JP3960841B2 - ポリ(チオ)エステル重合体およびその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の繰り返し構造単位を含有してなるポリ(チオ)エステル重合体、該重合体からなる樹脂組成物、ならびに、これらを成形して得られる光学部品に関する。さらに、本発明は該ポリ(チオ)エステル重合体を製造する際の中間体として、有用な多環状脂肪族ジカルボン酸誘導化合物またはその誘導体に関する。
本発明のポリ(チオ)エステル重合体は、透明性、光学特性に優れ[低色収差(高アッベ数)、低複屈折率]、低吸水性であって、かつ、機械的特性、熱的特性が良好であるという特徴を有している。
該ポリ(チオ)エステル重合体は、視力矯正用眼鏡レンズ(眼鏡レンズ)、ピックアップレンズ、撮影機器レンズなどを代表とするプラスチック光学用レンズ、情報記録用光ディスク基板、液晶セル用プラスチック基板、光ファイバー、光導波路などの各種光学部品用の成形材料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
無機ガラスは、透明性に優れ、光学異方性が小さいなどの諸物性に優れていることから、透明性光学材料として広い分野で使用されている。しかしながら、重くて破損しやすいこと、生産性が悪い等の問題があり、近年、無機ガラスに代わる有機光学材料(光学用樹脂)の開発が盛んに行われている。
光学用樹脂として基本的に最も重要な特性の一つは透明性である。現在までに透明性の良好な光学用樹脂として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ビスフェノールAポリカーボネート(BPA−PC)、ポリスチレン(PS)、メチルメタクリレート-スチレン共重合ポリマー(MS)、スチレン-アクリロニトリル共重合ポリマー(SAN)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)(TPX)、ポリシクロオレフィン(COP)、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート(EGAC)、ポリチオウレタン(PTU)などが知られている。
PMMAは透明性、耐候性に優れ、かつ成形性も良好であり、代表的な光学用樹脂の一つとして広く用いられている。しかしながら、屈折率(nd)が1.49と比較的低く、吸水性が大きいという欠点を有している。
BPA−PCは、透明性、耐熱性、耐衝撃性に優れ、比較的高屈折率(nd=1.59)であり、情報記録用光ディスク基板を代表とする光学用途において用いられているが、色収差(屈折率分散)、複屈折が比較的大きく、また溶融粘度が高く成形性がやや困難である等の欠点を有していることから、光学用樹脂としての利用分野が限定されている。
PSおよびMSは成形性、透明性、低吸水性および高屈折性に優れるものの、耐衝撃性、耐候性および耐熱性に劣る欠点を有しているため、光学用樹脂としてほとんど実用化されていない。また、SANは比較的、屈折率が高く、機械的物性もバランスがよいとされているが、耐熱性にやや難があり(熱変形温度: 80〜90℃)、同様に光学樹脂としてほとんど使用されていない。
TPXおよびCOPは透明性、低吸水性、耐熱性に優れるものの、低屈折率(nd =1.47〜1.53)であり、また耐衝撃性、ガスバリヤー性、染色性が悪いという問題点を有している。
EGACはモノマーであるジエチレングリコールビスアリルカーボネートを重合して得られる熱硬化性樹脂であり、一般汎用の眼鏡レンズ用途には最も多く使用されている。透明性、耐熱性が良好であり、色収差が極めて小さいといった特徴を有しているものの、屈折率が低く(nd =1.50)、耐衝撃性にやや劣るという欠点がある。
PTUはジイソシアネート化合物とポリチオール化合物との反応で得られる熱硬化性樹脂であり、高屈折率の眼鏡レンズ用途において、現在、最も多く使用されている。透明性、耐衝撃性に特に優れ、かつ、高屈折率であって、色収差も比較的小さく、極めて優れた光学用樹脂である。しかしながら、唯一、眼鏡レンズを製造する工程において熱重合成形時間に長時間(1〜3日)を要するといった欠点があり、生産性の点で課題を残している。
【0003】
代表的な光学用樹脂の一つである上記ビスフェノールAポリカーボネート(BPA−PC、以下、汎用ポリカーボネートと称する)に見られた前記欠点を改良し、かつ、射出成形加工により短時間で高品質な光学部品を得る目的で、新規なポリカーボネート系の熱可塑性光学用樹脂が提案されている。例えば、脂環系ジヒドロキシ化合物から誘導される繰り返し構造単位を有する脂環系ポリカーボネート共重合体などのポリマーが比較的低色収差(高アッベ数)、低複屈折性であることが開示されており、光学用途での利用が提案されている(例えば、特開昭64−66234号公報、特開平1−223119号公報など)。これらの方法によれば、射出成形法を用いた短時間での光学部品の成形加工、製造が可能となり、かつ、得られた光学部品は高アッベ数であるか、あるいは、複屈折率が比較的低いなどの特徴を有しているものの、光学部品として実用上、十分満足されるものとは言い難かった。すなわち、例えば、眼鏡レンズとして用いた場合、屈折率がやや低く、耐熱性も十分であるとは言い難い等、いくつかの実用上の問題点を残していた。
【0004】
以上のように、従来の光学用樹脂は用途に応じてその特徴を考慮して使用されているものの、それぞれに克服すべき欠点、問題点を有しているのが現状である。このような状況下にあって、透明性、光学特性に優れ(高アッベ数、低複屈折率など)、低吸水性であって、かつ、機械的特性(例えば、耐衝撃性など)、熱的特性(例えば、熱変形温度など)等の諸特性が良好な新規な熱可塑性光学用樹脂の開発が切望されているのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上述したような従来の光学用樹脂の欠点を解決し、透明性、光学特性に優れ(高アッベ数、低複屈折率など)、低吸水性であって、かつ、機械的特性、熱的特性が良好な熱可塑性光学用樹脂を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、
一般式(1−A)(化3)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリ(チオ)エステル重合体、
【0007】
【化3】
【0008】
(式中、R1は鎖状、環状またはこれらを組み合わせてなるアルキレン基、アラルキレン基、または、アリーレン基を表し、X1およびX2はそれぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子を表す)
一般式(1)(化4)で表されるジカルボン酸化合物またはその誘導体、
【0009】
【化4】
【0010】
(式中、X3 およびX4はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子またはR2O−基を表し、R2はアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す)
前記ポリ(チオ)エステル重合体を含有してなる樹脂組成物、
前記ポリ(チオ)エステル重合体からなる光学部品。
前記樹脂組成物を成形して得られる光学部品に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリ(チオ)エステル重合体は、一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位を必須構造単位として含有してなる重合体である。
本発明のポリ(チオ)エステル重合体は、代表的には、一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物またはその誘導体と、一般式(2)(化5)で表される化合物を作用させ、(チオ)エステル化反応により重合させることにより得られるものである。
【0012】
【化5】
【0013】
(式中、R1、X1およびX2は前記に同じ)
一般式(1−A)において、R1は鎖状、環状またはこれらを組み合わせてなるアルキレン基、アラルキレン基またはアリーレン基を表す。
該R1基は、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を含有していてもよい。
該R1基は、一般式(2)で表される化合物から誘導される二価の残基であり、好ましくは、酸素原子または硫黄原子を含有していてもよい総炭素数1〜20の鎖状、環状またはこれらを組み合わせてなるアルキレン基、酸素原子または硫黄原子を含有していてもよい総炭素数6〜12のアラルキレン基、もしくは、酸素原子または硫黄原子を含有していてもよい総炭素数4〜20のアリーレン基であり、より好ましくは、硫黄原子または酸素原子を含有していてもよい総炭素数1〜10の鎖状、環状またはこれらの組み合わせからなるアルキレン基、酸素原子または硫黄原子を含有していてもよい総炭素数6〜12のアラルキレン基、もしくは、酸素原子または硫黄原子を含有していてもよい総炭素数4〜20のアリーレン基である。
【0014】
一般式(1)において、X1およびX2はそれぞれ独立に、酸素原子または硫黄原子を表す。
一般式(1−A)で表される繰り返し繰り返し構造単位として、具体的には、下記式(1−A−i)(化6)または一般式(1−A−ii)(化7)で表される繰り返し構造単位であり、かかる繰り返し構造単位は、好ましい。
【0015】
【化6】
【0016】
【化7】
【0017】
(式中、R1、X1およびX2は前記に同じ)
本発明のポリ(チオ)エステル重合体に関しては、原料モノマーとなる一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物またはその誘導体が上記位置異性体の他に、シス(cis)体またはトランス(trans)体、あるいは、エキソ(exo)体またはエンド(endo)体などの立体異性体を有していることから、一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位でも、通常、それらに起因する位置および立体構造の異なる複数の繰り返し構造単位が存在する。
本発明のポリ(チオ)エステル重合体は、これらの混合物であってもよく、あるいは、特定の一種類の異性体構造を有する繰り返し構造単位のみからなる重合体であってもよい。
【0018】
なお、以下実施例などに記載される一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位は、特別の説明、限定などがない限り、通常、上記一般式(1−A−i)および一般式(1−A−ii)の二種類の繰り返し構造単位の位置異性体混合体であることを意味する。
【0019】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体は、一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物またはその誘導体と一般式(2)で表される化合物を、作用させ(チオ)エステル化反応によって(共)重合することにより製造される。重合反応それ自体は、従来、公知のポリ(チオ)エステル重合の方法と同様にして好適に実施される。
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、反応それ自体は公知の各種ポリ(チオ)エステル重合方法[例えば、実験化学講座第4版 (28巻)高分子合成、217〜231頁、丸善出版(1988年)に記載の方法など]に従って、好適に製造される。すなわち、代表的には、例えば、ジカルボン酸クロリド等を用いる溶融重合法、溶液重合法、界面重合法、エステル交換法、直接重合法などがの方法であり、より具体的には、
▲1▼一般式(1)で表されるジカルボン酸誘導体において、X3およびX4がハロゲン原子であるジカルボン酸ハロゲン化物と一般式(2)化合物を、無溶媒または溶媒中で作用させて脱ハロゲン化水素して(チオ)エステル化反応を行い重合する方法、
▲2▼一般式(1)で表されるジカルボン酸誘導体において、X3およびX4がR4O−基であるジカルボン酸エステル化合物と一般式(2)で表される化合物を無溶媒または溶媒中で作用させてエステル交換反応により(チオ)エステル化反応を行い重合する方法、
▲3▼一般式(1)で表されるジカルボン酸誘導体において、X3およびX4がヒドロキシ基であるジカルボン酸化合物と、一般式(2)で表される化合物を、無溶媒または溶媒中で作用させて、脱水縮合して(チオ)エステル化反応を行い重合する方法などが挙げられる。
【0020】
これらの方法においては、反応を効率的に行うために、必要に応じて、酸または塩基(無機の酸または塩基、有機の酸または塩基など)を使用して、その存在下に行うことが可能である。
【0021】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体の原料モノマーである一般式(1)(化8)で表されるジカルボン酸化合物またはその誘導体は、その製造方法については後で詳細に説明するが、新規化合物であって、ジカルボン酸化合物、ジカルボン酸ハロゲン化物および。ジカルボン酸エステル化合物を包含する。
【0022】
【化8】
【0023】
(式中、X3 およびX4はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子またはR2O−基を表し、R2 はアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す)
【0024】
一般式(1)において、
X3およびX4は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子またはR2O−基を表す。該R2O−基中のR2は、アルキル基、アラルキル基またはアリール基を表し、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜20のアラルキル基または炭素数4〜20のアリール基であり、
より好ましくは、炭素数1〜4アルキル基、炭素数5〜12のアラルキル基または炭素数4〜12のアリール基であり、
さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基である。
X3およびX4として、好ましくは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基であり、
より好ましくは、ヒドロキシ基、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基またはdフェニルオキシ基である。
【0025】
一般式(1)で表されるカルボン酸化合物またはその誘導体の中でも、
一般式(1−i)(化9)または一般式(1−ii)(化10)で表される化合物は、より好ましい。
【0026】
【化9】
【0027】
【化10】
【0028】
(式中、X3 、X4は前記に同じ)
一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物またはその誘導体は、前述したような、位地異性体の他に、ス(trans)体、あるいは、エキソ(exo)体またはエンド(endo)体などの立体異性体を有しているが、
本発明の一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物またはその誘導体は、特定の一種類の異性体構造のみからなる化合物であってもよく、あるいは、これらの混合物であってもよい。
【0029】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体を製造するに際して用いられる原料モノマーの一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物またはジチオール化合物は、公知の合成化学的な方法により製造可能であり、一部の化合物は市販で入手可能である。
かかる化合物として、一般式(2−a)(化11)で表されるジヒドロキシ化合物、式(2−b)(化12)で表されるジチオール化合物、または、一般式(2−c)(化13)で表されるヒドロキシ基含有チオール化合物が例示される。
【0030】
【化11】
【0031】
【化12】
【0032】
【化13】
【0033】
(式中、R1は前記に同じ)
上記化合物の中でも、一般式(2−a)で表されるジヒドロキシ化合物または一般式(2−b)で表されるジチオール化合物は、好ましい。
該ジヒドロキシ化合物としては、各種公知の芳香族ジヒドロキシ化合物、あるいは、鎖状または環状脂肪族ジヒドロキシ化合物を例示することができる。
芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルメタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)プロパン〔”ビスフェノールA”〕、2-(4'−ヒドロキシフェニル)-2-(3'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-3−メチルブタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) ペンタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) ヘキサン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) ヘプタン、4,4-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) ヘプタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) トリデカン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(3'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−エチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−n−プロピル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−イソプロピル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−sec−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−シクロヘキシル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−アリル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−メトキシ−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3',5'-ジメチル−4'−ヒドロキシフェニル) プロパン、2,2-ビス(2',3',5',6'-テトラメチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シアノメタン、1-シアノ-3,3−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0034】
1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1-ビス(3'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3',5'-ジメチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3',5'-ジクロロ−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサン、1,1-ビス (4'−ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)アダマンタン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
4,4'- ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'- ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(ヒドロキシアリール)エーテル類;
4,4'- ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3'−ジシクロヘキシル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3'−ジフェニル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のビス(ヒドロキシアリール)スルフィド類;
4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド等のビス(ヒドロキシアリール)スルホキシド類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'- ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルスルホン等のビス(ヒドロキシアリール)スルホン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ケトン等のビス(ヒドロキシアリール)ケトン類;
【0035】
さらには、7,7'−ジヒドロキシ−3,3',4,4'-テトラヒドロ−4,4,4',4'-テトラメチル-2,2'-スピロビ(2H−1−ベンゾピラン)、トランス-2,3- ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-2- ブテン、9,9-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)フルオレン、3,3-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-2- ブタノン、1,6-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-1,6- ヘキサンジオン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p-キシレン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m-キシレン、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン等が挙げられる。
【0036】
該脂肪族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、1,2−ジヒドロキシエタン、1,3−ジヒドロキシプロパン、1,4−ジヒドロキシブタン、1,5−ジヒドロキシペンタン、3−メチル−1,5−ジヒドロキシペンタン、1,6−ジヒドロキシヘキサン、1,7−ジヒドロキシヘプタン、1,8−ジヒドロキシオクタン、1,9−ジヒドロキシノナン、1,10−ジヒドロキシデカン、1,11−ジヒドロキシウンデカン、1,12−ジヒドロキシドデカン、ジヒドロキシネオペンチル、2−エチル−1,2−ジヒドロキシヘキサン、2−メチル−1,3−ジヒドロキシプロパン等の鎖状脂肪族ジヒドロキシ化合物;
1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、等の環状脂肪族ジヒドロキシ化合物;
o−ジヒドロキシキシリレン、m−ジヒドロキシキシリレン、p−ジヒドロキシキシリレン、1,4−ビス(2’−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−ビス(3’−ヒドロキシプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(4’−ヒドロキシブチル)ベンゼン、1,4−ビス(5’−ヒドロキシペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(6’−ヒドロキシヘキシル)ベンゼン、2,2−ビス〔4’−(2”−ヒドロキシエチルオキシ)フェニル〕プロパン等の芳香族基を含む脂肪族ジヒドロキシ化合物;
2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジチアン、
2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、
2−ヒドロキシメチル−6−ヒドロキシ−1,4−ジチアシクロヘプタン、
3,7−ジヒドロキシ−1,5−ジチアシクロオクタン、
2,4−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−ジチオラン、
4,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−ジチアン
2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタン、
2,5−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.12,3]オクタン等の硫黄原子含有ジヒドロキシ化合物などを例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
これら公知のジヒドロキシ化合物の中でも、光学特性(屈折率、アッベ数など)、熱的特性などを考慮すると、好ましくは、芳香族ジヒドロキシ化合物、脂肪族環状ジヒドロキシ化合物または硫黄原子含有ジヒドロキシ化合物であり、
より好ましくは、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)プロパン〔”ビスフェノールA”〕、4,4'- ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、
2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジチアン、
2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、
2−ヒドロキシメチル−6−ヒドロキシ−1,4−ジチアシクロヘプタン、
3,7−ジヒドロキシ−1,5−ジチアシクロオクタン、
2,4−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−ジチオラン、
4,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−ジチアン
2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタン、
2,5−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.12,3]オクタン等の硫黄原子含有ジヒドロキシ化合物である。
【0038】
ジチオール化合物としては、各種公知の芳香族ジチオール化合物または脂肪族(鎖状または環状)ジチオール化合物を例示することができる。具体的には、
1,4-ベンゼンジチオール、1、3-ベンゼンジチオール、1,2-ベンゼンジチオール、
4,4'-チオジベンゼンジチオール、
p−キシリレンジチオール、m−キシリレンジチオール、o−キシリレンジチオール、
1,4−シクロヘキサンジチオール、1,3−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、
1,4−ビスメルカプトメチルシクロヘキサン、1,3−ビスメルカプトメチルシクロヘキサン、1,2−ビスメルカプトメチルシクロヘキサン、
1,2-エタンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール
ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、
ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、
2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、
2,5−ビス(メルカプトメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、
2−メルカプトメチル−6−メルカプト−1,4−ジチアシクロヘプタン、
3,7−ジメルカプト−1,5−ジチアシクロオクタン、
2,4−ビス(メルカプトメチル)−1,3−ジチオラン、
4,5−ビス(メルカプトメチル)−1,3−ジチアン
2,6−ジメルカプト−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタン、
2,5−ジメルカプト−8−チアトリシクロ[2.2.1.12,3]オクタン、
などのジチオール化合物が例示されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
さらに、一般式(2)で表される化合物として、例えば、2−メルカプトメチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジチオランなどのヒドロキシ基含有チオール化合物も例示される。
【0040】
本発明の所望の効果の一つである、屈折率、アッベ数をより高めるためには、一般式(2)で表される化合物として、硫黄原子を有するジヒドロキシ化合物またはジチオール化合物を用いることは、好ましい。
【0041】
かかる化合物として、例えば、
2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジチアン、
2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、
2−ヒドロキシメチル−6−ヒドロキシ−1,4−ジチアシクロヘプタン、
3,7−ジヒドロキシ−1,5−ジチアシクロオクタン、
2,4−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−ジチオラン、
4,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−ジチアン
2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタン、
2,5−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.12,3]オクタン等の硫黄原子含有のジヒドロキシ化合物;
ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、
ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、
2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、
2,5−ビス(メルカプトメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、
2−メルカプトメチル−6−メルカプト−1,4−ジチアシクロヘプタン、
3,7−ジメルカプト−1,5−ジチアシクロオクタン、
2,4−ビス(メルカプトメチル)−1,3−ジチオラン、
4,5−ビス(メルカプトメチル)−1,3−ジチアン
2,6−ジメルカプト−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタン、
2,5−ジメルカプト−8−チアトリシクロ[2.2.1.12,3]オクタン等の硫黄原子含有のジチオール化合物;
2−メルカプトメチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジチオランなどが例示される。
これらのジチオール化合物の中で、例えば、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアンなどの化合物は、特開平3−236836号公報、Journal of Organic Chemistry.,34巻、3389〜3391頁(1969年)などに記載の方法により好適に製造される。
【0042】
本発明の所望の効果を得るために、本発明のポリ(チオ)エステル重合体は、一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位であって、互いに化学構造の異なる複数の繰り返し構造単位を含有してなる共重合体であることは、好ましいことである。
【0043】
かかる共重合体として、
下記一般式(1−A−a)(化14)、式(1−A−b)(化15)および一般式(1−A−c)(化16)で表される繰り返し構造単位から選ばれる少なくとも二種類の繰り返し構造単位を含有してなる、共重合体であり、下記一般式(1−A−a)で表される繰り返し構造単位、ならびに、下記一般式(1−A−b)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリエステル−ポリチオエステル共重合体が、好ましい。
【0044】
【化14】
【0045】
【化15】
【0046】
【化16】
【0047】
(式中、R1は前記に同じ)
また本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、本発明の所望の効果を損なわない範囲において、一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位以外の、他の繰り返し構造単位を含有していても差し支えない。
【0048】
一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位以外の、他の繰り返し構造単位としては、一般式(1)で表されるジカルボン酸誘導体以外のジカルボン酸誘導体から誘導される繰り返し構造単位、あるいは、一般式(2−1)もしくは一般式(2−2)で表されるジヒドロキシ化合物またはジチオール化合物以外の二官能性化合物から誘導される繰り返し構造単位である。
【0049】
該ジカルボン酸誘導体としては、各種公知の芳香族ジカルボン酸誘導体、あるいは、鎖状または環状脂肪族ジカルボン酸誘導体を例示することができる。
かかるジカルボン酸化合物としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,5-チオフェンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジ酢酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、2,6−ノルボルナンジカルボン酸、2,3−ノルボルナンジカルボン酸などの環状脂肪族ジカルボン酸化合物;
コハク酸、マレイン酸、フマル酸、1,3-プロパンジカルボン酸、1,4-ブタンジカルボン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸などの鎖状脂肪族ジカルボン酸化合物等が例示されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
さらに、一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位以外の他の繰り返し構造単位として、上記ジヒドロキシ化合物またはジチオール化合物以外の2官能性化合物から誘導される繰り返し構造単位を含有していてもよい。かかる2官能性化合物を用いることにより、エステル基またはチオエステル基以外に、カーボネート基、イミノ基、エーテル基、イミド基、アミド基、ウレタン基、ウレア基等の結合基を含有するポリ(チオ)エステル共重合体が得られるが、本発明はかかるポリ(チオ)エステル共重合体も包含するものである。
【0051】
一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位以外の他の繰り返し構造単位を含有する場合、全繰り返し構造単位中における、一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位の占める割合は、本発明の所望の効果を損なわない範囲であれば、特に制限されるものではないが、通常、50モル%以上であり、好ましくは、70モル%以上であり、より好ましくは、90モル%以上である。
本発明の所望の効果を最大限に得るためには、他の繰り返し構造単位を含有することなく、一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位のみからなるポリ(チオ)エステル重合体は、特に好ましい。
【0052】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体において、末端基は、前述したような一般式(1)または一般式(2−1)、(2−2)で表される原料モノマーに由来するカルボキシ基、ヒドロキシ基またはチオール基等の末端基であってもよく、また、以下に説明するような分子量調節剤(例えば、1価のヒドロキシ化合物、1価のチオール化合物または1価のカルボン酸誘導体など)でポリマー主鎖の末端基が封止された不活性な末端基であってもよい。
本発明のポリ(チオ)エステル重合体中での末端基の量は、特に制限はないが、通常、構造単位の総モル数に対して、0.001〜5モル%であり、好ましくは、0.01〜4モル%であり、より好ましくは、0.05〜3モル%である。
【0053】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体を、前記の方法に従い重合して製造する際に、分子量を調節する目的で分子量調節剤の存在下に重合を行うことは好ましいことである。
かかる分子量調節剤としては特に限定されるものではなく、公知のポリ(チオ)エステル重合の際に使用される各種既知の分子量調節剤であればよく、例えば、1価の脂肪族ヒドロキシ化合物または芳香族ヒドロキシ化合物、1価の脂肪族チオール化合物または芳香族チオール化合物、もしくは、1価の脂肪族または芳香族カルボン酸誘導体(例えば、1価の脂肪族または芳香族カルボン酸ハロゲン化物、1価の脂肪族または芳香族カルボン酸エステル化物など)等が挙げられる。
【0054】
かかる化合物として、具体的には、メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、メトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキシルアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェノキシエタノール、フェノール、4-tert-ブチルフェノール、2-クレゾール、3-クレゾール、4-クレゾール、4-エチルフェノール、4-シクロヘキシルフェノール、4-メトキシフェノール、4-イソプロペニルフェノール、4-クロロフェノール、4-ブロモフェノール、4-クミルフェノール、4-フェニルフェノール、α−ナフトール、β−ナフトールなど1価の脂肪族ヒドロキシ化合物または芳香族ヒドロキシ化合物;
メタンチオール、エタンチオール、ブタンチオール、オクタンチオール、シクロヘキサンチオール、フェニルメタンチオール、ベンゼンチオールなどの1価の脂肪族または芳香族チオール化合物;
酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、安息香酸、4-メチル安息香酸、3-メチル安息香酸、2-メチル安息香酸、4-クロロ安息香酸、3-クロロ安息香酸、2-クロロ安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸などの1価の脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
分子量調節剤の使用量は特に制限するものでなく、目的の分子量に調節するために所望に応じて用いればよいが、通常、重合するジヒドロキシ化合物の総モル数に対して、0.001〜5モル%であり、好ましくは0.01〜4モル%であり、より好ましくは、0.05〜3モル%であり、さらに好ましくは、0.05〜2モル%である。
【0056】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体の分子量としては、特に限定されるものではないが、通常、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定する標準ポリスチレン換算の分子量として、重量平均分子量が5000〜200000であり、好ましくは、10000〜180000であり、より好ましくは、20000〜150000である。
【0057】
また、重量平均分子量と数平均分子量の比として表される多分散性インデックスとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは、1.5〜20.0であり、より好ましくは、2.0〜15.0であり、さらに好ましくは、2.0〜10.0である。
【0058】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体または該重合体を成形して得られる光学部品(例えば、プラスチックレンズなど)のガラス転移温度は、特に限定するものではないが、通常、70℃以上であり、各種光学部品用として使用されるために、好ましくは、80℃以上であり、より好ましくは、90℃以上であり、さらに好ましくは、100℃以上である。
【0059】
一方、ガラス転移温度が高すぎると、成形加工性の点から好ましくない。すなわち、溶融流動開始温度、溶融粘度が相対的に高くなり、成形加工し難くなったり、視力矯正用レンズとして染色加工して用いる際に染色性が悪くなる等の問題が生じる。
本発明のポリ(チオ)エステル重合体のガラス転移温度としては、好ましくは、70℃〜200℃であり、より好ましくは、80℃〜180℃であり、さらに好ましくは、90〜170℃である。
【0060】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体または該重合体を成形して得られる光学部品(例えば、プラスチックレンズなど)の屈折率(nd)は、1.55以上であって、好ましくは、1.56以上であり、より好ましくは、1.57以上であり、さらに好ましくは、1.58以上である。
該重合体または該光学部品の屈折率(nd)が1.59以上であることは、特に好ましい。
【0061】
また、ポリ(チオ)エステル重合体または該重合体を成形して得られる光学部品(例えば、プラスチックレンズなど)のアッベ数(νd)は、35以上であって、好ましくは、36以上であり、より好ましくは、37以上であり、さらに好ましくは、38以上である。
該重合体または該光学部品のアッベ数(νd)が40以上であることは、特に好ましい。
【0062】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体および該重合体を成形して得られる光学部品のASTM D−0570に準じた吸水率測定による吸水率は、0.30%以下であることが好ましく、より好ましくは、0.25%以下であり、さらに好ましくは、0.20%以下であり、該吸水率が0.15%以下であることは、特に好ましい。
【0063】
次に、本発明の一般式(1)で表されるジカルボン酸誘導体の製造法について説明する。
一般式(1)で表されるジカルボン酸誘導体は、下記式(A)に示される合成経路で反応それ自体は公知の方法によって、それぞれ好適に製造される。
すなわち、下記反応スキーム(化17)における式(3)のジシアノテトラシクロドデカン化合物を、酸性またはアルカリ性条件下で加水分解すしてジカルボン酸化合物が製造される。
塩化チオニル、塩化カルボニル、臭化チオニル等を用いた公知の酸ハロゲン化法で該ジカルボン酸化合物を反応させることにより、ジカルボン酸ハロゲン化物が好適に製造される。さらに、該カルボン酸ハロゲン化物と各種アルコール化合物を反応させてエステル化することにより、ジカルボン酸エステル化物が好適に製造される。
【0064】
【化17】
【0065】
(式中、R2はアルキル基またはアリール基を表す)
以下、各反応についてさらに詳しく説明する。
【0066】
なお上記スキーム中の式(3)で表されるジシアノ化合物(ジカルボニトリル類)は、後述する参考製造例などに記載の方法に従って、好適に製造される。
式(3)で表されるジシアノ化合物を加水分解してジカルボン酸化合物を製造する方法としては、反応それ自体は公知の合成化学的方法[例えば、新実験化学講座 14巻(II)947〜950頁(日本化学会編、1978年発行)などに記載の方法]が例示される。
すなわち、物質または塩基性物質の存在下、ジシアノ化合物を加水分解する方法が挙げられる。
【0067】
該酸性物質として、特に限定されるものではなく、通常、塩化水素、臭化水素、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、リン酸などの無機酸性物質; フェノール類、メルカプト化合物、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸類などの有機酸性物質などが例示される。
【0068】
該塩基性化合物として、特に限定されるものではなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウムなどの無機塩基性物質;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、アニリン、N,N−ジメチルアニリンなどの有機塩基性物質などが例示される。
前記酸性物質または塩基性物質の中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いてアルカリ性条件下で加水分解する方法は、通常よく用いられる方法であり、好ましい。
酸性物質または塩基性物質の使用量は、特に制限するものではないが、通常、ジシアノ体1モルに対して、0.01モル〜20モルであり、好ましくは、0.1モル〜10モルである。
【0069】
水の使用量は、化学量論的に必要な量あれば十分であり、特に限定はないが、溶媒として兼ねて使用する場合が多く、通常、ジシアノ体 1質量部に対して、0.1質量部〜100質量部であり、好ましくは、0.5質量部〜10質量部である。
反応温度は、特に制限するものではないが、通常、0℃〜200℃であり、好ましくは、25℃〜180℃である。
反応時間は、反応温度によって影響されるが、通常、数分〜数十時間であり、好ましくは、30分〜30時間である。
【0070】
反応は、水以外で反応条件下不活性な溶媒存在下に行なわれても差し支えない。かかる溶媒として、例えば、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒などが例示される。これらの溶媒は単独で使用してもよく、あるいは、2種類以上を併用しても差し支えない。
【0071】
反応終了後、生成物であるジカルボン酸化合物は、公知の操作、処理方法(例えば、中和、溶媒抽出、水洗、分液、溶媒留去など)により後処理されて単離される。さらに必要に応じて、ジカルボン酸化合物は、公知の方法(例えば、再結晶、クロマトグラフィーあるいは活性炭処理など)により分離、精製して、より高純度の化合物として単離される。
【0072】
上記方法で得られるジカルボン酸化合物を酸ハロゲン化してジカルボン酸ハロゲン化物を製造する方法として、反応それ自体は公知の合成化学的方法[例えば、新実験化学講座 14巻(II)1106〜1111頁(日本化学会編、1978年発行)などに記載の方法]が例示される。
すなわち、代表的には、必要に応じて触媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなど)を用いてその存在下、塩化チオニル、塩化カルボニル、臭化チオニル、塩化オギザリルなどの化合物を用いて、ジカルボン酸化合物を酸ハロゲン化する方法である。物質または塩基性物質の存在下、ジシアノ体を加水分解する方法である。
【0073】
該酸ハロゲン化剤の使用量は、化学量論的に必要な量であれば十分であり、特に限定はないが、通常、ジシカルボン酸化合物1モルに対して、2モル〜20モルであり、好ましくは、2モル〜15モルである。
反応温度は、特に制限するものではないが、通常、0℃〜200℃であり、好ましくは、25℃〜180℃である。
反応時間は、反応温度によって影響されるが、通常、数分〜数十時間であり、好ましくは、30分〜30時間である。
【0074】
反応は、水以外で反応条件下不活性な溶媒存在下に行なわれても差し支えない。かかる溶媒として、例えば、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸ブチル等のエステル系溶媒、
ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、
ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒などが例示される。これらの溶媒は単独で使用してもよく、あるいは、2種類以上を併用しても差し支えない。
かかる酸ハロゲン化反応は、反応の進行を促進する目的で、塩基性化合物(無機塩基性化合物または有機塩基性化合物など)の存在下で行なわれても差し支えない。
【0075】
反応終了後、生成物であるジカルボン酸ハロゲン化物は、公知の操作、処理方法(例えば、溶媒留去など)により後処理されて単離される。さらに必要に応じて、該ジカルボン酸ハロゲン化物は、公知の方法(例えば、蒸留など)により分離、精製して、より高純度の化合物として単離される。
【0076】
上記方法で得られるジカルボン酸ハロゲン化物をエステル化してジカルボン酸エステル化合物を製造する方法として、反応それ自体は公知の合成化学的方法[例えば、新実験化学講座 14巻(II)1002〜1005頁(日本化学会編、1978年発行)などに記載の方法]が例示される。
すなわち、代表的には、必要に応じて塩基の存在下、酸ハロゲン化物に対して1価のアルコール化合物を作用させてエステル化する方法である。
【0077】
該アルコール化合物の使用量は、化学量論的に必要な量あれば十分であり、特に限定はないが、溶媒として兼ねて使用する場合が多く、通常、ジカルボン酸塩化物1モルに対して2モル以上である。
反応温度は、特に制限するものではないが、通常、0℃〜200℃であり、好ましくは、25℃〜180℃である。
反応時間は、反応温度によって影響されるが、通常、数分〜数十時間であり、好ましくは、30分〜30時間である。
【0078】
反応は、水以外で反応条件下不活性な溶媒存在下に行なわれても差し支えない。かかる溶媒として、例えば、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸ブチル等のエステル系溶媒、
ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、
ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒などが例示される。これらの溶媒は単独で使用してもよく、あるいは、2種類以上を併用しても差し支えない。
反応は、副生するハロゲン化水素を、例えば、窒素気流下で反応系外に除去しながら好適に実施されるが、反応の進行を促進する目的で、塩基性化合物(無機塩基性化合物または有機塩基性化合物など)の存在下で行なわれても差し支えない。
【0079】
反応終了後、生成物であるジカルボン酸エステル化合物は、公知の操作、処理方法(例えば、中和、抽出、分液、溶媒留去など)により後処理されて単離される。さらに必要に応じて、該ジカルボン酸エステル化合物は、公知の方法(例えば、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィーなど)により分離、精製して、より高純度の化合物として単離される。
【0080】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体は、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、製造時あるいは成形時に、さらに公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤(例えば、リン原子含有化合物、フェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、硫黄原子含有化合物など)、紫外線吸収剤、離型剤(例えば、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル類など)、滑剤、難燃剤(例えば、有機ハロゲン系化合物など)、染料、流動性改良剤、熱安定剤(例えば、硫黄原子含有化合物など)等を併せて添加して使用してもよい。
また本発明のポリ(チオ)エステル重合体に、例えば、帯電防止剤、充填剤(例えば、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維など)等を添加して、光学部品以外の各種成形用材料としても使用してもよい。
【0081】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体は、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、製造時あるいは成形時に他のポリマーと混合して、成形材料として使用することが可能である。他のポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、パラオキシベンゾイル系ポリ(チオ)エステル、ポリアリーレート、ポリスルフィド等が挙げられる。
【0082】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体からなる樹脂組成物は、必須構成成分である本発明のポリ(チオ)エステル重合体を含有するほかに、酸化防止剤(例えば、リン原子含有化合物、フェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、硫黄原子含有化合物など)を含有することが好ましい。
本発明の樹脂組成物に添加する酸化防止剤の量は、本発明のポリ(チオ)エステル共重合体100重量部に対して、通常、0.0001〜10重量部であり、より好ましくは、0.01〜5重量部であり、さらに好ましくは、0.05〜3重量部である。
【0083】
かかる酸化防止剤としては、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシルホスファイト)、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリス(2−クロロエチル)ホスファイト、トリス(2,3−ジクロロプロピルホスファイト)、トリシクロヘキシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、フェニル−ジデシルホスファイト、ジフェニル−イソオクチルホスファイト、ジフェニル−2−エチルヘキシルホスファイト、ジフェニル−デシルホスファイト、ジフェニル−トリデシルホスファイト、ビス(トリデシル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ジステアリル−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ジフェニル−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、テトラフェニル−ジプロピレングリコール−ジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニル−ジホスファイト、テトラ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ジフェニルホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスチリルテトラホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイトなどの亜リン酸類;
【0084】
トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどのリン酸類;
テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイトなどの亜ホスホン酸類;
ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジイソプロピルなどのホスホン酸類などのリン原子含有化合物、
【0085】
オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートなどの公知のフェノール系化合物が例示されるが、これらに限定されるものではない。これらの酸化防止剤は、単独で用いてもよく、あるいは、2種類以上併用しても差し支えない。
【0086】
また酸化防止剤以外にも、本発明の所望の効果を損なわない程度で、前述したような、紫外線吸収剤、離型剤(例えば、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル類など)、滑剤、難燃剤(例えば、有機ハロゲン系化合物など)、染料、流動性改良剤、熱安定剤(例えば、硫黄原子含有化合物など)を含有していても差し支えない。
【0087】
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定はなく、通常、樹脂組成物を製造する各種公知の方法により行うことができる。すなわち、 (1)ポリ(チオ)エステル溶液からポリ(チオ)エステルを固体として単離した後、該固体に対して上記酸化防止剤を添加して、さらに公知の各種混合装置(例えば、タンブラーミキサー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサーなど)により分散混合する方法、
あるいは、(2)前述の通り、各種混合機により分散混合した後、押出機、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法などが挙げられる。また、これらの方法を併用しても差し支えない。
【0088】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体または該重合体を含有してなる樹脂組成物は、熱可塑性であり、溶融状態で射出成形、押出成形、ブロー成形、射出圧縮成形、さらには、溶液キャスティングなどの各種公知の成形方法により好適に成形加工される。
本発明のポリ(チオ)エステル重合体または該重合体を含有してなる樹脂組成物を成形して光学部品を得るための成形方法として、好ましくは、射出成形、押出成形または射出圧縮成形であり、より好ましくは、射出成形または射出圧縮成形である。
【0089】
本発明のポリ(チオ)エステルを成形して光学部品を製造する際の成形条件としては、樹脂または樹脂組成物の熱的特性に応じて任意の条件で行えるが、通常、樹脂温度180〜350℃、金型温度25(室温)〜160℃の範囲であり、好ましくは、樹脂温度180〜300℃、金型温度50〜150℃の範囲であり、さらに好ましくは、樹脂温度180〜300℃、金型温度50〜150℃の範囲である。
【0090】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体は、透明性、光学特性に優れ(高アッベ数、低複屈折率など)、低吸水性であって、かつ、熱的特性、機械的特性などが良好であることから、各種光学部品用材料として有用である。
【0091】
本発明の光学部品としては、視力矯正用眼鏡レンズ、撮像機器(例えば、カメラ、VTRなど)用レンズ、ピックアップ用レンズ、コリメトリーレンズ、fΘレンズ、フレネルレンズなどの各種プラスチック光学レンズ、光ディスク基板、光磁気ディスク基板などの光記録媒体基板、液晶セル用プラスチック基板、光ファイバー、光導波路等の各種光学部品を挙げることができる。
本発明の光学部品は、透明性、光学特性に優れ(高アッベ数、低複屈折率など)、低吸水性であって、かつ、熱的特性、機械的特性などが良好であり、上記に例示したような用途で好適に使用される。
【0092】
さらに、本発明のポリ(チオ)エステル共重合体または該共重合体を含有してなる樹脂組成物は、低吸水性であり、熱的特性、機械的特性が良好である等の特徴を生かして、成形用材料として上記光学部品以外の用途、例えば、電気機器、電子部品、車両用部品、建材等に成形して用いられることが可能である。
【0093】
【発明の実施の形態】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例で製造したポリ(チオ)エステル、ならびに、該ポリ(チオ)エステルを含有してなる光学部品成形材料の物性測定は、以下の方法により行った。
[重量平均分子量〕
各実施例で製造して得られたポリ(チオ)エステルの0.2重量%クロロホルム溶液を、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)〔昭和電工(株)製、System−11〕により測定し、重量平均分子量(Mw)を求めた。なお、測定値は標準ポリスチレンに換算した値である。
〔溶融流動開始温度および溶融粘度〕
島津高化式フローテスター(CFT500A)を使用し、荷重100kgで直径0.1cm、長さ1cmのオリフィスを用いて測定した。
[屈折率、アッベ数]
得られたポリ(チオ)エステル共重合体を240℃でプレス機によりプレス成形してシート状試験片を作成し、プルフリッヒ屈折計を用いて20℃で屈折率(nd)およびアッベ数(νd)を求めた。
[複屈折率]
実施例で製造したポリ(チオ)エステル共重合体の厚さ5μmの薄膜をシリコンウエハー上に作成した。すなわち、該ポリ(チオ)エステル共重合体の1,1,1−トリクロロエタン溶液(20%濃度)をテフロン(登録商標)製フィルター(ポア径0.45μm)で濾過した後、シリコンウエハー(直径5インチ)上に回転数2000rpm、5秒間の条件下でスピンコートした。その後、70℃で15分間乾燥して溶媒を留去させて、厚さ5μmの該成形材料の薄膜を作成した。プリズムカプラ(メトリコン社製モデル2020)を使用して632nmレーザー光源で、該薄膜のTEモード光およびTMモード光での屈折率を測定し、それらの差として複屈折率を求めた。
[吸水率]
ADTM D−0570に準じて、測定を行なった。
【0094】
参考製造例1 :テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンジカルボニトリル類;式(1−1)で表されるテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカン−3,8−ジカルボニトリルとならびに式(1−2)で表されるテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカン−3,9−ジカルボニトリルを成分とする混合物の合成
攪拌機、温度計、窒素導入口、シアン化水素導入口、冷却器等を備えた1Lガラス製平底セパラブルフラスコに、ビシクロ〔2.2.1〕−5−ヘプテン−2−カルボニトリルを248.1g(1.338mol)、トルエン88.1g、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル4.40g(3.4mmol)、塩化亜鉛0.43g(3.2mmol)、トリフェニルホスファイト4.21g(13.6mmol)を仕込み、室温で気相部の窒素置換を行い、その後60℃に昇温した。次いで、液体シアン化水素36.1g(1.334mol)を2時間に亘り供給した。
シアン化水素供給後の反応液をガスクロマトグラフィーを使用して分析した結果、ビシクロ〔2.2.1〕−5−ヘプテン−2−カルボニトリルの転化率は99.7mol%、テトラシクロドデカンジカルボニトリル類(テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカン−3,8−ジカルボニトリルとテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカン−3,9−ジカルボニトリルを成分とする混合物)の選択率は100mol%であった。
次に、上記で得られた反応液に40%−硫酸2.51gとイオン交換水1.10gを加えて60℃で3時間攪拌した後、25%−水酸化ナトリウム水溶液50.63gを加えて40℃で1時間攪拌処理した。この処理液にトルエン475.8gを添加して40℃で0.5時間攪拌した後、0.5時間静置してトルエン層と水層に2層分離させた。水層を除去した後、残ったトルエン層からトルエンを留去することで、純度99.8%のテトラシクロドデカンジカルボニトリル類(式(1−1)(化18)テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカン−3,8−ジカルボニトリルと式(1−2)(化19)テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカン−3,9−ジカルボニトリルを成分とする混合物)282gを得た。
【0095】
【化18】
【0096】
【化19】
【0097】
実施例1 : テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンジカルボン酸の製造
攪拌装置、冷却管を付けたディーンスタークおよび温度計を備えた500ml四つ口フラスコを用いて、水酸化ナトリウム 120g(3.00モル)を蒸留水150gに溶解させた水溶液に対して、80℃で、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンジカルボニトリルのトルエン溶液(53重量%) 194.6g(ジカルボニトリル化合物として、0.487モル)を1時間要して滴下した。引き続き、100℃〜105℃まで昇温しながら、トルエンを共沸留去させた後、120℃で15時間を攪拌、反応させた。ガスクロマトグラフ分析で原料が加水分解されて消失していることを確認した後、反応液を室温に冷却し、不溶物を濾別した。濾液を2000mlのフラスコに移した後、33%塩酸水400g(塩化水素として、3.61モル)をゆっくりと滴下して、酸性になったところで析出した固体を濾過、水洗した。濾別された固体を取り出して減圧乾燥させて、白色粉末状固体として、下記式(1−3)(化21)および式(1−4)(化20)でそれぞれ表されるテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3,8−ジカルボン酸およびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3,9−ジカルボン酸の混合物を 114.8g(0.459モル)を得た。収率95%。
FD−MS : 250(M+)
【0098】
【化20】
【0099】
【化21】
【0100】
実施例2 : テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンジカルボン酸クロリドの製造
攪拌装置、冷却管を付けたディーンスターク水分離器および温度計を備えた1000ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、実施例1で得られたジカルボン酸化合物 201.5g(0.806モル)、トルエン 500gを秤取し、105〜120℃に加熱、トルエンを共沸させて水を抜き出して脱水を行なった。その後、60℃で、N,N−ジメチルホルムアミド 0.37gを加え、引き続いて、塩化チオニル 230.19g(1.934モル;ジカルボン酸に対して2.4倍モル)を3時間要して65〜70℃で滴下した。さらに同温度で、2時間加熱、攪拌させた後、ガスクロマトグラフで原料が残っていないことを確認して、トルエンを減圧下留去した。得られた粗生成物のジカルボン酸クロリドを、175〜185℃/0.2mmHgで減圧蒸留して、主留分を取り出し、無色透明液体として式(1−5)(化22)および式(1−6)(化23)でそれぞれ表されるテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3,8−ジカルボン酸クロリドおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3,9−ジカルボン酸クロリドの混合物を 185.1g(0.645モル)を得た。
収率80%。
【0101】
【化22】
【0102】
【化23】
【0103】
実施例3 : テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンジカルボン酸時メチルエステルの製造
攪拌装置、冷却管および温度計を取り付けた200ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、実施例2で得られたジカルボン酸クロリド 28.70g(0.100モル)およびトルエン50gを秤取し、メタノール 9.60g(0.30モル)を80℃で30分を要して滴下した。副生する塩化水素を留去しながら、さらに同温度で2時間を行なった後、トルエンを留去して、微黄色透明液体の粗生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒; トルエン)により精製して、無色透明液体として式(1−7)(化24)および式(1−8)(化25)でそれぞれ表されるテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3,8−ジカルボン酸メチルエステルおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3,9−ジカルボン酸メチルエステルの混合物を 26.60g(0.095モル)を得た。収率95%。
FD−MS: 280(m+)
【0104】
【化24】
【0105】
【化25】
【0106】
実施例4 : 本発明のポリ(チオ)エステル重合体の製造および物性測定
撹拌装置、還流冷却管、温度計を設けた内容量300mlの四つ口フラスコに、4,4−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン 22.83g(0.100モル)およびクロルベンゼン 20gを秤取し、窒素雰囲気下で、100℃に加熱、攪拌して溶解させた。一方、前記実施例3で製造したジカルボン酸クロリド(異性体混合物)28.99g(0.101モル)を100℃で1時間を要して滴下した後、窒素気流下で副生する塩化水素を反応系外へ除去しながら、130℃で8時間反応させた。GPC分析で重量平均分子量9.0万であることを確認した後、100℃で、分子量調節剤(末端停止剤)としてp−tert−ブチルフェノール 0.451g(0.003モル ; ジヒドロキシ化合物の総モル数に対して3モル%)を添加し、同温度で1時間反応させた。反応溶液を室温まで放冷した後、クロロホルム300gを加えて溶解させた。得られたポリエステル重合体のクロロホルム溶液を3回に分けた上で、内容量1リットルのホモジナイザーを用いて、それぞれ、メタノール800gに対して滴下して、ポリマーを微粒状固体として析出させた。このポリマーを濾過して集め、80℃で20時間減圧乾燥して、白色粉末状固体として目的とする下記式(1−A−1)(化26)で表される繰り返し構造単位(2種類の位置異性体の混合体)を有するポリエステル重合体 43.00gを得た。得られた重合体の重量平均分子量は、9.0万であった。
得られたポリエステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は175℃であった。屈折率(nd)1.565、アッベ数(νd)36.0であった。吸水率は、0.18%であった。また、複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0107】
【化26】
【0108】
実施例5
実施例4において、4,4−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンを使用する代りに、1,4−シクロヘキサンジオールを使用する以外は、実施例4に記載の方法と同様にして行ない、下記式(1−A−2)(化27)で表される繰り返し構造単位を有するポリエステル重合体を得た。得られた重合体の重量平均分子量は、9.0万であった。
得られたポリエステル重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は170℃であった。屈折率(nd)1.535、アッベ数(νd)59.0であり、吸水率は0.15%であった。また複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0109】
【化27】
【0117】
比較例1(公知のポリメチルメタクリレートを用いた物性測定および光学部品の製造)
公知のポリメチルメタクリレート樹脂(一般光学用グレード)を用いて上記方法に従って、物性測定を行った。ガラス転移温度(Tg)は111℃であり、屈折率(nd)1.487、アッベ数(νd)54であり、複屈折率は1×10-4以下であった。
【0118】
比較例2(公知のポリカーボネートを用いた物性測定)
公知の汎用ポリカーボネート樹脂(光学ディスク用グレード;重量平均分子量3×104)を用いて上記方法に従って、物性測定を行った。ガラス転移温度(Tg)は130℃であり、屈折率(nd)1.580、アッベ数(νd)30であった。複屈折率は70×10-4であり、比較的高い値であった。
【0119】
【発明の効果】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、透明性、光学特性に優れ(高アッベ数、低複屈折率など)、低吸水性であって、機械的物性、熱的特性が良好であることから、各種光学部品用の成形材料として非常に有用である。上記方法で得られる本発明の光学部品は、光学特性に優れ(透明性、高アッベ数、低複屈折率など)、低吸水性であって、かつ、機械的特性、熱的特性が良好であり、プラスチックレンズなどとして好適に使用される。
Claims (5)
- 一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリ(チオ)エステル重合体。
- 請求項1記載のポリ(チオ)エステル重合体を含有してなる樹脂組成物。
- 請求項1記載のポリ(チオ)エステル重合体からなる光学部品。
- 請求項2記載の樹脂組成物を成形して得られる光学部品。
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