JP2008056718A - 樹脂およびホスホネート−カーボネート共重合体樹脂の製造方法 - Google Patents

樹脂およびホスホネート−カーボネート共重合体樹脂の製造方法 Download PDF

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Emi Inoue
絵美 井上
Keijiro Takanishi
慶次郎 高西
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Abstract

【課題】
高屈折率、低分散(高いアッベ数)で更に成形性、耐熱性、耐衝撃性、色調などに優れた樹脂を提供する。
【解決手段】
少なくともカーボネート残基、ホスホン酸残基、2価フェノール残基から構成されており、ホスホン酸残基とカーボネート残基のモル分率が式(I)を満足し、ポリマー末端基の50%以上が封止されていることを特徴とする樹脂。
1≧(a)/{(a)+(b)}≧0.05 (I)
[式(I)中、(a)はホスホン酸残基のモル数、(b)はカーボネート残基のモル数を示す。]
【選択図】 なし

Description

本発明は、高屈折率、低分散(高いアッベ数)で更に成形性、耐熱性、耐衝撃性、色調などに優れた熱可塑性樹脂に関する。
無色透明材料は、光学レンズ、機能性光学フィルムあるいはディスク基板など、その多様な用途に応じて種々の材料が適用されているが、近年、ヘルスケアやエレクトロニクスなどの急速な発展に伴い、材料自体に要求される機能・性能もますます精密かつ優れたものとなってきている。
光学用材料の代表的なヘルスケア用途として眼鏡レンズが挙げられるが、この眼鏡レンズについては薄型化、軽量化あるいはファッション性等の観点から活発な材料開発が行われており、現在では耐衝撃性と軽量性等の利点から、市場の90%は樹脂レンズが占めるようになっている。
従来の眼鏡レンズ用樹脂は、CR39、アクリルおよびウレタンの3つの樹脂に大別され、低分散と高屈折を目指して多くの樹脂が開発実用化されている。これらの樹脂はすべて熱硬化性であるため、光学レンズへの成形は注型重合方法が用いられるが、この方法は重合時間が長く、その後のアニーリングプロセスなど、製造コストが高いという問題点がある。一方、ポリカーボネートのような熱可塑性樹脂をレンズに適用すれば、成形性がよく、熱硬化性樹脂に比べ格段にレンズ製造コストを安くできるという利点があるが、屈折率が1.58と低いため視力矯正眼鏡用途としての性能は不十分である。また、ポリカーボネート以上の屈折率を有する熱可塑性樹脂も数多く知られているが、高分散性および着色性等の問題があり、光学レンズ用途には適用するには問題があった。
本発明者らは、高屈折率でかつ低分散な熱可塑性樹脂を見出すべく鋭意検討した結果、5価のリン原子を有する構造、中でもホスホン酸構造をポリマーの主鎖に導入することによって、無色透明で高屈折であり、しかも低分散な熱可塑性樹脂が得られることを見いだしている(特許文献1参照)。
ポリホスホネート系ポリマーの一般的な製造方法としては、例えば、酸ハライドと2価のフェノールを有機溶剤中で反応させる溶液重合法(A. Conix, Ind. Eng. Chem., 51, 147 (1959)、特公昭37−5599号公報)、酸ハライドと2価のフェノールを塩化マグネシウム等の触媒存在下で加熱する溶融重合法、2価の酸と2価のフェノールをジアリルカーボネートの存在下で加熱する溶融重合法(特公昭38−26299号公報)、水と相溶しない有機溶剤に溶解せしめた2価の酸ハライドとアルカリ水溶液に溶解せしめた2価のフェノールとを混合する界面重合法(W. M. Eareckson, J. Poly. Sci., XL 399 (1959)、および特公昭40−1959号公報)等が挙げられる。
また、ポリホスホネート−カーボネート共重合体については、界面重縮合を用いた重合体が知られている(特許文献2と特許文献3参照)。これらは、いずれもホスホネートオリゴマーを生成させた後、ホスゲンなどでポリマー主鎖延長をはかったものである。しかしながら、本発明者らは、界面重縮合ではホスホネートの結合が切れやすく、それがためにカーボネートとホスホネートの比が正確に制御しにくかったり、分子量が向上しにくいという問題があることを確認している。実際、特許文献2記載の方法によれば、ホスホネートの含有量がカーボネートよりも多くなると、力学特性が不十分となることが示されている。また、カーボネート残基の原料としてホスゲンを用いており、環境的にも技術的に好ましい重合法とは言い難い。
また、公知方法により得られたホスホネート−カーボネートランダム共重合体は、末端封止率が悪く、長時間加熱溶融あるいは繰り返し加熱することによって、分子量低下したり、それにともない力学特性や光学特性が低下するというような樹脂の着色や熱安定性の問題がしばしば生じていた。従来の末端封止方法は、ポリマーを高分子量化させた後にモノフェノールを添加して末端を封止していたが、分子量化後の活性末端種は、クロロホルメート末端・フェノール末端・残留ホスゲンからなり、これらの当量に応じ、モノフェノールである末端封止剤の添加量を変える必要がありまた、酸塩化物末端量以上のモノフェノールである末端封止剤を添加するとクラッキング反応が起こり分子量低下が起こり、ロット間での差が大きく再現性が悪いという問題が生じており、優れた製造法の開発が望まれていた。
特開2002−167440号公報 特開昭61−285225号公報 特開昭61−238826号公報
本発明者らは、上記の要求を満たすために鋭意検討を重ね、高屈折率、低分散(高いアッベ数)で更に成形性、耐熱性、耐衝撃性、色調などに優れた熱可塑性樹脂を見出し、本発明に至った。
本発明は、上記課題を解決するために以下の構成を有するものである。すなわち、
[1] 少なくともカーボネート残基、下記一般式(1)で示されるホスホン酸残基、下記一般式(2)で示される2価フェノール残基から構成されており、ホスホン酸残基とカーボネート残基のモル分率が式(I)を満足し、ポリマー末端基の50%以上が封止されていることを特徴とする樹脂。
Figure 2008056718
Figure 2008056718
[一般式(1)において、Rは有機基、Xは酸素、硫黄、セレンあるいは非共有電子対を表し、一般式(2)において、R21、R22は各々独立に水素原子、炭素数6〜20の芳香族基およびニトロ基からなる群から選ばれた原子または官能基を表し、p、qはp+q=0〜8の整数、Yは単結合、エーテル基、チオエーテル基、アルキレン基、アルキリデン基、シクロアルキレン基、シクロアルキリデン基、フェニルアルキリデン基、カルボニル基、スルホン基、脂肪族ホスフィンオキシド基、芳香族ホスフィンオキシド基、アルキルシラン基、ジアルキルシラン基およびフルオレン基からなる群からから選ばれた官能基を表す。構造式(1)、(2)はさらに置換されても良い。]
1≧(a)/{(a)+(b)}≧0.05 (I)
[式(I)中、(a)はホスホン酸残基のモル数、(b)はカーボネート残基のモル数を示す。]
[2] 3mm厚みの成形品にしたときの黄色度(以下△YIと記す)が10以下であることを特徴とする[1]に記載の樹脂。
[3] 曲げ弾性率が500MPa以上であり、かつ曲げ強さが25MPa以上である[1]〜[2]のいずれかに記載の樹脂。
[4] 溶媒中で2価フェノールモノマーを塩基存在下でカーボネート残基の前駆体分子および/またはホスホン酸残基の前駆体分子を反応させるホスホネート−カーボネート共重合体樹脂の製造方法において、2価フェノール残基の反応率が0%以上99%以下の段階でモノフェノールを添加する工程、カーボネート残基の前駆体分子および/またはホスホン酸残基の前駆体分子を作用させて高分子量化する工程、モノフェノールを添加する工程、分子量低下を確認する工程、、クロロホルメートを添加する工程を順におこなうことを特徴とする、数平均分子量が10000以上である、ホスホネート−カーボネート共重合体樹脂の製造方法。
[5] 溶媒中で、2価フェノールのカーボネートポリマー若しくはオリゴマーを塩基存在下に2価フェノールモノマーと反応せしめる工程、その後、ホスホン酸誘導体を反応せしめる工程を含むことを特徴とする[4]に記載のホスホネート−カーボネート共重合体の製造方法。
[6] 前記ホスホン酸誘導体を反応せしめる工程時に、溶液中における2価フェノール単位の濃度を1.0mol/L以上に維持する[5]に記載のホスホネート−カーボネート共重合体樹脂の製造方法。
[7] [1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂を含有してなる成型体。
[8] [7]に記載の成型体からなる光学レンズ。
[9] [1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂を含有してなるフィルム。
[10] [9]に記載のフィルムを構成材とする位相差フィルム。
である。

本発明によれば、無色透明で高屈折率、低分散(高いアッベ数)で更に成形性、耐熱性、耐衝撃性、色調などに優れた熱可塑性樹脂が得られる。汎用的な成形体あるいはフィルムの用途など各種分野に用いることができるほか、特にレンズあるいは光学用のフィルムなどにおいて、この樹脂を用いることにより優れた効果をより一層発揮するものである。
本発明者らは、無色透明で高屈折率、低分散(高いアッベ数)で更に成形性、耐熱性、耐衝撃性、色調などに優れた熱可塑性樹脂を見出すべく鋭意検討した結果、モノフェノールや、さらにそのクロロホルメイトで末端封止をおこない、末端基の50%以上を封止することによって、無色透明で高屈折、低分散で、さらに樹脂に熱を加えても分子量低下しない、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂が得られることを見いだした。
本発明の樹脂は、その分子鎖の末端基の50%以上が末端封止剤により封止されているのが必要である。末端基の60%以上が封止されているのがより好ましく、末端基の70%以上が封止されているのが更に好ましい。すべての末端基が封止されていることが最も好ましい。樹脂の末端基を封止することにより成形性がより優れると共に、耐加熱黄変性もより優れた樹脂が得られる。
末端封止率を求めるにあたっては、樹脂に存在している水酸基量を測定し、下記式(II)により末端封止率を求めることができる。水酸基量は、酢酸酸性下で四塩化チタンにより発色させ、480nmの波長の吸光度を測定することにより定量することもできるし、H−NMRにより末端基の特性シグナルの積分値より求めるのが精度・簡便さの点で好ましい。
末端封止率(%)=[{(A)−(B)}/A]×100 (II)
[式(II)中、(A)は分子鎖末端基総数(これは通常、ポリマー分子の数の2倍に等しい)を表し、(B)は水酸基末端の数を示す]
具体的には、以下に述べる方法で封止を行うものである。求核試薬であるモノフェノールのみで末端封止をおこなうことも可能だが、高分子量化後の活性末端種は、クロロホルメート末端・フェノール末端・残留ホスゲンからなり、これらの当量に応じ、末端封止剤であるモノフェノールの添加量を変える必要があり、酸塩化物末端量以上のモノフェノールを添加すると、クラッキング反応が起こり分子量低下が起こってしまい、またロット間での差が大きく再現性が悪いという課題がある。
そこで再現性の良い末端封止方法としては、最初に求核試薬であるモノフェノールを添加しておき、過剰に添加しても分子量低下をおこさない求電子試薬であるそのクロロホルメート体を最後に添加することが好ましい。
さらに、求核試薬であるモノフェノールと求電子試薬であるそのクロロホルメート体の2種類の末端封止剤を3段階にわけて添加し末端封止方法をおこなうことで、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂が得られることを見いだした。
末端封止剤の添加方法は、例えば、溶媒中で、2価フェノールモノマーをトリエチルアミンなどの塩基存在下でカーボネート残基の前駆体分子および/またはホスホン酸残基の前駆体分子を反応させるホスホネート−カーボネート共重合体樹脂の製造方法において、2価フェノール残基の反応率が0%以上99%以下の段階で、好ましくは約95%すなわち数平均分子量が約6000程度のとき、すなわち末端構造がOH末端になっている状態で、1回目の末端封止剤であるモノフェノールを添加し、モノフェノールによるクラッキング反応、すなわちエステル交換反応により末端封止剤構造を導入した後、カーボネート残基の前駆体分子、例えば、ホスゲン、トリホスゲンおよびまたはホスホン酸残基の前駆体分子であるホスホン酸誘導体を作用させて高分子量化した後、2回目の末端封止剤のモノフェノールを、好ましくは過剰に、添加することにより、末端封止反応および主鎖切断反応を起こさせ、好ましくは末端構造をすべてOH末端にし、GPCで分子量低下を確認した後、最後に過剰に添加しても主鎖切断反応を起こさないクロロホルメートを、好ましくはポリマーの末端量よりも過剰に、添加することで、好ましくはすべての末端を、封止するものである。ここで、過剰のクロロホルメートは、精製工程で完全に除去する事により、加熱溶融しても分子量低下しない非常に耐熱分解性に優れた樹脂を再現性良く合成することができる。
また、1回目の末端封止剤を添加するタイミングは末端構造がOH末端になっている状態、すなわち2価フェノール残基の反応率が0%以上99%の段階だが、高分子量化を容易に行うには、50%以上99%以下が好ましく、更に好ましくは90%以上99%以下である。
ここで、2価フェノール残基の反応率が0%とは、原料として末端封止剤であるモノフェノールを導入することをさす。
末端封止剤としては、一官能物質として、フェノール、クレゾール、p−tert−ブチルフェノール等の一価フェノール類、安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライド、フェニルクロロホルメート等の一価酸クロライド類が挙げられるが、H−NMRによりメトキシ基の特性シグナルの積分値より求めることができるp−メトキシフェノールとp−メトキシフェノールクロロホルメートが特に好ましい。
本発明において式(I)はホスホン酸残基の共重合分率を表す式であり、すなわち、(a)は下記一般式(1)に示すホスホン酸残基のモル数であり、(b)はカーボネート残基のモル数を示す。一般式(1)で示されるホスホン酸残基のモル分率が0.05未満である場合には、ポリマーの高屈折性が発現せず、本発明の効果が得られ難い。さらに、ホスホン酸残基のモル分率である
〔(a)/{(a)+(b)}〕の値は0.25以上の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.6以上である。
Figure 2008056718
また、本発明の樹脂は、高アッベ数化のために、ビシクロアルキル構造を有するホスホン酸残基を含むことが好ましい。光学物質の光の分散の度合いを表す指標としては一般にアッベ数が用いられ、次式(III)によって算出される。すなわちその数値が大きいほど低分散であることを示している。
アッベ数(νd)=(nd−1)/(nf−nc) (III)
[式(III)中、nd:d線(波長587.6nm)屈折率、nf:f線(波長486.1nm)屈折率、nc:c(波長656.3nm)線屈折率を示す]
通常アッベ数と屈折率は負の相関関係があり、それぞれの特性をともに向上させるのは容易ではない。本発明の樹脂は、従来のポリカーボネート以上の高屈折率を維持しつつ高いアッベ数を有した樹脂であり、例えば眼鏡レンズ用途に用いる樹脂においてはアッベ数は30以上であることが好ましく、より好ましくは31以上である。
ビシクロアルキル構造を有するホスホン酸残基において、かかるビシクロアルキル構造とリン原子の結合については、空間にSP炭素をより多く含有させるために、ビシクロアルキル骨格に直接リン原子が結合していることが最も好ましいが、メチレン基あるいはエチレン基などのアルキレン基を間に介して結合していてもよい。ポリマー構造を疎水性にするという観点から、さらに好適なビシクロアルキル基を有するホスホン酸残基は、下記一般式(3)に示す構造のホスホン酸残基である。
Figure 2008056718
一般式(3)中、l、m、nは、それぞれ独立に1〜4の整数を表す。この範囲にあることにより、単位空間あたりにSP炭素を多く含有させることができる。l、m、nは、より好ましくは1〜3の整数である。また、Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子および非共有電子対からなる群から選ばれた原子または電子対を表す。また、一般式(3)は、さらに置換されていても良い。
ビシクロアルキル構造上におけるリン原子との結合位置は任意であり、橋頭あるいは橋どちらであってもよい。置換基Rは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基およびハロゲン原子からなる群から選ばれた官能基または原子であり、またrは0〜4の整数である。rが2以上の整数である場合、同一原子ビシクロアルキル構造上に、異なる置換基Rを2種以上含んでもよい。また、熱可塑性樹脂中に、l、m、n、RあるいはXの異なるホスホン酸残基を2種以上含んでもよい。
かかるビシクロアルキル基の好適な構造を例示すると、ビシクロ[2,2,1]−1−ヘプチル(1−ノルボルニル)、ビシクロ[2,2,1]−2−ヘプチル(2−ノルボルニル)、ビシクロ[2,2,1]−7−ヘプチル(7−ノルボルニル)、ビシクロ[2,2,2]−1−オクチル、ビシクロ[2,2,2]−2−オクチル、ビシクロ[3,2,1]−2−オクチル、およびビシクロ[3,2,2]−1−ノニル、ビシクロ[4,2,2]−2−デカニル等が挙げられる。これらは1種類でも、複数種含まれていてもよい。
ビシクロアルキル構造上の置換基Rは、力学特性や熱特性を制御すべく、光学特性を損なわない程度に導入されていてもよいが、単位空間あたりにSP炭素をより多く含有させるという観点から、置換基Rとしてはメチル基、エチル基およびハロゲン基などコンパクトな構造が好ましい。また、その置換基rも同様の観点から、4以下が好ましく、より好ましくは2以下である。
また、本発明の樹脂から得られる幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状の成形体の黄色度は、好ましくは10以下であり、より好ましくは5以下である。
なお、黄色度は以下に定義される。試料をデジタルカラーコンピューター(スガ試験機(株)社製:SM−7CH)を用いて透過法により3刺激値(X、Y、Z)を求めた。黄色度(△YI)は、試料を装着して(X、Y、Z)を求め、下記式(IV)によりYI値(YI)を求めた後、試料を外した状態で同様にX、Y、Zを求め、同様にリファレンス値YIを求め、下記式(V)より算出した。
YI=100×(1.28X−1.06Z)/Y 式(IV)
X、Y、Z:標準光Cにおける試料の三刺激値
△YI=YI2−YI1 式(V)
△YI:黄色度、YI1:リファレンス値、YI2:試料の測定値
さらに本発明の樹脂は、数平均分子量は、数平均分子量が10000以上であることから、成形品の機械的強度も満足いくものになる。数平均分子量が10000未満では力学特性的に不十分なものになる。
また、本発明樹脂の曲げ弾性率は、500MPa以上かつ曲げ強さが25MPa以上であることが、成形品の扱い易さという観点から望ましい。樹脂は、高い柔軟性と非破砕性を有することが好ましく、具体的には曲げ弾性率は、500MPa以上かつ曲げ強さが25MPa以上であることが好ましい。上限については特に制限はないが、曲げ弾性率は、100000MPa以下かつ曲げ強さが10000MPa以下であることが樹脂のその他の特性とのバランスをとるという観点から好ましい。
また、本発明者らは、本発明樹脂を含有するガット、プレートあるいはフィルム状成型体は、優れた難燃性をも具備していることを見出した。
さらに本発明者らは、本発明樹脂を光学異方体に成型した場合、位相差フィルム(別称として、位相差板、λ/4板、あるいは円偏光板)用途において、優れた複屈折/波長分散特性を示すことを見出した。一般的な樹脂の光学異方体、例えば一軸延伸したフィルムに光を透過させた場合、その光の波長が短いほど複屈折率が大きくなり、その度合いは波長の短い領域ほど大きいという傾向がある。位相差フィルム用途においては、複屈折率と波長の関係に関して次の条件を満たすものが光学的に理想であるといえる。すなわち、
(イ)百ミクロン以下のフィルムにおいて十分な大きさの複屈折率を有すること、
(ロ)このとき複屈折率の波長による変化が一定、すなわち複屈折率と波長の関係が比例関係(一次の関係)であること、
である。
これらの条件を満たし、複屈折/波長分散特性の異なる2種の光学異方フィルムを組み合わせることによって理想的な位相差フィルムを作成することができる。本発明者らは、本発明樹脂を製膜して得られたフィルムを延伸することによって光学異方体とした場合、従来の樹脂に比べ複屈折と波長の関係がより一次の関係に近くなること、またこの本発明の延伸フィルムと従来のポリアルカン系樹脂の光学異方フィルムとを組み合わせることにより、優れた波長分散特性を有する位相差フィルムが得られることを見出した。さらに重合体の分子量についてはそれが高いことがフィルムの力学特性に関してだけでなく光学的な特性においても重要である。すなわち、ポリマーの分子量が高いほど、一軸延伸時のポリマー主鎖の配向が強く複屈折率が大きくなり、従ってより薄いフィルムで機能発現できるようになる。本発明者らは、本発明樹脂を当該用途に適用する際、従来より更なる薄膜化が達成できることを見出した。
上記一般式(1)で表される化合物のリン原子上の置換基Rの具体例としては、フェニル、ハロ置換フェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、エチル、イソプロピル、シクロヘキシル、ビニル、アリル、ベンジル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ置換アルキル、アルキルサルファイド基等が挙げられる。このようなホスホン酸残基を構成するホスホン酸を具体的に例示すると、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、イソブチルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、n−ペンチルホスホン酸、ネオペンチルホスホン酸、シクロヘキシルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、クロロメチルホスホン酸、ジクロロメチルホスホン酸、ブロモメチルホスホン酸、ジブロモメチルホスホン酸、2−クロロエチルホスホン酸、1,2−ジクロロエチルホスホン酸、2−ブロモエチルホスホン酸、1,2−ジブロモエチルホスホン酸、3−クロロプロピルホスホン酸、2,3−ジクロロプロピルホスホン酸3−ブロモプロピルホスホン酸、2,3−ジブロモプロピルホスホン酸、2−クロロー1−メチルエチルホスホン酸、1,2−ジクロロー1−メチルエチルホスホン酸、2−ブロモー1−メチルエチルホスホン酸、1,2−ジブロモー1−メチルエチルホスホン酸、4−クロロブチルホスホン酸、3,4−ジクロロブチルホスホン酸、4−ブロモブチルホスホン酸、3,4−ジブロモブチルホスホン酸、3−クロロー1−メチルプロピルホスホン酸、2,3−ジクロロ−1−メチルプロピルホスホン酸、3−ブロモ−1メチルプロピルホスホン酸、2,3−ジブロモ−1−メチルホスホン酸、1−クロロメチルプロピルホスホン酸、1−クロロー1−クロロメチルプロピルホスホン酸、1−ブロモメチルプロピルホスホン酸、1−ブロモ−1−ブロモメチルプロピルホスホン酸、5−クロロペンチルホスホン酸、4,5−ジクロロペンチルホスホン酸、5−ブロモペンチルホスホン酸、4,5−ジブロモペンチルホスホン酸、1−ヒドロキシメチルホスホン酸、2−ヒドロキシエチルホスホン酸、3−ヒドロキシプロピルホスホン酸、4−ヒドロキシブチルホスホン酸、5−ヒドロキシペンチルホスホン酸、1−アミノメチルホスホン酸、2−アミノエチルホスホン酸、3−アミノプロピルホスホン酸、4−アミノブチルホスホン酸、5−アミノペンチルホスホン酸、メチルチオメチルホスホン酸、メチルチオエチルホスホン酸、メチルチオプロピルホスホン酸、メチルチオブチルホスホン酸、エチルチオメチルホスホン酸、エチルチオエチルホスホン酸、エチルチオプロピルホスホン酸、プロピルチオメチルホスホン酸、プロピルチオエチルホスホン酸、ブチルチオメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、4−クロロフェニルホスホン酸、3,4−ジクロロフェニルホスホン酸、3,5−ジクロロフェニルホスホン酸、4−ブロモフェニルホスホン酸、3,4−ブロモフェニルホスホン酸、3,5−ブロモフェニルホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、3,4−ジメトキシフェニルホスホン酸、1−ナフチルホスホン酸、2−ナフチルホスホン酸、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチルホスホン酸、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、4−ブロモフェニルメチルホスホン酸、3,4−ジブロモフェニルメチルホスホン酸、3,5−ジブロモフェニルメチルホスホン酸、2−フェニルエチルホスホン酸、2−(4−ブロモフェニル)エチルホスホン酸、2−(3,4−ジブロモフェニル)エチルホスホン酸、2−(3,5−ジブロモフェニル)エチルホスホン酸、3−フェニルプロピルホスホン酸、3−(4−ブロモフェニル)プロピルホスホン酸、3−(3,4−ジブロモフェニル)プロピルホスホン酸、3−(3,5−ジブロモフェニル)プロピルホスホン酸、4−フェニルブチルホスホン酸、4−(4−ブロモフェニル)ブチルホスホン酸、4−(3,4−ジブロモフェニル)ブチルホスホン酸、4−(3,5−ジブロモフェニル)ブチルホスホン酸、2−ピリジルホスホン酸、3−ピリジルホスホン酸、4−ピリジルホスホン酸、1−ピロリジノメチルホスホン酸、1−ピロリジノエチルホスホン酸、1−ピロリジノプロピルホスホン酸、1−ピロリジノブチルホスホン酸、ピロール−1−ホスホン酸、ピロール−2−ホスホン酸、ピロール−3−ホスホン酸、チオフェン−2−ホスホン酸、チオフェン−3−ホスホン酸、ジチアン−2−ホスホン酸、トリチアン−2−ホスホン酸、フラン−2−ホスホン酸、フラン−3−ホスホン酸、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸などが挙げられ、またこれらのリン原子に2重結合で結合している酸素原子が硫黄原子に置換されたチオホスホン酸も同様に挙げられる。これらは1種類でも、複数種含まれていてもよい。また、これらホスホン酸はその酸塩化物、エステル、アミドなどのホスホン酸誘導体であってもよい。
またこれらホスホン酸残基については、それぞれ対応する3価のリン官能基であるホスホナイト残基に一部置き換えてもよい。これにより樹脂の耐酸化性を付与することができる。ホスホン酸残基をホスホナイト残基に一部置き換えた場合、式(I)における、〔(a)/{(a)+(b)}〕のなかの(a)にその置換されたホスホナイト残基を含むものとするが、光学特性等の特性安定性を考慮すると、その置換比率は50%以下が好ましく、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは10%以下である。
また、下記一般式(2)で表される2価フェノール残基を構成する2価フェノールを具体的に例示すると、
Figure 2008056718
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビスフェノールフローレン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、4,4’−〔1,4−フェニレン−ビス(2−プロピリデン)〕−ビス(2−メチルフェノール)、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、テルペンジフェノール、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5,5−テトラメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,4−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−エチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン等が挙げられ、これらは1種類でも、複数種含まれていてもよい。これら2価フェノールは得られるポリマーの性能に応じて用いることができる。
これら2価フェノールの中でも光学特性および力学特性的には、一般式(2)で示されるYが分岐鎖含有アルキリデン基、シクロアルキリデン基、分岐鎖含有シクロアルキリデン基が特に好適であり、特に好ましくは1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタンである。
また、本発明のポリマーは得られるポリマーの性能に応じて3価フェノールを共重合することができる。
Figure 2008056718
上記一般式(4)で表される3価フェノール残基を構成する3価フェノールを具体的に例示すると、次のものが挙げられる。4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチル)−フェニル)−メチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル)−フェニル)−メチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−メチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルプロピル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチルプロピル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−プロピルプロピル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルブチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルペンチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルヘキシル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルヘプチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−プロピリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−ブチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−ペンチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−ヘキシリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−へプチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジナフチルメチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−トリフロロメチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジトリフロロメチルメチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3−メチルビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3,5−ジメチルビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3−(1−メチルエチル)ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3,5−ジ(1−メチルエチル)ビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3−シクロヘキシルビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3,5−ジシクロヘキシルビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3−フェニルビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3,5−ジフェニルビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3−ナフチルビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3,5−ジナフチルビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3−フロロビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3,5−ジフロロビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3−ブロモビスフェノール、4,4′−[(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3,5−ジブロモビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3−クロロビスフェノール、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]−3,5−ジクロロビスフェノール等が挙げられる。上記の3価フェノール誘導体の中でも、特に4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノールは、その製造が容易であって良好な水溶性を有し、ホスホネートカーボネート共重合体のインタラクションを容易に制御できるからより好ましい。
また、ジヒドロキシベンゼンを本発明の効果が損なわれない範囲で用いることができ、これらジヒドロキシベンゼンとしては、レゾルシノール、ハイドロキノン、1,2−ジヒドロキシベンゼン等が挙げられ、これらは1種類でも、複数種含まれていてもよい。
また、本発明のポリマーは必ずしも直鎖状である必要はなく、得られるポリマーの性能に応じて多価フェノールを共重合することができる。このような多価フェノールを具体的に例示すると、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−〔1−〔4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノール、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,6−ビス〔(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル〕−4−メチルフェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−メチルフェニル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、4−〔(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕−1,3−ジヒドロキシベンゼン、4−〔(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ビス〔1−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔1−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕ベンゼン、2,4−ビス〔(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,3−ジヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−エトキシフェノール、2−〔ビス(2,3−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、3−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、3,6−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4,6−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(2,3,6−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、3−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、2,4,6−〔トリス(4−ヒドロキシフェニルメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,1,2,2−テトラ(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラ(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,4−〔〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕〕ベンゼン、1,4−ジ〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ベンゼン、1,4−ジ〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ベンゼン、4−〔1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕アニリン、(2,4−ジヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、1,3,3−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられ、これらは1種類でも、複数種含まれていてもよい。
本発明樹脂の製造方法としては、酸ハロゲン化物と2価のフェノールを有機溶剤中で反応させる溶液重合法(例えば、特公昭37−5599号公報参照。)や、酸ハロゲン化物と2価のフェノールを塩化マグネシウム等の触媒存在下で加熱する溶融重合法、2価の酸と2価のフェノールをジアリルカーボネートの存在下で加熱する溶融重合法(例えば、特公昭38−26299号公報参照。)、および水と相溶しない有機溶剤に溶解せしめた2価の酸ハロゲン化物とアルカリ水溶液に溶解せしめた2価のフェノールとを混合する界面重合法(例えば、特公昭40−1959号公報参照。)等が挙げられるが、特に溶液重合法が好適に採用される。
溶液重合法について一例を説明すると、ホスホン酸残基の前駆体分子であるホスホン酸誘導体と、2価フェノールをトリエチルアミンなどの塩基存在下混合して反応させ、続いてカーボネート残基の前駆体分子、例えば、ホスゲン、トリホスゲンなどを添加して縮合重合することによって、本発明の樹脂を得ることができる。ホスホン酸誘導体、カーボネート誘導体としては、それらのハロゲン化物、酸無水物およびエステル等が用いられるが、その種類や2価フェノールに作用させる順序は特に限定されない。
本発明のポリマーには、その特性を損なわない範囲で、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、チオエーテル系、燐系の各種抗酸化剤を添加することができる。
また、他のポリマーが含まれたものであっても良く、このようなポリマーの例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、パラオキシベンゾイル系ポリエステル、ポリアリーレート、ポリスルフィド等が挙げられる。
また、本発明のポリマーは、有機溶媒に対して高い溶解性を有しており、このような溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トルエン、キシレン、γ−ブチロラクトン、ベンジルアルコール、イソホロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ヘキサフルオロイソプロパノール等が挙げられる。さらに、本発明のポリマーは非晶性であるが、非晶性であるかどうかは公知の方法、例えば示差走差熱量分析(DSC)や動的粘弾性測定等により融点が存在しているかどうかを確認すればよい。
本発明に係る樹脂の例えばレンズなどの成形体を得る方法については、公知の方法が採用でき、特に限定されないが、例えば、射出成型法、プレス成型法、圧縮成型法、トランスファ成型法、積層成型法、押し出し成型法などがあげられる。 またフィルム状に成型する場合には、溶液製膜法、溶融押し出し製膜法などが挙げられ、特に溶液製膜が好適に採用される。溶液製膜法においては前記有機溶媒を適宜用いることができるが、好ましくはハロゲン含有溶媒であり、特に好ましくは塩化メチレンである。
本発明の具体的実施態様を以下に実施例をもって述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。樹脂の評価は以下の方法により行った。
〔分子量〕
樹脂の0.2重量%クロロホルム溶液を、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)〔東ソー(株)製、GPC8020〕により測定し、数平均分子量(Mn)を求めた。尚、分子量は、標準ポリスチレン換算の値として求める。
〔曲げ弾性率と曲げ強さ〕
ロボットテンシロン(オリエンテック社製:RTM100)を使用し、幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmとなるように作製した樹脂成形体の曲げ弾性率と曲げ強さを測定した。測定条件は、温度23℃、相対湿度50%RHである。
〔核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定〕
カーボネートオリゴマーの重合度は重水素化クロロホルムにて核磁気共鳴装置(日本電子株式会社:EX270型)を用い、末端を示すスペクトルとポリマーユニットを示すスペクトルの積分比からその平均値を算出した。
末端封止率は、末端を示す特性シグナルの積分値より水酸基末端の数を測定し、前期式(II)から末端封止率を求めた。
〔ポリマー中の水酸基量〕
(1)25ミリリットルメスフラスコに試料0.1gを精秤し、約5ミリリットルの塩化メチレンに溶解させた。
(2)さらに、四塩化チタン溶液10ミリリットルと酢酸溶液4ミリリットルを加え、塩化メチレンで25ミリリットルに定容した。
(3)480nm(光路長10nm)で吸光度を島津製作所社製のUV−240で測定した。
(4)同様にして1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを用いて検量線を作成し、試料液の吸光度からOH基量を算出した。なお、上記の四塩化チタン溶液は、四塩化チタン2.23ミリリットルを秤りとり酢酸1.0ミリリットルを加え、塩化メチレンで100ミリリットルに希釈したものであり、酢酸溶液は酢酸5ミリリットルを塩化メチレン100ミリリットルに希釈したものである。
〔熱分解度の評価〕
樹脂1gを試験管に封入し、アルゴン雰囲気下(50ml/min)、300℃のGLASS TUBE OVEN(SIBATA GTO−350RD)で30分加熱した後の数平均分子量を上記方法で測定したものをMn2とし、加熱前の数平均分子量Mn1とMn2との差をMn1で除した値を求め熱分解度とした。熱分解度が0.06未満のものを優、0.06以上0.08未満のものを良、0.08以上0.1未満のものを可、0.1以上のものを不良とした。
〔光学特性〕
樹脂成型品をサンドペーパー、バフにて互いに直行する2面を鏡面仕上げになるように研磨し、屈折計(カルニュー光学工業(株)製:KPR−2)にて評価を行い、d線(波長:587.6nm)屈折率(nd)、式(8)より求められるアッベ数(νd)を測定した。
〔リタデーションの測定〕
本発明の樹脂を製膜ならびに一軸延伸したもののリタデーションは大塚電子製RETS−1100(セルギャップ測定装置)を用いて測定した。
[1]熱可塑性樹脂の合成
実施例1
〔カーボネートオリゴマー原料の調製:溶融法〕
ガラス製ナスフラスコ(1L)に1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(0.67mol:180g)と炭酸ジフェニル(120g)、ナトリウムフェノラート(1g)を秤りとった。窒素パージ後、220℃まで加熱し、内容物の融解させ、220℃のまま1時間かけて減圧し約60mmHgとした。さらに約0.4mmHgまで減圧し、そのまま2時間加熱した。冷却後、窒素パージしオリゴマーをDPC転化率で93%で得た。得られたカーボネートオリゴマーはNMRにより、平均でビスフェノール/カーボネート=4/3のオリゴマーであった。
〔重合〕
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)およびトリエチルアミン(17.3ml:124.9mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(9ml)を10分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。
この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(1ml:6.3mmol)の塩化メチレン2ml溶液を5分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(2.2ml:15.8mmol)の塩化メチレン4ml溶液を10分間かけて滴下し20℃で1時間攪拌し、続いてこの溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(12.7ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌し、1回目の末端封止剤であるp−メトキシフェノール(0.047g:0.38mmol)の塩化メチレン溶液(5ml)を加え20℃で60分間攪拌した。この時点での2価フェノールの反応率は95%で、数平均分子量は約6000であった。
その後反応溶液に0.1NHCl水溶液および蒸留水を注ぎ、水溶液層のpHを6.5付近にして有機層を脱塩洗浄し分離した。
この溶液にハイドロサルファイトが溶解しているアルカリ金属化合物である苛性ソーダ水溶液を添加し、続いてこの溶液に濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(3.0ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌し、2回目の末端封止剤であるp−メトキシフェノール(0.047g:0.38mmol)の塩化メチレン溶液(5ml)を加え20℃で3時間攪拌した後、GPCで分子量低下を確認し、3回目の末端封止剤であるp−メトキシフェノールクロロホルメート(0.28g1.52mmol) 加え20℃で1時間攪拌した。
その後反応溶液に塩化メチレン50mlを注入し、0.1NHCl水溶液および蒸留水を注ぎ、水溶液層のpHを6.5付近にして有機層を脱塩洗浄し分離した。その後分離した有機層を0.5μmのメンブレンフィルターで濾過し、エタノール2000mlに投入して再沈しポリマーを濾取した後、100℃で20時間乾燥して目的の樹脂粉末を合計収率90%で得た。得られた樹脂粉末の分子量、末端封止率、熱分解度を前記のごとく評価した。
実施例2
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)およびトリエチルアミン(17.3ml:124.9mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(1ml:6.3mmol)の塩化メチレン2ml溶液を5分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(2.2ml:15.8mmol)の塩化メチレン4ml溶液を10分間かけて滴下し20℃で1時間攪拌し、続いてこの溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(12.7ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌し、1回目の末端封止剤であるp−メトキシフェノール(0.047g:0.38mmol)の塩化メチレン溶液(5ml)を加え20℃で60分間攪拌した。この時点での2価フェノールの反応率は95%で、数平均分子量は約6000であった。
この溶液に氷冷下トリエチルアミン(1ml:7.6mol)を加え、続いてこの溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(1.8ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌し、2回目の末端封止剤であるp−メトキシフェノール(0.047g:0.38mmol)の塩化メチレン溶液(5ml)を加え20℃で3時間攪拌した後、GPCで分子量低下を確認し、3回目の末端封止剤であるp−メトキシフェノールクロロホルメート(0.28g1.52mmol) 加え20℃で1時間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理し、ポリマーを収率92%で得、成形して評価した。
実施例3
第1の重合として窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(9g)およびトリエチルアミン(18.9ml:136.3mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(3ml:18.9mmol)の塩化メチレン6ml溶液を5分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(6.6ml:47.3mmol)の塩化メチレン13ml溶液を10分間かけて滴下し20℃で60分間攪拌し、1回目の末端封止剤であるp−メトキシフェノール(0.047g:0.38mmol)の塩化メチレン溶液(5ml)を加え20℃で60分間攪拌した。この時点での2価フェノールの反応率は95%で、数平均分子量は約6000であった。
この溶液に氷冷下トリエチルアミン(1.2ml:8.7mmol)を加え、続いてこの溶液に20℃でフェニルホスホン酸ジクロライド(0.6ml:4.6mmol)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌し、2回目の末端封止剤であるp−メトキシフェノール(0.047g:0.38mmol)の塩化メチレン溶液(5ml)を加え20℃で3時間攪拌した後、GPCで分子量低下を確認し、3回目の末端封止剤であるp−メトキシフェノールクロロホルメート(0.28g1.52mmol) 加え20℃で1時間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理し、ポリマーを収率92%で得、成形して評価した。
実施例4
フェニルホスホン酸ジクロライドの代わりにフェニルチオホスホン酸ジクロライドを用いた以外は実施例1と同様に重合しポリマーが合計収率94%で得られた。得られた樹脂を実施例1と同様に評価した。
実施例5
ノルボルニルホスホン酸ジクロライドの代わりにノルボルニルチオホスホン酸ジクロライドを用いた以外は実施例1と同様に重合しポリマーが合計収率93%で得られた。得られた樹脂を実施例1と同様に評価した。
実施例6
実施例1で得られた樹脂から、溶液キャスティング法(塩化メチレン溶液)によって、幅200mm、厚さ25μmの位相差フィルムを作成した。該フィルムを延伸温度165℃、延伸速度100mm/minにて1.3倍に延伸した。延伸後のフィルム厚みは18μmであった。
上記条件によって得られた位相差フィルムは、波長550nmにおけるリタデーションが143.6nm、波長450nmのそれは157.3nm、波長650nmのそれは135.7nmを示した。
比較例1
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)およびトリエチルアミン(18.4ml:132.5mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(1ml:6.3mmol)の塩化メチレン2ml溶液を5分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(2.2ml:15.8mmol)の塩化メチレン4ml溶液を10分間かけて滴下し20℃で1時間攪拌し、続いてこの溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(12.7ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。この溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(1.8ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理し、ポリマーを収率92%で得、成形して評価した。
比較例2
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(9g)およびトリエチルアミン(18.9ml:136.3mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(3ml:18.9mmol)の塩化メチレン6ml溶液を5分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(6.6ml:47.3mmol)の塩化メチレン13ml溶液を10分間かけて滴下し20℃で60分間攪拌した。2価フェノールおよび/または2価アルコールの反応率は95%であった。この時点での数平均分子量は約6000であった。
この溶液に氷冷下トリエチルアミン(1.2ml:8.7mmol)を加え、続いてこの溶液に20℃でフェニルホスホン酸ジクロライド(0.6ml:4.6mmol)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理し、ポリマーを収率92%で得、成形して評価した。
比較例3
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)およびトリエチルアミン(17.3ml:124.9mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(9ml)を10分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。
この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(1ml:6.3mmol)の塩化メチレン2ml溶液を5分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(2.2ml:15.8mmol)の塩化メチレン4ml溶液を10分間かけて滴下し20℃で1時間攪拌し、続いてこの溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(12.7ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。
その後反応溶液に0.1NHCl水溶液および蒸留水を注ぎ、水溶液層のpHを6.5付近にして有機層を脱塩洗浄し分離した。
この溶液にハイドロサルファイトが溶解しているアルカリ金属化合物である苛性ソーダ水溶液を添加し、続いてこの溶液に濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(3.0ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌し、末端封止剤であるp−メトキシフェノール(0.094g:0.76mmol)の塩化メチレン溶液(5ml)を加え20℃で3時間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理し、ポリマーを収率92%で得、成形して評価した。
比較例4
窒素雰囲気下、塩化メチレン(30ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、4,4′−[1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)−フェニル)−エチリデン]ビスフェノール(0.04g:0.09mmol)およびトリエチルアミン(17.3ml:124.9mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(9ml)を10分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌し、1回目の末端封止剤であるp−メトキシフェノール(0.047g:0.38mmol)の塩化メチレン溶液(5ml)を加え20℃で60分間攪拌した。
この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(1ml:6.3mmol)の塩化メチレン2ml溶液を5分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(2.2ml:15.8mmol)の塩化メチレン4ml溶液を10分間かけて滴下し20℃で1時間攪拌し、続いてこの溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(12.7ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。
その後反応溶液に0.1NHCl水溶液および蒸留水を注ぎ、水溶液層のpHを6.5付近にして有機層を脱塩洗浄し分離した。
この溶液にハイドロサルファイトが溶解しているアルカリ金属化合物である苛性ソーダ水溶液を添加し、続いてこの溶液に濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(3.0ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌し、末端封止剤であるp−メトキシフェノール(0.094g:0.76mmol)の塩化メチレン溶液(5ml)を加え20℃で3時間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理し、ポリマーを収率92%で得、成形して評価した。
比較例5
比較例1で得られた樹脂から、溶液キャスティング法(塩化メチレン溶液)によって、幅200mm、厚さ25μmのフィルムを作成した。該フィルムを延伸温度150℃、延伸速度180mm/minにて1.3倍に延伸した。延伸後のフィルム厚みは18μmであった。
上記条件によって得られたフィルムは、波長550nmにおけるリタデーションが47.6nm、波長450nmのそれは51.9nm、波長650nmのそれは44.9nmを示した。
実施例1〜5と比較例1〜4で作成した樹脂の評価結果を表1に示す。
[2]樹脂からなる板状成形体の作製
実施例1〜5、比較例1〜4については[1]で得られた熱可塑性樹脂粉末を射出成形法により、幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状の透明樹脂成形体を作製し、黄色度、曲げ弾性率、曲げ強さを測定した。各実施例および比較例における測定値を、表1に示した。また本発明の樹脂からなる成形体は無色透明で高屈折率、低分散であることから、光学レンズとして用いることができる。
[3]樹脂からなる位相差フィルムの作製
実施例1記載の樹脂をさらに250℃に加熱溶融押し出しによりペレット化し、それを 溶液キャスティング法(塩化メチレン溶液)によって幅200mm、厚さ25μmの位相差フィルムを作成した。該フィルムを延伸温度165℃、延伸速度100mm/minにて1.3倍に延伸した。延伸後のフィルム厚みは18μmであった。
上記条件によって得られた位相差フィルムは、波長550nmにおけるリタデーションが143.6nm、波長450nmのそれは157.3nm、波長650nmのそれは135.7nmを示した。
Figure 2008056718
比較例1および2から末端封止をおこなっていない樹脂は、末端基のほとんどがOH末端のため、熱分解度や樹脂の黄色度が大きく、曲げ弾性率や曲げ強度も不十分であることがわかる。
また比較例3および4から、従来の末端封止方法で製造した樹脂は末端封止率が低いため、上記同様に色調、耐熱性、力学特性が不十分であることがわかる。
比べて本発明の樹脂は、末端封止率が高いため熱分解度や樹脂の黄色度が小さく、曲げ弾性率や曲げ強度も優れていることがわかる。また位相差フィルム用途としては本発明の樹脂が高い力学特性を維持しているが故に、一軸延伸時に強く配向し、より大きな複屈折率が生じ、位相差フィルムの薄膜化に有効であることがわかる。
無色透明で高屈折率、低分散(高いアッベ数)で更に成形性、耐熱性、耐衝撃性、色調などに優れた樹脂は、光学用樹脂またはフィルムとして利用される。

Claims (10)

  1. 少なくともカーボネート残基、下記一般式(1)で示されるホスホン酸残基、下記一般式(2)で示される2価フェノール残基から構成されており、ホスホン酸残基とカーボネート残基のモル分率が式(I)を満足し、ポリマー末端基の50%以上が封止されていることを特徴とする樹脂。
    Figure 2008056718
    Figure 2008056718
    [一般式(1)において、Rは有機基、Xは酸素、硫黄、セレンあるいは非共有電子対を表し、一般式(2)において、R21、R22は各々独立に水素原子、炭素数6〜20の芳香族基およびニトロ基からなる群から選ばれた原子または官能基を表し、p、qはp+q=0〜8の整数、Yは単結合、エーテル基、チオエーテル基、アルキレン基、アルキリデン基、シクロアルキレン基、シクロアルキリデン基、フェニルアルキリデン基、カルボニル基、スルホン基、脂肪族ホスフィンオキシド基、芳香族ホスフィンオキシド基、アルキルシラン基、ジアルキルシラン基およびフルオレン基からなる群からから選ばれた官能基を表す。構造式(1)、(2)はさらに置換されても良い。]
    1≧(a)/{(a)+(b)}≧0.05 (I)
    [式(I)中、(a)はホスホン酸残基のモル数、(b)はカーボネート残基のモル数を示す。]
  2. 3mm厚みの成形品にしたときの黄色度(以下△YIと記す)が10以下である請求項1に記載の樹脂。
  3. 曲げ弾性率が500MPa以上であり、かつ曲げ強さが25MPa以上である請求項1〜2のいずれかに記載の樹脂。
  4. 溶媒中で2価フェノールモノマーを塩基存在下でカーボネート残基の前駆体分子および/またはホスホン酸残基の前駆体分子を反応させるホスホネート−カーボネート共重合体樹脂の製造方法において、2価フェノール残基の反応率が0%以上99%以下の段階でモノフェノールを添加する工程、カーボネート残基の前駆体分子および/またはホスホン酸残基の前駆体分子を作用させて高分子量化する工程、モノフェノールを添加する工程、分子量低下を確認する工程、、クロロホルメートを添加する工程を順におこなうことを特徴とする、数平均分子量が10000以上である、ホスホネート−カーボネート共重合体樹脂の製造方法。
  5. 溶媒中で、2価フェノールのカーボネートポリマー若しくはオリゴマーを塩基存在下に2価フェノールモノマーと反応せしめる工程、その後、ホスホン酸誘導体を反応せしめる工程を含む請求項4記載のホスホネート−カーボネート共重合体樹脂の製造方法。
  6. 前記ホスホン酸誘導体を反応せしめる工程時に、溶液中における2価フェノール単位の濃度を1.0mol/L以上に維持する請求項5記載のホスホネート−カーボネート共重合体樹脂の製造方法。
  7. 請求項1〜3いずれかに記載の樹脂を含有してなる成型体。
  8. 請求項7に記載の成型体からなる光学レンズ。
  9. 請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂を含有してなるフィルム。
  10. 請求項9に記載のフィルムを構成材とする位相差フィルム。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013540168A (ja) * 2010-09-16 2013-10-31 エフアールエックス ポリマーズ、インク. ビスフェノールを基本とした高分子量ランダムコポリ(ホスホネートカーボネート)
JP2015518076A (ja) * 2012-04-27 2015-06-25 バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフトBayer MaterialScience AG 加工中安定状態を保つpc/abs組成物
JP2017105996A (ja) * 2015-12-08 2017-06-15 本州化学工業株式会社 芳香族ポリカーボネートオリゴマー
EP3529659B1 (en) * 2016-10-19 2024-09-18 Essilor International Temporary polar patches

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