JP7415630B2 - ポリエステル組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

線状オリゴマー飛散量が少なく、さらに良好な熱安定性および静電印加性を有するポリエステル組成物及びその製造方法に関するものである。
ポリエステルは機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。ポリエステルの中でも、特にポリエチレンテレフタレート(以降PETと記す)は、透明性や加工性に優れていることから、光学用フィルムや離型用フィルムなど高品位性が求められる用途に幅広く使われている。
しかしながら、PETのモノマー成分や低分子量体(オリゴマー成分)といった線状オリゴマーは、ポリエステルの分解反応によって発生・増加し、これが成形や加工時に揮発・飛散し、成形品の表面汚れが起こることがある。加えて、この線状オリゴマーの飛散によって工程汚れを引き起こすこともあり、表面汚れや工程汚れによる成形品の品位悪化という問題が起こる。
そして、ポリエステルの熱安定性が不十分な場合、溶融成形時にポリエステルが熱劣化・酸化劣化することでゲル組成物が発生し、口金汚れなどの工程汚染が問題となる。フィルム用途などでは、このゲル組成物がフィルム中にて輝点欠点となり、品質が低下する。
また、ポリエステル組成物をフィルム化する際には、未固化のシート状物の上面に高電圧を印加し、シート状物を回転冷却ドラムに密着させる静電印加キャスト法が多く採用されている。静電印加キャスト法においては、ポリマー溶融時の電気抵抗(溶融比抵抗)が低いことが好ましく、ポリエステル組成物の溶融比抵抗が高い場合、シート状物と回転冷却ドラムとの密着力が低下しフィルムの厚み均一性や印加ムラによるフィルム表面の欠点を生じる問題が起こる。
近年、光学用フィルムや離型用フィルムなど品位の要求がますます高くなっており、上記のような表面汚れ、工程汚れや欠点を引き起こす線状オリゴマーの飛散やゲル組成物の発生を抑制し、さらに良好な静電印加性を有するポリエステル組成物が望まれている。これらの課題に対して、様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1には固相重合及び失活処理を行うことで、ポリエステル樹脂中のオリゴマー含有量および溶融時のオリゴマー再生量を低減させる技術が開示されている。
さらに、特許文献2には、金属量とリン量のモル比率を高い範囲に制御し、ゲル組成物を抑制し、良好な静電印加性を付与する技術が開示されている。
特開2003-176347号公報 特開2003-96280号公報
前述した従来の技術のように、固相重合や失活処理では、ポリエステル樹脂に含有または成形加工時に発生する環状オリゴマーを低減させるのみであり、溶融時の熱分解、加水分解や酸化分解という異なる機構により発生・増加する線状オリゴマーには効果がないため、製品の表面汚れや加工工程汚れを防ぐことができなかった。また、熱安定性や静電印加性向上のために金属とリンのモル比率を高い範囲にした場合、線状オリゴマー飛散抑制効果を果たすことはできなかった。
本発明の目的は、線状オリゴマー飛散量が少なく、さらに良好な熱安定性および静電印加性を有するポリエステル組成物及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有するものである。
(1)ポリエステル組成物に対する質量比に関する式(I)~(III)を満たし、アルカリ金属元素を2種類以上含有することを特徴とするポリエステル組成物(チタン触媒を用いたものを除く)。
線状オリゴマー飛散量≦18ppm (I)
5ppm≦Mn元素含有量≦40ppm (II)
6ppm≦K元素含有量≦100ppm (III)
(線状オリゴマー飛散量とは、窒素雰囲気下、290℃で30分間溶融したサンプル3gをるつぼに入れた後、220℃に加熱したホットプレート上に載せ、るつぼにフラットシャーレを被せ8時間加熱し、線状オリゴマー飛散物をフラットシャーレに捕集し、当該飛散物から、得た線状オリゴマー飛散量総量である。)
(2)Na元素を含有することを特徴とする(1)に記載のポリエステル組成物。
)P元素を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載のポリエステル組成物。
)リン酸アルカリ金属塩を含有することを特徴とする(1)~()のいずれか1項に記載のポリエステル組成物。
)溶融比抵抗が1.0×10Ω・cm以下であることを特徴とする(1)~()のいずれか1項に記載のポリエステル組成物。
)COOH末端基量が30eq/t以下であることを特徴とする(1)~()のいずれか1項に記載のポリエステル組成物。
)ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする(1)~()のいずれか1項に記載のポリエステル組成物。
)(1)のポリエステル組成物を含有するポリエステルフィルム。
)(1)のポリエステル組成物を含有する層を少なくとも1層有する積層ポリエステルフィルム。
(1)ジカルボン酸またはジカルボン酸エステルおよびジオールをエステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応してポリエステル組成物を製造するに際して、Mn元素を含む化合物、K元素を含む化合物およびリン酸アルカリ金属塩を重縮合反応終了前に添加(アルカリ金属元素を2種類以上)し、かつその添加量がポリエステル組成物に対する質量比に関する式(IV)、(V)を満たすことを特徴とするポリエステル組成物(チタン触媒を用いたものを除く)の製造方法。
5ppm≦Mn元素添加量≦40ppm (IV)
6ppm≦K元素添加量≦100ppm (V)
(1)K元素を含む化合物が塩基性化合物であることを特徴とする(1)のポリエステル組成物の製造方法。
(1)Na元素を含む化合物を添加することを特徴とする(1または~(1)に記載のポリエステル組成物の製造方法。
(1)ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする(1)~(1)のいずれか1項に記載のポリエステル組成物の製造方法。
本発明によれば、線状オリゴマー飛散量が少なく、さらに良好な熱安定性および静電印加性を有するポリエステル組成物及びその製造方法を提供できる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるポリエステル組成物とは、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合して得られるポリエステル組成物を指す。
本発明におけるジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、鎖状脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸など種々のジカルボン酸成分を用いることができる。その中でも、ポリエステル組成物の機械的特性、耐熱性、耐加水分解性の観点から、芳香族ジカルボン酸及びそのエステル形成誘導体成分であることが好ましい。特には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びこれらのエステル形成誘導体成分が重合性、機械的特性から好ましい。
本発明におけるジオール成分としては、各種ジオールを用いることができる。例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール、脂環式ジオールとしてはシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、デカヒドロナフタレンジエタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、トリシクロデカンエタノール、テトラシクロドデカンジメタノール、テトラシクロドデカンジエタノール、デカリンジメタノール、デカリンジエタノールなどの飽和脂環式1級ジオール、2,6-ジヒドロキシ-9-オキサビシクロ[3,3,1]ノナン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(スピログリコール)、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン、イソソルビドなどの環状エーテルを含む飽和ヘテロ環1級ジオール、その他シクロヘキサンジオール、ビシクロヘキシル-4,4’-ジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル)プロパン、シクロペンタンジオール、3-メチル-1,2-シクロペンタジオール、4-シクロペンテン-1,3-ジオール、アダマンジオールなどの各種脂環式ジオールや、ビスフェノールA、ビスフェノールS,スチレングリコール、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの芳香環式ジオールが例示できる。またジオール以外にもトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多官能アルコールも用いることができる。
この中で、反応系外に留出させやすいことから、沸点230℃以下のジオールであることが好ましく、低コストであり反応性が高いことから、脂肪族ジオールがより好ましい。さらに、得られたポリエステル組成物やその成形品の機械的特性の観点からエチレングリコールが特に好ましい。
なお、本発明の効果の範囲を損なわない程度に、他のジカルボン酸成分やヒドロキシカルボン酸誘導体、ジオール成分が共重合されていてもよい。
本発明のポリエステル組成物とは、式(I)~(III)を満たすことを特徴とするポリエステル組成物である。
線状オリゴマー飛散量≦20ppm (I)
5ppm≦Mn元素含有量≦40ppm (II)
6ppm≦K元素含有量≦100ppm (III)
本発明のポリエステル組成物は、線状オリゴマー飛散量が20ppm(ポリエステル組成物に対する質量比)以下であることが必要である。なお、線状オリゴマー飛散量とは、窒素雰囲気下、290℃で30分間溶融したサンプルを急冷後、空気中220℃で8時間処理した際に飛散したオリゴマーの総量であり、後述の測定方法にて得られる値である。
本発明において、線状オリゴマーとは、ポリエステルのモノマー成分やオリゴマー成分であり、具体的にはポリエステルを構成するジカルボン酸成分や、ジカルボン酸のカルボキシル基とジオールのヒドロキシル基が反応してできる鎖状の反応物のことを指し、環状三量体のような環状のオリゴマーは含めない。具体的にはジカルボン酸単量体およびグリコール成分とのモノエステル、ジエステルである。この線状オリゴマーは揮発しやすいため飛散しやすく、溶融成形などの加工工程において、工程汚れや成形品の表面汚れを引き起こすものである。
代表的なポリエステルであるPETを例に挙げると、TPA(テレフタル酸)、テレフタル酸とエチレングリコールの反応物である、MHT(モノヒドロキシエチルテレフタレート)およびBHT(ビスヒドロキシエチルテレフタレート)である。本発明の効果を果たすため、これら線状オリゴマー飛散量の総量として、20ppm以下であることが必要である。好ましくは18ppm以下、より好ましくは15ppm以下である。線状オリゴマーの飛散量を上記範囲内とすることで、成形加工時に問題となる線状オリゴマーに起因した工程汚れや表面汚れの低減を実現することが可能である。
線状オリゴマー飛散量が上記範囲内のポリエステル組成物は、溶融工程を通りさらに熱処理を施すような繊維用途、フィルム用途において好適に用いられ、成形体の表面汚れの低減を実現し、高品位な成形体を提供する。
例えばフィルム製造工程においては、ポリエステル溶融成形を伴うポリマーの分解により線状オリゴマーが生成・増加し、さらに概ね180℃を超えるようなフィルムの熱処理工程などにおいても、熱分解、加水分解や酸化分解によって、さらに線状オリゴマーが生成・増加する。この線状オリゴマーの揮発性は非常に高く、加熱されると気化する。気化した線状オリゴマーが凝集してフィルム表面へ付着すると、製品の線状オリゴマー異物欠点となる。
本発明のポリエステル組成物をフィルム製造工程に用いた場合、フィルム製造工程における線状オリゴマーの飛散が抑制されるため、上記の線状オリゴマー起因の汚れによる欠点の発生を低減できる。
本発明のポリエステル組成物は、Mn元素(マンガン元素)を5ppm以上40ppm以下含有することが必要である。
下限として好ましくは10ppm以上である。また、上限として好ましくは30ppm以下である。上記下限以上とすることで、熱安定性を向上することが可能であり、溶融成形時にゲル組成物の発生を抑制できる。また、Mn元素はフィルム延伸工程などのポリエステル融点以下の比較的低い温度での加熱処理においても触媒活性が高いためにポリエステルの熱分解、加水分解や酸化分解に寄与し、線状オリゴマー発生および飛散の原因となる。したがって、上記上限以下のMn元素量を満たすことで、加工工程における線状オリゴマー飛散量を低減することが可能となる。
本発明のポリエステル組成物は、K元素(カリウム元素)を6ppm以上100ppm以下含有することが必要である。
上限として好ましくは60ppm以下であり、より好ましくは30ppm以下である。上記範囲とすることで、静電印加性が良好となり、線状オリゴマーの飛散およびゲルの発生を抑制でき、さらにK元素による黄色着色が少ないポリエステル組成物になる。ポリエステルの分解により発生した線状オリゴマーは揮発しやすいため、加熱を伴う成形加工時に飛散して工程汚れや表面汚れが形成する。ポリエステルにK元素を含有させることにより、発生した線状オリゴマーのCOOH末端部分と反応してカルボン酸カリウム塩が形成し、線状オリゴマーが発生してもその飛散を抑制することができる。一方、K元素の含有量が100ppmを超えると、加熱処理においてポリエステル分解反応が促進され、線状オリゴマー飛散抑制効果が不十分になる。すなわち、本発明の効果を実現するため、K元素の含有量を上記範囲内にする必要がある。
また、本発明のポリエステル組成物は、アルカリ金属元素が2種類以上を含有することが好ましく、Na元素(ナトリウム元素)を含有することがさらに好ましい。アルカリ金属元素2種類以上含有することで、線状オリゴマー飛散量を抑制でき、さらに良好な熱安定性および静電印加性を有するポリエステル組成物となる。アルカリ金属元素がリン酸アルカリ金属塩として含有されることが特に好ましい。
Na元素を含有する場合、その含有量は4ppm以上40ppm以下であることが好ましい。下限として好ましくは10ppm以上である。また上限として好ましくは30ppm以下である。上記範囲とすることで、耐加水分解性が良好となり、加水分解に起因する線状オリゴマーの発生と飛散を抑制できる。
また、本発明のポリエステル組成物は、P元素(リン元素)を含有することが好ましい。P元素を含有することにより、ポリエステル組成物に耐熱性や耐加水分解性を付与させることができ、ポリマー分解による線状オリゴマーの飛散を抑制することができる。
ポリエステル組成物中のP元素の含有量は特に規定しないが、下限として好ましくは15ppm以上であり、より好ましくは20ppm以上であり、さらに好ましくは25ppm以上である。また上限として好ましくは70ppm以下であり、より好ましくは60ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。上記範囲とすることで、加工工程における線状オリゴマー飛散量を低減でき、静電印加性が良好である。
本発明のポリエステル組成物はCOOH末端基量が30eq/t以下であることが好ましい。25eq/t以下であることがより好ましい。上記範囲とすることで、得られるポリエステル組成物に良好な耐加水分解性を付与することが可能となり、加水分解に起因する線状オリゴマーの飛散を抑制できる。
本発明のポリエステル組成物の熱安定性は、該ポリエステル組成物を酸素濃度1%の窒素雰囲気下、300℃で6時間加熱処理した際のゲル化率で評価する。ポリエステル組成物を溶融成形する工程においては、溶融時の熱劣化を抑制するために窒素パージを実施することが一般的であるが、微量の酸素が混入する。本発明のゲル化率の測定条件はこの成形工程を想定した条件であり、ゲル化率が小さければ小さいほど、良好な熱安定性を有するものとなる。
本発明のポリエステル組成物は、上記条件で処理した際のゲル化率が9wt%以下であることが必要である。ゲル化率が5wt%以下であることがさらに好ましい。上記範囲とすることで、高い熱安定性が要求されるフィルム用途などに好適なポリエステル組成物を提供することが可能となり、溶融成形時に発生するゲル組成物を抑制できるため成形品の欠点を抑制できる。
本発明のポリエステル組成物の静電印加性は、該ポリエステル組成物の溶融比抵抗で評価する。溶融比抵抗が1.0×10Ω・cm以下であることが好ましく、0.6×10Ω・cm以下であることがさらに好ましい。上記範囲にすることで、静電印加キャスト法において回転冷却ドラムとの密着性が上がり、円滑にフィルム成形を進めることができ、得られるフィルムの厚さ均一性が向上し、印加ムラによるフィルム表面の欠点を低減できる。
本発明のポリエステル組成物を構成するポリエステルは、本発明の効果を十分奏する点からPETであることが好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で共重合成分が含まれていてもよい。
本発明のポリエステル組成物は、窒素及び硫黄、ハロゲンより選ばれる元素の総含有量が10ppm未満であることが好ましい。より好ましくは5ppm未満であり、さらに好ましくは3ppm未満である。窒素、硫黄、ハロゲンといった元素を含む化合物はポリエステル中に存在していると熱分解や加水分解を促進し、線状オリゴマーの発生量と飛散量とも増加する。したがって、含んでいないことが最も好ましい。
次に、本発明のポリエステル組成物の製造方法について記載する。
本発明のポリエステル組成物の製造方法は、ジカルボン酸またはジカルボン酸エステルおよびジオールをエステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応してポリエステル組成物を製造するに際して、Mn元素を含む化合物、K元素を含む化合物およびリン酸アルカリ金属塩を重縮合反応終了前に添加し、かつその添加量がポリエステル組成物に対する質量比に関する式(IV)、(V)を満たすことを特徴とするポリエステル組成物の製造方法である。
5ppm≦Mn元素添加量≦40ppm (IV)
6ppm≦K元素添加量≦100ppm (V)
本発明のポリエステル組成物の製造方法において、Mn元素を含む化合物はポリエステル組成物の重縮合反応終了前に添加することが必要である。上記範囲に添加することで、重合反応性が良好となり、またポリエステル組成物への分散性も良好となるため、透明性が高まる。その中でも、エステル交換反応にてポリエステルオリゴマーを得る場合は、反応をより効率的に進行させるため、エステル交換反応開始時にMn元素を含む化合物を添加することが好ましい。また、エステル化反応にてポリエステルオリゴマーを得る場合には、エステル化反応終了時からポリエステル組成物のIVが0.4以下の段階でMn元素を含む化合物を添加することが好ましく、エステル化反応終了時から、重縮合反応開始までに添加することがより好ましい。エステル化反応は、テレフタル酸などの酸成分による自己触媒反応により、無触媒でも十分に反応は進行し、触媒を含有しているとジオール成分の2量体などの副生成物が増加することから、無触媒で実施し、ポリエステルの粘度が上昇する前に添加することで、耐熱性を損なうことなく、Mn元素を含む化合物の分散性が向上し高透明性を発現することが可能となる。
本発明のポリエステル組成物の製造方法において、Mn元素を5ppm以上40ppm以下添加することが必要である。
下限として好ましくは10ppm以上である。また、上限として好ましくは30ppm以下である。上記下限以上とすることで、熱安定性を向上することが可能であり、溶融成形時にゲル組成物の発生を抑制できる。また、Mn元素はフィルム延伸工程などのポリエステル融点以下の比較的低い温度での加熱処理においても触媒活性が高いためにポリエステルの熱分解や酸化分解、加水分解に寄与し、線状オリゴマー発生および飛散の原因となる。したがって、上記上限以下のMn元素添加量を満たすことで、加工工程における線状オリゴマー飛散量を低減することが可能となる。
Mn元素を含む化合物は特に限定しないが、酢酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン、硫酸マンガンなどが挙げられ、上記の金属化合物の水和物であってもよい。溶解性及び触媒活性の点から酢酸マンガンが好ましい。
また、添加する際の形態は粉体、スラリー、溶液のいずれでもよく、分散性の点から、溶液として添加することが好ましい。このときの溶媒は、ポリエステル組成物のジオール成分と同一にすることが好ましく、PETの場合はエチレングリコールを用いることが特に好ましい。
本発明のポリエステル組成物の製造方法において、重縮合反応が終了するまでの段階で、K元素を含む化合物を添加することが必要である。K元素を含む化合物は特に限定しないが、塩基性化合物であることが特に好ましい。K元素を含む化合物の添加時期として、より好ましくは、エステル交換反応またはエステル化反応終了後から重縮合反応開始までの間である。上記範囲に添加することで、重縮合反応を遅延させることなく、効果的にポリエステル組成物に良好な熱安定性および静電印加性を付与することができ、さらに線状オリゴマーの飛散を抑制できる。
本発明のポリエステル組成物の製造方法において、K元素を6ppm以上100ppm以下添加することが必要である。
上限として好ましくは60ppm以下であり、より好ましくは30ppm以下である。上記範囲とすることで、静電印加性が良好となり、線状オリゴマーの飛散およびゲルの発生を抑制でき、さらにK元素による黄色着色が少ないポリエステル組成物になる。ポリエステルの分解により発生した線状オリゴマーは揮発しやすいため、加熱を伴う成形加工時に飛散して工程汚れや表面汚れが形成する。ポリエステルにK元素を含む化合物を添加することにより、発生した線状オリゴマーのCOOH末端部分と反応してカルボン酸カリウム塩が形成し、線状オリゴマーが発生してもその飛散を抑制することができ、本発明の効果を実現できる。また、K元素を含有する塩基性化合物を使用する場合、COOH酸末端との反応性が一層高くなることから、線状オリゴマーの飛散抑制効果が優れるポリエステル組成物を提供できる。
本発明のK元素を含む塩基性化合物とは、ルイス塩基またはアレニウス塩基の定義を満たす化合物のことである。なかでも、水酸化カリウムであることが特に好ましい。水酸化カリウムを添加する場合、効率的に線状オリゴマー中のCOOH末端と反応し、その飛散を抑制できる。
また、K元素を含む化合物として、有機アニオンを有するK化合物を用いることもできる。例えば、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのような化合物は耐熱性が高いため、ポリエステル組成物の着色や耐熱性の低下といった影響を与えにくく、効果的に溶融比抵抗を低下させることができる。
本発明のポリエステル組成物の製造方法において、重縮合反応が終了するまでの段階で、リン酸アルカリ金属塩を添加することが必要である。リン酸アルカリ金属塩を添加することにより、ポリエステル組成物の耐熱性と耐加水分解性を向上させることができ、線状オリゴマーの飛散を抑制できる。リン酸アルカリ金属塩とリン化合物を両方添加することがさらに好ましい。リン酸アルカリ金属塩の添加時期として、より好ましくは、エステル交換反応またはエステル化反応終了後から重縮合反応開始までの間である。
リン酸アルカリ金属塩の添加量は特に規定しないが、リン酸アルカリ金属塩中のアルカリ金属元素の添加量がポリエステル組成物に対して、4ppm以上40ppm以下であることが好ましい。下限としてより好ましくは10ppm以上である。また上限として好ましくは30ppm以下である。上記範囲とすることで、耐加水分解性が良好となり、加水分解に起因する線状オリゴマー発生と飛散を抑制できる。
リン酸アルカリ金属塩としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウムが挙げられる。この中、ナトリウム塩であることが好ましく、リン酸二水素ナトリウムが特に好ましい。複数のリン酸アルカリ金属塩を併用しても構わない。
また、添加する際の形態は粉体、スラリー、溶液のいずれでもよく、分散性の点から、溶液として添加することが好ましい。このときの溶媒は、ポリエステル組成物のジオール成分と同一にすることが好ましく、PETの場合はエチレングリコールを用いることが特に好ましい。
リン酸アルカリ金属塩中のアルカリ元素がNa元素であることが特に好ましい。K元素とNa元素を含め、アルカリ金属元素2種類以上添加することで、線状オリゴマー飛散量を抑制でき、さらに良好な熱安定性および静電印加性を有するポリエステル組成物となる。
リン酸アルカリ金属塩以外のリン化合物を添加する場合、リン酸、トリメチルリン酸、エチルジエチルホスホノアセテート、亜リン酸などを利用することができ、この中でもリン酸を用いることが好ましい。
本発明のリン化合物の添加量は特に規定しないが、ポリエステル組成物中のP元素の含有量は15ppm以上70ppm以下になるように添加することが好ましい。下限として好ましくは20ppm以上であり、より好ましくは25ppm以上で以上である。また上限として好ましくは60ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下である。上記範囲とすることで、加工工程における線状オリゴマー飛散量を低減でき、静電印加性が良好である。
さらに、リン酸とリン酸アルカリ金属塩の溶液を混合し添加することが好ましい。リン酸とリン酸アルカリ金属塩を混合し、緩衝溶液として添加することで、より良好な耐加水分解性が発現し、ポリエステル組成物の加工工程における線状オリゴマーの飛散を抑制することが可能となる。
また、リン酸アルカリ金属塩以外のアルカリ金属化合物を併用しても構わない。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物、酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、塩化物などが挙げられる。
本発明のポリエステル組成物の製造方法において、エステル化反応を経て実施する場合、エステル化反応後から、リン酸アルカリ金属塩を添加するまでの間に、エチレングリコールなどグリコール成分の追加添加を実施することが好ましい。より好ましくは、Mn元素を含む化合物添加後から、リン酸アルカリ金属塩を添加するまでの間である。エステル化反応にて得られるポリエステル組成物の低分子量体は、エステル交換反応で得られる低分子量体よりも重合度が高いためにリン酸アルカリ金属塩が分散しにくく、異物化が起こりやすい。したがって、エチレングリコールなどグリコール成分を追加添加し、解重合によって重合度を低下させておくことで異物化を抑制できる。このとき、Mn元素を含む化合物が存在しているとより効率的に解重合できる。
この追加添加するエチレングリコールなどグリコール成分は、全酸成分に対し0.05倍モル以上0.5倍モル以下であることが好ましい。より好ましくは0.1倍モル以上0.3倍モル以下である。上記範囲とすることで、重合系内の温度降下による重合時間の遅延を起こすことなく、リン酸アルカリ金属塩の異物化を抑制できる。
本発明のポリエステル組成物の製造に用いられるその他触媒は公知のエステル交換触媒、重縮合触媒、助触媒を用いることができる。例えば、重合触媒としてはアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、エステル交換触媒及び助触媒としては、マンガン化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、コバルト化合物、亜鉛化合物、リチウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明のポリエステル組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、末端封鎖剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、可塑剤もしくは消泡剤またはその他の添加剤等を必要に応じて配合しても良い。配合の方法は、ポリエステルの重合工程中で添加する方法や重合後のポリエステル組成物へ別途溶融混練する方法でもかまわない。
以下、本発明におけるポリエステル組成物の製造方法の具体例を挙げるが、これに制限されない。
250℃にて溶解したBHTが仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸とエチレングリコール(テレフタル酸に対し1.15倍モル)のスラリーをスネークポンプにて徐々に添加し、エステル化反応を進行させる。反応系内の温度は245~255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とする。
こうして得られたエステル化反応物を重合装置に移送し、Mn元素を含む化合物、重縮合触媒、K元素を含む化合物を添加する。その後、エチレングリコールを追加添加し、リン化合物、リン酸アルカリ金属塩を添加する。これらの操作の際は、エステル化物が固化しないように、反応系内の温度を240~255℃に保つことが好ましい。
その後、重合装置内の温度を290℃まで徐々に昇温しながら、重合装置内の圧力を常圧から250Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させる。所定の撹拌トルクに到達した段階で反応を終了とし、反応系内を窒素ガスで常圧にし、溶融ポリマーを冷水中にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル組成物を得る。
本発明のポリエステル組成物は、線状オリゴマー飛散量が少なく、さらに良好な熱安定性および静電印加性を有している。したがって、フィルム、繊維、成形体など各種用途に好適に用いることができ、特に本発明のポリエステルフィルムは高透明性の求められる光学フィルムや離型フィルムなどの高品位フィルムに用いることが可能である。
フィルムとしては、本発明のポリエステル組成物から構成される単膜フィルムでも本発明のポリエステル組成物を含有する層を少なくとも1層有する積層フィルムでもよい。特に積層フィルムの場合は、本発明のポリエステル組成物を含有する層を少なくとも片表面に有する積層フィルムが好ましい。本発明のポリエステル組成物を含有する層がフィルム表面に存在する場合、フィルム表面からの線状オリゴマーの飛散が抑制されるため、線状オリゴマー欠点の発生を効果的に抑制できる。
以下実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下の方法で測定した。以下記載する方法は、本発明のポリエステル組成物チップなど単成分の場合の測定方法を記載しているが、積層フィルムなどのように複数樹脂からなる成形体の場合、各層の樹脂を削り出すなどして単離し、分析を行う。
なお、実施例26、27、28は比較例6、7、8に、実施例5、6、10、14、15、18、22~24、29、33、35~37は参考例と読み替える。
(1)ポリエステル組成物の固有粘度(単位:dl/g)
ポリエステル組成物0.1gを0.001g以内の精度で秤量し、10mlのo-クロロフェノールを用いて100℃×30分間加熱して溶解した。溶液を室温まで冷却し、25℃の水槽中に設置したオストワルド粘度計に該溶液を8ml仕込み、標線を通過する秒数を計測した(A秒)。
また、o-クロロフェノールのみ8ml用いて前記と同様に25℃の水槽中に設置したオストワルド粘度計で標線を通過する秒数を計測した(B秒)。
固有粘度は次の計算式で計算した。
IV=-1+[1+4×K×{(A/B)-1}]^0.5/(2×K×C)
ここでKは0.343,Cは試料溶液の濃度(g/100ml)である。
(2)ポリエステル組成物のCOOH末端基量(単位:eq/ton)
Mauriceの方法に準じて測定した。(文献 M.J.Maurice,F.Huizinga,Anal.Chem.Acta、22、363(1960))。
すなわち、ポリエステル組成物0.5gを0.001g以内の精度で秤量する。該試料にo-クレゾール/クロロホルムを7/3の質量比で混合した溶媒50mlを加え、加熱して内温が90℃になってから20分間加熱攪拌して溶解する。また混合溶媒のみもブランク液として同様に別途加熱する。溶液を室温に冷却し、1/50Nの水酸化カリウムのメタノール溶液で電位差滴定装置を用いて滴定をおこなう。また、混合溶媒のみのブランク液についても同様に滴定を実施する。
ポリエステル組成物のCOOH末端基量は、以下の式により計算した。
COOH末端基量(当量/トン)={(V1-V0)×N×f}×1000/S
ここでV1は試料溶液での滴定液量(mL)、V0はブランク液での滴定液量(mL)、
Nは滴定液の規定度(N)、fは滴定液のファクター、Sはポリエステル組成物の質量(g)である。
(3)ポリエステル組成物のアルカリ金属元素(Na元素、K元素など)の定量(単位:ポリエステル組成物に対する質量比 ppm)
原子吸光法((株)日立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度型180-80、フレーム:アセチレン-空気)にて定量を行った。
(4)ポリエステル組成物中のMn元素、P元素の定量(単位:ポリエステル組成物に対する質量比 ppm)
理学電機(株)製蛍光X線分析装置(型番:3270)を用いて定量を行った。
(5)ポリエステル組成物の線状オリゴマー飛散量(単位:ポリエステル組成物に対する質量比 ppm)
直径16.5mm×長さ165mmの試験管にチップ状ポリエステル組成物8gを計量し、真空乾燥機に静置した。10Torr以下まで減圧した後、150℃まで乾燥機内を昇温した。150℃到達後、3時間真空乾燥し、その後乾燥機内を180℃まで昇温した。180℃到達後、7.5時間真空乾燥した。その後、試験管内を窒素雰囲気とした状態で、290℃のオイルバスに試験管を浸し、30分熱処理を行った樹脂を、内径10mmのチューブで抜き取り、氷水で急冷することで樹脂柱を得た。得られた樹脂柱をチップ状にカットし、室温で3時間真空乾燥して測定用サンプルとした。
測定用サンプル3gをCCるつぼ(三商製、外径65mm、容量100mL、型式:B-3)に均等に敷き詰めた後、220℃に加熱したホットプレート上に載せ、るつぼにフラットシャーレ(アズワン製、外径×高さ:91mm×20mm、型番:FS-90A)を被せた。8時間加熱して、線状オリゴマー飛散物をフラットシャーレに捕集した。
捕集した飛散物をメタノール/N,N-ジメチルホルムアミド(容積比7/3)の混合溶媒に溶かして測定サンプル溶液を作成し、そのサンプル溶液に含まれる線状オリゴマー(TPA、MHT、BHT)の量を液体クロマトグラフィーにて定量し、線状オリゴマー飛散量総量を計算した。
液体クロマトグラフィーの測定条件は以下の通りである。
メーカー:(株)島津製作所
機種名:LCMS2020
カラム:Inertsil OSD-3 3.0×250mm、5μm(GLサイエンス)
移動相:A(0.1%リン酸水溶液)、B(アセトニトリル)
タイムプログラム:
0分から15分 B:15%
15分から25分 B:15→100%
25分から35分 B:100%
流量:0.8mL/分
注入量:10μL
カラム温度:45℃
検出:モニター波長UV240nm。
(6)ゲル化率(単位:ポリエステル組成物に対する質量比 wt%)[熱安定性]
ポリステル組成物を凍結粉砕機(Sprex CertiPerp社製)にて粉砕し、容量50mlのステンレスビーカーに0.5g秤量した。真空乾燥機を用いて、50℃で2時間真空乾燥した後、酸素濃度1%の窒素ガス流通下(流量0.5L/分)、300℃で6時間加熱処理を行った。これを、20mlのo-クロロフェノールで、160℃で1時間溶解し、放冷した。この溶液を、ガラスフィルター(柴田科学(株)製、3GP40)を使用してろ過し、ジクロロメタンにてガラスフィルターを洗浄した。ガラスフィルターを130℃で2時間乾燥し、ろ過前後のろ過器の重量の増加分より、ポリエステル重量(0.5g)に対する重量分率を求め、ゲル化率とした。
(7)溶融比抵抗(単位:Ω・cm)[静電印加性]
銅版2枚を電極として、間にテフロン(登録商標)のスペーサーを挟んで電極を作成し、この電極を290℃で溶融した真空乾燥済みのポリポリエステル組成物中(真空乾燥条件:180℃、3時間)に沈め、電極間に5000V(V)の電圧を加えた時の電圧(V’)を測定し、次式から溶融比抵抗(ρ)を算出した。
ρ(Ω・cm)=V・S・R/(I・V’)
(但し、式中において、V:印加電圧(V)、S:電極面積(cm)、R:抵抗体抵抗(Ω)、I:電極間距離(cm)、V’:測定電圧(V)を示す)。
(実施例1)
250℃にて溶解したBHT105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させる。反応系内の温度は245~250℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とし、BHTを得た。
エステル化反応器から105重量部(PET100重量部相当)のエステル化反応物を重合装置へ溶融状態で仕込み、温度を255℃とした。酢酸マンガン4水和物のエチレングリコール溶液(Mn元素として23ppm)、三酸化二アンチモンのエチレングリコールスラリー(Sb元素として255ppm)、水酸化カリウムのエチレングリコール溶液(K元素として10ppm)を添加した。その後、エチレングリコール5重量部(テレフタル成分対比0.15倍モル)を追加添加して解重合を進め、次いでリン酸(P元素として18.8ppm)とリン酸2水素ナトリウム2水和物(Na元素として14ppm、P元素として18.9ppm)の混合エチレングリコール溶液を添加した。
その後、重合装置内を290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を常圧から250Pa以下まで減圧し、290℃で所定の攪拌トルクを示すまで重合反応させた。重合反応終了後、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置内の溶融ポリエステルをストランド状に水槽へ吐出して冷却後、カッティングしてチップ状のポリエステル組成物を得た。得られたポリエステル組成物の特性を表1に示す。
実施例1で得られたポリエステル組成物は、線状オリゴマー飛散量が少なく、さらに熱安定性および静電印加性が良好であり、光学フィルムや離型フィルムに好適な物性を有していた。
(実施例2~5、比較例1、2)
Mn元素を含む化合物の添加量を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。得られたポリエステル組成物の特性を表1に示す
実施例2~5にて得られたポリエステル組成物は、熱安定性および静電印加性が良好であり、線状オリゴマー飛散量も少ないことから、光学フィルムや離型フィルムに好適な物性を有していた。
比較例1で得られたポリエステル組成物は、Mn元素を含む化合物の添加量を添加していないため、ゲル化率が増加し、不合格であった。
比較例2で得られたポリエステル組成物は、Mn元素を含む化合物の添加量が多いため、線状オリゴマー飛散量が増加し、不合格であった。
Figure 0007415630000001
(実施例6~10、比較例3~5)
K元素を含む化合物の添加量を表2の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。得られたポリエステル組成物の特性を表2に示す
実施例6~10にて得られたポリエステル組成物は、熱安定性および静電印加性が良好であり、線状オリゴマー飛散量も少なく、合格レベルであった。
比較例3で得られたポリエステル組成物は、K元素を含む化合物の添加量を添加していないため、線状オリゴマー飛散量および溶融比抵抗が増加し、不合格であった。
比較例4で得られたポリエステル組成物は、K元素を含む化合物の添加量が少ないため、線状オリゴマー飛散量が多く、不合格であった。
比較例5で得られたポリエステル組成物は、K元素を含む化合物の添加量が多いため、線状オリゴマー飛散量が多く、不合格であった。
Figure 0007415630000002
(実施例11~18)
リン酸2水素ナトリウム2水和物またはリン酸の添加量を表3の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。得られたポリエステル組成物の特性を表3に示す
実施例11~18にて得られたポリエステル組成物は、熱安定性および静電印加性が良好であり、線状オリゴマー飛散量も少なく、合格レベルであった。
Figure 0007415630000003
(実施例19~32)
Mn元素を含む化合物、K元素を含む化合物、Na元素を含む化合物、P元素を含む化合物の種類および/またはその添加量を表4の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。得られたポリエステル組成物の特性を表4に示す
実施例19~32にて得られたポリエステル組成物は、熱安定性および静電印加性が良好であり、線状オリゴマー飛散量も少なく、合格レベルであった。
(実施例33)
テレフタル酸ジメチル101.0重量部、エチレングリコール64.6重量部(ジカルボン酸成分の2倍モル)の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込んだ。内容物を150℃で溶解した後、酢酸マンガン4水和物のエチレングリコール溶液(Mn元素として40ppm)、三酸化二アンチモンのエチレングリコールスラリー(Sb元素として255ppm)添加し撹拌した。240℃まで昇温しながらメタノールを留出させ、所定量のメタノールが留出した後、水酸化カリウムのエチレングリコール溶液(K元素として10ppm)を添加し、さらにリン酸(P元素として18.8ppm)とリン酸2水素ナトリウム2水和物(Na元素として14ppm、P元素として18.9ppm)の混合エチレングリコール溶液を添加してエステル交換反応を終了した。
その後、反応物を重合装置に移送し、次いで重合装置内を290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を常圧から250Pa以下まで減圧し、290℃で所定の攪拌トルクを示すまで重合反応させた。重合反応終了後、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置内の溶融ポリエステルをストランド状に水槽へ吐出して冷却後、カッティングしてチップ状のポリエステル組成物を得た。得られたポリエステル組成物の特性を表5に示す。
実施例33にて得られたポリエステル組成物は、熱安定性および静電印加性が良好であり、線状オリゴマー飛散量も少なく、合格レベルであった。
Figure 0007415630000004
Figure 0007415630000005
(実施例34~37)
K元素を含む化合物の種類および/またはその添加量を表5の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。得られたポリエステル組成物の特性を表5に示す
実施例34~37にて得られたポリエステル組成物は、熱安定性および静電印加性が良好であり、線状オリゴマー飛散量も少なく、合格レベルであった。
Figure 0007415630000006

Claims (13)

  1. ポリエステル組成物に対する質量比に関する式(I)~(III)を満たし、アルカリ金属元素を2種類以上含有することを特徴とするポリエステル組成物(チタン触媒を用いたものを除く)。
    線状オリゴマー飛散量≦18ppm (I)
    5ppm≦Mn元素含有量≦40ppm (II)
    6ppm≦K元素含有量≦100ppm (III)
    (線状オリゴマー飛散量とは、窒素雰囲気下、290℃で30分間溶融したサンプル3gをるつぼに入れた後、220℃に加熱したホットプレート上に載せ、るつぼにフラットシャーレを被せ8時間加熱し、線状オリゴマー飛散物をフラットシャーレに捕集し、当該飛散物から、得た線状オリゴマー飛散量総量である。)
  2. Na元素を含有することを特徴とする請求項1記載のポリエステル組成物。
  3. P元素を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル組成物。
  4. リン酸アルカリ金属塩を含有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のポリエステル組成物。
  5. 溶融比抵抗が1.0×10Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のポリエステル組成物。
  6. COOH末端基量が30eq/t以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のポリエステル組成物。
  7. ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のポリエステル組成物。
  8. 請求項1のポリエステル組成物を含有するポリエステルフィルム。
  9. 請求項1のポリエステル組成物を含有する層を少なくとも1層有する積層ポリエステルフィルム。
  10. ジカルボン酸またはジカルボン酸エステルおよびジオールをエステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応してポリエステル組成物を製造するに際して、Mn元素を含む化合物、K元素を含む化合物およびリン酸アルカリ金属塩を重縮合反応終了前に添加(アルカリ金属元素を2種類以上)し、かつその添加量がポリエステル組成物に対する質量比に関する式(IV)、(V)を満たすことを特徴とするポリエステル組成物(チタン触媒を用いたものを除く)の製造方法。
    5ppm≦Mn元素添加量≦40ppm (IV)
    6ppm≦K元素添加量≦100ppm (V)
  11. K元素を含む化合物が塩基性化合物であることを特徴とする請求項1のポリエステル組成物の製造方法。
  12. Na元素を含む化合物を添加することを特徴とする請求項10または11に記載のポリエステル組成物の製造方法。
  13. ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1~1のいずれか1項に記載のポリエステル組成物の製造方法。
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