JP6939970B2 - ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に関するものである。さらに詳しくは、環状三量体の含有量及び溶融時の環状三量体の再生量が少なく、色調が良好で、透明性(ヘイズ)に優れ、フィルム成形に適した固有粘度、カルボキシル末端基量を有するポリエチレンテレフタレート樹脂組成に関するものである。
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、機械的性質及び化学的性質が共に優れているため、工業的価値が高く、繊維、フィルム、シート及び中空成形体などに広く使用されている。
特にポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を用いたフィルムは、その透明性や寸法安定性などに優れた性質を有することから、テレビや携帯電話に使用される液晶ディスプレイのディスプレイデバイス、光学部材の保護及び磁気記録媒体の部材などのIT関連用途に広く利用されている。
しかしながら、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物中には環状三量体を主成分とする低分子量体が含まれている。該環状三量体は、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の重縮合反応時の平衡反応で生成し、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の成形工程や加工工程での加熱により製品の表面に析出して光学的な濁りや輝点、粗大突起などを発生させ、製品の品位低下の要因となることが知られている。
例えば、特許文献1、2には、不活性ガス雰囲気下又は減圧下にてポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を融点以下の温度で固相重合する方法が提案されている。しかし、この方法は環状三量体の低減はできるものの、同時にポリエステル樹脂組成物の重縮合反応も進行し、固有粘度の上昇も大きくなるため、成形する際に溶融時のポリマーの粘度が大きくなることで、押し出し時の負荷が大きくなり、そのためにせん断発熱によりポリマー温度が上昇し、環状三量体の再生を生じる問題があった。また、この方法はポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のカルボキシル末端基量が低下するため、フィルム成形工程での縦延伸時にフィルムとロールとの密着性が低下して滑りやすくなり、フィルム表面にスリ傷が発生する問題があった。
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の固有粘度が上昇する問題およびカルボキシル末端基量が低下する問題を解決するため、特許文献3には、固相重合後のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を湿熱処理する方法が提案されている。しかし、この方法はポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の固有粘度の上昇及びカルボキシル末端基の低下をさせずに環状三量体の低減はできるものの、色調悪化を生じるという問題があった。
特開平3−47830号公報 特開平2−296860号公報 特開2008−169328号公報
本発明の目的は、これら従来の課題を解決し、環状三量体の含有量及び溶融時の環状三量体の再生量が少なく、色調が良好で、透明性(ヘイズ)に優れ、フィルム成形に適した固有粘度、カルボキシル末端基量を有するポリエチレンテレフタレート樹脂組成を提供することにある。
上記課題は、環状三量体の含有量が0.50wt%以下、固有粘度が0.60〜0.70、カルボキシル末端基量が18〜40eq/t、アンチモン元素の含有量が40〜80ppm、カリウム元素を含み、かつポリエチレンテレフタレート樹脂中に含有するアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素とリン元素とのモル比(M/P)が2.0〜5.4であり、色差計における色調b値が4.0以下であることを特徴とするポリエチレンテレフタレート樹脂組成物により達成される。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、環状三量体の含有量及び溶融時の環状三量体の再生量が少なく、色調が良好で、透明性(ヘイズ)に優れ、フィルム成形に適した固有粘度、カルボキシル末端基量を有するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することを可能にするものである。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の構成成分としては、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸又はこれを主体とした酸成分、ジオール成分としてエチレングリコール又はこれを主体としたグリコール成分が挙げられる。
また、本発明におけるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、カルボン酸成分の20モル%以下であれば、テレフタル酸及びこれを主体とする酸成分以外のジカルボン酸の1種又は2種以上を共重合成分として含むことができ、また同様にグリコール成分の20モル%以下であれば、エチレングリコール又はこれを主体とするグリコール成分以外のグリコール成分を1種又は2種以上を共重合成分として含むことができる。さらに熱可塑性を損なわない程度であれば三官能以上の多官能性化合物を共重合成分として含んでいても良い。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、環状三量体の含有量が0.50wt%以下であり、さらには0.45wt%以下が好ましい。環状三量体の含有量が0.50wt%以下であると、フィルム成形時やフィルム加工工程で環状三量体がフィルムの表面に析出しにくくなる。環状三量体の含有量の下限については特に限定されるものではないが、本発明においては0.10wt%以上である。0.10wt%未満の場合は、環状三量体を減少させる固相重合にかかる時間が長時間となることで、固有粘度の上昇が大きくなり、溶融押し出し時の負荷が大きくなる傾向がある。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、固有粘度が0.60〜0.70の範囲にあり、さらには0.63〜0.67の範囲が好ましい。0.60以上であると、フィルム成形時の機械特性が良好になる。また、0.70以下であると、溶融押し出し時のせん断発熱で温度が上昇することを軽減でき、溶融時の環状三量体の再生を抑制するのに好ましく、またポリマーの熱劣化によるフィルム成形時の機械特性の悪化を防止するのに好ましい。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、カルボキシル末端基量が18〜40eq/tの範囲にあり、さらには20〜34eq/tの範囲が好ましい。カルボキシル末端基量が18eq/t以上であると、フィルム成形時のロールとフィルムとの密着性が上がり、フィルム表面のスリ傷を抑制するのに好ましく、40eq/t以下であると、ポリマーの劣化によるフィルム成形時の機械特性の悪化を防止するのに好ましい。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、アンチモン元素の含有量が40〜80ppmの範囲にあり、さらには55〜65ppmの範囲が好ましい。アンチモン元素の含有量が40ppm以上であると、環状三量体の低減を円滑に進めることができ、80ppm以下であると、溶融時の環状三量体の再生を抑制し、色調及び透明性(ヘイズ)も良好となり好ましい。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、カリウム元素を含み、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン化合物を、M/Pが2.0〜5.4の範囲に含有する必要がある。(但し、式中において、Mは、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、Pはリン元素のポリエステル10g当たりの総モル数を示す。)
M/Pについては、さらには2.5〜4.5の範囲にすることが好ましい。M/Pが2.0以上であると、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の溶融時の体積比抵抗が低くなり、フィルム成形時に静電印加キャスト法を好適に用いることができ、5.4以下であると、溶融時の環状三量体の再生を抑制するのに好ましい。
上記の金属化合物中、例えばアルカリ金属化合物の価数は1価であり、アルカリ土類金属化合物は2価の金属化合物である。本発明におけるMは2価の金属化合物を基準としてM/Pで示されるモル比を規定するものであるため、価数が異なる金属化合物を用いる場合には、その価数を考慮して計算される。従って、例えばアルカリ金属化合物を使用した場合には、アルカリ金属化合物のモル数に0.5を乗じた値をMとしてM/Pが計算される。また、リン化合物については、2価で計算する。
カリウム元素は溶融重縮合時に析出粒子を形成しにくく、電気陽性が大きいことから、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の体積比抵抗が低くなり、フィルム成形時の静電印加性が向上し、また得られるポリマーの透明性(ヘイズ)も良好となるため好ましい。カリウム元素の含有量の上下限については特に限定されるものではないが、溶融時の環状三量体の再生抑制性能と色調との観点から2〜100ppmの範囲が好ましい。
また、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、カリウム以外のリチウム、ナトリウムのカルボン酸塩やヨウ化物、水酸化物などのアルカリ金属化合物を含むことができる。
アルカリ土類金属化合物としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムのカルボン酸塩やヨウ化物、酸化物、塩化物などが挙げられるが、これらの中でも溶融重合時に析出粒子を生成しにくく、得られるポリマーの透明性(ヘイズ)が良好となることからマグネシウム化合物が好ましく用いられる。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、300℃で溶融した時の環状三量体の再生速度が0.010wt%/分以下であることが好ましく、さらには0.007wt%以下であることが好ましい。0.010wt%以下であると、フィルム成形時やフィルム加工工程での環状三量体の析出を抑制でき好ましい。環状三量体の再生速度の下限については特に限定されるものではないが、本発明においては0.002wt%以上である。0.002wt%未満の場合は、アンチモン元素の含有量を極端に少なくする必要があり、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の溶融重合や固相重合が円滑に進まず、生産性の低下を招く傾向がある。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、色差計で測定した色調のb値が4.0以下であることが好ましく、さらには3.5以下が好ましい。4.0以下であると、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の熱履歴が少ないことから、溶融時に熱劣化物起因による環状三量体の再生を抑制できるので好ましい。
以下に、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法の具体例について述べる。 例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、テレフタル酸とエチレングリコールとを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスにより製造することができる。または、ジメチルテレフタレートとエチレングリコールとを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、さらにその後の重合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスにより製造することができる。本発明においては、いずれの方法も採用することができる。さらに必要に応じて耐熱安定剤、静電剤、消泡剤、酸化防止剤などを反応前、反応中に添加することができる。
アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、脂肪族カルボン酸のアンチモン塩などが挙げられるが、これらの中でも重縮合反応性、得られるポリマーの色調、および安価に入手できる点から三酸化アンチモンが好ましく用いられる。
アンチモン化合物の添加方法としては、粉体又はエチレングリコールスラリー、エチレングリコール溶液などが挙げられるが、アンチモンの凝集による粗大化を防止でき、その結果透明性(ヘイズ)が良好となることから、エチレングリコール溶液として添加する方法が好ましい。
またリン元素化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸もしくはこれらのエステル化合物などが挙げられるが、特にリン酸、リン酸エチルエステルが好ましく用いられる。
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の固有粘度は、溶融重合の終点をポリマーの攪拌トルクで判定することができ、目的とする固有粘度となるように溶融重合装置の終点判定トルクを設定すればよい。
その後、得られた溶融ポリエチレンテレフタレートは口金よりストランド状に吐出、冷却し、カッターによってペレット化する方法により液相ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を製造できる。
得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、固相重合を施す前に予備結晶化することが好ましい。予備結晶化はポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に機械的衝撃を与えせん断処理を施す方法や熱風流通下で加熱処理を施す方法などを採用することができる。
予備結晶化を終了したポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は引き続いて固相重合を施す。ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を固相重合装置に仕込み、不活性ガスを流通させ、所定の温度で固相重合を施す。固相重合が終了したポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は冷却して装置内から取り出す。
固相重合を施すポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の固有粘度は0.40〜0.52の範囲にあることが好ましく、さらには0.45〜0.50の範囲にあることが好ましい。0.40以上であると、所定の温度または時間で環状三量体量が減少するので、生産性が良好となり好ましい。0.52以下であると、短時間で結晶化が進み、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の固有粘度が上昇するまでに、環状三量体が減少するので好ましく、また熱履歴が少ないため、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の着色を抑制するので好ましい。
不活性ガスとしては、例えばヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスや窒素ガス、炭酸ガス等を上げることができる。これらの中でも窒素が入手しやすく好ましい。また、不活性ガスの露点は、−5℃以上であることが好ましい。不活性ガスの露点が−5℃以上であると、固相重合時のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のカルボキシル末端基の低下を抑えることができ好ましい。不活性ガスの露点の上限については特に限定されるものではないが、固相重合を円滑に進めるのに20℃以下が好ましい。
固相重合を施す温度は、200〜220℃の範囲であることが好ましく、さらには205〜215℃の範囲であることが好ましい。200℃以上であると、環状三量体の減少が円滑に進むため好ましい。220℃以下であると、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の熱劣化による着色を抑制するのに好ましい。
本発明に用いる固相重合装置の型式は特に限定されるものではないが、例えば、静置式乾燥機、流動式乾燥機、攪拌翼を有する乾燥機、連続式タワー乾燥機などを用いることができ、生産性の観点から連続式タワー乾燥機が好ましい。
なお、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、以下の方法でポリエステルフィルムに成形することができる。
例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を真空乾燥した後、押し出し機に供給し、260〜300℃で溶解し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10〜60℃の鏡面キャステキングドラムに巻き付けて、冷却固化させて未延伸ポリエステルフィルムを作製する。
該未延伸フィルムを70〜120℃に加熱されたロール間で縦方向に2.5〜5倍延伸する。このフィルムの少なくとも片面にコロナ放電処理を施して塗液などを塗布してもよい。引き続き、連続的に70〜150℃の加熱された熱風ゾーンで幅方向に2.5〜5倍延伸し、続いて200〜240℃の熱処理ゾーンに導き、5〜40秒間の熱処理を施し、100〜200℃の冷却ゾーンを経て結晶配向を完了させる。また、上記熱処理中に必要に応じて幅方向あるいは長手方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。
本発明で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、環状三量体の含有量及び溶融時の環状三量体の再生量が少なく、色調が良好で、透明性(ヘイズ)に優れ、フィルム成形に適した固有粘度、カルボキシル末端基量を有することから、液晶ディスプレイのディスプレイデバイスや磁気記録材料などのIT関連用途のフィルムに好適に使用できる。
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、物性の測定方法、効果の評価方法は以下の方法で行った。
(1)環状三量体含有量
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の試料ペレットをo−クロロフェノールに溶解し、内部標準を添加する。さらにメタノールを加えてポリマーを析出させて遠心分離によって上澄みを採取し、液体クロマトグラフを用いて定量した。
(2)固有粘度
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の試料ペレットをo−クロロフェノールに加熱溶解した後、ウベローデ型粘度計を用いて25℃で測定した。
(3)カルボキシル末端基量
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の試料ペレットをo−クレゾールに加熱溶解した後、アルカリで電位差測定して求めた。
(4)金属元素の含有量
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の試料ペレットを溶融プレス機で円柱状に成型し、蛍光X線元素分析装置を用いて測定した。
(5)環状三量体の再生速度
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の試料ペレットを175℃で7.5時間真空乾燥した後、窒素雰囲気下300℃で30分間加熱溶解し、次いで常温まで戻し固化させて試料を採取する。加熱溶解処理前の試料の環状三量体含有量(A)および加熱溶解処理後の試料の環状三量体含有量(B)を定量し、次式から環状三量体の再生速度(C)を算出した。
C(wt%/分)=(B−A)/30 。
(6)色調b値
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の試料ペレットを円柱状の粉体測定用セルに充填し、色差計を用いて、反射法にて測定した。
(7)透明性(ヘイズ)
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の試料ペレットをフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(60:40wt%)の混合溶媒に加熱溶解した後、ガラスセルに移し、ヘイズメーターを用いて測定した。得られた透明性(ヘイズ)は、0.4%未満のものを良好、0.4%以上1.0%未満のものを合格とし、1.0%以上のものを不合格とした。
(8)環状三量体の析出性
フィルムを5cm×5cmの大きさに切り出し、150℃で60分間熱風乾燥機内にて加熱した後、フィルム表面を走査型電子顕微鏡で1,000倍にて観察し、任意に選び撮影したフィルム表面の環状三量体の析出物個数をカウントした。環状三量体の析出性は、5個未満のものを良好(○)、5個以上10個未満のものを合格(△)、10個以上のものを不合格(×)とし、上記の基準で判断した。
(9)フィルムのスリ傷
ハロゲンライトを光源として、フィルムを透過光で観察し、フィルムの傷の目立ち易さを評価した。フィルムのスリ傷は、全く傷が見えないものを良好(○)、殆ど傷が分からないものを合格(△)、傷が光り目立つものを不合格(×)とし、上記の基準で判断した。
[実施例1]
(エステル化反応)
テレフタル酸とエチレングリコールの反応物であるエステル化反応物を予め255℃の溶融状態で貯留させ、さらにテレフタル酸とエチレングリコールとをテレフタル酸に対するエチレングリコールのモル比が1.15になるようにスラリー状にしてエステル化反応槽の温度を保ちながら定量供給し、水を留出させながらエステル化反応を行い、エステル化反応物を得た。得られたエステル化反応物を、重合反応槽に移送した。
(溶融重合反応)
リン酸を含むエチレングリコール溶液と水酸化カリウムを含むエチレングリコール溶液、酢酸マグネシウム4水和物を含むエチレングリコール溶液、三酸化アンチモンを含むエチレングリコール溶液を、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して、カリウム元素として2ppm、かつカリウム元素、マグネシウム元素、リン元素のM/Pが2.8に、アンチモン元素として60ppmとなるように添加し、引き続いて重合反応槽内を除々に減圧にし、30分で0.13kPa以下とし、それと同時に除々に昇温して280℃とし、目標の固有粘度まで重合反応を実施した。その後、窒素ガスによって重縮合反応槽を常圧に戻し、口金より冷水中にストランド状に吐出し、押し出しカッターによって円柱状にペレット化し、表面結晶化装置によって予備結晶化し、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。得られた液相ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の固有粘度は0.50、環状三量体量は1.10wt%、カルボキシル末端基量は40eq/tであった。
(固相重合)
重縮合反応で得られた液相ポリエチレンテエフタレート樹脂組成物を、連続式タワー乾燥機を用いて、露点が5℃の窒素ガス中、215℃の温度で18時間固相重合を行い、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、固有粘度が0.65、環状三量体含有量が0.42wt%、カルボキシル末端基量が24eq/t、アンチモン元素の含有量が60ppm、環状三量体の再生速度が0.007wt%/分、色調b値が3.6、透明性(ヘイズ)が0.3であり、良好であった。
(フィルム成形)
得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を150℃で3時間乾燥し、押し出し機に供給し、285℃で溶融押し出しを行い、静電印加された20℃のキャストドラム上にキャストし未延伸シートを得た。この未延伸シートを90℃に加熱された延伸ロールによって長手方向に3.1倍延伸し、次いでテンター式延伸機によって120℃で幅方向に3.7倍延伸し、その後230℃で熱固定してロールに巻き取った。フィルムの成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性及びスリ傷は良好であった。
[実施例2]
固相重合時間を26時間と変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.3%で、フィルム特性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性及びスリ傷は良好であった。
[実施例3]
固相重合前の固有粘度を0.40、固相重合時間を26時間と変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.3%で、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性及びスリ傷は良好であった。
[実施例4〜6、8、9、参考例7
三酸化アンチモン、水酸化カリウム、酢酸マグネシウム4水和物、リン酸の添加量を変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。
実施例4においては、得られるポリチレンテレフタレート樹脂組成物に対してアンチモン元素が40ppmとなるよう三酸化アンチモンの添加量を変更し、得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.2%で、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性及びスリ傷は良好であった。
実施例5においては、得られるポリチレンテエフタレート樹脂組成物に対してアンチモン元素が80ppmとなるよう三酸化アンチモンの添加量を変更し、得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.5%で、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性は良好であった。
実施例6においては、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対してカリウム元素として100ppm、かつM/Pが2.8となるよう水酸化カリウム、酢酸マグネシウム4水和物、リン酸の添加量を変更し、得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.3%で、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性及びスリ傷は良好であった。
参考例7においては、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対してカリウム元素として110ppm、かつM/Pが2.8となるよう水酸化カリウム、酢酸マグネシウム4水和物、リン酸の添加量を変更し、得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.4%で、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性及びスリ傷は良好であった。
実施例8においては、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のM/Pが2.0となるよう酢酸マグネシウム4水和物、リン酸の添加量を変更し、得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.2%で、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性は良好であった。
実施例9においては、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のM/Pが5.4となるよう酢酸マグネシウム4水和物、リン酸の添加量を変更し、得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.7%で、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性は良好であった。
[実施例10、参考例11
窒素ガスの露点、固相重合時間を変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。
実施例10においては、窒素ガスの露点を−5℃、固相重合時間を15時間に変更したことにより、カルボキシル末端基量が18eq/tとなったため、得られたフィルムのスリ傷は増加したが、使用できる範囲のものであった。
参考例11においては、窒素ガスの露点を15℃、固相重合時間を30時間に変更し、得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.3%で、得られたフィルムの環状三量体の析出性及びスリ傷は良好であった。
[実施例12〜14]
固相重合前の固有粘度、固相重合温度、固相重合時間を変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。
実施例12においては、固相重合前の固有粘度を0.52、固相重合時間を17時間と変更し、得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.3%で、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性及びスリ傷は良好であった。
実施例13においては、固有粘度を0.45.固相重合温度を220℃、固相重合時間を15時間と変更し、得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.3%で、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性及びスリ傷は良好であった。
実施例14においては、固相重合温度を200℃、固相重合時間を36時間に変更したことにより、環状三量体含有量が0.50wt%となったため、得られたフィルムの環状三量体の析出性は増加したが、使用できる範囲のものであった。
[比較例1]
固相重合を実施しない以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。結果を表1に示す。得られたフィルムの環状三量体の析出性は不良であった。
[比較例2]
固相重合温度を195℃、固相重合時間を23時間と変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。固相重合後の固有粘度が0.55と低いため、フィルム成形時、押し出しシートの幅が一定せず、また押し出しシートが非常にもろいため延伸することができなかった。
[比較例3]
固相重合温度を220℃、固相重合時間を25時間と変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。固相重合後の固有粘度が0.75と高いため、押し出し機でのせん断発熱による溶融ポリマーの劣化が進み、フィルム成形時に破れが頻発し、延伸することができなかった。
[比較例4]
固相重合温度を210℃、固相重合時間を15時間と変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。環状三量体含有量が0.55wt%と高いため、得られたフィルムの環状三量体の析出性は不良であった。
[比較例5]
窒素ガスの露点を15℃、固相重合時間を30時間と変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表2に示す。カルボキシル末端基量が50eq/tと高いため、押し出し機での熱加水分解による溶融ポリマーの劣化が進み、フィルム成形時に破れが頻発し、延伸することができなかった。
[比較例6]
三酸化アンチモンの添加量を得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対してゲルマニウム元素として100ppmに変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。環状三量体の再生速度が0.015wt%/分と増加したため、得られたフィルムの環状三量体の析出性は不良であった。
[比較例7]
水酸化カリウム、酢酸マグネシウム4水和物、リン酸の添加量をM/Pが1.5となるように変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。M/Pが低いため、静電印加キャスト性が悪く印加ムラが多数発生し、製品フィルムを得ることができなかった。
[比較例8]
酢酸マグネシウム4水和物、リン酸の添加量をM/Pが6.0となるように変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。M/Pが高いため、環状三量体の再生速度が0.013wt%/分と増加し、また得られたフィルムの環状三量体の析出性は不良であった。
[比較例9]
窒素ガスの露点を−50℃と変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。カルボキシル末端基量が16eq/tと低いため、得られたフィルムのスリ傷は不良であった。
[比較例10]
水酸化カリウムを添加せず三酸化アンチモンをアンチモン元素として65ppmとなるように添加する以外は、実施例1と同様の方法で溶融重合反応を行い、固有粘度が0.64の液相ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を得、次いで攪拌翼を有する乾燥機に仕込み、窒素ガス中で225℃の温度で10時間固相重合を行い、さらに固相重合後のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を225℃で湿熱処理を行い、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。結果を表1に示す。色調(b値)が5.0に増加し、環状三量体の再生速度が0.016wt%/分と増加したため、得られたフィルムの環状三量体の析出性は不良であった。
Figure 0006939970

Claims (2)

  1. 環状三量体の含有量が0.50wt%以下、固有粘度が0.60〜0.70、カルボキシル末端基量が18〜40eq/t、アンチモン元素の含有量が40〜80ppm、カリウム元素を含み、かつポリエチレンテレフタレート樹脂中に含有するアルカリ金属、アルカリ土類金属とリン元素とのモル比(M/P)が2.0〜5.4であり、色差計における色調b値が4.0以下であることを特徴とするポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
  2. 300℃で溶融した時の環状三量体の再生速度が0.010wt%/分以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
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