JP2016132733A - ポリエステル樹脂ペレット及びその製造方法 - Google Patents

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高明 川口
豊 矢次
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Abstract

【課題】 ρvが低くフィルムの高速製膜が可能で、ポリエステル樹脂製造時に副生するジエチレングリコール量を少なくし樹脂中のジエチレングリコール成分量を少なくすることができ、更に黄色味が少ないポリエステル樹脂を提供すること。【解決手段】 ポリエステル樹脂中の全ジオール成分に対するジエチレングリコール成分の含有量が2.7モル%以下であり、285℃での溶融時の体積固有抵抗値が8×107Ω・cm以下であるポリエステル樹脂からなるペレットであって、ペレットの内部に含まれるナトリウム原子の含有量(PET−Na)が下記式(1)を満足する、ポリエステル樹脂ペレット及びその製造方法。50質量ppb ≦ PET−Na <260質量ppb 式(1)【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステル樹脂ペレット、特にフィルムの高速製膜に適したポリエステル樹脂ペレット及びその製造方法に関する。
従来、ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂は、機械的強度、化学的安定性、ガスバリア性、保香性、衛生性等に優れ、また、比較的安価で軽量であるために、フィルムや繊維、及びボトル等として広く用いられている。特にフィルム用途においては、近年、高速製膜化に伴い、例えば、フィルム溶融押出時の平面性の悪化や、フィルムの破断による生産性の低下が問題となっている。このような問題の解決のため、フィルム用としては、溶融時の体積固有抵抗値(以下ρvと記載する)が低く、フィルム溶融押出し時のキャストロールと密着性がよいポリエステル樹脂が要求されている。
更に、最近では、ディスプレイ等の光学用途の基材としてポリエステルフィルムが用いられており、使用されるポリエステルフィルムには異物の少ないことが求められている。また、フィルム加工時に加熱する場合を想定して、樹脂中のジエチレングリコール成分を少なくし、耐熱性を向上する要求もある。
ここで、前記のような、ρvが低く耐熱性に優れたポリエステル樹脂としては、マグネシウム化合物及びアルカリ金属化合物を添加して、ρvが低く、かつジエチレングリコール量も少ないポリエステル樹脂が知られている(特許文献1)。しかしながら、この技術では、アルカリ金属化合物の添加量が金属原子として2質量ppm程度と比較的多いため、樹脂の黄色味が強くなりフィルム品質が悪化することが難点であった。
特開昭55−84322号公報
本発明の課題は、ρvが低くフィルムの高速製膜が可能で、ポリエステル樹脂製造時に副生するジエチレングリコール量を少なくし樹脂中のジエチレングリコール成分量を少なくすることができ、更に黄色味が少ないポリエステル樹脂を提供することである。
本発明の要旨は、ポリエステル樹脂中の全ジオール成分に対するジエチレングリコール成分の含有量が2.7モル%以下であり、285℃での溶融時の体積固有抵抗値が8×10Ω・cm以下であるポリエステル樹脂からなるペレットであって、ペレットの内部に含まれるナトリウム原子の含有量(PET−Na)が下記式(1)を満足する、ポリエステル樹脂ペレットである。
50質量ppb ≦ PET−Na <260質量ppb 式(1)
また別の要旨は、ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分とジオール成分からなり、ジカルボン酸成分の95モル%以上がテレフタル酸であり、ジオール成分の95モル%以上がエチレングリコールである上述のポリエステル樹脂ペレットである。
また別の要旨は、上述のポリエステル樹脂において、ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分として、ナトリウム原子の含有量(TPA−Na)が下記式(2)を満足するテレフタル酸を用いて、製造されたものであるポリエステル樹脂ペレットである。
60質量ppb ≦ TPA−Na <300質量ppb 式(2)
また別の要旨は、ナトリウム原子の含有量(TPA−Na)が下記式(2)を満足するテレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分から、ポリエステル樹脂中の全ジオール成分に対するジエチレングリコール成分の含有量が2.7モル%以下であり、285℃での溶融時の体積固有抵抗値が8×10
Ω・cm以下であるポリエステル樹脂を製造し、更にそのポリエステル樹脂からポリエステル樹脂ペレットを製造する方法において、ペレットの内部に含まれるナトリウム原子の質含有量(PET−Na)が下記式(1)を満足する、ポリエステル樹脂ペレットの製造方法である。
50質量ppb ≦ PET−Na <260質量ppb 式(1)
60質量ppb ≦ TPA−Na <300質量ppb 式(2)
なお、本発明においてポリエステル樹脂ペレットの内部に含まれるナトリウムとは、ポリエステル樹脂ペレットのナトリウム量測定において、ポリエステル樹脂ペレットを水洗、又は酸洗しても減少しないナトリウムのことをいう。
本発明のポリエステル樹脂ペレットは、、ポリエステル樹脂製造時に副生するジエチレングリコール量が少なく、色調に優れ、ρvが低くフィルムの高速製膜を可能とする。
次に本発明を詳細に説明するが、以下に記載される構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に限定されるものではない。
本発明のポリエステル樹脂ペレットは、芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と、ジオール成分とをエステル化及び重縮合することにより得られるポリエステル樹脂からなる。
原料として使用されるジカルボン酸成分又はジカルボン酸のエステル誘導体としては具体的にはテレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、及び、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
もう一方の原料として使用されるジオール成分としては、具体的にはエチレングリコールやジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環式ジオール、及び、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオール、並びに、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサ
イド付加物又はプロピレンオキサイド付加物、等が挙げられる。
更に、前記ジオール成分及びジカルボン酸成分以外の共重合成分として、例えば、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、及び、ステアリルアルコール、ヘネイコサノール、オクタコサノール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、シュガーエステル等の三官能以上の多官能成分等の一種又は二種以上が用いられていてもよい。
中でも本発明においては、テレフタル酸及び/又は2,6−ナフタレンジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び/又はジエチレングリコール
及び又はシクロヘキサンジオール及び/又はテトラメチレングリコールを主成分とするジ
オール成分から製造されるポリエステル樹脂が好ましく、更に好ましくはテレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分から製造するポリエステル樹脂において、本発明の効果は最も好適に発揮される。また、本発明において、ポリエステル樹脂は、テレフタル酸がジカルボン酸成分の85モル%以上を占めるのが好ましく、90モル%以上を占めるのが更に好ましく、95モル%以上を占めるのが特に好ましい。また、エチレングリコールが、ジオール成分の85モル%以上を占めるのが好ましく、90モル%以上を占めるのが更に好ましく、95モル%以上を占めるのが更に好ましく、97モル%以上を占めるのが特に好ましい。テレフタル酸及びエチレングリコールの占める割合が前記範囲未満では、ポリエステル樹脂としての機械的強度、耐熱性等が劣る傾向となる。
以下、ジカルボン酸としてテレフタル酸を、ジオール成分としてエチレングリコールを使用する場合を例示して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明において、ポリエステル樹脂を製造する時の、テレフタル酸に対するエチレングリコールの仕込み割合(モル比)は、通常1.0〜2.0の範囲であり、1.03以上となることが好ましく、更に好ましくは1.05以上である。また上限は、1.7以下となることが好ましく、更に好ましくは1.5以下である。前記モル比が上記の範囲であると、エネルギーコストが少なく、エステル化反応が十分に進行し、また副生するジエチレングリコールの量が少なくなるため好ましい。
本発明のポリエステル樹脂ペレット中のナトリウム原子の含有量(PET−Na)は下記式(1)を満足する。
50質量ppb ≦ PET−Na <260質量ppb 式(1)
上記(1)式を満足するポリエステル樹脂ペレットを得るためには、ナトリウムム原子の含有量(TPA―Na)が、下記式(2)を満足するテレフタル酸を用いることが好ましい。
60質量ppb ≦ TPA−Na <300質量ppb 式(2)
ナトリウム化合物は、重縮合反応の開始までの任意の時期に添加することができる。例えば、水やエチレングリコ―ルに溶解して、テレフタル酸とエチレングリコールのスラリー調製時に添加してもよく、エステル化反応槽に添加してもよく、重縮合反応槽に添加してもよく、又はこれらの移送配管に添加してもよいが、設備を簡易にすることができることから、あらかじめ、テレフタル酸にナトリウム化合物をナトリウム原子の質量(TPA−Na)として60質量ppb以上300質量ppb未満混合しておき、スラリー調製工程に供給する方法、あるいはナトリウム化合物を含まないテレフタル酸とナトリウム化合物を含むテレフタル酸をあらかじめ混合してTPA−Naを上記の範囲内に調節したテレ
フタル酸を調製しておき、スラリー調製工程に供給する方法が好ましく用いられる。この際に添加されるナトリウム化合物としては、水酸化物、アルコキシド、酢酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、及びハロゲン化物、酸化物等が挙げられ、具体的には、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、臭化ナトリウム等が挙げられ、水酸化ナトリウムが好ましい。
ポリエステル樹脂ペレットの内部のナトリウム濃度(PET−Na)が上記範囲を下回る場合、ポリエステル樹脂製造時に副生するジエチレングリコール量が多くなってしまいポリエステル樹脂の耐熱性が低下し、また、体積固有抵抗値が高くなりって製膜速度が低くなるため、好ましくない。一方で、ポリエステル樹脂ペレットの内部のナトリウム濃度(PET−Na)が上記範囲を上回る場合、ポリエステル樹脂の黄色味が強くなり、フィルム品質が悪化するため好ましくない。
本発明において、エステル化反応、溶融重縮合反応において後述の触媒及び助剤を使用することができる。例えば、三酸化二アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレ−ト、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等のアンチモン化合物;二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物;テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等のチタン化合物;酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等のマグネシウム化合物や、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキサイド、燐酸水素カルシウム等のカルシウム化合物等の周期表IIA族金属化合物の他、酸化マンガン、水酸化マンガン、酢酸マンガン等のマンガン化合物、亜鉛化合物等が挙げられる。これらの触媒は、単独でも2種以上混合して使用することもできる。
これらの触媒の中でも、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、周期表IIA族金属化合物が好ましく用いられるが、反応性、反応系への溶解性、得られるポリエステル樹脂の着色などの観点から、アンチモン化合物又はチタン化合物と周期表IIA族金属化合物を組みあわせて使用することが好ましい。
アンチモン化合物を用いる場合は、好ましくはアンチモン化合物と周期表IIA族金属化合物、更に好ましくはアンチモン化合物とマグネシウム化合物、特に好ましくは三酸化二アンチモンと酢酸マグネシウムがあげられる。またチタン化合物を用いる場合は、好ましくはチタン化合物と周期表IIA族金属化合物、更に好ましくはチタン化合物とマグネシウム化合物、特に好ましくはテトラブチルチタネートと酢酸マグネシウムがあげられる。
なお、エステル化反応においては、これらの触媒を使用しなくても反応は進行するため、触媒を添加しなくても良い。本発明においてポリエステル樹脂を製造する際に用いられる溶融重縮合反応触媒としては、エステル化反応で触媒を添加した場合は、その触媒をそのまま重縮合反応触媒として用いても良いし、前記触媒を更に添加しても良い。
エステル化反応触媒及び重縮合反応触媒の量は、特には限定されないが、例えばアンチモン化合物と周期表IIA族金属化合物を使用する場合には、得られるポリエステル樹脂に含まれる触媒由来の金属濃度が下記の範囲内となるように添加されるのが好ましい。アンチモン化合物では、得られるポリエステル樹脂に対してアンチモン原子として、好ましくは1.0 〜 2.5 モル/ トン( t )であり 、1.4モル/t以上となることが更
に好ましく、1.5モル/t以上となることが特に好ましい。また、上限は、更に好ましくは2.4モル/tであり、特に好ましくは2.0モル/tとされる。アンチモン化合物をこの範囲に調節することで、重合反応性に優れ、また色調に優れたポリエステル樹脂を得ることができるため好ましい。
また、周期表IIA族金属化合物では、得られるポリエステル樹脂に対して金属原子として、好ましくは0. 4〜1.7モル/tであり 、0.6モル/t以上となることが更に好ましく、1.0モル/t以上となることが特に好ましい。また、上限は、更に好ましくは1.6モル/tであり、特に好ましくは1.5モル/tである。周期表IIA族金属化合物をこの範囲に調節し、PET−Naを本発明の範囲内に調節することで、体積固有抵抗値が低く、またポリエステル樹脂製造時に副生するジエチレングリコール量が少なく、黄色味が少ないポリエステル樹脂を製造することができるために好ましい。
また、チタン化合物と周期表IIA族金属化合物を使用する場合には、得られるポリエステル樹脂に含まれる触媒由来の金属濃度が下記の範囲内となるように添加されるのが好ましい。チタン化合物では、得られるポリエステル樹脂に対してチタン原子として、好ましくは0.04 〜 0.21モル/ トン( t ) であり、0.06モル/t以上が更に好ましく、特に好ましくは0.1モル/tである。また、上限は、更に好ましくは0.17モル/tであり、特に好ましくは0.15モル/tとされる。また、周期表IIA族金属化合物では、得られるポリエステル樹脂に対して金属原子として、好ましくは0. 29〜
0.83モル/tであり、 0.33モル/t以上が更に好ましい。また、上限は0.6
2モル/tが更に好ましく、特に好ましくは0.45モル/ tとされる。
チタン化合物及び周期表IIA族金属化合物を上記の範囲に調節し、PET−Naを本発明の範囲内に調節することで、体積固有抵抗値が低く、またポリエステル樹脂製造時に副生するジエチレングリコール量が少なく、黄色味が少ないポリエステル樹脂を製造することができるために好ましい。
エステル化反応触媒及び重縮合反応触媒はテレフタル酸とエチレングリコールのスラリー調製時に添加してもよく、エステル化反応槽に添加してもよく、重縮合反応槽に添加してもよく、又はこれらの移送配管に添加してもよいが、例えばアンチモン化合物を用いる場合は、移送配管に添加することが、重合活性の失活を防止できるため好ましい。
また、マグネシウム化合物を助剤として添加する場合には、テレフタル酸とエチレングリコールのスラリー調製時に添加してもよく、エステル化反応槽に添加してもよく、重縮合反応槽に添加してもよく、又はこれらの移送配管に添加してもよいが、移送配管に添加されると、活性や品質を好ましく調節できる。
(熱安定化助剤)
エステル化反応、エステル交換反応及び溶融重縮合反応において、前記触媒の他に熱安定化助剤としてリン化合物を添加することができる。リン化合物としては、例えば正リン酸;ポリリン酸;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート等のリン酸エステル、エチルジエチルホスホノアセテート等の5価のリン化合物;亜リン酸、次亜リン酸、及び、トリメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト等の3価のリン化合物が挙げられる。中でも、重縮合速度制御性の面から、好ましくはリン酸、リン酸エステル等の5価のリン化合物、更に好ましく具体的にはトリメチルホスフェート、エチルアシッドホスフェートである。リン化合物を使用する場合は、これを重縮合反応の開始までの任意の時期に添加することができる。このリン化合物はテレフタル酸とエチレングリコールのスラリー調製時に添加してもよく、エステル化反応槽に添加してもよく、重縮合反応槽に添加してもよく、又はこれらの移送配管に添加してもよいが、反応の最初の段階、即ち、スラリー調製時に添加することが、重縮合触媒の活性を低下させず、好ましい。
リン化合物の添加量は、前記周期表IIA族金属化合物の添加量に合わせて、P/M(Pはポリエステル樹脂1トン当たりに含まれるリン原子のモル、Mはポリエステル樹脂1トン当たりに含まれる周期律表IIA族の金属原子のモル)として、0.35〜0.80を満足するように添加することが好ましく、P/Mの下限は、更に好ましくは0.40以上、特に好ましくは0.45以上を満足するように添加することが好ましい。また、P/Mの上限は0.75が更に好ましく、特に好ましくは0.70である。
また、リン化合物の添加量は得られるポリエステル樹脂に対して金属原子として、好ましくは0. 2〜2.4モル/tであり 、0.3モル/t以上が更に好ましく、0.4モル/t以上が特に好ましい。また、上限は2.0モル/tが更に好ましく、特に好ましくは1.2モル/tとされる。リン化合物の添加量及びP/M が上記の範囲内であり、P
ET−Naを本発明の範囲内に調節することで、ポリエステル樹脂製造時に副生するジエチレングリコール量が少なく、体積固有抵抗値が低くなり、また重合時の固有粘度の上昇速度が速く、ポリエステル樹脂の生産性が良好となるために好ましい。
(その他助剤)
また、前記エステル化反応においては、重縮合時に使用される後述の触媒及び助剤を使用することができる。その際、例えば、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第三級アミン;水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ-n-ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム化合物を少量添加すると、ポリエステル樹脂製造時のジエチレングリコールの副生を効果的に抑制することができる。ただし、本発明においては、ナトリウム化合物を使用することによって効果的にジエチレングリコールの副生を抑制することができるため、上述のアミン化合物の添加は、必須では無い。
<ポリエステル樹脂の製造方法>
以下にポリエステル樹脂原料のジオール成分としてエチレングリコールを主成分とし、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を主成分とするポリエチレンテレフタレートの製造方法を例にして本発明のポリエステル樹脂の製造方法を説明する。
本発明において、ポリエステル樹脂の製造方法は、原料調製工程、エステル化反応を行うエステル化工程、及び溶融重縮合工程により実施される。また、必要に応じ、固有粘度の上昇と環状3量体濃度の低減を目的として固相重縮合工程を実施してもよい。
(原料調製工程)
原料調製工程では、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、必要に応じて用いられるその他の共重合成分等と共に、スラリー調製槽に投入し、攪拌下に混合した後、必要に応じてろ過することによって原料スラリーとする。原料スラリーにおけるテレフタル酸に対するエチレングリコールのモル比は、通常1.0〜2.0の範囲であり、1.03以上となることが好ましく、更に好ましくは1.05以上である。また上限は、1.7以下となることが好ましく、更に好ましくは1.5以下である。前記モル比が1.0以上であると、エステル化反応が進みやすくなり好ましい。また、前記モル比が2.0以下であると、ポリエステル樹脂製造時に副生するジエチレングリコールの量が増加しにくくなり、耐熱性の点から好ましい。
(エステル化工程)
エステル化工程はテレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化反応を行い、オリゴマーを得る工程である。
エステル化反応は、単一のエステル化反応槽、又は、複数のエステル化反応槽を直列に接続した多段反応装置を用いて、エチレングリコールの還流下、且つ、反応で生成する水と余剰のエチレングリコールを系外に除去しながら、エステル化率(原料ジカルボン酸成
分の全カルボキシル基のうちジオール成分と反応してエステル化したものの割合)が、通常90%以上、好ましくは93%以上に達するまで行なう。また、エステル化反応生成物としてのオリゴマーの数平均分子量は500〜5,000であるのが好ましい。
エステル化反応における反応条件としては、複数のエステル化反応槽の場合、第1段目のエステル化反応槽における反応温度を、通常240〜270℃、好ましくは245〜270℃、圧力を、通常0〜300kPaG(Gは大気圧に対する相対圧力であることを示す)、好ましくは0〜200kPaGとし、最終段における反応温度を、通常250〜280℃、好ましくは255〜275℃、圧力は通常0〜180kPaG、好ましくは0〜150kPaGとする。なお、単一のエステル化反応槽による場合には、反応温度を200〜280℃、好ましくは210℃〜270℃、圧力を0〜180kPaG、好ましくは0〜150kPaGとする。
エステル化工程では、溶融重縮合後のプレポリマーの末端カルボキシ基量を調整するために、エチレングリコールをエステル化反応中に追加添加しても良い。エステル化工程で添加されるエチレングリコールの量は生成するプレポリマーに対して50〜1300 モ
ル/tが好ましい。この上限以下のエチレングリコールを添加すると重縮合反応の留出系への負荷が低くなるので好ましい。エチレングリコールの添加量はより好ましくは100〜1150モル/tである。
エチレングリコールを添加する時期は、エステル化工程の後段であって、エステル化率が50%、好ましくは60%、更に好ましくは80%、特に好ましくは90%を超えた時点以降で添加することが好ましい。エステル化率が50%以上のオリゴマーに添加すると末端カルボキシル基量を制御する効果が大きくなるからである。
(溶融重縮合工程)
本発明において、エステル化反応工程に続き、オリゴマーを溶融重縮合しポリエステルプレポリマーを得る重縮合工程を行う。溶融重縮合は、連続式、回分式のいずれの方法でもかまわないが、連続式の場合は複数の重縮合反応槽を直列に接続した、例えば、第1段目が攪拌翼を備えた完全混合型の反応器、第2段及び第3段目が攪拌翼を備えた横型プラグフロー型の反応器からなる多段反応装置を用いて、減圧下に、副生するエチレングリコールを系外に留出させながら行う。
連続式の溶融重縮合における反応条件としては、複数の重縮合反応槽の場合、第1段目の重縮合反応槽における反応温度を、通常250℃〜290℃、好ましくは260℃〜280℃、絶対圧力を、通常65kPa〜1.3kPa、好ましくは26kPa〜2kPaとし、最終段における反応温度を、通常265℃〜300℃、好ましくは270℃〜295℃、絶対圧力を、通常1.3kPa〜0.013kPa、好ましくは0.65kPa〜0.065kPaとする。中間段の重縮合反応槽における反応条件としては、それらの中間の条件が選択され、例えば、3段反応装置においては、第2段における反応温度を、通常265℃〜295℃、好ましくは270℃〜285℃、絶対圧力を、通常6.5kPa〜0.13kPa、好ましくは4kPa〜0.26kPaとする。
一方、回分式の場合は、通常、エステル化又はエステル交換反応槽とそれに直列に接続された重縮合反応槽からなる反応装置を用いて、減圧下に、副生するエチレングリコールを系外に留出させながら行なう。
回分式の溶融重縮合における反応条件としては、重縮合反応槽における反応温度を、通常220℃〜300℃、好ましくは250℃〜295℃の範囲で漸次昇温し、漸次減圧し通常最終圧力を1.3kPa〜0.013kPa、好ましくは0.65kPa〜0.065kPaとする。
(ペレット化)
溶融重縮合工程で得られたポリエステル樹脂は、溶融状態でダイを経由して空中にストランド状で流出させ、直ちに冷却水と接触させて固化させ、次いでカッターで切断する、所謂ストランドカット法で粒子化するか、又は、溶融樹脂をダイを経由して直接冷却水中に流出させ、ダイの前面に設けたカッターで切断して粒子化する所謂アンダーウォーターカッティング法を用いてペレット化される。
ポリエステル樹脂の製造方法においてはフィルム用ポリエステル樹脂として好適な樹脂を得るために任意の時期に、平均粒子径0.05〜5.0μmの不活性粒子を添加することができる。
<ポリエステル樹脂の物性>
ポリエステル樹脂の固有粘度の下限は、好ましくは0.55dl/g、更に好ましくは
0.57dl/g、更に好ましくは0.59dl/g、特に好ましくは0.60dl/gで
ある。また、上限は、好ましくは0.80dl/g、更に好ましくは0.77dl/g、更に好ましくは0.75dl/g、更に好ましくは0.73dl/g、更に好ましくは0.70dl/g、更に好ましくは0.68dl/g、特に好ましくは0.66dl/gである。
固有粘度が前記範囲であると、フィルムや繊維等の成形体としての機械的強度や透明性に優れるために好ましい。なお、固有粘度は、重合反応槽の温度、圧力、滞留時間及び触媒量によって制御することが可能である。
また、ポリエステル樹脂は、285℃におけるρvが8×10Ω・cm以下であり、7×10Ω・cmであることが更に好ましく、6×10Ω・cm以下であるのが更に好ましく、5×10Ω・cmであることが特に好ましい。ρvが前記範囲外では、フィルム等の高速成形性が低下する傾向となる。
なお、ρvは、リン化合物の添加量及び前記周期表IIA族金属化合物の添加量、これらの添加時期、添加時の温度、添加の順序によっても制御することが可能であるが、本発明においては、特に、ナトリウム化合物を、金属元素換算で、50質量ppb以上260質量ppb未満含有することによって、ほかの樹脂物性を損ねることなく、効果的に上記の範囲内に調節することが可能である。
また、ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂製造時に副生するジエチレングリコール量が2.7モル%以下であり、2.5モル%以下であることが更に好ましく、2.4モル%以下であることが更に好ましく、2.3モル%以下であることが更に好ましく、2.2モル%以下であることが特に好ましい。副生ジエチレングリコール量が前期範囲を超過する場合は、ポリエステル樹脂の耐熱性が悪化する傾向がある。なお、ポリエステル樹脂製造時の副生ジエチレングリコール量は、スラリーモル比、エステル化反応槽の温度、圧力、滞留時間、リン化合物量、及び前記周期表IIA族金属化合物の量によって制御が可能であるが、本発明においては、特に、ナトリウム化合物をポリエステル樹脂に対してナトリウム金属換算で50質量ppb以上260質量ppb未満添加することによって、他の樹脂物性を損ねることなく、効果的に上記の範囲内に調節することが可能である。
また、上記ポリエステル樹脂は、必要に応じて、更に高重合度化を目的として、溶融重縮合後のペレットを、例えば、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、大気圧に対する相対圧力として、通常100kPa以下、好ましくは20kPa以下の加圧下で通常5〜30時間程度、或いは、絶対圧力として、通常6.5〜0.013kPa、好ましくは1.3〜0.065kPaの減圧下で通常1〜20時間程度、通常190〜230℃、好ましくは195〜225℃の温度で加熱することにより、固相重縮合させてもよい。
その際、固相重縮合に先立って、不活性ガス雰囲気下、又は、水蒸気雰囲気下或いは水蒸気含有不活性ガス雰囲気下で、通常120〜200℃、好ましくは130〜190℃で
、1分〜4時間程度加熱することにより、樹脂ペレット表面を結晶化させることが好ましい。
<ポリエステル樹脂の組成物>
ポリエステル樹脂には、必要に応じて下記の各種粒子や、添加剤、ポリエステル樹脂以外の樹脂を添加してポリエステル樹脂の組成物とすることができる。
(粒子)
本発明のポリエステル樹脂ペレットをフィルム成形する際、フィルム表面のブロッキング防止のために無機質又は有機質粒子を添加することができるがフィルムが光学用途など透明性を必要とする場合は極力少ないか又は添加しない方がよい。無機質粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、シリカ、タルク、チタニア、カオリン、マイカ、ゼオライト等、及びそれらのシランカップリング剤、又はチタネートカップリング剤等による表面処理物が、また、有機質粒子としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、架橋樹脂等が、それぞれ挙げられる。これら粒子の粒子径は、平均粒子径が0.05〜5.0μmの範囲にあるのが好ましい。それら粒子の添加量は、下限は通常0.001質量%、好ましくは0.05質量%、上限は通常2.0質量%、好ましくは1.0質量%、更に好ましくは0.5質量%である。これらの粒子は、重合途中又は重合後に添加することができる。
(添加剤)
本発明のポリエステル樹脂ペレットに、必要に応じ、その他慣用の添加剤などを配合することができる。例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、核剤、可塑剤、着色剤等が挙げられる。溶融重縮合途中又は重縮合後に添加することができる。これらの添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。その他の添加剤の添加量は、上限は通常5質量%、好ましくは0.05〜2質量%である。
(配合方法)
前記の種々の粒子や添加剤の配合方法は、特に制限されないが、ベント口から脱揮できる設備を有する1軸又は2軸の押出機を混練機として使用する方法が好ましい。各成分は、付加的成分を含めて、混練機に一括して供給することができ、あるいは、順次供給することもできる。また、付加的成分を含めて、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合しておくこともできる。
<ポリエステルフィルム>
本発明のポリエステル樹脂ペレットは、フィルム、シートに成形される。フィルム成形の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリエステル樹脂の融点以上の温度で溶融した後、押出成形によりポリエステルシートを得、次いで得られたポリエステルシートを二軸延伸することによりポリエステルフィルムを得ることができる。上記ポリエステルを250〜320℃でフィルム状に溶融押出した後、固化し、無定型シートとし、次いで70℃〜140℃で縦、横に逐次又は同時二軸延伸し、160〜240℃で熱処理する方法が挙げられる。通常、延伸温度は80〜140℃であり、延伸倍率は縦、横各々2〜7倍の範囲から選択される。ポリエステルフィルムの厚みは、通常1〜300μm程度とされる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
ポリエステル樹脂は、以下の測定方法によって測定、評価を行った。
<樹脂に含まれるアンチモン、マグネシウム、リン原子含有量 質量ppb>
樹脂試料2.5gを、硫酸存在下に過酸化水素で常法により灰化、完全分解後、蒸留水にて50mlに定容したものについて、プラズマ発光分光分析装置(JOBIN YVON社製ICP−AES「JY46P型」)を用いて定量し、ポリエステル樹脂中の質量ppbに換算した。
<ポリエステル樹脂ペレットの内部に含まれるナトリウム原子の質量(PET−Na)
質量ppb>
本発明において、PET−Naとは、ポリエステル樹脂ペレットの内部に含まれるナトリウム原子の質量のことであり、以下の方法で測定を行った。
樹脂表面の酸洗浄のため、予めテフロン(登録商標)ボトルに樹脂ペレット試料を採取し、1N−HClを添加して超音波洗浄を30分間実施した後、超純水で3回洗浄した。その後、樹脂ペレット試料を石英製ケルダールフラスコに移し、硫酸と硝酸を添加して加熱分解した。分解液を超純水にて定容し、プラズマ発光分光分析装置(Agilent Technologies社製 HP4500型)を用いて定量し、ポリエステル樹脂中の質量ppbを算出した。
<テレフタル酸中に含まれるナトリウム原子の質量(TPA−Na) 質量ppb>
本発明において、TPA−Naとは、テレフタル酸中に含まれるナトリウム原子の質量のことであり、以下の方法で測定を行った。
試料を白金坩堝に秤量し、硫酸を加えて加熱分解を行い、赤外炉にて灰化を行った。灰化後、硝酸を加えて加熱分解した後、分解液を純水にて定容し、原子吸光分析装置(Agilent社製 AA280Z型)を用いて定量し、テレフタル酸中の質量ppbを算出した。
<ρv>
樹脂試料15 g を、内径20mm 、長さ180mm の枝付き試験管に入れ、管内を十分に窒素置換した後、250℃ のオイルバス中に浸漬し、管内を真空ポンプで1To
r 以下として20分間真空乾燥し、次いで、オイルバス温度を285℃ に昇温して試料を溶融させた後、窒素復圧と減圧を繰り返して混在する気泡を取り除いた。この溶融体の中に、面積1cmのステンレス製電極2枚を5mm の間隔で並行に(相対しない裏面
を絶縁体で被覆)挿入し、温度が安定した後に、抵抗計(ヒューレット・パッカード社製「MODELHP4339 B」)で直流電圧100Vを印加し、そのときの抵抗値を計
算してρv(Ω・cm)とした。
<固有粘度 IV(dL/g)>
樹脂試料約0.25gを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒約25mLに、濃度が1.00g/dLとなるように120℃で30分溶解させた後、30℃まで冷却し、30℃において全自動溶液粘度計(センテック社製、「DT553」)にて、試料溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式により、固有粘度(IV)を算出した。
IV=((1+4KHηsp0.5−1)/(2KHC)
ここで、 ηsp=η/ηo−1 であり、ηは試料溶液の落下秒数、ηoは溶媒のみの落
下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。
<ジエチレングリコール(DEG)濃度>
ウィレー型粉砕機にて、1.5mm穴の目皿を用いて粉砕した樹脂試料3gに、4N−KOH/メタノール溶液30mlを加えて還流冷却器をセットし、マグネチックスターラ
付きホットプレート(表面温度200℃)上で攪拌しながら、90分間加熱環流し加水分解する。流水につけて冷却後、高純度テレフタル酸約12gを加えて、十分振とうして中和し、pHを9以下としたスラリーを、11G−4グラスフィルターを用いて濾過した後、メタノール2mlで2回洗浄して濾液と洗液を合わせ、ガスクロマトグラフィーへの供試液とする。供試液1μlをマイクロシリンジにて、(株)島津製作所ガスクロマトグラフィー(形式GC−14A)に注入し、各グリコール成分のピークの面積から、全グリコール成分に対する各グリコール成分のモル%を、下式に従い計算した。
あるグリコール成分のモル%=(ACO×CfCO)/(Σ(A×Cf))×100
CO:そのグリコール成分の面積(μV・秒)
fCO:そのグリコール成分の補正係数
A:各グリコール成分の面積(μV・秒)
f:各グリコール成分の補正係数
なお、ガスクロマトグラフィーの使用条件としては、
カラム :J&W社製「DB−WAX」(0.53mm×30m)
設定温度:カラム:80℃〜160℃
気化室:230℃
検出器:230℃
ガス流量:キャリア(窒素):10ml/min
水素:0.5kg/cm2
空気:0.5kg/cm2
検出器:FID
感度:102MΩ
<色調>
樹脂試料を、内径36mm、深さ15mmの円柱状の粉体測色用セルに充填し、測色色差計(日本電色工業社製「ZE2000」)を用いて、JIS Z8730の参考1に記載されるLab表色系におけるハンターの色差式の色座標b値を、反射法により測定セルを90度ずつ回転させて4箇所測定した値の単純平均値として求めた。
<静電密着性>
樹脂試料を180℃で乾燥した後、290℃で溶融押し出し、表面温度40℃に保持した回転冷却ドラム上で急冷固化させて未延伸フィルムを作成した。この未延伸フィルムを巻き取る際、静電ピンニング法にてフィルム厚み斑が小さく、安定して巻き取れる速度より、以下のように静電密着性を評価した。
○:巻き取り速度 35m/分以上
△:巻き取り速度 30m/分以上35m/分未満
×:巻き取り速度 30m/分未満
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
スラリー調製槽、及びそれに直列に接続された2段のエステル化反応槽、及び2段目のエステル化反応槽に直列に接続された3段の溶融重縮合槽からなる連続式重合装置を用いた。
スラリー調製槽に、TPA−Naが290質量ppbであるテレフタル酸と、エチレングリコールを、質量比で220:123の割合で連続的に供給すると共に、エチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してリン原子として21質量ppmとなる量で連続的に添加して、攪拌、混合することによりスラリーを調製した。
このスラリーを、窒素雰囲気下で260℃、相対圧力92kPa、平均滞留時間4.5時間に設定され、反応生成物が存在する第1段目のエステル化反応槽に供給し、次いで、第1段目のエステル化反応生成物を、窒素雰囲気下で260℃、相対圧力5kPa、平均滞留時間1.8時間に設定された第2段目のエステル化反応槽に連続的に移送して、更にエステル化反応させた。
引き続いて、前記で得られたエステル化反応生成物を溶融重縮合槽に移送する際、その移送配管中のエステル化反応生成物に、酢酸マグネシウム4水和物のエチレングリコール溶液と三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を、それぞれ生成ポリエステル樹脂に対して、マグネシウム原子としての含有量が33質量ppm、アンチモンとしての含有量が225質量ppmとなる量で連続的に添加しつつ、272℃、絶対圧力3.5kPaに設定された第1段目の溶融重縮合槽、次いで、276℃、絶対圧力0.4kPaに設定された第2段目の溶融重縮合槽、次いで、277℃、絶対圧力0.3kPaに設定された第3段目の溶融重縮合槽に連続的に移送して、各重縮合槽における滞留時間を以下の通りとし、第1段目70分、第2段目60分、第3段目70分、滞留時間が合計で200分となるようにして溶融重縮合させ、第3段目の重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断してペレットとしたポリエステル樹脂を製造した。
得られたポリエステル樹脂ペレットの評価結果を表1に示した。
(実施例2)
スラリー調製槽、及びそれに直列に接続された2段のエステル化反応槽、及び2段目のエステル化反応槽に直列に接続された3段の溶融重縮合槽からなる連続式重合装置を用いた。
スラリー調製槽に、TPA−Naが100質量ppbであるテレフタル酸と、エチレングリコールを、質量比で456:159の割合で連続的に供給すると共に、エチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してリン原子として22質量ppmとなる量で連続的に添加して、攪拌、混合することによりスラリーを調製した。
このスラリーを、窒素雰囲気下で271℃、相対圧力132kPa、平均滞留時間2.6時間に設定され、反応生成物が存在する第1段目のエステル化反応槽に供給し、次いで、第1段目のエステル化反応生成物を、窒素雰囲気下で269℃、相対圧力0kPa、平均滞留時間1.1時間に設定された第2段目のエステル化反応槽に連続的に移送して、更にエステル化反応させた。
引き続いて、前記で得られたエステル化反応生成物を溶融重縮合槽に移送する際、その移送配管中のエステル化反応生成物に、酢酸マグネシウム4水和物のエチレングリコール溶液と三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を、それぞれ生成ポリエステル樹脂に対して、マグネシウム原子としての含有量が26質量ppm、アンチモンとしての含有量が272質量ppmとなる量で連続的に添加しつつ、274℃、絶対圧力3.1kPaに設定された第1段目の溶融重縮合槽、次いで、275.5℃、絶対圧力0.3kPaに設定された第2段目の溶融重縮合槽、次いで、281℃、絶対圧力0.1kPaに設定された第3段目の溶融重縮合槽に連続的に移送して、各重縮合槽における滞留時間を以下の通りとし、第1段目60分、第2段目60分、第3段目40分、滞留時間が合計で160分となるようにして溶融重縮合させ、第3段目の重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断してペレットとしたポリエステル樹脂を製造した。
得られたポリエステル樹脂ペレットの評価結果を表1に示した。
(実施例3)
実施例2において、TPA−Naが250質量ppbであるテレフタル酸を用い、テレフタル酸に含有される金属ナトリウムの量と、エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム4水和物及び三酸化アンチモンの添加量を表1に示すように変えた以外は、実施例2におけると同様にしてポリエステル樹脂ペレットを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。
(比較例1)
実施例1において、TPA−Naが10質量ppb未満であるテレフタル酸を用いた以外は、実施例1におけると同様にしてポリエステル樹脂ペレットを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。
(比較例2及び3)
実施例2において、TPA−Naが10質量ppb未満であるテレフタル酸を用い、エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム4水和物及び三酸化アンチモンの添加量を表1に示すように変えた以外は、実施例2におけると同様にしてポリエステル樹脂ペレットを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。
(比較例4)
実施例1において、TPA−Naが600質量ppbであるテレフタル酸を用い、エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム4水和物及び三酸化アンチモンの添加量を表1に示すように変えた以外は、実施例1におけると同様にしてポリエステル樹脂ペレットを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。
Figure 2016132733
表1の結果から、ポリエステル樹脂ペレットの内部に含まれるナトリウム原子の質量が以下式(1)を満たす範囲であると、色調b値に優れ、DEG成分の含有量が低く、静電密着性に優れるポリエステル樹脂となることが分かる。
50質量ppb ≦ PET−Na <260質量ppb 式(1)
本発明のポリエステル樹脂ペレットは、、ポリエステル樹脂製造時に副生するジエチレングリコール量が少なく、色調に優れ、ρvが低くフィルムの高速製膜を可能とする。

Claims (4)

  1. ポリエステル樹脂中の全ジオール成分に対するジエチレングリコール成分の含有量が2.7モル%以下であり、285℃での溶融時の体積固有抵抗値が8×10Ω・cm以下
    であるポリエステル樹脂からなるペレットであって、ペレットの内部に含まれるナトリウム原子の含有量(PET−Na)が下記式(1)を満足する、ポリエステル樹脂ペレット。
    50質量ppb ≦ PET−Na <260質量ppb 式(1)
  2. ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分とジオール成分からなり、ジカルボン酸成分の95モル%以上がテレフタル酸であり、ジオール成分の95モル%以上がエチレングリコールである請求項1に記載のポリエステル樹脂ペレット。
  3. 請求項1又は2において、ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分として、ナトリウム原子の含有量(TPA−Na)が下記式(2)を満足するテレフタル酸を用いて、製造されたものであるポリエステル樹脂ペレット。
    60質量ppb ≦ TPA−Na <300質量ppb 式(2)
  4. ナトリウム原子の含有量(TPA−Na)が下記式(2)を満足するテレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分から、ポリエステル樹脂中の全ジオール成分に対するジエチレングリコール成分の含有量が2.7モル%以下であり、285℃での溶融時の体積固有抵抗値が8×10Ω・cm以下であ
    るポリエステル樹脂を製造し、更にそのポリエステル樹脂からポリエステル樹脂ペレットを製造する方法において、ペレットの内部に含まれるナトリウム原子の質含有量(PET−Na)が下記式(1)を満足する、ポリエステル樹脂ペレットの製造方法。
    50質量ppb ≦ PET−Na <260質量ppb 式(1)
    60質量ppb ≦ TPA−Na <300質量ppb 式(2)
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