JP4485714B2 - ポリカーボネート共重合体およびその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の繰り返し単位を含有してなるポリカーボネート共重合体、該共重合体からなる樹脂組成物、ならびに、これらを成形して得られる光学部品に関する。
本発明のポリカーボネート共重合体は、透明性、機械的特性、熱的特性が良好であり、且つ、比較的高屈折率であって、低色収差(高アッベ数)、低複屈折率であり、さらには溶融流動性に富み成形加工性が良好である特徴を有しており、視力矯正用眼鏡レンズ(眼鏡レンズ)、ピックアップレンズなどを代表とするプラスチック光学用レンズ、情報記録用光ディスク基板、液晶セル用プラスチック基板、光ファイバー、光導波路などの各種光学部品用の成形材料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
無機ガラスは、透明性に優れ、光学異方性が小さいなどの諸物性に優れていることから、透明性光学材料として広い分野で使用されている。しかしながら、重くて破損しやすいこと、生産性が悪い等の問題があり、近年、無機ガラスに代わる光学用樹脂の開発が盛んに行われている。
光学用樹脂として基本的に最も重要な特性の一つは透明性である。現在までに透明性の良好な光学用樹脂として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ビスフェノールAポリカーボネート(BPA−PC)、ポリスチレン(PS)、メチルメタクリレート-スチレン共重合ポリマー(MS)、スチレン-アクリロニトリル共重合ポリマー(SAN)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)(TPX)、ポリシクロオレフィン(COP)、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート(EGAC)、ポリチオウレタン(PTU)などが知られている。
【0003】
PMMAは透明性、耐候性に優れ、かつ成形性も良好であり、代表的な光学用樹脂の一つとして広く用いられている。しかしながら、屈折率(nd)が1.49と比較的低く、吸水性が大きいという欠点を有している。
BPA−PCは、透明性、耐熱性、耐衝撃性に優れ、比較的高屈折率(nd=1.59)であり、情報記録用光ディスク基板を代表とする光学用途において用いられているが、色収差(屈折率分散)、複屈折が比較的大きく、また溶融粘度が高く成形性がやや困難である等の欠点を有していることから、光学用樹脂としての利用分野が限定されている。
PSおよびMSは成形性、透明性、低吸水性および高屈折性に優れるものの、耐衝撃性、耐候性および耐熱性に劣る欠点を有しているため、光学用樹脂としてほとんど実用化されていない。また、SANは比較的、屈折率が高く、機械的物性もバランスがよいとされているが、耐熱性にやや難があり(熱変形温度:80〜90℃)、同様に光学樹脂としてほとんど使用されていない。
TPXおよびCOPは透明性、低吸水性、耐熱性に優れるものの、低屈折率(nd=1.47〜1.53)であり、また耐衝撃性、ガスバリヤー性、染色性が悪いという問題点を有している。
EGACはモノマーであるジエチレングリコールビスアリルカーボネートを重合して得られる熱硬化性樹脂であり、一般汎用の眼鏡レンズ用途には最も多く使用されている。透明性、耐熱性が良好であり、色収差が極めて小さいといった特徴を有しているものの、屈折率が低く(nd=1.50)、耐衝撃性にやや劣るという欠点がある。
PTUはジイソシアネート化合物とポリチオール化合物との反応で得られる熱硬化性樹脂であり、高屈折率の眼鏡レンズ用途において、現在、最も多く使用されている。透明性、耐衝撃性に特に優れ、かつ、高屈折率であって、色収差も比較的小さく、極めて優れた光学用樹脂である。しかしながら、唯一、眼鏡レンズを製造する工程において熱重合成形時間に長時間(1〜3日)を要するといった欠点があり、生産性の点で課題を残している。
【0004】
代表的な光学用樹脂の一つである上記ビスフェノールAポリカーボネート(BPA−PC、以下、汎用ポリカーボネートと称する)に見られた前記欠点を改良し、かつ、射出成形加工により短時間で高品質な光学部品を得る目的で、新規なポリカーボネート系の熱可塑性光学用樹脂が提案されている。例えば、脂環系ジヒドロキシ化合物から誘導される繰り返し構造単位を有する脂環系ポリカーボネート共重合体などのポリマーが比較的低色収差(高アッベ数)、低複屈折性であることが開示されており、光学用途での利用が提案されている(例えば、特開昭64−66234号公報、特開平1−223119号公報など)。これらの方法によれば、射出成形法を用いた短時間での光学部品の成形加工、製造が可能となり、かつ、得られた光学部品は高アッベ数であるか、あるいは、複屈折率が比較的低いなどの特徴を有しているものの、光学部品として実用上、十分満足されるものとは言い難かった。すなわち、例えば、眼鏡レンズとして用いた場合、屈折率がやや低く、耐熱性も十分であるとは言い難い等、いくつかの実用上の問題点を残していた。
【0005】
以上のように、従来の光学用樹脂は用途に応じてその特徴を考慮して使用されているものの、それぞれに克服すべき欠点、問題点を有しているのが現状である。このような状況下にあって、透明性、光学特性に優れ(高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、機械的特性(例えば、耐衝撃性など)、熱的特性(例えば、熱変形温度など)が良好であり、かつ、溶融流動性に優れた新規な熱可塑性光学用樹脂の開発が切望されているのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上述したような従来の光学用樹脂の欠点を解決し、透明性、光学特性に優れ(高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、機械的特性、熱的特性が良好であり、かつ、溶融流動性に優れ、射出成形加工性に優れた新規な熱可塑性光学用樹脂を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、式(1−a)(化3)および式(2−a)(化4)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリカーボネート共重合体に関する。
【0008】
【化3】
【0009】
【化4】
【0010】
(式中、R1〜R4はハロゲン原子である。)
さらには、該ポリカーボネート共重合体からなる樹脂組成物、前記共重合体または樹脂組成物を成形して得られる光学部品に関するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の前記式(1−a)および式(2−a)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリカーボネート共重合体である。
本発明のポリカーボネート共重合体は、後で詳細に説明するが、下記式(1)(化5)で表されるジヒドロキシ化合物と下記式(2)(化6)で表されるジヒドロキシ化合物を、カーボネート前駆体と作用させ、共重合させることにより得られるものであり、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とから誘導される式(1−a)で表される繰り返し構造単位と、式(2)で表されるジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とから誘導される式(2−a)で表される繰り返し構造単位の両繰り返し構造単位を、必須繰り返し構造単位として有する共重合体であって、ランダム共重合体、交互共重合体あるいはブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0012】
【化5】
【0013】
【化6】
【0014】
(式中、R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7およびR8は前記に同じ)これらのポリカーボネート共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)、熱的特性、機械的特性、成形加工性等の諸物性のバランスを考慮すると、共重合体中における式(1−a)と式(2−a)の繰り返し構造単位のモル比は、1:99〜99:1、好ましくは5:95〜95:5であり、より好ましくは、10:90〜90:10、さらに好ましくは20:80〜80:20である。
【0015】
式(1−a)で表される繰り返し構造単位が5モル%未満の場合、アッベ数が低くなり、また式(2−a)で表される繰り返し構造単位が5モル%未満の場合には、熱的特性(耐熱性など)、機械的特性などが損なわれる面があり、光学用樹脂として使用するには、本発明の効果を十分に発揮しえないからである。
【0016】
式(2−a)において、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表す。なお、R1〜R8の少なくとも1つはハロゲン原子である。かかる置換基により、共重合体の屈折率が向上するためである。
該置換基R1〜R8として、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子または沃素原子などが挙げられる。
かかる置換基R1〜R8として、さらに好ましくは、塩素原子、臭素原子ある。
【0017】
式(1−a)で表される繰り返し繰り返し構造単位の中でも、下記式(1−a−i)(化7)、(1−a−ii)(化8)または式(1−a−iii)(化9)で表される繰り返し構造単位は、より好ましい。
【0018】
【化7】
【0019】
【化8】
【0020】
【化9】
【0021】
式(2−a)で表される繰り返し構造単位の中でも、下記式(2−a−i)(化10)または式(2−a−ii)(化11)、もしくは式(2−a−iii)(化12)で表される繰り返し構造単位はより好ましい。
【0022】
【化10】
【0023】
【化11】
【0024】
【化12】
【0025】
(式中、R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7およびR8は前記に同じ)本発明のポリカーボネート共重合体は、前述したように、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物をカーボネート前駆体に作用させ共重合することにより製造される。
【0026】
この際、原料モノマーである式(1)で表されるジヒドロキシ化合物ならびに式(2)で表されるジヒドロキシ化合物は、それぞれ公知化合物であり、公知の方法により好適に製造され、工業的に入手可能である。
かかる式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,8−ジメタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,9−ジメタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−4,8−ジメタノールなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
該ジヒドロキシ化合物には、上述したようなトリシクロ環に結合した二つのヒドロキシメチル基についての位置異性体のほかに、立体異性体(シス体またはトランス体)が存在し、さらにexo体またはendo体の立体異性体が存在するが、本発明において使用される式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は、これらいずれ異性体であってもよく、あるいは、これら構造異性体の混合物であっても差し支えない。
【0028】
かかる式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3,5,6−テトラクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3,5,6−テトラブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3’−クロロ−4’−ヒドロキシフェニル)−2−(3’’−クロロ−2’’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3’5’,−ジクロロ−4’−ヒドロキシフェニル)−2−(3’’5’’,−ジクロロ−2’’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3’−ブロモ−4’−ヒドロキシフェニル)−2−(3’’−ブロモ−2’’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3’5’,−ジブロモ−4’−ヒドロキシフェニル)−2−(3’’5’’,−ジブロモ−2’’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−2−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジクロロ−2−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−2−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジブロモ−2−ヒドロキシフェニル)プロパン、などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
本発明において式(2)で表されるジヒドロキシ化合物は、単独で使用しもよく、複数(2種類以上)を併用してもよく、あるいは、これら複数の化合物の混合物であってもよい。
【0029】
本発明のポリカーボネート共重合体の製造方法としては、公知の各種ポリカーボネート重合方法〔例えば、実験化学講座第4版、(28)高分子合成、231〜242頁、丸善出版(1988年)に記載の方法で、例えば、溶液重合法、エステル交換法または界面重合法など〕が用いられる。代表的には、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と式(2)で表されるジヒドロキシ化合物にカーボネート前駆体(例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステル化合物、ホスゲン等のハロゲン化カルボニル化合物など)を、必要に応じて、酸または塩基の存在下に反応させる方法が用いられる。
【0030】
本発明のポリカーボネート共重合体の分子量としては、特に限定されるものではないが、通常、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定する標準ポリスチレン換算の分子量として、重量平均分子量が5000〜200000であり、好ましくは、10000〜150000であり、より好ましくは、30000〜120000である。
また、重量平均分子量と数平均分子量の比として表される多分散性インデックスとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは、1.5〜20.0であり、より好ましくは、2.0〜15.0であり、さらに好ましくは、2.0〜12.0である。
【0031】
本発明のポリカーボネート共重合体のガラス転移温度は、各種光学部品用として使用されるために、通常、80℃以上であることが好ましい。一方、ガラス転移温度が高すぎると、成形加工性の点から好ましくない。すなわち、溶融流動開始温度、溶融粘度が相対的に高くなり、成形加工し難くなったり、視力矯正用レンズとして染色加工して用いる際に染色性が悪くなる等の問題が生じる。
本発明のポリカーボネート共重合体のガラス転移温度としては、好ましくは、90℃〜200℃であり、より好ましくは、100℃〜180℃であり、さらに好ましくは、100〜170℃である。
【0032】
本発明のポリカーボネート共重合体は、式(1−a)または式(2−a)で表される繰り返し構造単位であって、且つ、互いに構造が複数(2種類以上)の繰り返し構造単位を含有していてもよい。
また本発明のポリカーボネート共重合体は、本発明の所望の効果を損なわない範囲において、式(1−a)または式(2−a)で表される繰り返し構造単位以外の他の繰り返し構造単位を含有していてもよい。
式(1−a)または式(2−a)で表される繰り返し構造単位以外の他の繰り返し構造単位としては、代表的には、式(1)または一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物以外の他のジヒドロキシ化合物から誘導される繰り返し構造単位であり、かかるジヒドロキシ化合物としては、各種公知の芳香族ジヒドロキシ化合物または脂肪族ジヒドロキシ化合物が例示される。
【0033】
該芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルメタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2-(4'−ヒドロキシフェニル)-2-(3'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-3−メチルブタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) ペンタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) ヘプタン、4,4-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) ヘプタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) トリデカン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(3'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−エチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−n−プロピル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−イソプロピル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−sec−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−シクロヘキシル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−アリル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−メトキシ−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3',5'-ジメチル−4'−ヒドロキシフェニル) プロパン、2,2-ビス(2',3',5',6'-テトラメチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シアノメタン、1-シアノ-3,3−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0034】
1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1-ビス(3'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3',5'-ジメチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3',5'-ジクロロ−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)アダマンタン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
4,4'- ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(ヒドロキシアリール)エーテル類;
4,4'- ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3'−ジシクロヘキシル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3'−ジフェニル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のビス(ヒドロキシアリール)スルフィド類;
4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド等のビス(ヒドロキシアリール)スルホキシド類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'- ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルスルホン等のビス(ヒドロキシアリール)スルホン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ケトン等のビス(ヒドロキシアリール)ケトン類;
さらには、7,7'−ジヒドロキシ−3,3',4,4'-テトラヒドロ−4,4,4',4'-テトラメチル-2,2'-スピロビ(2H−1−ベンゾピラン)、トランス-2,3- ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-2- ブテン、9,9-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)フルオレン、3,3-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-2- ブタノン、1,6-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-1,6- ヘキサンジオン、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン等が挙げられる。
【0035】
該脂肪族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、1,2−ジヒドロキシエタン、1,3−ジヒドロキシプロパン、1,4−ジヒドロキシブタン、1,5−ジヒドロキシペンタン、3−メチル−1,5−ジヒドロキシペンタン、1,6−ジヒドロキシヘキサン、1,7−ジヒドロキシヘプタン、1,8−ジヒドロキシオクタン、1,9−ジヒドロキシノナン、1,10−ジヒドロキシデカン、1,11−ジヒドロキシウンデカン、1,12−ジヒドロキシドデカン、ジヒドロキシネオペンチル、2−エチル−1,2−ジヒドロキシヘキサン、2−メチル−1,3−ジヒドロキシプロパン等の鎖状脂肪族ジヒドロキシ化合物;
1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール等の環状脂肪族ジヒドロキシ化合物;
o−ジヒドロキシキシリレン、m−ジヒドロキシキシリレン、p−ジヒドロキシキシリレン、1,4−ビス(2’−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−ビス(3’−ヒドロキシプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(4’−ヒドロキシブチル)ベンゼン、1,4−ビス(5’−ヒドロキシペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(6’−ヒドロキシヘキシル)ベンゼン、2,2−ビス〔4’−(2”−ヒドロキシエチルオキシ)フェニル〕プロパン等の芳香族基を含む脂肪族ジヒドロキシ化合物を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
さらに、式(1−a)または式(2−a)で表される繰り返し構造単位以外の他の繰り返し構造単位として、上記ジヒドロキシ化合物以外の2官能性化合物から誘導される繰り返し構造単位を含有していてもよい。すなわち、該ジヒドロキシ化合物以外の2官能性化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等の化合物が挙げられる。これらの2官能性化合物を用いることにより、カーボネート基以外に、イミノ基、エステル基、エーテル基、イミド基、アミド基、ウレタン基、ウレア基等の基を含有するポリカーボネート共重合体が得られ、本発明はかかるポリカーボネート共重合体も包含するものである。
【0037】
式(1−a)または式(2−a)で表される繰り返し構造単位以外の他の繰り返し構造単位を含有する場合、全繰り返し構造単位中における、式(1−a)および式(2−a)で表される繰り返し構造単位の占める割合は、本発明の所望の効果を損なわない範囲であれば、特に制限されるものではないが、通常、50モル%以上であり、好ましくは、70モル%以上であり、より好ましくは、80モル%以上であり、さらに好ましくは、90モル%以上である。
本発明の効果を最大限に得るためには、他の繰り返し構造単位を含有することなく、前記式(1−a)および式(2−a)で表される繰り返し構造単位のみを含有してなるポリカーボネート共重合体は特に好ましい。
【0038】
本発明のポリカーボネート共重合体において、末端基は、ヒドロキシ基、ハロホーメート基、炭酸エステル基等の反応性の末端基であってもよく、また、分子量調節剤で封止された不活性な末端基であってもよい。本発明のポリカーボネート共重合体中での末端基の量は、特に制限はないが、通常、構造単位の総モル数に対して、0.001〜10モル%であり、好ましくは、0.01〜5モル%であり、より好ましくは、0.05〜3モル%であり、さらに好ましくは、0.1〜2モル%である。
本発明のポリカーボネート共重合体を、前記の方法に従い重合して製造する際に、分子量を調節する目的で分子量調節剤(末端封止剤)の存在下に重合を行うことは好ましいことである。
【0039】
かかる分子量調節剤としては特に限定されるものではなく、公知のポリカーボネート重合の際に使用される各種既知の分子量調節剤であればよく、例えば、1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物もしくはその誘導体(例えば、1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物のハロホーメート化合物、1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物の炭酸エステルなど)、1価のカルボン酸もしくはその誘導体(例えば、1価のカルボン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、1価のカルボン酸の酸ハライド、1価のカルボン酸のエステルなど)等が挙げられる。
分子量調節剤の使用量は特に制限するものでなく、目的の分子量に調節するために所望に応じて用いればよいが、通常、重合するジヒドロキシ化合物の総モル数に対して、0.001〜10モル%であり、好ましくは0.01〜5モル%であり、より好ましくは、0.05〜3モル%であり、さらに好ましくは、0.1〜2モル%である。
【0040】
本発明のポリカーボネート共重合体は、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、製造時あるいは成形時に、さらに公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤(例えば、リン原子含有化合物、フェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、硫黄原子含有化合物など)、紫外線吸収剤、離型剤(例えば、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル類など)、滑剤、難燃剤(例えば、有機ハロゲン系化合物など)、染料、流動性改良剤、熱安定剤(例えば、硫黄原子含有化合物など)等を併せて添加して使用してもよい。
また本発明のポリカーボネート共重合体に、例えば、帯電防止剤、充填剤(例えば、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維など)等を添加して、光学部品以外の各種成形用材料としても使用してもよい。
【0041】
本発明のポリカーボネート共重合体は、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、製造時あるいは成形時に他のポリマーと混合して、成形材料として使用することが可能である。他のポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、パラオキシベンゾイル系ポリ(チオ)エステル、ポリアリーレート、ポリスルフィド等が挙げられる。
【0042】
本発明のポリカーボネート共重合体からなる樹脂組成物は、本発明のポリカーボネート共重合体を必須成分として、その他の成分として、酸化防止剤(例えば、リン原子含有化合物、フェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、硫黄原子含有化合物など)などを含有してなる組成物である。
本発明の樹脂組成物に添加する酸化防止剤の量は、本発明のポリカーボネート共重合体100重量部に対して、通常、0.0001〜10重量部であり、より好ましくは、0.01〜5重量部であり、さらに好ましくは、0.05〜3重量部である。
【0043】
かかる酸化防止剤としては、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシルホスファイト)、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリス(2−クロロエチル)ホスファイト、トリス(2,3−ジクロロプロピルホスファイト)、トリシクロヘキシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、フェニル−ジデシルホスファイト、ジフェニル−イソオクチルホスファイト、ジフェニル−2−エチルヘキシルホスファイト、ジフェニル−デシルホスファイト、ジフェニル−トリデシルホスファイト、ビス(トリデシル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ジステアリル−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ジフェニル−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、テトラフェニル−ジプロピレングリコール−ジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニル−ジホスファイト、テトラ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ジフェニルホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスチリルテトラホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイトなどの亜リン酸類;
【0044】
トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどのリン酸類;
テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイトなどの亜ホスホン酸類;
ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジイソプロピルなどのホスホン酸類などのリン原子含有化合物、
オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートなどの公知のフェノール系化合物が例示されるが、これらに限定されるものではない。これらの酸化防止剤は、単独で用いてもよく、あるいは、2種類以上併用しても差し支えない。
【0045】
また酸化防止剤以外にも、本発明の所望の効果を損なわない程度で、前述したような、紫外線吸収剤、離型剤(例えば、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル類など)、滑剤、難燃剤(例えば、有機ハロゲン系化合物など)、染料、流動性改良剤、熱安定剤(例えば、硫黄原子含有化合物など)を含有していても差し支えない。
【0046】
さらに本発明の樹脂組成物は、溶融成形時の金型からの離型性などを改良する目的で、必要に応じて一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル類を添加することは好ましいことである。
本発明の樹脂組成物中に添加する高級脂肪酸エステル類の添加量は、本発明のポリカーボネート共重合体100重量部に対して、通常、0.0001〜2重量部であり、好ましくは、0.001〜1重量部であり、より好ましくは、0.01〜0.5重量部である。
【0047】
かかる高級脂肪酸エステル類として、より好ましくは、炭素数1〜20の一価または多価アルコールと炭素数10〜30の飽和脂肪酸の部分エステルまたは全エステルである。該高級脂肪酸エステル類として具体的には、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヒニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、2―エチルヘキシルステアレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの高級脂肪酸エステル類は、単独で用いてもよく、あるいは、2種類以上併用しても差し支えない。
【0048】
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定はなく、通常、樹脂組成物を製造する各種公知の方法により行うことができる。すなわち、
(1)溶液または溶融状態のポリカーボネートに対して上記酸化防止剤を添加した後、ポリカーボネートを固体として単離する方法、
(2)溶液または溶融状態のポリカーボネートから該ポリカーボネートを固体として単離した後、該固体に対して上記酸化防止剤を添加して、さらに公知の各種混合装置(例えば、タンブラーミキサー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサーなど)により分散混合する方法、あるいは、
(3)前述の通り、各種混合機により分散混合した後、押出機、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法などが挙げられる。
また、これらの方法を併用しても差し支えない。
本発明のポリカーボネート共重合体または該共重合体を含有してなる樹脂組成物は、熱可塑性であり、溶融状態で射出成形、押出成形、ブロー成形、射出圧縮成形、さらには、溶液キャスティングなどの各種公知の成形方法により好適に成形加工される。
【0049】
本発明のポリカーボネート共重合体または該共重合体を含有してなる樹脂組成物を成形して光学部品を得るための成形方法として、好ましくは、射出成形、押出成形または射出圧縮成形であり、より好ましくは、射出成形または射出圧縮成形である。
本発明のポリカーボネート共重合体または樹脂組成物を成形して光学部品を製造する際の成形条件としては、樹脂または樹脂組成物の熱的特性に応じて任意の条件で行えるが、通常、樹脂温度180〜350℃、金型温度25(室温)〜160℃の範囲であり、好ましくは、樹脂温度180〜300℃、金型温度50〜150℃の範囲であり、さらに好ましくは、樹脂温度180〜300℃、金型温度50〜150℃の範囲である。
本発明のポリカーボネート共重合体は、透明性、光学特性に優れ(高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、熱的特性、機械的特性などが良好であり、かつ、成形加工性、生産性が良好であることから、各種光学部品用材料として有用である。
【0050】
本発明の光学部品としては、視力矯正用眼鏡レンズ、撮像機器(例えば、カメラ、VTRなど)用レンズ、ピックアップ用レンズ、コリメトリーレンズ、fΘレンズ、フレネルレンズなどの各種プラスチック光学レンズ、光ディスク基板、光磁気ディスク基板などの光記録媒体基板、液晶セル用プラスチック基板、光ファイバー、光導波路等の各種光学部品を挙げることができる。
また本発明のポリカーボネート共重合体または該共重合体を含有してなる樹脂組成物は、成形用材料として上記光学部品以外の用途、例えば、電気機器、電子部品、車両用部品、建材等に成形して用いられることも可能である。
上記方法で得られる本発明の光学部品は、透明性、光学特性に優れ(高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、熱的特性、機械的特性などが良好であり、上記に例示したような用途で好適に使用される。
【0051】
【発明の実施の形態】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例で製造したポリカーボネート共重合体、ならびに、該ポリカーボネート共重合体を含有してなる樹脂組成物の物性測定は以下の方法により行った。[重量平均分子量の測定〕
以下、実施例で製造して得られたポリカーボネート共重合体の0.2重量%クロロホルム溶液を、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)〔昭和電工(株)製、System−11〕により測定し、重量平均分子量(Mw)を求めた。なお、測定値は標準ポリスチレンに換算した値である。
〔溶融流動開始温度および溶融粘度〕
島津高化式フローテスター(CFT500A)を使用し、荷重100kgで直径0.1cm、長さ1cmのオリフィスを用いて測定した。
[屈折率、アッベ数]
得られたポリカーボネート共重合体を240℃でプレス機によりプレス成形してシート状試験片を作成し、プルフリッヒ屈折計を用いて20℃で屈折率(nd)およびアッベ数(νd)を求めた。
[複屈折率]
実施例で製造したポリカーボネート共重合体の厚さ5μmの薄膜をシリコンウエハー上に作成した。すなわち、該ポリカーボネート共重合体の1,1,1−トリクロロエタン溶液(20%濃度)をテフロン(登録商標)製フィルター(ポア径0.45μm)で濾過した後、シリコンウエハー(直径5インチ)上に回転数2000rpm、5秒間の条件下でスピンコートした。その後、70℃で15分間乾燥して溶媒を留去させて、厚さ5μmのポリカーボネート薄膜を作成した。プリズムカプラ(メトリコン社製モデル2020)を使用して632nmレーザー光源で、該薄膜のTEモード光およびTMモード光での屈折率を測定し、それらの差として複屈折率を求めた。
【0052】
実施例1
[本発明のポリカーボネート共重合体の製造および物性測定]
撹拌装置、還流冷却管、温度計、塩化カルボニル吹き込み用浸漬管を設けた内容量2リットルのフラスコに、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール 58.9g(0.3モル)、2,2−ビス(3、5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、73.2g(0.2モル)、フェノール 235mg(0.0025モル;全ジヒドロキシ化合物に対して、0.5モル%)、ピリジン 199g(2.5モル)およびジクロルメタン400gを秤取し、窒素雰囲気下、15℃(氷水冷下)で攪拌して溶解させた。この混合溶液に対して、浸漬管を通じて、塩化カルボニル 59.4g(0.60モル)を同温度で6時間を要して吹き込んだ。吹き込み終了後、さらに同温度で1時間攪拌した後、反応溶液をGPC分析したところ、重量平均分子量は6.8×104であった。該反応溶液へ対して、10%塩酸 1000gを15℃(氷水冷下)で3時間を要して滴下した後、分液して有機層を取り出し、さらに水層が中性になるまで水洗、分液を繰り返した。激しく攪拌したメタノール3500gに対して、得られた有機層(ジクロロメタン溶液)を2時間要して滴下し、析出した固体を濾過して集めた後、メタノール800gでよく洗浄した。減圧下、80℃で20時間乾燥して、白色粉末状固体として目的とするポリカーボネート共重合体 136.4g(収率94%)を得た。
得られたポリカーボネート共重合体は、GPC分析の標準ポリスチレン換算で重量平均分子量6.7×104であった。
得られたポリカーボネート共重合体の1重量%重水素化クロロホルム溶液の1H−NMR(270MHz)を測定した結果を下記に示した。
1H−NMR δ(CDCl3 ):
0.99〜1.11(m,5H)、1.30〜1.88(m,34H)、2.13〜2.33(m,10H)、2.45〜2.50(m,5H)、3.89〜4.30(m,12H)、7.18〜7.28(m,8H)
上記1H−NMR測定の結果から、式(1−a−1)(化13)で表される繰り返し構造単位中のオキシメチレン基の水素(3.89〜4.30ppm)と、式(2−a−1)(化14)で表される芳香環の水素(7.18〜7.28ppm)との積分比を求めることにより、得られたポリカーボネート共重合体中に含まれる下記式(1−a−1)で表される繰り返し構造単位と、下記式(2−a−1)で表される繰り返し構造単位とのモル比は、60:40であることが確認された。
【0053】
【化13】
【0054】
【化14】
【0055】
前記方法に従い、得られた本発明のポリカーボネート共重合体の物性測定を行い、ガラス転移温度(Tg)は130℃を示した。溶融流動開始温度は175℃であり、溶融粘度は230℃で410Pa・s(4100ポイズ)であった。屈折率(nd)1.561、アッベ数(νd)39であり、汎用ポリカーボネートと比較して高アッベ数であった。また複屈折率は11×10-4であり、汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0056】
実施例2
撹拌装置、還流冷却管、温度計、塩化カルボニル吹き込み用浸漬管を設けた内容量2リットルのフラスコに、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール 58.9g(0.3モル)、2,2−ビス(3、5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)プロパン 108.8g(0.2モル)、フェノール 235mg(0.0025モル;全ジヒドロキシ化合物に対して、0.5モル%)、ピリジン 199g(2.5モル)およびジクロルメタン450gを秤取し、窒素雰囲気下、15℃(氷水冷下)で攪拌して溶解させた。この混合溶液に対して、浸漬管を通じて、塩化カルボニル 59.4g(0.60モル)を同温度で6時間を要して吹き込んだ。吹き込み終了後、さらに同温度で1時間攪拌した後、反応溶液をGPC分析したところ、重量平均分子量は6.2×104であった。該反応溶液へ対して、10%塩酸 1000gを15℃(氷水冷下)で3時間を要して滴下した後、分液して有機層を取り出し、さらに水層が中性になるまで水洗、分液を繰り返した。激しく攪拌したメタノール4000gに対して、得られた有機層(ジクロロメタン溶液)を2時間要して滴下し、析出した固体を濾過して集めた後、メタノール800gでよく洗浄した。減圧下、80℃で20時間乾燥して、白色粉末状固体として目的とするポリカーボネート共重合体 173.4g(収率96%)を得た。
得られたポリカーボネート共重合体は、GPC分析の標準ポリスチレン換算で重量平均分子量6.0×104であり、1H−NMR測定の結果から得られたポリカーボネート共重合体中の上記式(1−a−1)で表される繰り返し構造単位と、下記式(2−a−2)で表される繰り返し構造単位とのモル比は60:40であった。
【0057】
【化15】
【0058】
前記方法に従い、得られた本発明のポリカーボネート共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は135℃あった。溶融流動開始温度は180℃であり、溶融粘度は230℃で860Pa・s(8600ポイズ)を示した。屈折率(nd)1.581、アッベ数(νd)37であり、汎用ポリカーボネートと比較して高アッベ数であった。また複屈折率は12×10-4であり、汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0059】
比較例1
[公知のポリメチルメタクリレートを用いた物性測定および光学部品の製造]
公知のポリメチルメタクリレート樹脂(一般光学用グレード)を用いて上記方法に従って、物性測定を行った。ガラス転移温度(Tg)は111℃であり、屈折率(nd)1.487、アッベ数(νd)54であり、複屈折率は1×10− 4以下であった。
【0060】
比較例2(公知の汎用ポリカーボネートを用いた物性測定)
公知の汎用ポリカーボネート(光学ディスク用グレード;重量平均分子量3万)を用いて上記方法に従って、物性測定を行った。ガラス転移温度(Tg)は130℃であり、屈折率(nd)1.580、アッベ数(νd)30であった。複屈折率は70×10-4であり、比較的高い値であった。
【0061】
比較例3
[特開昭64−22632号公報に記載のポリカーボネートを用いた物性測定]特開昭64−22632号公報の実施例2に記載の方法と同様な方法に従って、ポリカーボネート(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールから誘導されるポリカーボネートの繰り返し構造単位と、ビスフェノールAから誘導されるポリカーボネートの繰り返し構造単位とのモル比率が、25:75)を合成して、上記方法に従って、物性測定を行った。ガラス転移温度(Tg)
131℃であり、屈折率(nd)1.572、アッベ数(νd)34であった。複屈折率は55×10-4であり、汎用ポリカーボネートと比較すると低いものの、やや高い値を示した。
【0062】
実施例3
[実施例1で得られたポリ(チオ)エステル共重合体からなる本発明の光学部品用成形材料の製造]
実施例2で製造したポリカーボネート共重合体100重量部、トリス(2,4−ジ−tert―ブチルフェニル)ホスファイト0.1重量部およびペンタエリスチリル[3−(3,5−ジ-tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.1重量部を、ヘンシェルミキサーにて混合した後、単軸押出機(65mm)にてシリンダー温度210℃で脱気しながら溶融混練して、押し出しペレット化して、無色透明ペレット状の樹脂組成物を得た。
【0063】
実施例4
[本発明の光学部品の製造]
上記実施例3で得られた樹脂組成物を用いて射出成形によりレンズ形状の成形品を製造した。すなわち、該樹脂組成物のペレットを80℃で24時間減圧乾燥した後、30t直圧式成形機にて、成形温度230℃、金型温度80℃で射出成形して、無色透明、プラスレンズ(凸レンズ;直径75mm、中心厚4.2mm、コバ厚1.0mm、+2.00D)形状の成形体を得た。この成形体を偏光板の間において観察したところ、脈理、歪みなどは観察されず、複屈折が低く光学的に均質なものであった。このように本発明の成形材料を使用することにより、汎用ポリカーボネートと比較して低い温度(230℃)で成形が可能で、かつ、光学的に均質な成形品を好適に製造することができた。また、こうして得られた本発明のプラスチックレンズは、透明性、機械的特性(耐衝撃性、引っ張り強度、曲げ強度など)、熱的特性(熱変形温度など)、耐光性等の諸物性面で、実用上、良好な特性を示した。
【0064】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネート共重合体は、光学特性に優れ(透明性、高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、機械的物性、熱的特性が良好であり、かつ、溶融流動性に優れ、生産性が良好であることから、各種光学部品用の成形材料として非常に有用である。上記方法で得られる本発明の光学部品は、光学特性に優れ(透明性、高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、機械的特性、熱的特性が良好であり、非常に有用である。
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