JP5668284B2 - ポリエステル樹脂 - Google Patents
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Description
一方で、近年の高速製膜化の要求に伴い、より製膜速度を向上できるように、体積固有抵抗値の低いポリエチレンテレフタレート樹脂が要求されている。
特許文献5、6にポリエステルフィルムの生産性の改良を目的として特定量のリン化合物、2価の金属化合物、周期表第4A族のチタン族元素から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物を含有するポリエステル樹脂が記載されているが、文献5に記載の技術で製造された樹脂は末端カルボキシル基量が多く、耐加水分解性の点で改良の余地がある。
文献6に記載の技術で製造された樹脂は、太陽電池裏面封止用途には固有粘度が低く、改良の余地がある。
g、末端カルボキシル基量AVがAV≦20当量/樹脂トンであり、前記周期表第2族から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物およびリン化合物の含有量が、金属原子またはリン原子として式1を満足し、周期表第4族から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物がチタン化合物、周期表第2族から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物がマグネシウム化合物およびリン化合物がリン酸エステル化合物であることを特徴とするポリエステル樹脂。
0.2≦P/M≦0.6 (式1)
P:ポリエステル樹脂中のリン原子の濃度(モル/樹脂トン)
M:ポリエステル樹脂中の周期表第2族から選ばれる金属原子の濃度(モル/
樹脂トン)
を要旨とする。
本発明のポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分またはジカルボン酸のエステル誘導体と、ジオール成分とをエステル化又はエステル交換および重縮合することにより製造される。
タル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。ここで「原料として使用されるジカルボン酸の主成分」であるとは、原料として使用されるジカルボン酸成分に対して90モル%以上、好ましくは95モル%以上であることをいう。この範囲を外れると出来上がったポリエステル樹脂から得られる成形後のフィルムの耐熱性が劣ったり、強度が十分に得られない。
これらのジカルボン酸は通常、遊離酸の形態で用いられるが、これらの各アルキル基の炭素数1〜4程度のアルキルエステル、及びハロゲン化物、アルカリ金属塩等の誘導体としても用いることができる。
本発明のポリエステル樹脂は、触媒として、周期表第4族から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物、及び周期表第2族から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物、およびリン化合物を使用して得られたものである。
0.2≦P/M≦0.6 (式1)
P:ポリエステル樹脂中のリン原子の濃度(モル/樹脂トン)
M:ポリエステル樹脂中の周期表第2族から選ばれる金属原子の濃度(モル/樹脂トン)
前記範囲未満では、重縮合活性が低下し、所定の固有粘度に到達しない。また、得られたポリエステル樹脂の熱安定性が悪くなり、末端カルボキシル基量が増加する。
本発明のポリエステル樹脂は、上記化合物以外の成分を含みうるが、樹脂の末端カルボキシル基量AVをAV≦20当量/樹脂トンとするには周期表第4族の元素の化合物を用いることが好適である。従って公知のアンチモン化合物やゲルマニウム化合物を含有する必要性はない。
程までに添加するには次の様に行なうのが好ましい。
まず、リン化合物は、重縮合工程の終了までに添加すればよいが、エステル化工程の終了までに添加するのが好ましく、スラリー調製槽に添加するのがより好ましい。これはリン化合物と周期表第2族の元素の化合物との反応により、得られるポリエステル樹脂の体積固有抵抗値が制御されるが、その値を好ましい範囲とするためである。
また、周期表第4族から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物は、エステル化反応槽、またはエステル化反応槽から溶融重縮合工程への移送段階の配管などに添加するが、周期表第2族の元素よりも先に添加すると周期表第4族の元素の後から添加された周期表第2族の元素との相互作用により周期表第4族の元素の重縮合活性が阻害されることがあるので、周期表第2族の元素の化合物を添加してリン化合物と反応させた後に周期表第4族の元素の化合物を添加することが好ましい。
そして、周期表第2族の元素の化合物は、エステル化反応工程から重縮合反応工程の終了までに添加すればよいが、エステル化反応終了後、重縮合反応終了までに添加するのが好ましく、エステル化反応終了後、重縮合反応工程の開始前に添加するのが更に好ましい。これはエステル化反応の終了までに添加すると、周期表第2族の元素とリン化合物との反応が未反応のジカルボン酸由来の酸性分などに阻害されるなどの要因で目的とする体積固有抵抗値ρVが得られない可能性があること、あるいは出来上がったポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量AVが増大する可能性があるためである。したがって、目的とするポリエステル樹脂を得るためには、各化合物の添加順序としては、周期表第2族の元素の化合物、次いで、周期表第4族から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物の順が好ましい。
第2族の元素の化合物の好ましい添加時期は、エステル化反応の後半、特にエステル化率60%以上、好ましくは80%以上の段階ないし重縮合反応器での添加である。
、最終段における反応温度を、通常265〜300℃、好ましくは270〜295℃、絶
対圧力を、通常1.3〜0.013kPa、好ましくは0.65〜0.065kPaとする。中間段における反応条件としては、それらの中間の条件が選択され、例えば、3段反応装置においては、第2段における反応温度を、通常265〜295℃、好ましくは270〜285℃、絶対圧力を通常6.5〜0.13kPa、好ましくは4〜0.26kPaとする。このようにしてポリエステル樹脂を製造することができる。このポリエステル樹脂は、溶融状態でダイからストランド状に押出し、冷却固化させたのちカッターで切断して粒状体(チップ)とされる。
また、別の方法として回分式の固相重縮合法も用いられる。絶対圧力として、下限が通常0.013kPa、好ましくは0.065kPa、上限が通常は6.5kPaとなる減圧下で通常1〜25時間程度、好ましくは1〜20時間程度、温度の下限は通常190℃、好ましくは195℃、上限は230℃、好ましくは225℃で加熱することにより、目的のポリエステル樹脂を得ることができる。
溶融重縮合工程で得られたプレポリマーを引き続き固相重縮合することで、固有粘度を所定の範囲にコントロールし、かつ末端カルボキシル基を低減することが出来る。固相重縮合後に所定の範囲に末端カルボキシル基をコントロールするにはプレポリマーの末端カルボキシル基量を30当量/樹脂トン以下、好ましくは25当量/樹脂トン以下とすることが好ましいが、この範囲内とするための方法として、エステル化工程の後段でエチレングリコールなどの脂肪族ジオール成分を添加する方法、溶融重縮合温度を制御する方法などがあげられる。
一方、溶融重縮合温度を制御する方法では、重縮合温度を上げると末端カルボキシル基量は増加し、逆に重縮合温度を下げると末端カルボキシル基量は減少する効果を利用して制御する。しかし温度を下げると重縮合反応速度も低下するのでこれらのバランスが重要である。上記のような制御法によって、プレポリマー中の末端カルボキシル基量は、30当量/樹脂トン以下、好ましくは25当量/樹脂トン以下の範囲に調整する。末端カルボキシル基量がこの範囲より多い場合は、引き続く固相重縮合で目標の固有粘度に調節しようとした場合に末端カルボキシル基量が充分に低下できないため、得られたポリエステル樹脂の耐加水分解性能が劣ることになる。
本発明で得られるポリエステル樹脂の固有粘度IVは0.70dl/gより高くなければならないが好ましくは0.75dl/g以上である。これはこの樹脂を用いて得られる成形後のフィルムの強度が落ちるためである。また、得られるポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量AVは20当量/樹脂トン以下であり、好ましくは18当量/トン以下であり、さらに好ましくは15当量/樹脂トン以下、特に好ましくは12当量/樹脂トン以下である。これはこの範囲を超えるとこの樹脂を成形して得られるフィルムの耐加水分解性が低下するためである。
また、成形に際しては、上述のような無機質又は有機質粒子からなる滑剤を含有する粒子マスターバッチを添加しても良い。
こうして得られたポリエステルフィルムは、耐加水分解性に優れた、太陽電池裏面封止フ
ィルム又はその構成成分として好ましく使用できる。
<エステル化率>
粉砕した試料0.5gをビーカーに精秤しベンジルアルコール40mlを加えて撹拌しながら、200℃に加熱して完全に溶解させた。室温まで放冷した後、自動滴定装置(平沼産業 COM−1600)を用いて、0.1Nのメタノール性水酸化カリウム溶液で滴定を行った。その結果をもとに、以下の式(1)に従ってカルボキシル末端量を求めた。更に、得られたカルボキシル末端量を用いて、以下の式(2)に従ってエステル化率を計算した。
・・・(1)
A:中和に要した0.1Nのメタノール性水酸化カリウム溶液量(ml)
f:0.1Nメタノール性水酸化カリウム溶液の力価
W:試料の重量(g)
エステル化率(%)=(1000−カルボキシル末端量)/100
・・・(2)
粉砕した試料0.25gを、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒に、濃度(c)を1.0g/dlとして120℃で30分間で溶解させた後、ウベローデ型毛細粘度管を用いて、30℃ で、原液との相対粘度(ηrel)を測定し、この相対粘度(ηrel)−1から求めた比粘度(ηsp)と濃度(c)との比(ηsp/c)を求め、同じく濃度(c)を0.5g/dl、0.2g/dl、0.1g/dlとしたときについてもそれぞれの比(ηsp/c)を求め、これらの値より、濃度(c)を0に外挿したときの比(ηsp/c)を固有粘度〔η〕(dl/g)として求めた。
試料を粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mlを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mlを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込ながら攪拌下に、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。又、ブランクとして試料を使用せずに同様の操作を実施し、以下の式(3)によって末端カルボキシル基量を算出した。
・・・・(3)
A:滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μl)
B:ブランクでの滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μl)
W:試料の量(g)
f:0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価
・・・(4)
試料23gを、内径20mm、長さ180mmの枝付き試験管に入れ、管内を十分に窒素置換した後、250℃のオイルバス中に浸漬し、管内を真空ポンプで0.13kPa以下として20分間真空乾燥し、次いで、オイルバス温度を285℃に昇温して試料を溶融させた後、窒素復圧と減圧を繰り返して混在する気泡を取り除いた。この溶融体の中に、面積1cm2のステンレス製電極2枚を5mmの間隔で並行に(相対しない裏面を絶縁体で被覆)挿入し、温度が安定した後に、抵抗計(ヒューレット・パッカード社製「MODEL HP4339B」)で直流電圧100Vを印加し、そのときの抵抗値を計算して体積固有抵抗値(Ω・cm)とした。
試料2.5gを、硫酸存在下に過酸化水素で加熱し灰化、完全分解後、蒸留水にて50mlに定容したものについて、プラズマ発光分光分析装置(JOBIN YVON社製ICP−AES「JY46P型」)を用いて定量し、ポリエステル樹脂中の重量ppmに換算した。
120℃−100%飽和水蒸気の雰囲気にてポリエステル樹脂を24時間処理し、処理後の固有粘度保持率(%)を下記の式にて算出し、下記の基準で判定した。
判定基準
○:固有粘度保持率が80%以上
×:保持率が80%未満
1個のスラリー調製槽、及びそれに直列に接続された2段のエステル化反応槽、及び2段目のエステル化反応槽に直列に接続された3段の溶融重縮合槽からなる連続式重合装置を用い、スラリー調製槽に、テレフタル酸とエチレングリコールを重量比で100:45の割合で連続的に供給すると共に、エチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してリン原子としての含有量が4重量ppmとなる量で連続的に添加して、攪拌、混合することによりスラリーを調製し、このスラリーを、窒素雰囲気下で267℃、相対圧力100kPa、平均滞留時間4時間に設定され、反応生成物が存在する第1段目のエステル化反応槽に連続的に流量120kg/hrで供給し、次いで、第1段目のエステル化反応生成物を、窒素雰囲気下で265℃、相対圧力5kPa、平均滞留時間2時間に設定された第2段目のエステル化反応槽に連続的に移送して、更にエステル化反応させた。その際、第2段エステル化反応槽に設けた上部配管を通じて、エチレングリコールを生成するポリエステル樹脂に対して322モル/トンになる量を連続的に供給した。この場合、第2段エステル化反応槽におけるエステル化率は97%であった。
第3段重縮合反応槽から取り出した溶融重縮合反応生成物は、ダイからストランド状に押出して冷却固化し、カッターで切断して1個の重さが平均粒重24mgのポリエステル樹脂チップとした。このチップの固有粘度IVは0.62dl/g、末端カルボキシル基量AVは15当量/樹脂トンであった。
エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム4水和物およびテトラブチルチタネートの添加量、及び第2段エステル化反応槽に添加するエチレングリコールの量を表1に示すように変えた他は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂チップを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。
エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム4水和物およびテトラブチルチタネートの添加量を表1に示すように変えた他は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂チップを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。この例で得られたポリエステル樹脂は体積固有抵抗値ρVが非常に高く、フィルム製膜には適さないものであった。
エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム4水和物およびテトラブチルチタネートの添加量、および第2段エステル化反応槽に添加するエチレングリコールの量を表1に示すように変えた他は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂チップを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。この場合、第2段エステル化反応槽におけるエステル化率は94%であった。この例で得られたポリエステル樹脂は末端カルボキシル基量AVが高く、耐加水分解性に劣り、太陽電池裏面封止用途フィルムには適さないものであった。
リン化合物を添加せず、酢酸マグネシウム4水和物およびテトラブチルチタネートの添加量、および第2段エステル化反応槽に添加するエチレングリコールの量を表1に示すように変えた他は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂チップを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。この場合、第2段エステル化反応槽におけるエステル化率は95%であった。この例では重縮合活性が低く得られたポリエステル樹脂の固有粘度IVが上昇せず、フィルム用途には適さないものであった。マグネシウム化合物がチタン化合物の重縮合活性を阻害したためと考えられる。
Claims (6)
- テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とのエステル化及び重縮合反応により得られるポリエステル樹脂であって、周期表第4族から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物、周期表第2族から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物およびリン化合物を含有し、285℃での体積固有抵抗値ρVがρV≦20×107Ω・cm、固有粘度IVがIV>0.7dl/g、末端カルボキシ
ル基量AVがAV≦20当量/樹脂トンであり、前記周期表第2族から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物およびリン化合物の含有量が、金属原子またはリン原子として式1を満足し、周期表第4族から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物がチタン化合物、周期表第2族から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物がマグネシウム化合物およびリン化合物がリン酸エステル化合物であることを特徴とするポリエステル樹脂。
0.2≦P/M≦0.6 (式1)
P:ポリエステル樹脂中のリン原子の濃度(モル/樹脂トン)
M:ポリエステル樹脂中の周期表第2族から選ばれる金属原子の濃度(モル/
樹脂トン) - チタン化合物の含有量が金属原子換算で3重量ppm以上10重量ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂。
- マグネシウム化合物の含有量が金属原子換算で10重量ppm以上35重量ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂を成形してなることを特徴とするフィルム。
- 請求項4に記載のフィルムを構成成分として含むことを特徴とする太陽電池裏面封止用フィルム。
- 請求項5に記載の太陽電池裏面封止用フィルムにより裏面封止されていることを特徴とする太陽電池。
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