JP6450621B2 - キャリア芯材並びにそれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤 - Google Patents

キャリア芯材並びにそれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤 Download PDF

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Description

本発明は、キャリア芯材並びにそれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤に関するものである。
電子写真方式を用いたファクシミリやプリンター、複写機などの画像形成装置では、感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて可視像化し、この可視像を用紙等に転写した後、加熱・加圧して定着させている。高画質化やカラー化の観点から、現像剤としては、キャリアとトナーとを含むいわゆる二成分現像剤が広く使用されている。
二成分現像剤を用いた現像方式では、キャリアとトナーとを現像装置内で撹拌混合し、摩擦によってトナーを所定量まで帯電させる。そして、回転する現像ローラに現像剤を供給し、現像ローラ上で磁気ブラシを形成させて、磁気ブラシを介して感光体へトナーを電気的に移動させて感光体上の静電潜像を可視像化する。トナー移動後のキャリアは現像ローラ上に残留し、現像装置内で再びトナーと混合される。このため、キャリアの特性として、磁気ブラシを形成する磁気特性と、所望の電荷をトナーに付与する帯電特性および繰り返し使用における耐久性が要求される。
このようなキャリアとして、マグネタイトや各種フェライト等の磁性粒子の表面を樹脂で被覆したものが一般に用いられている。キャリア芯材としての磁性粒子には、良好な磁気的特性と共に、トナーに対する良好な摩擦帯電特性が要求される。このような特性を満たすキャリア芯材として種々の形状のものが提案されている。
例えば特許文献1では、Srを含有し、特定の形状と磁気特性とを有する電子写真現像用フェライトキャリア芯材が提案されている。また、特許文献2では、特定の組成を有し、格子定数が特定範囲で表面酸化被膜が形成された電子写真現像用フェライトキャリア芯材が提案されている。
特開2012−159642号公報 特開2013−178414号公報
しかしながら、上記提案のキャリア芯材では昨今における複写機等の画像形成装置に対応できない場合がある。例えば、1分間に60〜70枚の画像を形成することができるいわゆる高速機の画像形成装置等において、長期にわたる使用によってキャリア芯材表面を被覆している樹脂が剥がれ落ち、結果としてトナーの帯電不良を招き画質劣化の原因となることがある。また、撹拌ストレスによってキャリア芯材の割れや欠けが発生し、キャリア飛散等の不具合を引き起こすことがある。
そこで、本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、長期間の使用による被覆樹脂の剥離などのキャリアの劣化を大幅に抑え、安定した帯電性能を維持し、粒子の割れや欠けが抑制されたキャリア芯材を提供することにある。
また本発明の他の目的は、長期間の使用においても安定して良好な画質の画像を形成することができる電子写真現像剤用キャリア及び電子写真現像剤を提供することにある。
前記目的を達成する本発明に係るキャリア芯材は、組成式MnFe3−(X+Y)(但し、MはMg,Ti,Cu,Zn,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属,0<X,0≦Y,0<X+Y<1)で表される材料を主成分とするキャリア芯材であって、Sr元素及びCa元素の少なくとも一方が総量としてSrO換算又はCaO換算で0.1mol%〜1.0mol%含有され、キャリア芯材粒子の表面に表れているグレインうち、その長さRSmが8.0μm以上であるグレインの頻度が2.0個数%以下であることを特徴とする。なお、グレインの長さRSmの測定方法は、後述する実施例で説明する。また、本明細書において示す「〜」は、特に断りのない限り、その前後に記載の数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
ここで、グレインの長さRSmの平均値は5.5μm以上6.3μm以下の範囲であるのが好ましい。
本発明に係るキャリア芯材の体積平均粒径(以下、単に「平均粒径」と記すことがある)は20μm以上40μm以下であるのが好ましい。
また本発明に係るキャリア芯材のBET比表面積は0.170m/g以上0.225m/g未満の範囲が好ましい。
また本発明によれば、前記記載のキャリア芯材の表面を樹脂で被覆したことを特徴とする電子写真現像用キャリアが提供される。
さらに本発明によれば、前記記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤が提供される。
そしてまた、本発明によれば、Mn成分原料、M成分原料(但し、MはMg,Ti,Cu,Zn,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属)、Fe成分原料、Sr成分原料及び/又はCa成分原料を媒体液に投入し混合してスラリーを得る工程と、前記スラリーを噴霧乾燥させて造粒物を得る工程と、前記造粒物を焼成して焼成物を得る工程とを有し、Mn成分原料としてグラファイトの含有量が0.01wt%以下であるものを用いることを特徴とするキャリア芯材の製造方法が提供される。
さらにまた、本発明によれば、Mn成分原料、M成分原料(但し、MはMg,Ti,Cu,Zn,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属)、Fe成分原料、Sr成分原料及び/又はCa成分原料を媒体液に投入し混合してスラリーを得る工程と、前記スラリーを噴霧乾燥させて造粒物を得る工程と、前記造粒物を焼成して焼成物を得る工程とを有し、前記焼成工程において、焼成温度まで昇温する段階での酸素濃度を50000ppmより高い濃度とし、焼成温度から冷却する段階での酸素濃度を50000ppm以下とすることを特徴とするキャリア芯材の製造方法が提供される。
本発明に係るキャリア芯材は、粒子表面に特定の凹凸形状が形成されているため、電子写真方式の画像形成装置のキャリア芯材として用いた場合に、使用によるキャリアの劣化が大幅に抑えられ長期間にわたって使用できる。また、安定した帯電性能が維持され、粒子の割れや欠けも抑制される。
また、本発明に係る電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤によれば、画像形成速度の高速化及び高画質化が図れる。
実施例1のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 実施例2のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 実施例3のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 実施例4のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 実施例5のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 実施例6のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 実施例7のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 実施例8のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 実施例9のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 実施例10のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 実施例11のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 実施例12のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 比較例1のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 比較例2のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 比較例3のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 比較例4のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 比較例5のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 比較例6のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 比較例7のキャリア芯材の部分拡大SEM写真である。 超深度カラー3D形状測定顕微鏡の観察画面例である。 本発明に係るキャリアを用いた現像装置の一例を示す概説図である。
本発明者らは、キャリア芯材粒子からの被覆樹脂の剥離及び粒子の割れや欠けを抑制すべく鋭意検討を重ねた結果、キャリア芯材粒子表面の凹凸形状が重要であるとの知見を得た。すなわち、キャリア芯材粒子表面の凹凸が小さいと、長期間の使用によって芯材粒子表面を被覆する樹脂が剥がれ落ちやすく、結果としてトナーへの帯電付与能力が低下する。一方、キャリア芯材粒子表面の凹凸が大きいと、被覆樹脂からキャリア芯材粒子が多く露出しやすく、キャリア芯材粒子自身の抵抗が低下しキャリア飛散が生じる。そして、キャリア芯材粒子表面の凹凸形状を制御するには、Sr元素及びCa元素の少なくとも一方を原料として微量含有させればよいとの知見も得た。
そして、キャリア芯材粒子表面の凹凸形状として、芯材粒子表面に表れているグレイン(結晶粒)の大きさの指標である平均長さRSmに着目し、これらを所定範囲とすることによって前記目的を達成し得ることを見出し本発明を成すに至った。すなわち、本発明に係るキャリア芯材は、組成式MnFe3−(X+Y)(但し、MはMg,Ti,Cu,Zn,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属,0<X,0≦Y,0<X+Y<1)で表される材料を主成分とするキャリア芯材であって、Sr元素及びCa元素の少なくとも一方が総量としてSrO換算又はCaO換算で0.1mol%〜1.0mol%含有され、キャリア芯材粒子の表面に表れているグレインうち、その長さRSmが8.0μm以上であるグレインの頻度が2.0個数%以下であることを特徴とする。
本発明のキャリア芯材では、Sr元素及び/又はCa元素の少なくとも一方が総量としてSrO換算又はCaO換算で0.1mol%〜1.0mol%含有されていることが重要である。Sr元素及び/又はCa元素が前記所定量含有されることによって、焼成工程においてSrフェライト及び/又はCaフェライトが一部生成され、マグネトプランバイト型の結晶構造が形成されてキャリア芯材粒子表面の凹凸形状が促進されやすくなる。Sr元素及び/又はCa元素の含有総量がSrO換算又はCaO換算で0.1mol%未満であると、グレインサイズは均一になりやすいがグレインの長さRSmが短くなり帯電性能が劣ることがある。反対に、Sr元素及び/又はCa元素の含有総量がSrO換算又はCaO換算で1.0mol%を超えると、キャリア芯材粒子のグレインに異常成長が生じることがある。より好ましいSr元素及び/又はCa元素の含有総量はSrO換算又はCaO換算で0.5mol%〜0.7mol%の範囲である。
加えて、キャリア芯材粒子の表面に表れているグレインのうちその長さRSmが8.0μm以上のグレインの頻度が2.0個数%以下であることも重要である。RSmが8.0μm以上の大きなグレインが多く存在すると被覆樹脂の剥離が起こりやすくなる。特に、キャリア芯材粒子表面に被覆樹脂層を薄く形成する場合には、被覆樹脂の剥離が顕著に生じる。
また、本発明のキャリア芯材では、キャリア芯材粒子の表面に表れているグレインの長さRSmの平均値が5.5μm以上6.3μm以下の範囲であるのが好ましい。キャリア芯材粒子表面にこのような微細な凹凸が形成されていることにより、キャリア芯材粒子表面を樹脂で被覆した際に、被覆樹脂を均一に塗布することができ、長期間の使用によっても剥離しにくくなる。また、被覆樹脂の一部が剥離しても凹部に残る被覆樹脂によってトナーへの帯電付与能力の低下が抑制される。さらに、キャリア芯材粒子の割れや欠けも抑えられる。
本発明のキャリア芯材の平均粒径に特に限定はないが、20μm〜40μmの範囲が好ましい。20μm以上であれば、キャリア飛散による画像欠陥が発生しないので好ましい。40μm以下であれば、小粒径のトナーが使用でき、画質向上が図れるので好ましい。また、その粒度分布はシャープであるのが好ましい。
また、本発明のキャリア芯材はBET比表面積が0.170m/g以上0.225m/g以下であるのが好ましい。また、細孔容積は0.003cm/g以上0.020cm/g以下であるのが好ましい。細孔容積が従来のキャリア芯材よりも小さい一方、BET比表面積が従来のキャリア芯材よりも大きいことによって、キャリア芯材粒子の表面には、適度な凹凸形状が形成されていると共に、キャリア芯材粒子内部の焼結が十分に促進されているからである。このようなキャリア芯材は高い強度を備えている。
本発明のキャリア芯材の製造方法に特に限定はないが、以下に説明する製造方法が好適である。
まず、Fe成分原料、Mn成分原料、M成分原料、そして添加剤としてSr成分原料及び/又はCa成分原料を秤量して分散媒中に投入し混合してスラリーを作製する。
ここで、キャリア芯材粒子表面に表れるグレインの長さRSmを前記規定範囲に制御する一つの方法として、Mn成分原料に含まれるグラファイトを0.01wt%以下とするのがよい。Mn成分原料中のグラファイトの含有量が0.01wt%を超えると、焼成工程において炭素と酸素とが結合して二酸化炭素あるいは一酸化炭素が生成され、焼成雰囲気が還元雰囲気となる。これにより、フェライト化反応の際に局所的な還元が生じてグレインが急激に成長しRSmが所期の範囲を超えて大きくなりすぎる。
なお、MはMg、Ti、Cu、Zn、Niの2価の金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。Fe成分原料としてはFe等が好適に使用される。Mn成分原料としてはMnCO、Mn等が好適に使用される。M成分原料としては、MgであればMgO、Mg(OH)、MgCOが好適に使用される。また、Sr成分原料としてはSrO、SrCOなどが使用され、Ca成分原料としてはCaO、Ca(OH)、CaCO等が好適に使用される。M成分はキャリアの磁気特性の調整を主とするもので、所望の磁気特性に適合する成分を選択し配合すればよい。凹凸への影響は少ない成分である。なお、前記各成分原料を、必要により粉砕混合処理した後、仮焼成し、これを分散媒中に投入してスラリーとしてもよい。
本発明で使用する分散媒としては水が好適である。分散媒には、前記各成分原料の他、必要によりバインダー、分散剤等を配合してもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールが好適に使用できる。バインダーの配合量としてはスラリー中の濃度が0.5〜2質量%程度とするのが好ましい。また、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム等が好適に使用できる。分散剤の配合量としてはスラリー中の濃度が0.5〜2質量%程度とするのが好ましい。その他、潤滑剤や焼結促進剤等を配合してもよい。スラリーの固形分濃度は50〜90質量%の範囲が望ましい。より好ましくは60〜80質量%である。60質量%以上であれば、造粒物中に粒子内細孔が少なく、焼成時の焼結不足を防ぐことができる。一方、80質量%以下であれば、結合粒子が少なく、粒子形状による流動性悪化を防ぐことができる。
次に、以上のようにして作製されたスラリーを湿式粉砕する。例えば、ボールミルや振動ミルを用いて所定時間湿式粉砕する。粉砕後の原材料の体積平均粒子径は10μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下である。また、体積粒度分布90%の粒子径D90は1.5μm〜4.0μmの範囲が好ましい。粒子径D90が1.5μm以上であれば、粒子表面に微細な凹凸を形成することができるので好ましい。一方、粒子径D90が4.0μm以下であれば、粗大粒子を十分に粉砕できており、焼成時に結晶の異常粒成長を防ぐことができる。振動ミルやボールミルには、所定粒径のメディアを内在させるのがよい。メディアの材質としては、鉄系のクロム鋼や酸化物系のジルコニア、チタニア、アルミナなどが挙げられる。粉砕工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。粉砕物の粒径は、粉砕時間や回転速度、使用するメディアの材質・粒径などによって調整される。
そして、粉砕されたスラリーを噴霧乾燥させて造粒する。具体的には、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機にスラリーを導入し、雰囲気中へ噴霧することによって球状に造粒する。噴霧乾燥時の雰囲気温度は100〜300℃の範囲が好ましい。これにより、粒径10〜200μmの球状の造粒物が得られる。なお、得られた造粒物は、振動ふるい等を用いて、粗大粒子や微粉を除去し粒度分布をシャープなものとするのが望ましい。造粒物の好ましい体積平均粒子径は20μm〜40μmの範囲である。
次に、造粒物を所定温度に加熱した炉に投入して、キャリア芯材を合成するための一般的な手法で焼成する。焼成温度としては1050℃〜1200℃の範囲が好ましい。焼成温度が1050℃以下であると、相変態が起こりにくくなるとともに焼結も進みにくくなり、粒子表面に大きな凸部が形成されず、粒子内に細孔が多くできる。また、焼成温度が1200℃を超えると、過剰焼結による過大グレインの発生がするおそれがある。前記焼成温度に至るまでの昇温速度としては250℃/h〜500℃/hの範囲が好ましい。
ここで、キャリア芯材粒子表面に表れるグレインの長さRSmを前記規定範囲に制御する方法として、Mn成分原料中のグラファイト含有量を少なくする前記方法とは別に、焼成工程における酸素濃度を制御するようにしてもよい。具体的には、焼成温度まで昇温する段階における酸素濃度を50000ppmより高い濃度とし、焼成温度から冷却する段階における酸素濃度を50000ppm以下とするのがよい。昇温段階での酸素濃度を高くするよって、Mn成分原料に含有されているグラファイトの酸素との結合が促進され、フェライト化反応の際における残存グラファイトによる局所的な還元雰囲気の生成が抑制される。また、冷却段階での酸素濃度を低くすることによって、生成されたフェライト相を保つことができる。
このようにして得られた焼成物を必要により解粒する。具体的には、例えば、ハンマーミル等によって焼成物を解粒する。解粒工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。そして、必要により、粒径を所定範囲に揃えるため分級を行ってもよい。分級方法としては、風力分級や篩分級など従来公知の方法を用いることができる。また、風力分級機で1次分級した後、振動篩や超音波篩で粒径を所定範囲に揃えるようにしてもよい。前駆体の体積平均粒子径としては20μm〜40μmの範囲が好ましい。
その後、必要に応じて、分級後のキャリア芯材を酸化性雰囲気中で加熱して、キャリア芯材の粒子表面に酸化被膜を形成して粒子の高抵抗化を図ってもよい(高抵抗化処理)。酸化性雰囲気としては大気雰囲気又は酸素と窒素の混合雰囲気のいずれでもよい。また、加熱温度は、200〜800℃の範囲が好ましく、250〜600℃の範囲がさらに好ましい。加熱時間は0.5時間〜5時間の範囲が好ましい。
以上のようにして作製した本発明のキャリア芯材を、電子写真現像用キャリアとして用いる場合、キャリア芯材をそのまま電子写真現像用キャリアとして用いることもできるが、帯電性等の観点からは、キャリア芯材の表面を樹脂で被覆して用いる。
キャリア芯材の表面を被覆する樹脂としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリ塩化ビニリデン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、並びにポリ塩化ビニル系やポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エストラマー、フッ素シリコーン系樹脂などが挙げられる。
キャリア芯材の表面を樹脂で被覆するには、樹脂の溶液又は分散液をキャリア芯材に施せばよい。塗布溶液用の溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類溶媒;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒などの1種又は2種以上を用いることができる。塗布溶液中の樹脂成分濃度は、一般に0.001質量%〜30質量%、特に0.001質量%〜2質量%の範囲内にあるのがよい。
キャリア芯材への樹脂の被覆方法としては、例えばスプレードライ法や流動床法あるいは流動床を用いたスプレードライ法、浸漬法等を用いることができる。これらの中でも、少ない樹脂量で効率的に塗布できる点で流動床法が特に好ましい。樹脂被覆量は、例えば流動床法の場合には吹き付ける樹脂溶液量や吹き付け時間によって調整することができる。
キャリアの体積平均粒径は、一般に、20μm〜40μmの範囲が好ましい。
本発明に係る電子写真用現像剤は、以上のようにして作製したキャリアとトナーとを混合してなる。キャリアとトナーとの混合比に特に限定はなく、使用する現像装置の現像条件などから適宜決定すればよい。一般に現像剤中のトナー濃度は1質量%〜15質量%の範囲が好ましい。トナー濃度が1質量%未満の場合、画像濃度が薄くなりすぎ、他方トナー濃度が15質量%を超える場合、現像装置内でトナー飛散が発生し機内汚れや転写紙などの背景部分にトナーが付着する不具合が生じるおそれがあるからである。より好ましいトナー濃度は3質量%〜10質量%の範囲である。
トナーとしては、重合法、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法など従来公知の方法で製造したものが使用できる。具体的には、熱可塑性樹脂を主成分とする結着樹脂中に、着色剤、離型剤、帯電制御剤等を含有させたものが好適に使用できる。
トナーの粒径は、一般に、コールターカウンターによる体積平均粒子径で1μm〜15μmの範囲が好ましく、5μm〜12μmの範囲がより好ましい。
トナー表面には、必要により、改質剤を添加してもよい。改質剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
キャリアとトナーとの混合は、従来公知の混合装置を用いることができる。例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、タンブラーミキサー、ハイブリタイザー等を用いることができる。
本発明の現像剤を用いた現像方法に特に限定はないが、磁気ブラシ現像法が好適である。図21に、磁気ブラシ現像を行う現像装置の一例を示す概説図を示す。図21に示す現像装置は、複数の磁極を内蔵した回転自在の現像ローラ3と、現像部へ搬送される現像ローラ3上の現像剤量を規制する規制ブレード6と、水平方向に平行に配置され、互いに逆向きに現像剤を撹拌搬送する2本のスクリュー1,2と、2本のスクリュー1,2の間に形成され、両スクリューの両端部において、一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤の移動を可能とし、両端部以外での現像剤の移動を防ぐ仕切板4とを備える。
2本のスクリュー1,2は、螺旋状の羽根13,23が同じ傾斜角で軸部11,21に形成されたものであって、不図示の駆動機構によって同方向に回転し、現像剤を互いに逆方向に搬送する。そして、スクリュー1,2の両端部において一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤が移動する。これによりトナーとキャリアからなる現像剤は装置内を常に循環し撹拌されることになる。
一方、現像ローラ3は、表面に数μmの凹凸を付けた金属製の筒状体の内部に、磁極発生手段として、現像磁極N、搬送磁極S、剥離磁極N、汲み上げ磁極N、ブレード磁極Sの5つの磁極を順に配置した固定磁石を有してなる。現像ローラ3が矢印方向に回転すると、汲み上げ磁極Nの磁力によって、スクリュー1から現像ローラ3へ現像剤が汲み上げられる。現像ローラ3の表面に担持された現像剤は、規制ブレード6により層規制された後、現像領域へ搬送される。
現像領域では、直流電圧に交流電圧を重畳したバイアス電圧が転写電圧電源8から現像ローラ3に印加される。バイアス電圧の直流電圧成分は、感光体ドラム5表面の背景部電位と画像部電位との間の電位とされる。また、背景部電位と画像部電位とは、バイアス電圧の最大値と最小値との間の電位とされる。バイアス電圧のピーク間電圧は0.5〜5kVの範囲が好ましく、周波数は1〜10kHzの範囲が好ましい。またバイアス電圧の波形は矩形波、サイン波、三角波などいずれであってもよい。これによって、現像領域においてトナー及びキャリアが振動し、トナーが感光体ドラム5上の静電潜像に付着して現像がなされる。
その後現像ローラ3上の現像剤は、搬送磁極Sによって装置内部に搬送され、剥離電極Nによって現像ローラ3から剥離して、スクリュー1,2によって装置内を再び循環搬送され、現像に供していない現像剤と混合撹拌される。そして汲み上げ極Nによって、新たに現像剤がスクリュー1から現像ローラ3へ供給される。
なお、図21に示した実施形態では現像ローラ3に内蔵された磁極は5つであったが、現像剤の現像領域での移動量を一層大きくしたり、汲み上げ性等を一層向上させるために、磁極を8極や10極、12極と増やしてももちろん構わない。
(実施例1)
MnMgフェライト粒子を下記方法で作製した。出発原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)を42.6mol、Mn(平均粒径:0.9μm)をMnO換算で38.3mol、MgO(平均粒径:0.8μm)を5.7mol、CaCO(平均粒径:0.8μm)を0.5molを水に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を0.6wt%添加して混合物とした。この混合物の固形分濃度は75wt%であった。なお、Mnは、グラファイト含有量が0.01wt%のものを用いた。
この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10〜75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から、網目54μmの篩網を用いて粗粒を分離し、網目33μmの篩網を用いて微粒を分離した。
この造粒物を、電気炉に投入し1100℃まで5時間かけて昇温した。その後1100℃で3時間保持することにより焼成を行った。その後8時間かけて室温まで冷却した。昇温段階及び焼成温度の保持段階での電気炉内の酸素濃度は12000ppm、冷却段階での酸素濃度は12000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。
得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動ふるいを用いて分級し、平均粒径27.1μmの焼成物を得た。
次いで、得られた焼成物を大気雰囲気下500℃で1.5時間保持することにより酸化処理(高抵抗化処理)を行い、キャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図1に、実施例1のキャリア芯材のSEM写真を示す。
実施例2
焼成温度を1110℃とした以外は、実施例1と同様にして平均粒径28.3μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図2に、実施例2のキャリア芯材のSEM写真を示す。
実施例3
焼成温度を1120℃とした以外は、実施例1と同様にして平均粒径26.1μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図3に、実施例3のキャリア芯材のSEM写真を示す。
実施例4
Mn成分原料として、Mn(水島合金鉄社製「Mox−Pu」,グラファイト含有量:0.42wt%)を用い、焼成工程における昇温段階及び焼成温度の保持段階での電気炉内の酸素濃度を210000ppm、冷却段階での酸素濃度は12000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した以外は、実施例1と同様にして平均粒径30.1μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図4に、実施例4のキャリア芯材のSEM写真を示す。
実施例5
Mn成分原料として、Mn(水島合金鉄社製「Mox−Pu」,グラファイト含有量:0.42wt%)を用い、焼成温度を1110℃とし、昇温段階及び焼成温度の保持段階での電気炉内の酸素濃度を210000ppm、冷却段階での酸素濃度は12000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した以外は、実施例1と同様にして平均粒径29.8μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図5に、実施例5のキャリア芯材のSEM写真を示す。
実施例6
Mn成分原料として、Mn(水島合金鉄社製「Mox−Pu」,グラファイト含有量:0.42wt%)を用い、焼成温度を1120℃とし、昇温段階及び焼成温度の保持段階での電気炉内の酸素濃度を210000ppm、冷却段階での酸素濃度は12000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した以外は、実施例1と同様にして平均粒径30.2μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図6に、実施例6のキャリア芯材のSEM写真を示す。
実施例7
Mnフェライト粒子を下記方法で作製した。出発原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)を54.8mol、Mn(平均粒径:0.9μm)をMnO換算で44.7mol、SrCO(平均粒径:0.8μm)を0.5molを水に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を0.6wt%添加して混合物とした。この混合物の固形分濃度は80wt%であった。なお、Mnは、水島合金鉄社製「Mox−Pu」(グラファイト含有量:0.25wt%)を用いた。
この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10〜75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から、網目54μmの篩網を用いて粗粒を分離し、網目33μmの篩網を用いて微粒を分離した。
この造粒物を、電気炉に投入し1100℃まで5時間かけて昇温した。その後1100℃で3時間保持することにより焼成を行った。その後8時間かけて室温まで冷却した。昇温段階及び焼成温度の保持段階での電気炉内の酸素濃度は210000ppm、冷却段階での酸素濃度は7000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。
得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動ふるいを用いて分級し、平均粒径35.6μmの焼成物を得た。
次いで、得られた焼成物を大気雰囲気下400℃で1.5時間保持することにより酸化処理(高抵抗化処理)を行い、キャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図7に、実施例7のキャリア芯材のSEM写真を示す。
実施例8
焼成温度を1110℃とした以外は、実施例7と同様にして平均粒径36.0μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図8に、実施例8のキャリア芯材のSEM写真を示す。
実施例9
焼成温度を1120℃とした以外は、実施例7と同様にして平均粒径35.1μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図9に、実施例9のキャリア芯材のSEM写真を示す。
実施例10
MnMgフェライト粒子を下記方法で作製した。出発原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)50.0mol、Mn(平均粒径:0.9μm)をMnO換算で38.0mol、MgO(平均粒径:0.8μm)を11.0mol、SrCO(平均粒径:0.8μm)を0.7molを水に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を0.6wt%添加して混合物とした。この混合物の固形分濃度は80wt%であった。なお、Mnは、水島合金鉄社製「Mox−Pu」(グラファイト含有量:0.57wt%)を用いた。
この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10〜75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から、網目54μmの篩網を用いて粗粒を分離し、網目33μmの篩網を用いて微粒を分離した。
この造粒物を、電気炉に投入し1095℃まで5時間かけて昇温した。その後10955℃で3時間保持することにより焼成を行った。その後8時間かけて室温まで冷却した。昇温段階及び焼成温度の保持段階での電気炉内の酸素濃度は210000ppm、冷却段階での酸素濃度は7000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。
得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動ふるいを用いて分級し、平均粒径38.2μmの焼成物を得た。
次いで、得られた焼成物を大気雰囲気下470℃で1.5時間保持することにより酸化処理(高抵抗化処理)を行い、キャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図10に、実施例10のキャリア芯材のSEM写真を示す。
実施例11
焼成温度を1105℃とした以外は、実施例10と同様にして平均粒径37.3μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図11に、実施例11のキャリア芯材のSEM写真を示す。
実施例12
焼成温度を1115℃とした以外は、実施例10と同様にして平均粒径38.5μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図12に、実施例12のキャリア芯材のSEM写真を示す。
比較例1
Mn成分原料としてMn(水島合金鉄社製「Mox−Pu」,グラファイト含有量:0.42wt%)を用いた以外は、実施例1と同様にして平均粒径30.2μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図13に、比較例1のキャリア芯材のSEM写真を示す。
比較例2
焼成温度を1110℃とした以外は、比較例1と同様にして平均粒径30.3μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図14に、比較例2のキャリア芯材のSEM写真を示す。
比較例3
焼成温度を1120℃とした以外は、比較例1と同様にして平均粒径28.9μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図15に、比較例3のキャリア芯材のSEM写真を示す。
比較例4
Mn成分原料としてMn(水島合金鉄社製「Mox−Pu」,グラファイト含有量:0.58wt%)を用い、各成分原料を粉砕混合処理した後、温度750℃の大気雰囲気下で仮焼成し、これを分散媒中に投入してスラリーとした以外は、実施例1と同様にして平均粒径26.0μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図16に、比較例4のキャリア芯材のSEM写真を示す。
比較例5
仮焼成の温度を900℃とした以外は比較例4と同様にして平均粒径26.2μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図17に、比較例5のキャリア芯材のSEM写真を示す。
比較例6
仮焼成の温度を1000℃とした以外は比較例4と同様にして平均粒径30.0μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図18に、比較例6のキャリア芯材のSEM写真を示す。
比較例7
Mn成分原料としてMn(水島合金鉄社製「Mox−Pu」,グラファイト含有量:0.63wt%)を用い、焼成温度を1200℃とした以外は、実施例7と同様にして平均粒径35.4μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、物性などを後述の方法で測定した。また、現像剤としたときのキャリア飛散の評価を行った。測定及び評価の結果を表1及び表2に示す。また、図19に、比較例7のキャリア芯材のSEM写真を示す。
(組成分析)
(Feの分析)
鉄元素を含むキャリア芯材を秤量し、塩酸と硝酸の混酸水に溶解させた。この溶液を蒸発乾固させた後、硫酸水を添加して再溶解し過剰な塩酸と硝酸とを揮発させる。この溶液に固体Alを添加して液中のFe3+を全てFe2+に還元する。続いて、この溶液中のFe2+イオンの量を過マンガン酸カリウム溶液で電位差滴定することにより定量分析し、Fe(Fe2+)の滴定量を求めた。
(Mnの分析)
キャリア芯材のMn含有量は、JIS G1311−1987記載のフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)に準拠して定量分析を行った。本願発明に記載したキャリア芯材のMn含有量は、このフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)で定量分析し得られたMn量である。
(Mgの分析)
キャリア芯材のMg含有量は、以下の方法で分析を行った。本願発明に係るキャリア芯材を酸溶液中で溶解し、ICPにて定量分析を行った。本願発明に記載したキャリア芯材のMg含有量は、このICPによる定量分析で得られたMg量である。
(Ca,Srの分析)
キャリア芯材のCa,Sr含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
(見掛密度)
キャリア芯材の見掛け密度はJIS Z 2504に準拠して測定した。
(流動度)
キャリア芯材の流動度はJIS Z 2502に準拠して測定した。
(平均粒径)
キャリア芯材の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装社製「マイクロトラックModel9320−X100」)を用いて測定した。
(磁気特性)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製「VSM−P7」)を用いて、外部磁場を0〜79.58×10A/m(10000エルステッド)の範囲で1サイクル連続的に印加して残留磁化σr及び79.58×10A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ1k(Am/kg)をそれぞれ測定した。
(平均長さRSmの測定)
キャリア芯材粒子の平均長さRSmを次のように測定した。超深度カラー3D形状測定顕微鏡(「VK−X100」株式会社キーエンス製)を用い、100倍対物レンズで表面を観察して求めた。具体的には、まず、表面の平坦な粘着テープにフェライト粒子を固定し、100倍対物レンズで測定視野を決定した後、オートフォーカス機能を用いて焦点を粘着テープ面に調整し、オート撮影機能を用いてフェライト粒子表面の3次元形状を取り込んだ。
各パラメータの測定には、装置付属のソフトウェアVK−H1XAを用いて行った。まず、前処理として、得られたキャリア芯材粒子の表面の3次元形状から解析に用いる部分の取り出しを行った。図20に、観察画面の概略図を示す。キャリア芯材粒子の表面の中央部分に長さ15.0μmの水平方向に延びる線分31を引き、その上下に4本間隔で10本ずつ平行線を追加した場合の線分上にあたる粗さ曲線を、計21本分取り出した。図20おいて、上側の10本の線分32a、下側の10本の線分32bを簡略的に示している。
キャリア芯材粒子は略球形状であるため、取り出した粗さ曲線は、バックグラウンドとして一定の曲率を持っている。このため、バックグラウンドの補正として、最適な二次曲線をフィッティングし、粗さ曲線から差し引く補正を行った。この場合のカットオフ値λsを、0.25μm、カットオフ値λcを0.08mmとした。
平均長さRSmは、粗さ曲線のうち、谷と山の組み合わせを一つの要素と規定し、それぞれの要素の長さを平均したものである。
以上説明した平均長さRSmの測定は、JIS B0601(2001年度版)に準拠して行われるものである。
また、解析に用いるキャリア芯材粒子の平均粒子径については、32.0μm〜34.0μmに限定した。このように測定対象となるキャリア芯材粒子の平均粒子径を狭い範囲に限定することで、曲率補正の際に生じる残渣による誤差を小さくすることができる。なお、各パラメータの平均値として、30粒子の平均値を用いることとした。
(現像剤の作製)
得られたキャリア芯材の表面を樹脂で被覆してキャリアを作製した。具体的には、シリコーン樹脂450重量部と、(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン9重量部とを、溶媒としてのトルエン450重量部に溶解してコート溶液を作製した。このコート溶液を、流動床型コーティング装置を用いてキャリア芯材50000重量部に塗布し、温度300℃の電気炉で加熱してキャリアを得た。以下、全ての実施例、比較例についても同様にしてキャリアを得た。
得られたキャリアと平均粒径5.0μm程度のトナーとを、ポットミルを用いて所定時間混合し、二成分系の電子写真現像剤を得た。この場合、キャリアとトナーとをトナーの重量/(トナーおよびキャリアの重量)=5/100となるように調整した。以下、全ての実施例、比較例についても同様にして現像剤を得た。得られた現像剤を、図21に示す構造の現像装置(現像スリーブの周速度Vs:406mm/sec,感光体ドラムの周速度Vp:205mm/sec,感光体ドラム−現像スリーブ間距離:0.3mm)に投入した。
(キャリア飛散の評価)
A4サイズの白紙を1000枚印刷した後、1000枚目の用紙における黒点の数を目視にて測定し、下記基準で評価した。結果を表2に合わせて示す。
「◎」:黒点なし
「○」:黒点が1個〜5個
「△」:黒点が6個〜10個
「×」:黒点が11個以上
表2から明らかなように、Mn成分原料としてグラファイト含有量が0.01wt%と少ないMnを用いた実施例1〜3のキャリア芯材では、キャリア芯材粒子表面に表れているグレインの長さRSmの平均値は5.6〜5.7μmであり、RSmが8μm以上のグレインの頻度は1.2個数%以下であった。このようなキャリア芯材を用いた現像剤ではキャリア飛散は実用上まったく問題のないものであった。
また、Mn成分原料としてグラファイト含有量が0.25wt%〜0.57wt%と多いMnを用いた実施例4〜12のキャリア芯材でも、焼成工程における昇温段階及び焼成温度の保持段階の酸素濃度は210000ppm、冷却段階での酸素濃度を12000ppmとしたことによって、キャリア芯材粒子表面に表れているグレインの長さRSmの平均値は5.5〜6.2μmであり、RSmが8μm以上のグレインの頻度は1.9個数%以下であった。このようなキャリア芯材を用いた現像剤ではキャリア飛散は実用上まったく問題のないものであった。
これに対して、Mn成分原料としてグラファイト含有量が0.42wt%以上と多いMnを用い、焼成工程における昇温段階、焼成温度の保持段階、冷却段階のすべての段階で酸素濃度を12000ppmとした比較例1〜6のキャリア芯材では、RSmが8μm以上のグレインの頻度が3.1個数%以上であった。このようなキャリア芯材を用いた現像剤ではキャリア飛散が実用上支障のあるレベルであった。
また、Mn成分原料としてグラファイト含有量が0.63wt%以上と多いMn3O4を用い、焼成工程における昇温段階及び焼成温度の保持段階の酸素濃度は210000ppm、冷却段階での酸素濃度を12000ppmとし、焼成温度を1200℃とした比較例7のキャリア芯材では、グレインの長さRSmの平均値が8.0μmを超えており、焼成温度が高い為、グレインが成長しすぎていることがわかる。このことによって、ランニング時コート剥離が起きやすく、このようなキャリア芯材を用いた現像剤ではキャリア飛散が実用上支障のあるレベルであった。
本発明に係るキャリア芯材は、表面に特定の凹凸形状が均一に形成されているため、使用によるキャリアの劣化が大幅に抑えられ長期間にわたって使用できる。また、安定した帯電性能が維持され、粒子の割れや欠けも生じることがなく有用である。
3 現像ローラ
5 感光体ドラム
C キャリア

Claims (4)

  1. 組成式MnFe3−(X+Y)(但し、MはMg,Ti,Cu,Zn,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属,0<X,0≦Y,0<X+Y<1)で表される材料を主成分とするキャリア芯材であって、
    Sr元素及びCa元素の少なくとも一方が総量としてSrO換算又はCaO換算で0.1mol%〜1.0mol%含有され、
    BET比表面積が0.170m /g以上0.225m /g未満の範囲であり、
    細孔容積が0.003cm /g以上0.020cm /g以下の範囲であり、
    キャリア芯材の粒子表面に表れているグレインのうち、その長さRSmが8.0μm以上であるグレインの頻度が2.0個数%以下で、キャリア芯材の粒子表面に表れているグレインの長さRSmの平均値が5.5μm以上6.3μm以下の範囲である
    ことを特徴とするキャリア芯材。
  2. 体積平均粒径が20μm以上40μm以下である請求項記載のキャリア芯材。
  3. 請求項1又は2に記載のキャリア芯材の表面を樹脂で被覆したことを特徴とする電子写真現像用キャリア。
  4. 請求項記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤。
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