JP5707777B2 - ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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Description
しかしながら、従来のポリカーボネート樹脂は、長時間紫外線や可視光に曝露される場所で使用すると、色相や透明性、機械的強度が悪化するため、屋外や照明装置の近傍での使用に制限があった。又、種々成形品として使用する場合、溶融成形時に離型性が悪く、透明材料や光学材料等に用いることが困難であるという問題があった。
ところが、このような紫外線吸収剤を添加した場合、紫外線照射後の色相などの改良は認められるものの、そもそもの樹脂の色相や耐熱性、透明性の悪化を招いたり、成形時に揮発して金型を汚染したりする等の問題があった。
従来のポリカーボネート樹脂に使用されるビスフェノール化合物は、ベンゼン環構造を有するために紫外線吸収が大きく、このことがポリカーボネート樹脂の耐光性悪化を招くため、分子骨格中にベンゼン環構造を持たない脂肪族ジヒドロキシ化合物や脂環式ジヒドロキシ化合物、イソソルビドのように分子内にエーテル結合を持つ環状ジヒドロキシ化合物モノマーユニットを使用すれば、原理的には耐光性が改良されることが期待される。中でも、バイオマス資源から得られるイソソルビドをモノマーとしたポリカーボネート樹脂は、耐熱性や機械的強度が優れていることから、近年数多くの検討がなされるようになってきた(例えば、特許文献1〜7)。
性がよく、成形性、離型性に優れた材料が求められていた。
しかしながら、このような紫外線吸収剤を添加した場合、そもそもの樹脂の色相や耐熱性、耐候試験による透明性の悪化を招くという問題があった。
即ち、本発明の要旨は下記[1]〜[9]に存する。
[1] 構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(a)に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂(A)と、還元粘度が0.50dl/g以上の芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とからなるポリカーボネート樹脂組成物。
[2] 前記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量が、25000以上である、[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[3] 前記構造の一部に式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物である、[1]または[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[5] 前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との混合物100重量部に対して、紫外線吸収剤0.0001重量部以上1重量部以下を更に含む、[1]から[4]のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[6] 前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との混合物100重量部に対して、ヒンダードアミン系光安定剤0.001重量部以上1重量部以下を更に含む、[1]から[5]のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[7] 前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との混合物100重量部に対して、酸化防止剤を0.0001重量部以上1重量部以下含む、[1]から[6]のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[8] 前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との混合物100重量部に対して、離型剤0.0001重量部以上2重量部以下を更に含む、[1]から[7]のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[9] [1]から[8]のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂成形品。
<ポリカーボネート樹脂(A)>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(a)を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルと
を原料として、エステル交換反応により重縮合させて得られる。 すなわち、本発明に用
いるポリカーボネート樹脂(A)は下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(a)に由来する構成単位を少なくとも含む。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(a)に由来する構成単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂(A)を含むもので、当該ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位以外の、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を更に含むポリカーボネート共重合体であっても構わない。また、本発明において、ポリカーボネート樹脂(A)は、1種のみ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用しても構わない。
本発明に係るポリカーボネート樹脂(A)に用いるジヒドロキシ化合物としては、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(a)を含むものであれば特に限定されるものではない。構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(a)として、より具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物および下記式(3)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を有する化合物が挙げられるが、中でも、入手のし易さ、ハンドリング、重合時の反応性、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相の観点から、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のオキシアルキレングリコール類および環状エーテル構造を有する化合物が好ましく、耐熱性の観点からは、
下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、下記式(3)で表される環状エーテル構造を有する化合物が好ましい。
上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール類が挙げられる。
本発明に用いるジヒドロキシ化合物は、還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤、熱安定剤等の安定剤を含んでいても良く、特に酸性下で本発明に用いるジヒドロキシ化合物は変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが好ましい。塩基性安定剤としては、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における1族または2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩、脂肪酸塩や、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等のアミン系化合物が挙げられる。その中でも、その効果と後述する蒸留除去のしやすさから、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、亜リン酸塩が好ましく
、中でもリン酸水素2ナトリウム、亜リン酸水素2ナトリウムが好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、上述した本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。
用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(4)で表されるものが挙げられる。 これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いて
もよい。
前記式(4)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、重合反応を阻害したり、得られるポリカーボネート樹脂の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、上述のように本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と前記式(4)で表される炭酸ジエステルをエステル交換反応させてポリカーボネート樹脂を製造する。より詳細には、エステル交換させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。この場合、通常、エステル交換反応触媒存在下でエステル交換反応により重縮合を行う。
用いられる触媒としては、製造されたポリカーボネート樹脂(A)の耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度のうち、とりわけて耐光性を満足させ得るものであれば、限定されないが、長周期型周期表における1族または2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用される。
また、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の形態としては通常、水酸化物、又は炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられ、中でもリチウム化合物が好ましい。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
り、好ましくは、0.1μmol以上、更に好ましくは0.5μmol以上、特に好ましくは0.7μmol以上とする。また上限としては、好ましくは20μmol、更に好ましくは10μmol、特に好ましくは3μmol、最も好ましくは1.5μmol、中でも1.0μmolが好適である。
また、1族金属、中でもナトリウム、カリウム、セシウムは、特にはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムは、ポリカーボネート樹脂(A)中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性があり、該金属は使用する触媒からのみではなく、原料や反応装置から混入する場合があるため、ポリカーボネート樹脂(A)中のこれらの合計量は、金属量として、通常1重量ppm以下、好ましくは0.8重量ppm以下、より好ましくは0.7重量ppm以下である。
<ポリカーボネート樹脂(A)製造方法>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と前記式(4)の炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合させることによって得られるが、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一に混合することが好ましい。
このモル比率が小さくなると、製造されたポリカーボネート樹脂の末端水酸基が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化し、成形時に着色を招いたり、エステル交換反応の速度が低下したり、所望する高分子量体が得られない可能性がある。
更には、本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物に対して、前記式(4)で表される炭酸ジエステルのモル比率が増大すると、得られるポリカーボネート樹脂(A)中の残存炭酸ジエステル量が増加し、これらが紫外線を吸収してポリカーボネート樹脂の耐光性を悪化させる場合があり、好ましくない。 本発明に用いるポリカーボ
ネート樹脂(A)に残存する炭酸ジエステルの濃度は、好ましくは200重量ppm以下、更に好ましくは100重量ppm以下、特に好ましくは60重量ppm以下、中でも30重量ppm以下が好適である。現実的にポリカーボネート樹脂(A)は未反応の炭酸ジエステルを含むことがあり、濃度の下限値は通常1重量ppmである。
重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させることが好ましいが、各分子量段階でのジャケット温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが色相や耐光性の観点から重要である。例えば、重合反応が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を狂わせ、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりして結果的に本願発明の目的を達成することができない可能性がある。
樹脂の色相や熱安定性、耐光性等を損なわないようにするためには、前述の触媒の種類と量の選定が重要である。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、触媒を用いて、複数の反応器を用いて多段階で重合させて製造することが好ましいが、重合を複数の反応器で実施する理由は、重合反応初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いために、必要な重合速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制してやることが重要であり、重合反応後期においては、平衡を重合側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去させることが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するには、直列に配置された複数の重合反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。
本発明において、反応器が2つ以上であれば、その反応器中で、更に条件の異なる反応段階を複数持たせる、連続的に温度・圧力を変えていくなどしてもよい。
重合反応の温度は、低すぎると生産性の低下や製品への熱履歴の増大を招き、高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、ポリカーボネート樹脂の分解や着色を助長する可能性がある。
下を抑止し、熱履歴による劣化を最小限に抑えるためには、重合の最終段階でプラグフロー性と界面更新性に優れた横型反応器を使用することが好ましい。
副生したモノヒドロキシ化合物は、資源有効活用の観点から、必要に応じ精製を行っ
た後、炭酸ジフェニルやビスフェノールA等の原料として再利用することが好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、上述の通り重縮合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。
状態で一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
押出機中の、溶融混練温度は、ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度や分子量に依存するが、通常150℃〜300℃、好ましくは200℃〜270℃、更に好ましくは230℃〜260℃である。溶融混練温度が150℃より低いと、ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、ポリカーボネートの熱劣化が激しくなり、分子量の低下による機械的強度の低下や着色、ガスの発生を招く。
また、押出されたポリカーボネート樹脂を冷却しチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが望ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10μm〜0.45μmであることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。
更に本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)中の下記式(5)で表される末端基の濃度の下限量は、通常20μeq/g、好ましくは40μeq/g、特に好ましくは50μeq/gであり、上限は通常160μeq/g、好ましくは140μeq/g、特に好ましくは100μeq/gである。
下記式(5)で表される末端基の濃度を制御するには、原料である本発明に用いるジヒ
ドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と前記式(4)で表される炭酸ジエステルのモル比率を制御する他、エステル交換反応時の触媒の種類や量、重合圧力や重合温度を制御する方法等が挙げられる。
また、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、種々の成形を行う前に、必要に応じて、熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤等の添加剤を、タンブラー、スーパーミキサー、フローター、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、押出機などで混合することもできる。
上記ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は75℃以上、105℃以下であることが好ましく、80℃以上、105℃以下であることがより好ましく、85℃以上、105℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移温度がかかる範囲内のポリカーボネート樹脂(A)を用いることで、優れた耐熱性を有する成形品を提供することができる。
本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(B)は、ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位をカーボネート結合で連結したポリカーボネート樹脂であって、構造中に芳香族環を有するものであれば、従前知られる如何なるものも使用することが可能であり、前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むものであっても構わない。好ましくは、ジヒドロキシ化合物に由来する全構成単位中、芳香族環を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が最も多いポリカーボネート樹脂であって、より好ましくはジヒドロキシ化合物に由来する全構成単位に対して芳香族環を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造が50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上のポリカーボネート樹脂が用いられる。ただし、前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むものである場合、ポリカーボネート樹脂(A)とは異なる構造のポリカーボネート樹脂が使用される。
より具体的には、下記式(6)で表される繰返し構造を有するポリカーボネート樹脂である。
リーレン基を表し、Xは単結合または2価基を表す。
置換基を有していても良いアリーレン基としては、アリーレン基であれば特に制限されるものではないが、好ましくは芳香族環が3つ以下のアリーレン基であって、より好ましくはフェニレン基である。Ar1,Ar2が各々独立して有していても良い置換基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、ハロゲン基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基があげられる。これらの置換基の中でも、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であって、特に好ましくはメチル基があげられる。
る。炭素数1〜6の鎖状構造のアルキレン基が有する置換基としては、アリール基が好ましく、特にはフェニル基が好ましい。
4,4’−ビフェノール、2,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジメチル−2,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジ−(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラ−(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル −4,4
’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル等のビフェニル化合物。
ス−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)エタン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[フェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[フェノール]、4,4’−[1,
4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,6−ジメチルフェノール]、
4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,3,6−
トリメチルフェノール]、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、フェノールフタルレイン、4,4'−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]
ビスフェノール、4,4'−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビス[2−メチルフェノール]、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン
、(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビスフェノール化合物。
これらの中で好ましいジヒドロキシ化合物は、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2−ヒドロキシフェニル(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどの、アルキリデン基によりフェノール類が連結されたビスフェノール化合物があげられる。
キシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどの、アルキリデン基の炭素数が6以下のビスフェノール化合物が好ましい。
なお、本発明においては、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)を1種のみを単独、又は2種以上を混合して使用してもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位(a)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、還元粘度が0.50dl/g以上の芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とからなるポリカーボネート樹脂組成物である。但し、下記式(1)で表される部位が−CH2−O−Hの一部である場合を除く。
カーボネート樹脂(B)との含有比率に特に制限は無いが、ポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の重量比率が、1:99から99:1であることが好ましく、より好ましくは5:95から95:5であって、特には10:90から90:10で含有することが好ましい。ポリカーボネート樹脂(A)とも芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とも解されるポリカーボネート樹脂を含有する場合は、当該ポリカーボネート樹脂を任意にポリカーボネート樹脂(A)または芳香族ポリカーボネート樹脂(B)と位置づけて、その比率が上記範囲になるようにすればよい。また、本発明の効果を充分に得るために、ポリカーボネート樹脂(A)および芳香族ポリカーボネート樹脂(B)から選ばれる少なくとも1種のポリカーボネート樹脂が、ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して、20重量部以上であることが好ましく、より好ましくは35重量部以上であって、更に好ましくは50重量部以上であり、特に好ましくは75重量部以上で用いられる。中でも、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いられるポリカーボネート樹脂成分の全量が、ポリカーボネート樹脂(A)および芳香族ポリカーボネート樹脂(B)から選ばれるポリカーボネート樹脂であることが、本発明の効果を得る点で特に好ましいものである。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物及びポリカーボネート樹脂成形品は、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂や、樹脂以外の添加剤を配合することも出来る。
成形加工性や諸物性のさらなる向上・調整を目的として配合する、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂の具体例としては、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等の樹脂やコア−シェル型、グラフト型又は線状のランダム及びブロック共重合体のようなゴム状改質剤などが挙げられる。前記ポリカーボネート樹脂以外の樹脂の配合量としては、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との混合物100重量部に対して、1重量部以上、30重量部以下の割合で配合することが好ましく、3重量部以上、20重量部以下の割合で配合することがより好ましく、5重量部以上、10重量部以下の割合で配合することがさらに好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物及びポリカーボネート樹脂成形品には、成形時における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル) ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレン
ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル) オクチルホスファイト、ビス(ノニル
フェニル) ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチ
ルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物及びポリカーボネート樹脂成形品には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を配合することができる。かかる酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート) 、ペ
ンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の1種又は2種以上が挙げられる。前記酸化防止剤の配合量は、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との混合物100重量部に対して、0.0001重量部以上、1重量部以下の割合で配合することが好ましく、0.0005重量部以上、0.5重量部以下の割合で配合することがより好ましく、0.001重量部以上、0.2重量部以下の割合で配合することがさらに好ましい。かかる範囲で酸化防止剤を配合することにより、成形体表面への酸化防止剤のブリード、各種成形品の機械特性低下を生じることなく、樹脂の酸化劣化を防止することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物及びポリカーボネート樹脂成形品の耐候性をさらに向上する目的で、紫外線吸収剤を配合することができる。かかる紫外線吸収剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル) ベンゾトリア
ゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。紫外線吸収剤の融点としては、特に120〜250℃の範囲にあるものが好ましい。融点が120℃ 以上の紫外線吸収剤を使用すると、成形品表面のガスに
よる曇りが減少し改善される。具体的には、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2 '−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル) −5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−(3",4",
5",6"−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5'−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベ
ンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフ
ェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が使用され、これ
らのうちでも、特に、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリア
ゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル) −6−(
2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールが好ましい。これらの紫外線吸収剤、
1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 前記紫外線吸収剤の配合量は
、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との混合物100重量部に対して、0.0001重量部以上、1重量部以下の割合で配合することが好ましく、0.0005重量部以上、0.5重量部以下の割合で配合することがより好ましく、0.001重量部以上、0.2重量部以下の割合で配合することがさらに好ましい。かかる範囲で紫外線吸収剤成形品表面への紫外線吸収剤のブリード、各種成形品の機械特性低下を生じることなく、樹脂組成物及び成形品の耐候性を向上することができる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物及びポリカーボネート樹脂成形品の耐候性をさらに向上する目的で、ヒンダードアミン系光安定剤を配合することができる。かかるヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−
トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、N
,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアミノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6)−テトラメチル−4−ピペリジル−1、6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物等が挙げられる。なかでもビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートが好ましい。
部以下の割合で配合することが特に好ましい。かかる範囲でヒンダードアミン系光安定剤を配合することにより、ポリカーボネート樹脂組成物表面へのヒンダードアミン系光安定剤のブリード、各種成形品の機械特性低下を生じることなく、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品の耐候性を向上することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるために、更に離型剤を含有していることが好ましい。離型剤としては、高級脂肪酸、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、蜜蝋等の天然動物系ワックス、カルナバワックス等の天然植物系ワックス、パラフィンワックス等の天然石油系ワックス、モンタンワックス等の天然石炭系ワックス、オレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等が挙げられ、高級脂肪酸、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステルが特に好ましい。
本実施の形態では、上述したポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂成形品が得られる。ポリカーボネート樹脂成形品の成形方法は特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)及び、必要に応じ
てその他の樹脂や添加剤等の原料を直接混合し、押出機或いは射出成形機に投入して成形するか、または、前記原料を、二軸押出機を用いて溶融混合し、ストランド形状に押出してペレットを作製した後、このペレットを押出機或いは射出成形機に投入して成形する方法を挙げることができる。また、本発明のポリカーボネート樹脂成形品は、耐光性、透
明性に優れているため、道路遮音壁、アーケード天井シート、アーケード天井プレート、施設屋根、施設壁材等に使用することができる。
以下において、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物、成形品等の物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
ポリカーボネート樹脂組成物のサンプルを、溶媒として塩化メチレンを用いて溶解し、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間t0と溶液の通過時間tから次式より相対粘度ηrelを求め、
ηrel=t/t0
相対粘度から次式より比粘度ηspを求めた。
ηsp=(η−η0)/η0=ηrel−1
比粘度を濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
JIS K7105に準拠し、ヘイズメーター(日本電色工業社製NDH2000)を使用し、D65光源にて射出成形片の全光線透過率を測定した。
ISO527に準拠し、引張試験を行い、破壊呼びひずみを測定した。
(4)荷重たわみ温度
ISO75に準拠し、荷重1.80MPaでの荷重たわみ温度を測定した。
<ポリカーボネート樹脂(A)>
PC1:
イソソルビドに由来する構成単位/1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位=40/60モル%、還元粘度 0.63dl/g
PC2:
イソソルビドに由来する構成単位/1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位=70/30モル%、還元粘度 0.51dl/g
PC3:
三菱エンジニアリングプラスチックス社製ノバレックスM7027BF、
還元粘度 0.56dl/g
PC4:
三菱エンジニアリングプラスチックス社製ノバレックス7022J、
還元粘度 0.47dl/g
PC1、及び、PC3を質量比80:20の割合でドライブレンドした後、日本製鋼所社製2軸押出機(TEX30HSS−32)を用いて、樹脂温度250℃で押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化した。ペレットを、窒素雰囲気下、80℃で10時間乾燥した後に、射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、樹脂温度250℃、金型温度60℃、成形サイクル40秒間の条件で、射出成形板(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)および物性測定用ISO試験片を成形した。
得られたサンプルについて、全光線透過率、引張試験および荷重たわみ温度の測定を行なった。結果を表1に示す。
PC1、及び、PC3を混合質量比60:40の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製、評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例3)
PC1、及び、PC3を混合質量比40:60の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製、評価を行なった。結果を表1に示す。
PC2、及び、PC3を混合質量比60:40の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製、評価を行なった。結果を表1に示す。
(比較例1)
PC1、及び、PC4を混合質量比60:40の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製、評価を行なった。結果を表1に示す。
PC1のみを、窒素雰囲気下、70℃で6時間乾燥した後に、成形した以外は実施例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
(比較例3)
PC2のみを、窒素雰囲気下、80℃で6時間乾燥した後に、成形した以外は実施例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
するものであって、機械的強度に優れるものである。また、実施例1から実施例3のポリカーボネート樹脂組成物においては、同時に60%以上の高い全光線透過率を有するものである。
Claims (3)
- 下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物(a)に由来する構成単位および分子構造内に芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂(A)と、
粘度平均分子量が、25000以上である芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とからなり、
ポリカーボネート樹脂(A)が、ジヒドロキシ化合物に由来する全構成単位中、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物(a)に由来する構成単位を、ジヒドロキシ化合物に由来する全構成単位に対して、10モル%以上、90モル%以下含み、
ポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度が0.30dL/g以上1.20dL/g以下であり、
ポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の重量比率が、10:90から90:10であるポリカーボネート樹脂組成物。
- ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、窒素雰囲気下、80℃で10時間乾燥した後に、射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、樹脂温度250℃、金型温度60℃、成形サイクル40秒間の条件で、射出成形した成形体(厚さ3mm)の全光線透過率が60%以上である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物
- 請求項1または請求項2に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂成形品。
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