JP6638462B2 - 透明光学フィルム用ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

透明光学フィルム用ポリエステル樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、低いリタデーションと透明性、耐カール性に優れた透明光学用フィルムを提供しうる共重合ポリエステル樹脂組成物に関する。
ポリエステルは、その優れた特性により、繊維、フィルム、ボトルに広く使用されている。
従来、液晶ディスプレイに使用される偏光板は一般的に保護フィルム/偏光膜/保護フィルム、または保護フィルム/偏光膜/位相差フィルムの構成からなり、従来の偏光板の保護フィルムとして、偏光板の特性を損なわないために、高い透明性や低いリタデーション、異物の少なさなどの特性が必要であり、その点からTAC(トリアセチルセルロース)フィルムが多く使用されてきた。しかしながら、スマートフォン、タブレットの拡大に伴い、年々薄膜化の傾向をたどっている。薄膜化によるTACフィルムのハンドリング性悪化および、TACフィルムのコストが高い点が問題となっている。上記のような問題に対して共重合ポリエステルを使用したフィルムでTACフィルムを代替する検討も多く行なわれている。ポリエステルに共重合成分を導入することにより、非晶性を発現し、フィルム作製時の配向緩和に寄与し、低いリタデーションを示すフィルムが得られる。しかし、この共重合ポリエステル樹脂組成物は、低いリタデーション、高い透明性は確保できるものの、耐熱性が低いという問題があった。ポリエステルは成形加工時に250℃〜300℃というポリエステルの融点以上の温度で溶融して押出し成形することが常であるが、この温度条件は一方でポリエステルの熱分解や、酸素が混入した場合には酸化分解を引き起こす。その結果、熱分解によりIVが低下し、偏光板貼り合わせ後のカールの原因となり、あるいは酸化分解によりゲル状の異物発生を引き起こしなど、フィルム表面の欠点となる問題がある。特許文献1、2、3には金属量とリン化合物の量の比であるM/Pを特定の範囲内とするポリエステル樹脂組成物が記載されているが、共重合ポリエステルとしては耐熱性が低く、成形工程でのIV低下によるフィルムのカール性が悪く、ゲル化率も高いという問題があった。また、特許文献4にはマンガン触媒は使用されておらず、共重合ポリエステル樹脂組成物は、透明性は確保できるものの、ゲル化率の増加、色調の悪化という問題があった。
特開平11−21337号公報 特開2008−95085号公報 特開平7−108528号公報 特開2003−96280号公報
本発明の目的は、上記した従来の課題を解決し、近年透明光学フィルムなどでますます要求特性が厳しくなっている非晶性、透明性、低へイズと耐熱性の良好な共重合ポリエステル樹脂組成物を提供することにある。
前記した本発明の目的は、テレフタル酸又はこれを主体とするジカルボン酸成分とエチレングリコール又はこれを主体とするジオール成分とからなるポリエステルであって、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を10〜40mol%、マンガン元素を15〜45ppm含有し、ポリエステル中に含有する金属元素とリン元素のモル比(M/P)が下記式を満足し、かつゲル化率が8%以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物で達成できる。
0.60 ≦(M1+M2/2)/P≦ 1.50
(M1:Mg,Mn,Caから選ばれる2価の金属元素含有量、
M2:Li,Na,Kから選ばれる1価の金属元素含有量、
P:リン元素含有量
式中において、MおよびPはポリエステル10g当たりの総モル数を示す。)
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、非晶性、透明性、低へイズであり、かつ耐熱性に優れているので、低いリタデーションと透明性、耐カール性に優れた透明光学用フィルムなどに好ましく使用することができる。
本発明のポリエステルは、主たるジカルボン酸成分がテレフタル酸単位であり、主たるグリコール成分がエチレングリコール単位であって、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を10〜40mol%構成成分としたものである。好ましくは、イソフタル酸成分は製膜性、非晶性、透明性の点から10〜30mol%、更に好ましくは、10〜25mol%である。10mol%未満では、偏光板の保護フィルムとして必要な光学特性であるリタデーションが悪く、40mol%を超えるとポリエステルの耐熱性の悪化および強度の低下を引き起こす。また、特に限定されないが前記ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分を20mol%以下であれば含むことができる。例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸一ナトリウム、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。
また、エチレングリコール以外のグリコールとしては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、p−キシレングリコール、1,4−シクロヘキサジメタノール、ビスフェノールなどが挙げられる。エチレングリコール以外のジオール成分をジオール単位として20モル%以下であれば含むことができる。さらに熱可塑性を損なわない程度であれば三官能以上の多官能性化合物を共重合したポリエステルであってもよい。
本発明におけるポリエステル樹脂組成物は、ゲル化率低減および色調改善の点からマンガン元素を15〜45ppm含有することが必要であり、さらに20〜40ppmとすることが好ましい。マンガン元素の含有量が45ppmを超えると、ゲル化率の上昇によるフィルム欠点の増加および耐熱性の低下による色調悪化や、フィルムでの耐カール性の悪化に繋がる。また、15ppm未満であると、ゲル化率が上昇し、フィルムの欠点増加となる。
本発明におけるポリエステル樹脂組成物は、マンガン元素以外にも2価の金属元素としてマグネシウム元素、カルシウム元素を含むことができる。ゲル化率、色調の観点からはマンガン元素が最も良い。
2価の金属化合物としては、特に限定されないが2価の金属元素の酢酸塩、酸化物、水酸化物などが挙げられ、樹脂組成物のゲル化率および耐熱性、ヘイズ、透明性の点から酢酸塩が好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂組成物は、1価の金属元素を含むことが好ましく、1価の金属元素として1.5〜50ppm含有することが好ましく、さらに2.0〜40ppmとすることがより好ましい。1価の金属元素含有量が1.5ppm以上であると、効率的にポリマーの溶融比抵抗が下げられることから製膜工程における静電印加キャストの観点から製膜性の向上につながる。また、ポリマー重合および溶融時の分解反応を抑制することができるので、耐熱性の向上が見込める。また50ppm以下であると、耐熱性が良好であり、金属元素を核剤とする粗大粒子の生成を抑制でき低ヘイズ化および透明性が良好である。
1価の金属元素としては、カリウム、ナトリウム、リチウムが挙げられるが、透明性の点からカリウムが好ましい。
1価の金属化合物としては、1価の金属元素の水酸化物、塩化物、炭酸塩などが挙げられ、樹脂組成物の重合および溶融時の分解反応抑制の点から水酸化物が好ましい。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、金属化合物、リン化合物を含み、その金属とリンのモル比であるM/Pは下記式を満足する。
0.60≦(M1+M2/2)/P≦1.50
(M1:Mg,Mn,Caから選ばれる2価の金属元素含有量、M2:Li,Na,Kから選ばれる1価の金属元素含有量、P:リン元素含有量、式中において、MおよびPはポリエステル10g当たりの総モル数を示す。)
M/Pは0.60〜1.50とする必要があり、好ましくは0.70〜1.20、さらに好ましくは0.80〜1.10である。M/Pが0.60未満であると製膜工程における静電印加キャストの観点から製膜性の悪化となる。1.50を超えるとゲル化率の上昇によるフィルム欠点の増加および耐熱性の低下による色調悪化や、フィルムでの耐カール性の悪化となる。
本発明においてゲル化率の抑制および耐熱性の観点から、Mg、Ca、Liの含有量はいずれも1ppm未満であることが好ましい。この範囲を超えないことで低いゲル化率および高い耐熱性が維持できる。
ゲル化率は8%以下であり、好ましくは6.5%以下、さらに好ましくは5%以下である。ゲル化率が8%を超えると成形体表面の欠点が多くなり、特にフィルムでは表面の欠点が問題となる。
本発明におけるポリエステル樹脂組成物のアンチモン元素含有量は400ppm以下とすることが好ましく、さらに350ppm以下とすることがより好ましい。400ppm以下であると、ポリエステル樹脂組成物中のアンチモン金属が製膜時に析出することによって引き起こされる透明性の低下を抑制することができる。
本発明におけるポリエステル樹脂組成物を用いた光学フィルムは、非晶性の点からリタデーションおよび透明性が良好で、耐熱性良好の点から欠点が少なく、耐カール性が良好である。
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は従来公知の製造方法を採用できる。
例えば、テレフタル酸75mol%、イソフタル酸25mol%とエチレングリコールとの反応物であるビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート(以下、BHTという)を予め255℃の溶融状態で貯留させ、さらにテレフタル酸とエチレングリコールからなるスラリーおよびイソフタル酸とエチレングリコールからなるスラリーをそれぞれ別に設けた混合槽に準備しておき、反応槽の温度を保ち定量供給しながら、水を留出させ、エステル化反応させる。反応を開始してから4〜5時間後にエステル化を終了し、この反応生成物であるBHTを重縮合反応槽に移し、水酸化カリウム、酢酸マンガンと三酸化アンチモンおよびその他の添加物を添加する。その後、高真空になるまで減圧するとともに290℃程度まで加熱、昇温して重縮合反応を行い、目標固有粘度に到達まで重縮合反応する。
水酸化カリウム、酢酸マンガンとアンチモン化合物の添加時期は、重縮合反応前に添加すると得られるポリエステル樹脂組成物の分解反応が抑制でき、また重縮合反応を効率よく進めることができる。また、アンチモン金属などによる凝集が少なく透明性(ヘイズ)が向上するので好ましい。
1価の金属化合物はエチレングリコール溶液として添加することが、得られるポリエステル樹脂組成物の耐熱性向上の点から好ましい。
またアンチモン化合物はエチレングリコール溶液として添加することが、重縮合反応系におけるアンチモン化合物の凝集による粗大物の生成防止、その結果透明性(ヘイズ)が良好となる点から好ましい。
反応終了後、重縮合反応槽の底部に設けたポリマー吐出口金より冷水中にストランド状に吐出・冷却し、カッターによってペレット化を行なう。
本発明方法で得られたポリエステル樹脂組成物は非晶性、透明性、低へイズ、耐熱性の特性に優れており、フィルムにすると、透明光学分野に有用である。
本発明のポリエステル樹脂組成物を内層(以下A層という)とし、本発明とは異なる組成のポリエステル組成物を表層(以下、B層という)とした、少なくとも3層からなる積層フィルムとすることができる。
積層するB層のポリエステル樹脂組成物としては、特に限定しないが、テレフタル酸を含むジカルボン酸成分と、エチレングリコールを含むグリコール成分とからなり、共重合成分を含んでも含まなくてもよく、A層のポリエステルに比べて、固相重合して固有粘度が高く、カルボキシル末端基量および環状3量体量が低いものがフィルムの透明性(ヘイズ)や耐カール性の観点から好ましい。良好な耐カール性は、本発明の樹脂を用いたフィルムと偏光板として用いるポリビニルアルコール(以下、PVA)フィルムと貼り合わせた後、加熱処理した際、PVAフィルムが収縮し、カールすることを抑制できる。Bまた、B層のポリエステルにはフィルムの取り扱いを容易にするために透明性を損なわない条件で粒子を含有させても良い。本発明で用いる粒子の例としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、有機粒子など挙げることができる。
用いる粒子の含有量は、ポリエステルに対し、10〜200ppmが好ましく、さらに好ましくは50〜150ppmである。粒子含有量が多いとヘイズが大きくなり、フィルムの透明性が低下することがあり、粒子含有量が少ないとフィルムの取り扱いが困難になる場合がある。
以下に実施例を挙げて、本願発明をさらに具体的に説明する。
なお、物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
(1)ポリエステル樹脂組成物の色調(b値)
色差計(スガ試験機社製、SMカラーコンピュータ(SM−T))を用い、反射法にて測定した。
(2)ポリエステル樹脂組成物のヘイズ
ポリエステル0.5gを、フェノール/四塩化エタン(6/4重量比)の混合溶媒20mlに100℃で60分攪拌して溶解させ、室温まで冷却後、その溶液を20mmのガラスセルに入れ、スガ試験機製へイズコンピューター(HGM−2DP)で測定した。得られたポリエステルのヘイズは、3.0%以上4.0%以下が好ましく、3.0%以下がさらに好ましい。4.0%を超える場合は透明性の点から不合格とした。
(3)ポリエステル樹脂組成物のカルボキシル末端基(COOH)
Mauliceの方法によって測定した(文献 M.J.Maulice,F.Huizinga.Anal.Chim.Acta,22 363(1960))。エステル化反応物2gをo−クレゾール/クロロホルム(重量比7/3)50mlに溶解し、N/20−水酸化ナトリウムメタノール溶液によって滴定し、エステル化反応物のカルボキシル末端基量を測定し、eq/ポリエステル1tonの値で示した。
(4)ゲル化率
ポリステル樹脂組成物を凍結粉砕機(Sprex CertiPerp社製)にて粉砕し、ステンレスビーカーに0.5g秤量した。真空乾燥機を用いて、50℃で2時間真空乾燥した後、空気と窒素の混合気体で酸素濃度1%とし、試料含有容器に酸素濃度1%の混合気体を配管より通し十分に置換された後に、該容器を300℃のオイルバスに浸し、酸素/窒素濃度1%流通下(流量0.5L/分)6時間加熱処理を行った。これを、20mlのオルトクロロフェノール(以下OCP)で、160℃で1時間溶解し、放冷した。この溶液を、ガラスフィルター(柴田科学社製、3GP40)を使用しろ過、ジクロロメタンにてガラスフィルターを洗浄した。ガラスフィルターを130℃で2時間乾燥し、ろ過前後のろ過器の重量の増分より、フィルターに残留したOCP不溶物(ゲル)の重量を算出し、OCP不溶物のポリエステル重量(0.5g)に対する重量分率を求め、ゲル化率(重量%)とした。得られたポリエステルのゲル化率は、8.0%以下が好ましく、6.0%以下がさらに好ましい。8.0%を超える場合はフィルム欠点の点から不合格とした。
(5)ポリエステル樹脂組成物の1価の金属元素の含有量
K、Na、Liの含有量については、原子吸光分析法(日立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度計180−80。フレーム:アセチレン−空気)用いて測定した。
(6)ポリエステル樹脂組成物のリン元素および2価金属元素、アンチモン元素の含有量
P、Mn、Mg、CaおよびSbの含有量についてはポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の試料ペレットを溶融プレス機で円柱状に成型し、理学電機(株)製蛍光X線分析装置(型番:3270)を用いて、蛍光X線強度を求め、あらかじめ作成しておいた検量線より求めた。
(7)環状3量体オリゴマー含有量
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の試料ペレットをo−クロロフェノールに溶解し、内部標準を添加する。さらにメタノールを加えてポリマーを析出させて遠心分離によって上澄みを採取し、液体クロマトグラフを用いて定量した。
(8)固有粘度(IV)
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物0.1gをo−クロロフェノール10mlに160℃、20分で溶解し、25℃での溶液粘度を測定した。
(9)ポリエステルフィルムのリタデーション
王子計測(株)社製の自動複屈折計(KOBRA−21ADH)を用い、低位相差モードで測定した。測定は10回行い、それらの平均値を用いた。○を合格、×を不合格とした。
<判断基準>
○:測定値が100nm未満
×:測定値が100nm以上 。
(10)ポリエステルフィルムの欠点
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を溶融押出により、連続的にフィルムを得る工程にて、7時間経過後から8時間経過後の1時間の間、フィルム表面を観察し、この間表面に7時間経過するまでは見られなかったスジ状の欠点が新たに観察されれば×、観察されなければ○とした。
(11)ポリエステルフィルムの透明性
JIS K 7105(1985年)に基づいて、ヘイズメーター(スガ試験器社製HGM−2GP)を用いてフィルムヘイズの測定を行った。測定は任意の3ヶ所で行い、その平均値を採用した。また、目視にて欠点(ゲル)の観察も合わせて実施した。○、△を合格、×を不合格とした。
<判断基準>
○:フィルムヘイズが2.0%未満
△:フィルムヘイズが2.0%以上3.0%未満
×:フィルムヘイズが3.0%以上 。
(12)ポリエステルフィルムの耐カール性
偏光板であるポリビニルアルコール(PVA)フィルムと本発明の樹脂組成物のフィルムを貼り合わせた後、85℃×24時間の環境下でのカール・波打ち凹凸皺発生状態を目視および顕微鏡で評価した。判断基準は下記に示し、○、△を合格、×を不合格とした。
<判断基準>
○:カール具合が小さく、波打ち凹凸皺の発生がない
△:カール具合が大きく、波打ち凹凸皺の発生がない
×:カール具合が大きく、波打ち凹凸皺が発生 。
実施例1
テレフタル酸30.8重量部とイソフタル酸10.8重量部からなるテレフタル酸とエチレングリコールの反応物であるビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート(以下、BHTという)46.4重量部を予め255℃の溶融状態で貯留させ、さらにテレフタル酸35.1重量部とイソフタル酸11.3重量部とエチレングリコール19.5重量部からなるスラリーを別に設けた混合槽に用意し、反応槽の温度を保ち定量供給しながら、水を留出させ、エステル化反応させた。反応を開始してから4時間40分後にエステル化を終了し、この反応生成物であるBHTを重縮合反応槽に移し、トリエチルホスホノアセテート0.0211重量部添加した。次いで、酢酸マンガン0.014重量部、水酸化カリウム0.0004重量部、三酸化アンチモン0.04重量部を添加して、40分で高真空になるまで減圧するとともに290℃まで加熱、昇温して重縮合反応を行い、目標固有粘度に到達まで実施した。反応終了後、重縮合反応槽底部にある口金より冷水中にストランド状に吐出し、押し出しカッターによって円柱状のペレットとした。得られたポリエステル樹脂組成物Aの品質は、固有粘度が0.7dl/g、イソフタル酸成分が25mol%、マンガン元素含有量30ppm、カリウム元素含有量が3ppm、アンチモン元素含有量が325ppm、リン元素含有量が25ppm、カルボキシル末端基が30eq/ton、環状3量体オリゴマー量が0.5重量%、色調b値が4.5、ヘイズが2.5%、ゲル化率が4.0%であり良好だった。結果を表1に示す。このとき、リン元素含有量が添加量に対して減少しているのは、重縮合反応中に、エチレングリコールとともにリン化合物が系外へ飛散したためである。
また、得られたポリエステル樹脂組成物Aを三層構成の中間層に使用し、表層に別のポリエステル樹脂組成物Bとした。
共重合成分を含まないポリエステルBは、テレフタル酸86重量部、エチレングリコール37重量部のスラリーをスネークポンプにて3時間連続的に供給し、反応系内の温度が255℃、圧力が0.1MPaになるようにコントロールし、エステル化反応を進行させた。反応率が96%に到達した段階でエステル化反応を終了した。
こうして得られた255℃のエステル化反応物114重量部を重縮合反応器に移行し、助触媒として酢酸マンガン4水和物エチレングリコール溶液を酢酸マンガン4水和物として、ポリエステル組成物100重量部に対して0.07重量部、重縮合触媒として二酸化ゲルマニウムを0.02重量部となるように添加した。酢酸マンガン溶液添加後、エステル化反応物の温度は250℃となった。その後、エチレングリコールをポリエステル組成物に対して3重量部追加添加し、モル比を1.36とした。リン酸二水素ナトリウム2水和物のエチレングリコール溶液およびリン酸を、ポリエステル組成物100重量部に対して、リン酸二水素ナトリウム2水和物のエチレングリコール溶液およびリン酸をリン酸二水素ナトリウム2水和物として0.026重量部とリン酸0.022重量部になるように添加した。
その後、重合装置内温度を徐々に280℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。所定の撹拌トルクに到達した段階で反応を終了とし、反応系内を窒素にて常圧にし、冷水にストランド状に吐出、カッティングし、ペレット状のポリエステル組成物を得た。
得られたポリエステル組成物は固有粘度0.54dl/g、リン元素含有量95ppm、ナトリウム元素含有量38ppm、マンガン元素含有量165ppm、カルボキシル末端基20eq/ton、環状3量体オリゴマー量1.10重量%、ペレット中の異物含有量が0個と本発明の範囲内であった。このとき、リン元素含有量が添加量に対して減少しているのは、重縮合反応中に、エチレングリコールとともにリン化合物が系外へ飛散したためである。
得られたペレット状のポリエステル組成物を、150℃、4時間で予備結晶化させた後、230℃で50Pa程度の減圧下、12時間固相重合反応した。
得られたポリエステル組成物Bは固有粘度0.80dl/g、カルボキシル末端基11eq/ton、環状3量体オリゴマー量0.28重量%であった。
上記ポリエステルAを内層、ポリエステルBを3層構成フィルムの表層に使用し、300℃溶融押出にて、厚み20μm(積層比B:A:B=1:6.6:1)のフィルムを作製した。本発明の共重合ポリエステルAを中間層に使用した3層構成フィルムは表1からも明らかなように、リタデーション、欠点、透明性、耐カール性が良好なフィルムであった。
実施例2
イソフタル酸の含有率を表1に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質は色調b値が4.0、ヘイズが2.6%、ゲル化率3.4%であり良好だった。また、フィルムでのリタデーション、耐カール性も良好であった。結果を表1に示す。
実施例3
イソフタル酸の含有量を表1に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質は色調b値が4.8、ヘイズが2.6%、ゲル化率5.8%であり良好だった。また、フィルムでのリタデーションも良好であった。イソフタル酸の混率が多く、強度が低下し、耐カール性が若干悪化したが問題ないレベルであった。結果を表1に示す。
実施例4
マンガン元素の含有量を表1に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質は色調b値が4.9、ヘイズが2.3%、ゲル化率が5.7%であり良好だった。また、フィルムでのリタデーション、耐カール性も良好であった。結果を表1に示す。
実施例5
マンガン元素の含有量を表1に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質は色調b値が5.0、ゲル化率が5.2%であり良好であった。また、マンガン元素がポリマー成分と粒子を形成したため、ヘイズが3.1%と高めであったがフィルムの透明性は問題のないレベルであった。フィルムでのリタデーション、耐カール性は良好であった。結果を表1に示す。
実施例6
マンガン元素の含有量の変更および酢酸マグネシウムと合わせて酢酸マグネシウムを使用し、表1に記載の含有量とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質は、ヘイズが2.4%であり良好であったが、マグネシウム元素に変更することにより耐熱性が低下し、色調b値が5.1、ゲル化率が8.0%と高めであったがフィルムの欠点は問題ないレベルであった。また、フィルムでのリタデーション、耐カール性も良好であった。結果を表1に示す。
実施例7
マンガン元素の含有量の変更および酢酸カルシウムと合わせて酢酸マグネシウムを使用し、表1に記載の含有量とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質は、色調b値が4.8、ゲル化率が5.5%であり良好であったがフィルムの欠点は問題ないレベルであった。また、カルシウム元素がポリマー成分と粒子を形成したため、ヘイズが3.8%と高めであったがフィルムの透明性は問題のないレベルであった。また、フィルムでのリタデーション、耐カール性も良好であった。結果を表1に示す。
実施例8〜11
カリウム元素の含有量を表1に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。実施例8では、得られたポリエステル樹脂組成物の品質は、カリウム量が少なく重合反応時間が若干延びたことにより色調b値が5.1と高めであったが問題ないレベルであった。また、製膜での静電印加性が悪化し、製膜性が若干悪化したが問題ないレベルであった。その他品質は良好であった。実施例9、10では、得られたポリエステル樹脂組成物のいずれの品質も良好であった。実施例11では、得られたポリエステル樹脂組成物の品質は、M/Pが高く、耐熱性が低下したことにより色調b値が5.4、ゲル化率が6.4%と高めであったがフィルムでの欠点および耐カール性は若干悪化したが問題ないレベルであった。その他品質は良好であった。結果を表1に示す。
実施例12
水酸化カリウムの代わりに水酸化ナトリウムを用いて、含有量を表1に記載の含有量とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質は、ナトリウム元素がポリマー成分と粒子を形成したため、ヘイズが3.6%と高めであったがフィルムの透明性は問題のないレベルであった。色調b値は4.7、ゲル化率は5.2%であり良好だった。また、フィルムでのリタデーション、耐カール性も良好であった。結果を表1に示す。
実施例13
水酸化カリウムの代わりに酢酸リチウムを用いて、含有量を表1に記載の含有量とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質は、リチウム元素によりゲル化率が6.1%と高めであったがフィルムの欠点は問題のないレベルであった。色調b値は4.8、ヘイズは3.0%であり良好だった。また、フィルムでのリタデーション、耐カール性も良好であった。結果を表1に示す。
実施例14
リン元素の含有量を表1に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質は、M/Pが低く、重合反応時間が若干延びたことにより色調b値が5.2と高めであったが問題ないレベルであった。また、製膜での静電印加性が悪化し、製膜性が若干悪化したが問題ないレベルであった。その他品質は良好であった。結果を表1に示す。
実施例15
リン元素の含有量を表1に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質は、M/Pが高く、耐熱性が低下したことにより色調b値が5.4、ゲル化率が6.6%と高めであったがフィルムでの欠点および耐カール性は若干悪化したが問題ないレベルであった。その他品質は良好であった。結果を表1に示す。
実施例16〜19
アンチモン元素の含有量を表1に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。実施例16では、得られたポリエステル樹脂組成物の品質は、アンチモン量が少なく重合反応時間が若干延びたことにより色調b値が5.5と高めであったが問題ないレベルであった。その他品質は良好であった。実施例17、18では、得られたポリエステル樹脂組成物のいずれの品質も良好であった。実施例19では、得られたポリエステル樹脂組成物の品質は、アンチモン量が高く、アンチモン金属析出によりヘイズが3.5%と高めであったがフィルムの透明性は問題ないレベルであった。また、耐熱性低下によりゲル化率が6.1%と高めであったがフィルムの欠点は問題ないレベルであり、また、フィルムでの耐カール性が若干悪化したが問題ないレベルであった。その他品質は良好であった。結果を表1に示す。
比較例1
イソフタル酸の含有率を表1に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質はゲル化率が9.5%であり不良であった。また、フィルムでの欠点および耐カール性が不良であった。結果を表1に示す。
比較例2
イソフタル酸の含有率を表1に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質は良好であったが、フィルムでのリタデーションが不良であった。結果を表1に示す。
比較例3
マンガン元素の含有量を表1に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質はゲル化率が8.8%であり不良であり、フィルムでの欠点が不良であった。また、M/Pが0.6未満であり、フィルムの製膜性が不良であった。結果を表1に示す。
比較例4
マンガン元素の含有量を表1に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質はゲル化率が9.8%であり不良であった。また、フィルムでの欠点が不良であった。結果を表1に示す。
比較例5
カリウム元素の含有量を表1に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質は、M/Pが1.5を超えており、ゲル化率が10.2%であり不良であった。また、フィルムでの欠点および耐カール性が不良であった。結果を表1に示す。
比較例6
リン元素の含有量を表1に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質は、M/Pが1.5を超えており、ゲル化率が10.4%であり不良であった。また、フィルムでの欠点および耐カール性が不良であった。結果を表1に示す。
比較例7
マンガン元素を含まず、マグネシウム元素の含有量を表1に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質は、マンガン元素を含まず、耐熱性も悪化したことにより、ゲル化率が22.5%であり不良であった。また、フィルムでの欠点および耐カール性が不良であった。結果を表1に示す。
比較例8
マンガン元素を含まず、カルシウム元素の含有量を表1に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂組成物の品質は、マンガン元素を含まなかったことにより、ゲル化率が18.7%であり、また、カルシウム元素がポリマー成分と粒子を形成したため、ヘイズが5.2%であり不良であった。また、フィルムでの欠点および透明性が不良であった。結果を表1に示す。結果を表1に示す。
Figure 0006638462

Claims (3)

  1. テレフタル酸又はこれを主体とするジカルボン酸成分とエチレングリコール又はこれを主体とするジオール成分とからなるポリエステルであって、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を10〜40mol%、マンガン元素を15〜45ppm含有し、ポリエステル中に含有する金属元素とリン元素のモル比(M/P)が下記式を満足し、かつゲル化率が8%以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
    0.60 ≦(M1+M2/2)/P≦ 1.50
    (M1:Mg,Mn,Caから選ばれる2価の金属元素含有量、
    M2:Li,Na,Kから選ばれる1価の金属元素含有量、
    P:リン元素含有量
    式中において、MおよびPはポリエステル10g当たりの総モル数を示す。)
  2. 1価の金属元素がカリウムであることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
  3. アンチモン金属元素含有量が400ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物。
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