JP2020007504A - ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物及びそれからなるフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】微小異物及び溶融時のゲル化物が少なく、良好な静電印加性を有するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物及びそれからなるポリエステルフィルムの提供。【解決手段】アンチモン元素の含有量が60〜90ppm、リン元素の含有量が4〜10ppm、マンガン元素の含有量が30〜60ppm、金属元素とリン元素とのモル比(M/P)が2.7〜6.2、溶融比抵抗が1.0×107Ω・cm以下、溶液ヘイズが1.0%以下、ゲル化率が2〜12%、かつ濾過性評価において初期圧力と最終圧力との差が0.4MPa以下であるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。及びそれからなるポリエステルフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物及びそれからなるフィルムに関するものである。
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、機械的性質及び化学的性質が共に優れているため、工業的価値が高く、繊維、フィルム、シート及び中空成形体などに広く使用されている。
特にポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を用いたフィルムは、その機械的特性、熱的特性、耐薬品性、電気的特性などに優れた性質を有することから、磁気記録媒体用、コンデンサー用、光学用、一般工業用などの産業用途に広く利用されている。
一般にポリエステルフィルムは、押出機によりポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押出した後、縦、横方向に2軸延伸して得られるが、成形加工時には260〜300℃というポリエチレンテレフタレート樹脂の融点以上の温度で溶融して押出成形するため、ポリエチレンテレフタレート樹脂の熱分解や、酸素が混入した場合には酸化分解によってゲル状の異物が発生してしまい、成形したフィルムに欠点を生じさせる。
また、ポリエチレンテレフタレート樹脂をフィルム化する際には、未固化のシート状物の上面に高電圧を印加し、シート状物を回転冷却ドラムに密着させる静電印加キャスト法が多く採用されているが、静電印加キャスト法において製膜速度を高めるために回転冷却ドラムの速度を速くしていくと、シート状物と回転冷却ドラムとの密着力が低下しフィルムの厚み均一性や透明性の低下、印加ムラによるフィルム表面の欠点を生じさせる。
特に、近年では偏光板離型用や磁気記録媒体用、又はドライフィルムレジスト用のフィルムなどでは高度の表面平滑性や薄膜化が求められ、フィルム中の欠点を極度に低減する必要があり、前記したゲル状の異物や静電印加性の不良はこのようなフィルム表面の欠点の形成や透明性を悪化させるため好ましくない。
例えば、特許文献1には、溶融押出時に発生するゲル状の異物を抑制する方法として、ポリエステル中に含有されるアルカリ金属、アルカリ土類金属元素、リン元素とのモル比(M/P)を調節する方法が提案されている。しかし、長時間でのゲル化率の低減には不十分であった。
特許文献2、3には酢酸マンガンを使用したポリエステル及びポリエステルフィルムについて提案されている。しかし、この方法は長時間でのゲル化率は改良できるものの、静電印加性が不十分であり、金属化合物由来の異物の発生により、フィルム表面の欠点や透明性を悪化させる問題があった。
特開2003−96280号公報 特開平11−21337号公報 国際公開第2017/073385号
本発明の目的は、これら従来の課題を解決し、微小異物及び溶融時のゲル化物が少なく、良好な静電印加性を有するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物及びそれからなるポリエステルフィルムを提供することである。
上記課題は、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の重量に対するアンチモンの含有量が60〜90ppm、リンの含有量が4〜10ppm、マンガンの含有量が30〜60ppm、金属とリンとのモル比(M/P)が2.7〜6.2、溶融比抵抗が1.0×10Ω・cm以下、溶液ヘイズが1.0%以下、ゲル化率が2〜12%、かつ濾過性評価において初期圧力と最終圧力との差が0.4MPa以下であることを特徴とするポリエチレンテレフタレート樹脂組成物及びそれからなるフィルムにより達成される。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、微小異物及び溶融時のゲル化物が少なく、良好な静電印加性を有する。本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物らなるポリエステルフィルムはフィルム中の欠点が少なく、偏光板離型用途、磁気記録媒体用途、ドライフィルムレジスト用途に好適である。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の構成成分としては、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸又はこれを主体とした酸成分、ジオール成分としてエチレングリコール又はこれを主体としたグリコール成分が挙げられる。
また、本発明におけるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、カルボン酸成分の20モル%以下であれば、テレフタル酸及びこれを主体とする酸成分以外のジカルボン酸の1種又は2種以上を共重合成分として含むことができ、また同様にグリコール成分の20モル%以下であれば、エチレングリコール又はこれを主体とするグリコール成分以外のグリコール成分を1種又は2種以上を共重合成分として含むことができる。さらに熱可塑性を損なわない程度であれば三官能以上の多官能性化合物を共重合成分として含んでいても良い。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、アンチモンの含有量がポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の重量に対して60〜90ppmである必要があり、好ましくは67〜83ppmである。アンチモンの含有量が60ppm以上であると、ゲル化率の増加を抑制し、90ppm以下であると、濾過性の増加を抑制し、また得られるポリマーの透明性(溶液ヘイズ)も良好となる。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、リンの含有量がポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の重量に対して4〜10ppmである必要があり、好ましくは6〜8ppmである。リンの含有量が4ppm以上であると、フィルム成形時の静電印加性が向上し、10ppm以下であると、内部粒子を形成することによるポリマーの透明性(溶液ヘイズ)及び濾過性の増加を防止するのに好ましい。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、マンガンの含有量がポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の重量に対して30〜60ppmである必要があり、好ましくは37〜53ppmである。30ppm以上であると、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の体積抵抗が低くなり、フィルム成形時の静電印加性が向上し、60ppm以下であるとゲル化率の増加を抑制し、また得られるポリマーの透明性(溶液ヘイズ)も良好となる。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、金属とリンとのモル比(M/P)を2.8〜6.2にする必要があり、好ましくは3.2〜5.8である。(但し、式中においてMは、マンガン、マグネシウム、カリウム、リチウム、Pはリンのポリエステル10g当たりの総モル数を示す。)M/Pが2.8以上であると、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の溶融時の体積比抵抗が低くなり、フィルム成形時に静電印加キャスト法に好適に用いることができ、6.2以下であると再溶融時の熱分解物やゲル化率の増加を抑制できる。
上記の金属(マンガン、マグネシウム、カリウム、リチウム)中、例えばアルカリ金属の価数は1価であり、アルカリ土類金属は2価の金属である。本発明におけるMは2価の金属を基準としてM/Pで示されるモル比を規定するものであるため、価数が異なる金属を用いる場合には、その価数を考慮して計算される。例えばアルカリ金属を使用した場合には、アルカリ金属のモル数に0.5を乗じた値をMとしてM/Pが計算される。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、溶融比抵抗が1.0×10Ω・cm以下であり、好ましくは0.9×10Ω・cm以下である。溶融比抵抗が1.0×10Ω・cm以下であると、静電印加キャスト法において回転冷却ドラムとの密着性が上がり、円滑にフィルム成形を進めることができ、得られるフィルムの厚さ均一性や透明性が向上する。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、溶液ヘイズが1.0%以下であり、好ましくは0.7%以下である。1.0%以下であるとフィルムとした際の透明性が良好となり、偏光板離型用途、磁気記録媒体用途、ドライフィルムレジスト用途に好適なフィルムを得ることが可能となる。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、300℃酸素濃度1%で6時間溶融したときのゲル化率が2〜12%であり、好ましくは4〜10%である。12%以下であるとフィルム表面の欠点の増加を抑制できる。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、濾過性評価において初期圧力と最終圧力との差が0.4MPa以下であり、好ましくは0.3MPa以下である。0.4MPa以下であると、フィルムの粗大突起の増加を抑制できる。ここで、濾過性評価とは、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を145℃で7.5時間真空乾燥した後、300℃で溶融し、目開き5μmで直径24.5mmの円状の金属フィルターへエクストルーダーを用いて10g/分の速度で供給し、初期圧力(供給開始から30分後の圧力)と360分後との圧力の差を測定する評価である。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、マグネシウム、カルシウム、リチウムの含有量がポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の重量に対して0.1ppm未満であることが好ましい。0.1ppm未満であると、再溶融時のゲル化率及びテレフタル酸発生量の増加を抑制するのに好ましく、また重合反応中に発生するゲル化物を抑制するのに好ましい。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、290℃窒素雰囲気化20分溶融時のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の重量に対するテレフタル酸発生量が60μg/g以下であることが好ましく、さらには50μg/g以下であることが好ましい。60μg/g以下であると、フィルム製造工程における加熱加工時の工程汚れを防止でき、さらにフィルムの粗大突起の増加を抑制するのに好ましい。
以下に、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法の具体例について述べる。
例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、テレフタル酸とエチレングリコールとを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスにより製造することができる。又は、ジメチルテレフタレートとエチレングリコールとを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスにより製造することができる。本発明においては、特に限定されないが、直接エステル化反応で製造するほうがコスト面、反応効率の観点から好ましい。さらに必要に応じて耐熱安定剤、静電剤、消泡剤、酸化防止剤などを反応前、反応中に添加することができる。
ポリエステル樹脂組成物の製造方法としては回分式と連続式が周知の方法として知られており、本発明においては、特に限定されないが、連続式のほうが重合反応中の熱履歴を少なくすることができるため、ゲル化率、微小異物の抑制の観点から好ましい。さらに連続式の設備で製造するに際して、反応槽の数は特に限定されないが、例えば直接エステル化反応で製造する場合は反応効率の点からエステル化反応に1槽以上、重縮合反応に2槽以上用いることが好ましい。
アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、脂肪族カルボン酸のアンチモン塩などが挙げられるが、これらの中でも重縮合反応性、得られるポリマーの色調、及び安価に入手できる点から三酸化アンチモンが好ましく用いられる。
アンチモン化合物の添加方法としては、粉体又はエチレングリコールスラリー、エチレングリコール溶液などが挙げられるが、アンチモンの凝集による粗大化を防止でき、その結果透明性(溶液ヘイズ)や微小異物が良好となることから、エチレングリコール溶液として添加する方法が好ましい。
またリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸もしくはこれらのエステル化合物などが挙げられるが、ゲル化率及び微小異物の観点からリン酸やリン酸エチルエステルが好ましく用いられる。
リン化合物の添加方法としては、特に限定されない。水溶液、エチレングリコール溶液など種々の方法で添加することができる。
またマンガン化合物としては、酢酸塩やプロピオン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、水酸化物などが挙げられる、これらの中でもゲル化率と溶液ヘイズとの観点から酢酸マンガンが好ましく用いられる。
マンガン化合物の添加方法としては、粉体またはエチレングリコールスラリー、エチレングリコール溶液、水溶液などが挙げられるが、溶液ヘイズの観点から水とエチレングリコールとの混合溶液での添加が好ましい。
その後、得られた溶融ポリエチレンテレフタレートは口金よりストランド状に吐出、冷却し、カッターによってペレット化する方法によりポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を製造できる。
得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、乾燥工程前に予備結晶化することが好ましい。予備結晶化はポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に機械的衝撃を与えせん断処理を施す方法や熱風流通下で加熱処理を施す方法などを採用することができる。
なお、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、以下の方法でポリエステルフィルムに成形することができる。
例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を真空乾燥した後、押し出し機に供給し、260〜300℃で溶解し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10〜60℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて、冷却固化させて未延伸ポリエステルフィルムを作製する。
該未延伸フィルムを70〜130℃に加熱されたロール間で縦方向に2.5〜5倍延伸する。このフィルムの少なくとも片面にコロナ放電処理を施して塗液などを塗布してもよい。引き続き、連続的に70〜150℃の加熱された熱風ゾーンで幅方向に2.5〜5倍延伸し、続いて190〜240℃の熱処理ゾーンに導き、5〜40秒間の熱処理を施し、100〜200℃の冷却ゾーンを経て結晶配向を完了させる。また、上記熱処理中に必要に応じて幅方向あるいは長手方向に0.1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
本発明で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、微小異物及び溶融時のゲル化物が少なく、良好な静電印可性を有することから、偏光板離型用途や磁気記録媒体、ドライフィルムレジストなどのIT関連用途のフィルムに好適に使用できる。
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、物性の測定方法、効果の評価方法は以下の方法で行った。
(1)金属の含有量
原子吸光分析法(日立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度計180−80形、フレーム:アセチレン空気)にて定量を行った。
(2)溶融比抵抗
銅版2枚を電極として、間にテフロン(登録商標)のスペーサーを挟んで電極を作成し、この電極を290℃で溶融したポリエチレンテレフタレート樹脂組成物中に沈め、電極間に5,000V(V)の電圧を加えた時の電圧(V’)を測定し、次式から溶融比抵抗(ρ)を算出した。
ρ(Ω・cm)=V・S・R/(I・V’)
(但し、式中において、V:印加電圧(V)、S:電極面積(cm)、R:抵抗体抵抗(Ω)、I:電極間距離(cm)、V’:測定電圧(V)を示す。) 。
(3)溶液ヘイズ
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の試料ペレット3gをフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(60:40wt%)の混合溶媒20mlに100℃で60分攪拌して溶解させ、室温まで冷却後、ガラスセルに移し、ヘーズメーターHGM−2DP(スガ試験機社製)を用いて測定した。
(4)ゲル化率
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を凍結粉砕機にて粉砕し、ステンレスビーカーに0.5g秤量した。真空乾燥機を用いて、50℃で2時間真空乾燥した後、空気と窒素の混合気体で酸素濃度1%とし、試料含有したステンレスビーカーに酸素濃度1%の混合気体を配管より通した後、該ステンレスビーカーを300℃のオイルバスに浸し、酸素濃度1%の空気と窒素の混合気体を0.5L/分の流量で流通下、6時間加熱処理を行った。これを、20mlのオルトクロロフェノール(以下OCP)で、160℃で1時間溶解し、放冷した。この溶液を、ガラスフィルター(柴田科学株式会社製、3GP40)を使用しろ過、ジクロロメタンにてガラスフィルターを洗浄した。ガラスフィルターを130℃で2時間乾燥し、ろ過前後のろ過器の重量の増分より、フィルターに残留したOCP不溶物(ゲル)の重量を算出し、OCP不溶物のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物重量(0.5g)に対する重量分率を求め、ゲル化率とした。
(5)濾過性
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を145℃で7.5時間真空乾燥した後、300℃で溶融し、目開き5μmで直径24.5mmの円状の金属フィルターへエクストルーダーを用いて10g/分の速度で供給し、供給開始から30分後の圧力と360分後との圧力の差を測定した。
(6)静電印加キャスト性
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を290℃で溶融押出したフィルムの上部に設置した電極と回転冷却ドラム間に6kVの直流電圧を印加し、キャスト速度を1m/分ずつ上昇させ、回転冷却ドラム上に連続的に得られた押出未延伸フィルムの表面を目視観察し、フィルム表面に印加ムラが観察されたときのキャスト速度(m/分)が、50m/分以上のものを良好(○)、30m/分以上50m/分未満のものを合格(△)、30m/分未満のものを不合格(×)とし、上記の基準で判断した。
(7)長期押出時のフィルム欠点(欠点)
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を160℃で5時間乾燥後、Tダイ式口金を備えた押出機に供給し、300℃で口金からキャスティングドラムを回転させながらキャスティングドラム状に押出未延伸フィルムを連続的に得る。11時間経過後から12時間経過後の1時間の間、フィルム表面を観察し、スジ状の欠点が観察されなければ合格(○)、観察されれば不合格(×)と判断した。
(8)フィルムの全光線透過率(透明性)
JIS−K7361−1(1997年)に基づき、ヘーズメーターNDH4000(日本電色工業株式会社製)を用いて、延伸後のフィルムを測定した。全光線透過率は、89%以上のものを良好、85〜89%未満のものを合格、85%未満のものを不合格とし、上記の基準で判断した。
(9)粗大突起
10cm四方の大きさのフィルムを測定する面同士を2枚重ね合わせて、印加電圧をかけて静電気力で密着し、フィルム表面の粗大突起により発生する干渉縞から高さを推定する。干渉縞が1重環で0.27μm、2重環で0.54μmであり、0.27μm以上0.54μm未満の粗大突起個数を測定した。粗大突起は、10個未満のものを良好(○)、20個未満のものを合格(△)、20個以上のものを不合格(×)とし、上記の基準で判断した。
[実施例1]
(エステル化反応)
第1エステル化反応槽に、反応槽の気相部からテレフタル酸とエチレングリコールとをテレフタル酸に対するエチレングリコールのモル比が1.15になるようにスラリー状にして連続的に供給し、温度250〜255℃、圧力0.1MPaで水を留出させながらエステル化反応を行い、エステル化反応率90〜95%のエステル化反応物を得た。得られたエステル化反応物を連続して第2エステル化反応槽へ移送した。
第2エステル化反応槽は温度262℃でエステル化反応を行い、また同時に、反応槽の気相部から、水酸化カリウムを含むエチレングリコール溶液とリン酸を含むエチレングリコール溶液を別々に、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して、カリウム元素含有量が5ppm、リン元素含有量が7ppmとなるように連続供給し、エステル化反応率が97%のエステル化反応物を得た。得られたエステル化反応物を連続して第3エステル化反応槽へ移送した。
第3エステル化反応槽は温度270℃、真空度0.009MPaでエステル化反応を行い、エステル化反応率99%のエステル化反応物を得た。また同時に、三酸化アンチモンを含むエチレングリコール溶液と酢酸マンガン4水和物を含むエチレングリコール溶液を、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して、アンチモン元素が75ppm、マンガン元素が45ppmとなるように連続供給した。
(重縮合反応)
第1重縮合反応槽は温度284℃、真空度0.002MPaで反応を行い、第2重縮合反応槽に連続的に移送した。
第2重縮合反応槽は温度291℃、真空度0.0004MPaで重縮合反応を行い、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の固有粘度が0.625相当の溶融粘度に達した時点で、第1重縮合反応槽からの供給口とは反対方向の反応槽下部にある取り出し口からギアポンプで取り出し、口金より冷水中にストランド状に吐出し、押し出しカッターによって円柱状にペレット化し、表面結晶化装置によって予備結晶化し、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の溶融比抵抗は0.80×10Ω・cm、溶液ヘイズは0.5%、ゲル化率は7.0%、溶濾過性は0.20MPa、テレフタル酸発生量は45μg/gであった。
(フィルム成形)
得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を150℃で3時間乾燥し、押し出し機に供給し、285℃で溶融押し出しを行い、静電印加された20℃のキャスティングドラム上にキャストし未延伸シートを得た。この未延伸シートを90℃に加熱された延伸ロールによって長手方向に3.1倍延伸し、次いでテンター式延伸機によって120℃で幅方向に3.7倍延伸し、その後230℃で熱固定し、搬送工程にて冷却させた後、ロールに巻き取り、厚さ38μmのフィルムを得た。フィルム作製時の静電印加キャスト性は良好であり、得られたフィルムの欠点及び透明性、粗大突起は良好であった。
[実施例2〜15]
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のアンチモン元素、リン元素、マンガン元素、カリウム元素の含有量を変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1、表2、表3に示す。
実施例2においては、アンチモン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して67ppmとなるよう三酸化アンチモンの添加量を変更し、得られたフィルムの欠点及び透明性、粗大突起は良好であった。
実施例3においては、アンチモン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して83ppmとなるよう三酸化アンチモンの添加量を変更し、得られたフィルムの欠点及び透明性、粗大突起は良好であった。
実施例4においては、アンチモン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して60ppmとなるよう三酸化アンチモンの添加量を変更したことにより、ゲル化率が増加し、得られたフィルムの粗大突起は悪化したが、使用できる範囲のものであった。
実施例5においては、アンチモン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して90ppmとなるよう三酸化アンチモンの添加量を変更したことにより、溶液ヘイズ及び濾過性が増加し、得られたフィルムの透明性及び粗大突起は悪化したが、使用できる範囲のものであった。
実施例6においては、リン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して6ppmとなるようリン酸の添加量を変更し、得られたフィルムの欠点及び透明性、粗大突起は良好であった。
実施例7においては、リン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して8ppmとなるようリン酸の添加量を変更し、得られたフィルムの欠点及び透明性、粗大突起は良好であった。
実施例8においては、リン元素及びマンガン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して4ppm及び37ppmとなるようリン酸及び酢酸マンガン4水和物の添加量を変更したことにより、ゲル化率が増加し、得られたフィルムの粗大突起は悪化したが、使用できる範囲のものであった。
実施例9においては、リン元素及びマンガン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して10ppm及び53ppmとなるようリン酸及び酢酸マンガン4水和物の添加量を変更したことにより、溶融比抵抗及び溶液ヘイズ、濾過性が増加し、フィルム成形時の静電印加性の低下が見られ、かつ得られたフィルムの透明性及び粗大突起は悪化したが、使用できる範囲のものであった。
実施例10においては、マンガン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して37ppmとなるよう酢酸マンガン4水和物の添加量を変更し、得られたフィルムの欠点及び透明性、粗大突起は良好であった。
実施例11においては、マンガン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して53ppmとなるよう酢酸マンガン4水和物の添加量を変更し、得られたフィルムの欠点及び透明性、粗大突起は良好であった。
実施例12においては、マンガン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して30ppmとなるよう酢酸マンガン4水和物の添加量を変更したことにより、溶融比抵抗が増加し、フィルム成形時の静電印加性の低下が見られたが、得られたフィルムは使用できる範囲のものであった。
実施例13においては、マンガン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して60ppmとなるよう酢酸マンガン4水和物の添加量を変更したことにより、溶液ヘイズ及びゲル化率が増加し、得られたフィルムの透明性は悪化したが、使用できる範囲のものであった。
実施例14においては、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のM/Pが2.7になるようリン酸及び酢酸マンガン4水和物、水酸化カリウムの添加量を変更したことにより、溶融比抵抗が増加し、フィルム成形時の静電印加性の低下が見られたが、得られたフィルムは使用できる範囲のものであった。
実施例15においては、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のM/Pが6.2になるようリン酸及び酢酸マンガン4水和物、水酸化カリウムの添加量を変更したことにより、溶液ヘイズ及びゲル化率、テレフタル酸発生量が増加し、得られたフィルムの透明性、粗大突起は悪化したが、使用できる範囲のものであった。
[実施例16〜18]
第3エステル化反応槽に、酢酸マグネシウム4水和物を含むエチレングリコール溶液と酢酸カルシウム1水和物を含むエチレングリコール溶液、酢酸リチウム2水和物のエチレングリコール溶液を連続供給し、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のマグネシウム元素、カルシウム元素、リチウム元素の含有量を変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1、表2、表3に示す。
実施例16においては、マグネシウム元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して1ppmとなるように酢酸マグネシウム4水和物を添加したことにより、テレフタル酸発生量が増加し、得られたフィルムの粗大突起は増加したが、使用できる範囲のものであった。
実施例17においては、カルシウム元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して1ppmとなるように酢酸カルシウム1水和物を添加したことにより、濾過性が増加し、得られたフィルムの粗大突起は悪化したが、使用できる範囲のものであった。
実施例18においては、リチウム元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して1ppmとなるように酢酸リチウム2水和物を添加したことにより、濾過性が増加し、得られたフィルムの粗大突起は悪化したが、使用できる範囲のものであった。
[比較例1〜10]
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のアンチモン元素、リン元素、マンガン元素、カリウム元素の含有量を変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1、表2、表3に示す。
比較例1においては、アンチモン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して55ppmとなるよう三酸化アンチモンの添加量を変更したことにより、ゲル化率が増加し、得られたフィルムの欠点及び粗大突起は不良であった。
比較例2においては、アンチモン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して95ppmとなるよう三酸化アンチモンの添加量を変更したことにより、濾過性が増加し、得られたフィルムの粗大突起は不良であった。
比較例3においては、リン元素及びマンガン元素、カリウム元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して3ppm及び30ppm、4ppmとなるようリン酸及び酢酸マンガン4水和物、水酸化カリウムの添加量を変更したことにより、ゲル化率及びテレフタル酸発生量が増加し、得られたフィルムの粗大突起は不良であった。
比較例4においては、リン元素及びマンガン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して11ppm及び55ppmとなるようリン酸及び酢酸マンガン4水和物の添加量を変更したことにより、濾過性が増加し、得られたフィルムの粗大突起は不良であった。
比較例5においては、リン元素及びマンガン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して5ppm及び25ppmとなるようリン酸及び酢酸マンガン4水和物の添加量を変更したことにより、ゲル化率が増加し、得られたフィルムの欠点及び粗大突起は不良であった。
比較例6においては、リン元素及びマンガン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して7ppm及び65ppmとなるようリン酸及び酢酸マンガン4水和物の添加量を変更したことにより、溶液ヘイズ及びゲル化率が増加し、得られたフィルムの欠点及び透明性、粗大突起は不良であった。
比較例7においては、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のM/Pが2.4になるようリン酸及び酢酸マンガン4水和物の添加量を変更したことにより、溶融比抵抗が増加し、フィルム成形時の静電印加キャスト性は不良であった。
比較例8においては、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のM/Pが6.5になるようリン酸及び酢酸マンガン4水和物の添加量を変更したことにより、ゲル化率及びテレフタル酸発生量が増加し、得られたフィルムの欠点及び粗大突起は不良であった。
比較例9においては、アンチモン元素及びリン元素、マンガン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して110ppm及び30ppm、45ppmとなるよう三酸化アンチモン及びリン酸、酢酸マンガン4水和物の添加量を変更したことにより、溶融比抵抗及び濾過性が増加し、フィルム成形時の静電印加キャスト性は不良、かつ得られたフィルムの粗大突起は不良であった。
比較例10においては、アンチモン元素及びリン元素、マンガン元素が得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して275ppm及び16ppm、68ppmとなるよう三酸化アンチモン及びリン酸、酢酸マンガン4水和物の添加量を変更したことにより、溶融比抵抗及び溶液ヘイズ、濾過性、テレフタル酸発生量が増加し、フィルム成形時の静電印加キャスト性は不良、かつ得られたフィルムの透明性及び粗大突起は不良であった。
[比較例11]
第3エステル化反応槽に、酢酸マンガン4水和物を連続供給せず、三酸化アンチモンを含むエチレングリコール溶液と酢酸マグネシウム4水和物を含むエチレングリコール溶液、酢酸リチウム2水和物を含むエチレングリコール溶液を、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して、アンチモン元素が61ppm、マグネシウム元素が44ppm、リチウム元素が3ppmとなるように連続供給し、かつポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のリン元素の含有量を変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。ゲル化率が高いため、フィルム欠点の増加が見られ不良であった。
Figure 2020007504
Figure 2020007504
Figure 2020007504

Claims (4)

  1. ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の重量に対するアンチモンの含有量が60〜90ppm、リンの含有量が4〜10ppm、マンガンの含有量が30〜60ppm、金属とリンとのモル比(M/P)が2.7〜6.2、溶融比抵抗が1.0×10Ω・cm以下、溶液ヘイズが1.0%以下、ゲル化率が2〜12%、かつ濾過性評価において初期圧力と最終圧力との差が0.4MPa以下であることを特徴とするポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
  2. ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の重量に対するMg、Ca、Liの含有量の合計が0.1ppm未満であることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
  3. 290℃、20分溶融時のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の重量に対するテレフタル酸発生量が60μg/g以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかのポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を用いてなるフィルム。
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