本発明のトナーを得る方法について詳細に述べる。
<トナー母粒子の製造方法>
トナー母粒子(多価酸金属塩粒子を付着させる前のトナー粒子を「トナー母粒子」ともいう)の製造方法は、特に限定されることはなく、懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法、粉砕法などを用いることができる。
一例として、懸濁重合法でトナー母粒子を得る方法を以下に述べる。
まず、結着樹脂を生成しうる重合性単量体、及び必要に応じて各種添加物を混合し、分散機を用いて、該材料を溶解又は分散させた重合性単量体組成物を調製する。
各種添加物として、着色剤、ワックス、荷電制御剤、重合開始剤、連鎖移動剤などが挙げられる。
分散機としては、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、又は超音波分散機等が挙げられる。
次いで、重合性単量体組成物を、難水溶性の無機微粒子を含有する水系媒体中に投入し、高速撹拌機又は超音波分散機などの高速分散機を用いて、重合性単量体組成物の液滴を調製する(造粒工程)。
その後、前記液滴中の重合性単量体を重合してトナー母粒子を得る(重合工程)。
重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に混合してもよく、水系媒体中に液滴を形成させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。
また、液滴の造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。
重合性単量体を重合して結着樹脂を得たあと、必要に応じて脱溶剤処理を行い、トナー母粒子の分散液を得るとよい。
乳化凝集法や懸濁重合法などによって結着樹脂を得る場合、重合性単量体としては、特段の制限なく従来公知の単量体を用いることができる。具体的には、結着樹脂の項に挙げたビニル系単量体が挙げられる。
重合開始剤としては、特段の制限なく公知の重合開始剤を用いることができる。具体的には以下のものが挙げられる。
過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化-tert-ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1-フェニル-2-メチルプロピル-1-ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸-tert-ヒドロペルオキシド、過ギ酸-tert-ブチル、過酢酸-tert-ブチル、過安息香酸-tert-ブチル、過フェニル酢酸-tert-ブチル、過メトキシ酢酸-tert-ブチル、過N-(3-トルイル)パルミチン酸-tert-ブチルベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレ-ト、t-ブチルパーオキシイソブチレ-ト、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどに代表される過酸化物系重合開始剤;2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどに代表されるアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;などが挙げられる。
<多価酸金属塩粒子を付着させる方法>
トナー母粒子に多価酸金属塩粒子を付着させる方法を以下に例示する。トナー粒子が分散した水系媒体中で、金属源となる金属化合物と多価酸イオンを反応させて多価酸金属塩粒子を得る方法や、乾式あるいは湿式でトナー粒子上に多価酸金属塩粒子を機械的な外力によって付着させる方法が挙げられる。
(1)トナー母粒子が分散した水系媒体中で、金属源となる金属化合物と多価酸イオンを反応させて多価酸金属塩を得る方法。
例えば、トナー母粒子の分散液に、金属元素を含む化合物と多価酸を添加し、混合することで、金属元素を含む化合物と多価酸を反応させ、反応物を析出させると同時に、分散液を撹拌しておくことで、トナー母粒子に付着させる。
(2)乾式あるいは湿式で多価酸金属塩粒子を、機械的な外力によってトナー母粒子表面に付着させる方法。
例えば、FMミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)、スーパーミキサー、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)など、粉体や水系媒体にせん断力を与える高速撹拌機を用い、多価酸金属塩粒子を解砕させる力を加えながら、該多価酸金属塩粒子をトナー母粒子に付着させる。
中でも、トナー母粒子が分散した水系媒体中で、金属源となる金属化合物と多価酸イオンを反応させて多価酸金属塩を得る方法が好ましい。上記方法を用いることで多価酸金属塩をトナー粒子表面に均一に分散させることが可能となる。よって、導電パスが効率よく形成されるようになり、より少ない多価酸金属塩粒子によって過帯電抑制が達成できる。また、多価酸金属塩粒子の均一分散により、グラディエント力がトナー粒子表面に均一に働くようになり、ベタ追従性が向上する。
上記方法を用いた場合、走査型電子顕微鏡で観察される多価酸金属塩粒子の面積100nm2以下の個数割合、面積100nm2以上500nm2以下の個数割合、面積500nm2以上の個数割合、多価酸金属塩粒子の面積の割合、多価酸金属塩粒子の面積の平均値、多価酸金属塩粒子の面積の変動係数、多価酸金属塩粒子の高さ、トナー母粒子に対する多価酸金属塩粒子外れにくさを本発明の範囲に容易に調整することができる。
より具体的には、多価酸と金属元素を含む化合物との反応時の、金属元素を含む化合物の添加量、トナー母粒子分散液中のアルコール濃度、温度、pH、金属元素を含む化合物の投入速度、並びに、有機ケイ素化合物の添加量などによって制御することが可能である。
また、本発明の構成のトナーを得るのにより好ましい製造方法は、第3族から第13族に含まれる金属元素より選択される少なくとも1種の金属元素を含む化合物と多価酸との多価酸金属塩粒子を水系媒体中で生成させ、前記水系媒体中の炭素数1~10のアルコール濃度を0.0質量%以上0.35質量%以下とすることである。より好ましくは0.20質量%以下とすることである。
多価酸金属塩粒子生成する際に系中にアルコールが存在すると、系中で多価酸金属塩粒子とアルコールが水素結合を形成し、多価酸金属塩粒子が水中に安定に分散する。この効果は特に大粒径側の多価酸金属塩粒子に対して顕著である。そのため、系中のアルコールが多いと、粒径が大きい多価酸金属塩粒子が生成されにくくなる。系中の炭素数1~10のアルコール濃度を0.35質量%以下とすることで、面積100nm2以下の多価酸金属塩粒子を一定量以上に保ちつつ、面積500nm2以上の多価酸金属塩粒子の個数を増やすことができる。
また、上記方法によれば、水系媒体中で発生した多価酸金属塩粒子の成長が完了する前に、トナー母粒子に付着するため、あらかじめ作製した多価酸金属塩粒子を機械的な外力によって付着させた場合と比べ、トナー母粒子上に多価酸金属塩粒子が強く固着される。それにより長期にわたる使用時にも多価酸金属塩粒子の母体からの離脱が起こらず、本発明の効果である過帯電抑制とベタ追従性良化を発揮することが可能な、耐久性に優れたトナーを得ることができる。
また、上記金属化合物と多価酸イオンとの反応時に、同時に有機ケイ素化合物を水系媒体に導入し、水系媒体中で有機ケイ素化合物を反応させて有機ケイ素重合体を得ることがより好ましい。上記方法を用いることで、水系媒体中で発生した多価酸金属塩粒子が成長する前に、有機ケイ素重合体によってトナー粒子表面により強固に固定されるため、さらに多価酸金属塩粒子の分散性を高めることが可能である。また、多価酸金属塩粒子がトナー粒子上に有機ケイ素重合体によってしっかりと固着されるため、上述した耐久性向上の効果がより顕著に得られる。加えて、トナー母粒子と多価酸金属塩との界面の面積が広くなるため、電荷の移動が促進され、過帯電抑制の効果が大きくなる。
上記方法に用いられる金属化合物、多価酸および有機ケイ素化合物については、上述した金属化合物、多価酸および有機ケイ素化合物をそれぞれ用いることができる。
<有機ケイ素化合物を付着させる方法>
トナー母粒子に有機ケイ素化合物を付着させる方法を以下に例示する。
本発明の有機ケイ素化合物を付着させる方法は特段の制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、トナー母粒子が分散した水系媒体中で上記有機ケイ素化合物の項に示した化合物を縮合し、上記トナー母粒子上に有機ケイ素化合物を付着させる方法や、乾式あるいは湿式でトナー母粒子上に有機ケイ素化合物を機械的な外力によって付着させる方法が挙げられる。
中でも、トナー母粒子と有機ケイ素化合物を強固に付着させることや、トナー母粒子上に均一に付着させることが可能であることから、トナー母粒子が分散した水系媒体中で上記有機ケイ素化合物の項に示した化合物を縮合し、上記トナー母粒子上に有機ケイ素化合物を付着させる方法が好ましい。
以下に、上記方法について説明する。
上記方法によってトナー母粒子上に有機ケイ素化合物を付着させる場合、トナー母粒子を水系媒体に分散し、トナー母粒子分散液を得る工程(工程1)、および有機ケイ素化合物(あるいはその加水分解物)を上記トナー母粒子分散液に混合し、有機ケイ素化合物を上記トナー母粒子分散液中で縮合反応させることで上記トナー母粒子上に有機ケイ素化合物を付着させる工程(工程2)を含むことが好ましい。さらに、多価酸金属塩粒子の形成に関与するトナー母粒子分散液のアルコール量を調整するため、必要に応じて、有機ケイ素化合物の加水分解物からアルコールを除去する工程(工程3)を含んでもよい。
上記工程1において、トナー母粒子分散液を得る方法としては、水系媒体中で製造したトナー母粒子の分散液をそのまま用いる方法、および、乾燥したトナー母粒子を水系媒体に投入し、機械的に分散させる方法等が挙げられる。乾燥したトナー母粒子を水系媒体に分散させる場合、分散助剤を用いてもよい。
上記分散助剤としては、公知の分散安定剤や界面活性剤などを用いることができる。具体的には、分散安定剤として以下の、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等の無機分散安定剤、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン等の有機分散安定剤が挙げられる。また、界面活性剤として以下のアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。中でも、無機分散安定剤を含むことが好ましく、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム等のリン酸塩を含む分散安定剤を含むことがより好ましい。
上記工程2において、有機ケイ素化合物はそのままトナー母粒子分散液に加えてもよく、加水分解後にトナー母粒子分散液に加えてもよい。中でも、上記縮合反応が制御しやすく、トナー母粒子分散液中に残留する有機ケイ素化合物量を減らせることから、加水分解後に加えることが好ましい。上記加水分解は公知の酸および塩基を用いてpHを調整した水系媒体中で行うことが好ましい。有機ケイ素化合物の加水分解にはpH依存性があることが知られており、上記加水分解を行う場合のpHは、有機ケイ素化合物の種類によって適宜変更することが好ましい。例えば、有機ケイ素化合物としてメチルトリエトキシシランを用いる場合、上記水系媒体のpHが2.0以上6.0以下であることが好ましい。
pHを調整するための酸としては、具体的には以下の、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸等の有機酸が挙げられる。
pHを調整するための塩基としては、具体的には以下の、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物及びそれらの水溶液、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどのアルカリ金属の炭酸塩及びそれらの水溶液、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウムなどのアルカリ金属の硫酸塩及びそれらの水溶液、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウムなどのアルカリ金属のリン酸塩及びそれらの水溶液、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物及びそれらの水溶液、アンモニア、トリエチルアミン等のアミン類等が挙げられる。
上記工程2における上記縮合反応はトナー母粒子分散液のpHを調整することで制御することが好ましい。有機ケイ素化合物の縮合反応はpH依存性があることが知られており、上記縮合反応を行う場合のpHは、有機ケイ素化合物の種類によって適宜変更することが好ましい。例えば、有機ケイ素化合物としてメチルトリエトキシシランを用いる場合、上記水系媒体のpHが6.0以上12.0以下であることが好ましい。pHを調整するための酸および塩基としては、上記加水分解の項で例示した酸および塩基を用いることができる。
上記工程2における上記縮合反応は、10℃以上100℃以下程度であることが好ましい。
上記工程3に用いられる方法は特に制限はなく、有機ケイ素化合物の加水分解物とアルコールの沸点の差を利用して減圧蒸留により分離する方法や、ゼオライトなどのアルコールを吸着できる多孔性材料に吸着させ分離する方法が挙げられる。中でも、アルコール除去条件の調整自由度が高く、アルコール除去量の調整が容易である点で減圧蒸留により分離する方法が好ましい。
上記方法によってアルコールを除去する場合、最適な温度は用いる有機ケイ素化合物によるが、例えば、メチルトリエトキシシランを用いる場合、有機ケイ素化合物の縮合抑制と脱アルコールの進行を両立させるために20℃以上50℃以下で実施することが好ましい。
また、上記方法における最適な減圧条件は用いる有機ケイ素化合物の種類によるが、例えば、メチルトリエトキシシランを用いる場合、アルコールのみを分離する点で、-90kPa以上-50kPa以下で実施することが好ましい。
続いて、以下に本発明に用いられる測定方法について詳細に述べる。各測定方法の説明において、トナー、トナー粒子、又はトナー母粒子を「トナーなど」ともいう。
<トナーなどの表面の観察方法>
トナーなどの表面は、以下のように観察する。
走査型電子顕微鏡(SEM、装置名:JSM-7800F 日本電子株式会社製)を用いて、5万倍の拡大倍率でトナーなどの表面を観察する。そして、EDX(エネルギー分散型X線分光法)を利用して、該トナーなどの表面の元素のマッピングを行う。得られたSEMの元素マッピング画像から、トナーなどの表面の、有機ケイ素化合物、多価酸と上記金属元素を含む化合物との反応物の存在を確認する。
具体的には、金属元素のマッピング像と、多価酸に含まれている元素、例えば、多価酸としてリン酸を用いたときは、リンのマッピング像とを比較し、その2つが一致していることより、金属元素を含む化合物と多価酸との反応物を含有していることが確認できる。
<多価酸金属塩粒子の面積範囲ごとの個数割合、面積の割合、面積の平均値、変動係数、及び、有機ケイ素重合体微粒子、多価酸金属塩微粒子の個数平均粒径の算出方法>
多価酸金属塩粒子の面積範囲ごとの個数割合、面積の割合、面積の平均値、変動係数、及び、有機ケイ素重合体微粒子、多価酸金属塩微粒子の個数平均粒径は以下のように算出する。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台)に導電性ペースト(TED PELLA,Inc、 Product No. 16053, PELCO Colloidal Graphite,Isopropanol base)を薄く塗り、その上にトナーなどを吹き付ける。さらにエアブローして、余分な試料を試料台から除去して試料を作製した。
(2)JSM-7800Fを用いた観察
SEM画像(反射電子像)は上記JSM-7800Fを用いて取得する。以下に観察条件を記載する。
JSM-7800Fの「PC-SEM」を起動し、試料ホルダをJSM-7800F筐体の試料室に挿入し、試料ホルダを観察位置に移動させる。PC-SEMの画面上にて、加速電圧を[1.0kV]、観察倍率を[50000倍]に設定する。観察アイコンの[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加し、反射電子像を観察する。
(3)多価酸金属塩粒子の面積範囲ごとの個数割合、面積の割合、面積の平均値、変動係数の算出
得られた反射電子像を、画像処理解析ソフト「ImageJ」に読み込み、平均化処理を行った後に、二値化処理を行い、多価酸金属塩粒子または有機ケイ素重合体粒子が白色で表された二値化画像を得る。その後、得られた二値化画像を画像処理解析ソフト「Image-Pro Plus」に読み込み、内蔵された機能によって多価酸金属塩粒子の面積範囲ごとの個数割合、面積の割合、面積の平均値、変動係数、または有機ケイ素重合体粒子、多価酸金属塩粒子の個数平均粒径を求めた。上記処理を50000倍で観察された反射電子像10視野について行い、10視野の算術平均値を多価酸金属塩粒子の面積範囲ごとの個数割合、面積の割合、面積の平均値、変動係数、及び、有機ケイ素重合体粒子、多価酸金属塩粒子の個数平均粒径とする。
<多価酸金属塩粒子の法線方向の高さHaの測定方法>
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、トナーなどの断面を以下の方法により観察する。まず、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナーなどを十分分散させた後、40℃の雰囲気下で2日間硬化させる。得られた硬化物からダイヤモンド刃を備えたミクロトームを用い、厚さ100nmの薄片状のサンプルを切り出す。このサンプルをTEM(商品名:電子顕微鏡Tecnai TF20XT、FEI社製)で10万倍の倍率に拡大し、トナーなどの断面を観察する。この際、トナーなどの断面としては、後述するトナーなどの個数平均粒径(D1)の測定法に従い、同トナーなどを測定した際の個数平均粒径(D1)の0.9倍~1.1倍の長軸径を有するものを選択する。
続いて、得られたトナーなどの断面の構成元素を、エネルギー分散型X線分光法(EDX)を利用して解析し、EDXマッピング像を作成する。
前記EDXマッピング像において、トナーなどの断面の輪郭に、前記多価酸金属塩粒子に由来するシグナルを確認し、多価酸金属塩粒子の法線方向の高さHaを求める。
上記方法で50個のトナーなどの断面を観察し、多価酸金属塩粒子の法線方向の高さ(nm)を画像から計測し、50個の算術平均値をHa(nm)とする。
<トナーなどにおける多価酸金属塩粒子の固着率の算出方法>
多価酸金属塩粒子の固着率は以下の方法により算出する。
トナーなどから固着状態が弱い多価酸金属塩粒子を取り除く処理(処理(a))
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学(株)製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、61.5質量%のショ糖水溶液を調製する。遠心分離用チューブに上記ショ糖濃厚液を31.0gと、コンタミノンN(商品名)(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)を6g入れ分散液を作製する。この分散液にトナーなど1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーなどのかたまりをほぐす。遠心分離用チューブをシェーカーにて300spm(strokes per min)、20分で振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて3500rpm、30分の条件で分離する。トナーなどと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーなどをスパチュラ等で採取する。採取したトナーなどを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥させる。乾燥品をスパチュラで解砕してトナーなど(a)を得る。
(2)固着率の測定、算出方法
上記処理(a)を施す前後のトナーなどに含まれる多価酸金属塩粒子に由来する金属の量を蛍光X線分析装置により求める。
トナーなどに含まれる金属の検出強度を以下の方法で測定した。
トナーなどに含まれる金属の検出強度は、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。
なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mm、測定時間10秒とする。
また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
測定サンプルとして、専用のプレス用アルミリングの中に上記処理(a)を施したトナーなど(a)4gを入れて平らにならす。その後、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ2mm、直径39mmに成型したペレットを用いる。上記処理(a)を施す前のトナーなども上記操作を行い、ペレットを成型する。それぞれの試料について、ペンタエリトリトール(PET)を分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°に観測される金属とケイ素の検出強度(単位:cps)を測定する。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値はそれぞれ、24kV、100mAとする。
蛍光X線分析において、前記処理(a)の前における多価酸金属塩粒子に含まれる金属量をM1(検出強度kcps)、前記処理(a)の後における多価酸金属塩粒子に含まれる金属量をM2(検出強度kcps)とし、下記式から固着率を求める。
多価酸金属塩粒子の固着率=M2/M1
<重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナーなどの重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)を用いる。
測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1.0%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1,600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに電解水溶液200.0mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに電解水溶液30.0mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetra150」(日科機バイオス(株)製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2.0mL添加する。
(4)上記(2)のビーカーを上記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)上記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナーなど10mgを少量ずつ上記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した上記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーなどを分散した上記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
<水系媒体中のアルコール濃度の測定方法>
多価酸金属塩粒子を形成する際、及び多価酸金属塩粒子をトナー表面へ付着させる際の水系媒体中のアルコール濃度の測定は、ガスクロマトグラフィーにより次の様にして測定した。
重合反応液(スラリー)をメンブランフィルター(例えばアドバンテック東洋(株)製 ディスポーザブルメンブランフィルター 25JP020AN)を用いて濾過し、該濾液2μLをガスクロマトグラフィーで分析する。そして、予め該当するアルコールを用いて作成した検量線により、水系媒体中のアルコール濃度の測定を行う。また、分析は下記の条件により行った。
<分析条件>
GC:HP社 6890GC
カラム:HP社 INNOWax(200μm×0.40μm×50m)
キャリアーガス:He(コンスタントフローモード、初期流量;1.00ml/min、平均線速度;25cm/sec)
オーブン:50℃:10分ホールド、10℃/分で200℃まで昇温、200℃で5分ホールド。
INJ:200℃、スプリットモード(圧力;32.8psi スプリット流量;30.0ml/min トータル流量;33.5ml/min)
スプリット比:30.1:1.0
DET:250℃(FID)
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明する。しかし、これは本発明をなんら限定するものではない。以下にトナーおよびトナーの製造方法について記載する。実施例中および比較例中の「部」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
《トナー母粒子分散液の製造例》
<トナー母粒子分散液1の製造例>
(水系媒体の調製)
イオン交換水390.0部を入れた反応容器に、リン酸ナトリウム(12水和物)(ラサ工業株式会社製)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12000rpmにて撹拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を反応容器に一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。
さらに、反応容器内の水系媒体に1.0モル/Lの塩酸を投入し、pHを6.0に調整し、水系媒体1を調製した。
(重合性単量体組成物の調製)
・スチレン 60.0部
・C.I.ピグメントレッド122 5.9部
・C.I.ピグメントレッド150 3.4部
上記材料をアトライタ(日本コークス工業株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料が分散された着色剤分散液を調製した。
次いで、該着色剤分散液に下記材料を加えた。
・スチレン 10.0部
・アクリル酸n-ブチル 30.0部
・ポリエステル樹脂 5.0部
(テレフタル酸と、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物との縮重合物)
・フィッシャートロプシュワックス(融点70℃) 7.0部
上記材料を65℃に保温し、T.K.ホモミクサーを用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
(造粒工程)
水系媒体1の温度を70℃、撹拌装置の回転数を12000rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート9.0部を添加した。そのまま撹拌装置にて12000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
(重合工程)
高速撹拌装置からプロペラ撹拌羽根を備えた撹拌機に変更し、150rpmで撹拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、さらに85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行った。イオン交換水を加えて分散液中のトナー母粒子濃度が20.0%になるように調整し、トナー母粒子1が分散したトナー母粒子分散液1を得た。
トナー母粒子1の個数平均粒径(D1)は6.0μm、重量平均粒径(D4)は6.4μmであった。
<トナー母粒子分散液2の製造例>
(ポリエステル1の調製)
撹拌機、温度計、窒素導入管、脱水管、及び減圧装置を備えた反応容器に、テレフタル酸85.0部、無水トリメリット酸16.4部、ビスフェノールA123.3部、エチレングリコール14.1部を添加して撹拌しながら温度128℃まで加熱した。
エステル化触媒としてチタン(IV)イソプロポキシド0.5部を加えた後、温度158℃に昇温し5時間かけて縮重合した。その後、温度180℃に昇温し、減圧させながら所望の分子量となるまで反応させてポリエステル1を得た。
(スチレン-アクリル樹脂1の調製)
撹拌機、温度計、及び窒素導入管を備えた反応容器に、スチレン80.0部、n-ブチルアクリレート20.0部及びヘキサンジオールジアクリレート0.3部を添加して撹拌しながら温度80℃まで加熱した。
続いて重合開始剤としてパーブチルO(10時間半減期温度72.1℃(日本油脂製))2.0部を加え、5時間重合しスチレン-アクリル樹脂1を得た。
(トナー母粒子2の調製)
・ポリエステル1 89.0部
・スチレン-アクリル樹脂1 13.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン) 5.2部
・エステルワックス(ベヘン酸ベヘニル:融点72℃) 15.0部
・フィッシャートロプッシュワックス(サゾール社製C105、融点:105℃) 2.0部
上記材料を三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機社製)で前混合した後、2軸押出機(商品名:PCM-30、池貝鉄工所社製)を用いて、吐出口における溶融物温度が140℃になるように、温度を設定し、溶融混練した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、粉砕機(商品名:ターボミルT250、ターボ工業社製)を用いて微粉砕した。得られた微粉砕粉末を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級して、トナー母粒子2を得た。
トナー母粒子2の個数平均粒径(D1)は5.7μm、重量平均粒径(D4)は6.6μmであった。
(水系媒体の調製)
イオン交換水390.0部を入れた反応容器に、リン酸ナトリウム(12水和物)(ラサ工業株式会社製)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。
T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12000rpmにて撹拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を反応容器に一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。
さらに、反応容器内の水系媒体に1.0モル/Lの塩酸を投入し、pHを6.0に調整し、水系媒体を調製した。
(トナー母粒子分散液2の調製)
該水系媒体中にトナー母粒子2を200.0部投入し、温度60℃にてT.K.ホモミクサーを用いて5000rpmで回転させながら15分間分散した。イオン交換水を加えて分散液中のトナー粒子濃度が20.0%になるように調整し、トナー母粒子分散液2を得た。
<トナー母粒子分散液3の製造例>
(樹脂粒子分散液の調製)
下記材料を秤量し、混合及び溶解させた。
・スチレン 82.6部
・アクリル酸n-ブチル 9.2部
・アクリル酸 1.3部
・ヘキサンジオールジアクリレート 0.4部
・n-ラウリルメルカプタン 3.2部
この溶液にネオゲンRK(第一工業製薬株式会社製)の10%水溶液を添加して、分散させた。さらに10分間ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.15部をイオン交換水10.0部に溶解させた水溶液を添加した。
窒素置換をした後、温度70℃で6.0時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度が12.5%、個数平均粒径が0.2μmの樹脂粒子分散液を得た。
(着色剤粒子分散液の調製)
以下の材料を秤量し混合した。
・エステルワックス(融点70℃) 100.0部
・ネオゲンRK 15.0部
・イオン交換水 385.0部
湿式ジェットミルJN100(株式会社常光製)を用いて1時間分散してワックス粒子
分散液を得た。ワックス粒子分散液の固形分濃度は20.0%であった。
以下の材料を秤量し混合した。
・C.I.ピグメントレッド122 62.6部
・C.I.ピグメントレッド150 37.4部
・ネオゲンRK 15.0部
・イオン交換水 885.0部
湿式ジェットミルJN100を用いて1時間分散して着色剤粒子分散液を得た。着色剤
粒子分散液の固形分濃度は10.0%であった。
(トナー母粒子3の調製)
・樹脂粒子分散液 160.0部
・ワックス粒子分散液 10.0部
・着色剤粒子分散液 18.9部
・硫酸マグネシウム 0.2部
上記材料を、ホモジナイザー(IKA社製)を用いて分散させた後、撹拌させながら、65℃まで加温した。65℃で1.0時間撹拌した後、光学顕微鏡にて観察すると、個数平均粒径が5.9μmである凝集体粒子が形成されていることが確認された。ネオゲンRK(第一工業製薬株式会社製)2.2部加えた後、80℃まで昇温して2.0時間撹拌して、融合した着色樹脂粒子を得た。
冷却後、ろ過し、ろ別した固体を720.0部のイオン交換水で、1.0時間撹拌洗浄した。該着色樹脂を含む分散液をろ過してから乾燥させ、トナー母粒子3を得た。
トナー母粒子3の個数平均粒径(D1)は6.1μm、重量平均粒径(D4)は7.0μmであった。
(水系媒体の調製)
イオン交換水390.0部を入れた反応容器に、リン酸ナトリウム(12水和物)(ラサ工業株式会社製)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。
T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12000rpmにて撹拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。
さらに、反応容器中の水系媒体に1.0モル/Lの塩酸を投入し、pHを6.0に調整し、水系媒体を調製した。
(トナー母粒子分散液3の調製)
該水系媒体中にトナー母粒子3を100.0部投入し、温度60℃にてT.K.ホモミクサーを用いて5000rpmで回転させながら15分間分散した。イオン交換水を加えて分散液中のトナー母粒子3の固形分濃度が20.0%になるように調整し、トナー母粒子分散液3を得た。
<トナー母粒子分散液4の製造例>
(乳化スラリーの調製)
660.0部のイオン交換水と、48.5%ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液25.0部を混合撹拌し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、10000rpmにて撹拌して水系媒体を調製した。
下記の材料を酢酸エチル500.0部へ投入し、プロペラ式撹拌装置にて100rpmで溶解して溶解液を調製した。
・スチレン/ブチルアクリレート共重合体 100.0部
(共重合質量比:80/20)
・ポリエステル樹脂 3.0部
(テレフタル酸とビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物との縮重合物)
・C.I.ピグメントレッド122 6.1部
・C.I.ピグメントレッド150 3.5部
・フィッシャートロプシュワックス(融点70℃) 9.0部
次に上記水系媒体150.0部を容器に入れ、T.K.ホモミクサーを用い、回転数12000rpmで撹拌し、これに上記溶解液100.0部を添加し、10分間混合して乳化スラリーを調製した。
(トナー母粒子4の調製)
その後、脱気用配管、撹拌機及び温度計をセットしたフラスコに、乳化スラリー100.0部を仕込み、撹拌周速20m/分で撹拌しながら30℃にて12時間、減圧下、脱溶剤し45℃で4時間熟成させて、脱溶剤スラリーとした。
脱溶剤スラリーを減圧濾過した後、得られた濾過ケーキにイオン交換水300.0部を添加し、T.K.ホモミクサーで混合、再分散(回転数12000rpmにて10分間)した後、濾過した。
得られた濾過ケーキを乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩いトナー母粒子4を得た。
トナー母粒子4の個数平均粒径(D1)は5.6μm、重量平均粒径(D4)は6.8μmであった。
(水系媒体の調製)
イオン交換水390.0部を入れた反応容器に、リン酸ナトリウム(12水和物)(ラサ工業株式会社製)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。
T.K.ホモミクサーを用いて、12000rpmにて撹拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、水系媒体に1.0モル/Lの塩酸を投入し、pHを6.0に調整し、水系媒体を調製した。
(トナー母粒子分散液4の調製)
該水系媒体中にトナー母粒子4を100.0部投入し、温度60℃にてT.K.ホモミクサーを用いて5000rpmで回転させながら15分間分散した。イオン交換水を加えて分散液中のトナー母粒子4の固形分濃度が20.0%になるように調整し、トナー母粒子分散液4を得た。
《有機ケイ素化合物液の製造例》
<有機ケイ素化合物液1および2の製造例>
・イオン交換水 70.0部
・メチルトリエトキシシラン 30.0部
上記材料を200mLのビーカーに秤量し、10%塩酸でpHを3.5に調整した。その後、ウォーターバスで30℃に温度を調節しながら、1.0時間撹拌し、有機ケイ素化合物液1を作製した。その後、作製した有機ケイ素化合物液1を40℃、-90kPaの条件で2.0時間減圧蒸留を行い、有機ケイ素化合物液1に含まれるエタノールの一部を除去した有機ケイ素化合物液2を得た。
<有機ケイ素化合物液3の製造例>
・イオン交換水 90.0部
・メチルトリメトキシシラン(有機ケイ素化合物) 10.0部
上記材料を混合し、1.0モル/Lの塩酸を加えてpHを4.0に調整した。その後、ウォーターバスで60℃に加熱しながら1時間撹拌し、有機ケイ素化合物液3を調製した。
《有機ケイ素化合物粒子の製造例》
<有機ケイ素重合体粒子1の製造例>
撹拌機を備えた容器に1620部の水を入れ温浴にて70℃に加熱したのち、1.0mol/L水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを9.0に調整した。そこへ、上記有機ケイ素化合物液1を33.0部、1時間かけて添加し、70℃で保持して1時間縮重合を行った。その後、0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液を徐々に添加してpHを10.5にしたのち、70℃でさらに3時間縮重合して有機ケイ素重合体粒子1の分散液を得た。
得られた有機ケイ素重合体微粒子1の分散液を遠心分離工程にて粗粒を除去したのち、ろ過、洗浄及び乾燥することで、有機ケイ素重合体粒子1を得た。
有機ケイ素重合体粒子1の個数平均粒径は30nmであった。
《多価酸金属塩粒子の製造例》
<多価酸金属塩粒子1>
・イオン交換水 100.0部
・リン酸ナトリウム(12水和物)〔ラサ工業(株)製〕 8.5部
以上を混合したのち、85℃で、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12,000rpmにて撹拌しながら、チタンラクテート44%水溶液(TC-310:マツモトファインケミカル社製)16.0部(チタンラクテートとして7.0部相当)を添加した。1モル/Lの塩酸を加えpHを7.5に調整した。
その後、遠心分離で固形分を取り出した。次いで、イオン交換水に再度分散、遠心分離で固形分を取り出すという工程を3回繰り返し、ナトリウムなどのイオンを除去した。再度、イオン交換水に分散させ、スプレードライで乾燥し、個数平均粒径が8.0nmのリン酸チタン化合物微粒子を得、これを多価酸金属塩粒子1とした。
<多価酸金属塩粒子2>
多価酸金属塩粒子1の製造例において、温度を40℃に変更した以外は多価酸金属塩粒子1の製造例と同様にして、個数平均粒径が166nmの多価酸金属塩粒子2を得た。
<多価酸金属塩粒子3>
多価酸金属塩粒子1の製造例において、温度を60℃に変更した以外は多価酸金属塩粒子1の製造例と同様にして、個数平均粒径が18.5nmの多価酸金属塩粒子3を得た。
《トナーの製造例》
<トナー1の製造例>
反応容器内にトナー母粒子分散液1を500.0部秤量し、プロペラ撹拌羽根を用いて撹拌した。
次に、1.0モル/Lの塩酸を加えて混合溶液のpHを5.5に調整した直後に有機ケイ素化合物液2を8.0部添加した後、混合溶液のエタノール濃度が0.02質量%となるようにエタノール(キシダ化学社製)を添加した。その後、1.0モル/LのNaOH水溶液を用いてpHを9.5に調整した。
次に、混合液の温度を55℃にした後に、混合溶液に下記材料を一気に投入した。
・チタンラクテート44%水溶液 2.44部
(TC-310:マツモトファインケミカル社製、チタンラクテートとして1.07部相当)
その後、プロペラ撹拌羽根を用いて混合しながら、1時間保持した。その後、1.0モル/LのNaOH水溶液を用いてpHを9.5に調整し、温度は55℃のまま撹拌しながら2時間保持した。
温度を25℃に下げたのち、1.0モル/Lの塩酸でpHを1.5に調整して1時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過し、トナー粒子1を得た。これをトナー1とした。
分析の結果、トナー1は、リン酸とチタンを含む化合物との反応物(微粒子の形態)および有機ケイ素化合物を、表面に有していることを確認した。
また、トナーの反射電子像において、多価酸金属塩粒子の全個数に対する、前記多価酸金属塩粒子の面積100nm2以下の個数割合(%)は86.2%、前記多価酸金属塩粒子の面積500nm2以上の個数割合(%)は9.8%であった。さらに、前記反射電子像において、観察された視野におけるトナー粒子表面の総面積に対して、面積100nm2以下の前記多価酸金属塩粒子の面積の割合は3.6%であった。
なお、該リン酸とチタンを含む化合物との反応物は、チタンラクテート(チタンを含む化合物)と、水系媒体中のリン酸ナトリウム、又は、リン酸カルシウム由来のリン酸イオン(多価酸)との反応物である。
<トナー5~29、32~36の製造例>
トナー1の製造例において、製造条件を表1に記載のものに変更することでトナー粒子5~29、32~36を得た。トナー粒子5~29、32~36をトナー5~29、32~36とした。
<トナー3の製造例>
反応容器内に下記材料を秤量し、プロペラ撹拌羽根を用いて撹拌した。
・トナー母粒子分散液1 500.0部
・有機ケイ素重合体粒子1 3.0部
次に、混合溶液のエタノール濃度が0.02質量%となるようにエタノール(キシダ化学社製)を添加した。その後、1.0モル/LのNaOH水溶液を用いてpHを9.5に調整した。
次に、混合液の温度を55℃にした後に、混合溶液に下記材料を一気に投入した。
・チタンラクテート44%水溶液 2.44部
(TC-310:マツモトファインケミカル社製、チタンラクテートとして1.07部相当)
その後、プロペラ撹拌羽根を用いて混合しながら、1時間保持した。その後、1.0モル/LのNaOH水溶液を用いてpHを9.5に調整し、温度は55℃のまま撹拌しながら2時間保持した。
温度を25℃に下げたのち、1.0モル/Lの塩酸でpHを1.5に調整して1時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過し、トナー粒子3を得た。これをトナー3とした。
<トナー4の製造例>
反応容器内にトナー母粒子分散液1を500.0部秤量し、プロペラ撹拌羽根を用いて撹拌した。
次に、1.0モル/Lの塩酸を加えて混合溶液のpHを5.5に調整した直後に有機ケイ素化合物液2を8.0部添加した。その後、1.0モル/LのNaOH水溶液を用いてpHを9.5に調整した。pHを調整した直後に、下記材料を混合溶液に投入した。
・多価酸金属塩粒子1 0.43部
・多価酸金属塩粒子2 0.05部
・多価酸金属塩粒子3 0.02部
その後、混合液の温度を55℃にした後に、プロペラ撹拌羽根を用いて混合しながら、1時間保持した。その後、1.0モル/LのNaOH水溶液を用いてpHを9.5に調整し、温度は55℃のまま撹拌しながら2時間保持した。
温度を25℃に下げたのち、1.0モル/Lの塩酸でpHを1.5に調整して1時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過し、トナー粒子4を得た。これをトナー4とした。
<トナー30の製造例>
トナー4の製造例において、投入する多価酸金属塩粒子を下記の種類と部数に変更することでトナー粒子30を得た。トナー粒子30をトナー30とした。
・多価酸金属塩粒子1 0.42部
・多価酸金属塩粒子2 0.08部
<トナー31の製造例>
トナー4の製造例において、投入する多価酸金属塩微粒子を下記の部数に変更することでトナー粒子31を得た。トナー粒子31をトナー31とした。
・多価酸金属塩粒子1 0.49部
・多価酸金属塩粒子2 0.01部
・多価酸金属塩粒子3 0.002部
<トナー2の製造例>
反応容器内にトナー母粒子分散液1を500.0部秤量し、プロペラ撹拌羽根を用いて撹拌した。
次に、1.0モル/Lの塩酸を加えて混合溶液のpHを5.5に調整した直後に有機ケイ素化合物液2を8.0部添加した。その後、1.0モル/LのNaOH水溶液を用いてpHを9.5に調整した。
その後、混合液の温度を55℃にした後に、プロペラ撹拌羽根を用いて混合しながら、1時間保持した。その後、1.0モル/LのNaOH水溶液を用いてpHを9.5に調整し、温度は55℃のまま撹拌しながら2時間保持した。
温度を25℃に下げたのち、1.0モル/Lの塩酸でpHを1.5に調整して1時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過し、トナー粒子2を得た。その後、下記材料をSUPERMIXER PICCOLO SMP-2(株式会社カワタ製)に投入した。
・トナー粒子2 100.0部
・多価酸金属塩粒子1 0.43部
・多価酸金属塩粒子2 0.05部
・多価酸金属塩粒子3 0.02部
3000rpmで20分間混合を行った後、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー2を得た。
Figure 2022182231000001
《比較トナーの製造例》
<比較トナー1の製造例>
トナー母粒子分散液1を濾過・乾燥することによって取り出されたトナー母粒子1をそのままトナー粒子37として用いた。
・トナー粒子37 100.0部
・酸化チタン粒子(体積平均粒径23nm) 0.50部
・有機ケイ素重合体微粒子1 3.0部
上記材料をSUPERMIXER PICCOLO SMP-2(株式会社カワタ製)に投入して、3000rpmで20分間混合を行った。その後、目開き150μmのメッシュで篩い、比較トナー1を得た。
<比較トナー2~5の製造例>
トナー1の製造例において、製造条件を表2に記載のものに変更することでトナー粒子38~41を作製し、トナー粒子38~41を比較トナー2~5とした。
<比較トナー6の製造例>
反応容器内に下記材料を秤量し、プロペラ撹拌羽根を用いて混合した。
・チタンラクテート44%水溶液 0.75部
(TC-310:マツモトファインケミカル社製、チタンラクテートとして0.33部相当)
・トナー母粒子分散液1 500.0部
次に、1.0モル/Lの塩酸を加えて混合溶液のpHを5.5に調整した直後に有機ケイ素化合物液3を20.0部添加し、1.0モル/LのNaOH水溶液を用いてpHを7.0に調整した。
混合液の温度を50℃にした後に、プロペラ撹拌羽根を用いて混合しながら、1時間保持した。その後、1.0モル/LのNaOH水溶液を用いてpHを9.5に調整し、温度は50℃のまま撹拌しながら2時間保持した。
温度を25℃に下げたのち、1.0モル/Lの塩酸でpHを1.5に調整して1時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過し、トナー粒子42を得た。これを比較トナー6とした。
比較トナー6は多価酸金属塩粒子の生成系中のエタノール濃度が0.35%と高く、そのため、生成した多価酸金属塩粒子の面積500nm2以上の個数割合が1.2%と少なかった。
Figure 2022182231000002
トナー1~36及び、比較トナー1~6の物性を表3に示す。
Figure 2022182231000003
表3中(A)~(L)の符号は下記内容を表している。
(A)多価酸金属塩粒子に含まれる金属元素
(B)多価酸金属塩粒子に含まれる多価酸
(C)多価酸金属塩粒子の面積100nm2以下の個数割合(%)
(D)多価酸金属塩粒子の面積500nm2以上の個数割合(%)
(E)面積100nm2以下の前記多価酸金属塩粒子の面積の割合(%)
(F)多価酸金属塩粒子の面積100nm2以上500nm2以下の個数割合(%)
(G)多価酸金属塩粒子の面積の平均値(nm2
(H)多価酸金属塩粒子の面積の変動係数
(I)多価酸金属塩粒子の面積の割合(%)
(J)多価酸金属塩粒子における法線方向の高さの平均値をHa(nm)
(K)固着率M2/M1
(L)トナー粒子表面の有機ケイ素化合物の有無
[実施例1~36、比較例1~6]
上記トナー1~36及び比較トナー1~6を用いて、下記に示す方法で評価を行った。評価結果を表4に示す。
以下に、本発明の評価方法及び評価基準について説明する。
<ベタ追従性の評価>
市販のキヤノン製レーザービームプリンタ「LBP7600C」の改造機を用いた。
改造点は、評価機本体のギア及びソフトウェアを変更することにより、現像ローラーの回転数をドラムに対して2.2倍の周速で回転するように設定した。さらに、トナー供給ローラーを取り外した。LBP7600Cのトナーカートリッジに、トナー40gを装填した。常温常湿環境下(温度25℃/相対湿度50%)にて、LETTERサイズのBusiness4200用紙(XEROX社製、75g/m2)に全ベタ画像を5枚出力した。
得られた全ベタ画像に対して、ベタ追従性の評価を行った。
なお、画像濃度の測定は、「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて付属の取扱説明書に沿って、画像濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定することによって行い、得られた相対濃度を画像濃度の値とした。
(ベタ追従性の評価基準)
全ベタ画像1枚目先端部の画像濃度と全ベタ画像3枚目後端部の画像濃度との差で評価した。
A:全ベタ画像1枚目先端部の画像濃度と全ベタ画像3枚目後端部の画像濃度との差が0.10未満
B:全ベタ画像1枚目先端部の画像濃度と全ベタ画像3枚目後端部の画像濃度との差が0.10以上0.20未満
C:全ベタ画像1枚目先端部の画像濃度と全ベタ画像3枚目後端部の画像濃度との差が0.20以上0.30未満
D:全ベタ画像1枚目先端部の画像濃度と全ベタ画像3枚目後端部の画像濃度との差が0.30以上
<過帯電抑制の評価>
画像形成装置としては、下記のレーザープリンター改造機及びプロセスカートリッジを使用した。
・市販のレーザープリンターであるLBP-7700C(キヤノン(株)製)をプロセススピードが250mm/秒となるように改造した改造機
・市販のプロセスカートリッジであるトナーカートリッジ323(ブラック)(キヤノン(株)製)
カートリッジ内部からは製品トナーを抜き取り、エアブローによって清掃した後、評価対象のトナーをそれぞれ150g充填した。なお、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各ステーションにはそれぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたイエロー、マゼンタ及びシアンの各カートリッジを挿入して評価を行った。
上記プロセスカートリッジ、上記レーザープリンターの改造機および下記の転写紙を低温低湿環境(温度0℃/相対湿度10%)にて48時間静置した。
・転写紙:GF-C081(キヤノン(株)製、A4:81.4g/m2
低温環境において、転写紙の上に印字率0.5%の画像を10,000枚連続で出力した。その後、載り量0.20mg/cm2のハーフトーン画像を1枚出力し、画像を目視で観察し、濃度ムラの有無を確認した。同時に、現像ローラーの表面を目視で観察し、現像ローラー上のトナー層の状態を確認した。以下の評価基準に基づき、過帯電抑制の性能を評価した。
低温低湿環境では過帯電が生じやすい。過帯電が生じた場合、トナーと現像ローラーの付着力が高まることで、規制ブレードでの規制が困難となる。よって、現像ローラー上のトナー層が厚くなることで画像の上に濃度ムラが発生する場合がある。過帯電抑制に優れるトナーの場合には、上記条件においても良好な画像を得ることが可能である。
(過帯電抑制の評価基準)
A:現像ローラー上のトナー層は均一であり、画像にも濃度ムラがない。過帯電抑制に非常に優れる。
B:現像ローラー上のトナー層は端部がやや厚くなっているが、画像には濃度ムラがない。過帯電抑制に優れる。
C:現像ローラー上のトナー層は全体的にややムラがあるが、画像には濃度ムラがない。
D:現像ローラー上のトナー層は全体的にややムラがあり、画像端部に微小な濃度ムラが生じる。
<耐久性の評価>
上記のベタ追従性の評価後に、常温常湿環境下(温度25℃/相対湿度50%)において、評価用紙上に印字比率1.0%の画像を30,000枚連続で出力した。次に、同環境で24時間静置したのち、全ベタ画像に対してベタ追従性の評価と同様の評価を行った。
上記ベタ追従性の評価基準に従って評価し、耐久前の画像濃度差と耐久後の画像濃度差を比較して、以下の基準に基づいて耐久性の評価とした。
(耐久性の評価基準)
A:耐久前後での、画像濃度差の変化が0.05未満
B:耐久前後での、画像濃度差の変化が0.05以上0.10未満
C:耐久前後での、画像濃度差の変化が0.10以上0.20未満
D:耐久前後での、画像濃度差の変化が0.20以上
また、現像ローラーを目視観察し、多価酸金属塩粒子などの金属化合物粒子による汚染の有無を確認した。
(汚染の評価基準)
A:30,000枚まで汚染発生なし。
B:30,000枚で軽微な汚染発生。
C:30,000枚で実用上問題ない程度の汚染発生。
D:30,000枚で醜い汚染発生。
<低温定着性の評価>
常温常湿環境下(温度25℃/相対湿度50%)において、定着温度が調整できるよう改造したLBP7600Cを用いて、プロセススピ-ド290mm/secで、定着温度を140℃から5℃刻みで変更した。評価対象のトナーについて、トナー載量0.40mg/cm2のベタ画像をLETTERサイズのBusiness4200用紙(XEROX社製、75g/m2)に作像し、オイルレスで加熱加圧して、定着画像を形成した。キムワイプ(S-200、株式会社クレシア製)を用い、7.35kPa(75g/cm2)の荷重をかけて定着画像を10回こすり、こすり前後の画像濃度低下率が5%未満になる温度を定着温度とし、以下の基準に基づいて評価した。なお、画像濃度の測定には、カラー反射濃度計X-RITE 404A(X-Rite Co.製)を用い、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定し、摺擦後の画像濃度の低下率を算出した。
(低温定着性の評価基準)
A:150℃未満
B:150℃以上160℃未満
C:160℃以上170℃未満
D:170℃以上
Figure 2022182231000004

Claims (10)

  1. 結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
    前記トナー粒子表面に、第3族から第13族に含まれる金属元素より選択される少なくとも1種の金属元素を含む化合物と多価酸との多価酸金属塩粒子が存在し、
    走査型電子顕微鏡により倍率5万倍で撮影された前記トナーの反射電子像において、前記多価酸金属塩粒子の全個数に対する、前記多価酸金属塩粒子の面積100nm2以下の個数割合(%)をA、前記多価酸金属塩粒子の面積500nm2以上の個数割合(%)をBとしたとき、下記式(1)および式(2)を満たし、
    83.0≦A (1)
    1.7≦B≦17.0 (2)
    前記反射電子像において、観察された視野におけるトナー粒子表面の総面積に対して、面積100nm2以下の前記多価酸金属塩粒子の面積の割合が0.3%以上16.0%以下である
    ことを特徴とするトナー。
  2. 走査型電子顕微鏡により倍率5万倍で撮影された前記トナーの反射電子像において、前記多価酸金属塩粒子の全個数に対する、前記多価酸金属塩粒子の面積100nm2以上500nm2以下の個数割合(%)をCとしたとき、
    下記式(3)を満たす請求項1に記載のトナー。
    3.0<C≦15.3 (3)
  3. 前記多価酸金属塩粒子の面積の平均値が10nm2以上5000nm2以下である請求項1又は2に記載のトナー。
  4. 前記多価酸金属塩粒子の面積の変動係数が10.0以下である請求項1~3のいずれか1項に記載のトナー。
  5. 走査型電子顕微鏡により倍率5万倍で撮影された前記トナーの反射電子像において、観察された視野におけるトナー粒子表面の総面積に対して、前記多価酸金属塩粒子の面積の割合が1.1%以上26.3%以下である請求項1~4のいずれか1項に記載のトナー。
  6. 前記トナー粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナー粒子の断面についてのエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いたマッピング分析において、前記多価酸金属塩粒子における法線方向の高さの平均値をHa(nm)としたとき、下記式(4)を満たす請求項1~5のいずれか1項に記載のトナー。
    2.5≦Ha≦50.0 (4)
  7. 前記多価酸金属塩粒子に含まれる金属元素を金属元素Mとし、
    蛍光X線分析により求められる前記トナーに含まれる金属元素Mの金属量をM1(検出強度kcps)とし、
    前記トナー1.0gを61.5質量%のショ糖水溶液31.0gと、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び有機ビルダーからなる10質量%の精密測定器洗浄用中性洗剤水溶液6.0gからなる混合水溶液に分散させ、シェーカーを用いて1分間に300回の振とうを20分行う処理(a)を施して得たトナーをトナー(a)とし、
    蛍光X線分析により求められる前記トナー(a)に含まれる金属元素Mの金属量をM2(検出強度kcps)
    とするとき、
    該M1とM2が以下の式(5)を満たす請求項1~6のいずれか1項に記載のトナー。
    0.85≦M2/M1 (5)
  8. 前記トナー粒子は、表面に有機ケイ素化合物を有する請求項1~7のいずれか1項に記載のトナー。
  9. 前記金属元素が、チタン、ジルコニウム、銅、アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1~8のいずれか1項に記載のトナー。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載のトナーの製造方法であって、
    前記第3族から第13族に含まれる金属元素より選択される少なくとも1種の金属元素を含む化合物と多価酸との多価酸金属塩粒子が、トナー母粒子および有機ケイ素化合物を含む水系媒体中で、前記金属元素を含む化合物と多価酸とを反応させることで生成させることを特徴とするトナーの製造方法。
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