JP6081835B2 - 6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸もしくはその低級アルキルエステルからなる粉体およびそれを用いた芳香族ポリエステルの製造方法 - Google Patents
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しかしながら、本発明者らのその後の研究によると、その製造においては、製造スケールが大きくなってくると、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸もしくはその低級アルキルエステルの反応器への供給方法が問題となってきている。
本発明における芳香族ポリエステルは、6,6’−(アルレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸(以下、ANAと称することがある。)成分とアルキレングリコール成分とからなる芳香族ポリエステルであり、酸成分の一部としてテレフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸などのANA成分以外の芳香族ジカルボン酸成分を共重合したもの、或いは、主たる酸成分がテレフタル酸成分又は2,6−ナフタレンジカルボン酸などのANA成分以外の芳香族ジカルボン酸成分であり、酸成分の一部として6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合したものも包含する。
本発明における6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分としては、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、6,6’−(テトラメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分などが挙げられ、これらの中でも6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が好ましい。
本発明において、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分は、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸またはその低級アルキルエステルを使用することになる。本発明における6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルとしては、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸メチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸エチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸プロピルが挙げられ、これらの中でも6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸メチルと6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸エチルが好ましい。
6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸およびその低級アルキルエステルの製造方法は限定しないが、一般的に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸を原料として作られる。以下製造例を示す。
まず、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸を水酸化カリウム水溶液中に溶解させる。その後、1,2−ジクロロエチレンを添加し、高温高圧下で反応を行う。反応物を遠心分離して取出した後に、再び水酸化カリウム水溶液で加熱して溶解させ、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の次カリウム塩を生成する。その後、酸析を行い6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸が生成される。ただし、この6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸にはアルカリ金属を多く含んでいることがあり、酸やイオン交換水で洗浄を繰り返し行い低減させることが好ましい。
まず、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸をアルキルアルコール中で濃硫酸を加え加熱反応を行い、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸の低級アルキルエステルを作製する。アルキルアルコールは2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸の低級アルキルエステル体を考慮して選択される。その後、分離、洗浄した後、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸の低級アルキルエステルを150℃以上の沸点をもつ溶媒中で1,2−ジクロロエチレンとアルカリ金属の炭酸塩とともに加熱反応を行う。この際、使用する溶媒として、N、N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンが挙げられるが、より高沸点であるN−メチルピロリドンが好ましい。生成された6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルは冷却に伴い、析出してくる。ただし、この段階での6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルにはアルカリ金属を多く含んでいることがあり、再度加熱溶媒中で溶解させた後、冷却する精製工程を付与することが好ましい。
本発明の粉体は、このようにして作られた6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸もしくはその低級アルキルエステルからなり、粉体の比表面積が、5m2/g以下でかつ細孔容積が0.01cc/g以下であることが必要である。好ましい粉体の比表面積は、4.5m2/g以下であり、細孔容積は、0.008cc/g以下である。
本発明では、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸またはその低級アルキルエステルの粉体と必要に応じて芳香族ジカルボン酸またはその低級アルキルエステルとアルキレングリコールとをエステル化反応またはエステル交換反応させ、さらに重縮合反応を行うポリエステルを製造する際、生産効率化のために、前記粉体とアルキレングリコールとをスラリー状で反応器に供給する。これは、生産のスケールが大きくなってゆくにつれ反応器に直接多量の粉体を直接投入することが困難になることと、一方、溶融状態で投入する方法は別途溶融設備が必要になるなどの問題があるためである。
ここでは、得られる芳香族ポリエステルに、高度の熱安定性を付与させる目的で、第二反応における重縮合反応の開始以前に、反応系にリン化合物からなる熱安定剤を添加することが好ましい。具体的なリン化合物としては、化合物中にリン元素を有するものであれば特に限定されず、例えば、リン酸、亜リン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、リン酸アンモニウム、トリエチルホスホノアセテート、メチルジエチルホスホノアセテートなどを挙げることができ、これらのリン化合物は二種以上を併用してもよい。なお、リン化合物の添加時期は、第一反応が実質的に終了してから第二反応である重縮合反応初期の間に行なうことが好ましく、添加は一度に行ってもよいし、2回以上に分割して行ってもよい。
得られた6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸およびその低級アルキルエステルの比表面積および細孔容積は、QUANTACHROME製 NOVA1000で測定した。
超音波発信器を有するフローセル方式供給装置(多機能サンプラーSALD−MS70)を有する島津製作所製レーザー散乱式粒度分布測定装置SALD−7000を使用して、屈折率1.50にて測定した。なお、測定前のエチレングリコールへの分散は、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸もしくはその低級アルキルエステルの粉体を5重量%スラリー濃度相当で、家庭用ミキサーで10分間攪拌し、常温まで冷却したのち、フローセル方式供給装置に供給した。
サンプル1gを、事前に塩酸煮沸洗浄処理した白金ルツボに精秤し、高純度濃硫酸1mlを加えて、電気炉にて灰化する。これを高純度塩酸水溶液にて溶解させ、塩化セシウムを添加し、超純水で希釈、調製したものを原子吸光度分析原子吸光分析装置(HITACHI製 Z−2300)にて測定した。
所定の濃度となるように6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸もしくはその低級アルキルエステルとエチレングリコールをジュースミキサーに仕込み混合させる。このエチレングリコールスラリーを回転式粘度計(ビスメトロン 芝浦セムテック株式会社)にて測定した。
得られたポリエステルの固有粘度はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いて、35℃で測定して求めた。
2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸100重量部、45wt%水酸化カリウム水溶液133重量部、およびイオン交換水177重量部を反応器に入れ、90℃にて反応させ、濃度32.5wt%の2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸カリウム塩水溶液を得た。
次いで、この32.5wt% 2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸カリウム塩水溶液300重量部とジクロロエタン25.5重量部を撹拌機を備えたオートクレーブに仕込み、撹拌下にて150℃にて2時間反応した。反応終了後、冷却し析出した6,6‘−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジカリウム塩(水分率12wt%)を遠心分離機により回収した。
この6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジカリウム塩(水分率12wt%)100重量部とイオン交換水780重量部を、撹拌機を備えた容器に仕込み100℃で溶解させた。
そして30%硫酸水溶液90重量部90℃を保持しながら3時間かけて滴下した。冷却後析出物を遠心分離し、6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸を回収した。さらに6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸を20%の酢酸水溶液で洗浄した後に更にイオン交換水で洗浄し、遠心分離し6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸を回収した。この回収した6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸をタンブラー式の乾燥機にて乾燥を行い、6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸を得た。この6,6‘−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸の測定結果を表1に示す。
6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジカリウム塩水溶液に、50%硫酸水溶液72重量部を2時間かけて滴下し、その後1時間保持したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸100重量部、エタノール250重量部を反応器に入れ、80℃に加熱しながら、濃硫酸40重量部を滴下し、5時間反応させた。冷却後イオン交換水を滴下し、析出物を遠心分離で取出し、さらにイオン交換水で洗浄、箱型乾燥機で乾燥することにより2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸エチルを得た。
次いで、この2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸エチル100重量部とN−メチルピロリドン500重量部ジブロモエタン69重量部と無水炭酸カリウム50重量部を撹拌機を備えた反応器に仕込み、撹拌下にて150℃にて5時間反応した。反応終了後、冷却し析出した粗6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジエチルを遠心分離機により回収し、イオン交換水で洗浄を行い、箱型乾燥機で乾燥を行った。
さらにこの粗6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジエチル100重量部とN−メチルピロリドン400重量部を撹拌機を備えた容器に仕込み120℃で溶解させた。そして、撹拌下冷却を開始し、92℃にて3時間保持させて、ゆっくり析出をさせた、その後70℃まで1時間かけて冷却を行った。この析出物を遠心分離し6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジエチルを回収した。この回収した6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジエチルをタンブラー式の乾燥機にて乾燥を行い、6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジエチルを得た。この6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジエチルの測定結果を表1に示す。
粗6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジエチル100重量部とN−メチルピロリドン300重量部を撹拌機を備えた容器に仕込み120℃で溶解させた。そして、100℃まで冷却させた後、撹拌下4時間かけて70℃まで冷却を行い析出させたこと以外は実施例3と同様に行った。この6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジエチルの測定結果を表1に示す。
実施例1の6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸1200Kgとエチレングリコール1800Kgを、ホモジナイザー処理を行い、40wt%のエチレングリコールスラリーを作製した。これを撹拌機、精留塔、冷却管を備えた圧力容器に高粘度液用ポンプを用いて仕込んだ。更に2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル312Kgを仕込み、150℃まで昇温した。その時点でチタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)をチタン元素として92g量加え、反応装置全体を窒素にて0.25MPaに加圧して、昇温した。圧力は常に0.25MPaにコントロールさせ、精留塔の塔頂温度は200℃になると全還流とし、200℃以下では還流比1にて反応を続けた。反応の進行に従い容器内は徐々に透明となり、最終的に内温を250℃まで昇温した。続いて圧力を常圧に戻して、トリメチルフォスフェート360gを加え内温を250℃まで昇温し、余分のエチレングリコールを留出させたのち、反応液を重縮合反応容器に移した。その後反応容器内を徐々に昇温しながら、ゆっくりと容器内を減圧し、290℃50Paで所定の撹拌電力に到達するまで重縮合反応を続け、IVが0.60の共重合芳香族ポリエステルを製造した。
実施例3の6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジエチル1280Kgとエチレングリコール1920Kgをホモジナイザー処理を行い、40wt%のエチレングリコールスラリーを作製した。これを撹拌機、精留塔、冷却管を備えた圧力容器に高粘度液用ポンプを用いて仕込んだ。更に2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル292Kgを仕込み、150℃まで昇温した。その時点でチタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)をチタン元素として31g量加え、反応装置全体を窒素にて0.MPaに加圧して、昇温した。圧力は常に0.MPaにコントロールさせ、精留塔の塔頂温度は200℃になると全還流とし、200℃以下では還流比1にて反応を続けた。最終的に内温を250℃まで昇温した。続いて圧力を常圧に戻して、トリホスホノアセテート240gを加え、内温を250℃まで昇温し、余分のエチレングリコールを留出させたのち、反応液を重縮合反応容器に移した。その後反応容器内を徐々に昇温しながら、ゆっくりと容器内を減圧し、290℃50Paで所定の撹拌電力に到達するまで重縮合反応を続け、IVが0.60の共重合芳香族ポリエステルを製造した。
6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジカリウム塩水溶液に、97%硫酸36重量部を一度に添加し、3時間保持したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。エチレングリコールスラリーの粘度は比較的高く、今回の芳香族ポリエステル製造には不適である。
80℃の25%酢酸水溶液130重量部に6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸カリウム塩(水分率12wt%)100重量部とイオン交換水780重量部を100℃で溶解させた液を2時間にかけて滴下した。冷却後析出物を遠心分離し、6,6‘−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸を回収し、更にイオン交換水で洗浄し、遠心分離し6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸を回収した。この回収した6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸を箱型乾燥機にて乾燥を行い、6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸を得た。この6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸の測定結果を表1に示す。
カリウム含有量は低いものの、エチレングリコールスラリーの粘度が非常に高く今回の芳香族ポリエステル製造には不適である。
粗6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジエチル100重量部とN−メチルピロリドン100重量部を撹拌機を備えた容器に仕込み120℃で溶解させた。そして、撹拌下1時間かけて70℃まで冷却を行い析出させたこと以外は実施例3と同様に行った。この6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジエチルの測定結果を表1に示す。 エチレングリコールスラリーの粘度は比較的高く不適である。
粗6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジエチル100重量部とN−メチルピロリドン400重量部を、撹拌機を備えた容器に仕込み110℃で溶解させた。そして、撹拌下12時間かけて70℃まで冷却を行い析出させたこと以外は実施例3と同様に行った。この6,6’−(エチレンジオキシ)ビスー2−ナフトエ酸ジエチルの測定結果を表1に示す。
Claims (4)
- 6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸もしくはその低級アルキルエステルからなり、比表面積が、5m2/g以下でかつ細孔容積が0.01cc/g以下である粉体を、アルキレングリコールに分散させて、40質量%以上の割合でアルキレングリコールスラリーとし、該アルキレングリコールスラリーをエステル化またはエステル交換反応器に供給してエステル化またはエステル交換反応させた後、重縮合反応させる芳香族ポリエステルの製造方法。
- 粉体中の10μm以下の粉体量が、体積基準の相対粉体量で10%以下である請求項1記載の芳香族ポリエステルの製造方法。
- 芳香族ポリエステルが、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分以外の芳香族ジカルボン酸成分が共重合された共重合芳香族ポリエステルである請求項1または2に記載の芳香族ポリエステルの製造方法。
- 芳香族ポリエステルは、P−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて、35℃で測定した固有粘度が、0.4〜1.5dl/gの範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載の芳香族ポリエステルの製造方法。
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