JP2013189521A - ポリエステル組成物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】異物が少なく、耐加水分解性、耐UV性、、マット感に優れた太陽電池フィルム用途として好適なポリエステル組成物を低コストで製造する方法を提供する。
【解決手段】ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応し、次いで重縮合反応および固相重合反応を行うポリエステル製造方法において、エステル化反応終了から重縮合反応開始までの間に、ジオール成分を追加添加し、リン酸アルカリ金属塩のジオール溶液、無機粒子をエステル化反応物に添加することを特徴とするポリエステル組成物の製造方法により達成される。
【選択図】なし

Description

本発明は、安価で、異物が少なく、耐加水分解性、耐UV性、マット感に優れた太陽電池用フィルム用途として好適なポリエステル組成物の製造方法に関する。
ポリエステルは、機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。
しかし、ポリエステルは、加水分解により機械物性が低下するため、長期にわたって使用する場合、或いは湿気のある状態で使用する場合においては、加水分解を抑制すべく様々な検討がなされてきた。特に、太陽電池用フィルムにおいては、屋外にて20年以上の耐用年数が要求されることから、高い耐加水分解性が要求される。
例えば、特許文献1には、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のリン酸塩を含有するポリエステルの製造方法が記載されている。
しかし、リン酸金属塩のみでは、初期のCOOH末端基は抑制できるが、加水分解によるCOOH末端基増加量を抑制することは難しく、太陽電池用途のように長期間の耐久性を必要とする用途では十分な耐加水分解性が得られない。
また、特許文献2には、無機リン酸塩を含有するポリエステルの製造方法が記載されており、実施例ではリン酸と併用されている。
しかし、リン酸と無機リン酸塩の比率とその適用量が不適切であるため、無機リン酸塩が異物化しやすく、短期間の耐加水分解性には優れるものの、太陽電池用途などに必要とされる長期にわたる耐加水分解性が不十分であり、異物によるフィルムの機械物性の低下があった。
特許文献3には、緩衝リンを含有するポリエチレンテレフタレートが記載されており、実施例ではリン化合物と併用されている。
しかし、リン化合物の種類、その比率、適用量などの適正化が不十分であるため、太陽電池用途としては耐加水分解性、機械特性が不十分である。
また、ポリエステルの製造方法としては、ジカルボン酸を主原料とするエステル化反応を経て重縮合反応する方法(直重法)と、ジカルボン酸エステルを主原料としてエステル交換反応を経て重縮合反応を行う方法(DMT法)がある。DMT法は、粒子成分の分散性がよく、異物抑制の点で優れているが、直重法に比べ原料費などコストが高いという問題がある。一方で、直重法においては、無触媒でエステル化反応を行うことが可能であり、さらに、原料が安価であることから、コスト面で非常に優れているが、得られるポリエステルのCOOH末端基量がDMT法に比べ高いことから耐加水分解性が低下、また、リン酸金属塩が異物化しやすいという問題点があった。
さらに、太陽電池用フィルムとして、耐UV性、マット感等を付与するためには、得られたポリエステル組成物に、無機、有機粒子を、二軸押出機等を用いて溶融混練する方法が一般的に実施されているが、無機、有機粒子に吸着している持込水分によるポリエステルの加水分解や高温下での溶融混練時にポリエステル組成物が熱分解し、COOH末端基量が高くなり、耐加水分解性に劣るという問題点があった。
特開2001−114881号公報 特開2007−277548号公報 特開2008−7750号公報
本発明の目的は、上記した従来の課題を解決し、安価で、異物が少なく、耐加水分解性、耐UV性、マット感に優れた太陽電池用フィルム用途として好適なポリエステル組成物の製造方法を提供することにある。
すなわち本発明の目的は、ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応し、次いで重縮合反応および固相重合反応を行うポリエステルの製造方法において、エステル化反応終了から重縮合反応開始までの間に、ジオール成分を追加添加し、リン酸アルカリ金属塩のジオール溶液、無機粒子をエステル化反応物に添加することを特徴とするポリエステル組成物の製造方法により達成される。
本発明のポリエステル製造方法によれば、ポリエステル組成物の異物、COOH末端基量を少なくすることができると共に、安価で、かつ、耐UV性、マット感、耐加水分解性に優れるポリエステル組成物を提供することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル組成物の製造方法は、ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応し、次いで重縮合反応および固相重合反応を行うポリエステルの製造方法において、エステル化反応終了から重縮合反応開始までの間に、ジオール成分を追加添加し、リン酸アルカリ金属塩のジオール溶液、無機粒子をエステル化反応物に添加することが必要である。
本発明におけるジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、鎖状脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸など種々のジカルボン酸成分を用いることが出来る。その中でも、ポリエステル組成物の機械的特性、耐熱性、耐湿熱性の観点から、芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。特には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が、重合性、機械的特性から好ましい。
本発明におけるジオール成分としては、各種ジオールを用いることができる。例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール、脂環式ジオールとしてはシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、デカヒドロナフタレンジエタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、トリシクロデカンエタノール、テトラシクロドデカンジメタノール、テトラシクロドデカンジエタノール、デカリンジメタノール、デカリンジエタノールなどの飽和脂環式1級ジオール、2,6−ジヒドロキシ−9−オキサビシクロ[3,3,1]ノナン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(スピログリコール)、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン、イソソルビドなどの環状エーテルを含む飽和ヘテロ環1級ジオール、その他シクロヘキサンジオール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル)プロパン、シクロペンタンジオール、3−メチル−1,2−シクロペンタジオール、4−シクロペンテン−1,3−ジオール、アダマンジオールなどの各種脂環式ジオールや、ビスフェノールA、ビスフェノールS,スチレングリコール、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの芳香環式ジオールが例示できる。またジオール以外にもトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多官能アルコールも用いることができる。
この中で、反応系外に留出させやすいことから、沸点230℃以下のジオールであることが好ましく、低コストであり、反応性が高いことから、脂肪族ジオールがより好ましい。さらに、機械的特性の観点からエチレングリコールが特に好ましい。
一般的に、ジカルボン酸成分とジオール成分からエステル化反応を行う場合、予めエステル化反応物を貯留しておき、ジカルボン酸とジオールのスラリーを添加してエステル化反応を開始する手法が、ジオールに難溶なジカルボン酸のハンドリング性向上、反応時間の短縮、耐熱性低下の原因と成りえるジエチレングリコール副生の抑制の点から選択されている。エステル化反応物を貯留しなくても、エステル化反応は進行するが、ジエチレングリコールが副生しやすく、また、加圧設備や触媒が必要となる場合がある。本発明においても、貯留エステル化反応物を使用し、エステル化反応を実施することが好ましい。
本発明におけるポリエステル組成物の製造方法において、上記ジカルボン酸成分とジオール成分からエステル化反応物を得る際、エステル化反応性、耐熱性の観点から、エステル化反応開始前のジカルボン酸成分とジオール成分のモル比(ジオール成分/ジカルボン酸成分のモル比)は、1.05以上1.40以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは1.10以上1.30以下、さらに好ましくは1.15以上1.20以下である。モル比が1.05未満であると、エステル化反応が効率的に進まないため、タイムサイクルが長くなる場合がある。また、モル比が1.40を越えると、副生するジオール成分の2量体(ジエチレングリコール等)によって耐熱性が低下する場合がある。
また、本発明におけるエステル化反応において、触媒としてアルカリ金属塩、チタン化合物、アンモニウム塩などを用いても構わないが、重縮合反応段階での熱分解や異物の発生などが問題になることもあるため、エステル化反応は無触媒で実施することが好ましい。エステル化反応は、無触媒においてもジカルボン酸成分のCOOH末端基による自己触媒作用によって、反応は十分に進行する。
本発明では、エステル化反応後のエステル化反応物に、ジオール成分を1回以上追加添加する必要がある。エステル化反応物にジオール成分を添加することで、エステル化反応物のCOOH末端基量を低下させることができ、最終的に、重縮合反応後のポリエステル組成物のCOOH末端基量を低減させ、耐加水分解性を向上させている。
ジオール成分の添加は、エステル化反応が終了してから、重縮合反応開始までの間に行う必要がある。具体的には、ジカルボン酸成分とジオール成分を用いたエステル化反応において、エステル化反応率が90%以上に達してから、固有粘度が0.3に到達するまでの間に添加することが好ましい。エステル化反応率が90%未満でジオールの添加を行うと、副生するジオール成分の2量体が増加し、耐熱性が低下する。さらに、未反応のテレフタル酸が残存するためCOOH末端基量が増加し、耐加水分解性が低下する。また、重縮合反応中にジオール成分の添加を行うと、エステル化反応物のCOOH末端基と効率的に反応せず、最終的に得られるポリエステル組成物のCOOH末端基量の低減効果が低下する。
さらに、ジオール成分は、複数回に分割して、添加しても構わない。ジオール成分を複数回に分けて添加することで、効率的にエステル化反応物のCOOH末端基量を低減させ、添加によって延長するタイムサイクルを最小限にとどめることが出来る。さらに、タイムサイクルの延長を最小限にすることで、ジオール成分の2量体含有量を1.3重量%以下にすることができる。
具体的には、ジオール成分を添加する際、反応系内の温度の下限は210℃以上であることが好ましく、さらには220℃以上を保つように添加することが好ましい。また反応系内温度の上限は260℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは250℃以下である。反応系内の温度が260℃を超えると、添加したジオール成分の蒸発が激しく、COOH末端基の酸触媒作用によりジオール成分が脱水縮合し2量体が副生し、耐熱性が低下する場合がある。また、210℃未満では、添加したジオール成分により反応系内が冷却され、エステル化反応物の固化による撹拌トラブルやタイムサイクルの遅延が懸念される。
添加するジオール成分の総量の下限は、全ジカルボン酸成分に対して0.05倍モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.10倍モル以上、さらに好ましくは0.15倍モル以上である。また、上限は0.65倍モル以下であることが好ましく、より好ましくは0.50倍モル以下、さらに好ましくは0.35倍モル以下である。ジオール成分の添加総量が0.05倍モルより少ないと、エステル化反応物のCOOH末端基がジオール成分と十分に反応していない場合があるため、エステル化反応物ならびに得られるポリエステル組成物のCOOH末端基量が増加し、耐加水分解性が低下することがある。また、0.65倍モルを越える添加を行っても、エステル化反応物のCOOH末端基量は低下せず、添加に長時間要するため生産効率が低下したり、ジオール成分の2量体が副生し耐熱性が低下する場合がある。
また、ジオール成分を添加した後に、エステル化反応物のCOOH末端基と未反応のジオール成分を反応系外に留去することがタイムサイクル短縮、ジオール成分の2量体副生の抑制、耐熱性の点から好ましい。未反応のジオール成分を反応系外に留去することで、速やかに温度復帰するため、ジオール成分の2量体含有量を1.3重量%以下にすることができる。未反応のジオール成分の留去を行わないと、温度復帰に長時間要し、ジオール成分の2量体の副生が進行、耐熱性が低下する場合がある。
本発明のポリエステル組成物の製造方法において、エステル化反応が終了してから、重縮合反応開始までの間にジオール成分を追加添加する際、ジオール成分の添加前またはジオール成分と同時に、エステル化反応活性を有する金属化合物を添加することが好ましく、より好ましくは金属塩、さらに好ましくは酢酸金属塩である。効率良くCOOH末端基量を低減させるために、添加量の下限は得られるポリエステル組成物1tに対する濃度として1.0mol/t以上であることが好ましく、より好ましくは、2.0mol/t以上である。また、添加量の上限は3.5mol/t以下であることが耐加水分解性の点から好ましく、より好ましくは3.0mol/t以下である。ジオール成分の添加前またはジオール成分と同時に金属塩を添加することで、エステル化反応物のCOOH末端基とジオール成分の反応性が向上し、効率的にCOOH末端基を低減させることが出来る。金属塩量が得られるポリエステル組成物1tに対する濃度として1.0mol/t未満では反応活性が不十分であるため、COOH末端基量を低減させることができず、また、反応活性が低いため、反応時間を延ばした場合、タイムサイクルの延長を招き、結局、COOH末端基が高いポリエステ組成物となってしまうことがある。また、3.5mol/tを越えると、ポリエステル組成物の加水分解速度、熱分解の速度を高めてしまい、COOH末端基量が高くなり、耐加水分解性が低下するため好ましくない。
本発明における金属塩としては、塩化金属塩、酢酸金属塩、炭酸金属塩などが挙げられ、その中でも酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸亜鉛、酢酸スズなどの酢酸金属塩が好ましい。さらに、エステル化反応物のCOOH末端基とジオール成分との反応性や耐加水分解性の点から、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸マンガンが好ましい。
本発明のポリエステル組成物の製造方法において、ジオール成分の追加添加後、重縮合反応を開始するまでの間に、リン酸アルカリ金属塩のジオール溶液を添加する必要がある。
具体的には、リン酸アルカリ金属塩のジオール溶液として、0.1重量%以上5重量%以下の濃度として、220℃以上240℃以下のエステル化反応物に添加することが好ましい。このような条件で、リン酸アルカリ金属塩を添加することで、得られるポリエステル組成物のCOOH末端基量を20eq/t以下とすることができ、リン酸アルカリ金属塩が、高温・高濃度の添加条件下で、ポリリン酸となり異物化することを抑制し、かつ、高い耐加水分解性を付与することができる。リン酸アルカリ金属塩のジオール溶液の濃度は、上記リン酸アルカリ金属塩の異物化抑制の観点から、より好ましくは、0.2重量%以上4重量%以下、更に好ましくは、0.3重量%以上3重量%以下である。0.1重量%未満の場合は、ジオール成分の添加量が多くなり、ジオール成分の2量体が増加し、耐熱性が低くなる。また、5重量%を超えると、濃度が高い状態で添加することから、リン酸アルカリ金属塩がポリリン酸となり、異物化するため好ましくない。また、リン酸アルカリ金属塩のジオール溶液を添加する温度についても、リン酸アルカリ金属塩の異物化を抑制する観点から、より好ましくは、220℃以上235℃以下、更に好ましくは、220℃以上230℃以下である。240℃を超えると、リン酸アルカリ金属塩が異物化しやすく、220℃未満では、温度が下がり、タイムサイクルが長くなることで得られるポリエステル組成物のCOOH末端基量が高くなり好ましくない。
本発明におけるリン酸アルカリ金属塩としては、特に限定しないが、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウムが挙げられる。その中でもリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムが耐加水分解性の点から好ましい。
リン酸アルカリ金属塩の添加量の下限は、耐加水分解性の点から得られるポリエステル組成物1tに対する濃度として0.1mol/t以上であることが好ましく、より好ましくは0.4mol/t以上、さらに好ましくは1.0mol/t以上である。また添加量の上限は異物抑制、耐加水分解性の点から、7.0mol/t以下であることが好ましく、より好ましく4.0mol/t以下、さらに好ましくは2.0mol/t以下である。0.1mol/t未満では、十分な耐加水分解効果が得られない場合がある。また、7.0mol/tを越えると、ポリエステル組成物の加水分解速度を高めてしまい耐加水分解性が低下、さらにリン酸アルカリ金属塩が異物化する可能性がある。
リン酸アルカリ金属塩のジオール溶液の添加方法としては、予めリン化合物と混合し、添加することが耐加水分解性の点から好ましい。この時リン化合物を、リン酸アルカリ金属塩に対して0.1倍モル以上7.5倍モル以下混合することが好ましく、より好ましくは0.3倍モル以上5.0倍モル以下、さらに好ましくは1.0倍モル以上2.0倍モル以下である。リン化合物をリン酸アルカリ金属塩に対して0.1倍モル以上7.5倍モル以下混合することで、得られるポリエステル組成物の加水分解時の反応活性を制御することが可能であり、高い耐加水分解性を得ることが出来る。0.1倍モル未満では、耐加水分解性が低下することがあり、7.5倍モルを越えると過剰なリン化合物により重合触媒が失活し、重合反応が遅延、COOH末端基が増加するため、耐加水分解性が低下することがある。また、あらかじめリン酸アルカリ金属塩とリン化合物を混合せず、別々に添加すると、耐加水分解性が低下する場合がある。
また、太陽電池フィルムとした際に、耐UV性やマット感を付与するために、エステル化反応終了から重縮合反応開始までの間に、無機粒子をエステル化反応物に添加し、重縮合反応を行い、その後、固相重合反応を実施する必要がある。
重縮合反応後または固相重合反応後に無機粒子を添加する方法としては、二軸押出機でポリエステル組成物に溶融混練することが一般的に実施されるが、無機粒子に吸着している吸着水分で、ポリエステル組成物が加水分解し、カルボキシル末端基が高くなったり、また、高温下、ポリエステル組成物を、一旦溶融し、混練することから、ポリエステル組成物が熱分解、固有粘度が低下したり、カルボキシル末端基が高くなるため好ましくない。
エステル化反応終了から重縮合反応開始までの間に、無機粒子をエステル化反応物に添加し、重縮合反応を行い、その後、固相重合反応を実施することで、無機粒子の吸着水分は、重縮合反応の初期段階に、高温・高真空下の条件下、反応系外に排出され、その後、重縮合反応および固相重合反応を実施するため、加水分解や熱分解による影響がほとんどなく、得られるポリエステル組成物のカルボキシル末端基を低下させ、太陽電池フィルムとした際に、良好な耐加水分解性を有することが可能となる。
無機粒子としては、耐UV性やマット感、および入手のしやすさなどの観点から二酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子などが挙げられる。
本発明の無機粒子の平均粒径は、0.1μm以上5μm以下が好ましく、より好ましくは0.3μm以上3μm以下である。5μmを超えると得られるフィルム表面の凹凸が大きくなりすぎるため、フィルム表面に粗大突起が生じたり、耐摩耗性に劣る。また、フィルム製膜前のポリエステル組成物の溶融濾過工程で、濾過圧力が上昇したりするため、好ましくない。0.3μm以上3μm以下であると、マット感とフィルム表面の凹凸のバランスが良好で、好ましい。また、0.1μm未満では、ポリエステル製造工程の重縮合反応の段階で、無機粒子の表面活性によって粒子が凝集し、粒子分散性に劣ったり、ポリマーの溶融粘度が急激に上昇し、高分子量のポリマーが得られず、また、マット感が不足する傾向がある。
また、無機粒子のBET法による比表面積が、10m2/g以上500m2/g以下であることが好ましい。好ましい比表面積は、ポリエステル中の粒子分散性、フィルムのやマット感、耐摩耗性の点から、100m2/g以上400m2/g以下である。比表面積が、10m2/g未満の場合は、マット感に劣り、500m2/gを超えても、吸着水分量が多くなり、耐加水分解性が悪化するため好ましくない。
また、無機粒子の吸油量が10ml/100g以上400ml/100g以下であることが好ましく、より好ましくは50ml/100g以上350ml/100g以下である。吸油量が400ml/100gを越えると、上記同様に、吸着水分量が多くなり、耐加水分解性が悪化し、また、吸油量が10ml/100g未満であっても、やはりマット感が劣るため、好ましくない。
無機粒子の添加量は、ポリエステル樹脂組成物に対して、0.1重量%以上10重量%以下、より好ましくは0.5重量%以上5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以上3重量%以下である。0.1重量%未満であると、散乱光が不足して十分なマット感を得ることができないことがある。また、10重量%を超えると、重縮合反応時に、均一に分散させることが困難で、製膜時にフィルターの濾過圧力が急激に上昇したりすることがあるため、好ましくない。
二酸化ケイ素粒子としては、ホワイトカーボン、シリカゾル、シリカ・アルミナ複合粒子等が挙げられるが、マット感の観点から、凝集シリカ粒子が好ましい。
凝集シリカ粒子の製造方法としては、湿式法、乾式法が挙げられ、具体的な湿式法には、珪酸ナトリウムを酸で分解する方法、珪酸ナトリウムのアンモニウム塩類またはアルカリ塩類による分解法、珪酸ナトリウムよりアルカリ土類金属珪酸を生成した後、酸で分解し、珪酸にする方法が挙げられ、具体的な乾式法としては、乾式法ハロゲン化珪素の熱分解法、珪酸化合物の熱分解法、有機珪素化合物の熱分解法等が挙げられる。
太陽電池フィルムとした際に、マット感を出すには、ある程度粒径が大きく、吸油量や比表面積が高い凝集シリカ粒子が製造しやすい湿式法が好ましい。マット感については、太陽電池フィルムとした際に、傷などが見えにくくなる利点がある。
湿式法による凝集シリカ粒子の製造方法としては、例えば、ケイ酸ソーダと硫酸を反応させ、ゾル・ゲル反応させ、シリカヒドロゲルを製造した後、水洗、乾燥し、その後、粉砕する製造方法などが挙げられる。
また、凝集シリカ粒子は、事前に分散処理を行いエステル化反応物に添加することが好ましい。分散処理の方法については、例えば、凝集シリカをエチレングリコール溶液として、500rpm以上1000rpm以下程度のジェットアジターなどの高速攪拌装置で、事前に1時間以上3時間以下程度、分散処理を行うことなどを挙げることができる。
酸化チタン粒子としては、例えば、アナターゼ型酸化チタン及びルチル型酸化チタンのような結晶型の酸化チタンを挙げることができる。用いるポリエステルとの屈折率の差を大きくするという観点からは、屈折率が2.7以上の酸化チタンであることが好ましく、例えば、ルチル型酸化チタンを用いることが好ましい。さらに、酸化チタンの中でも純度の高い高純度酸化チタンを用いるのが特に好ましい。ここで、高純度酸化チタンとは、可視光に対する光吸収能が小さい酸化チタン、すなわち、バナジウム、鉄、ニオブ、銅、マンガン等の着色元素の含有量が少ないものの意である。高純度酸化チタンとしては、例えば塩素法プロセスにより製造されるものを挙げることができる。塩素法プロセスでは、酸化チタンを主成分とするルチル鉱を1000℃程度の高温炉で塩素ガスと反応させて、まず、四塩化チタンを生成させる。次いで、この四塩化チタンを酸素で燃焼することにより、高純度酸化チタンを得ることができる。なお、酸化チタンの工業的な製造方法としては硫酸法プロセスもあるが、この方法によって得られる酸化チタンには、バナジウム、鉄、銅、マンガン、ニオブ等の着色元素が多く含まれるので、可視光に対する光吸収能が大きくなる。従って、硫酸法プロセスでは高純度酸化チタンは得られ難い。
また、本実施形態で用いる酸化チタン(高純度酸化チタン)は、表面をシリカ、アルミナ、及びジルコニアの中から選ばれた少なくとも一種類の不活性無機酸化物で被覆処理されていると、フィルムの耐UV性が高まり、酸化チタンの光触媒活性が抑制され、酸化チタンの高い光反射性を損なうことがないので好ましい。さらに二種類或いは三種類の不活性無機酸化物を併用して被覆処理されたものがより好ましく、中でもシリカを必須とする複数の不活性無機酸化物の組み合わせが特に好ましい。
なお、無機粒子の樹脂への分散性を向上させるために、微粉状充填剤の表面に、シリコン系化合物、多価アルコール系化合物、アミン系化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル等で表面処理を施したものを使用するのもよい。
表面処理剤としては、例えば、酸化チタンの表面をシロキサン化合物、シランカップリング剤等から選ばれた少なくとも一種類の無機化合物を用いることができ、これらを組み合わせて用いることもできる。さらに、シロキサン化合物、シランカップリング剤、ポリオール及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれた少なくとも一種の有機化合物等を用いることができる。また、これらの無機化合物と有機化合物とを組み合わせて用いてもよい。
なお、ルチル型二酸化チタンは、ポリエステル組成物に配合する前に、精製プロセスを用いて、粒径調整、粗大粒子除去を行うことが好ましい。精製プロセスの工業的手段としては、粉砕手段で例えばジェットミル、ボールミルを適用することができ、分級手段としては、例えば乾式もしくは湿式の遠心分離を適用することができる。なお、これらの手段は2種以上を組み合わせ、段階的に精製してもよい。
硫酸バリウム粒子は板状であっても球状であってもよい。製造方法としては、例えば、重晶石を粉砕したものと、可溶性塩より合成し高度に精製した沈降性硫酸バリウムが挙げられる。沈降性硫酸バリウムは、塩化バリウムと硫酸、塩化バリウムと芒硝、炭酸バリウムを塩酸に溶解しこれに硫酸を加える、重晶石を濃硫酸に溶解し水で希釈後硫酸バリウムを沈殿させる、重晶石の還元焙焼によって得られた硫化バリウムと芒硝との反応などが挙げられる。マット感の観点から、純度が高く、白色度も高いため、太陽電池用フィルムとして好適に使用することができる。
また、無機粒子については、耐UV性に優れる酸化チタン、硫酸バリウムと、マット感付与に優れる二酸化ケイ素を併用することが好ましい。
本発明のポリエステル組成物の製造方法において、重縮合反応を開始するまでの間に、3官能以上の共重合成分を添加することが好ましい。3官能以上の共重合成分としては、例えば、トリメリット酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ピロメリット酸、ブタンテトラカルボン酸、長鎖脂肪族カルボン酸を3量体化したトリマー酸などの多価カルボン酸およびその無水物やエステル、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリヒドロキシベンゼンカルボン酸、トリヒドロキシヘキサンなどの多価アルコール、クエン酸ジヒドロキシベンゼンカルボン酸およびジヒドロキシナフタレンカルボン酸などの多価ヒドロキシカルボン酸およびその無水物やエステルなどを挙げることが出来る。特に、フィルムの成形性の点から、3官能の共重合成分であることが好ましい。
3官能以上の共重合成分の添加時期は、重縮合反応を開始するまでの間、具体的には固有粘度が0.3に到達するまでに添加することが好ましい。固有粘度0.3未満のポリエステル低量体は粘度が低いために、3官能以上の共重合成分を均一に反応させることができる。また、局部的な反応が進行して、粗大異物の原因となることを有効に防止する観点から、他の添加物との添加間隔は5分以上空けることが好ましい。
3官能以上の共重合成分の添加量の下限値は、フィルム成形後の耐加水分解性の点から得られる全酸成分に対して0.01mol%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05mol%以上である。また、添加量の上限は、ゲル化抑制の点から1.00mol%以下であることが好ましく、より好ましく0.50mol%以下である。3官能以上の共重合成分の添加量を上記の好ましい範囲とすると、十分な耐加水分解効果が得られ、また、ゲル化の進行を防ぎ、成形性を良好に保つことができる。
3官能以上の共重合成分の添加方法としては、反応性および異物抑制の点から、0.5質量%以上5質量%以下のエチレングリコール溶液として添加することが好ましい。上記範囲のエチレングリコール溶液として添加することで、3官能以上の共重合成分とポリエステル低量体を均一に反応させることができる。エチレングリコール溶液中の3官能以上の共重合成分の濃度が上記の好ましい範囲であると、系内に添加するエチレングリコール量が多過ぎず、副生成物であるジエチレングリコール量が増加せず、耐熱性ならびに耐加水分解性が保たれる一方、局所的な反応となりにくく、粗大異物が生成しにくい。
本発明のポリエステル組成物の製造方法においては、重縮合反応時に285℃以下で実施することが好ましい。更に好ましくは280℃以下である。285℃を越えた場合は、カルボキシル末端基が高くなるため好ましくない。
本発明のポリエステル組成物の製造方法においては、溶融重合で得られたポリエステルをチップ状で減圧下または不活性ガス流雰囲気下において固相重合を実施することが必要である。例えば、あらかじめ180℃以下の温度で予備結晶化させた後、200℃以上240℃以下で1torr程度の減圧下、10時間以上30時間以下で固相重合し、固有粘度0.8程度のチップを得る。固相重合する場合、固相重合温度、予備結晶化条件が固有粘度の上昇とカルボキシル末端基を低減させることの両方を同時に満足させる上で重要となる場合がある。固相重合は減圧下もしくは常圧下、あるいは窒素ガスの流通下に適当な条件を選んで加熱することによって得られるが、用役原単位の削減等から窒素ガスを用いず、真空下で固相重合することが好ましい。
本発明のポリエステル組成物は、ポリエステルフィルムに成型することができる。ポリエステルフィルムは、未延伸のシート状でもよいし、一軸または二軸に延伸された延伸フィルムであってもよい。
また、その製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、以下の製法を挙げることができる。
すなわち、ポリエステル組成物を乾燥後、溶融押出しして未延伸シートとし、続いて二軸延伸、熱処理しフィルムにする。二軸延伸は縦、横逐次延伸あるいは二軸同時延伸のいずれでもよく、延伸倍率は、通常、縦、横それぞれ2倍以上5倍以下が適当である。また、二軸延伸後、さらに縦、横方向のいずれかに再延伸してもよい。この際、本発明のポリエステル組成物と各種のポリエステルとを混合してもよく、該ポリエステルは、本発明のポリエステルの触媒や添加物と同一であっても、異なっていてもよい。また、本発明のポリエステルフィルムは、単層でも2層以上の積層構造であっても良い。
上述した方法で、本発明のポリエステル組成物によるポリエステルフィルムを得ることができ、各種用途に使用できるが、本発明のポリエステルは耐加水分解性と耐熱性の両特性が良好であるため、特に太陽電池用ポリエステルフィルムに好適に使用できる。すなわち、太陽電池パネルの部材としてフィルム、シート状あるいはその他の形状に成形されて用いられる。太陽電池は屋外に設置されるために、水蒸気と熱入による加水分解や紫外線による分解が発生しやすい。本発明のポリエステル組成物は優れた耐熱性や耐加水分解性を有するので太陽電池の部材に好適に用いられるのである。
次に本発明におけるポリエステル組成物製造方法の具体例を挙げるが、これに限定されるものではない。
255℃にて溶解したビスヒドロキシエチルテレフタレートが仕込まれたエステル化反応器に、テレフタル酸、エチレングリコール(テレフタル酸に対し1.15倍モル)のスラリーをスネークポンプにて徐々に添加し、エステル化反応を進行させる。反応系内の温度は245℃以上255℃以下になるようにコントロールし、反応率が95%に到達した段階でエステル化反応を終了とする。
こうして得られた255℃のエステル化反応物に、テレフタル酸に対し0.27倍モルのエチレングリコールと酢酸マンガンを同時に添加する。この際、エステル化反応物が固化しないように系内の温度を210℃以上250℃以下にすることが好ましい。未反応のエチレングリコールを留出させながら、系内の温度が220℃以上240℃以下でリン酸二水素ナトリウム/リン酸/エチレングリコール混合溶液を添加する。リン酸二水素ナトリウムは、0.1重量%以上5重量%以下の濃度のジオール溶液として添加することが好ましい。
その後、無機粒子を添加し、重合装置内温度を徐々に280℃まで昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させる。このとき、ポリエステル組成物のCOOH末端基量をより低くしたい場合は、重合温度を低く設定すると良い。所定の撹拌トルクに到達した段階で反応を終了とし、反応系内を窒素にて常圧にし、冷水にストランド状に吐出、カッティングし、ペレット状のポリエステル組成物を得ることができる。
その後、得られたペレット状のポリエステル組成物を、180℃以下の温度で予備結晶化させた後、200℃以上240℃以下で1torr程度の減圧下、10時間以上30時間以下固相重合することで、高い固有粘度で、低カルボキシル末端基の太陽電池フィルムに適したポリエステル組成物を得ることができる。
以下実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
なお、物性の測定方法は次の方法に従って行った。
(1)無機粒子の平均粒子径
無機粒子を、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA950)を用いて粒度分布の測定を行う。測定温度25℃、純水溶媒の循環速度1.2L/min〜570ml/minの条件下、酸化チタンを光線透過率80〜90%になるように添加し、測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒子径を平均粒子径とした。
(2)無機粒子の吸油量
不活性無機粒子の吸油量は、JIS K−5101−19に準拠し、アマニ油により測定した。
(3)無機粒子の比表面積
日本ベル(株)製の高精度全自動ガス吸着装置(BELSORP36)を用いて、BET法により測定した。
(4)ポリエステル組成物の固有粘度(IV)
オルトクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
(5)ポリエステル組成物のCOOH末端基量
Mauriceの方法により測定した。文献 M.J.Maulice,F.Huizinga.Anal.Chim.Acta,22 363(1960)) 。
(6)ポリエステル組成物中のDEG(ジエチレングリコール)含有量
モノエタノールアミンを溶媒としてポリエステル組成物を溶解し、該溶液に1,6−ヘキサンジオール/メタノール混合溶液を加えて冷却し、テレフタル酸で中和した後、遠心分離した後に、上澄み液をガスクロマトグラフィ(島津製作所社製、GC−14A)にて測定した。
(7)ポリエステル組成物の微小異物数
重縮合反応後のポリエステルチップ5gを、倍率10倍のルーペで観察して、ポリエステル組成物中にある異物(最大直径10〜100μm)を確認し、異物が確認されたポリエステルチップをヘキサフルオロイソプロパノールで溶解させ、異物のみを取り出し、SEMに付属したエネルギー分散型X線分析装置(EDX:堀場製作所社製、EMAX−7000型)でリンとアルカリ金属のピークが検出されるリン酸アルカリ金属塩由来の異物数をカウントした。
(8)ポリエステル組成物の耐加水分解性評価(ΔCOOH)
ペレット状のポリエステル組成物を155℃、100%RHで4時間加熱処理し、処理前後のCOOH末端基量の差(処理後COOH末端基量−処理前COOH末端基量)を比較した。この時のCOOH末端基量の差(ΔCOOH)が、20eq/t以下であるとき、良好な耐加水分解性を有していると判断した。
なお、処理装置は次の加熱処理装置を使用した。PRESSER COOKER 306SIII(HIRAYAMA製作所(株)製) 。
(9)ポリエステルフィルムの光沢度(マット感)
JIS Z84741に従い、60度鏡面光沢を測定し、フィルムの光沢度を測定した。70%以下を合格レベルとした。
(10)ポリエステルフィルムの耐UV性
促進試験器アイスーパーUWテスターを用い、下記サイクルを5サイクル行い、色調b値の上昇値とした。7以下を合格レベルとした。
1サイクル:温度60℃、湿度50%RHの雰囲気で8時間紫外線照射した後、結露状態(温度35℃、湿度100RH)に4時間エージング
紫外線照射強度:100mW/cm
(11)ポリエステルフィルムの耐加水分解性(125℃、湿度100%の条件下60時間放置後の伸度保持率)
破断伸度の測定はASTM−D882(1999)に基づいて、サンプルを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度を測定した。なお、測定は5サンプルについて測定を実施しその平均値でもって破断伸度A0とした。
また、伸度保持率は、試料を測定片の形状(1cm×20cm)に切り出した後、エスペック(株)製高度加速寿命試験装置EHS−221MDにて、125℃、湿度100%(圧力は約1.5atmになる)の条件下48時間処理を行った後、処理後のサンプルの破断伸度をASTM−D882(1999)に基づいて、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度を測定した。なお、測定は5サンプルについて実施しその平均値を破断伸度A1とした。
伸度保持率(%)=A1/A0×100 (1)
得られた破断伸度A0,A1を用いて、下記式(1)により伸度保持率を算出した。また、50%以上を合格レベルとした。

実施例1
ビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部(PET100重量部相当)があらかじめ仕込まれたエステル化反応装置に、系内温度を255℃に保ちつつ、テレフタル酸86重量部、エチレングリコール37重量部からなるスラリー(エチレングリコール/テレフタル酸のモル比は1.15)をスネークポンプにて供給し、エステル化反応を進めて水を留出させた。エステル化反応率が95%に到達した段階で、得られたエステル化反応物105重量部(PET100重量部相当)を留出装置の付いた重合装置に仕込み、酢酸マンガン0.06重量部(2.4mol/t相当)、三酸化アンチモン0.03重量部(1.0mol/t相当)を同時に添加し、その後、エチレングリコール8.7重量部(PET100重量部中のテレフタル酸に対し0.27倍モル)を添加した。エステル化反応物の温度が230℃の段階で、リン酸二水素ナトリウム2水和物0.027重量部(1.7mol/t相当)をエチレングリコールで0.35重量%の濃度に希釈したものに、リン酸0.02重量部(2.0mol/t相当)を加えたものを添加した。その後、平均粒径3.5μm、比表面積370m2/g、吸油量220ml/100 gの凝集シリカ粒子をポリエステルに対して、2重量%添加した。
その後、重合装置内を280℃まで90分かけ昇温しながら、重合装置内圧力を常圧から133Pa以下まで徐々に減圧してエチレングリコールを留出させ、目標の溶融粘度に到達した段階で、反応を終了とし、反応系内を窒素にて常圧にし、重合装置下部から溶融ポリマーを冷水中にストランド状に吐出し、吐出・固化されたポリエステルストランドをカッティングし、ペレット状のポリエステル組成物を得た。固有粘度0.54dl/g、カルボキシル末端基19当量/ポリエステル10g、DEG1.0重量%、微小異物0個/5gであった。該ポリエステル組成物のチップを、回転型真空重合装置を用いて、50Paの減圧下、230℃で12時間固相重合し、固有粘度0.80、カルボキシル末端基10当量/ポリエステル10gのポリエステル組成物を得た。
次いで、40mmの溶融押出機で設定温度280℃、6分の滞留時間で1.2mmの未配向フィルムを得た。これを通常の条件下、縦方向に3.2倍、横方向に4.1倍に、二軸延伸し、75ミクロンの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。ポリエステルフィルムの特性は、光沢度55%、耐UV性(Δb)5、耐加水分解性MD80%、TD70%と良好な光沢度(マット感)、耐UV性、耐加水分解性を有していた。結果を表1、2、3に示した。
実施例2
ジオールの追加添加量を0.27モルの2回、合計0.54モルとする以外は、実施例1と同様とした。DEGが若干高くなったものの、良好な光沢度、耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例3
ジオールの追加添加量を0.05モルとする以外は、実施例1と同様とした。COOH末端基量は、若干高くなったものの、良好な光沢度、耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例4
リン酸二水素ナトリウムの添加量を6.0mol/tとする以外は、実施例1と同様とした。リン酸二水素ナトリウムの添加量が多いため、微小異物が1個/5g発生したものの、良好な光沢度、耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例5
リン酸二水素ナトリウムの添加量を0.3mol/tとする以外は、実施例1と同様とした。リン酸二水素ナトリウムの添加量が少ないため、カルボキシル末端基量が若干高くなったものの、良好な光沢度、耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例6
リン酸を添加しないこと以外は、実施例1と同様とした。リン酸二水素ナトリウム起因の異物が少し発生し、耐加水分解性も劣ったものの使用できるレベルであった。結果を表1、2、3に示した。

実施例7
リン酸二水素ナトリウムのジオール溶液の濃度を5重量%とする以外は、実施例1と同様とした。添加の濃度が高いため、微小異物が、3個/5g発生したものの、良好な光沢度、耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例8
リン酸二水素ナトリウムのジオール溶液の濃度を0.1重量%とする以外は、実施例1と同様とした。添加の濃度が低いため、添加されたジオール量が増え、若干DEGが高くなったものの、良好な光沢度、耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例9
リン酸二水素ナトリウムのジオール溶液を添加する際の温度を240℃とする以外は、実施例1と同様とした。添加温度が高いため、微小異物が、3個/5g発生したものの、良好な光沢度、耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例10
リン酸二水素ナトリウムのジオール溶液を添加する際の温度を250℃とする以外は、実施例1と同様とした。添加温度が、実施例8より更に高いため、微小異物が、8個/5g発生し、また、温度が高いため、カルボキシル末端基量が若干高くなり、得られたポリエステルフィルムの耐加水分解性は、悪化したものの使用できるレベルのものであった。また、凝集シリカ添加の効果で、良好な光沢度、耐UV性を保持していた。結果を表1、2、3に示した。

実施例11
リン酸二水素ナトリウムのジオール溶液を添加する際の温度を220℃とする以外は、実施例1と同様とした。添加温度が低いため、温度が復帰するまでに時間がかかり、微小異物が、1個/5g発生したものの、良好な光沢度、耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例12
酢酸マンガンの添加量を3.5mol/tとする以外は、実施例1と同様とした。若干熱分解が促進され、カルボキシル末端基量が若干高くなったものの、良好な光沢度、耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例13
酢酸マンガンの添加量を1.0mol/tとする以外は、実施例1と同様とした。追加添加したジオールとエステル化反応物のカルボキシル末端基の反応が抑制され、カルボキシル末端基量が若干高くなったものの、良好な光沢度、耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例14
エステル化反応開始EGモル比を1.40とする以外は、実施例1と同様とした。EGモル比が高いため、DEGが若干高くなったものの、良好な光沢度、耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例15
エステル化反応開始EGモル比を1.05とする以外は、実施例1と同様とした。EGモル比が低いため、エステル化反応が長くなり、DEGが若干高くなったものの、良好な光沢度、耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例16
リン酸アルカリ金属塩の種類を、リン酸二水素カリウムに変更する以外は、実施例1と同様とした。若干カルボキシル末端基量が高くなったものの、良好な光沢度、耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例17
リン化合物の種類をTEPA(トリエチルホスホノアセテート)に変更する以外は、実施例1と同様とした。若干カルボキシル末端基量が高くなったものの、良好な光沢度、耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例18
金属塩の種類を酢酸マグネシウムに変更する以外は、実施例1と同様とした。若干カルボキシル末端基量が高くなったものの、良好な光沢度、耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例19
凝集シリカ粒子の平均粒子径を5.0μmとする以外は、実施例1と同様とした。光沢度(マット感)は向上し、良好な耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例20
凝集シリカ粒子の平均粒子径を0.1μmとする以外は、実施例1と同様とした。光沢度(マット感)が若干劣ったものの、良好な耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例21
凝集シリカ粒子の添加量を10重量%とする以外は、実施例1と同様とした。光沢度(マット感)は向上し、良好な耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例22
凝集シリカ粒子の添加量を0.1重量%とする以外は、実施例1と同様とした。光沢度(マット感)が若干劣ったものの、良好な耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例23
比表面積20m/g、吸油量20ml/100gのコロイダルシリカを使用すること以外は、実施例1と同様とした。光沢度(マット感)が若干劣ったものの、良好な耐UV性、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例24
ルチル型酸化チタンを使用すること以外は、実施例1と同様とした。粒子の表面活性が高いため、若干カルボキシル末端基量が高くなったものの、耐UV性は向上し、良好な光沢度、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例25
アナターゼ型酸化チタンを使用すること以外は、実施例1と同様とした。粒子の表面活性が高いため、若干カルボキシル末端基量が高くなったものの、実施例22のルチル型酸化チタンよりは若干劣るが、耐UV性は向上し、良好な光沢度、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例26
硫酸バリウムを使用すること以外は、実施例1と同様とした。粒子の表面活性が高いため、若干カルボキシル末端基量が高くなったものの、耐UV性は向上し、良好な光沢度、耐加水分解性であった。結果を表1、2、3に示した。
実施例27
実施例1の凝集シリカを2重量%、実施例23のルチル型酸化チタンを1重量%(合計3重量%)添加する以外は、実施例1と同様とした。得られたポリエステルフィルムは、若干耐加水分解性は劣るものの、光沢度、耐UV性の両方を高度に満足するものであった。結果を表1、2、3に示した。
実施例28
実施例1の凝集シリカを2重量%、実施例23のルチル型酸化チタンを3重量%(合計5重量%)添加する以外は、実施例1と同様とした。得られたポリエステルフィルムは、光沢度、耐UV性の両方を高度に満足するものであったが、表面活性の高いルチル型酸化チタンの量が増えたためか、ポリマーのカルボキシル末端基量が増加し、得られたポリエステルフィルムの耐加水分解性についても、PCT60hr後の伸度保持率が50%とぎりぎり使用できるレベルのものであった。結果を表1、2、3に示した。

実施例29
実施例1の凝集シリカを2重量%、実施例25の硫酸バリウムを1重量%(合計3重量%)添加する以外は、実施例1と同様とした。得られたポリエステルフィルムは、若干耐加水分解性は劣るものの、光沢度、耐UV性の両方を高度に満足するものであった。結果を表1、2、3に示した
実施例30
3官能以上の共重合成分として、無水トリメリット酸を、エステル化反応が終了し、酢酸マンガンを添加する前に、0.1モル添加する以外は、実施例1と同様とした。耐加水分解性は向上し、良好な光沢度、耐UV性であった。結果を表1、2、3に示した。
比較例1
無機粒子を添加しないこと以外は、実施例1と同様とした。無機粒子を添加していないため、光沢度(マット感)、耐UV性に劣るものであった。結果を表1、2、3に示した。
比較例2
重縮合反応前に無機粒子を添加せず、固相重合後のポリエステル組成物と凝集シリカを粉体でサイドフィーダーより2重量%となるように供給し、合計100kg/hrで46mmφのL/D45の同方向ベント式二軸混練機を用いて、スクリュー回転数200rpm(Ns)、Q/Ns=0.5で樹脂温280℃、真空度5kPaAで混練した。得られたポリエステル組成物は、固有粘度が0.70dl/g、カルボキシル末端基量が25eq/tとなり、得られたポリエステルフィルムの耐加水分解性は、非常に低いものであった。結果を表1、2、3に示した。
比較例3
固相重合をしないこと以外は、実施例1と同様とした。固相重合をしていないため、重縮合反応後のカルボキシル末端基量が19eq/tであり、ΔCOOHが40eq/tと非常に高いため、製膜評価は実施しなかった。結果を表1、2、3に示した。
比較例4
ジオールを追加添加しないこと以外は、実施例1と同様とした。追加添加していないため、エステル化反応後のカルボキシル末端基と追加添加するジオールの反応によるカルボキシル末端基の低減が望めず、カルボキシル末端基量は、重縮合反応後で、25eq/t、固相重合後で、16eq/tと高く、ポリエステルフィルムの耐加水分解性も、非常に低いものであった。結果を表1、2、3に示した。
比較例5
リン酸アルカリ金属塩をジオール溶液ではなく、粉体で直接添加したこと以外は、実施例1と同様とした。リン酸アルカリ金属塩が異物化し、重縮合後のポリマーは、微小異物が、50個/5gと非常に多く、リン酸アルカリ金属塩が異物化したことにより、耐加水分解の機能を発現しないため、ポリエステルフィルムの耐加水分解性も、非常に低いものであった。結果を表1、2、3に示した。
Figure 2013189521
Figure 2013189521
Figure 2013189521

Claims (7)

  1. ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応し、次いで重縮合反応および固相重合反応を行うポリエステルの製造方法において、エステル化反応終了から重縮合反応開始までの間に、ジオール成分を追加添加し、リン酸アルカリ金属塩のジオール溶液、無機粒子をエステル化反応物に添加することを特徴とするポリエステル組成物の製造方法。
  2. リン酸アルカリ金属塩のジオール溶液を、0.1〜5重量%の濃度で、220〜240℃の温度のエステル化反応物に添加することを特徴とする請求項1記載のポリエステル組成物の製造方法。
  3. 添加するリン酸アルカリ金属塩が、得られるポリエステル組成物1tに対して、0.1mol/t以上7.0mol/t以下であることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル組成物の製造方法。
  4. エステル化反応後に追加添加するジオール成分が、ジカルボン酸成分に対し0.05〜0.65モルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステル組成物の製造方法。
  5. 無機粒子が、二酸化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子、および硫酸バリウム粒子からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステル組成物の製造方法。
  6. 重縮合反応開始までの間に3官能以上の共重合成分を添加することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のポリエステル組成物の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法によって得られるポリエステル組成物が太陽電池用であることを特徴とする太陽電池用ポリエステル組成物。
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