JP7310165B2 - ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
しかしながら、用途が幅広くなるにつれて、求められる品位も向上し、例えば、偏光板離型用フィルムであれば近年、高輝度タイプの液晶ディスプレイの普及に伴い、フィルム中の微小成分が輝点となるため、検査精度の低下を招く問題が生じている。そのため、より欠点の少ない、高品位のフィルムが要求されている。
これらの課題に対して、以下の文献に示されるような検討がされてきている。
特許文献1滑剤として投入している炭酸カルシウム粒子分散性の向上を目的にリン化合物を添加することが記載されている。
特許文献2では、樹脂の耐熱性を向上させることによりゲル異物発生が抑制されることが記載されている。
本発明の目的は、加熱による粒子の再凝集が少なく、さらに線状オリゴマー発生量が少なく、良好な熱安定性、耐加水分解性および粒子分散性を有する粒子含有ポリエステル樹脂組成物を提供することにある。
本発明の目的は以下の手段によって達成される。
(1)式(I)~(III)を満たし、さらに粒子を含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
(M3-M1)-0.03S>0 (I)
ここで、M1:ポリエステル樹脂組成物のアルカリ金属元素の含有量(mol/t)、M2:ポリエステル樹脂組成物のMn元素の含有量(mol/t)、およびM3:ポリエステル樹脂組成物のP元素の含有量(mol/t)であり、ポリエステル樹脂組成物中の粒子の表面積:S[m2/樹脂g]である。
(M1+M2/2)/M3<1 (II)
B/A≦2 (III)
(Aはチップ中の粗粒の数、Bはチップ加熱後の粗粒の数)
(2)M3≦2.1(mol/t)であることを特徴とする(1)のポリエステル樹脂組成物。
(3)粒子が炭酸カルシウムであることを特徴とする(1)又は(2)に記載のポリエステル樹脂組成物。
(4)線状オリゴマー発生量≦500ppmであることを特徴とする(1)~(3)のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
(5)ΔCOOH末端基量が30eq/t以下であることを特徴とする(1)~(4)のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
(6)ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする(1)~(5)のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物
本発明のポリエステル樹脂組成物とは、(1)式(I)~(III)を満たし、さらに粒子を含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物である。
(M3-M1)-0.03S>0 (I)
ここで、M1:ポリエステル樹脂組成物のアルカリ金属元素の含有量(mol/t)、M2:ポリエステル樹脂組成物のMn元素の含有量(mol/t)、およびM3:ポリエステル樹脂組成物のP元素の含有量(mol/t)であり、ポリエステル樹脂組成物中の粒子の表面積:S[m2/樹脂g]である。
(M1+M2/2)/M3<1 (II)
B/A≦2 (III)
(Aはチップ中の粗粒の数、Bはチップ加熱後の粗粒の数)
本発明のポリエステル樹脂組成物は、P元素の含有量:M3(mol/t)とアルカリ金属元素の含有量M1(mol/t)と樹脂分散中の粒子の表面積:Sが、式(I)で表される関係を満たす必要がある。式(I)の下限としては、0よりも大きいことが必要である。上限としては、3.0以下であることが好ましく、2.0以下がより好ましい。上記範囲とすることで、粒子分散性の発揮により重合時の粒子分散性の向上と、P元素による、粒子表面の保護による、粒子分解の抑制が可能になり、粒子の凝集、分解がしにくいポリエステル樹脂組成物を提供することが可能である。
式(I)のSは粒子の表面積を示し、係数である0.03はポリエステル樹脂組成物における粒子表面のイオン化率を示している。すなわち、0.03Sの項は粒子のみかけイオン濃度(mol/t)を示すこととなる。そこでリン化合物はアルカリ金属との親和性が高く、リン化合物が第一に反応するアルカリ金属の含有量をあらかじめ引き、第二に粒子の表面に反応するため、0.03Sの差分を算出する。残る値は、ポリエステル樹脂組成物中の未反応のリン元素量を示すこととなるため、式(I)を達成し得ない場合、粒子の保護作用が不足し、粒子の凝集、分解を引き起こすことを示している。
本発明のポリエステル樹脂組成物はチップ中の粗粒A(個/mm2)と加熱チップ中の粗粒B(個/mm2)が式(III)で表される関係を満たす必要がある。ポリエステル樹脂組成物はチップ中の粗粒の数Aが30個/mm2以下であることが好ましい。さらにチップ加熱後の粗粒の数≦50個/mm2以下であることが好ましい。式(III)の上限としては、2.0以下であることが必要であり、1.4以下がより好ましい。上記の数値範囲内にすることで、ポリエステル樹脂組成物の加熱による粒子の再凝集を防ぐことができる。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物中のアルカリ金属元素の含有量M1は特に限定しないが、下限として好ましくは0.25(mol/t)以上であり、より好ましくは0.50(mol/t)以上である。また上限として好ましくは2.10(mol/t)未満であり、より好ましくは1.00(mol/t)以下である。上記範囲とすることで、耐熱性、耐加水分解性が良好となり、分解による線状オリゴマー発生を抑制できる。なお、耐加水分解性に優れる点から、アルカリ金属元素がナトリウムまたはカリウムであることが好ましい。
本発明の樹脂分散中の粒子の表面積:Sとは下記式により算出される値であり、特に規定しないが、下限としては5(m2/樹脂g)以上が好ましく、15(m2/樹脂g)以上はさらに好ましい。上限としては133(m2/樹脂g)以下が好ましく、80(m2/樹脂g)以下はさらに好ましい。 上記範囲とすることで、成形品とした際に優れたアンチブロッキング性を実現することができる。
S=6w/rρ
w:樹脂中の粒子重量率(g/樹脂g)
r:平均粒径の半径(μm)
ρ:粒子の真密度(kg/m3)
各特性の求め方については後述する。
本発明において、線状オリゴマーとは、ポリエステルのモノマー成分やオリゴマー成分であり、具体的にはポリエステルを構成するジカルボン酸成分や、ジカルボン酸のカルボキシル基とジオールのヒドロキシル基が反応してできる鎖状の反応物のことを指し、環状三量体のような環状のオリゴマーは含めない。具体的にはジカルボン酸単量体およびグリコール成分とのモノエステル、ジエステルである。この線状オリゴマーは昇華や析出しやすく、溶融成形などの加工工程において、工程汚れや成形品の表面汚れを引き起こすものである。代表的なポリエステルであるPETを例に挙げると、TPA(テレフタル酸)、テレフタル酸とエチレングリコールの反応物である、MHT(モノヒドロキシエチルテレフタレート)およびBHT(ビスヒドロキシエチルテレフタレート)である。これら線状オリゴマーの総量として、発生量が1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは700ppm以下、さらに好ましくは400ppm以下である。線状オリゴマーの発生量を上記範囲内とすることで、成形加工時に問題となる線状オリゴマーに起因した工程汚れや表面汚れの低減を実現することができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物はCOOH末端基量が30eq/t以下であることが好ましい。20eq/t以下であることがより好ましく、15eq/t以下であることがさらに好ましい。上記範囲とすることで、得られるポリエステル樹脂組成物に良好な耐加水分解性を付与することが可能となり、加水分解に起因する線状オリゴマーの発生を抑制できる。
本発明のポリエステル組成物の製造方法は、ジカルボン酸成分またはそのエステルとジオール成分を主原料とし、次の2段階の工程からなる。すなわち、(A)エステル化反応、または(B)エステル交換反応からなる1段階目の工程と、それに続く(C)重縮合反応からなる2段階目の工程である。
本発明のポリエステル組成物を製造する原料は、ジカルボン酸またはジカルボン酸エステルとジオールを用いることができ、2種類以上を組み合わせて使用することも可能である。
また(B)エステル交換反応の工程は、ジカルボン酸アルキルエステルとジオールとをエステル交換反応させ、所定量のアルコールが留出するまで反応を行い、低重合体を得る工程である。エステル交換反応にて低重合体を得る場合、反応性、耐熱性の観点から、ジカルボン酸アルキルエステルとジオールのモル比(ジオール/ジカルボン酸アルキルエステル)は1.7以上2.3以下の範囲であることが好ましい。上記範囲とすることで、エステル交換反応を効率的に進行させることができ、ジオールの2量体の副生を抑えることができることから、耐熱性を良好にすることができる。
また、本発明の製造方法は、バッチ重合、半連続重合、連続重合が適用できる。
本発明のポリエステル組成物の製造方法において、(A)エステル化反応に用いられる触媒は、マンガン、コバルト、亜鉛、チタン、カルシウムなどの化合物を用いても構わないが、重縮合反応段階での熱分解や異物の発生などの観点から、エステル化反応は無触媒で実施することが好ましい。ここで、(A)エステル化反応は無触媒においてもカルボン酸の自己触媒作用によって、反応は十分に進行する。また、(B)エステル交換反応に用いられる触媒としては、公知のエステル交換触媒を用いることができる。エステル交換触媒としては、有機マンガン化合物、有機マグネシウム化合物、有機カルシウム化合物、有機コバルト化合物、有機リチウム化合物などが挙げられ、具体的には、炭酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、酸化物、水酸化物などがあるが、これに限定されるものではない。
また、(C)重縮合反応に用いられる触媒は、公知の重縮合触媒を用いることが出来る。例えば、アンチモン、チタン、アルミニウム、スズ、ゲルマニウムなどの化合物などが挙げられる。
チタン化合物としては、チタンキレート錯体、チタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物などが挙げられる。
アルミニウム化合物としては、カルボン酸アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート化合物、塩基性アルミニウム化合物などが挙げられる。
スズ化合物としては、アルキル基を持つスズ化合物、ヒドロキシル基を持つスズ化合物などが挙げられる。
この中でも、重合時間および経済性の観点から、アンチモン化合物を重縮合反応触媒として用いることが好ましい。
Mn元素を含む化合物は特に限定しないが、酢酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン、硫酸マンガンなどが挙げられ、溶解性及び触媒活性の点から酢酸マンガンが好ましい。
また、添加する際の形態は粉体、スラリー、溶液のいずれでもよく、分散性の点から、溶液として添加することが好ましい。この時の溶媒は、ポリエステル組成物のジオール成分と同一にすることが好ましい。例えば、PETの場合はエチレングリコールを用いることが特に好ましい。
アルカリ金属元素を含む化合物を添加する際の形態は粉体、スラリー、溶液のいずれでもよく、分散性の点から、溶液として添加することが好ましい。この時の溶媒は、ポリエステル組成物のジオール成分と同一にすることが好ましく、PETの場合はエチレングリコールを用いることが特に好ましい。
リン化合物の添加量は特に規定しないが、ポリエステル組成物中のP元素の含有量M3は0.81(mol/t)以上2.10(mol/t)以下になるように添加することが好ましい。上記範囲とすることで、重合の遅延を起こすことがなく、ポリエステル組成物に良好な粒子分散性を付与することができる。
(M1+M2/2)/M3<1(II)
式(II)の下限としては、0.4以上であることがより好ましい。上限としては、1.0以下である必要があり、0.8以下であることがさらに好ましい。上記の数値範囲内にすることで、得られるポリエステル組成物の耐熱性、耐加水分解性を付与することが可能となり、加工工程における線状オリゴマー発生量を低減できる。
本発明の粒子の粒径を限定しないが、ポリエステル中の粒子の体積平均径が3.0μm以下の場合、粒子の凝集が少なく、良好な粒子分散性を有するポリエステル組成物を提供することが可能である。体積平均径が2.0μm以下であることがより好ましく、1.5μm以下であることがさらに好ましい。
粒子を添加する際の形態は粉体、スラリーのいずれでもよく、粒子分散性の点から、スラリーとして添加することが好ましい。スラリーとして添加する場合、粒子分散溶媒はポリエステル組成物のジオール成分と同一にすることが好ましく、PETの場合はエチレングリコールを用いることが特に好ましい。
また、アルカリ金属化合物、リン化合物および粒子を添加する際、ポリエステル樹脂組成物は、P元素の含有量:M3(mol/t)とアルカリ金属元素の含有量M1(mol/t)と樹脂分散中の粒子の表面積:Sが、式(I)で表される関係を満たす必要がある。式(I)の下限としては、0よりも大きいことが必要である。上限としては、3.0以下であることが好ましく、2.0以下がより好ましい。上記範囲とすることで、粒子分散性の発揮により重合時の粒子分散性の向上と、P元素による、粒子表面の保護による、粒子分解の抑制が可能になり、粒子の凝集、分解がしにくいポリエステル樹脂組成物を提供することが可能である。
Mn元素を含む化合物、アルカリ金属元素を含む化合物および粒子の添加時および添加後は、反応系内を攪拌することが好ましい。攪拌することで添加物をより均一に分散でき、透明性を向上させることができる。
以下、本発明におけるポリエステル組成物の製造方法の具体例を挙げるが、これに制限されない。
その後、重合装置内の温度を290℃まで徐々に昇温しながら、重合装置内の圧力を常圧から250Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させる。所定の撹拌トルクに到達した段階で反応を終了とし、反応系内を窒素ガスで常圧にし、溶融ポリエステルを冷水中にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル組成物を得る。
本発明のポリエステル樹脂組成物はチップ中の粗粒A(個/mm2)と加熱チップ中の粗粒B(個/mm2)が式(III)で表される関係を満たす必要がある。ポリエステル樹脂組成物はチップ中の粗粒の数Aが30個/mm2以下であることが好ましい。さらにチップ加熱後の粗粒の数≦50個/mm2以下であることが好ましい。式(III)の上限としては、2.0以下であることが必要であり、1.4以下がより好ましい。上記の数値範囲内にすることで、ポリエステル樹脂組成物の加熱による粒子の再凝集を防ぐことができる。
B/A≦2 (III)
本発明で得られたポリエステル組成物は、公知の成形加工方法で成形することができ、フィルム、繊維、ボトル、射出成形品など各種製品に加工することができる。
本発明のポリエステル組成物を各製品に加工する際に、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤、例えば、顔料および染料を含む着色剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、核剤、可塑剤、離型剤などの添加剤を1種以上添加することもできる。
本発明のポリエステル組成物は、耐加水分解性、熱安定性および粒子分散性に優れ、溶融成形や加工工程にて発生するゲル組成物や線状オリゴマー発生量が少ない。したがってフィルム、繊維、ボトル、射出成形品など各製品として利用することができ、特に光学フィルムや離型フィルムなどの高品位フィルムに用いることが可能である。
ポリエステル樹脂組成物0.1gを0.001g以内の精度で秤量し、10mlのo-クロロフェノール(以降OCPと呼ぶ)を用いて100℃×30分間加熱して溶解した。溶液を室温まで冷却し、25℃の水槽中に設置したオストワルド粘度計に該溶液を8ml仕込み、標線を通過する秒数を計測した(A秒)。
また、OCPのみ8ml用いて前記と同様に25℃の水槽中に設置したオストワルド粘度計で標線を通過する秒数を計測した(B秒)。
ここでKは0.343,Cは試料溶液の濃度(g/100ml)である。
原子吸光法((株)日立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度型180-80、フレーム:アセチレン-空気)にて定量を行った。
理学電機(株)製蛍光X線分析装置(型番:3270)を用いて定量を行った。
ポリエステル樹脂組成物をOCPに溶解し、遠心分離を行い、固形分を乾燥してから秤量し、重量値から含有量を算出した。
ポリエステル組成物をプラズマ処理し、日立ハイテクノロジーズ製電界放射型操作電子顕微鏡(型番:Regulus8100形)、日本ローパー製Image-Pro画像処理ソフトにて、粒子の体積平均径測定をおこなった。また、粒子径を解析する際は倍率5000倍で20視野以上の測定を行い、最低200個以上の粒子から円相当径を測定し、それを擬似的な立体球状とみなし、体積平均粒子径を算出した。
JIS R1620「ファインセラミックス粉末の粒子密度測定方法」に準拠したピクノメーター法(液相置換法)にて粒子の真密度を測定する。
ポリマー5gを試験管に採取し、160℃で5時間真空乾燥後、290℃のオイルバス中で窒素気流300ml/分流通下、6時間溶融した。溶融物の固有粘度[η]6hrを測定し、溶融前の測定値[η]0h[η]0hr を用いて下記式により主鎖分断率を算出した。
主鎖分断率(%)=0.26([η]6hr-1/0.77-[η]0hr-1/0.77)
この値が0.6%以上なら×、0.6%未満なら○とした。
凍結粉砕を実施したポリエステル組成物を0.1g計量し、160℃、6hr真空乾燥を実施し、窒素雰囲気下のアンプル管に封入し、290℃で20分溶融処理を行った。溶融処理を行ったアンプル管中試料を0.5%ギ酸HFIP(ヘキサフルオロ-2-プロパノール)1mlで溶解させ、クロロホルム1mlを加え混合し25mlメスフラスコに移した。アンプル管をクロロホルム2mlで洗い、洗液はメスフラスコに移した。メスフラスコに0.5%ギ酸DMF/メタノール=3/7を徐々に加え、25mlに定容した。その後、孔径0.45umのPTFEメンブレンフィルターでろ過した溶液を試料溶液とした。得られた試料溶液を、LC/UVクロマトグラムで分析することにより、溶融処理後のポリエステル組成物中の線状オリゴマー(TPA、MHET、BHET)の含有量を測定し、TPA、MHET、BHETの合計値を線状オリゴマー発生量とした。
Mauriceの方法によって測定した(文献 M.J.Maurice,F.Huizinga,Anal.Chem.Acta、22、363(1960))。
すなわち、ポリエステル樹脂組成物0.5gを0.001g以内の精度で秤量する。該試料にo-クレゾール/クロロホルムを7/3の質量比で混合した溶媒50mlを加え、加熱して内温が90℃になってから20分間加熱攪拌して溶解する。また混合溶媒のみもブランク液として同様に別途加熱する。溶液を室温に冷却し、1/50Nの水酸化カリウムのメタノール溶液で電位差滴定装置を用いて滴定をおこなう。また、混合溶媒のみのブランク液についても同様に滴定を実施する。
ポリエステル樹脂組成物のCOOH末端基量は、以下の式により計算した。
COOH末端基量(eq/t)={(V1-V0)×N×f}×1000/S
ここでV1は試料溶液での滴定液量(mL)、V0はブランク液での滴定液量(mL)、Nは滴定液の規定度(N)、fは滴定液のファクター、Sはポリエステル樹脂組成物の質量(g)である。
ポリエステル組成物を飽和水蒸気下、155℃で4時間湿熱処理し、処理前後のCOOH末端基量を測定することで、COOH末端基増加量(ΔCOOH=処理後COOH-処理前COOH)を算出し耐加水分解性を評価した。
なお、処理装置はPRESSER COOKER 306SIII(HIRAYAMA製作所(株)製)を使用した。
ポリエステル組成物をプラズマ処理し、日立ハイテクノロジーズ製電界放射型操作電子顕微鏡(型番:Regulus8100形)、日本ローパー製Image-Pro画像処理ソフトにて、粒子の粒度分布測定をおこなった。粒度分布の解析に際し倍率500倍で20視野以上の測定を行い、最低10000個以上の粒子を確認する。個数平均粒径の3倍以上の粒子径を持つものは粗粒と判断する。確認した面積から検出された粗粒の数より単位面積(1mm2)当たりの粗粒数算出し、凝集粒子数とする。
ポリエステル樹脂組成物を300℃、8時間溶融加熱処理した後、加熱処理を実施していない樹脂と同様の方法で求める。
ポリエステル樹脂組成物を150℃で4時間乾燥、結晶化させたのち、窒素雰囲気下で押出機に供給し、押出温度280℃で5umのフィルターを通し、Tダイからキャスティングドラム(20℃)にて急冷、静電印加法にてシート化した後に、長手方向に2.0~5.0倍で縦延伸し、次いで20~50℃の温度のロール群で冷却する。続いて、縦延伸されたフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、90~140℃の温度に加熱された雰囲気中で、長手に垂直な方向に横延伸する。延伸倍率は、縦と横それぞれ2.5~4.5倍に延伸して、二軸延伸されたフィルムの平面性と寸法安定性を付与するために、テンター内で150~230℃の温度で熱固定を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却して巻き取り、31μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムをLEDライト(アトー製 HBLF-WSL1500、HBLF-WSL700)および角度調整が可能な第1の偏光板、受光手段として分解能50μmのCCDカメラ(ヒューテック製 GMFMB3B80)、角度調整が可能な第2の偏光板を組み合わせて複数配置されているクロスニコル検査器を用いて、フィルム1000mを検査し、検出サイズ100μm以上の輝点欠点個数を測定する。輝点欠点個数をクロスニコル検査での易検査性の指標としてそれぞれ評価した。(○以上を合格とした)。
○:200μm以上の輝点が0.6個/m2以下である。
△:200μm以上の輝点が0.6~1.0個/m2である。
×:200μm以上の輝点が1.0個/m2以上である。
250℃にて溶解したBHT105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させる。反応系内の温度は245~250℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とし、BHTを得た。
エステル化反応器から105重量部(PET100重量部相当)のBHTを重合装置へ溶融状態で仕込み、温度を255℃とした。酢酸マンガン4水和物のエチレングリコール溶液(Mn元素として0.46(mol/t))、三酸化二アンチモンのエチレングリコールスラリー(Sb元素として2.09(mol/t))を添加した。その後、エチレングリコール5重量部(テレフタル成分対比0.15倍モル)を追加添加して解重合を進め、次いでリン酸(P元素として0.84(mol/t))とリン酸2水素ナトリウム2水和物(Na元素として0.61(mol/t)、P元素として1.45(mol/t))の混合エチレングリコール溶液を添加した。リン化合物を添加した後、体積平均径が1umの炭酸カルシウム粒子を濃度が20wt%のエチレングリコールスラリーとして添加した(炭酸カルシウムとして1重量部)。
その後、重合装置内を290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を常圧から250Pa以下まで減圧し、290℃で所定の攪拌トルクを示すまで重合反応させた。重合反応終了後、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置内の溶融ポリエステルをストランド状に水槽へ吐出して冷却後、カッティングしてペレット状のポリエステル組成物を得た。得られたポリエステル組成物の特性を表2に示す。
実施例1で得られたポリエステル組成物は、熱安定性、耐加水分解性および粒子分散性が良好であり、線状オリゴマー発生量も少なくフィルムに輝点も無いことから、光学フィルムや離型フィルムに好適な物性を有していた。
表1に記載の通り、P元素を含む化合物の添加量を変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。
表2に記載の通り、実施例2~4にて得られたポリエステル樹成物は、熱安定性、耐加水分解性および粒子分散性が良好であり、線状オリゴマー発生量も少なく、実施例2はフィルム輝点欠点がみられたが、問題ないレベルであり、実施例3,4はフィルム輝点欠点がみられず、光学フィルムや離型フィルムに好適な物性を有していた。
表2に記載の通り、比較例1で得られたポリエステル組成物は、式(II)が1.30であり、耐熱性が劣り、線状オリゴマー発生量が多く粒子の凝集が確認され、フィルムに輝点欠点がみられた。
表2に記載の通り、比較例2で得られたポリエステル組成物は、式(II)が1.46であり、耐熱性が劣り、線状オリゴマー発生量が多く粒子の凝集が確認され、フィルムに輝点欠点がみられた。
アルカリ金属含有化合物の種類を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。
実施例5~9で得られたポリエステル組成物は、熱安定性、耐加水分解性および粒子分散性が良好であり、線状オリゴマー発生量も少なく、フィルム輝点欠点がみられず、良好であった。
表2に記載の通り、比較例3で得られたポリエステル組成物は、式(II)が1.57であり、耐熱性、耐加水分解性が劣り、フィルムに輝点欠点が確認された。
表2に記載の通り、比較例4で得られたポリエステル組成物は、式(II)が1.14であり、耐熱性、耐加水分解性が劣り、フィルムに輝点欠点が確認された。
表2に記載の通り、比較例5で得られたポリエステル組成物は、式(II)が1.56であり、耐熱性、耐加水分解性が劣り、フィルムに輝点欠点が確認された。
酢酸Mnの添加量を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。
実施例10~13で得られたポリエステル組成物は、熱安定性、耐加水分解性および粒子分散性が良好であり、線状オリゴマー発生量も少なくフィルムに輝点も見られなかった。
表2に記載の通り、比較例6,7にて得られたポリエステル組成物は、式(I)が0以下であり、線状オリゴマー発生量が多く、粒子の凝集が確認され、フィルムに輝点欠点が確認された。
比較例8にて得られたポリエステル組成物は、マンガン元素を含む化合物を使用しておらず、式(II)中の表2に記載の通り、線状オリゴマー発生量が多く粒子の凝集が確認され、フィルムに輝点欠点が確認された。
粒子の添加濃度、粒子径およびP化合物の添加量を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。
実施例14~24で得られたポリエステル組成物は、熱安定性、耐加水分解性および粒子分散性が良好であり、線状オリゴマー発生量も少なくフィルムに輝点も見られなかった。
表2に記載の通り、比較例9~12にて得られたポリエステル組成物は、式(I)が0以下であり、粒子の凝集が確認され、フィルムに輝点欠点が確認された。
表2に記載の通り、比較例13にて得られたポリエステル組成物は、式(II)が1.51であり、耐熱性、耐加水分解性が劣り、線状オリゴマー発生量も多く、粒子の凝集が確認されフィルムに輝点欠点が確認された。
Claims (3)
- 式(I)~(VII)を満たし、さらに炭酸カルシウムの粒子を含有することを特徴とするポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
(M3-M1)-0.03S>0 (I)
(M1+M2/2)/M3<1 (II)
B/A≦2 (III)
0.25≦M1≦2.10 (IV)
0.25≦M2≦0.90 (V)
0.81≦M3≦2.10 (VI)
5≦S≦133 (VII)
ここで、M1:ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のアルカリ金属元素の含有量(mol/t)、M2:ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のMn元素の含有量(mol/t)、およびM3:ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のP元素の含有量(mol/t)であり、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物中の粒子の表面積:S[m2/樹脂g]である。Aはポリエチレンテレフタレート樹脂組成物中の粗粒の数であり、Bはポリエチレンテレフタレート樹脂組成物加熱後の粗粒の数である。 - 線状オリゴマー発生量≦1000ppmであることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
- ΔCOOH末端基量が30eq/t以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
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