JP6396287B2 - 加工中安定状態を保つpc/abs組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)ポリマー、および任意に他の添加剤および成分を含んでなり、光沢、ポリカーボネート分解および遊離ビスフェノールA含量に関する高い加工中熱安定性を特徴とし、改善された耐応力亀裂性を有する、成形用組成物に関する。
ポリカーボネートおよびABSポリマーから作られた熱可塑性成形用組成物は、以前から知られている。
DE−A 1 170 141は、アクリロニトリルおよび芳香族ビニル炭化水素のモノマー混合物とポリブタジエンとのグラフトポリマー、並びにポリカーボネートから作られ、良好な加工性を有する成形用組成物を記載している。
DE−A 1 810 993は、ABSグラフトポリマーまたはα−メチルスチレンベースコポリマーと混合したポリカーボネートの改善された耐熱性を記載している。
DE−A 22 59 565およびDE−A 23 29 548は、PC/ABS成形用組成物の改善されたウェルドライン強度に関しており、いずれの文献においても、ABS成分の組成成分として、特定の粒度を有するグラフトポリマーが使用されている。
DE−A 28 18 679は、ABSポリマーが異なったグラフト化度を有する2種類のグラフトコポリマーを含んでなる場合に、特に高い低温靱性を有するPC/ABS混合物を記載している。
EP−A 900 827は、ポリカーボネートを分解する塩基性成分を本質的に含まず、エマルションポリマーを含んでなり、改善された熱安定性を有する耐衝撃性改質ポリカーボネート組成物を開示している。同文献によれば、エマルションポリマーにより耐衝撃性が改質されるこのタイプのポリカーボネート組成物は、その製造に由来する塩基性不純物を含む場合、不十分な熱安定性を示す。
US 6,417,256 B1は、ポリカーボネートと、溶液重合法によって調製されたABSグラフトポリマーとを含んでなり、優れた機械的性質、特に改善された応力割れ挙動を特徴とする成形用組成物を記載している。
EP 1 268 666 B1およびWO 01/25334 A1は、ポリカーボネートと、バルク重合法によって調製されたABSグラフトポリマーとを含んでなり、良好な耐衝撃性および改善された加工性を特徴とする成形用組成物を記載している。
WO 01/70884 A1は、ポリカーボネートと、バルク重合法によって調製されたABSグラフトポリマーとを含んでなり、耐衝撃性に関する低減された異方性を特徴とする成形用組成物を記載している。
WO 91/18052 A1は、高い熱安定性を有するPC/ABS成形用組成物であって、ABSポリマーは800ppm未満のナトリウムイオンおよびカリウムイオンの含量を有する成形用組成物を開示している。
WO 99/11713 A1は、改善された耐湿性を有する難燃性PC/ABS複合材であって、ABSポリマーは1ppm未満のアルカリ金属含量を有する成形用組成物を開示している。
上記文献のいずれも、本発明の組成物が先行技術から知られている組成物と比べて有利な性質を有することは記載していない。
DE−A 1 170 141 DE−A 1 810 993 DE−A 22 59 565 DE−A 23 29 548 DE−A 28 18 679 EP−A 900 827 US 6,417,256 B1 EP 1 268 666 B1 WO 01/25334 A1 WO 01/70884 A1 WO 91/18052 A1 WO 99/11713 A1
本発明の目的は、改善された耐応力亀裂性、加工時のより安定な高光沢、また、好ましくは、不利な加工条件(高温、高剪断および/または長滞留時間)下でのより少ないポリカーボネート熱分解、および遊離ビスフェノールAの低含量(温度が高い場合のように、配合条件が厳しい場合であっても)を特徴とするポリカーボネート/ABS成形用組成物を提供することである。
従って、本発明は、
A)40.0〜99.5重量部、好ましくは50.0〜95.0重量部、特に好ましくは60.0〜90.0重量部の、OH末端基含量300ppm未満、好ましくは250ppm未満、特に好ましくは200ppm未満を有する少なくとも1種の芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネート、
B)0.5〜60.0重量部、好ましくは4.5〜49.5重量部、特に好ましくは6.0〜36.0重量部の、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムの総含量100ppm未満、好ましくは総含量50ppm未満、特に好ましくは総含量20ppm未満を有する少なくとも1種のグラフトポリマー、
C)0.0〜30.0重量部、好ましくは0〜20.0重量部、特に好ましくは3.0〜15.0重量部のビニル(コ)ポリマー、好ましくはバルクまたは溶液重合法によって調製されたビニル(コ)ポリマー、
D)0.0〜40.0重量部、好ましくは0.5〜20.0重量部、特に好ましくは1.0〜10.0重量部の他のポリマー添加剤
を、成分A)〜D)の重量部の合計が100重量部となるように含んでなる熱可塑性成形用組成物を提供する。
好ましい1つの態様では、成分A)は、20ppm未満、好ましくは15ppm未満、より好ましくは10ppm未満の遊離ビスフェノールA(BPA)含量を有する。
成分A)は、界面法により調製することが好ましい。
成分B)は、バルクまたは溶液重合法により調製することが好ましい。
好ましい1つの態様では、本発明の組成物は、溶融重合法によって調製された芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートを含まない。
好ましい1つの態様では、本発明の組成物は、エマルションまたは懸濁重合法によって調製されたグラフトポリマーを含まない。
好ましい1つの態様では、本発明の組成物は、エマルションまたは懸濁重合法によって調製されたビニル(コ)ポリマーを含まない。
特に好ましい態様では、本発明の組成物は、溶融重合法によって調製された芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートだけでなく、エマルションまたは懸濁重合法によって調製されたグラフトポリマーおよびビニル(コ)ポリマーも含まない。
好ましい1つの態様では、配合組成物全体は、20ppm未満、好ましくは15ppm未満、および好ましくは0.5ppm超、より好ましくは1.0ppm超、特に好ましくは2ppm超の遊離ビスフェノールA含量を有する。
好ましい態様では、組成物は、成分A)〜D)からなる。
好ましい態様では、組成物は、成分A)とは異なった、遊離ビスフェノールAまたはビスフェノールA単位を有する成分を含まず、特にビスフェノールAベース難燃剤を含まない。
特に好ましい態様では、組成物は難燃剤を含まない。
本発明において特に記載の無い限り、遊離ビスフェノールA含量は、ジクロロメタンに試料を溶解し、メタノールで再沈殿させることによって測定する。沈殿ポリマー画分を濾過によって除去し、濾液を蒸発によって濃縮する。得られた濾液中の遊離BPA含量は、UV検出器(外部標準)を備えたHPLCによって測定する。
成分A)
本発明に適当な成分A)の芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは、文献から既知であるか、または文献から既知の方法によって調製することができる(芳香族ポリカーボネートの調製については、例えば、Schnell, "Chemistry and Physics of Polycarbonates", Interscience Publishers, 1964、DE−AS 1 495 626、DE−A 2 232 877、DE−A 2 703 376、DE−A 2 714 544、DE−A 3 000 610、DE−A 3 832 396を参照;芳香族ポリエステルカーボネートの調製については、例えばDE−A 3 007 934を参照)。
成分A)の芳香族ポリカーボネートは、好ましくは、場合により連鎖停止剤(例えばモノフェノール)を使用してよく、場合により三官能性以上の分岐剤(例えばトリフェノールまたはテトラフェノール)を使用してよい界面法による、ジフェノールとハロゲン化カルボニル(好ましくはホスゲン)および/または芳香族ジアシルジハライド(好ましくはベンゼンジカルボン酸ジハライド)との反応によって調製される。
本発明において成分A)として適当なポリカーボネートは、300ppm未満、好ましくは250ppm未満、特に好ましくは200ppm未満のOH末端基濃度を有する。
OH末端基濃度は、Horbach, A.; Veiel, U.; Wunderlich, H., Makromolekulare Chemie 1965, 第88巻、第215〜231頁に記載されているような赤外線分光法によって測定する。
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを調製するためのジフェノールは、好ましくは、式(I):
Figure 0006396287
[式中、Aは、単結合、C〜Cアルキレン、C〜Cアルキリデン、C〜Cシクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SO-またはC〜C12アリーレンであって、そこには場合によりヘテロ原子を有してよい更なる芳香環が縮合していてよく、或いは式(II)または(III):
Figure 0006396287
で示される基であり、
Bは、それぞれの場合にC〜C12アルキル、好ましくはメチル、またはハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素であり、
xは、互いに独立してそれぞれ0、1または2であり、
pは、1または0であり、
およびRは、各Xについて個別に選択することができ、互いに独立して水素またはC〜Cアルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルであり、
は、炭素であり、
mは、4〜7の整数、好ましくは4または5であり、
少なくとも1個の原子XについてのRおよびRは、同時にアルキル、好ましくはメチルまたはエチルである]
で示されるジフェノールである。
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)−C〜Cアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)−C〜Cシクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホンおよびα,α−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、およびそれらの環臭素化および/または環塩素化誘導体である。
特に好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、およびそれらの二臭素化および四臭素化または二塩素化または四塩素化誘導体、例えば、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンまたは2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。特に好ましいものは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)である。
ジフェノールは、単独で、または所望の混合物として使用することができる。ジフェノールは、文献から既知であるか、または文献から既知の方法によって得られる。
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの調製に適した連鎖停止剤の例は、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert−ブチルフェノールまたは2,4,6−トリブロモフェノール、或いは長鎖アルキルフェノール、例えば、4−[2−(2,4,4−トリメチルペンチル)]フェノール、DE−A 2 842 005に従った4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノール、或いはアルキル置換基に合計8〜20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノールまたはジアルキルフェノール、例えば、3,5−ジ−tert−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノールおよび2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールである。使用される連鎖停止剤の量は、使用される各ジフェノールの総モル量に基づいて、一般に0.5mol%〜10mol%である。
組成物を調製するための芳香族ポリカーボネートの相対溶液粘度(ηrel)は、1.18〜1.4、好ましくは1.20〜1.32、より好ましくは1.23〜1.32、特に好ましくは1.26〜1.30の範囲である(ウベローデ粘度計を用いて、25℃で、ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネート0.5gの塩化メチレン100mL中溶液について測定)。
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量(M、GPC(標準ポリカーボネートを用いたゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定)は、10,000〜200,000g/mol、好ましくは15,000〜80,000g/mol、より好ましくは23,000〜32,000g/mol、特に好ましくは26,000〜32,000g/molである。
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、既知のタイプの分岐を有してよく、これは特に好ましくは、使用されるジフェノール全体に基づいて0.05〜2.0mol%の三官能性以上の化合物(例えば3つ以上のフェノール基を有する化合物)の組み込みによる。直鎖ポリカーボネートを使用することが好ましく、ビスフェノールAに基づくものを使用することがより好ましい。
ホモポリカーボネートだけでなくコポリカーボネートも適当な物質である。成分A)に従った本発明のコポリカーボネートを調製するために、使用されるジフェノールの総量に基づいて1〜25重量%、好ましくは2.5〜25重量%のヒドロキシアリールオキシ末端基含有ポリジオルガノシロキサンを使用することも可能である。そのような物質は、既知であり(US 3 419 634)、文献から既知の方法によって調製することができる。ポリジオルガノシロキサン含有コポリカーボネートもまた適している。ポリジオルガノシロキサン含有コポリカーボネートの調製方法は、DE−A 3 334 782に記載されている。
ビスフェノールAホモポリカーボネートと並んで好ましいポリカーボネートは、ジフェノールの総モル量に基づいて15mol%までの好ましいまたは特に好ましいものとして上記したジフェノール以外のジフェノールと、ビスフェノールAとのコポリカーボネートである。
芳香族ポリエステルカーボネートの調製に好ましい芳香族ジアシルジハライドは、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸のジアシルジクロリドである。
特に好ましくは、1:20〜20:1の比の、イソフタル酸ジアシルジクロリドとテレフタル酸ジアシルジクロリドとの混合物である。
ポリエステルカーボネートの調製には、二官能性酸誘導体として、ハロゲン化カルボニル(好ましくはホスゲン)を併用することもできる。
芳香族ポリエステルカーボネートの調製に使用できる連鎖停止剤は、先に記載したモノフェノールだけでなく、それらのクロロ炭酸エステルや、芳香族モノカルボン酸アシルクロリドであってもよく、これらは場合によりC〜C22アルキル基またはハロゲン原子によって置換されていてよい。連鎖停止剤として、脂肪族C〜C22モノアシルクロリドを使用することもできる。
連鎖停止剤の量は、それぞれの場合において、フェノール連鎖停止剤の場合はジフェノールのモル量に基づいて、モノアシルクロリド連鎖停止剤の場合はジアシルジクロリドのモル量に基づいて、0.1〜10mol%である。
芳香族ポリエステルカーボネートの調製には、1種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸を使用することもできる。
芳香族ポリエステルカーボネートは、直鎖であるか、または既知のタイプの分岐を有してよい(これについては、DE−A 2 940 024およびDE−A 3 007 934を参照)。本発明では、直鎖ポリエステルカーボネートが好ましい。
使用できる分岐剤の例は、三以上の官能価を有するアシルクロリド、例えば、トリメソイルトリクロリド、シアヌロイルトリクロリド、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボニルテトラクロリド、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボニルテトラクロリドまたはピロメリトイルテトラクロリド(使用されるジアシルジクロリドに基づいて0.01〜1.0mol%の量)、或いは三官能性または多官能性フェノール、例えば、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ(4−[4−ヒドロキシフェニルイソプロピル]フェノキシ)メタン、1,4−ビス[4,4’−ジヒドロキシトリフェニル)メチル]ベンゼン(使用されるジフェノールに基づいて0.01〜1.0mol%の量)である。フェノール分岐剤は、ジフェノールを伴った初期導入物として使用することができ、アシルクロリド分岐剤は、アシルジクロリドと一緒に導入することができる。
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネートにおけるカーボネート構成単位の割合は、所望通りに変えることができる。カーボネート基の割合は、エステル基およびカーボネート基の全てに基づいて、好ましくは100mol%まで、特に80mol%まで、特に好ましくは50mol%までである。芳香族ポリエステルカーボネートのエステル画分、およびそのカーボネート画分は、重縮合物においてブロック状であるかまたはランダム分布を有し得る。
熱可塑性芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは、単独でまたは所望の混合物として使用することができる。
成分B)
本発明の組成物は、成分B)として、エマルション、バルク、溶液または懸濁重合法によって調製されたグラフトポリマーを含む。
成分B)として適したグラフトポリマーは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムの総含量100ppm未満、より好ましくは総含量50ppm未満、特に好ましくは総含量20ppm未満を有する。
リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムの含量は、内部標準を用いた誘導結合プラズマ発光分析(ICP−OES)によって測定される。このために、試料を、200℃および200barでマイクロ波加熱炉において濃硝酸中で分解し、1M硝酸に希釈し、測定する。
本発明の組成物では、成分B)として、バルクまたは溶液重合法によって調製されたグラフトポリマーを使用することが好ましい。
好ましい態様では、グラフトポリマーは、
B1)成分B)に基づいて5〜95重量%、好ましくは80〜93重量%、より好ましくは83〜92重量%、特に好ましくは85〜91重量%の、
B1.1)混合物B1)に基づいて65〜85重量%、好ましくは70〜80重量%の、ビニル芳香族化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン)、環置換ビニル芳香族化合物(例えば、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)およびC〜Cアルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーと、
B1.2)混合物B1)に基づいて15〜35重量%、好ましくは20〜30重量%の、シアン化ビニル(例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルのような不飽和ニトリル)、C〜Cアルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート)および不飽和カルボン酸誘導体(例えば、無水物およびイミド、例えば、無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマー
との混合物、および
B2)成分B)に基づいて95〜5重量%、好ましくは20〜7重量%、より好ましくは17〜8重量%、特に好ましくは15〜9重量%の少なくとも1種のグラフト基剤
のグラフトポリマーを含む。
グラフト基剤のガラス転移温度は、好ましくは0℃未満、より好ましくは−50℃未満、特に好ましくは−70℃未満である。
本発明では特に記載のない限り、ガラス転移温度は、10K/分の加熱速度でDIN EN 61006に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定する。Tgは中間温度として定義され(接線法)、窒素を不活性ガスとして使用する。
成分B)におけるグラフト粒子の粒径中央値(d50値)は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.2〜2μm、特に好ましくは0.3〜1.0μm、とりわけ好ましくは0.4〜0.8μmである。
粒径中央値d50は、粒子の50重量%がd50より大きい粒径を有し、粒子の50重量%がd50より小さい粒径を有する直径である。本発明では特に記載のない限り、粒径中央値は、超遠心分離測定によって測定する(W. Scholtan, H. Lange, Kolloid, Z. und Z. Polymere 250 (1972), 782-796)。
好ましいモノマーB1.1)は、モノマーのスチレン、α−メチルスチレンおよびメチルメタクリレートの少なくとも1つから選択され、好ましいモノマーB1.2)は、モノマーのアクリロニトリル、無水マレイン酸およびメチルメタクリレートの少なくとも1つから選択される。
特に好ましいモノマーは、B1.1)についてはスチレン、B1.2)についてはアクリロニトリルである。
好ましいグラフト基剤B2)は、ジエンゴム(例えばブタジエンまたはイソプレンに基づくもの)、ジエン−ビニルブロックコポリマーゴム(例えば、ブタジエンブロックおよびスチレンブロックに基づくもの)、ジエンゴムと他の共重合性モノマー(例えばB1.1およびB1.2として記載のもの)とのコポリマー、および前記ゴムの混合物である。グラフト基剤B2)としては、純ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンブロックコポリマーゴム、およびスチレン−ブタジエンブロックコポリマーゴムと純ポリブタジエンゴムとの混合物が特に好ましい。
グラフトポリマーB)のゲル含量は、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜30重量%、特に好ましくは17〜25重量%である(アセトン中で測定)。
本発明では特に記載のない限り、グラフトポリマーのゲル含量は、25℃で溶媒としてのアセトンに溶解しない画分として測定される(M. Hoffmann, H. Kroemer, R. Kuhn, Polymeranalytik I und II, Georg Thieme-Verlag, Stuttgart 1977)。
更に好ましいポリマーB)は、例えばラジカル重合によって調製されたABSポリマーであり、好ましい態様では、それぞれの場合にグラフトポリマーB)に基づいて、10重量%まで、好ましくは5重量%まで、特に好ましくは2〜5重量%のn−ブチルアクリレートを含んでなるABSポリマーである。
調製方法の結果として、グラフトポリマーB)は一般に、B1.1)およびB1.2)の遊離コポリマー、即ちゴム基剤と化学的に結合していないコポリマーを含む。この特徴は、そのようなコポリマーが適当な溶媒(例えばアセトン)に溶解することである。
成分B)が、好ましくは50,000〜200,000g/mol、特に好ましくは70,000〜180,000g/mol、とりわけ好ましくは100,000〜170,000g/molの重量平均分子量(M、標準としてポリスチレンを用いてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定)を有する、遊離コポリマーB1.1およびB1.2を含んでなることが好ましい。
成分C)
成分C)は、1種以上の熱可塑性ビニル(コ)ポリマーC)を含んでなる。
ビニル(コ)ポリマーC)として適当なポリマーは、ビニル芳香族化合物、シアン化ビニル(不飽和ニトリル)、C〜Cアルキル(メタ)アクリレート、不飽和カルボン酸、および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)からなる群からの少なくとも1種のモノマーのポリマーである。特に適当な物質は、
C.1)50〜99重量部、好ましくは70〜80重量部のビニル芳香族化合物および/または環置換ビニル芳香族化合物、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、および/またはC〜Cアルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートと、
C.2)1〜50重量部、好ましくは20〜30重量部のシアン化ビニル(不飽和ニトリル)、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル、および/またはC〜Cアルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸、例えばマレイン酸、および/または不飽和カルボン酸の誘導体、例えば無水物およびイミド、例えば無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド
との(コ)ポリマーである。
ビニル(コ)ポリマーC)は、樹脂様であり、熱可塑性であり、ゴム不含有である。スチレン(C.1)とアクリロニトリル(C.2)とのコポリマーが特に好ましい。
C)の(コ)ポリマーは既知であり、ラジカル重合によって、特に、エマルション重合、懸濁重合、溶液重合またはバルク重合によって、好ましくは溶液重合またはバルク重合によって調製することができる。(コ)ポリマーの平均分子量M(光散乱法または沈殿法により測定された重量平均分子量)は、好ましくは15,000〜200,000g/mol、特に好ましくは80,000〜150,000g/molである。
成分D)
組成物は、成分D)として、少なくとも1種の市販ポリマー添加剤を、場合により更に含むことができる。
使用できる成分D)の市販ポリマー添加剤は、難燃剤(例えば、リン化合物またはハロゲン化合物)、難燃相乗剤(例えばナノスケール金属酸化物)、煙抑制剤(例えば、ホウ酸またはホウ酸塩)、滴下防止剤(例えば、フッ素化ポリオレフィン類、シリコーン類またはアラミド繊維類の化合物)、内部および外部の滑剤および離型剤(例えば、ペンタエリスリトールテトラステアレート、モンタン蝋またはポリエチレンワックス)、流動助剤(例えば低分子量ビニル(コ)ポリマー)、帯電防止剤(例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマー、他のポリエーテルまたはポリヒドロキシエーテル、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミドまたはスルホン酸塩)、導電性添加剤(例えば、導電性カーボンブラックまたはカーボンナノチューブ)、安定剤(例えば、紫外線/光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、エステル交換抑制剤、加水分解安定剤)、抗菌剤(例えば、銀または銀塩)、耐引掻性向上剤(例えば、シリコーン油、或いは(中空)セラミック球または石英粉末のような硬質充填材)、赤外線吸収剤、光学的光沢剤、蛍光剤、充填剤および強化用材料(例えば、タルク、ガラスファイバー粉末またはカーボンファイバー粉末、(中空)ガラス球または(中空)セラミック球、マイカ、カオリン、CaCOおよびガラスフレーク)、酸、染料および顔料(例えば、カーボンブラック、二酸化チタンまたは酸化鉄)、或いは複数の前記添加剤の混合物のような添加剤である。
本発明の組成物は特に、成分D)として、難燃剤を含むこともでき、その例は、それぞれのハロゲン化有機化合物またはリン含有難燃剤である。後者を使用することが好ましい。
本発明のためのリン含有難燃剤は、好ましくは、モノマーおよびオリゴマーのリン酸エステルおよびホスホン酸エステル、ホスホネートアミンおよびホスファゼンからなる群から選択され、本発明では、難燃剤として、これらの化合物類の1つまたは幾つかから選択された複数の成分の混合物を使用することもできる。ここに明記していない他のハロゲン不含有リン化合物も、単独で、または他のハロゲン不含有リン化合物との所望の混合物として使用することができる。
好ましいモノマーおよびオリゴマーのリン酸エステルおよびホスホン酸エステルは、一般式(IV):
Figure 0006396287
[式中、R、R、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、場合によりハロゲン化されていてよいC〜Cアルキル、それぞれ場合によりアルキル置換されていてよい、好ましくはC〜Cアルキル置換されていてよい、および/またはハロゲン置換されていてよい、好ましくは塩素または臭素置換されていてよい、C〜Cシクロアルキル、C〜C20アリールまたはC〜C12アラルキルであり、
nは、互いに独立して0または1であり、
qは、0〜30であり、
Xは、OH置換基を有してよく8個までのエーテル結合を有してよい、6〜30個の炭素原子を有する単核または多核芳香族基或いは2〜30個の炭素原子を有する直鎖または分岐脂肪族基である]
で示されるリン化合物である。
好ましくは、R、R、RおよびRは、互いに独立して、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチルまたはフェニルC〜Cアルキルである。芳香族基であるR、R、RおよびRは、ハロゲン基および/またはアルキル基による、好ましくは塩素、臭素および/またはC〜Cアルキルによる置換基を有してよい。特に好ましいアリール基は、クレシル、フェニル、キシレニル、プロピルフェニルまたはブチルフェニル、およびそれらの対応する臭素化および塩素化誘導体である。
式(IV)におけるXは、好ましくは、6〜30個の炭素原子を有する単核または多核芳香族基である。これは、好ましくは、式(I)で示されるジフェノールから誘導されたものである。
式(IV)におけるnは、互いに独立して0または1であってよく、nは好ましくは1である。
qは、0〜30の値である。式(IV)で示される様々な化合物の混合物を使用する場合、0.3〜10、特に0.5〜10、とりわけ1.05〜1.4の平均q値を有する混合物を使用することが好ましい。
Xは、特に好ましくは、
Figure 0006396287
或いはそれらの塩素化または臭素化誘導体であり、特に、Xは、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールAまたはジフェニルフェノールから誘導されたものである。特に好ましいものは、ビスフェノールAから誘導されたXである。
ビスフェノールAから誘導された式(IV)で示されるオリゴマーリン酸エステルを使用することが特に好ましい。
好ましい1つの態様では、使用される添加剤は、立体障害フェノールおよび亜リン酸塩またはそれらの混合物であり、使用される他の添加剤は、離型剤および顔料、好ましくはカーボンブラックまたは二酸化チタンである。
特に好ましい成形用組成物は、成分D)として、0.1〜1.5重量部、好ましくは0.2〜1.0重量部、特に好ましくは0.3〜1.8重量部の離型剤、特に好ましくはペンタエリスリトールテトラステアレートを、任意の他の添加剤と共に含んでなる。
特に好ましい成形用組成物は、成分D)として、0.01〜0.5重量部、好ましくは0.3〜0.4重量部、特に好ましくは0.06〜0.3重量部の少なくとも1種の安定剤、例えば、立体障害フェノール、亜リン酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の安定剤、特に好ましくはIrganox(登録商標)B900を、任意の他の添加剤と共に含んでなる。
特に好ましい難燃性組成物は、成分D)として、0.05〜5.0重量部、好ましくは0.1〜2.0重量部、特に好ましくは0.3〜1.0重量部のフッ素化ポリオレフィンを、任意の他の添加剤と共に含んでなる。
成分D)として、PTFE、ペンタエリスリトールテトラステアレートおよびIrganox B900とリンベース難燃剤との組み合わせを使用することが特に好ましい。
成分A)〜C)および任意に他の添加剤D)を含んでなる本発明の成形用組成物は、各成分を既知の方法で混合し、一般的な装置、例えば、密閉式混合機、押出機および二軸押出機において200℃〜330℃の温度で各成分を溶融混合または溶融押出することによって製造される。
従って、本発明は、成分A)〜D)を混合した後、一般的に使用される装置において200〜330℃の温度で溶融混合または溶融押出する、成分A)〜D)を含んでなる熱可塑性成形用組成物の製造方法も提供する。
各成分の混合は、逐次または一斉に、特定の場合は約20℃(室温)で、それ以外の場合はより高い温度で、既知の方法により行うことができる。
本発明の成形用組成物は、あらゆるタイプの成形品の製造に使用することができる。特に、成形品は、射出成形によって製造することができる。製造できる成形品の例は、あらゆるタイプのハウジング部品、例えば、TVデバイスおよびHiFiデバイスのような家庭用デバイス、コーヒーメーカー、ミキサー、モニターまたはプリンターのような事務機器のためのハウジング部品、或いは建設分野向け保護被覆シート、および自動車分野向け部品である。本発明の成形用組成物はまた、非常に良好な電気特性を有するので、電気工学分野においても使用される。
実施例
成分A−1
界面法によって調製され、27,000g/molの重量平均分子量M(標準としてポリカーボネートを用いてジクロロメタン中でGPCにより測定)、150ppmのOH末端基含量、および3ppmの調製方法由来遊離ビスフェノールA含量を有するビスフェノールAベース直鎖ポリカーボネート。
成分A−2
溶融法によって調製され、27,000g/molの重量平均分子量M(標準としてポリカーボネートを用いてジクロロメタン中でGPCにより測定)、480ppmのOH末端基含量、および32ppmの調製方法由来遊離ビスフェノールA含量を有するビスフェノールAベース直鎖ポリカーボネート。
成分A−3
成分A−1に基づいて29ppmの追加遊離ビスフェノールAを混合した成分A−1。従って、成分A−3は、合計32ppmの遊離ビスフェノールAを含んでおり、成分A−1と同じOH末端基含量を有していた。
成分A−4
成分A−1に基づいて114ppmの追加遊離ビスフェノールAを混合した成分A−1。従って、成分A−4は、合計117ppmの遊離ビスフェノールAを含んでおり、成分A−1と同じOH末端基含量を有していた。
成分B−1
24:11:65重量%のA:B:S比を有し、バルク重合法によって調製されたABS型グラフトポリマー。超遠心分離によって測定したグラフト粒径のD50値は、0.8μmであった。グラフトポリマーのグラフト基剤は、純ポリブタジエンゴムであった。アセトン中で測定されたグラフトポリマーのゲル含量は、22重量%であった。遊離状態、即ちゴムに化学的に結合していない状態で、またはアセトン不溶性ゴム粒子中にそれぞれ含まれているSANの重量平均分子量M(20℃、ジメチルホルムアミド中で、標準としてポリスチレンを用いてGPCにより測定)は、150kg/molであった。ICP−OESによって測定した、このグラフトポリマー中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属含量は、Li<2ppm、Na<2ppm、K<2ppm、Mg<1ppmおよびCa:4ppmであった。
成分B−2
ABSポリマーに基づいて50重量%の粒子状架橋ポリブタジエンゴム(粒径中央値d50=0.25μm)の存在下でABSグラフトポリマーに基づいて50重量%の混合物(23重量%のアクリロニトリルと77重量%のスチレンとの混合物)をエマルション重合することによって調製され、コア−シェル構造を有する、ABSグラフトポリマー50重量%と、バルク重合法によって調製され、130,000g/molの重量平均分子量M(標準としてポリスチレンを用いてGPCにより測定)を有する、スチレン77重量%およびアクリロニトリル23重量%のコポリマー50重量%とから調製された予備組成物。ICP−OESによって測定した、このグラフトポリマー中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属含量は、Li<2ppm、Na:18ppm、K:65ppm、Mg:340ppmおよびCa:8ppmであった(ここで、「<x」とは、分析法のそれぞれの検出限界値に関して、元素を検出できなかったことを意味する)。
成分C−1
滑剤/離型剤としてのペンタエリスリトールテトラステアレート。
成分C−2
熱安定剤:Irganox(登録商標)B900(80%のIrgafos(登録商標)168と20%のIrganox(登録商標)1076の混合物、BASF AG、ルートヴィヒスハーフェン)/Irgafos(登録商標)168(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)/Irganox(登録商標)1076(2,6−ジ−tert−ブチル−4−(オクタデカノキシカルボニルエチル)フェノール)。
成形用組成物の製造および試験
表1に記載した出発材料を、260℃、285℃および310℃の溶融温度(押出機ダイにおいて温度センサーで測定)で、二軸押出機(ZSK-25、Coperion, Werner and Pfleiderer)において配合し、水浴で冷却後、ペレット化した。異なった溶融温度は、軸回転速度および押出量を変えることにより、配合中に投入される比エネルギーを変えることによって確立した。完成ペレットは、射出成形機(Arburg)において260℃、280℃および320℃の溶融温度並びにそれぞれの場合に80℃の型温で加工して、適当な試験試料を作製した。下記方法を用いて、成形用組成物の特性を測定した。
ESC特性は、260℃の溶融温度で射出成形した80mm×10mm×4mm寸法の試験片について、菜種油中、室温および2.4%外繊維ひずみで、ISO 4599に従って測定した。
調製した組成物のポリカーボネート分子量低下に関する加工安定性は、空気を排除して300℃の温度に15分間溶融物を曝した際に5kgのプランジャー荷重を用いて260℃でISO 1133に従って測定したMVRのパーセント変化によって評価した。得られたΔMVR(proc.)値は、下記式:
Figure 0006396287
に従って計算した。
光沢は、高光沢研磨面を有する型を使用してそれぞれ280℃および320℃の溶融温度で射出成形によって作製した60mm×40mm×2mm寸法の試験片について、DIN 67530に従って60°の測定角度での反射により測定した。光沢の加工安定性の尺度は、射出成形過程の加工温度を280℃から320℃に上げたときの光沢低下割合(%)によってもたらされた。
遊離ビスフェノールA含量は、285℃および310℃の溶融温度(押出機ダイにおいて温度センサーを用いて測定)で配合した成形用組成物のペレットについて測定した。
下記実施例により、本発明を更に説明する。
Figure 0006396287
表1の本発明の実施例1〜3および比較例CE1〜CE3から、所望の特性プロフィルは、一方では低OH末端基含量を有するポリカーボネート、他方ではリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウム含量の低いABSグラフトポリマーを含んでなる、本発明の実施例1〜3としての本発明の組成物だけが有することが分かる。
ポリカーボネート成分中の遊離ビスフェノールAの含量がより高いことだけが本発明の実施例1とは異なる本発明の実施例2および3は、加工温度が上昇した際の光沢保持に関する良好な加工安定性は同様に示したが、ポリカーボネート分解に関する加工安定性はより低かった。
低OH末端基含量を有するポリカーボネートと、高含量のリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムを有するABSグラフトポリマーとを含んでなる比較例1は、著しく低いESC挙動と、光沢、ポリカーボネート分解および残留ビスフェノールA含量に関する低い加工安定性とを示した。
高OH末端基含量および比較的高い遊離ビスフェノールA含量を有するポリカーボネートと、低含量のリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムを有するABSグラフトポリマーとを含んでなる比較例2も同様に、著しく低いESC挙動と、光沢、ポリカーボネート分解および残留ビスフェノールA含量に関する低い加工安定性とを示した。
高OH末端基含量および比較的高い遊離ビスフェノールA含量を有するポリカーボネートと、高含量のリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムを有するABSグラフトポリマーとを含んでなる比較例3も同様に、著しく低いESC挙動と、光沢、特にポリカーボネート分解および残留ビスフェノールA含量に関する低い加工安定性とを示した。

Claims (15)

  1. A)40.0〜99.5重量部の、OH末端基含量300ppm未満を有する少なくとも1種の芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネート、
    B)0.5〜60.0重量部の、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムの総含量100ppm未満を有する少なくとも1種のグラフトポリマー、
    C)0.0〜30.0重量部のビニル(コ)ポリマー、
    D)0.0〜40.0重量部の他の一般的なポリマー添加剤
    を、成分A)〜D)の重量部の合計が100重量部となるように含んでなる熱可塑性成形用組成物であって、成分A)は、20ppm未満の遊離ビスフェノールA(BPA)含量を有する、組成物
  2. 成分A)〜D)からなる、請求項1に記載の成形用組成物。
  3. 成分A)を界面法によって調製することを特徴とする、請求項1または2に記載の成形用組成物の製造方法。
  4. 成分B)は、
    B1)成分B)に基づいて80〜93重量%の、
    B1.1)混合物B1)に基づいて70〜80重量%の、ビニル芳香族化合物、環置換ビニル芳香族化合物およびC〜Cアルキルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーと、
    B1.2)混合物B1)に基づいて20〜30重量%の、シアン化ビニル、C〜Cアルキル(メタ)アクリレートおよび不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のモノマー
    との混合物、および
    B2)成分B)に基づいて20〜7重量%の、−50℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1種のグラフト基剤
    のグラフトポリマーであることを特徴とする、請求項1または2に記載の成形用組成物。
  5. 成分B)をバルク重合法または溶液重合法によって調製することを特徴とする、請求項1、2または4のいずれかに記載の成形用組成物の製造方法。
  6. 請求項1、2または4のいずれかに記載の成形用組成物の製造方法であって、成分A)〜D)を混合する工程を含んでなり、芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートを溶融重合法によって調製する工程を含まない、方法。
  7. 請求項1、2もしくは4のいずれかに記載の成形用組成物の製造方法、または請求項3、5もしくは6のいずれかに記載の製造方法であって、成分A)〜D)を混合する工程を含んでなり、グラフトポリマーおよびビニル(コ)ポリマーをエマルション重合法または懸濁重合法によって調製する工程を含まない、方法。
  8. 成分A)のOH末端基含量は200ppm未満であることを特徴とする、請求項1、2または4のいずれかに記載の成形用組成物。
  9. 成分B)は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムの総含量20ppm未満を有することを特徴とする、請求項1、2、4または8のいずれかに記載の成形用組成物。
  10. 成分A)は、10ppm未満の遊離ビスフェノールA含量を有することを特徴とする、請求項1、2、4、8または9のいずれかに記載の成形用組成物。
  11. 配合組成物全体が、0.5ppm超〜20ppm未満の遊離ビスフェノールA含量を有することを特徴とする、請求項1、2、4または8〜10のいずれかに記載の成形用組成物。
  12. A)50.0〜95.0重量部の、OH末端基含量300ppm未満を有する少なくとも1種の芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネート、
    B)4.5〜49.5重量部の、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムの総含量100ppm未満を有する少なくとも1種のグラフトポリマー、
    C)0.0〜20.0重量部のビニル(コ)ポリマー、
    D)0.5〜20.0重量部の他の一般的なポリマー添加剤
    を含んでなる、請求項1、4または8〜11のいずれかに記載の成形用組成物。
  13. A)60.0〜90.0重量部の、OH末端基含量300ppm未満を有する少なくとも1種の芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネート、
    B)6.0〜36.0重量部の、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムの総含量100ppm未満を有する少なくとも1種のグラフトポリマー、
    C)3.0〜15.0重量部のビニル(コ)ポリマー、
    D)1.0〜10.0重量部の他の一般的なポリマー添加剤
    を含んでなる、請求項1、4または8〜12のいずれかに記載の成形用組成物。
  14. 成分A)の重量平均分子量Mが26000〜32000g/molであることを特徴とする、請求項1、2、4または8〜13のいずれかに記載の成形用組成物。
  15. 成分D)として、難燃剤、難燃相乗剤、煙抑制剤、滴下防止剤、内部および外部の滑剤および離型剤、流動助剤、帯電防止剤、導電性添加剤、紫外線安定剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、エステル交換抑制剤、加水分解安定剤、抗菌剤、耐引掻性向上剤、赤外線吸収剤、光学的光沢剤、蛍光剤、充填剤および強化用材料、酸、染料および顔料からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含んでなることを特徴とする、請求項1、2、4または8〜14のいずれかに記載の成形用組成物。
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