JP6724927B2 - シリコン材料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シリコン材料の製造方法に関する。
シリコン材料は半導体、太陽電池、二次電池などの構成要素として用いられることが知られており、そして、近年、シリコン材料に関する研究が活発に行われている。
例えば、非特許文献1には、CaSiを酸と反応させて層状ポリシランを合成することが記載されている。
特許文献1には、CaSiを酸と反応させて層状ポリシランを合成することが記載されており、当該層状ポリシランを活物質として具備するリチウムイオン二次電池が好適な容量を示すことが記載されている。
特許文献2には、CaSiを酸と反応させてCaを除去した層状ポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成し、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させたシリコン材料を製造したこと、及び、当該シリコン材料を活物質として具備するリチウムイオン二次電池が好適な容量維持率を示すことが記載されている。
特許文献3には、CaSiを酸と反応させてCaを除去した層状ポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成したこと、当該層状シリコン化合物を加熱して水素を離脱させたシリコン材料(ナノシリコン凝集粒子)を製造したこと、当該シリコン材料を炭素層で被覆して負極活物質としたこと、及び、当該負極活物質を具備するリチウムイオン二次電池が好適な電池特性を示すことが記載されている。
特開2011−090806号公報 国際公開第2014/080608号 特開2015−179593号公報
PHYSICAL REVIEW B, Volume48, 1993, p.8172-p.8189
しかしながら、リチウムイオン二次電池などの蓄電装置の性能に対する要求は増大しており、特に、より優れた活物質となり得る新たな材料及びその製造方法の提供が熱望されている。
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものであり、活物質となり得るシリコン材料の新たな製造方法を提供することを目的とする。
さて、収率向上のために、特許文献1〜3、非特許文献1に記載のCaSiは粉末状のものが用いられるのが普通である。ここで、粉末状のCaSiは、通常、以下の手順で製造される。まず、CaとSiを加熱して液体状態の溶湯とする。次に、溶湯を冷却し、塊状のCaSiを得る。そして、塊状のCaSiを粉砕機で粉砕して、粉末状のCaSiを得る。
本発明者は、上記の粉砕が、CaSiに対して何らかの損傷を与えているのではないかと推測した。そして、本発明者が実際に粉砕後のCaSi粉末を分析したところ、CaSiの同一結晶粒内に方位差、すなわち歪みが生じていることを本発明者は知見した。
本発明者のさらなる検討の結果、上記の歪みは、CaSi粉末を特定の温度で加熱することで、低減されることが判明した。そして、本発明者は、歪みが低減されたCaSi粉末を用い、層状シリコン化合物を経由して製造されたシリコン材料が、活物質として好適に機能することを知見した。本発明者は、これらの知見に基づき本発明を完成させた。
すなわち、本発明のシリコン材料の製造方法は、
CaSi粉末を400〜1000℃の範囲内で加熱する工程、
前記工程を経たCaSi粉末を酸と反応させて層状シリコン化合物とする工程、
前記層状シリコン化合物を300℃以上で加熱する工程、を含むことを特徴とする。
本発明のシリコン材料の製造方法により、好適な活物質となり得るシリコン材料を提供できる。
実施例1のCaSi粉末につき、各測定点とその隣接する全ての点との間で算出された局所方位差の平均値をX軸とし、頻度をY軸とした度数分布である。 実施例2のCaSi粉末につき、各測定点とその隣接する全ての点との間で算出された局所方位差の平均値をX軸とし、頻度をY軸とした度数分布である。 実施例3のCaSi粉末につき、各測定点とその隣接する全ての点との間で算出された局所方位差の平均値をX軸とし、頻度をY軸とした度数分布である。 比較例1のCaSi粉末につき、各測定点とその隣接する全ての点との間で算出された局所方位差の平均値をX軸とし、頻度をY軸とした度数分布である。 比較例2のCaSi粉末につき、各測定点とその隣接する全ての点との間で算出された局所方位差の平均値をX軸とし、頻度をY軸とした度数分布である。 実施例2のCaSi粉末のX線回折チャートである。 比較例1のCaSi粉末の原料の粗CaSiのX線回折チャートである。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
本発明のシリコン材料の製造方法は、
CaSi粉末を400〜1000℃の範囲内で加熱する工程、
前記工程を経たCaSi粉末を酸と反応させて層状シリコン化合物とする工程、
前記層状シリコン化合物を300℃以上で加熱する工程、を含むことを特徴とする。
以下、本発明のシリコン材料の製造方法で製造されるシリコン材料を「本発明のシリコン材料」ということがあり、また、400〜1000℃の範囲内で加熱する工程を経たCaSi粉末を「本発明のCaSi粉末」ということがある。
まず、CaSi粉末を400〜1000℃の範囲内で加熱する工程(以下、「CaSi粉末加熱工程」ということがある。)について説明する。ここで用いられるCaSi粉末は、塊状のCaSiを粉砕機で粉砕するなどの製造方法で得られたものであり、結晶に歪みを有しているものである。
CaSi粉末は市販のものを採用してもよいし、公知の方法で製造したものを採用してもよい。塊状のCaSiを粉砕する粉砕機としては、一般的な粉砕機を用いればよい。例えば、ピンミル、ハンマーミル、ボールミル、ディスクミル、ローラーミル、ジョークラッシャーを用いるのがよく、さらには、ジェットミルを併用してもよい。
CaSi粉末の形状には特に限定は無い。一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で測定した場合におけるCaSi粉末の粒度分布としては、平均粒子径(D50)が0.1〜10000μmの範囲内、1〜1000μmの範囲内、5〜500μmの範囲内、1〜30μmの範囲内、1〜10μmの範囲内であることを例示できる。CaSi粉末の粒度分布としては、シャープな分布状態を示すのが好ましい。また、目開き5000μm、1000μm、500μm、250μmなどの篩を通過したCaSi粉末を用いることができる。CaSi粉末の粒子径はシリコン材料の粒子径に影響するため、例えば、平均粒子径が1〜10μmの範囲内のCaSi粉末を採用した場合には、シリコン材料に対する粉砕工程が不要となり得る。
本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、CaSiには不純物が含まれていてもよい。想定される不純物として、原料に含まれる元素、製造工程に由来する元素、結晶のサイズが比較的大きい結晶性シリコン、Ca14Si19などを例示できる。
塊状のCaSi又はCaSi粉末に対して、不純物を除去若しくは低減する工程を追加してもよい。例えば、結晶性シリコンを含有するCaSiにCaを加えた混合物を加熱して溶湯とし、溶湯中で結晶性シリコンとCaとを反応させてCaSiを合成し、次いで、当該溶湯を冷却することで、結晶性シリコンの量を低減させたCaSiを製造できる。
CaSi粉末加熱工程において、CaSi粉末の加熱温度は400〜1000℃の範囲内である。加熱温度が低すぎると、歪みの低減が不十分な場合がある。また、CaSiの融点が1020℃付近であることから、加熱温度が1020℃を超えると、CaSi粉末が液体状態となるため、妥当でない。加熱温度は、450〜950℃の範囲内が好ましく、500〜900℃の範囲内がより好ましく、700〜900℃の範囲内がさらに好ましい。
加熱装置としては、一般的な加熱炉を用いればよい。加熱時間は、加熱温度とCaSiの歪みの低減具合に応じて適宜決定すればよい。加熱時間としては、1〜20時間、2〜15時間を例示できる。加熱は、不活性ガス雰囲気下で行われるのが好ましい。不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴンなどの希ガスを例示できる。
粉砕後のCaSi粉末と比較して、本発明のCaSi粉末は、CaSi結晶の歪みが低減されている。当該歪みを確認するには、CaSi粉末を走査型電子顕微鏡(以下、SEMと略す。)で観察したSEM像の全体について、EBSD法(Electron Back Scatter Diffraction Patterns)を利用して、CaSiの結晶粒の方位差を算出すればよい。より具体的には、CaSi結晶粒内の測定点の像を表すピクセルと、これに隣接する同一のCaSi結晶粒内のすべての測定点との間の方位差(単位は、「度」である。)を算出し、その平均値を算出する。この作業を、SEM像の全体について行うことで、試料の平均局所方位差が算出される。
本発明のCaSi粉末において、CaSi結晶の平均局所方位差は小さい方が好ましい。具体的な平均局所方位差としては、0〜0.7度の範囲内が好ましく、0〜0.5度の範囲内がより好ましい。敢えて平均局所方位差の下限値を挙げるとすれば、0.1度、0.2度、0.3度を例示できる。
なお、CaSi粉末加熱工程は、CaSi粉末を400〜1000℃の範囲内で加熱することを特徴とする、結晶の歪みが低減されたCaSi粉末の製造方法であると理解することもできる。
次に、加熱工程を経たCaSi粉末を酸と反応させて層状シリコン化合物とする工程(以下、「層状シリコン化合物を得る工程」ということがある。)について説明する。この工程においては、層状の結晶構造のCaSiのうちCaが酸のHで置換されつつ、SiがSi−H結合を形成する。層状シリコン化合物は、原料のCaSiによるSi層の基本骨格が維持されているため、層状をなす。
酸としては、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、蟻酸、酢酸、メタンスルホン酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロヒ素酸、フルオロアンチモン酸、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロゲルマン酸、ヘキサフルオロスズ(IV)酸、トリフルオロ酢酸、ヘキサフルオロチタン酸、ヘキサフルオロジルコニウム酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸が例示される。これらの酸を単独又は併用して使用すれば良い。
特に、酸として、フッ素アニオンを生じ得る酸を採用するのが好ましい場合がある。当該酸を採用することにより、層状シリコン化合物に生じ得るSi−O結合やSiと他の酸のアニオンとの結合(例えば、塩酸の場合にはSi−Cl結合)を減少することができる。なお、層状シリコン化合物にSi−O結合やSi−Cl結合が存在すると、次工程を経ても、シリコン材料にSi−O結合やSi−Cl結合が存在する場合がある。そして、Si−O結合やSi−Cl結合を有するシリコン材料を負極活物質として採用したリチウムイオン二次電池においては、Si−O結合やSi−Cl結合がリチウムイオンの移動を阻害すると推定される。
層状シリコン化合物を得る工程において、酸は、CaSiに対して2当量以上のプロトンを供給できる量で用いればよい。同工程は無溶媒で行ってもよいが、目的物の分離やCaClなどの副生物の除去の観点から溶媒として水を採用するのが好ましい。同工程の反応条件は、真空などの減圧条件又は不活性ガス雰囲気下とすることが好ましく、また、氷浴などの室温以下の温度条件とするのが好ましい。同工程の反応時間は適宜設定すれば良い。
酸として塩酸を用いた場合の層状シリコン化合物を得る工程の化学反応を理想的な反応式で示すと以下のとおりとなる。
3CaSi+6HCl→Si+3CaCl
上記反応式において、Siが理想的な層状シリコン化合物に該当する。
層状シリコン化合物を得る工程は水存在下で行われるのが好ましく、そして、Siは水と反応し得るため、通常は、層状シリコン化合物がSiなる化合物のみで得られることはほとんどなく、層状シリコン化合物は酸素や酸由来の元素も含有する。
層状シリコン化合物を得る工程以降は、層状シリコン化合物を濾取する濾過工程、層状シリコン化合物を洗浄する洗浄工程、層状シリコン化合物を乾燥する乾燥工程を、必要に応じて適宜実施するのが好ましい。
次に、層状シリコン化合物を300℃以上で加熱する工程(以下、単に「加熱工程」ということがある。)について説明する。同工程は、前記層状シリコン化合物を300℃以上で加熱し、水素や水などを離脱させ、シリコン材料を得る工程である。この工程の化学反応を理想的な反応式で示すと以下のとおりとなる。
Si→6Si+3H
ただし、加熱工程に実際に用いられる層状シリコン化合物は酸素や酸由来の元素を含有し、さらに不可避不純物も含有するため、実際に得られるシリコン材料も酸素や酸由来の元素を含有し、さらに不可避不純物も含有するものとなる。
加熱工程は、通常の大気下よりも酸素含有量の少ない非酸化性雰囲気下で行われるのが好ましい。非酸化性雰囲気としては、真空を含む減圧雰囲気、不活性ガス雰囲気を例示できる。加熱温度は、350℃〜1100℃の範囲内が好ましく、400℃〜1000℃の範囲内がより好ましい。加熱温度が低すぎると水素の離脱が十分でない場合があり、また、加熱温度が高すぎるとエネルギーの無駄になる。加熱時間は加熱温度に応じて適宜設定すれば良い。反応系外に抜けていく水素などの量を測定しながら加熱時間を決定するのが好ましい。加熱温度及び加熱時間を適宜選択することにより、製造されるシリコン材料に含まれるアモルファスシリコン及びシリコン結晶子の割合、並びに、シリコン結晶子の大きさを調製することもできる。加熱温度及び加熱時間を適宜選択することにより、製造されるシリコン材料に含まれるアモルファスシリコン及びシリコン結晶子を含むナノ水準の厚みの層の形状を調製することもできる。
シリコン結晶子のサイズとしては、ナノサイズのものが好ましい。具体的には、シリコン結晶子サイズは、0.5nm〜300nmの範囲内が好ましく、1nm〜100nmの範囲内がより好ましく、1nm〜50nmの範囲内がさらに好ましく、1nm〜10nmの範囲内が特に好ましい。シリコン結晶子サイズは、シリコン材料に対してX線回折測定(XRD測定)を行い、得られたXRDチャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いたシェラーの式から算出される。なお、ここで述べたシリコン結晶子は、XRDチャートにブロードなピークとして観察されるものを意味しており、既述した結晶性シリコンとはピーク形状及びピークから算出される結晶サイズの大小において区別できる。
上記加熱工程により、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するシリコン材料を得ることができる。この積層構造は、原料のCaSiにおけるSi層の名残りであると考えられ、走査型電子顕微鏡などによる観察で確認できる。シリコン材料をリチウムイオン二次電池の活物質として使用することを考慮すると、リチウムイオンの効率的な挿入及び脱離反応のためには、板状シリコン体は厚さが10nm〜100nmの範囲内のものが好ましく、20nm〜50nmの範囲内のものがより好ましい。また、板状シリコン体の長軸方向の長さは、0.1μm〜50μmの範囲内のものが好ましい。また、板状シリコン体は、(長軸方向の長さ)/(厚さ)が2〜1000の範囲内であるのが好ましい。
本発明のシリコン材料を粉砕してもよく、さらに分級してもよい。本発明のシリコン材料の粒子径は、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で測定した場合において、平均粒子径(D50)が1〜30μmの範囲内が好ましく、2〜20μmの範囲内がより好ましく、3〜10μmの範囲内がさらに好ましい。
本発明のシリコン材料は、リチウムイオン二次電池などの二次電池、電気二重層コンデンサ及びリチウムイオンキャパシタなどの蓄電装置の負極に使用することができる。また、本発明のシリコン材料は、例えばCMOS、半導体メモリ及び太陽電池などの材料や、光触媒材料などとしても利用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明のシリコン材料を負極活物質として具備する。具体的には、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、本発明のシリコン材料を負極活物質として具備する負極、電解液及びセパレータを具備する。
正極は、集電体と、集電体の表面に結着させた正極活物質層を有する。
集電体は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子伝導体をいう。集電体としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
正極活物質層は正極活物質、並びに必要に応じて導電助剤及び/又は結着剤を含む。
正極活物質としては、層状化合物のLiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)、LiMnOを挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn等のスピネル、及びスピネルと層状化合物の混合で構成される固溶体、LiMPO、LiMVO又はLiMSiO(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePOFなどのLiMPOF(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBOなどのLiMBO(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の各組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも正極活物質として使用可能である。また、正極活物質として、充放電に寄与するリチウムイオンを含まない正極活物質材料、たとえば、硫黄単体、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiSなどの金属硫化物、V、MnOなどの酸化物、ポリアニリン及びアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。リチウムを含まない正極活物質材料を用いる場合には、正極および/または負極に、公知の方法により、予めイオンを添加させておく必要がある。ここで、当該イオンを添加するためには、金属または当該イオンを含む化合物を用いればよい。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、および各種金属粒子などが例示される。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが例示される。これらの導電助剤を単独または二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。
活物質層中の導電助剤の配合割合は、質量比で、活物質:導電助剤=1:0.005〜1:0.5であるのが好ましく、1:0.01〜1:0.2であるのがより好ましく、1:0.03〜1:0.1であるのがさらに好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると活物質層の成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
結着剤は、活物質や導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たすものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン−アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤を単独で又は複数で採用すれば良い。
活物質層中の結着剤の配合割合は、質量比で、活物質:結着剤=1:0.001〜1:0.3であるのが好ましく、1:0.005〜1:0.2であるのがより好ましく、1:0.01〜1:0.15であるのがさらに好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
負極は、集電体と、集電体の表面に結着させた負極活物質層を有する。集電体については、正極で説明したものを適宜適切に採用すれば良い。負極活物質層は負極活物質、並びに必要に応じて導電助剤及び/又は結着剤を含む。
負極活物質としては、本発明のシリコン材料を用いればよく、本発明のシリコン材料のみを採用してもよいし、本発明のシリコン材料と公知の負極活物質を併用してもよい。本発明のシリコン材料を炭素で被覆したものを負極活物質として用いてもよい。
負極に用いる導電助剤及び結着剤については、正極で説明したものを同様の配合割合で適宜適切に採用すれば良い。
集電体の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すればよい。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を混合し、スラリーを調製する。上記溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。該スラリーを集電体の表面に塗布後、乾燥する。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
電解液は、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質とを含んでいる。
非水溶媒としては、環状エステル類、鎖状エステル類、エーテル類等が使用できる。環状エステル類としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンを例示できる。鎖状エステル類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを例示できる。非水溶媒としては、上記具体的な溶媒の化学構造のうち一部又は全部の水素がフッ素に置換した化合物を採用しても良い。
電解質としては、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO等のリチウム塩を例示できる。
電解液としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネートなどの非水溶媒に、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSOなどのリチウム塩を0.5mol/Lから1.7mol/L程度の濃度で溶解させた溶液を例示できる。
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
次に、リチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。
正極および負極に必要に応じてセパレータを挟装させ電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体および負極の集電体から、外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、電極に含まれる活物質の種類に適した電圧範囲で充放電を実行されればよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、たとえば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両にリチウムイオン二次電池を搭載する場合には、リチウムイオン二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。リチウムイオン二次電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のリチウムイオン二次電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、実施例および比較例などを示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
以下のとおり、実施例1のCaSi粉末、シリコン材料及びリチウムイオン二次電池を製造した。
・不純物除去工程及び粉砕工程
結晶性シリコンを含有する粗CaSiを準備した。当該粗CaSi20gを炭素坩堝に入れた。当該炭素坩堝を高周波誘導加熱装置に配置して、アルゴンガス雰囲気下、1150℃で加熱し、粗CaSiを溶融した。溶融した粗CaSiに、Caを2g添加し、溶湯とした。上記溶湯を鋳型に流し込み、放冷して、塊状のCaSiを得た。塊状のCaSiをピンミルで粉砕し、目開き250μmの篩を通して、CaSi粉末を得た。
・CaSi粉末加熱工程
アルゴンガス雰囲気下、上記CaSi粉末を500℃で6時間加熱した。加熱後のCaSi粉末を実施例1のCaSi粉末とした。
・層状シリコン化合物を得る工程
氷浴中の35質量%HCl水溶液100mLに、アルゴンガス雰囲気下、実施例1のCaSi粉末5gを加え、90分間撹拌した。反応液中に暗緑粉末が分散するのが確認できた。反応液を濾過し、残渣を蒸留水及びアセトンで洗浄し、さらに、室温で12時間減圧乾燥して層状シリコン化合物を得た。
・加熱工程(シリコン材料を得る工程)
層状シリコン化合物をアルゴンガス雰囲気下、900℃で1時間加熱し、実施例1のシリコン材料を得た。
・リチウムイオン二次電池製造工程
負極活物質として実施例1のシリコン材料を45質量部、さらに負極活物質として黒鉛を40質量部、結着剤としてポリアミドイミドを10質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを5質量部及び適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合してスラリーとした。
集電体として厚さ20μmの電解銅箔を準備した。該銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて上記スラリーが膜状になるように塗布した。スラリーが塗布された銅箔を80℃で20分間乾燥することでN−メチル−2−ピロリドンを揮発により除去し、その結果、表面に負極活物質層が形成された銅箔を得た。該銅箔を負極活物質層の厚みが20μmとなるように、ロールプレス機で圧縮して接合物を得た。この接合物を200℃で2時間減圧加熱乾燥し、電極とした。
上記電極を径11mmに裁断し、評価極とした。金属リチウム箔を径13mmに裁断し対極とした。セパレータとしてガラスフィルター(ヘキストセラニーズ社)及び単層ポリプロピレンであるcelgard2400(ポリポア株式会社)を準備した。また、エチレンカーボネート50容量部及びジエチルカーボネート50容量部を混合した溶媒にLiPF6を1mol/Lで溶解した電解液を準備した。対極、ガラスフィルター、celgard2400、評価極の順に、2種のセパレータを対極と評価極で挟持し電極体とした。この電極体をコイン型電池ケースCR2032(宝泉株式会社)に収容し、さらに電解液を注入して、コイン型電池を得た。これを実施例1のリチウムイオン二次電池とした。
(実施例2)
CaSi粉末加熱工程の加熱温度を700℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2のCaSi粉末、シリコン材料及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例3)
CaSi粉末加熱工程の加熱温度を900℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3のCaSi粉末、シリコン材料及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例4)
粉砕工程において、ピンミルでの粉砕に加えて、ジェットミルでの粉砕も行い、平均粒子径が2μmのCaSi粉末を得た以外は、実施例2と同様の方法で、実施例4のCaSi粉末、シリコン材料及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例1)
CaSi粉末加熱工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1のCaSi粉末(不純物除去工程及び粉砕工程を経て得られたCaSi粉末)、シリコン材料及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例2)
CaSi粉末加熱工程の加熱温度を300℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2のCaSi粉末、シリコン材料及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(評価例1)
実施例1〜4、比較例1〜2のCaSi粉末につき、SEMにEBSD検出器を装着したSEM/EBSD(日本電子株式会社/オックスフォード・インストゥルメンツ株式会社)に供し、EBSD解析ソフトとしてAZtec HKL(オックスフォード・インストゥルメンツ株式会社)を用いて、平均局所方位差を算出した。結果を表1に載せる。また、実施例1〜3、比較例1〜2のCaSi粉末につき、各測定点で算出された局所方位差をX軸とし、頻度をY軸とした度数分布を図1〜5に載せる。
Figure 0006724927
表1の結果から、CaSi粉末加熱工程を経た本発明のCaSi粉末は、平均局所方位差が低減されていることがわかる。また、CaSi粉末加熱工程の温度が高い方が、平均局所方位差が好適に低減されていることがわかる。
(評価例2)
実施例1〜4、比較例1〜2のリチウムイオン二次電池につき、評価極の対極に対する電圧が0.01Vになるまで0.25Cレートで放電を行い、評価極の対極に対する電圧が1Vになるまで0.25Cレートで充電を行う充放電サイクルを50サイクル行った。初回の充電容量に対する50サイクルでの充電容量の比率を容量維持率とした。結果を、評価例1の平均局所方位差の結果とともに表2に載せる。なお、評価例2では、評価極にLiを吸蔵させることを放電といい、評価極からLiを放出させることを充電という。
Figure 0006724927
表2から、実施例1〜4のリチウムイオン二次電池の容量維持率が、比較例1〜2のリチウムイオン二次電池よりも優れていることがわかる。また、原料であるCaSi粉末の平均局所方位差が小さいほど、その生成物のシリコン材料を具備するリチウムイオン二次電池の容量維持率が高くなることがわかる。
ここで、CaSiがシリコン材料となるまでには、少なくとも、CaSi粉末を酸と反応させて層状シリコン化合物とする工程、及び、層状シリコン化合物を300℃以上で加熱する工程を経る。CaSiが酸と反応するときには、CaSiのCaと水素が置換してSiとなるため、この段階でCaSi結晶は無くなると考えられる。また、Siを含む層状シリコン化合物を300℃以上で加熱すると(実施例及び比較例では900℃で加熱した。)、水素が離脱して、アモルファスシリコンやシリコン結晶子を含むシリコン材料が生成する。そうすると、400〜1000℃程度の加熱温度に影響される原料のCaSi結晶の歪みの大小が、少なくとも2回の化学構造の変化を経て、かつ900℃の加熱条件下で製造されるシリコン材料にまで影響を与えるとは、通常、考えられない。
しかしながら、表2の結果から、原料のCaSi結晶の歪みの大小が、シリコン材料の物性に何らかの影響を与えたと結論付ける他ない。
なお、CaSi結晶の歪みの大小が、シリコン材料自身にどのような構造の変化や特性の変化を与えたのかは、知識及び経験豊かな本発明者の分析及び考察によっても、現時点において解明することが出来なかった。したがって、本発明のシリコン材料を、その構造又は特性により、従来のシリコン材料と区別することは現時点で出来ない。換言すれば、本発明のシリコン材料には、これを構造又は特性により直接特定することが不可能であるか又はおよそ実際的でないという事情が存在する。よって、従来のシリコン材料と区別するために、本発明のシリコン材料を特定するには、その製造方法で規定する他ない。
(評価例3)
粉末X線回折装置にて、実施例2のCaSi粉末、及び、比較例1の原料の粗CaSiのX線回折を測定した。実施例2のCaSi粉末について、得られたX線回折チャートを図6に示し、比較例1の原料の粗CaSiについて、得られたX線回折チャートを図7に示す。図6のX線回折チャートにおいては、図7で明確に観察された結晶性シリコンに由来する28°付近のピークが、ほとんど観察されなかった。不純物除去工程におけるCaの添加に因り、CaSiに含まれる結晶性シリコンの量が低減することが裏付けられた。
また、粉末X線回折装置にて、実施例4のCaSi粉末、及び、実施例4におけるCaSi粉末加熱工程前のCaSi粉末のX線回折を測定した。両者のX線回折チャートを比較したところ、実施例4のCaSi粉末のX線回折チャートの方が、ピーク強度が大きいことが確認できた。これは、CaSi粉末加熱工程により、結晶の歪みが矯正された結果が反映されたといえる。

Claims (7)

  1. CaSi粉末を400〜1000℃の範囲内で加熱する工程、
    前記工程を経たCaSi粉末を酸と反応させて層状シリコン化合物とする工程、
    前記層状シリコン化合物を300℃以上で加熱する工程、を含むことを特徴とするシリコン材料の製造方法。
  2. 前記CaSi粉末が、粉砕により製造されたものである請求項1に記載のシリコン材料の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の製造方法で製造されたシリコン材料を用いる負極の製造工程、を含むことを特徴とする蓄電装置の製造方法。
  4. CaSi粉末を400〜1000℃の範囲内で加熱することを特徴とする、結晶の歪みが低減されたCaSi粉末の製造方法。
  5. CaSi結晶の平均局所方位差が0〜0.7度の範囲内であるCaSi粉末。
  6. CaSi 結晶の平均局所方位差が0〜0.7度の範囲内であるCaSi 粉末を、酸と反応させて層状シリコン化合物とする工程、
    前記層状シリコン化合物を300℃以上で加熱する工程、を含むことを特徴とするシリコン材料の製造方法。
  7. 請求項6に記載の製造方法で製造されたシリコン材料を用いる負極の製造工程、を含むことを特徴とする蓄電装置の製造方法。
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