JP6946950B2 - ポリエステル樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱性や耐加水分解性、光学特性に優れ、溶融成形や加工工程にて発生するゲル組成物や線状オリゴマー発生量、フィルターのろ圧上昇が少ないポリエステル樹脂組成物及びその製造方法に関するものである。
ポリエステル樹脂は機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。ポリエステル樹脂の中でも、特にポリエチレンテレフタレート(以降PETと記す)は、透明性や加工性に優れていることから、光学用フィルムや離型用フィルムなど高品位性が求められる用途に幅広く使われている。しかしながら、PETのモノマー成分や低分子量体(オリゴマー成分)といった線状オリゴマーは、ポリエステル樹脂の分解反応によって発生・増加し、これが成形や加工時に揮発・飛散し、成形品の表面汚れが起こることがある。加えて、この線状オリゴマーの飛散によって工程汚れを引き起こすこともあり、表面汚れや工程汚れによる成形品の品位悪化という問題が起こる。また、溶融成形時にポリエステル樹脂が熱劣化・酸化劣化することでゲル組成物が発生し、口金汚れなどの工程汚染が問題となる。さらにフィルム用途などでは、このゲル組成物がフィルム中にて輝点欠点となり、品質が低下する。近年、光学用フィルムや離型用フィルムなどは品位の要求がますます高くなっており、上記のような表面汚れや工程汚れを引き起こす線状オリゴマーやゲル組成物の発生を抑制するポリエステル樹脂が望まれている。これらの課題に対して、様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1には固相重合及び失活処理を行うことで、ポリエステル樹脂中のオリゴマー含有量および溶融時のオリゴマー再生量を低減させる技術が開示されている
また特許文献2には、イオン液体をポリエステル中に含有させることで線状オリゴマーの飛散を抑制する技術が開示されている。
さらに、特許文献3には、金属量とリン量のモル比率を高い範囲に制御し、ゲル組成物を抑制する技術が開示されている。
特開2003−176347号公報 国際公開第2016/167084号 特開2003−96280号公報
前述した従来の技術のように、固相重合や失活処理では、ポリエステル樹脂に含有または成形加工時に発生する環状オリゴマーを低減させるのみであり、溶融時の熱分解や加水分解という異なる機構により発生・増加する線状オリゴマーには効果がないため、製品の表面汚れや加工工程汚れを防ぐことができなかった。また、線状オリゴマーの飛散を抑制するためにイオン液体を添加した場合や、ゲル抑制のために金属とリンのモル比率を高い範囲にした場合、耐熱性や耐加水分解性が低下してしまうという課題があった。
本発明の目的は、耐熱性や耐加水分解性、光学特性に優れ、溶融成形や加工工程にて発生するゲル組成物や線状オリゴマー発生量、フィルターのろ圧上昇が少ないポリエステル樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有するものである。
(1)リン酸及びリン酸ナトリウム塩を用いてなり、下記式(I)〜(IV)、(VIII)を満たすことを特徴とするポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
線状オリゴマー発生量≦900ppm (I)
Sb含有量≦80ppm (II)
5ppm≦Mn含有量≦40ppm (III)
4ppm≦Na含有量≦40ppm (IV)
22eq/ton≦COOH末端基量≦35eq/ton (VIII)
(なお線状オリゴマー発生量は、温度23℃、湿度50%の環境下で24時間以上静置したポリエステル樹脂組成物を窒素下、290℃で20分溶融処理を行った際の線状オリゴマー増加量である。)
(2)ジカルボン酸成分またはそのエステル形成誘導体成分と、ジオール成分とをエステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応してポリエステルを製造するに際して、ポリエステルのIV(固有粘度)が0.4以下の段階で、マンガン化合物を添加し、かつ重縮合反応終了までの段階でリン酸とリン酸ナトリウム塩を添加し、下記式(V)〜(VII)、(IX)を満たすことを特徴とするポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
Sb含有量≦80ppm (V)
5ppm≦Mn含有量≦40ppm (VI)
4ppm≦Na含有量≦40ppm (VII)
22eq/ton≦COOH末端基量≦35eq/ton (IX)
本発明によれば、耐熱性や耐加水分解性、光学特性に優れ、溶融成形や加工工程にて発生するゲル組成物や線状オリゴマー発生量、フィルターのろ圧上昇が少ないポリエステル樹脂組成物を提供できる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸成分とジオール成分を重縮合して得られるポリエステル樹脂を指す。
本発明におけるジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、鎖状脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸など種々のジカルボン酸成分を用いることができる。その中でも、ポリエステル樹脂組成物の機械的特性、耐熱性、耐加水分解性の観点から、芳香族ジカルボン酸及びそのエステル形成誘導体成分であることが好ましい。特には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びこれらのエステル形成誘導体成分が重合性、機械的特性から好ましい。
本発明におけるジオール成分としては、各種ジオールを用いることができる。例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール、脂環式ジオールとしてはシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノールなどの各種脂環式ジオールや、ビスフェノールA、ビスフェノールS、スチレングリコール、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの芳香環式ジオールが例示できる。またジオール以外にもトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多官能アルコールも用いることができる。
この中で、反応系外に留出させやすいことから、沸点230℃以下のジオールであることが好ましく、低コストであり反応性が高いことから、脂肪族ジオールがより好ましい。さらに、機械的特性の観点からエチレングリコールが特に好ましい。
なお、本発明の効果の範囲を損なわない程度に、他のジカルボン酸成分やヒドロキシカルボン酸誘導体、ジオール成分が共重合されていてもよい。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、線状オリゴマー発生量が900ppm以下であることが必要である。なお、線状オリゴマー発生量は温度23℃、湿度50%の環境下に24時間以上静置したポリエステル樹脂組成物を窒素下、290℃で20分後加熱処理した際の線状オリゴマーの増加量である。通常、ポリエステル樹脂は溶融加工前に乾燥を行い、加水分解の抑制を図っている。線状オリゴマーはポリエステル樹脂の加水分解によっても発生するため、溶融加工前に乾燥しておくことが好ましいが、未乾燥状態のポリエステル樹脂であってもこの線状オリゴマー発生が抑制できれば乾燥工程を省くことができ、大幅なコストダウンとなる。本発明は、ポリエステル樹脂の耐熱性や耐加水分解性を向上させたことで、水分率が高い状態でも線状オリゴマー発生量を飛躍的に低減可能としたものである。
本発明において、線状オリゴマーとは、ポリエステル樹脂の熱分解や加水分解、酸化分解等の分解反応によって生成するモノマー成分やオリゴマー成分であり、具体的にはポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分や、ジカルボン酸のカルボキシル基とジオールのヒドロキシル基が反応してできる鎖状の反応物のことを指し、環状3量体のような環状のオリゴマーは含めない。具体的にはジカルボン酸単量体およびグリコール成分とのモノエステル、ジエステルである。この線状オリゴマーは昇華や析出しやすく、溶融成形などの加工工程において、工程汚れや成形体の表面汚れを引き起こすものである。
代表的なポリエステル樹脂であるPETを例に挙げると、TPA(テレフタル酸)、テレフタル酸とエチレングリコールの反応物である、MHET(モノヒドロキシエチルテレフタレート)およびBHET(ビスヒドロキシエチルテレフタレート)である。これら線状オリゴマーの総量として、発生量が900ppm以下であることが必要であり、好ましくは800ppm以下、より好ましくは700ppm以下である。線状オリゴマーの発生量を上記範囲内とすることで、成形加工時に問題となる、線状オリゴマーに起因した工程汚れや表面汚れの低減を実現することができる。
また本発明のポリエステル樹脂組成物は、下記式(II)で表されるように、アンチモン元素含有量が80ppm以下であることが必要である。
Sb含有量≦80ppm(II)
好ましくは50ppm以下であり、30ppm以下がさらに好ましい。アンチモン化合物はポリエステルの重合触媒として利用されるが、これに含まれるアンチモン元素はポリエステル樹脂組成物に含まれるリン化合物などによって容易に還元されやすく、アンチモン金属粒子を形成する。このようなアンチモン金属粒子はポリエステル樹脂組成物の色調低下や異物の要因となる。アンチモン元素含有量を上記範囲とすることで、色調低下といった光学特性の低下や、異物によって引き起こされる溶融成形時のフィルターろ圧上昇を防ぐことができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、耐加水分解性の指標であるΔCOOH/COOHの値が2.1以下であることが好ましい。このΔCOOHとは、飽和水蒸気下で155℃、4時間湿熱処理した際のCOOH末端基増加量であり、処理前のCOOH末端基量で割ったΔCOOH/COOHが少ない値であるほど、耐加水分解性が良好となる。上記範囲であれば、耐加水分解性は良好であり、加水分解に起因する線状オリゴマーの発生を抑制できる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、下記式(III)で表されるように、マンガン元素を5ppm以上40ppm以下含有していることが必要である。
5ppm≦Mn含有量≦40ppm (III)
下限として好ましくは10ppm以上である。また、上限として好ましくは30ppm以下である。上記下限以上とすることで、溶融成形時に発生するゲル組成物を抑制できるため成形体の欠点を抑制できる。また、マンガン元素はフィルム延伸工程などのポリエステル融点以下の比較的低い温度での加熱処理においても触媒活性が高いためにポリエステルの熱分解や酸化分解、加水分解に寄与する。したがって、上記上限以下のマンガン元素量を満たすことで、加工工程における線状オリゴマー発生量を低減することが可能となる。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、下記式(IV)で表されるように、ナトリウム元素を4ppm以上40ppm以下含有していることが必要である。
4ppm≦Na含有量≦40ppm (IV)
下限として好ましくは10ppm以上である。また上限として好ましくは30ppm以下である。上記範囲とすることで、耐加水分解性が良好となり、加水分解に起因する線状オリゴマー発生を抑制できる。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、リン元素を17ppm以上70ppm以下含有していることが好ましい。下限として好ましくは20ppm以上、より好ましくは25ppm以上である。上限として好ましくは60ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。上記範囲とすることで、加工工程における線状オリゴマー発生量を低減できる。
さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物は、ナトリウム元素とリン元素の含有量のモル比であるNa/Pが0.3以上1.2以下であることが好ましい。下限として好ましくは0.4以上であり、上限として好ましくは1.0以下である。上記範囲とすることで、耐加水分解性を付与することが可能となり、加工工程における線状オリゴマー発生量を低減できる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、窒素及び硫黄、ハロゲンより選ばれる元素の総含有量が10ppm未満であることが好ましい。より好ましくは5ppm未満であり、さらに好ましくは3ppm未満である。窒素、硫黄、ハロゲンといった元素を含む化合物はポリエステル中に存在していると熱分解や加水分解を促進する。したがって、含んでいないことが最も好ましい。上記範囲を満たすことで、加工工程における線状オリゴマー発生量を低減できる。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、酸素濃度1%の窒素雰囲気下、300℃で6時間加熱処理した際のゲル化率が7wt%以下であることが好ましい。より好ましくは5wt%以下である。上記範囲とすることで、溶融成形時に発生するゲル組成物を抑制できるため成形体の欠点を抑制できる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、優れた光学特性を発揮するため、全光線透過率が80%より大きいことが好ましい。全光線透過率は、後述の実施例中の測定方法(10)に従って測定を行い求めた値である。
全光線透過率が上記範囲を満たすことで、光学特性の優れた成形体を得ることができる。そのため、光学フィルムなどに好適である。また、より好ましくは83%より大きいことが好ましく、さらに87%より大きいことが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、色調低下を招くアンチモン元素を80ppm以下であることで、上記範囲の光学特性を達成しており、さらに重縮合触媒としてチタン化合物、アルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物から選ばれる化合物を使用することで、さらに高い光学特性を達成している。
次に、本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法について記載する。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ジカルボン酸成分またはそのエステル形成誘導体成分と、ジオール成分とをエステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応してポリエステルを製造するに際して、ポリエステルのIV(固有粘度)が0.4以下の段階で、マンガン化合物を添加し、かつ重縮合反応終了までの段階でリン酸とリン酸アルカリ金属塩を添加し、かつその含有量が下記式(V)〜(VII)を満たすことで得ることができる。
Sb含有量≦80ppm (V)
5ppm≦Mn含有量≦40ppm (VI)
4ppm≦アルカリ金属元素含有量≦40ppm (VII)
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法において、マンガン化合物はポリエステル樹脂のIV(固有粘度)が0.4以下の段階で添加することが必要である。上記範囲に添加することで、重合反応性が良好となり、またポリエステル樹脂への分散性も良好となるため、透明性が高まる。その中でも、エステル交換反応にてポリエステルオリゴマーを得る場合は、反応をより効率的に進行させるため、エステル交換反応開始時にマンガン化合物を添加することが好ましい。また、エステル化反応にてポリエステルオリゴマーを得る場合には、エステル化反応終了時からポリエステル樹脂のIVが0.4以下の段階でマンガン化合物を添加することが好ましく、エステル化反応終了時から、重縮合反応開始までに添加することがより好ましい。エステル化反応は、テレフタル酸などの酸成分による自己触媒反応により、無触媒でも十分に反応は進行し、触媒を含有しているとジオール成分の2量体などの副生成物が増加することから、無触媒で実施し、ポリエステルの粘度が上昇する前に添加することで、耐熱性を損なうことなく、マンガン化合物の分散性が向上し高透明性を発現することが可能となる。
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法において、マンガン化合物の添加量はポリエステル組成物中でのマンガン元素としての含有量が下記式(VI)を満たすことが必要である。
5ppm≦Mn含有量≦40ppm (VI)
下限として好ましくは10ppm以上である。また、上限として好ましくは30ppm以下である。上記下限以上とすることで、溶融成形時に発生するゲル組成物を抑制できるため成形体の欠点を抑制できる。また、マンガン元素はフィルム延伸工程などのポリエステル融点以下の比較的低い温度での加熱処理においても触媒活性が高いためにポリエステル樹脂の熱分解や酸化分解、加水分解に寄与する。したがって、上記上限以下のマンガン元素量を満たすことで、加工工程における線状オリゴマー発生量を低減することが可能となる。
マンガン化合物は、特に限定しないが、酢酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、塩化マンガンなどが挙げられ、溶解性及び触媒活性の点から酢酸マンガンが好ましい。
また、添加する際の形態は粉体、スラリー、溶液のいずれでもよく、分散性の点から、溶液として添加することが好ましい。この時の溶媒は、ポリエステル樹脂組成物のジオール成分と同一にすることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートの場合はエチレングリコールを用いることが特に好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法において、重縮合反応が終了するまでの段階で、リン酸とリン酸アルカリ金属塩を添加することが必要である。リン酸とリン酸アルカリ金属塩の添加時期として、より好ましくは、エステル交換反応及びエステル化反応終了後から重縮合反応開始までの間である。上記範囲に添加することで、重縮合反応を遅延させることなく、効果的にポリエステル樹脂に熱安定性と耐加水分解性を付与することができる。
リン酸の添加量には特に制限を設けないが、添加量の下限としては、リン元素として25ppm以上であることが好ましく、より好ましくは45ppm以上である。添加量の上限としては、200ppm以下であることが好ましく、より好ましくは150ppm以下である。上記範囲にすることで、重合の遅延を起こすことがなく、ポリエステル樹脂組成物の熱安定性を良好にすることができる。なお、リン酸は通常の場合、水溶液として入手できるため、前記添加量は水溶液の濃度から換算したリン酸成分正味の添加量である。
リン酸アルカリ金属塩の添加量は、ポリエステル組成物中でのアルカリ金属元素としての含有量が4ppm以上40ppm以下とすることが必要である。下限としてより好ましくは10ppm以上である。また上限として好ましくは30ppm以下である。上記範囲とすることで、耐加水分解性が良好となり、加水分解に起因する線状オリゴマー発生を抑制できる。
リン酸アルカリ金属塩としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウムが挙げられる。耐加水分解性の点から、ナトリウム塩であることが好ましく、リン酸二水素ナトリウムが特に好ましい。また、複数のリン酸アルカリ金属塩を併用しても構わない。
また、添加する際の形態は粉体、スラリー、溶液のいずれでもよく、分散性の点から、溶液として添加することが好ましい。この時の溶媒は、ポリエステル樹脂組成物のジオール成分と同一にすることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートの場合はエチレングリコールを用いることが特に好ましい。
さらに、リン酸とリン酸アルカリ金属塩の溶液を混合し添加することが好ましい。リン酸とリン酸アルカリ金属塩を混合し、緩衝溶液として添加することで、より良好な耐加水分解性が発現し、加工工程における線状オリゴマー発生量を低減することが可能となる。
また、上記アルカリ金属元素の添加量を満たす範囲で、リン酸アルカリ金属塩以外のアルカリ金属化合物を併用しても構わない。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物、酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、塩化物などが挙げられる。この中でも、水酸化カリウムを併用することで、線状オリゴマー発生量を増加させることなく、静電印加製膜に必要なポリエステル樹脂の溶融比抵抗を小さくすることができ、成形性が向上する。
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法において、エステル化反応を経て実施する場合、エステル化反応後から、リン酸アルカリ金属塩を添加するまでの間に、エチレングリコールなどグリコール成分の追加添加を実施することが好ましい。より好ましくは、マンガン化合物添加後から、リン酸アルカリ金属塩を添加するまでの間である。エステル化反応にて得られるポリエステル樹脂組成物の低分子量体は、エステル交換反応で得られる低分子量体よりも重合度が高いためにリン酸アルカリ金属塩が分散しにくく、異物化が起こりやすい。したがって、エチレングリコールなどグリコール成分を追加添加し、解重合によって重合度を低下させておくことで異物化を抑制できる。この時、マンガン化合物が存在しているとより効率的に解重合できる。
この追加添加するエチレングリコールなどグリコール成分は、全酸成分に対し0.05倍モル以上0.5倍モル以下であることが好ましい。より好ましくは0.1倍モル以上0.3倍モル以下である。上記範囲とすることで、重合系内の温度降下による重合時間の遅延を起こすことなく、リン酸アルカリ金属塩の異物化を抑制できる。
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法において、アンチモン元素含有量を80ppm以下とすることが必要である。好ましくは50ppm以下であり、さらに30ppm以下であることが好ましい。アンチモン元素はポリエステル樹脂組成物に含まれるリン化合物などによって容易に還元されやすく、アンチモン金属粒子を形成する。このようなアンチモン金属粒子はポリエステル樹脂組成物の色調の低下や異物の要因となる。上記範囲とすることで、色調低下といった光学特性の低下や、異物によって引き起こされる溶融成形時のフィルターろ圧上昇を防ぐことができる。
アンチモン化合物は、ポリエステルの重合触媒として利用されるため、アンチモン元素を低減するとポリエステル重合時の反応性が低下してしまうため、アンチモン化合物以外の重合触媒を使用することが好ましい。例えば、チタン化合物やゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物が挙げられ、これら化合物を使用することで、樹脂の光学特性が良好となり、光学フィルム用途などに適したポリエステル樹脂組成物が得られる。チタン化合物としては、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタンなどのアルコキシチタン化合物が挙げられるがこれに限定されない。アルミニウム化合物としては、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、テレフタル酸アルミニウムなどのカルボン酸アルミニウム化合物、また塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウムなどの無機塩アルミニウム化合物、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムプロポキサイド、アルミニウムブトキサイドなどの有機アルミニウム化合物などが挙げられるがこれに限定されない。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどが挙げられるがこれに限定されない。
上記アンチモン化合物やチタン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物といった重縮合触媒は、ポリエステル樹脂のIV(固有粘度)が0.4以下の段階で添加することが好ましい。上記範囲に添加することで、重合反応性が良好となり、またポリエステル樹脂への分散性も良好となるため、透明性が高まる。
また、上記重縮合触媒の他に、公知のエステル交換触媒や助触媒を用いることができる。例えばエステル交換触媒及び助触媒としては、有機マンガン化合物、有機マグネシウム化合物、有機カルシウム化合物、有機コバルト化合物、有機リチウム化合物、有機カリウム化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、末端封鎖剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、可塑剤もしくは消泡剤またはその他の添加剤等を必要に応じて配合しても良い。
以下、本発明におけるポリエステル樹脂組成物の製造方法の具体例を挙げるが、これに制限されない。
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレートが仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸とエチレングリコール(テレフタル酸に対し1.15倍モル)のスラリーをスネークポンプにて徐々に添加し、エステル化反応を進行させる。反応系内の温度は245〜255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とする。
こうして得られた255℃のエステル化反応物を重合装置に移送し、マンガン化合物、重縮合触媒を添加する。その後、エチレングリコールを追加添加し、リン酸、リン酸アルカリ金属塩を添加する。これらの操作の際は、エステル化物が固化しないように、反応系内の温度を240〜255℃に保つことが好ましい。
その後、重合装置内の温度を290℃まで徐々に昇温しながら、重合装置内の圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させる。所定の撹拌トルクに到達した段階で反応を終了とし、反応系内を窒素ガスで常圧にし、溶融ポリマーを冷水中にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物を得る。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、耐熱性や耐加水分解性、光学特性に優れ、溶融成形や加工工程にて発生するゲル組成物や線状オリゴマー発生量、フィルターのろ圧上昇が少ない。したがって、フィルム、繊維、成形体など各種用途に好適に用いることができ、特に本発明のポリエステルフィルムは高透明性の求められる光学フィルムや離型フィルムなどの高品位フィルムに用いることが可能である。
フィルムとしては、本発明のポリエステル樹脂組成物から構成される単膜フィルムでも本発明のポリエステル樹脂組成物を少なくとも1層有する積層フィルムでもよい。特に積層フィルムの場合は、本発明のポリエステル樹脂組成物からなる層を少なくとも片表面に有する積層フィルムが好ましい。本発明のポリエステル樹脂組成物からなる層がフィルム表面に存在する場合、フィルム表面からの線状オリゴマー揮発などが抑制されるため、線状オリゴマー欠点の発生を効果的に抑制できる。
以下実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下の方法で測定した。以下記載する方法は、本発明のポリエステル樹脂組成物単成分の場合の測定方法を記載しているが、積層フィルムなどのように複数樹脂からなる成形体の場合、各層の樹脂を削り出すなどして単離し、分析を行う。
(1)ポリエステル樹脂組成物の固有粘度(IV)
o−クロロフェノール溶媒を用い、25℃で測定した。
(2)ポリエステル樹脂組成物のCOOH末端基量
Mauriceの方法によって測定した。(文献 M.J.Maurice,F.Huizinga,Anal.Chem.Acta、22、363(1960)) 。
(3)ポリエステル樹脂組成物のアンチモン及びマンガン、リン、アルカリ金属元素含有量
原子吸光法((株)日立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度型180−80、フレーム:アセチレン空気)にて定量を行った。
(4)ポリエステル樹脂組成物の窒素元素含有量
ポリエステル樹脂組成物を凍結粉砕し、室温で3時間減圧乾燥した。その後、ICP発光分光分析法(三菱化学(株)製ND−100型)にて定量を行った。
(5)ポリエステル樹脂組成物の硫黄、ハロゲン元素含有量
ポリエステル樹脂組成物を凍結粉砕し、室温で3時間減圧乾燥した。その後、燃焼イオンクロマトグラフ(東亜DKK(株)製ICA2000)により定量を行った。この時、5ppm未満は検出下限以下(ND)とした。
(6)ポリエステル樹脂組成物のゲル化率
ポリステル樹脂組成物を凍結粉砕機(Sprex CertiPerp社製)にて粉砕し、容量50mlのステンレスビーカーに0.5g秤量した。真空乾燥機を用いて、50℃で2時間真空乾燥した後、酸素/窒素濃度1%ガス流通下(流量0.5L/分)、300℃で6時間加熱処理を行った。これを、20mlのo−クロロフェノールで、160℃で1時間溶解し、放冷した。この溶液を、ガラスフィルター(柴田科学(株)製、3GP40)を使用してろ過し、ジクロロメタンにてガラスフィルターを洗浄した。ガラスフィルターを130℃で2時間乾燥し、ろ過前後のろ過器の重量の増加分より、ポリエステル重量(0.5g)に対する重量分率を求め、ゲル化率(%)とした。
(7)ポリエステル樹脂組成物の耐加水分解性評価(ΔCOOH/COOH)
ポリエステル樹脂組成物を飽和水蒸気下、155℃で4時間湿熱処理し、処理前後のCOOH末端基量を測定することで、COOH末端基増加量(ΔCOOH=処理後COOH−処理前COOH)を算出した。このΔCOOHの値を処理前のCOOH末端基量で割ることで耐加水分解性を評価した。
なお、処理装置は次の加熱処理装置を使用した。
PRESSER COOKER 306SIII(HIRAYAMA製作所(株)製) 。
(8)ポリエステル樹脂組成物の線状オリゴマー発生量
温度23℃、湿度50%の環境下に24時間以上静置したポリエステル樹脂組成物(水分率2500ppm)を0.1g計量し、封管内を窒素雰囲気下とし、290℃で20分溶融処理を行った。溶融処理した封管内の試料を2mLのHFIP(ヘキサフルオロ−2−プロパノール)/クロロホルム=1/1(体積)混合溶液で溶解させた後、ビーカーに移し、クロロホルム3mLを添加し、さらにメタノール40mLを徐々に加えた。その後、ペーパーフィルター(ADVANTEC製No.2)でろ過して得られた溶液を濃縮乾固させて得られた残渣にDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)0.5mLを加えて溶解・分散させ、エタノールを加えて5mLに定容した。孔径0.45μmのPTFEメンブレンフィルターでろ過した溶液を試料溶液とした。得られた試料溶液を、LC/UVで分析することにより、溶融処理後のポリエステル樹脂組成物中の線状オリゴマー(TPA、MHET、BHET)の含有量を測定した。この時、溶融処理前後の線状オリゴマー含有量の差(溶融処理後含有量−溶融処理前含有量)を算出することで、線状オリゴマー発生量を求めた。
(9)プレスシートの作成
ポリエステル樹脂組成物を150℃で8時間真空乾燥した後、290℃に加熱したプレス装置にて厚み100μmのプレスシートを作成した。
(10)全光線透過率
JIS−K−7361−1に基づき、上記(9)にて作成したプレスシートの全光線透過率を、シングルビーム式ヘイズメーターを使用して測定した。
(11)ろ過性試験
ポリエステル樹脂組成物を145℃で7.5時間真空乾燥した後、単軸スクリューを備えた押し出し機(温度300℃、吐出量10g/分)にてポリエステル樹脂組成物を押出し、フィルター(φ24.5mm、目開き5μm)にかかるろ圧を測定した。吐出開始時のろ圧をP(MPa)、吐出6時間後のろ圧をP(MPa)とし、P−Pにてろ圧上昇を判断した。
◎:P−P≦0.2
○:0.2<P−P≦0.3
×:0.3<P−P0 。
(実施例1)
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させた。反応系内の温度は245〜255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とした。
こうして得られた255℃のエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を重合装置に移送し、酢酸マンガン4水和物0.01重量部のエチレングリコール溶液(マンガン元素として23ppm)、テトラ−n−ブトキシチタン0.007重量部のエチレングリコール溶液を添加した。その後、エチレングリコール5重量部(テレフタル成分対比0.15倍モル)を追加添加して解重合を進め、次いでリン酸0.006重量部とリン酸2水素ナトリウム2水和物0.0095重量部(ナトリウム元素として14ppm)の混合エチレングリコール溶液を添加した。
その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.62相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水中にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表1に示す。
実施例1で得られたポリエステル樹脂組成物は、ゲル化率および耐加水分解性、光学特性が良好であり、線状オリゴマー発生量、ろ圧上昇も少ないことから、光学フィルムや離型フィルムに好適な物性を有していた。
(実施例2)
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させた。反応系内の温度は245〜255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とした。
こうして得られた255℃のエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を重合装置に移送し、酢酸マンガン4水和物0.01重量部のエチレングリコール溶液(マンガン元素として23ppm)、水酸化アルミニウム0.015重量部のエチレングリコール溶液を添加した。その後、エチレングリコール5重量部(テレフタル成分対比0.15倍モル)を追加添加して解重合を進め、次いでリン酸0.006重量部とリン酸2水素ナトリウム2水和物0.0095重量部(ナトリウム元素として14ppm)の混合エチレングリコール溶液を添加した。
その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.62相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水中にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表1に示す。
実施例2で得られたポリエステル樹脂組成物は、ゲル化率および耐加水分解性、光学特性が良好であり、線状オリゴマー発生量、ろ圧上昇も少ないことから、光学フィルムや離型フィルムに好適な物性を有していた。
(実施例3)
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させた。反応系内の温度は245〜255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とした。
こうして得られた255℃のエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を重合装置に移送し、酢酸マンガン4水和物0.01重量部のエチレングリコール溶液(マンガン元素として23ppm)、二酸化ゲルマニウム0.02重量部のエチレングリコール溶液を添加した。その後、エチレングリコール5重量部(テレフタル成分対比0.15倍モル)を追加添加して解重合を進め、次いでリン酸0.006重量部とリン酸2水素ナトリウム2水和物0.0095重量部(ナトリウム元素として14ppm)の混合エチレングリコール溶液を添加した。
その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.62相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水中にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表1に示す。
実施例3で得られたポリエステル樹脂組成物は、ゲル化率および耐加水分解性、光学特性が良好であり、線状オリゴマー発生量、ろ圧上昇も少ないことから、光学フィルムや離型フィルムに好適な物性を有していた。
(実施例4)
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させた。反応系内の温度は245〜255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とした。
こうして得られた255℃のエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を重合装置に移送し、酢酸マンガン4水和物0.01重量部のエチレングリコール溶液(マンガン元素として23ppm)、三酸化二アンチモン0.0096重量部のエチレングリコールスラリーを添加した。その後、エチレングリコール5重量部(テレフタル成分対比0.15倍モル)を追加添加して解重合を進め、次いでリン酸0.006重量部とリン酸2水素ナトリウム2水和物0.0095重量部(ナトリウム元素として14ppm)の混合エチレングリコール溶液を添加した。
その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.62相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水中にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表1に示す。
実施例4で得られたポリエステル樹脂組成物は、ゲル化率および耐加水分解性、光学特性が良好であり、線状オリゴマー発生量、ろ圧上昇も少ないことから、光学フィルムや離型フィルムに好適な物性を有していた。
(実施例5、6、比較例1)
三酸化二アンチモンの添加量を表1の通りに変更した以外は、実施例4と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表1に示す。
実施例5、6にて得られたポリエステル樹脂組成物は、ゲル化率および耐加水分解性、光学特性が良好であり、線状オリゴマー発生量、ろ圧上昇も少ないことから、光学フィルムや離型フィルムに好適な物性を有していた。
比較例1にて得られたポリエステル樹脂組成物は、アンチモン含有量が多いため、光学特性の低下およびろ圧上昇が見られた。
Figure 0006946950
(実施例7〜10、比較例2、3)
マンガン化合物の添加量を表2の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表2に示す。
実施例7〜10にて得られたポリエステル樹脂組成物は、ゲル化率および耐加水分解性、光学特性が良好であり、線状オリゴマー発生量、ろ圧上昇も少ないことから、光学フィルムや離型フィルムに好適な物性を有していた。
比較例2にて得られたポリエステル樹脂組成物は、マンガン元素含有量が多いため、ΔCOOH/COOH及び線状オリゴマー発生量が増加した。
比較例3にて得られたポリエステル樹脂組成物は、マンガン元素を含有していないため、ゲル化率及びΔCOOH/COOH、線状オリゴマー発生量が増加した。
Figure 0006946950
(実施例11〜14、比較例4、5)
リン酸アルカリ金属塩の添加量を表3の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表3に示す。
実施例11〜14にて得られたポリエステル樹脂組成物は、ゲル化率および耐加水分解性、光学特性が良好であり、線状オリゴマー発生量、ろ圧上昇も少ないことから、光学フィルムや離型フィルムに好適な物性を有していた。
比較例4にて得られたポリエステル樹脂組成物は、リン酸アルカリ金属塩を添加していないため、ΔCOOH/COOH及び線状オリゴマー発生量が増加した。
比較例5で得られたポリエステル樹脂組成物は、リン酸アルカリ金属塩の添加量が多いため、ΔCOOH/COOH及び線状オリゴマー発生量が増加した。
Figure 0006946950
(実施例15〜17、比較例6)
リン酸の添加量を表4の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表4に示す。
実施例15〜17にて得られたポリエステル樹脂組成物は、ゲル化率および耐加水分解性、光学特性が良好であり、線状オリゴマー発生量、ろ圧上昇も少ないことから、光学フィルムや離型フィルムに好適な物性を有していた。
比較例6にて得られたポリエステル樹脂組成物は、リン酸を添加していないため、ΔCOOH/COOH及び線状オリゴマー発生量が増加した。
Figure 0006946950
(実施例18)
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させた。反応系内の温度は245〜255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とした。
こうして得られた255℃のエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を重合装置に移送し、酢酸マンガン4水和物0.01重量部のエチレングリコール溶液(マンガン元素として23ppm)、テトラ−n−ブトキシチタン0.007重量部のエチレングリコール溶液、水酸化カリウム0.0008重量部のエチレングリコール溶液を添加した。その後、エチレングリコール5重量部(テレフタル成分対比0.15倍モル)を追加添加して解重合を進め、次いでリン酸0.006重量部とリン酸2水素ナトリウム2水和物0.0095重量部(ナトリウム元素として14ppm)の混合エチレングリコール溶液を添加した。
その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.62相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水中にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表5に示す。
実施例18で得られたポリエステル樹脂組成物は、ゲル化率および耐加水分解性、光学特性が良好であり、線状オリゴマー発生量、ろ圧上昇も少ないことから、光学フィルムや離型フィルムに好適な物性を有していた。
(実施例19)
テレフタル酸ジメチル101.0重量部、エチレングリコール64.6重量部(ジカルボン酸成分の2倍モル)の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込んだ。内容物を150℃で溶解した後、酢酸マンガン4水和物0.018重量部のエチレングリコール溶液(マンガン元素として40ppm)を添加し撹拌した。240℃まで昇温しながらメタノールを留出させ、所定量のメタノールが留出した後、リン酸0.006重量部とリン酸2水素ナトリウム2水和物0.0095重量部(ナトリウム元素として14ppm)の混合エチレングリコール溶液を添加し、エステル交換反応を終了した。
その後、反応物を重合装置に移送し、次いでテトラ−n−ブトキシチタン0.007重量部のエチレングリコール溶液を添加し、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.62相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水中にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表5に示す。
実施例19で得られたポリエステル樹脂組成物は、ゲル化率および耐加水分解性、光学特性が良好であり、線状オリゴマー発生量、ろ圧上昇も少ないことから、光学フィルムや離型フィルムに好適な物性を有していた。
(比較例7)
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させた。反応系内の温度は245〜255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とした。
こうして得られた255℃のエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を重合装置に移送し、酢酸マンガン4水和物0.02重量部のエチレングリコール溶液(マンガン元素として45ppm)、テトラ−n−ブトキシチタン0.007重量部のエチレングリコール溶液を添加した。その後、エチレングリコール5重量部(テレフタル成分対比0.15倍モル)を追加添加して解重合を進め、次いでリン酸0.006重量部とリン酸2水素ナトリウム2水和物0.011重量部(ナトリウム元素として16ppm)の混合エチレングリコール溶液を添加した。その後、テトラブチルアンモニウムブロミド0.1重量部を添加した。
その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.62相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水中にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表5に示す。
比較例7で得られたポリエステル樹脂組成物は、マンガン元素及び窒素元素、ハロゲン元素を多量に含有していることから、ゲル化率およびΔCOOH/COOHが増加し、線状オリゴマー発生量が増加した。
(比較例8)
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させた。反応系内の温度は245〜255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とした。
こうして得られた255℃のエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を重合装置に移送し、酢酸マンガン4水和物0.02重量部のエチレングリコール溶液(マンガン元素として45ppm)、テトラ−n−ブトキシチタン0.007重量部のエチレングリコール溶液を添加した。その後、エチレングリコール5重量部(テレフタル成分対比0.15倍モル)を追加添加して解重合を進め、次いでリン酸0.006重量部とリン酸2水素ナトリウム2水和物0.011重量部(ナトリウム元素として16ppm)の混合エチレングリコール溶液を添加した。その後、テトラブチルアンモニウムメタンスルホネート0.1重量部を添加した。
その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.62相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水中にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表5に示す。
比較例8で得られたポリエステル樹脂組成物は、マンガン元素及び窒素元素、硫黄元素を多量に含有していることから、ゲル化率およびΔCOOH/COOHが増加し、線状オリゴマー発生量が増加した。
(比較例9)
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部が仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部(テレフタル酸に対し1.15倍モル)からなるスラリーを徐々に添加し、エステル化反応を進行させた。反応系内の温度は245〜255℃になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とした。
こうして得られた255℃のエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を重合装置に移送し、酢酸マンガン4水和物0.01重量部のエチレングリコール溶液(マンガン元素として23ppm)、テトラ−n−ブトキシチタン0.007重量部のエチレングリコール溶液を添加した。その後、エチレングリコール5重量部(テレフタル成分対比0.15倍モル)を追加添加して解重合を進め、次いでリン酸0.006重量部とリン酸2水素ナトリウム2水和物0.0095重量部(ナトリウム元素として14ppm)の混合エチレングリコール溶液を添加した。その後、テトラブチルアンモニウムメタンスルホネート0.1重量部を添加した。
その後、重合装置内温度を徐々に290℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させた。固有粘度0.62相当の溶融粘度に到達した時点で、反応を終了とし、反応系内を窒素ガスにて常圧にし、重合装置下部より冷水中にストランド状に吐出、カッティングし、ポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の特性を表5に示す。
比較例9で得られたポリエステル樹脂組成物は、窒素元素及び硫黄元素を多量に含有していることから、ゲル化率およびΔCOOH/COOHが増加し、線状オリゴマー発生量が増加した。
Figure 0006946950

Claims (9)

  1. リン酸及びリン酸ナトリウム塩を用いてなり、下記式(I)〜(IV)、(VIII)を満たすポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
    線状オリゴマー発生量≦900ppm (I)
    Sb含有量≦80ppm (II)
    5ppm≦Mn含有量≦40ppm (III)
    4ppm≦Na含有量≦40ppm (IV)
    22eq/ton≦COOH末端基量≦35eq/ton (VIII)
    (なお線状オリゴマー発生量は、温度23℃、湿度50%の環境下で24時間以上静置したポリエステル樹脂組成物を窒素下、290℃で20分溶融処理を行った際の線状オリゴマー増加量である。)
  2. 窒素及び硫黄、ハロゲンより選ばれる元素の総含有量が10ppm未満であることを特徴とする請求項1記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
  3. ゲル化率が7wt%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
    (なおゲル化率は、酸素濃度1%の窒素雰囲気下、300℃ で6時間加熱処理した際のゲル化率であり、樹脂組成物0.5gを酸素/窒素濃度1%流通下(流量0.5L/分)、300℃で6時間加熱処理後、20mlのo−クロロフェノール(160℃、1時間)に溶解し、放冷、ろ過後のろ過器の重量増分より、樹脂組成物に対する重量分率を求めたものである。)
  4. 全光線透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
    (なお全光線透過率は、厚み100μmに成形したプレスシートをシングルビーム式ヘイズメーターにて測定した値である。)
  5. 請求項1のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなるポリエステルフィルムフィルム。
  6. 請求項1のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する積層ポリエステルフィルム。
  7. 請求項1のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなる層を少なくとも片表面に有する積層ポリエステルフィルムフィルム。
  8. 請求項1のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなる離型用ポリエステルフィルム。
  9. ジカルボン酸成分またはそのエステル形成誘導体成分と、ジオール成分とをエステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応してポリエステルを製造するに際して、ポリエステルのIV(固有粘度)が0.4以下の段階で、マンガン化合物を添加し、かつ重縮合反応終了までの段階でリン酸とリン酸ナトリウム塩を添加し、下記式(V)〜(VII)、(IX)を満たすポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
    Sb含有量≦80ppm (V)
    5ppm≦Mn含有量≦40ppm (VI)
    4ppm≦Na含有量≦40ppm (VII)
    22eq/ton≦COOH末端基量≦35eq/ton (IX)
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