JP5664396B2 - ポリカーボネート樹脂組成物からなるシールド部材 - Google Patents

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Description

本発明は、特定部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂(A)と、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とを含有する樹脂組成物からなる、表面硬度が高く、耐熱性に優れ、しかも耐候性にも優れるシールド部材に関するものである。
ビスフェノールAがカーボネート結合により連結されたタイプの一般的なポリカーボネート樹脂や、アクリル樹脂などのプラスチックは、可視光領域での光透過率が高く、比重が軽く、収縮率が低く精密な形状付与溶融加工も容易であることから、透明性が要求される部材の用途に使用されている。例えば、照明器具の部材、レンズ部材、各種表示用の窓部材、バイクのウインドシールド部材、ヘルメットの前面シールド部材、護身用の盾など、様々な箇所で使用されているが、いずれも透明性はもちろんのこと、機械的強度、耐候性(耐光変色性)、耐熱性が要求される場合があり、特に耐熱性や耐衝撃性が要求されるような部材においては、ポリカーボネート樹脂が使用されている。
なかでも、バイクのウインドシールド、ヘルメットの前面シールド、危険作業で作業者を守る保護板、護身用の盾などで使用されるシールド部材では、対面からの物体や熱を遮断する必要があるため、耐熱性や耐擦傷性に加えて、屋外で使用する場合には耐候性も必要であって、更に物体が衝突しても壊れないことも重要な要素であり、紫外線(UV)抵抗性および高い表面硬度、良好な引張り強さ、高い光学的透明性および良好な耐衝撃強さをもっていることが望ましい。ポリアクリル樹脂は、紫外線による変色性が少なく、表面硬度が高く、良好な透明性を有しているが、耐衝撃性などの機械的強度がやや劣り、着火源などがあると自消性ではないため燃えてしまうという問題がある。
一方、一般的なポリカーボネート樹脂は機械的強度が優れている一方で、紫外線による変色性が大きく、表面硬度が低いという問題がある。紫外線変色性が大きいため、紫外線吸収剤を大量に配合しなければならず、このような大量配合は、成形時のガスの発生が大きくなり、精密な金型表面の転写が困難になったり、成形品表面に曇りが発生しやすくなったりする。また、シールド部材には対面からの飛翔物などが衝突したりする虞が大きいが、表面硬度が低いと、表面に傷がついたり削られたりするため、透明性の低下や機械的強度の低下を引き起こし、製品としての外観を損なうなどの問題があり、表面硬度、耐光変色性も本用途においては重要な特性である。表面硬度を高めるという課題には、ハードコート膜を付与するという解決手段も存在する。
英国特許第1079686号明細書 特開昭56−55425号公報 国際公開第04/111106号パンフレット 特開2008−024919公報 特表2006−518803公報
上記のように、シールド部材には、機能性のみならず意匠性の観点からも 可視光透明性が高く、表面硬度、耐擦傷性、耐衝撃性などの機械的強度が高く、光や水などの影響を
受けても変色や濁りやひびや割れを起こさない高い耐候性を有し、更に耐熱性が要求される場合があるが、従来のシールド部材に使用されているポリアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂では、耐衝撃性が劣っていたり、耐候性改善のために種々の添加剤を使用したり、耐擦傷性改善のためにハードコート膜を施したりする必要があった。また、それらの対策をしても、未だ充分な耐候性や耐擦傷性や耐衝撃性を有するものではなかった。
従来のシールド部材に現在広く使用されているポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂は、該用途向け特性の上で、機械的強度、耐熱性、耐候性のいずれかの点で何らかの問題を抱えており、それらがバランスよく好適な性能を有する材料からなるシールド部材が望まれていた。本発明は、可視光透明性が高く、表面硬度、耐擦傷性、耐衝撃性などの機械的強度、耐熱性、耐候性がバランスよく優れた、シールド部材を提供する目的でなされたものである。
上記課題に鑑み、本発明者らは、特定の構造部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂(A)と、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とを含むポリカーボネート樹脂組成物が、表面硬度が高く、耐衝撃性が優れており、更に耐候劣化が少なく、しかも耐熱性が高いという、シールド部材に重要な特性においてバランスよく良好であることを見出し、本願発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は下記[1]〜[8]に存する。
[1]
構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂(A)と、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とを含むポリカーボネート樹脂組成物からなるシールド部材。
Figure 0005664396
(但し、式(1)で表される部位が−CH−O−Hを構成する部位である場合を除く。)
[2]
前記ポリカーボネート樹脂組成物が、リチウム及び長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む化合物を、金属量としてポリカーボネート樹脂組成物に対して20重量ppm以下で含む、[1]に記載のシールド部材。
[3]
前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、環構造を有するジヒドロキシ化合物である、[1]または[2]に記載のシールド部材。
[4]
前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物である、[1]から[3]のいずれか1つに記載のシールド部材。
Figure 0005664396
[5]
前記ポリカーボネート樹脂(A)がポリカーボネート共重合体である、[1]から[4]のいずれか1つに記載のシールド部材。
[6]
前記ポリカーボネート共重合体に含まれる前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の、全構成単位に対する比率が50モル%未満である、[5]に記載のシールド部材。
[7]
前記ポリカーボネート共重合体に含まれるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物である、[5]または[6]に記載のシールド部材。
ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂は、耐擦傷性、耐候変色性、耐熱性、耐衝撃性などの特性において一長一短があり、さらには環境・石油資源保全において問題を有しているが、本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなるシールド部材は、良好な環境・石油資源保全性を有し、表面高度が高く傷がつきにくく、耐候劣化による濁りやひび割れなどを起こし難く、耐光変色性が小さく、高いガラス転移温度と耐衝撃強度のバランスが良好なので、バイクのウインドシールド、ヘルメットの前面シールド、危険作業で作業者を守る保護板、護身用の盾などの、さまざまなシールド部材に使用可能である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
本発明のシールド部材は、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂(A)と、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とを含むポリカーボネート樹脂組成物からなるものである。但し、式(1)で表される部位が−CH−O−Hを構成する部位である場合を除く。
Figure 0005664396
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A)および芳香族ポリカーボネート樹脂(B)は、ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位をカーボネート結合で連結する繰返し構造を有するものであり、ポリカーボネート樹脂(A)は、当該ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位として、少なくとも式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有するものであって、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)は、当該ジヒド
ロキシ化合物に由来する構成単位として、少なくとも芳香族環を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有するものである。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A)は、その製造方法に特に制限は無いが、通状、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得られる。
<ポリカーボネート樹脂(A)>
本発明のシールド部材は、式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂(A)を含むポリカーボネート樹脂組成物を用いるもので、当該ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位としては、式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位のみを用いてもよいし、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネート共重合体であっても構わない。また、本発明において、ポリカーボネート樹脂(A)は、1種のみ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用しても構わない。
ここで、ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の一部を、芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位に置き換えた場合、当該ポリカーボネート樹脂(A)は、後述する芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とも解することが可能となるが、本発明において1種類のポリカーボネートが、ポリカーボネート樹脂(A)および芳香族ポリカーボネート樹脂(B)を兼ねることはなく、仮にポリカーボネート樹脂(A)が芳香族構造を有する場合には、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、当該ポリカーボネート樹脂(A)の他に、他種類のポリカーボネート樹脂(A)および芳香族ポリカーボネート樹脂(B)から選ばれる少なくとも1種のポリカーボネートを含むものとなる。
(ジヒドロキシ化合物)
本発明に係るポリカーボネート樹脂(A)の有する構成単位の由来となる、式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物としては、構造の一部に上記式(1)で表される部位を有するものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類や、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等の側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物や、下記式(2)、(3)および(6)で表される分子内に環状エーテル構造を有する化合物が挙げられる。
以上の中でも、入手のし易さ、ハンドリングのしやすさ、重合時の反応性の高さ、得られるポリカーボネート樹脂(A)およびそれを用いたポリカーボネート樹脂組成物の色相をより良好なものにするなどの観点から、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類、または分子内に環状エーテル構造を有する化合物が好ましい。これらのなかでも分子内に環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物が、より好ましい。分子内に環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物では、環状構
造が単環であっても多環であってもよいが、なかでも環状構造を複数有するものが好ましく、更には環状構造を2つ有するものが好ましく、特にはそれら2つの環状構造が同じものであることが好ましい。また、耐熱性の観点からは、分子内に環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物のなかでも、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコールが好ましい。
これらは得られるポリカーボネート樹脂組成物の要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 0005664396
Figure 0005664396
Figure 0005664396
上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのジヒドロキシ化合物のうち、芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物を用いることがポリカーボネート樹脂組成物の耐候性の観点から好ましく、中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、耐候性、耐擦傷性、成形性、耐熱性、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の構成単位の由来となるジヒドロキシ化合物は、還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤、熱安定剤等の安定剤を含んでいてもよく、特に酸性下で分子内に環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物は変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが好ましい。塩基性安定剤としては、長
周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)
における1族または2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩、脂肪酸塩や、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等のアミン系化合物が挙げられる。その中でも、その効果と後述する蒸留除去のしやすさから、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、亜リン酸塩が好ましく、中でもリン酸水素2ナトリウム、亜リン酸水素2ナトリウムが好ましい。
これら塩基性安定剤の、分子内に環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物中の含有量に特に制限はないが、少なすぎると分子内に環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物の変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎると分子内に環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物の変性を招く場合があるので、通常、分子内に環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物に対して、0.0001重量%〜1重量%、好ましくは0.001重量%〜0.1重量%である。
また、これら塩基性安定剤を含有した分子内に環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物をポリカーボネート樹脂の製造原料として用いると、塩基性安定剤自体が重合触媒となり、重合速度や品質の制御が困難になるだけでなく、初期色相の悪化を招き、結果的に成形品の耐候性を悪化させるため、ポリカーボネート樹脂の製造原料として使用する前に、該塩基性安定剤をイオン交換樹脂や蒸留等で除去することが好ましい。
本発明に係るポリカーボネート樹脂(A)の含むジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を構成するジヒドロキシ化合物が、環状エーテル構造を有する場合には、酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管や、製造時には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤等を用いたり、窒素雰囲気下で取り扱ったりすることが肝要である。例えばイソソルビドが酸化されると、蟻酸等の分解物が発生する場合がある。そして、これら分解物を含むイソソルビドをポリカーボネート樹脂の製造原料として使用すると、得られるポリカーボネート樹脂の着色を招く可能性があり、又、物性を著しく劣化させる可能性があるだけではなく、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られない場合もあり、好ましくない。
上記酸化分解物を含まないジヒドロキシ化合物を得るために、また、前述の塩基性安定剤を除去するためには、蒸留精製を行うことが好ましい。この場合の蒸留とは単蒸留であっても、連続蒸留であってもよく、特に限定されない。蒸留の条件としてはアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気において、減圧下で蒸留を実施することが好ましく、熱による変性を抑制するためには、250℃以下、好ましくは200℃以下、特には180℃以下の条件で行うことが好ましい。
このような蒸留精製で、本発明のポリカーボネート樹脂(A)に用いるジヒドロキシ化
合物中の蟻酸含有量を20重量ppm以下、好ましくは10重量ppm以下、特に好ましくは5重量ppm以下にすることにより、前記本発明のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物をポリカーボネート樹脂の製造原料として使用した際に、重合反応性を損なうことなく色相や熱安定性に優れたポリカーボネート樹脂の製造が可能となる。蟻酸含有量の測定はイオンクロマトグラフィーで行う。
本発明に係るポリカーボネート樹脂(A)は、上記式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構成単位を含んでいても構わない。
特に、本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物の透明性を高めるという点で、ポリカーボネート樹脂(A)は脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含有することが好ましく、当該脂肪族ジヒドロキシ化合物が環構造を有する所謂脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むことがより好ましい。そして、同様に透明性を高めるという点で、当該脂肪族ジヒドロキシ化合物または脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位は、炭素数が11以下であることが好ましい。さらに、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の透明性を高めるという点で、全ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位に対する、脂肪族ジヒドロキシ化合物または脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の割合は、50モル%より大きいことが好ましく、より好ましくは52モル%以上であることが好ましく、更には55モル%以上であることが好ましく、特には58モル%以上であることが好ましい。
より具体的に、その他のジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、等の脂肪族ジヒドロキシ化合物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール類が挙げられる。
これらのなかでも、ポリカーボネート樹脂の耐候性の観点からは、分子構造内に芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物、即ち脂肪族ジヒドロキシ化合物が好ましく、更にこれらのなかでも1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメ
タノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール等の脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物が好ましい。より具体的には1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましく、なかでも脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物である、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。
これらのその他のジヒドロキシ化合物を用いることにより、ポリカーボネート樹脂(A)および本発明のポリカーボネート樹脂組成物の柔軟性の改善、耐熱性の向上、成形性の改善などの効果を得ることも可能であるが、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の含有割合が多過ぎると、機械的物性の低下や、耐熱性の低下を招くことがあるため、全ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位に対する、式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の割合が、5モル%以上であることが好ましく、より好ましくは10モル%以上であり、更に好ましくは15モル%以上であって、特には20モル以上であることが好ましい。
(脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物)
本発明で使用するポリカーボネート樹脂(A)は、式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含むものであるが、既に記載したように本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物の透明性を高める観点で、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むことが好ましい。
脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、通常、5員環構造又は6員環構造を含む化合物が挙げられる。脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物が5員環、6員環構造であることにより、得られるポリカーボネート樹脂の耐熱性を高くすることができる。6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。
脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は通常30以下であり、好ましくは20以下、さらに好ましくは11以下である。炭素原子数が過度に大きいと、耐熱性が高くなるが、合成が困難になったり、精製が困難になったり、コストが高価になる傾向がある。炭素原子数が小さいほど、精製しやすく、入手しやすい傾向がある。 5員環構造又は6員環構造を含む脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、具体的には、下記式(II)又は(III)で表される脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物
が挙げられる。
HOCH−R−CHOH (II)
HO−R−OH (III)
(但し、式(II),式(III)中、R,Rは、炭素数4〜20のシクロアルキル基、又は炭素数6〜20のシクロアルコキシル基を表す。)
上記式(II)で表される脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジメタノールとしては、式(II)において、Rが下記式(IIa)(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)で示される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
Figure 0005664396
上記式(II)で表される脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノールとしては、式(II)において、Rが下記式(IIb)(式中、nは0又は1で表す。)で表される種々の異性体を包含する。
Figure 0005664396
上記式(II)で表される脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物であるデカリンジメタノール又は、トリシクロテトラデカンジメタノールとしては、式(II)において、Rが下記式(IIc)(式中、mは0、又は1を表す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール等が挙げられる。
Figure 0005664396
また、上記式(II)で表される脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジメタノールとしては、式(II)において、Rが下記式(IId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール等が挙げられる。
Figure 0005664396
式(II)で表される脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジメタノールとしては、式(II)において、Rが下記式(IIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,3−アダマンタンジメタノール等が挙げられる。
Figure 0005664396
また、上記式(III)で表される脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジオールは、式(III)において、Rが下記式(IIIa)(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基で表される。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
Figure 0005664396
上記式(III)で表される脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオールとしては、式(III)において、Rが下記式(IIIb)(式中、nは0又は1で表す。)で表される種々の異性体を包含する。
Figure 0005664396
上記式(III)で表される脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物であるデカリンジオール又は、トリシクロテトラデカンジオールとしては、式(III)において、Rが下記式(IIIc)(式中、mは0、又は1を表す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6−デカリンジオール、1,5−デカリン
ジオール、2,3−デカリンジオール等が用いられる。
Figure 0005664396
上記式(III)で表される脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジオールとしては、式(III)において、Rが下記式(IIId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3−ノルボルナンジオール、2,5−ノルボルナンジオール等が用いられる。
Figure 0005664396
上記式(III)で表される脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジオールとしては、式(III)において、Rが下記式(IIIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては具体的には、1,3−アダマンタンジオール等が用いられる。
Figure 0005664396
上述した脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物の具体例のうち、特に、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類、アダマンタンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類が好ましく、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。
尚、上記例示化合物は、本発明に使用し得る脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。これらの脂環式ジオール化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(ガラス転移温度)
本発明に係るポリカーボネート樹脂(A)は、耐熱性や成形性の観点から、ガラス転移温度が50℃以上であることが好ましく、より好ましくは60℃以上であって、特には7
0℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度を高くすることで、耐熱性が向上する。
本発明におけるガラス転移温度は、JIS K7121に規定される方法に準拠して測定される。より具体的には、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220)を用いて測定を行い、測定条件としては、ポリカーボネートサンプル約10mgを同社製アルミパンに入れて密封し、50mL/分の窒素気流下、昇温速度20℃/分で室温から250℃まで昇温し、3分間温度を保持した後、0℃まで20℃/分の速度で冷却する。この状態で0℃で3分保持し、再び200℃まで20℃/分の速度で昇温し、2回目の昇温で得られたDSCデータより、補外ガラス転移開始温度を決定することができ、この温度をガラス転移温度とすることができる。
本発明に係るポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は、ポリカーボネート樹脂(A)の有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の種類を適宜選択したり、ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を複数組み合わせたり、更にそれらの構成比率を調整したりすることによって調節することが可能である。
より具体的には例えば、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を多くして、脂肪族または脂環式のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくすると、ガラス転移温度が高くなる傾向がある。
(還元粘度)
本発明に係るポリカーボネート樹脂(A)の重合度は、溶媒としてフェノールと1,1,2,2,−テトラクロロエタンの重量比1:1の混合溶液を用い、ポリカーボネート濃度を1.00g/dlに精密に調整し、温度30.0℃±0.1℃で測定した還元粘度(以下、単に「ポリカーボネート(共)重合体の還元粘度」と称す。)として、0.40dl/g以上、特に0.40dl/g以上で2.0dl/g以下であるような重合度であることが好ましい。このような還元粘度範囲とすることにより、機械的特性が高まると同時に、成形性もより好ましくなり、成形サイクル特性が高まると同時に、熱変形し難くなる。ポリカーボネート樹脂(A)還元粘度が極端に低いものでは、成形した時の機械的強度が低下する虞があり、特に耐衝撃性が低下する虞が高くなるため、シールド部材として不適当となる。また、ポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度が大きくなりすぎると、成形する際の流動性が低下し、成形サイクル特性を低下させ、成形品のひずみが大きくなり、熱により変形し易い傾向がある。従って、本発明のポリカーボネートの還元粘度は0.40dl/g以上2.0dl/g以下、特に0.45dl/g以上1.5dl/g以下の範囲内であることが好ましい。
<芳香族ポリカーボネート樹脂(B)>
本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(B)は、ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位をカーボネート結合で連結したポリカーボネート樹脂であって、構造中に芳香族環を有するものであれば、従前知られる如何なるものも使用することが可能であり、式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むものであっても構わない。好ましくは、ジヒドロキシ化合物に由来する全構成単位中、芳香族環を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が最も多いポリカーボネート樹脂であって、より好ましくはジヒドロキシ化合物に由来する全構成単位に対して芳香族環を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造が50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくはカーボネート結合以外の構成単位であるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位すべてが、芳香族環を有しているポリカーボネート樹脂が用いられる。ただし、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)が、式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むものである場合、ポリカーボネート樹脂(A)とは異なる構造のポリカーボネート樹脂が使用される。
本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(B)は、共重合体であっても構わない。また、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)は、分岐構造を有していても、直鎖構造であっても構わない。なお、本発明においては、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)を、1種のみ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用し
ても構わない。より具体的には、下記式(4)で表される繰返し構造を有するポリカーボネート樹脂が用いられる。
Figure 0005664396
上記式(4)において、Ar,Arは各々独立して置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Xは単結合または2価基を表す。
置換基を有していてもよいアリーレン基としては、アリーレン基であれば特に制限されるものではないが、好ましくは芳香族環が3つ以下のアリーレン基であって、より好ましくはフェニレン基である。Ar,Arが各々独立して有していてもよい置換基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、ハロゲン基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基があげられる。これらの置換基の中でも、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であって、特に好ましくはメチル基があげられる。
2価基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜6の鎖状構造のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数1〜6の鎖状構造のアルキリデン基、置換基を有していてもよい炭素数3〜6の環状構造のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数3〜6の環状構造のアルキリデン基、−O−、−S−、−CO−または−SO−があげられる。炭素数1〜6の鎖状構造のアルキレン基が有する置換基としては、アリール基が好ましく、特にはフェニル基が好ましい。
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(B)を構成するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位は、ジヒドロキシ化合物の水酸基から水素原子を除いたものである。相当する、ジヒドロキシ化合物の具体例としては、下記のものがあげられる。
4,4’−ビフェノール、2,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジメチル−2,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジ−(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラ−(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル等のビフェニル化合物。
ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−
ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)エタン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[フェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[フェノール]、4,4’−[1,
4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,6−ジメチルフェノール]、
4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,3,6−
トリメチルフェノール]、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、フェノールフタルレイン、4,4'−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]
ビスフェノール、4,4'−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビス[2−メチルフェノール]、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン
、(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビスフェノール化合物。2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのハロゲン化ビスフェノール化合物。
これらの中で好ましいジヒドロキシ化合物は、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニ
ルプロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2−ヒドロキシフェニル(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどの、アルキリデン基によりフェノール類が連結されたビスフェノール化合物があげられる。
これらの中でも特に、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどの、アルキリデン基の炭素数が6以下のビスフェノール化合物が好ましい。
本発明に用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量は、力学特性と成形加工性のバランスから、通常、8,000以上、30,000以下、好ましくは10,000以上、25,000以下の範囲である。また、上記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度を0.60g/dlに精密に調整し、温度20.0℃±0.1℃で測定され、通常、0.23dl/g以上0.72dl/g以下で、好ましくは0.27dl/g以上0.61dl/g以下の範囲内である。
(ガラス転移温度)
本発明に係る芳香族ポリカーボネート樹脂(B)は、ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性や成形性の観点から、ガラス転移温度が50℃以上であることが好ましく、より好ましくは60℃以上であって、特には70℃以上であることが好ましい。
本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂(B)のガラス転移温度は、ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度と同様に、JIS K7121に規定される方法に準拠して測定される。
本発明に係る芳香族ポリカーボネート樹脂(B)のガラス転移温度は、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の種類を適宜選択したり、ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を複数組み合わせたり、更にそれらの構成比率を調整したりすることによって調節することが可能である。
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
本発明に係るポリカーボネート樹脂(A)および芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の製造方法は、ポリカーボネート樹脂を製造することができる方法であれば、従前知られる如何なるポリカーボネート樹脂の製造方法によるものであっても構わない。より具体的には例えば、ホスゲン法、エステル交換法、ピリジン法等、従前知られるいずれの方法を用いてもかまわない。好ましくは、ホスゲンを用いた溶液重合法、炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法があげられるが、重合触媒の存在下に、ジヒドロキシ化合物を、より環境への毒性の低い炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法が、より好ましい。
以下一例として、エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造方法を説明する。
エステル交換法は、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを塩基性触媒、さらにはこの塩基性触媒を中和する酸性物質を添加し、溶融エステル交換縮重合を行う製造方法である。ジヒドロキシ化合物としては、既にポリカーボネート樹脂(A)および芳香族ポリカーボネート樹脂(B)について詳細に記載したジヒドロキシ化合物を用いる。
この溶融重合法で用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(5)で表されるものが挙げられる。
Figure 0005664396
(式(5)において、A及びAは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香族基であり、A及びAは同一であっても異なっていてもよい。)
上記式(5)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーネート、ビス(ビフェニル)カーボネート等に代表される置換ジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等に代表される置換アルキルカーボネートが例示されるが、特に好ましくはジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
炭酸ジエステルは、ジヒドロキシ化合物に対して、0.96〜1.10のモル比率で用いることが好ましく、さらに好ましくは、0.98〜1.04のモル比率である。このモル比が0.96より小さくなると、製造されたポリカーボネートの末端OH基が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化し、また、モル比が1.10より大きくなると、同一条件下ではエステル交換反応の速度が低下し、所望とする分子量のポリカーボネートの製造が困難となるばかりか、製造されたポリカーボネート中の残存炭酸ジエステル量が増加し、この残存炭酸ジエステルが、成形時、または成形品の臭気の原因となり好ましくない。
また、溶融重合における重合触媒(エステル交換触媒)としては、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用される。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
重合触媒として用いられるアルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられる。
また、アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウ
ム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
これらのアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
またアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と併用される塩基性ホウ素化合物の具体例としては、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。これらの塩基性化合物も1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記重合触媒の使用量は、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いる場合、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物との合計1モルに対して、金属換算量として、通常、0.1〜100μモルの範囲内で用い、好ましくは0.5〜50μモルの範囲内であり、さらに好ましくは1〜25μモルの範囲内である。重合触媒の使用量が少なすぎると、所望の分子量のポリカーボネート共重合体を製造するのに必要な重合活性が得られず、一方、重合触媒の使用量が多すぎると、得られるポリカーボネートの色相が悪化し、副生成物が発生したりして流動性の低下やゲルの発生が多くなり、目標とする品質のポリカーボネート樹脂の製造が困難になる。
このような本発明に係るポリカーボネート樹脂の製造にあたり、使用されるジヒドロキシ化合物は、固体として供給してもよいし、加熱して溶融状態として供給してもよいし、水溶液として供給してもよい。これらの原料ジヒドロキシ化合物を溶融状態や、水溶液で供給すると、工業的に製造する際、計量や搬送がしやすいという利点がある。 本発明において、ジヒドロキシ化合物を重合触媒の存在下で炭酸ジエステルと反応させる方法は、通常、2段階以上の多段工程で実施される。具体的には、第1段目の反応は140〜22
0℃、好ましくは150〜200℃の温度で0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時
間実施される。第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げながら反応温度を上げていき、同時に発生するフェノールを反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力が200Pa以下で、210〜280℃の温度範囲のもとで重縮合反応を行う。
この重縮合反応における減圧において、温度と反応系内の圧力のバランスを制御することが重要である。特に、温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を狂わせ、重合度が低下することがある。例えば、ジヒドロキシ化合物としてイソソルビドと1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いる場合は、全ジヒドロキシ化合物に対し、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%以上の場合は、1,4−シクロヘキサンジメタノールがモノマーのまま留出しやすくなるので、反応系内の圧力が13kPa程度の減圧下で、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させながら反応させ、さらに、6.67kPa程度までの圧力下で、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させ、最終的に200Pa以下の圧力で、200から250℃の温度で重縮合反応を行うと、十分に重合度が上昇したポリカーボネートが得られるため、好ましい。
また、全ジヒドロキシ化合物に対し、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%より少なくなった場合、特に、モル比が30モル%以下となった場合は、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%以上の場合と比べて、急激な粘度上昇が起こるので、例えば、反応系内の圧力が13kPa程度の減圧下までは、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させながら反応させ、さらに、6.67kPa程度までの圧力下で、温度を1時間あたり40℃以上の昇温速度、好ましくは1時間あたり50℃以上の昇温速度で上昇させながら反応させ、最終的に200Pa以下の減圧下、220から290℃の温度で重縮合反応を行うと、十分に重合度が上昇したポリカーボネートが得られるため、好ましい。
反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
本発明のポリカーボネートを溶融重合法で製造する際に、着色を防止する目的で、リン酸化合物や亜リン酸化合物を重合時に添加することができる。
リン酸化合物としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸トリアルキルの1種又は2種以上が好適に用いられる。これらは、全ヒドロキシ化合物成分に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが好ましく、さらに好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することが好ましい。リン化合物の添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりする。
亜リン酸化合物を添加する場合は、下記に示す熱安定剤を任意に選択して使用できる。特に、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトの1種又は2種以上が好適に使用できる。これらの亜リン酸化合物は、全ヒドロキシ化合物成分に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが好ましく、さらに好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することが好ましい。亜リン酸化合物の添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
リン酸化合物と亜リン酸化合物は併用して添加することができるが、その場合の添加量はリン酸化合物と亜リン酸化合物の総量で、先に記載した、全ヒドロキシ化合物成分に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下である。この添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
<ポリカーボネート樹脂組成物>
本発明のシールド部材は、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂(A)と、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とを含むポリカーボネート樹脂組成物からなるものである。但し、式(1)で表される部位が−CH−O−Hを構成する部位である場合を除く。
Figure 0005664396
本発明においては、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂(A)と、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とを同時に含有するポリカーボネート樹脂組成物をシールド部材の材料として用いることに特徴を有するものであって、ポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との含有比率に特に制限は無いが、ポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の重量比率が、1:99から99:1であることが好ましく、より好ましくは5:95から95:5であって、特には10:90から90:10の範囲で含有することが好ましい。ポリカーボネート樹脂とも芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とも解されるポリカーボネート樹脂を含有する場合は、当該ポリカーボネート樹脂を任意にポリカーボネート樹脂(A)または芳香族ポリカーボネート樹脂(B)と位置づけて、その比率が上記範囲になるようにすればよい。また、本発明の効果を充分に得るために、ポリカーボネート樹脂(A)および芳香族ポリカーボネート樹脂(B)から選ばれる少なくとも1種のポリカーボネート樹脂が、ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して、20重量部以上であることが好ましく、より好ましくは35重量部以上であって、更に好ましくは50重量部以上であり、特に好ましくは75重量部以上で用いられる。中でも、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いられるポリカーボネート樹脂成分の全量が、ポリカーボネート樹脂(A)および芳香族ポリカーボネート樹脂(B)から選ばれるポリカーボネート樹脂であることが、本発明の効果を得る点で特に好ましいものである。また、ポリカーボネート樹脂組成物中に占めるポリカーボネート樹脂(A)の割合が、小さすぎると、後述するサンシャインウェザーメーター照射試験後のイエローインデックス(YI)値が大きくなる傾向にあるため、ポリカーボネート樹脂(A)の重量比率は芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の重量比率 本発明におけるポリカーボネート樹脂組成物は、当該ポリカーボネート樹脂組成物および当該ポリカーボネート樹脂を成形してなる成形品の透明性を保つ観点から、ガラス転移温度が単一であることが好ましい。
<ポリカーボネート樹脂以外の樹脂>
本発明のシールド部材には、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂や、樹脂以外の添加剤を配合することもできる。これらのポリカーボネート樹脂以外の材料は、成形加工性や諸物性のさらなる向上・調整を目的として配合する、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂の具体例としては、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等の樹脂やコア−シェル型、グラフト型又は線状のランダム及びブロック共重合体のようなゴム状改質剤などが挙げられる。前記ポリカーボネート樹脂以外の
樹脂の配合量としては、本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との混合物100重量%に対して、1重量部以上、30重量部以下の割合で配合することが好ましく、3重量部以上、20重量部以下の割合で配合することがより好ましく、5重量部以上、10重量部以下の割合で配合することがさらに好ましい。
<ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法>
本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物は、従前知られる樹脂の混合方法により、ポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とを混合することにより製造することができる。また、ポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)を混合する際に、またはポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とを混合した組成物に更に、熱安定剤や酸化防止剤などの従前知られる添加剤を混合して得られる組成物であっても構わない。中でも、本発明におけるポリカーボネート樹脂組成物が好ましく含有する添加剤について、以下に詳細に記載する。
(熱安定剤)
本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物には、成形時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。 かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。これらの熱安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
かかる熱安定剤は、ポリカーボネート樹脂の溶融重合時にも使用した場合には、その使用した量に加えて更に追加で配合することができる。即ち、適当量の亜リン酸化合物やリン酸化合物を配合して、ポリカーボネート樹脂を得た後に、後に記載する配合方法で、さらに亜リン酸化合物を配合すると、重合時のヘイズの上昇、着色、及び耐熱性の低下を回避して、さらに多くの熱安定剤を配合でき、色相の悪化の防止が可能となる。
これらの熱安定剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂組成物を100重量部とした場合、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.2重量部が更に好ましい。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、酸化防止の目的で通常知られた酸化
防止剤を配合することもできる。
かかる酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の1種又は2種以上が挙げられる。
これら酸化防止剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂組成物を100重量部とした場合、0.0001〜0.5重量部が好ましい。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、射出成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤を配合することも可能である。
かかる離型剤としては、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、パラフィンワックス、蜜蝋、オレフィン系ワックス、カルボキシ基および/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価または多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸モノグリセリド、ベヘニン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、エチレングリコールジステアレート等が挙げられる。
なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ベヘニン酸ベヘニルが好ましく用いられる。 高級脂肪酸としては、炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸が好ましい。かかる脂肪酸としては、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。
これらの離型剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。 かかる離型剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂組成物を100重量部とした場合、0.01〜5重量部が好ましい。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、紫外線による変色が従前知られるポリカーボネート樹脂組成物に比較して著しく小さいが、さらに改良の目的で、本願発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤を配合することができる。
かかる紫外線吸収剤、光安定剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。紫外線吸収剤の融点としては、特に120〜250℃の範囲にあるものが好ましい。融点が120℃以上の紫外線吸収剤を使用すると、成形品表面のガスによる曇りが減少し改善される。具体的には、2−(
7'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−
3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−(3",4",5",6"−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5'−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメ
チルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が使用され、これらのうちでも、特に、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブ
チル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールが好ましい。
これらの紫外線吸収剤、光安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。かかる配合量は、ポリカーボネート樹脂組成物を100重量部とした場合、0.01〜2重量部が好ましい。
さらに、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、加水分解性を改善するため、本願発明の目的を損なわない範囲で、エポキシ化合物を配合することができる。
エポキシ系安定剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシ−6'−メ
チルシクロヘキシルカルボキシレート、2,3−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4−(3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシル)ブチル−3',4'−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチレンオキシド、シクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘ
キシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6'−メチルシロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、ビス−エポキシジシクロペンタジエニルエーテル、ビス−エポキシエチレングリコール、ビス−エポキシシクロヘキシルアジペート、ブタジエンジエポキシド、テトラフェニルエチレンエポキシド、オクチルエポキシタレート、エポキシ化ポリブタジエン、3,4−ジメチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、3,5
−ジメチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、3−メチル−5−t−ブチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、オクタデシル−2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N−ブチル−2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシル−2−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボ
キシレート、N−ブチル−2−イソプロピル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキ
シルカルボキシレート、オクタデシル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレー
ト、2−エチルヘキシル−3',4'−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,6−
ジメチル−2,3−エポキシシクロヘキシル−3',4'−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、3−t−ブチル−4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、ジエチル−4,5−エポキシ−シス−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート、ジ−n−ブチル−3−t−ブチル−4,5−エポキシ−シス−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレートなどが挙げられる。ビスフェノールAジグリシジルエーテルが相溶性などの点から好ましい。
このようなエポキシ系安定剤は、ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して、0.0001〜5重量部、好ましくは0.001〜1重量部、さらに好ましくは0.005〜0.5重量部の範囲で配合されることが望ましい。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、重合体や紫外線吸収剤に基づくシールド部材の黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としては、従前知られるポリカーボネート樹脂組成物に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。
具体的なブルーイング剤としては、例えば一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725]、一般名Solvent Viol
et31[CA.No 68210、一般名Solvent Violet33[CA.No 60725;、一般名Solvent Blue94[CA.No 61500]、
一般名Solvent Violet36[CA.No 68210]、一般名Solv
ent Blue97[ランクセス社製「マクロレックスブルーRR」]および一般名Solvent Blue45[CA.No61110]が代表例として挙げられる。
これらのブルーイング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらブルーイング剤は、通常、ポリカーボネート樹脂組成物を100重量部とした場合、0.1×10−4〜2×10−4重量部の割合で配合される。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物と上述のような各種の添加剤との配合は、例えばタンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法、あるいは上記各成分を例えば塩化メチレンなどの共通の良溶媒に溶解させた状態で混合する溶液ブレンド方法などがあるが、これは特に限定されるものではなく、通常用いられるポリマーブレンド方法であればどのような方法を用いてもよい。
こうして得られるポリカーボネート樹脂組成物は、そのまま、または溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法でシールド部材成形品にすることができる。 本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物の混和性を高めて安定した各物性を得るためには、溶融押出において単軸押出機、二軸押出機を使用するのが好ましい。単軸押出機、二軸押出機を用いる方法は、溶剤等を用いることがなく、環境への負荷が小さく、生産性の点からも好適に用いることができる。本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物の場合は、押出機の溶融混練温度は通常200〜300℃、好ましくは220〜260℃である。溶融混練温度が200℃より低い温度であると、ポリカーボネート樹脂組成物の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、ポリカーボネート樹脂組成物の劣化が起こりやすくなり、ポリカーボネート樹脂組成物の色が黄変したり、分子量が低下するため強度が劣化したりする。
ポリカーボネート樹脂組成物を製造する際に押出機を使用する場合、押出時にポリカーボネート樹脂組成物の焼け、異物の混入を防止するため、押出機出口にフィルターを設置することが望ましい。フィルターの異物除去の大きさ(目開き)は、求められる製品の光
学的な精度などに依存するが、100μm以下が好ましい。特に、異物の混入がシールド部材の性能に影響する場合は、40μm以下、さらには10μm以下が好ましい。さらに、ポリカーボネート樹脂組成物の押出は、押出後の異物混入を防止するために、クリーンルーム中で実施することが望ましい。
また、押出されたポリカーボネート樹脂組成物を冷却しチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが望ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの大きさ(目開き)は種々あるが、10〜0.45μmのフィルターのものが好ましい。
本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物は、上記の他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、周知の種々の添加剤、例えば、耐衝撃性改良剤、難燃剤、難燃助剤、加水分解抑制剤、帯電防止剤、発泡剤、染顔料を含有していてもよい。また、例えば、芳香族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィンなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂などを更に混練した樹脂組成物としてもよい。
<シールド部材>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなるシールド部材の成形は、従前知られるシールド部材の成形法と同様に行うことができる。具体的には例えば射出成形により成形することが可能であって、その場合には金型温度は30℃〜120℃、ポリカーボネート樹脂組成物の温度は220〜290℃となるようにするのがよい。
(ヘイズ)
本発明のシールド部材は、通常一定値以上の光を透過させて使用されるものであるため、光散乱性能を有していても構わないが、通常透明性が高いことが好ましく、ヘイズが20.0%以下であることが好ましく、より好ましくは15.0%以下であって、特には10.0%以下であることが好ましい。
本発明におけるヘイズは、ポリカーボネート樹脂(A)の、分子構造、分子量、分岐の有無、共重合体であるか否か、共重合体の場合はその組成比などの物性に影響され、また芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の、分子構造、分子量、分岐の有無、共重合体であるか否か、共重合体の場合はその組成比などの物性にも影響される。更に、ポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の混合比率や、他の添加剤などによっても影響される。そのため、それらを適宜調節することによって、ヘイズを好ましい範囲とすることが可能である。
本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物のヘイズは、ポリカーボネート樹脂組成物から成形された厚さ3mmの成形体のJIS K7361−1に準拠して測定したものであり、ヘイズメーターで測定することができる。より具体的には、厚さ3mmのプレート成形品を成形し、日本電色工業株式会社製ヘーズメーター(1001DP)を用いて測定できる。
(全光線透過率)
本発明のシールド部材は、通常一定値以上の光を透過させて使用されるものであるため、通常透明性が高いことが好ましく、全光線透過率が高いものが好ましい。全光線透過率が60.0%以上であることが好ましく、より好ましくは70.0%以上であって、特には75.0%以上であることが好ましい。
本発明における全光線透過率は、ポリカーボネート樹脂(A)の、分子構造、分子量、分岐の有無、共重合体であるか否か、共重合体の場合はその組成比などの物性に影響され、また芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の、分子構造、分子量、分岐の有無、共重合体であるか否か、共重合体の場合はその組成比などの物性にも影響される。更に、ポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の混合比率や、他の添加剤などによっても影響される。そのため、それらを適宜調節することによって、全光線透過率を好ましい範囲とすることが可能である。
特に、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)として、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の構成単位の由来となるジヒドロキシ化合物に、炭素数6以下のアルキリデン基によりフェノール類が連結されたビスフェノール化合物を用いた芳香族ポリカーボネート樹脂を使用した場合、使用するポリカーボネート樹脂(A)は、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むことが好ましい。そして、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位のモル比率が、ポリカーボネート樹脂(A)中の、全ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位に対して、50モル%以上であることが好ましく、52モル%を含むことがより好ましく、更には55モル%以上であることが好ましく、特には58モル%以上であることが好ましい。
本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物の全光線透過率は、ポリカーボネート樹脂組成物から成形された厚さ3mmの成形体に対して、JIS K7105に準拠して測定したものであり、ヘイズメーターで測定することができる。より具体的には、ヘイズメーター(日本電色工業社製NDH2000)を使用し、D65光源にて測定することができる。
(ガラス転移温度)
本発明のシールド部材に用いるポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度は、シールド部材の耐熱性や成形性の観点から、ガラス転移温度が50℃以上であることが好ましく、より好ましくは60℃以上であって、特には70℃以上であることが好ましい。
本発明におけるガラス転移温度は、ポリカーボネート樹脂(A)および芳香族ポリカーボネート樹脂(B)のガラス転移温度と同様に、JIS K7121に規定される方法に準拠して測定される。
本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度は、ポリカーボネート樹脂(A)の、分子構造、分子量、分岐の有無、共重合体であるか否か、共重合体の場合はその組成比などの物性に影響され、また芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の、分子構造、分子量、分岐の有無、共重合体であるか否か、共重合体の場合はその組成比などの物性にも影響される。更に、ポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の混合比率や、他の添加剤などによっても影響される。そのため、それらを適宜調節することによって、ポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度を調整することが可能となる。そして、ポリカーボネート樹脂組成物の透明性を高めるために、ポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度は、測定上1つとなることが好ましい。
(鉛筆硬度)
本発明のシールド部材の表面傷付き性能を向上させるために、ポリカーボネート樹脂組成物の鉛筆硬度は、通常高いことが好ましく、より好ましくはF以上であって、更に好ましくはH以上であって、特には2H以上が好ましい。
本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物の鉛筆硬度は、ポリカーボネート樹脂(A)の、分子構造、分子量、分岐の有無、共重合体であるか否か、共重合体の場合はその組成比などの物性に影響され、また芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の、分子構造、分子量
、分岐の有無、共重合体であるか否か、共重合体の場合はその組成比などの物性にも影響される。更に、ポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の混合比率や、他の添加剤などによっても影響される。そのため、それらを適宜調節することによって、ポリカーボネート樹脂組成物の鉛筆硬度を調節することが可能である。
本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物の鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4に記載の方法で測定される。具体的には、厚さ3mmのプレート成形品を作成し、東洋精機株式会社製鉛筆引掻塗膜硬さ試験機を用いて測定される。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。以下において、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物、成形品等の物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
(1)還元粘度の測定
ポリカーボネート樹脂のサンプルを、溶媒として塩化メチレンを用いて溶解し、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間tと溶液の通過時間tから次式より相対粘度ηrelを求め、
ηrel=t/t
相対粘度から次式より比粘度ηspを求めた。
ηsp=(η−η)/η=ηrel−1
比粘度を濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
(2)ノッチ付シャルピー衝撃強度
機械物性用ISO試験片についてISO179に準拠してノッチ付シャルピー衝撃試験を実施した。
(3)引っかき硬度(鉛筆法)試験
JIS K5600−5−4に準拠して、コーテック社製引っかき硬度(鉛筆法)試験器を用いて、射出成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)の鉛筆硬度を6B〜6Hの範囲で測定した。6Bは表面硬度が低く、6Hは表面硬度が高いことを示す。
(4)色相測定
JIS K7105に準拠し、分光色差計(日本電色工業社製SE2000)を使用し、C光源透過法にて射出成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)のイエローインデックス(YI)値を測定した。YI値が小さい程、黄色味がなく品質が優れることを示す。
(5)全光線透過率測定
JIS K7105に準拠し、ヘイズメーター(日本電色工業社製NDH2000)を使用し、D65光源にて射出成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)の全光線透過率を測定した。
(6)サンシャインウェザーメーター照射試験
JIS B7753に準拠してスガ試験機社製サンシャインウェザーメーターS80を用いて、サンシャインカーボンアーク(ウルトラロングライフカーボン4対)光源で放電電圧50V、放電電流60Aに設定し、照射及び表面スプレ(降雨)にてブラックパネル温度63℃、相対湿度50%の条件下、射出成形片の平板(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)の正方形の面に対して、500時間照射処理を行った。表面スプレー(降雨)時間は、12分/1時間とした。ガラスフィルターはAタイプを用いた。照射処理後の
YIと全光線透過率を測定し、さらに500時間処理後のYIと処理前のYIとの差を求めた。
<ポリカーボネート樹脂(A)>
PC1:
イソソルビドに由来する構成単位/1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位=40/60モル%、還元粘度 0.63dl/g
PC2:
イソソルビドに由来する構成単位/1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位=70/30モル%、還元粘度 0.51dl/g
<芳香族ポリカーボネート樹脂(B)>
PC3:
2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに由来する構成単位を有する、三菱エンジニアリングプラスチックス社製ノバレックス7022J、還元粘度 0.47dl/g
(実施例1)
PC1、およびPC3を重量比80:20の割合でドライブレンドした後、日本製鋼所社製2軸押出機(TEX30HSS−32)を用いて、樹脂温度250℃で押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化した。ペレットを、窒素雰囲気下、80℃で10時間乾燥した後に、射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、樹脂温度250℃、金型温度60℃、成形サイクル40秒間の条件で、射出成形板(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)および機械物性用ISO試験片を成形した。得られたサンプルについて、全光線透過率、YI、ノッチ付シャルピー衝撃強度の測定を行なった結果を表1に示す。
(実施例2)
PC1、およびPC3を重量比60:40の割合で混合した以外は、実施例1と同様の方法でサンプルの作製、評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例3)
PC1、およびPC3を重量比40:60の割合で混合した以外は、実施例1と同様の方法でサンプルの作製、評価を行なった。結果を表1に示す。
(比較例1)
PC2、およびPC3を混合質量比80:20の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製、評価を行なった。結果を表1に示す。
(比較例2)
PC3のみを、窒素雰囲気下、120℃で6時間乾燥した後に、射出成形機(日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、樹脂温度280℃、金型温度を80℃、成形サイクル40秒間の条件で、射出成形板(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)および機械物性用ISO試験片を成形した以外は実施例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
Figure 0005664396
以上の結果から、本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物の成形品は、高い機械的強度を有するとともに、10以下の低いYI値と同時に2B以上の高いひっかき硬度を有し、しかもサンシャインウェザーメーター照射試験の後も低いYI値を有する上に、サンシャインウェザーメーター照射試験の後も高い全光線透過率を有するものであって、特に屋外で使用されるシールド部材として優れた性能を有していることがわかる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなるシールド部材は、高い耐衝撃強度を有するとともに、表面硬度が高く、着色が少なく、更に耐候変色性が小さく、しかも耐候透明性にも優れるので、バイクのウインドシールド、ヘルメットの前面シールド、危険作業で作業者を守る保護板、護身用の盾などで使用されるシールド部材など、各種シールド部材として使用される。

Claims (5)

  1. 構造の一部に下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂(A)と、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とを含むポリカーボネート樹脂組成物からなり、
    前記ポリカーボネート樹脂(A)が分子構造内に芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート共重合体であり、
    全光線透過率が60.0%以上であるシールド部材。
    Figure 0005664396
  2. 前記ポリカーボネート樹脂組成物が、リチウム及び長周期型周期表第2族の金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む化合物を、金属量としてポリカーボネート樹脂組成物に対して20重量ppm以下で含む、請求項1に記載のシールド部材。
  3. 前記ポリカーボネート共重合体に含まれる前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の、全構成単位に対する比率が50モル%未満である、請求項1または請求項2に記載のシールド部材。
  4. 前記ポリカーボネート共重合体に含まれるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシールド部材。
  5. 前記ポリカーボネート共重合体に含まれる脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位のモル比率が、ポリカーボネート樹脂(A)中の、全ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位に対して、50モル%以上である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシールド部材。
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