JP2020084153A - 粉末積層造形法用共重合ポリブチレンテレフタレート - Google Patents

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Abstract

【課題】粉末積層造形装置による3次元造形品の造形時及び/又は再使用時における固有粘度の上昇、及び黄色味の増大を効果的に抑制することができる粉末積層造形法用共重合ポリブチレンテレフタレートを提供する。【解決手段】主成分としてテレフタル酸成分及び1,4−ブタンジオール成分を含み、融点が150〜215℃、末端カルボキシル基量が1〜18当量/トンである粉末積層造形法用共重合ポリブチレンテレフタレート。融点は170〜199℃、末端カルボキシル基量は1〜17当量/トン、特に1〜15当量/トンであることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は粉末積層造形法に用いる共重合ポリブチレンテレフタレート(以下、ポリブチレンテレフタレートをPBTと表記する場合がある)に関する。特に、粉末積層造形装置による3次元造形品の造形時及び/又は再使用時における高重合度化による固有粘度の上昇、及び黄色味の増大を効果的に抑制することができる粉末積層造形法用共重合PBTに関する。
ポリエステルは、その優れた機械的性質と化学的性質から、工業的に重要な位置を占めている。例えば、PBTなどの芳香族ポリエステルは、耐熱性、耐薬品性に優れた樹脂であると共に、成形加工の容易さと経済性から、繊維、フィルム、シート、ボトル、電気電子部品、自動車部品、精密機器部品などの押出用途、射出用途などの分野で広く使用されている。
3次元造形法の一つである粉末積層造形法は、造形部で樹脂などの粉末材料の薄層を加熱手段を用いて加熱・焼結して造形し、それを繰り返して積層体を形成することにより3次元造形品を得る方法である。
加熱手段としては、レーザあるいは赤外線ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプなどが用いられる。
粉末積層造形法は金型を使用する必要がなく、ある程度耐熱性を有するものであれば多様な樹脂粉末を原料として使用することができ、得られる造形品の信頼性も高いことから、近年注目されている技術である。
この技術分野においては、例えば以下のような技術が知られている。
特許文献1には、水分を吸収しにくく、耐熱性の高い造形品を得るに適した共重合PBTとして、共重合成分が3〜30モル%で融点が200〜215℃の共重合PBTが開示されている。この特許文献1には共重合PBTの融点の記載はあるが、末端カルボキシル基量についての記載はない。
特許文献2には、温度制御に対してロバスト性を高め、かつ造形品の耐熱性を向上させるため、融点の異なる二つの樹脂、例えば共重合PBTとホモPBT、を組み合わせて使用する技術が開示されている。この特許文献2にも用いた共重合PBTの融点の記載はあるが、末端カルボキシル基量の記載はない。
PBTなどの結晶性樹脂の粉末を用いて、粉末積層造形法により3次元造形を行う場合、該樹脂粉末を融点近傍の温度に加熱して造形を行う。造形装置の設計にもよるが、造形の際に余剰となって回収した粉末(回収粉末)は、初期に投入した粉末(初期粉末)と混合して造形に再使用される。
造形時の造形エリアの温度に関しては、例えば、特許文献1には樹脂の融点より5〜15℃程度低い温度に設定することや、具体的に融点208℃の樹脂の造形において、造形エリアの温度を190℃とする例が記載されている。この場合、融点より18℃低い温度エリアで造形することとなる。また特許文献2には、例えば融点208℃の樹脂の造形において、造形エリアの温度を190℃、保管エリアの温度を175℃とすることが記載されている。
このように、粉末積層造形法では、樹脂粉末は融点より20℃前後低い温度の造形エリアで熱処理を受ける。
なお、特許文献1,2には造形エリアは窒素などの不活性雰囲気下が好ましい旨記載されている。
また、造形に費やされる時間はその積層数や大きさによって変わり得るが、例えば10〜20時間程度である。
国際公開第2016/121013号 国際公開第2017/179139号
PBTのような結晶性樹脂は、上記の通り融点近傍の温度で保持する熱処理を受けた場合には、固相状態で重合が進むいわゆる固相重縮合が生じる結果、樹脂の固有粘度が高くなってしまう。また、加熱により黄変を起こすなどの好ましくない物性の変化を起こす。このため、初期粉末であっても、造形過程で受ける熱により、得られる造形品に物性の変化、黄変といった問題が起こる可能性がある上に、回収粉末は初期粉末よりも固有粘度が高く、黄色味帯びたものとなる。また、固有粘度が上昇し、黄変を起こした回収粉末を新規粉末と混合して再使用すると、回収粉末の固有粘度は新規粉末の固有粘度より高く、固有粘度差があるため、造形のための溶融時に粘度むらひいては溶融むらが発生し、造形に不具合が生じる。また、熱処理の温度が高くなると、造形品の黄色味が増してしまい、色むらも発生しやすくなる。
本発明は、このような問題を解決するべく、熱処理を受けても固有粘度の上昇が少なく、また黄変の少ないPBT粉末を提供することを課題とする。
即ち、本発明は、粉末積層造形装置による3次元造形品の造形時及び/又は再使用時における高重合度化に起因する固有粘度の上昇、及び黄色味の増大を効果的に抑制することができる粉末積層造形法用共重合PBTを提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、融点及び末端カルボキシル基量が所定の範囲内にある共重合PBTにより、これらの課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
粉末積層造形法に使用される、主成分としてテレフタル酸成分及び1,4−ブタンジオール成分を含む共重合ポリブチレンテレフタレートであって、融点が150〜215℃、末端カルボキシル基量が1〜18当量/トンであることを特徴とする粉末積層造形法用共重合ポリブチレンテレフタレート、
に存する。
本発明はまた、
この粉末積層造形法用共重合ポリブチレンテレフタレートを5〜100質量%含むことを特徴とする粉末積層造形法用ポリブチレンテレフタレート系組成物、
この粉末積層造形法用共重合ポリブチレンテレフタレート又は粉末積層造形法用ポリブチレンテレフタレート系組成物よりなる粉末積層造形法用粉末材料、
この粉末積層造形法用粉末材料を用いて粉末積層造形法により造形品を製造する造形方法、
この粉末積層造形法用粉末材料を用いた造形品、
に存する。
本発明の共重合PBTは、不活性ガス雰囲気下又は空気雰囲気下で融点に近い熱処理を長時間受けても、固有粘度の上昇及び黄色味の増大を抑制することができる。とりわけ、本発明の効果は不活性ガス雰囲気下で熱処理を受ける場合に好ましく発揮される。
このような本発明の共重合PBTを粉末積層造形法に用いて余剰の粉末を回収して再使用する場合にも、これらの好ましくない物性の変化は少なく、回収粉末を初期粉末と混合して用いても安定した造形を行って、高品質の造形品を得ることができる。
以下に本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
[粉末積層造形法用共重合PBT]
本発明の粉末積層造形法用共重合PBT(以下、「本発明の共重合PBT」と称す場合がある。)は、主成分としてテレフタル酸成分及び1,4−ブタンジオール成分を含む共重合PBTであって、融点が150〜215℃、末端カルボキシル基量が1〜18当量/トンであることを特徴とする。
好ましくは、粉末積層造形法による造形に使用されていない(使用履歴のない)共重合PBTである。
<共重合PBTの組成>
本発明の共重合PBTは、ジカルボン酸成分の主成分(65モル%以上)がテレフタル酸成分で、ジオール成分の主成分(65モル%以上)が1,4−ブタンジオールであるポリエステルであって、そのジカルボン酸成分の35モル%以下がテレフタル酸以外の成分及び/又はジオール成分の35モル%以下が1,4−ブタンジオール成分以外の成分である共重合成分を含むPBTである。
即ち、本発明の共重合PBTは、全ジカルボン酸成分に由来する構成単位100モル%のうち65モル%以上がテレフタル酸成分に由来する構成単位で、35モル%以下がテレフタル酸以外のジカルボン酸成分に由来する構成単位であり、全ジオール成分に由来する構成単位100モル%のうちの65モル%以上が1,4−ブタンジオールに由来する構成単位で、35モル%以下が1,4−ブタンジオール以外のジオール成分に由来する構成単位である共重合ポリエステルである。
共重合成分としては、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸など(これらの誘導体であってもよい。)を、ジオール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
これらの共重合成分の中ではイソフタル酸が工業的に入手しやすくポリマー製造も容易に行えることなどから、特に好ましく使用される。これらの共重合成分は同時に複数用いることもできる。
共重合成分としてイソフタル酸成分を含む共重合PBTの場合、全ジカルボン酸成分100モル%中にテレフタル酸成分を65〜95モル%、特に70〜90モル%、最も好ましくは75〜85モル%、イソフタル酸成分を5〜35モル%、特に10〜30モル%、最も好ましくは15〜25モル%含むことが、耐熱性と造形時に適度な結晶性を発現する観点から好ましい。
<共重合PBTの物性>
本発明の共重合PBTの融点は150〜215℃である。融点が150℃未満では、得られる造形品の耐熱性が低く好ましくない。融点は好ましくは、160℃以上、さらに好ましくは170℃以上、最も好ましくは180℃以上である。
一方、融点が215℃以下であるのは以下の理由による。
共重合成分を含まないホモPBT(融点225℃)は不活性ガス雰囲気下でも固相重縮合が進行しやすいが、共重合することによって固相重縮合の進行を遅らせることができる。その程度は融点が215℃以下になる範囲で顕著で、固有粘度の上昇及び黄色味の増大を効果的に抑制することができる。この観点から、本発明の共重合PBTの融点は好ましくは210℃以下、さらに好ましくは199℃以下、特に好ましくは195℃以下、最も好ましくは190℃以下である。
共重合PBTの融点が上記所望の範囲にあると、得られる造形品は優れた耐熱性と強度をも併せ持つという効果も得ることができる。
共重合PBTの融点は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
また、本発明の共重合PBTの末端カルボキシル基量は1〜18当量/トンである。
この末端カルボキシル基量は通常の製造条件で得られる共重合PBTの末端カルボキシル基量より低く、このような末端カルボキシル基量の共重合PBTを製造するには後述の通り、製造条件等に工夫を要するものであるが、本発明者は、共重合PBTの末端カルボキシル基量がこの範囲内にあると、熱処理、特に不活性ガス雰囲気下での熱処理において固有粘度の上昇を効果的に抑制することができることを知見した。かかる効果が発揮される理由は定かではないが、この場合
熱処理による重縮合の進行とジオール成分による解重合とが適度な割合で組み合わされて起こることによるとも考えられる。
本発明における共重合PBTの末端カルボキシル基量は好ましくは1〜17当量/トン、より好ましくは1〜15当量/トンである。末端カルボキシル基量がかかる範囲内にあると、本発明の効果が顕著に発揮される。
また、本発明者は、更に分子量の影響を考慮すると、共重合PBTの総末端基量に対する末端カルボキシル基量の割合が本発明の効果に影響することを知見した。ここで、総末端基量は、ポリマーの末端基数の合計であり、概ね末端カルボキシル基、末端ヒドロキシル基、及び末端ビニル基の合計となる。
本発明の共重合PBTの末端カルボキシル基量は総末端基量に対して、1〜18%、特に1〜17%、とりわけ1〜15%であることが好ましい。総末端基量に対する末端カルボキシル基量の割合がかかる範囲内にあると、本発明の効果がより一層顕著に発揮される。
共重合PBTの末端カルボキシル基量、総末端基量は、後掲の実施例の項に記載の方法で求められる。
また、本発明の共重合PBTのガラス転移温度は30℃以上、49℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が30℃未満であると、得られる造形品が軟化しやすくなるなどの不具合が生じるようになる。本発明の共重合PBTのガラス転移温度は好ましくは32℃以上、さらに好ましくは34℃以上である。一方、ガラス転移温度が49℃を超えると、しばしば造形品に溶融むらが生じてしまう。また、共重合成分によっては、造形品の結晶性が低くなり、耐熱性が劣る傾向にある。本発明の共重合PBTのガラス転移温度の上限は、より好ましくは48℃、さらに好ましくは46℃である。
共重合PBTのガラス転移温度は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
<共重合PBTの製造方法>
本発明の共重合PBTの製造方法は特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、まずテレフタル酸成分及び1,4−ブタンジオールとともに共重合成分を加え、エステル交換反応及び/又はエステル化反応を行って低重合体を得、次いで得られた低重合体の溶融重縮合反応を行いポリマーを得る方法を用いることができる。これらの反応はバッチ式でも連続式でもよい。
テレフタル酸成分としては、テレフタル酸の他、テレフタル酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数は好ましくは1)、ハライド等のテレフタル酸誘導体の1種又は2種以上を用いることができる。共重合成分としてのイソフタル酸成分としても、イソフタル酸の他、イソフタル酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数は好ましくは1)、ハライド等のイソフタル酸誘導体の1種又は2種以上を用いることができる。その他のジカルボン酸成分についても同様である。
低重合体を得る方法の例としては、一段又は多段の反応装置を用いて、触媒を用いて又は用いずに、常圧又は加圧下でエステル交換反応及び/又はエステル化反応を行う方法が挙げられる。
溶融重縮合方法の例としては、一段又は多段の反応装置を用いて、触媒の存在下、減圧下で加温しながら生成する水やアルコールを系外に留出させる方法が挙げられる。この際用いる重縮合触媒としては、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、アルミニウムなどの化合物が挙げられる。
また、上記の触媒の他に、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸およびそれらのエステルや金属塩等の燐化合物;水酸化ナトリウム、安息香酸ナトリウム等のナトリウム化合物、酢酸リチウム等のリチウム化合物、水酸化カリウム、酢酸カリウム等のカリウム化合物等のアルカリ金属化合物;酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物等の反応助剤や、酸化防止剤等の添加剤を使用してもよい。
反応速度を高めるには、例えば減圧度を高める、昇温速度を速める、反応液面の更新速度を上げるなどの条件を採るとよい。
溶融重縮合で得られた共重合PBTは、通常、溶融重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状又はシート状で抜き出した後、水冷しながら又は水冷後、カッターで切断してペレット状又はチップ状などの粒状体(例えば長さ3〜10mm程度)とする。
(重縮合触媒)
本発明の共重合PBTの製造においては、重縮合触媒として特にチタン化合物、例えばテトラブチルチタネートを用いることが望ましい。チタン化合物を用いると、概して触媒活性が高く、触媒に起因する異物の発生も少なく、特に粉末積層造形に適した共重合PBTを製造することができる。チタン化合物は、触媒として、低重合体製造工程と重縮合工程に分けて加えると共重合PBTの製造を特に効果的に行うことができる。添加するチタン化合物の量は、生成する共重合PBTに対して低重合体製造工程でチタン元素換算で10〜40質量ppm、重縮合工程で30〜70質量ppmとして、合計40〜110質量ppmとするのがよい。合計の添加量が40質量ppmを下回るとしばしば重縮合速度が遅くなり、また110質量ppmを超えると、熱処理時の黄色味が強くなる傾向がある。なお、このチタン化合物添加量は少ないほど、熱処理時の黄色味が少なくなる。熱処理の黄色味低減の観点から、好ましいチタン化合物添加量は、チタン元素換算で低重合体製造工程では10〜40質量ppm、重縮合工程では30〜70質量ppm、合計40〜110質量ppmである。
(本発明の共重合PBTを得るための工夫)
融点が150〜215℃、末端カルボキシル基量が1〜18当量/トンで、好ましくは総末端基量に対する末端カルボキシル基量の割合が1〜18%、ガラス転移温度が30〜49℃である本発明の共重合PBTを製造する方法としては、共重合PBTの製造条件を選択することにより溶融重縮合で直接上記物性を満たす共重合PBTを得る方法が挙げられる。その条件はプロセスや装置によって様々であるので一概に定めることはできないが、例えば、比較的小さな規模のPBT製造装置(例えば、1m重合槽)を用いて、触媒量、製造温度や減圧度などの調整を行い、比較的短時間で重縮合を行う方法などが挙げられる。
従来、一般に共集合を含むPBTの重縮合工程の末期は245℃程度の温度、0.13〜0.4kPa程度の圧力で行われている。このような従来の一般的なPBTの製造条件で工業的な規模(例えば4m重合槽)で得られる共重合PBTの末端カルボキシ基量は通常20〜40当量/トン程度であり、本発明の規定範囲を超えるものである。
これに対して、本発明の共重合PBTの製造においては、得られる共重合PBTの融点が従来のPBTよりも低く、重縮合工程の温度を下げることが出来る。重縮合工程の末期温度は、例えば235℃程度の温度として従来法よりも低くし、重縮合時の圧力は0.13kPa程度と低く、高真空に設定して行うことが好ましい。また、重縮合反応時間は2〜4時間程度とすることが好ましい。
(共重合PBTの粉末化)
上記工程により製造された共重合PBTは、粉末積層造形法に供するため粉末化する。粉末化手段は問わず、例えばボールミル、ジェットミル、スタンプミルあるいは凍結粉砕などの手段を採ることができる。特にジェットミルは粉砕効果が高く好ましく採用される。粉砕後の粒径は、篩い分けや流体分級を含む分級手段により平均粒径として例えば20〜150μmとするのがよい。
<共重合PBTへの配合剤>
本発明の共重合PBTは、その製造段階又は製造した後に、必要に応じて、結晶核剤、酸化防止剤、着色防止剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、離型剤、易滑剤、難燃剤、帯電防止剤、無機粒子及び有機粒子などを配合してコンパウンドとすることができる。また、本発明の趣旨を損なわない範囲で他のポリエステルなどのポリマーを配合してもよい。
[粉末積層造形法用PBT系組成物]
本発明の粉末積層造形法用PBT系組成物は、本発明の共重合PBTを50〜100質量%含むものである。
即ち、本発明の粉末積層造形法用PBT系組成物は、本発明の共重合PBTのみからなるものであってもよく、本発明の共重合PBTと、上記した配合剤や本発明の共重合PBT以外のポリエステルなどの他のポリマーを50質量%以下の割合で含むものであってもよい。
[粉末積層造形法用粉末材料]
本発明の粉末積層造形法用粉末材料は、本発明の共重合PBT又はこの共重合PBTを含む本発明の粉末積層造形法用PBT系組成物よりなり、その粒径は平均粒径として前述の通り20〜150μmであることが好ましく、より好ましくは35〜150μmである。平均粒径が上記下限以上であれば、粉末材料の流動性、取り扱い性に優れ、また、製造コストの面でも好ましい。平均粒径が上記上限以下であれば、造形精度を高めることができ好ましい。
本発明の共重合PBTを粉末積層造形法の造形原料として供する場合、本発明の共重合PBTを主体として、例えば50質量%以上を含む造形原料として用いてよいことはもちろんであるが、比較的少量でも造形安定化に関して効果を発揮することができる。
従って、本発明の粉末積層造形法用粉末材料は、本発明の共重合PBTを通常5〜100質量%、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは20〜100質量%、更に好ましくは30〜100質量%、最も好ましくは50〜100質量%含有する造形原料として粉末積層造形に供することができる。
[造形方法]
本発明の造形方法は、上記の本発明の粉末積層造形法用粉末材料を用いて粉末積層造形法により本発明の造形品を製造する方法である。
本発明における粉末積層造形法は、通常の粉末積層造形装置を用いて常法に従って行うことができる。
即ち、例えば、造形ステージと、粉末材料の薄膜をこの造形ステージ上に形成する薄膜形成手段と、形成された薄膜にレーザを照射するなどして加熱することで、粉末材料の粒子を溶融結合させて造形物層を形成する加熱手段と、造形ステージを積層方向(上下方向)に移動させる移動手段と、これらを制御して薄膜形成、加熱、ステージの移動を繰り返し行うことで、造形物層を積層させる制御手段とを有する粉末積層造形装置を用い、例えば、レーザ加熱の場合、以下の工程(1)〜(4)を経て造形を行うことができる。
(1) 粉末材料の薄層を形成する工程
(2) 予備加熱された薄層にレーザ光を選択的に照射して、粉末材料が溶融結合してなる造形物層を形成する工程
あるいは、予備加熱された薄層に選択的に溶融促進剤(樹脂の溶融を促進する成分)、表面装飾剤(層のアウトラインを形成させる成分)を噴霧し、その後に赤外線ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプを全体に照射して、粉末材料が溶融結合してなる造形物層を形成する工程の場合もある。
(3) 造形ステージを形成された造形物層の厚み分だけ下降させる工程
(4) 工程(1)〜工程(3)をこの順に複数回繰り返し、造形物層を積層する工程
工程(1)では、前記粉末材料の薄層を形成する。例えば、粉末供給部から供給された前記粉末材料を、リコータによって造形ステージ上に平らに敷き詰める。薄層は、造形ステージ上に直接形成されるか、既に敷き詰められている粉末材料又は既に形成されている造形物層の上に接するように形成される。
薄層の厚さは、造形物層の厚さに準じて設定できる。薄層の厚さは、製造しようとする3次元造形物の精度に応じて任意に設定することができるが、通常0.01〜0.3mm程度である。
工程(2)では、形成された薄層のうち、造形物層を形成すべき位置にレーザを選択的に照射し、照射された位置の粉末材料を溶融結合させる。これにより、隣接する粉末材料が溶融し合って溶融結合体を形成し、造形物層となる。このとき、レーザのエネルギーを受け取った粉末材料は、すでに形成された層とも溶融結合するため、隣接する層間の接着も生じる。レーザが照射されなかった粉末材料は余剰粉末として回収され、回収粉末として再利用される。
あるいは、レーザを選択的に照射する代わりに、選択的に溶融促進剤(樹脂の溶融を促進する成分)、表面装飾剤(層のアウトラインを形成させる成分)を噴霧し、その後に赤外線ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプを全体に照射して、粉末材料を溶融結合させる。レーザの場合と同様に溶融結合されなかった粉末材料は余剰粉末として回収され、回収粉末として再利用される。
工程(3)では、工程(2)で形成された造形物層の厚さ分だけ造形ステージを下降させて次の工程(1)にそなえる。
なお、余剰粉末の物性は、これをサンプリングして確認することができる。粉末積層造形法においては、例えば供給槽、造形槽、余剰粉末受け槽を備え、この余剰粉末受け槽に落下した余剰粉末を回収して供給槽につながる経路に戻す場合がある。この経路の途中でサンプリングを行うことができる。
あるいは、造形が終了し、冷却後に造形槽に残存する余剰粉末、例えば造形物近傍の粉末のサンプリングを行うことができる。
本発明の共重合PBTは、粉末積層造形法による造形時の熱履歴を経ても固有粘度の上昇、黄色味の増加が抑制されるものであるが、このような本発明の特徴的な効果は、とりわけ不活性ガス雰囲気下で熱処理を行う場合により好ましく発揮される。よって、本発明の共重合PBTは、不活性ガス雰囲気下での粉末積層造形法に好適である。この場合、不活性ガス雰囲気とは、熱処理を行う空間における共重合PBT起因以外のガスに占める不活性ガスの割合(体積%)が90%以上、好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である状態を指す。また、不活性ガスとしては、窒素、アルゴンなどが挙げられる。
また、本発明の共重合PBTの効果は空気雰囲気下で熱処理を行う場合にも発揮される。従って、本発明の共重合PBTは空気雰囲気下での粉末積層造形法にも用いることができる。この場合、固有粘度の上昇の抑制は不活性ガス雰囲気の場合と同等又はそれ以上に発揮できることが多い。黄色味の増大の抑制に関しては、絶対値は不活性ガス雰囲気下の場合より大きくなるものの、本発明の要件を満たさない共重合PBTを使用した場合と比べると明らかにその増加は少なく、顕著に効果が認められる。
粉末積層造形法においては近年、その装置コストの低減や取り扱いの簡便さを目的として、不活性ガス雰囲気に変えて空気雰囲気のもとで造形を行う試みもある。本発明の共重合PBTの効果はこの場合にも有効に発揮される。なお、空気雰囲気とは、酸素が21体積%前後で残りの大部分が窒素ガス等の不活性ガスである自然界に存在する空気を指す。
本発明の共重合PBTの効果は、不活性ガス雰囲気と空気雰囲気の中間の酸素濃度の雰囲気下でも有効に発揮されることはもちろんであり、本発明の技術思想はこれらの範囲にも及ぶ。
また、粉末積層造形時の造形エリアの温度については、用いる共重合PBTの融点より5〜20℃程度低い温度である事が好ましく、造形時間は、造形品の大きさによって様々である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[物性の評価]
<融点の測定>
ポリエステル試料5〜7mgを切り出して計量し、サンプルパンに詰め、測定用パンを作成した。示差走査熱量計(メトラー・トレド社「DSC 822e」)を用いて窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で−10℃から300℃まで昇温した。次いで300℃で3分間保持した後、降温速度10℃/分で300℃から−10℃まで降温し、−10℃で3分間保持した後、引き続き、昇温速度10℃/分で−10℃から300℃まで昇温した。2回目の昇温測定で得られたDSC曲線の解析を行い、吸熱ピークの頂点の温度を融点とした。なお、融点が複数の吸熱ピークとなる場合は、大きい方の吸熱ピーク温度とした。
<末端カルボキシル基量の測定>
ポリエステル試料を粉砕した後、熱風乾燥機を用いて120℃で15分間乾燥し、デシケーター内で室温まで冷却した試料から0.1gを精秤して試験管に採取した。ベンジルアルコール3mLを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mLを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。また、ブランクとして、ポリエステル試料を溶解させずに同様の操作を実施し、以下の式(1)によって末端カルボキシル基量を算出した。
末端カルボキシル量(当量/トン)=(a−b)×0.1×f/w …(1)
(ここで、aは滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、bはブランクでの滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、wはポリエステル試料の量(g)、fは0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。)
なお、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価(f)は以下の方法で求めた。
試験管にメタノール5mLを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液を指示薬として1〜2滴加え、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液0.4mLで変色点まで滴定し、次いで力価既知の0.1Nの塩酸水溶液を標準液として0.2mL採取して加え、再度、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定した(以上の操作は、乾燥窒素ガス吹き込み下で行った。)。以下の式(2)によって力価(f)を算出した。
力価(f)=
0.1N塩酸水溶液の力価×0.1N塩酸水溶液の採取量(μL)/
0.1N水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の滴定量(μL)…(2)
<末端ヒドロキシル基量、末端ビニル基量の測定>
ポリエステル試料を粉砕した後、約20mgを重クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール=7/3混合溶媒0.75mLに溶かし、重ピリジン25μLを添加し、外径5mmのNMR試料管に移した。Bruker社製AVANCE400分光計を用い、室温でH−NMRスペクトルを測定した。化学シフトの基準はTMSのシグナルを0.00ppmとした。得られたスペクトルを常法に従って解析し、末端ヒドロキシル基量、末端ビニル基量を各々当量/トンで算出した。
<総末端基量の算出>
上記の末端カルボキシル基量、末端ヒドロキシル基量、末端ビニル基量の測定結果から、下記式(3)で総末端基量を算出した。
総末端基量(当量/トン)=
末端カルボキシル基量(当量/トン)+末端ヒドロキシル基量(当量/トン)
+末端ビニル基量(当量/トン) …(3)
<ガラス転移温度の測定>
樹脂温度250℃、金型温度60℃で、幅5mm、長さ50mm、厚み1mmの試験片を射出成形した。得られた試験片を固体粘弾性測定装置RSA−III(TA Instruments社)を用いて、測定モード:Dynamic Temp Sweep、周波数:1Hz、温度:0〜120℃(3℃/分)、ひずみ:0.05%で測定し、得られたTanδのピークをガラス転移温度とした。
<固有粘度、黄色味の測定>
(熱処理条件)
不活性ガス雰囲気下又は空気雰囲気下で、それぞれの樹脂粉末において融点より20℃低い温度で10時間保持し、その熱処理の前後でそれぞれ固有粘度及び黄色味を測定した。
(固有粘度の測定)
ポリエステル試料約0.25gを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒約25mLに、濃度が1.00g/dLとなるように溶解させた後、30℃まで冷却し、30℃において全自動溶液粘度計(センテック社製「DT553」)にて、試料溶液の落下速度、溶媒のみの落下秒数をそれぞれ測定し、下記式(4)により固有粘度を算出した。
固有粘度=((1+4Kηsp0.5−1)/(2KC) …(4)
ここで、ηsp=η/η−1であり、ηは試料溶液の落下秒数、ηは溶媒のみの落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、Kはハギンズの定数である。Kは0.33を採用した。なお、試料の溶解条件は、110℃で30分間とした。
熱処理後の固有粘度と熱処理前の固有粘度との差は、0.45以下が好ましく、より好ましくは0.40以下、さらに好ましくは0.35以下、最も好ましくは0.30以下である。
(黄色味の測定)
ペレット状のポリエステル試料を内径30mm、深さ12mmの円柱状の粉体測定用セルに充填し、測色色差計Z300A(日本電色工業(株)社製)を使用して、JIS Z8730の参考例1に記載されるLab表示系におけるハンターの色差式の色座標によるb値を、反射法により、測定セルを90度ずつ回転させて4箇所測定した値の単純平均値として求めた。b値がプラスの方向になるほど黄色味が強くなり、マイナスの方向になるほど青みが強くなる。
熱処理後のb値と熱処理前のb値との差は1.2以下が好ましく、より好ましくは1.1以下、さらに好ましくは0.8以下である。
[実施例1]
撹拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、留出管を備えたエステル反応槽に、テレフタル酸ジメチル793.6質量部、イソフタル酸75.4質量部、1,4-ブタンジオール613.8質量部、及び触媒としてテトラブチルチタネート(生成するポリマーに対してチタン元素換算で33質量ppm)を加えた。
次いで、撹拌下、液温を150℃から90分かけて210℃まで昇温し、210℃で90分保持した。この間、生成するメタノール及び水を留出させつつ、合計180分エステル交換反応及びエステル化反応を行った。
エステル交換反応及びエステル化反応の終了の15分前に、酢酸マグネシウム・四水塩を生成するポリマーに対してマグネシウム金属換算で48質量ppmとなるよう添加し、さらに酸化防止剤(チバ・ガイギー(株)製「Irganox 1010」)(生成するポリマーに対して0.15質量%)を加え、引き続きテトラブチルチタネート(生成するポリマーに対してチタン元素換算で61質量ppm)を添加した。
この反応生成物を撹拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、留出管、減圧用排気口を備えた重縮合反応槽に移送し減圧下、溶融重縮合反応を行った。
溶融重縮合反応は槽内圧力を常圧から0.13KPaまで85分かけて徐々に減圧し、0.13KPa以下で継続した。反応温度は減圧開始から15分間210℃に保持し、以後235℃まで45分かけて昇温してこの温度で保持した。所定の撹拌トルクに到達した時点で反応を終了した。溶融重縮合反応に要した時間は200分であった。
次に槽内を減圧状態から窒素で復圧し、次いで加圧にしてポリマーを抜き出した。ポリマーを口金からストランド状にして押出し、冷却水槽内でストランドを冷却した後、ストランドカッターでカッティングしペレット化した。このようにしてイソフタル酸含量が10モル%である共重合PBTを得た。
この共重合PBTは、通常工業的に採用される共重合PBTの製造条件に比べ、重縮合末期の温度を低く、また到達圧力をより高真空にして製造したものである。
次いで、得られた共重合PBTをジェットミル装置により粉砕し、篩い分けして平均粒径80μmの粉末を得た。
この共重合PBT粉末の融点は208℃、末端カルボキシル基量は14当量/トン、ガラス転移温度は48℃、固有粘度は0.85dL/g、黄色味を示すb値は−1.5であった。
次に、この粉末を窒素雰囲気下(窒素99.9体積%)、融点より20℃低い188℃で、10時間熱処理を行った。この条件は、粉末積層造形法で用いる場合に想定される熱処理条件に含まれるものである。熱処理後の固有粘度は1.15dL/g、b値は−0.4であった。これらの結果を表1に示した。
[実施例2〜9及び比較例1〜3]
実施例1において、共重合成分の組成及び量を変えたほかは実施例1と同様にして実施例2〜9及び比較例1〜3の共重合PBT及びホモPBTを得た。ただし、比較例2〜3においては実施例1より大きな装置を用い、重縮合反応の温度を245℃、減圧の条件を0.40KPa保持に変更し、また重合時間は180分とした。得られた共重合PBT及びホモPBTの物性と、窒素雰囲気下での熱処理後の物性を表1に示した。
[実施例10〜13及び比較例4〜5]
実施例10、実施例11、実施例12、実施例13においては、それぞれ実施例1、実施例4、実施例5、実施例6で製造した共重合PBTを用いて、空気雰囲気下で熱処理を行った。また、比較例4、比較例5においては、それぞれ比較例1、比較例2で製造したホモPBTを用いて、空気雰囲気下で熱処理を行った。各共重合PBT及びホモPBTの物性と、空気雰囲気下での熱処理後の物性を表2に示した。
Figure 2020084153
Figure 2020084153
[考察]
表1は、共重合PBT及びホモPBTの窒素雰囲気下での熱処理の結果である。
本発明の共重合PBTは実施例1〜9に示す通り、例えば粉末積層造形法による窒素雰囲気下での造形時における融点近傍での長時間の熱履歴と同等の熱処理を受けても、固有粘度の上昇及び黄色味の増大を抑えることができる。従って、この熱処理後の粉末(回収粉末)を初期粉末と混合して粉末積層造形法に供したとしても、両者の物性の差は小さく、粘度むらの発生を抑えることができ、また造形品の黄色味の増大や色むらを抑制できる。
なお、実施例9の共重合PBTはガラス転移点が高く、結晶性が低いために耐熱性に劣ると考えられるが、熱処理後の固有粘度の上昇、黄色味の増加は抑制されている。
これに対し、比較例1〜3は、本発明で規定した要件の少なくとも一つを欠いたホモPBT又は共重合PBTを用いたもので、所望の効果を発揮することができない例である。比較例1は、末端カルボキシル基量は本発明の範囲内にあるものの、ホモPBTであると共に融点が本発明の範囲より高く、固有粘度の上昇及び黄色味の増大を抑制できない。比較例2は、ホモPBTである上に融点及び末端カルボキシル基量がいずれも本発明の範囲より高く、やはり固有粘度の上昇及び黄色味の増大を抑制できない。これらのホモPBTを回収粉末として新規粉末と混合して用いると溶融むらが生じる。比較例3は、共重合PBTであるが末端カルボキシル基量が本発明の範囲より大きく、固有粘度の上昇抑制が不十分である。
表2は、共重合PBT及びホモPBTの空気雰囲気下での熱処理の結果である。
本発明の共重合PBTを用いた実施例10〜13の場合は、固有粘度の上昇は少ない。b値は窒素雰囲気下の場合より絶対値は大きいが、比較例4、比較例5のホモPBTのそれと比べると明らかに小さく、有利に働いていることが判る。比較例4、比較例5のホモPBTは熱処理後の固有粘度の上昇が大きく、粉末積層造形用の樹脂としてはこの点においても好ましくない。
本発明の共重合PBTは、実施例で示されている通り、不活性ガス雰囲気下又は空気雰囲気下で融点に近い熱処理を長時間受けても、固有粘度の上昇及び黄色味の増大が抑制される。このため、本発明の共重合PBTは、粉末積層造形法による3次元造形の造形材料用途において、造形時や保管時に不活性ガス雰囲気下あるいは空気雰囲気下での長時間にわたる加熱保持状態に晒されても、固有粘度の上昇及び黄色味の増大が抑制され、得られる造形品は高品質であると同時に優れた強度、耐熱性をも発現することができる。また、本発明の共重合PBTを新規粉末として用いて造形を行った際に生じた余剰の共重合PBT粉末を回収して再使用する際も、安定した造形が可能になる。

Claims (10)

  1. 粉末積層造形法に使用される、主成分としてテレフタル酸成分及び1,4−ブタンジオール成分を含む共重合ポリブチレンテレフタレートであって、融点が150〜215℃、末端カルボキシル基量が1〜18当量/トンであることを特徴とする粉末積層造形法用共重合ポリブチレンテレフタレート。
  2. 融点が170〜199℃であることを特徴とする請求項1に記載の粉末積層造形法用共重合ポリブチレンテレフタレート。
  3. 末端カルボキシル基量が1〜17当量/トンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉末積層造形法用共重合ポリブチレンテレフタレート。
  4. 末端カルボキシル基量が1〜15当量/トンであることを特徴とする請求項3に記載の粉末積層造形法用共重合ポリブチレンテレフタレート。
  5. テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分として、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、およびコハク酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸成分を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の粉末積層造形法用共重合ポリブチレンテレフタレート。
  6. 1,4−ブタンジオール以外のジオール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、及び9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のジオール成分を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の粉末積層造形法用共重合ポリブチレンテレフタレート。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の粉末積層造形法用共重合ポリブチレンテレフタレートを5〜100質量%含むことを特徴とする粉末積層造形法用ポリブチレンテレフタレート系組成物。
  8. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の粉末積層造形法用共重合ポリブチレンテレフタレート又は請求項7に記載の粉末積層造形法用ポリブチレンテレフタレート系組成物よりなる粉末積層造形法用粉末材料。
  9. 請求項8に記載の粉末積層造形法用粉末材料を用いて粉末積層造形法により造形品を製造する造形方法。
  10. 請求項8に記載の粉末積層造形法用粉末材料を用いた造形品。
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