JP4161760B2 - 樹脂組成物及び成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明でかつ光学特性と耐衝撃性に優れた光学用に好適な熱可塑性樹脂とその熱可塑性樹脂からなる成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
無色透明材料の主要な用途として光学レンズやフィルムがあるが、その中で眼鏡用レンズについては、薄型化、軽量化あるいはファッション性等の観点から活発な材料開発が行われており、現在では、耐衝撃性と軽量性等の利点から、市場の90%は樹脂レンズが占めるようになっている。
【0003】
具体的に、光学用の熱可塑性樹脂の代表的なものとして、ポリカーボネートがある。このポリカーボネートは、その無色透明性や耐衝撃性を生かしてディスク用基板等に用いられている。このポリカーボネートをレンズに適用する場合、熱可塑性であるため成形性がよく、熱硬化性樹脂に比べて格段にレンズ製造コストを安くできるという利点がある。しかしながら、ポリカーボネートは、屈折率が1.58と熱硬化性樹脂に比べると低い傾向にあった。
【0004】
このような課題の解決のため、リン系官能基を含有するポリマー、特にホスホン酸エステル基を主鎖に含むポリホスホネートを使用することが提案されている。ポリホスホネートは、ホスホン酸エステル基の四面体構造による無色透明性、主鎖の分子屈折が大きいことによる高屈折率性、および低分散性等の特徴を持つ(特許文献1参照。)。
【0005】
ところで、一般にレンズ成形体に必要とされる耐衝撃性は、米国FDAの落球試験(16.3gの球を高さ127cmから落下しても破断しないこと)に合格することが必要で、従来のポリホスホネートでは衝撃に弱く、FDA落球試験では容易に物理的破壊してしまうなどの問題があった。このような樹脂レンズを矯正メガネに用いると、容易にレンズが破損し、破片が目に入る等の危険性があった。また、衝撃強度向上施策として樹脂の更なる高分子量化等も行われているが、このような施策では、溶融粘度が高すぎて成形性が著しく悪化することや、仮に成形できても溶融粘度が高く、樹脂流動性が悪いため、成形体に大きな光学歪み(複屈折)が生じ、光学特性に問題が生じていた。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−167440号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した問題を解決し光学歪みが極めて小さく光学特性に優れ、かつ耐衝撃性や靭性の強い光学用に好適な熱可塑性樹脂、およびその熱可塑性樹脂からなるレンズやフィルム等のシート状物等の成形体を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために以下の構成を有するものである。すなわち、本発明の熱可塑性樹脂は、下記構造式(1)
【0009】
【化4】
【0010】
(式中、Rは炭素数6〜20の炭化水素基、Xは酸素、硫黄あるいはセレンを表し、RあるいはXの異なるホスホン酸残基をともに含んでもよい。)で示される繰り返し単位と、下記構造式(2)
【0011】
【化5】
【0012】
(式中、R'は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜20の芳香族炭化水素基およびニトロ基からなる群から選ばれ、pとqはp+q=0〜8の整数であり、Yは単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルキリデン基、シクロアルキレン基、シクロアルキリデン基、ハロ置換アルキレン基、ハロ置換アルキリデン基、フェニルアルキリデン基、カルボニル基、脂肪族ホスフィンオキシド基、芳香族ホスフィンオキシド基、アルキルシラン基およびジアルキルシラン基からなる群から選ばれる。)で示される繰り返し単位と、構造式(3)
【0013】
【化6】
【0014】
で示される繰り返し単位を含み、前記構造式(1)の繰り返し単位と前記構造式(3)の繰り返し単位のモル分率が、次式(4)
0.5>(a)/[(a)+(b)]≧0.01 式(4)
(式中、(a)は前記構造式(1)の繰り返し単位のモル数、(b)は前記構造式(3)の繰り返し単位のモル数をそれぞれ表す。)を満足し、数平均分子量が30000未満でかつ、衝撃強度が20J/m以上1000J/m未満である熱可塑性樹脂である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、高屈折率で光学歪みが極めて少ない熱可塑性樹脂を見いだすべく鋭意検討した結果、5価のリン原子を有する構造、中でも前記の構造式(1)に示すようなホスホン酸構造をポリマーの主鎖に導入し、前記の構造式(1)と前記の構造式(3)の共重合分率が前記の式(4)を満足するときに、無色透明で光学特性、成形性および耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂が得られることを見いだした。
【0016】
前記の式(4)中、(a)は前記の構造式(1)の繰り返し単位のモル数であり、(b)は前記の構造式(3)の繰り返し単位のモル数である。前記の構造式(1)の繰り返し単位のモル数が0.01未満である場合、主鎖中のホスホン酸残基含有量が少ないため良好な光学特性が発現しない。反対に、モル数が0.5以上である場合には、構造的に剛直であるホスホン酸残基が主鎖中に多く含有するため、樹脂流動性が良好で成形性も優れている反面、靭性や衝撃強度が弱くなる等の問題が生じる。そこで衝撃強度向上の施策として高分子量化する手段もあるが、高分子量化することは溶融粘度の上昇にもつながるので、成形性が悪化し、成形体に大きな光学歪みが発生してしまう。つまり、従来のポリホスホネートにおいては、衝撃強度と成形性(光学歪み=溶融粘度)が相反する特性を示す。
【0017】
本発明において衝撃強度を大きく向上するためには、前記の構造式(1)の繰り返し単位のモル分率が式(4)の0.5>〔(a)/{(a)+(b)}〕≧0.01を満足することが好ましく、0.4>〔(a)/{(a)+(b)}〕≧0.01の範囲であることが更に好ましく、0.3>〔(a)/{(a)+(b)}〕≧0.01であることが最も好ましい。
【0018】
この式(4)を満足するような熱可塑性樹脂は、衝撃強度が非常に優れた特性を示す。しかしながら、式(4)を満足するような熱可塑性樹脂は、樹脂流動性を良好にする構造式(1)のホスホン酸残基のモル分率が熱可塑性樹脂中の半分未満しか含有しない。そのため式(4)を満足するような熱可塑性樹脂の溶融粘度はやや高いため、樹脂成形時には溶融流動性が悪く、この熱可塑性樹脂からなる成形体には光学歪みが生じる等、成形性に問題が生じた。そこで、溶融粘度を下げるために式(4)を満足しながら数平均分子量を30,000未満にして溶融粘度を低下させる方法で成形性を改良した。このように改良した熱可塑性樹脂は、成形性が良好で、かつ衝撃強度も十分に有していることが判明した。つまり、式(4)を満足しながら、数平均分子量が30,000未満であるポリホスホネートは成形性に優れ、溶融流動性も良好で光学歪みが生じにくい熱可塑性樹脂であることが発明された。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂の数平均分子量は、好適には5,000以上30,000未満の範囲であると、溶融粘度が低いことから、この熱可塑性樹脂からなる成形体は、成形性と生産性に優れる。また、溶融粘度が低いとレンズ成形体の光学歪みを極めて小さくすることができるため、優れた光学特性を持つ光学用成形体が得られる。数平均分子量が5,000以上28,000未満であると成形性が更に良くなるためより好ましく、最も好ましくは8,000以上24,000未満である。
【0020】
また、式(4)を満足しない、構造式(1)と構造式(3)の繰り返し単位のモル分率が〔(a)/{(a)+(b)}〕≧0.50を満たす、数平均分子量が30,000未満のポリホスホネートは成形性に優れているものの、衝撃強度が不十分であることが判明した。
【0021】
本発明の熱可塑性樹脂をレンズ用途で安全に用いるには、レンズ成形体でFDA落球試験に合格しなければならない。FDA落球試験に合格するためにはレンズ中心厚1.4mmの成型体の場合は衝撃強度が20J/m以上が必要であり、さらに好ましくは40J/m以上1000J/m未満の衝撃強度が必要である。最も好ましくは100J/m以上1000J/m未満の衝撃強度が必要であり、この場合はレンズ中心厚を薄肉化(中心厚1.3mm以下)、軽量化したレンズ成形体を得ることができる。
【0022】
本発明で述べる衝撃強度とは、アイゾット衝撃試験(ISO180)によって測定されたものである。アイゾット衝撃試験とは、試験片を特定のエネルギ−及び線速度を有する振り子打撃槌で、打撃破壊し、単位試験片幅当たりの破壊に消費されたエネルギ−を示すものである。なお、試験片形状はISO180/4Aに準処したものを用い、試験片は加工後、室温23℃、湿度50%の状態で50時間保管した物を試験することが最も好ましい。
【0023】
なお、光学物質の光の分散の度合いを表す指標としては、一般にアッベ数が用いられ、次式(5)によって算出される。
アッベ数(νd)=(nd−1)/(nf−nc):式(5)
nd:d線屈折率(波長587.6nm)
nf:f線屈折率(波長486.1nm)
nc:c線屈折率(波長656.3nm)
すなわち、その数値が大きいほど低分散であることを示している。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、d線屈折率が1.59以上1.70以下かつアッベ数が24以上40以下であることで、レンズ好適に用いることができ、なかでもめがねレンズに用いたときには、めがねレンズの薄肉化すなわち軽量化することができる。さらなる軽量化を図り優れた光学特性を得るためには、d線屈折率が1.60以上1.70以下かつアッベ数が26以上40以下であることが好ましく、最も好ましくはd線屈折率が1.60以上1.70以下かつアッベ数が29以上40以下であり、このような樹脂組成物からなるレンズは極めてレンズコバ厚の薄い、極めて軽量で光学特性に優れたレンズを得ることができる。
【0025】
本発明で述べる成形性(光学歪みが小)の良好な光学用の熱可塑性樹脂は、成形時の溶融粘度が低く、ガラス転移点温度(Tg)より120℃高い温度(Tg+120℃)におけるずり速度1,000(sec−1)を基準とした場合の溶融粘度が、好ましくは50Pa・S以上800Pa・S以下であり、更に好ましくは50Pa・S以上650Pa・S以下、最も好ましくは50Pa・S以上500Pa・S以下である。
【0026】
また、本発明の熱可塑性樹脂は、有機溶媒に対して高い溶解性を有しており、このような溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トルエン、キシレン、γ−ブチロラクトン、ベンジルアルコール、イソホロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよびヘキサフルオロイソプロパノール等が挙げられる。
【0027】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂は非晶性であり、非晶性であるかどうかは、公知の方法、例えば、示差走差熱量分析(DSC)や動的粘弾性測定等により融点が存在しているかどうかを確認することができる。
【0028】
本発明の熱可塑性樹脂のガラス転移点温度は、フィルム製膜時の溶媒乾燥温度、レンズやシート成形後の蒸着、ハードコート処理温度を加味すると100℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは120℃、最も好ましくは140以上である。また上限は特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂の成形温度や樹脂の高温劣化を考慮すると250℃以下であることが好ましい。
【0029】
本発明の熱可塑性樹脂には、その特性を損なわない範囲で、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、チオエーテル系および燐系の各種抗酸化剤や、市販ポリカーボネートに用いられている紫外線吸収剤、塩基不活剤、ブルーイング剤等の顔料、離型剤等を添加し樹脂組成物とすることができる。また、本発明の熱可塑性樹脂には、その特性を損なわない範囲で、他の樹脂成分等を添加し樹脂組成物とすることができる。
【0030】
前記構造式(1)で示されるホスホン酸残基のリン原子上の置換基Rの具体例としては、フェニル、ハロ置換フェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、シクロヘキシル、ベンジル基等が挙げられる。
【0031】
また、これら構造式(1)で示されるホスホン酸残基を構成するホスホン酸を具体的に例示すると、フェニルホスホン酸、4−クロロフェニルホスホン酸、3、4−ジクロロフェニルホスホン酸、3、5−ジクロロフェニルホスホン酸、4−ブロモフェニルホスホン酸、3、4−ブロモフェニルホスホン酸、3、5−ブロモフェニルホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、3、4−ジメトキシフェニルホスホン酸、1―ナフチルホスホン酸、2―ナフチルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、4−ブロモフェニルメチルホスホン酸、3、4−ジブロモフェニルメチルホスホン酸、3、5−ジブロモフェニルメチルホスホン酸、2−フェニルエチルホスホン酸、2−(4−ブロモフェニル)エチルホスホン酸、2−(3、4−ジブロモフェニル)エチルホスホン酸、2−(3、5−ジブロモフェニル)エチルホスホン酸、3−フェニルプロピルホスホン酸、3−(4−ブロモフェニル)プロピルホスホン酸、3−(3、4−ジブロモフェニル)プロピルホスホン酸、3−(3、5−ジブロモフェニル)プロピルホスホン酸、4−フェニルブチルホスホン酸、4−(4−ブロモフェニル)ブチルホスホン酸、4−(3、4−ジブロモフェニル)ブチルホスホン酸、4−(3、5−ジブロモフェニル)ブチルホスホン酸、1―ピロリジノエチルホスホン酸、1−ピロリジノプロピルホスホン酸、1−ピロリジノブチルホスホン酸、などが挙げられ、また、これらのリン原子に2重結合で結合している酸素原子が硫黄原子に置換されたチオホスホン酸も同様に挙げられる。これらは1種類でも、複数種併用することもできる。
【0032】
また、これらホスホン酸は、その酸塩化物、エステルおよびアミドなどのホスホン酸誘導体であってもよい。また、これらホスホン酸残基については、それぞれ対応する3価のリン官能基であるホスホナイト残基に一部置き換えてもよい。これにより熱可塑性樹脂の耐酸化性を付与することができるが、光学特性等の特性安定性を考慮すると、その置換比率は0%以上50%以下が好ましく、より好ましくは0以上25%以下、さらに好ましくは0%以上10%以下である。
【0033】
また、前記構造式(2)で示される2価フェノール残基を構成する2価フェノールを具体的に例示すると、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4'−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−secブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールフローレン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、4,4'−〔1,4−フェニレン−ビス(2−プロピリデン)〕−ビス(2−メチルフェノール)、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4'−ジヒドロキシフェニルエーテル、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4'−メチレンビスフェノール、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−ブタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、テルペンジフェノール、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジsecブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)エタン、1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチル−6−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチルエステル、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(4ーヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−フルオロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェノール、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ビフェノール、3,3',5,5'−テトラtert−ブチル−4,4'−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,3'−ジフルオロ−4,4'−ビフェノール、3,3',5,5'−テトラフルオロ−4,4'−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、1,1−ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸メチルエステル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸エチルエステル、イサチンビスフェノール、イサチンビスクレゾール、2,2',3,3',5,5'−ヘキサメチル−4,4'−ビフェノール、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4'−メチレンビスフェノール、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,2−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)メタン、2,2−ビス(3−スチリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−ニトロフェニル)エタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3',5,5'−テトラtert−ブチル−2,2'−ビフェノール、2,2'−ジアリル−4,4'−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5,5−テトラメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,4−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−エチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9、9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサンおよびα、α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。これらは1種類でも、複数種併用することもできる。
【0034】
この構造式(2)で示される2価フェノール残基を有する化合物の配合比は、好ましくは(構造式(1)+構造式(3)のモル%)×0.95以上1.05以下%で用いられる。これら2価フェノールは得られる熱可塑性樹脂(ポリマー)の性能に応じて用いることができる。前記構造式(2)中、pとqは、p+q=0〜8の整数である。
【0035】
また、ジヒドロキシベンゼンを本発明の効果が損なわれない範囲で用いることができ、これらジヒドロキシベンゼンとしては、レゾルシノール、ハイドロキノンおよび1,2−ジヒドロキシベンゼン等が挙げられ、これらは1種類でも、複数種併用することもできる。
【0036】
また、本発明で用いられる2価フェノール残基を有する化合物は必ずしも直鎖状である必要はなく、得られるポリマーの性能に応じて多価フェノールを共重合することができる。このような多価フェノールを具体的に例示すると、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4'−〔1−〔4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノール、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,6−ビス〔(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル〕−4−メチルフェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−メチルフェニル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、4−〔(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕−1,3−ジヒドロキシベンゼン、4−〔(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ビス〔1−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔1−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕ベンゼン、2,4−ビス〔(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,3−ジヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−エトキシフェノール、2−〔ビス(2,3−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、3−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、3,6−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4,6−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(2,3,6−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、3−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、2,4,6−〔トリス(4−ヒドロキシフェニルメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,1,2,2−テトラ(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラ(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,4−〔〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕〕ベンゼン、1,4−ジ〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ベンゼン、1,4−ジ〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ベンゼン、4−〔1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕アニリン、(2,4−ジヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノールおよび1,3,3−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。これらは1種類でも、複数種併用することもできる。
【0037】
また、前記構造式(3)で示されるカーボネート残基とは、炭酸エステル、炭酸ハライドなどを原料として得られる構造単位であり、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどの炭酸エステル、ホスゲンおよびトリホスゲンなどの炭酸ハライドが挙げられる。
【0038】
本発明の熱可塑性樹脂の前記構造式(1)〜(3)の繰り返し単位については、[構造式(1)+構造式(3)]のモル数に対する[構造式(2)]のモル数の比が0.95以上1.05以下の関係であることが最も好ましい。
【0039】
次に、本発明の熱可塑性樹脂(ポリマー)の製造方法について説明する。本発明の熱可塑性樹脂の製造方法としては、酸ハライドと2価のフェノールを有機溶剤中で反応させる溶液重合法(A.Conix Ind.Eng.ohem.51 147 1959年、特公昭37−5599号公報参照。)、酸ハライドと2価のフェノールを塩化マグネシウム等の触媒存在下で加熱する溶融重合法、2価の酸と2価のフェノールをジアリルカーボネートの存在下で加熱する溶融重合法(特公昭38−26299号公報参照。)、および水と相溶しない有機溶剤に溶解せしめた2価の酸ハライドとアルカリ水溶液に溶解せしめた2価のフェノールとを混合する界面重合法(W.M.EARECKSON J.Poly.Sci.XL399 1959年、特公昭40−1959号公報参照。)等が挙げられるが、本発明では、特に溶液重合法が好適に採用される。
【0040】
溶液重合法について一例を説明すると、ホスホン酸残基の前駆体分子であるホスホン酸誘導体と、2価フェノールをトリエチルアミンなどの塩基存在下混合して反応させ、続いてカーボネート残基の前駆体分子、例えば、トリホスゲンなどを添加して縮合重合することによって、本発明の熱可塑性樹脂を得ることができる。ホスホン酸誘導体あるいはカーボネート誘導体としては、それらのハロゲン化物、酸無水物およびエステル等を用いることができるが特に限定されない。
【0041】
本発明の熱可塑性樹脂(ポリマー)の分子量を調節する方法としては、重合時に一官能の物質(分子量調節剤)を添加して行うことができる。ここで言う分子量調節剤として用いられる一官能物質としては、フェノール、クレゾール、p−tert−ブチルフェノール等の一価フェノール類、安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライドおよびフェニルクロロホルメート等の一価酸クロライド類が挙げられる。
【0042】
本発明の熱可塑性樹脂から各種の成形体を得ることができる。本発明の熱可塑性樹脂から成形される、レンズまたはフィルムやシート等のシート状物等の成形体は、好適には光学用途で用いられることから、片面の表面粗さ(Ra)が5nm以下であることが好ましく、それでも光線の乱反射等で像の曇り、ゆがみが発生することから、更に好ましくはRaが3nm以下、めがねレンズ用途では一層の表面平滑性が要求されることから、最も好ましくは1nm以下である。また、本発明の熱可塑性樹脂を光学用途に用いる場合には、透明であることが必須であり、厚さ3mmに成形したときの全光光線透過率は80%以上のものが好ましく用いられ、位相差板やめがねレンズ用途の場合は、より高い透明性が必要であることから全光光線透過率は85%以上のものがさらに好ましく用いられ、最も好ましくは87%以上である。
【0043】
本発明の熱可塑性樹脂の成形加工方法は特に限定されるものではなく、既知の成形方法を用いることができる。レンズ用途の場合は、その中でも光学歪みを小さく量産できることから圧縮成型、射出成形および射出圧縮成型が好ましく用いられる。
【0044】
成形性を表す成形体の光学歪み(位相差)の測定は、回転検光子法(回転偏光子、回転検光子)や光干渉法を備えた位相差測定装置を用い、光源はナトリウム光源(589nm)を用いて測定を行うことができる。成形体の光学歪みとは成形形状、成形方法によって異なるが、例えば、外形36mm、中心厚1.43mmの−3.00D(ポリカーボネートの場合)の度を持つマイナスレンズ(ポリカーボネートの場合)を樹脂Tg+100℃の成形温度にて、射出成形したレンズ成形品を例に挙げる。本発明の熱可塑性樹脂からなる上記レンズ成形品中心部の光学歪みは好ましくは200nm未満であり、更に好ましくは100nm、最も好ましくは20nmである。
【0045】
また、本発明の熱可塑性樹脂を成形することによって得られるシート状物は、情報表示装置部材に好ましく用いることが可能で、これらの成形加工方法としては、既知である様々な溶液製膜法や溶融製膜法を用いることができる。
【0046】
本発明では、重合反応で得られた樹脂溶液をこのまま溶液製膜しても構わないが、樹脂溶液を貧溶媒中に投入するなどの方法で単離後、洗浄と乾燥を経て、粉末およびペレットとし、そのまま溶融製膜あるいは溶媒に溶解させて溶液製膜してフィルム等のシート状物を得ても差し支えない。ただし、光学用途で使用する場合には、物理的欠点をなくすために、濾過や洗浄をした樹脂溶液を用いることが好ましい。
【0047】
溶液製膜の例を挙げると、乾式法、乾湿式法、湿式法および半乾半湿式法などにより溶液製膜されるがこれに限定されるものではない。
【0048】
次に、溶液製膜時の使用溶液例を挙げる。使用する溶媒は、熱可塑性樹脂を溶解するものであれば特に限定されないが、塩化メチレン、2塩化エタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロベンゼン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトンおよび1メチル2ピロリドンなどが挙げられる。更に、光学用途に用いるため、溶液中の異物除去で低欠点性を得るべく、溶液濾過することが好ましく用いられる。濾過精度は、1nm以上5,000nm以下を好ましく用いることができるが、光学用途であることから1nm以上1,000nm以下が更に好ましく、1nm以上600nm以下が更に好ましく用いられる。濾過精度とは、ある物を濾過したときに90%の確率でフィルターの捕捉される濾過物の大きさとして定義されている。
【0049】
本発明のフィルムやシート等のシート状物の膜厚は、10μm以上3mm以下であることが好ましいが、情報表示装置部材の一層の軽量化という観点からすると10μm以上1mm以下に薄肉化した方が更に好ましく、更にはシート状物の靭性さえ確保できれば、10μm以上500μm以下であることが最も好ましい。
【0050】
本発明の熱可塑性樹脂からなるフィルム等のシート状物は、透明性が求められる分野では、どのような用途にも適用できる。特に、偏光板、位相差板、反射防止板および基板等の情報表示装置部材、光ディスク(CDやDVD等)の基板、保護板等の記録部材の構成部材に用いることができ、また、表面性と内部構造の均一性に優れ、光弾性係数の極めて小さいことから、ある一定の応力下でも光学特性変化の極めて小さい成形体を得ることができる。
【0051】
本発明では、本発明の熱可塑性樹脂を用いて位相差フィルムを成形することができる。本発明の熱可塑性樹脂を用いて形成される位相差フィルムは、高分子配向フィルムであり、これは無配向フィルムを1軸以上延伸したフィルムで、ある任意の配向方向と直交方向に屈折率差を生じさせたフィルムである。位相差とは、ある膜厚dのフィルムに光が透過したときにフィルムの配向方向と直交方向に屈折率差(Δn:複屈折率)が生じると光の伝播速度が異なるので、位相差は複屈折率とフィルム膜厚の積であるΔn・dであることは知られている。
【0052】
本発明における高分子配向フィルムの配向とは、高分子分子鎖が主として特定の方向に並んだ状態を指しており、ここで述べる配向とは光の波長589nmで位相差を指す。位相差Δn・dは高分子配向フィルムの膜厚が同一であれば複屈折Δnに比例するため位相差波長依存性と複屈折波長依存性は同一で表すことができる。高分子配向フィルムの面内における配向方向の屈折率がそれに垂直方向の屈折率より大きい場合を光学的異方性が正といい、反対に配向方向の屈折率がそれに垂直方向の屈折率より小さい場合を光学的異方性が負という。ここでの高分子配向フィルムの配向方向とは、例えば、公知の位相差フィルム製造条件であるガラス転移点温度Tg付近(Tg±20℃)の条件で1軸延伸した場合にはその延伸方向であり、2軸以上の延伸の場合には最も配向が高くなる様に延伸した方向を指す。なお、本発明での位相差は絶対値であり、光学異方性が負の場合には位相差が負であるが、本発明では特にことわりのない限りは正負の符号は無視するものとする。
【0053】
これらのフィルム等のシート状物の位相差は、波長589nmにおいて、好ましくは0nm以上2,000nm以下の範囲である。位相差がこのような範囲にあると光学歪みを小さく用いることができる。位相差は、0nm以上1,000nm以下の範囲であることがさらに光学歪みを小さくできることから好ましく、最も好ましくは0nm以上500nm以下である。なお、位相差板の位相差フィルム等に用いる場合は、故意に位相差を発現しなければならないので20nm以上1000nm以下の範囲で使用することが好ましい。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂からなる成形体は、単独でも優れた光学特性と耐衝撃性を示すが、異なる材質のものと2層以上の積層体として用いた場合にも、優れた光学特性と耐衝撃性を発揮する。また、耐衝撃性に加え、透明性や難燃性が求められる分野で、どのような用途にも適用することができる。好適な用途として、特に、矯正用めがねをはじめとして、スポーツ用めがね、サングラスおよびゴーグルなどのめがね関連部材、光ディスク(CDやDVD等)の基板、ピックアップ用レンズなどの情報表示装置部材、自動車用ヘッドライト部品、テールランプカバー等の表示装置部材、難燃化が推進されている家電製品および、その筐体(スケルトン商品群など)、携帯電話やノートパソコンに代表されるモバイル製品および、その筺体などが挙げられる。
【0055】
【実施例】
本発明の具体的実施態様を以下に実施例をもって述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。まず、評価方法を以下に述べる。
【0056】
(数平均分子量)
数平均分子量は、熱可塑性樹脂の0.2wt%クロロホルム溶液を用い、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)(東ソー(株)製、GPC8020)により求めた。なお、測定値は標準ポリスチレン換算の値である。
【0057】
(衝撃強度)
射出成形機(日精樹脂工業(株)製、HM−7C)にて、熱可塑性樹脂を射出成形後、成形品を切削加工して12.7x63.5x3.2mm(ISO180/4A)の試験片を調製し、室温23℃、湿度50%の状態で50時間放置後にISO180の方法に従ってアイゾット衝撃強度を測定した。
【0058】
(ガラス転移点温度)
得られた熱可塑性樹脂粉末を用い、DSC(セイコー電子工業(株)製:SSC5200)にて、ガラス転移点温度を測定した。
【0059】
(屈折率測定)
得られた熱可塑性樹脂粉末を用い、下記に示す方法で成形し評価した。すなわち、プレス成形の場合は、得られた熱可塑性樹脂粉末を樹脂のガラス転移点温度+100℃に加熱した金型に投入した。金型はφ30mmの円盤状のプレートが成形可能なもの用いた。金型を閉じ、圧力2tにて加圧後、金型を冷却した。金型を分割することによって30mm、厚さ3mmの円盤状の樹脂プレートを得た。得られた樹脂成形サンプルをサンドペーパー、バフ研磨した。互いに直行する2面を研磨し、それらが鏡面仕上げになるように研磨した。研磨した樹脂サンプルを屈折計(カルニュー光学工業(株)製:KPR−2)にて評価を行い、d線(波長:589nm)屈折率(nd)、次式(8)より求められるアッベ数(νd)を測定した。
アッベ数(νd)=(nd−1)/(nf−nc):式(8)
nd:d線屈折率(波長587.6nm)
nf:f線屈折率(波長486.1nm)
nc:c線屈折率(波長656.3nm)
(溶融粘度測定)
キャピラリー式レオメーター(東洋精機(株)製、キャピログラフ1C)を使用した。オリフィス径が1.00mm、オリフィス厚が10.00mm、シリンダー径が9.55mmである。なお、溶融粘度測定温度は熱可塑性樹脂のガラス転移点温度より120℃高い温度で行った。
【0060】
(フィルムの製膜)
溶液キャスト製膜の場合は、クロロホルムに樹脂を溶解させ、ポリマー固形分濃度10wt%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液をガラス板上に製膜、乾燥させることによってキャストフィルムを得た。得られたフィルムを幅10mm、長さ70mmのサンプルを切り出し、厚み計(ミツトヨ(株)製;ABSデジマチックインジケータ、ダイヤルゲージスタンド)にて膜厚を測定した。
【0061】
(レンズ成形)
射出成形機(日精樹脂工業(株)製、HM−7C)にて、外形36mm、中心厚1.43mmのレンズ成形体を射出成形した。金型は、ポリカーボネート(屈折率1.58)でマイナスレンズ−3.00Dになるような形状のものを用いた。なお、射出成形温度Tg+120℃で行い、金型温度は110℃で行った。
【0062】
(レンズ光学歪み・フィルム位相差)
樹脂レンズ成形体、またはフィルムをセルギャップ測定装置RET−1100(大塚電子(株)製)でナトリウムD線(589nm)のレンズ光学歪み、またはフィルム位相差を測定した。
【0063】
(レンズ落球試験)
米国FDAの落球試験に準じ、上記のレンズ成形体中心部に16.3gの鋼球を高さ127cmから落下させた。評価基準は、下記のとおりである。
○:破損、ヒビのないもの
×:破損、ヒビの生じたもの。
【0064】
(成形性)
上記の射出成形において、成形体光学歪みが大きい物は樹脂流動性が悪く、成形性に問題がある。評価基準は、下記にとおりである。
○:レンズ中心部の光学歪みが200nm未満
×:レンズ中心部の光学歪みが200nm以上。
【0065】
(実施例1)
窒素雰囲気下、塩化メチレン(40ml)中に1,1ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(80mmol)、およびトリエチルアミン(168mmol)を混合し、氷冷下攪拌した。この溶液に、フェニルホスホン酸ジクロライド(4mmol)の塩化メチレン(10ml)溶液を5分間かけて滴下し、滴下終了後室温で60分間攪拌した。その後、濃度0.584mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(130.14ml)を25分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌した。その後、反応溶液を濾過精度1μmの濾過で異物を除去し、0.1N塩酸水溶液80mlと純水300mlの混合液で数回洗浄し分離した。その後、分離した有機層をエタノール2000mlに投入して再沈し、ポリマーを濾取した後、(1)エタノール1000ml(2)水/エタノール=1/1混合溶液1000ml(3)水1000mlの順で生成したポリマーを洗浄、乾燥して目的の樹脂粉末を収率90%で得た。評価は上記したとおり行った。
【0066】
(実施例2)
窒素雰囲気下、塩化メチレン(40ml)中に1,1ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(80mmol)、およびトリエチルアミン(168mmol)を混合し、氷冷下攪拌した。この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(12mmol)の塩化メチレン(10ml)溶液を5分間かけて滴下し、滴下終了後室温で60分間攪拌した。その後、濃度0.584mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(116.44ml)を25分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理、評価した。
【0067】
(実施例3)
窒素雰囲気下、塩化メチレン(40ml)中に1,1ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(80mmol)、およびトリエチルアミン(168mmol)を混合し、氷冷下攪拌した。この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(20mmol)の塩化メチレン(10ml)溶液を10分間かけて滴下し、滴下終了後室温で60分間攪拌した。その後、濃度0.584mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(102.74ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理、評価した。
【0068】
(実施例4)
窒素雰囲気下、塩化メチレン(40ml)中に1,1ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(80mmol)、およびトリエチルアミン(168mmol)を混合し、氷冷下攪拌した。この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(28mmol)の塩化メチレン(10ml)溶液を10分間かけて滴下し、滴下終了後室温で60分間攪拌した。その後、濃度0.584mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(102.74ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理、評価した。
【0069】
(実施例5)
窒素雰囲気下、塩化メチレン(40ml)中に1,1ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(80mmol)、およびトリエチルアミン(168mmol)を混合し、氷冷下攪拌した。この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(36mmol)の塩化メチレン(10ml)溶液を10分間かけて滴下し、滴下終了後室温で60分間攪拌した。その後、濃度0.584mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(75.34ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理、評価した。
【0070】
(実施例6)
窒素雰囲気下、塩化メチレン(40ml)中にメチルベンジリデンビスフェノール(80mmol)、およびトリエチルアミン(168mmol)を混合し、氷冷下攪拌した。この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(1.6mmol)の塩化メチレン(10ml)溶液を5分間かけて滴下し、滴下終了後室温で60分間攪拌した。その後、濃度0.584mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(134.25ml)を25分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理、評価した。
【0071】
(実施例7)
窒素雰囲気下、塩化メチレン(40ml)中にメチルベンジリデンビスフェノール(80mmol)、およびトリエチルアミン(168mmol)を混合し、氷冷下攪拌した。この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(36mmol)の塩化メチレン(10ml)溶液を10分間かけて滴下し、滴下終了後室温で60分間攪拌した。その後、濃度0.584mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(75.34ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理、評価した。
【0072】
(比較例1)
窒素雰囲気下、塩化メチレン(40ml)中に1,1ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(80mmol)、およびトリエチルアミン(168mmol)を混合し、氷冷下攪拌した。この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(60mmol)の塩化メチレン(10ml)溶液を15分間かけて滴下し、滴下終了後室温で60分間攪拌した。その後、濃度0.584mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(11.42ml)を15分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理、評価した。
【0073】
(比較例2)
窒素雰囲気下、塩化メチレン(40ml)中に1,1ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(80mmol)、およびトリエチルアミン(168mmol)を混合し、氷冷下攪拌した。この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(72mmol)の塩化メチレン(10ml)溶液を20分間かけて滴下し、滴下終了後室温で60分間攪拌した。その後、濃度0.584mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(13.70ml)を10分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理、評価した。
【0074】
(比較例3)
窒素雰囲気下、塩化メチレン(40ml)中に1,1ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(80mmol)、およびトリエチルアミン(168mmol)を混合し、氷冷下攪拌した。固形分が全て溶解した後、濃度0.584mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(136.99ml)を15分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理、評価した。
【0075】
(比較例4)
窒素雰囲気下、塩化メチレン(40ml)中にメチルベンジリデンビスフェノール(80mmol)、およびトリエチルアミン(168mmol)を混合し、氷冷下攪拌した。この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(60mmol)の塩化メチレン(10ml)溶液を15分間かけて滴下し、滴下終了後室温で60分間攪拌した。その後、濃度0.584mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(11.42ml)を15分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理、評価した。
【0076】
(比較例5)
窒素雰囲気下、塩化メチレン(40ml)中に1,1ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(80mmol)、およびトリエチルアミン(176mmol)を混合し、氷冷下攪拌した。この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(20mmol)の塩化メチレン(10ml)溶液を10分間かけて滴下し、滴下終了後室温で60分間攪拌した。その後、濃度0.584mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(113.02ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法で後処理、評価した。
【0077】
実施例1〜7と比較例1〜5の方法で作成した光学用樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
比較例1、2、4から式(4)のモル分率を上回る光学用熱可塑性樹脂では、樹脂の分子構造が剛直になるため、衝撃強度が大きく低下し、レンズに成形したときの衝撃試験(FDA試験)に合格することができない。比較例3は、衝撃強度が大きく向上するものの構造式(1)を含有していないため光学特性(屈折率・光学歪み)が不十分である。比較例5は、実施例に対し数平均分子量を大きくしたものであるが、衝撃強度と屈折率は実施例と遜色ないものの、溶融粘度が高いため、レンズ成形体の光学歪みが非常に大きく、成形性に問題がある。対して本発明の実施例は、良好な光学特性を持ちつつ、衝撃強度が大きく、溶融粘度が低いことから成形性に優れ、光学歪みの極めて小さい成形体が得ることができる。
【0080】
【発明の効果】
本発明により、光学特性を損なわずに、耐衝撃性を向上させつつ、樹脂溶融流動性、成形性に優れ、光学歪みの極めて小さい高屈折率、高アッベ数の熱可塑性樹脂が得られ、この熱可塑性樹脂からなるレンズ、フィルム、シート等の成形品は各種分野に用いることができる。
Claims (8)
- 下記構造式(1)
0.5>(a)/[(a)+(b)]≧0.01 式(4)
(式中、(a)は前記構造式(1)の繰り返し単位のモル数、(b)は前記構造式(3)の繰り返し単位のモル数をそれぞれ表す。)を満足し、数平均分子量が30,000未満でかつ、衝撃強度が20J/m以上1000J/m未満であることを特徴とする熱可塑性樹脂。 - 構造式(1)で示されるホスホン酸残基において、該ホスホン酸残基の代わりに、一部がホスホナイト残基により構成され、その置換比率が50%以下であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂。
- Tg+120℃の温度におけるずり速度1,000(sec−1)の溶融粘度が50〜800(Pa・S)であることを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑性樹脂。
- ガラス転移点温度が100℃以上でかつ250℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
- d線屈折率が1.59以上1.70以下であり、かつアッベ数24以上40以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂からなる成形体。
- 膜厚が10μm以上3mm以下のシート状物である請求項6記載の成形体。
- 波長589nmにおける位相差が0nm以上2,000nm以下である請求項6または7記載の成形体。
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