JP3560955B2 - 光学部品および含硫ポリ(チオ)エステル(共)重合体 - Google Patents

光学部品および含硫ポリ(チオ)エステル(共)重合体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の繰り返し構造単位を必須構造単位として含有してなるポリ(チオ)エステル(共)重合体を成形して得られる光学部品に関する。
【0002】
さらに本発明は、特定の繰り返し単位を含有してなるポリ(チオ)エステル(共)重合体、該(共)重合体からなる樹脂組成物に関する。
【0003】
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体を成形して得られる光学部品は、透明性、機械的特性(例えば、耐衝撃性など)、熱的特性が良好であり、且つ、比較的高屈折率であって、低色収差(高アッベ数)、低複屈折率であり、さらには溶融流動性に富み、成形加工性が良好である特徴を有しており、視力矯正用眼鏡レンズ(眼鏡レンズ)、ピックアップレンズなどを代表とするプラスチック光学用レンズ、情報記録用光ディスク基板、液晶セル用プラスチック基板、光ファイバー、光導波路などの各種光学部品用の成形材料として有用である。
【0004】
【従来の技術】
無機ガラスは、透明性に優れ、光学異方性が小さいなどの諸物性に優れていることから、透明性光学材料として広い分野で使用されている。しかしながら、重くて破損しやすいこと、生産性が悪い等の問題があり、近年、無機ガラスに代わる光学用樹脂の開発が盛んに行われている。
【0005】
光学用樹脂として基本的に最も重要な特性の一つは透明性である。現在までに透明性の良好な光学用樹脂として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ビスフェノールAポリカーボネート(BPA−PC)、ポリスチレン(PS)、メチルメタクリレート−スチレン共重合ポリマー(MS)、スチレン−アクリロニトリル共重合ポリマー(SAN)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)(TPX)、ポリシクロオレフィン(COP)、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート(EGAC)、ポリチオウレタン(PTU)などが知られている。
【0006】
PMMAは透明性、耐候性に優れ、かつ成形性も良好であり、代表的な光学用樹脂の一つとして広く用いられている。しかしながら、屈折率(nd)が1.49と比較的低く、吸水性が大きいという欠点を有している。
【0007】
BPA−PCは、透明性、耐熱性、耐衝撃性に優れ、比較的高屈折率(nd=1.59)であり、情報記録用光ディスク基板を代表とする光学用途において用いられているが、色収差(屈折率分散)、複屈折が比較的大きく、また溶融粘度が高く成形性がやや困難である等の欠点を有していることから、光学用樹脂としての利用分野が限定されている。
【0008】
PSおよびMSは成形性、透明性、低吸水性および高屈折性に優れるものの、耐衝撃性、耐候性および耐熱性に劣る欠点を有しているため、光学用樹脂としてほとんど実用化されていない。また、SANは比較的、屈折率が高く、機械的物性もバランスがよいとされているが、耐熱性にやや難があり(熱変形温度:80〜90℃)、同様に光学樹脂としてほとんど使用されていない。
【0009】
TPXおよびCOPは透明性、低吸水性、耐熱性に優れるものの、低屈折率(nd=1.47〜1.53)であり、また耐衝撃性、ガスバリヤー性、染色性が悪いという問題点を有している。
【0010】
EGACはモノマーであるジエチレングリコールビスアリルカーボネートを重合して得られる熱硬化性樹脂であり、一般汎用の眼鏡レンズ用途には最も多く使用されている。透明性、耐熱性が良好であり、色収差が極めて小さいといった特徴を有しているものの、屈折率が低く(nd=1.50)、耐衝撃性にやや劣るという欠点がある。
【0011】
PTUはジイソシアネート化合物とポリチオール化合物との反応で得られる熱硬化性樹脂であり、高屈折率の眼鏡レンズ用途において、現在、最も多く使用されている。透明性、耐衝撃性に特に優れ、かつ、高屈折率であって、色収差も比較的小さく、極めて優れた光学用樹脂である。しかしながら、唯一、眼鏡レンズを製造する工程において熱重合成形時間に長時間(1〜3日)を要するといった欠点があり、生産性の点で課題を残している。
【0012】
代表的な光学用樹脂の一つである上記ビスフェノールAポリカーボネート(BPA−PC、以下、汎用ポリカーボネートと称する)に見られた前記欠点を改良し、かつ、射出成形加工により短時間で高品質な光学部品を得る目的で、新規なポリカーボネート系の熱可塑性光学用樹脂が提案されている。例えば、脂環系ジヒドロキシ化合物から誘導される繰り返し構造単位を有する脂環系ポリカーボネート共重合体などのポリマーが比較的低色収差(高アッベ数)、低複屈折性であることが開示されており、光学用途での利用が提案されている(例えば、特開昭64−66234号公報、特開平1−223119号公報など)。これらの方法によれば、射出成形法を用いた短時間での光学部品の成形加工、製造が可能となり、かつ、得られた光学部品は高アッベ数であるか、あるいは、複屈折率が比較的低いなどの特徴を有しているものの、光学部品として実用上、十分満足されるものとは言い難かった。すなわち、例えば、眼鏡レンズとして用いた場合、屈折率がやや低く、耐熱性も十分であるとは言い難い等、いくつかの実用上の問題点を残していた。
【0013】
以上のように、従来の光学用樹脂は用途に応じてその特徴を考慮して使用されているものの、それぞれに克服すべき欠点、問題点を有しているのが現状である。このような状況下にあって、透明性、光学特性に優れ(高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、機械的特性(例えば、耐衝撃性など)、熱的特性(例えば、熱変形温度など)が良好であり、かつ、溶融流動性に優れた新規な熱可塑性光学用樹脂の開発が切望されているのが現状である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上述したような従来の光学用樹脂の欠点を解決し、透明性、光学特性に優れ(高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、機械的特性、熱的特性が良好であり、かつ、溶融流動性に優れ、射出成形加工性に優れた新規な熱可塑性光学用樹脂を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、
(1) 式(1−A)で表される繰り返し構造単位を必須構造単位として含有してなるポリ(チオ)エステル(共)重合体を成形して得られる光学部品、
【0016】
【化24】
Figure 0003560955
【0017】
[式中、R11は環状アルキレン基、もしくは、スルフィド基の硫黄原子を少なくとも1個以上含む鎖状、環状またはこれらを組み合てなるアルキレン基を表し、R12は単環状または多環状脂肪族ジカルボン酸残基、あるいは、芳香族ジカルボン酸残基を表し、X11およびX12はそれぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表し、但し、X11およびX12が酸素原子の場合、R11はスルフィド基の硫黄原子を少なくとも1個以上含む鎖状、環状またはこれらを組み合てなるアルキレン基を表す。]
【0018】
(2) 式(1−A)におけるR12が、単環状または多環状脂肪族ジカルボン酸残基である前記光学部品、
【0019】
(3)式(1−A)におけるR12
【0020】
【化25】
Figure 0003560955
で表される基のいずれかである前記光学部品、
【0021】
(4) 式(1−A)におけるR11が、スルフィド基の硫黄原子を少なくとも1個以上含む鎖状、環状またはこれらを組み合てなるアルキレン基である、前記(1)〜(3)の光学部品、
(5) 式(1−A)におけるR11
【0022】
【化26】
Figure 0003560955
【0023】
(式中、kは1〜4の整数を表し、lは0〜3の整数を表し、R13およびR14は水素原子またはアルキル基を表す)で表される基のいずれかである前記(4)の光学部品、
(6) 式(1−A)において、R12
【0024】
【化27】
Figure 0003560955
で表される基のいずれかであり、R11
【0025】
【化28】
Figure 0003560955
【0026】
(式中、kは1〜4の整数を表し、lは0〜3の整数を表し、R13およびR14は水素原子またはアルキル基を表す)で表される基のいずれかであり、X11およびX12が硫黄原子である前記(5)の光学部品、
(7) 式(1−A)において、R12
【0027】
【化29】
Figure 0003560955
で表される基であり、R11
【0028】
【化30】
Figure 0003560955
【0029】
(式中、kは1〜4の整数を表し、lは0〜3の整数を表し、R13およびR14は水素原子またはアルキル基を表す)で表される基のいずれかであり、X11およびX12が硫黄原子である前記(1)の光学部品、ならびに、
(8) ポリ(チオ)エステル(共)重合体が、式(1−B)
【0030】
【化31】
Figure 0003560955
【0031】
(式中、R15は二価の環状脂肪族炭化水素基を表し、R16は環状脂肪族ジカルボン酸残基または芳香族ジカルボン酸残基を表す)
で表される繰り返し構造単位をさらに含有してなる共重合体である前記(1)〜(7)の光学部品に関する。
【0032】
また、本発明は、
(9) 式(1−A)で表される繰り返し構造単位を必須構造単位として含有してなるポリ(チオ)エステル(共)重合体。
【0033】
【化32】
Figure 0003560955
【0034】
[式中、R11は環状アルキレン基、もしくは、スルフィド基の硫黄原子を少なくとも1個以上含む鎖状、環状またはこれらを組み合てなるアルキレン基を表し、R12は単環状または多環状脂肪族ジカルボン酸残基、あるいは、芳香族ジカルボン酸残基を表し、X11およびX12はそれぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表し、但し、X11およびX12が酸素原子の場合、R11はスルフィド基の硫黄原子を少なくとも1個以上含む鎖状、環状またはこれらを組み合てなるアルキレン基を表す。]
【0035】
(10) 式(1−A)におけるR12が単環状または多環状脂肪族ジカルボン酸残基である前記(9)のポリ(チオ)エステル(共)重合体、
(11) 式(1−A)におけるR12
【0036】
【化33】
Figure 0003560955
で表される基のいずれかである請求項(10)のポリ(チオ)エステル(共)重合体、
【0037】
(12) 式(1−A)におけるR11が、スルフィド基の硫黄原子を少なくとも1個以上含む鎖状、環状またはこれらを組み合てなるアルキレン基である、前記(9)〜(11)のポリ(チオ)エステル(共)重合体、
(13) 式(1−A)におけるR11
【0038】
【化34】
Figure 0003560955
【0039】
(式中、kは1〜4の整数を表し、lは0〜3の整数を表し、R13およびR14は水素原子またはアルキル基を表す)で表される基のいずれかである前記(12)のポリ(チオ)エステル(共)重合体、
(14) 式(1−A)において、R12
【0040】
【化35】
Figure 0003560955
で表される基のいずれかであり、R11
【0041】
【化36】
Figure 0003560955
【0042】
(式中、kは1〜4の整数を表し、lは0〜3の整数を表し、R13およびR14は水素原子またはアルキル基を表す)で表される基のいずれかであり、X11およびX12が硫黄原子である前記(13)のポリ(チオ)エステル(共)重合体、
(15) 式(1−A)において、R12
【0043】
【化37】
Figure 0003560955
で表される基であり、R11
【0044】
【化38】
Figure 0003560955
【0045】
(式中、kは1〜4の整数を表し、lは0〜3の整数を表し、R13およびR14は水素原子またはアルキル基を表す)で表される基のいずれかであり、X11およびX12が硫黄原子である前記(9)のポリ(チオ)エステル(共)重合体、ならびに、
(16) ポリ(チオ)エステル(共)重合体が、式(1−B)で表される繰り返し構造単位をさらに含有してなる共重合体である前記(9)〜(15)記載のポリ(チオ)エステル共重合体に関する。
【0046】
【化39】
Figure 0003560955
(式中、R15は二価の環状脂肪族炭化水素基を表し、R16は環状脂肪族ジカルボン酸残基または芳香族ジカルボン酸残基を表す)
【0047】
さらに、本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の好ましい態様として、
(17) 式(2−A)および式(2−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなる(16)のポリ(チオ)エステル共重合体。
【0048】
【化40】
Figure 0003560955
(式中、R21はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R22はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、nはそれぞれ0〜4の整数を表す)
【0049】
(18) 式(2−A)および式(3−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなる(16)のポリ(チオ)エステル共重合体。
【0050】
【化41】
Figure 0003560955
(式中、R21はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R23はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、pはそれぞれ0〜4の整数を表す)
【0051】
(19) 式(3−A)および式(4−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなる(16)のポリ(チオ)エステル共重合体。
【0052】
【化42】
Figure 0003560955
(式中、R21はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R22はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、nはそれぞれ0〜4の整数を表す)
【0053】
(20) 式(3−A)および式(5−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなる(16)のポリ(チオ)エステル共重合体。
【0054】
【化43】
Figure 0003560955
(式中、R21はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R23はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、pはそれぞれ0〜4の整数を表す)
【0055】
(21) 式(4−A)および式(6−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなる(16)のポリ(チオ)エステル共重合体。
【0056】
【化44】
Figure 0003560955
(式中、R21はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R22はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、nはそれぞれ0〜4の整数を表す)
【0057】
(22) 式(4−A)および式(7−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなる(16)のポリ(チオ)エステル共重合体。
【0058】
【化45】
Figure 0003560955
(式中、R21はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R23はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、pはそれぞれ0〜4の整数を表す)
【0059】
(23) ポリ(チオ)エステル共重合体が、さらに式(1−C)で表される繰り返し構造単位を含有してなる共重合体である前記(17)〜(22)のポリ(チオ)エステル共重合体に関する。
【0060】
【化46】
Figure 0003560955
(式中、R17は二価の芳香族炭化水素基を表し、R18は環状脂肪族ジカルボン酸残基または芳香族ジカルボン酸残基を表す)
【0061】
さらに本発明は、前記(17)〜(23)のポリ(チオ)エステル共重合体を含有してなる樹脂組成物、前記(17)〜(23)のポリ(チオ)エステル共重合体からなる光学部品、ならびに、該樹脂組成物を成形して得られる光学部品に関する。
【0062】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、式(1−A)で表される繰り返し構造単位を必須構造単位として含有してなるポリ(チオ)エステル(共)重合体を成形して得られる光学部品について説明する。
【0063】
本発明におけるポリ(チオ)エステル(共)重合体は、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物および/またはジチオール化合物との反応により得られる重合体であって、線状の高分子構造を有している。加熱に伴って架橋反応が進行してネットワーク状の高分子となる、いわゆる、熱硬化性樹脂とは異なる。
【0064】
該ポリ(チオ)エステル(共)重合体は、ある一定温度以上に加熱すると溶融、流動化して腑形、成形加工が可能となる、いわゆる、熱可塑性樹脂である。ただし、熱によって、腑形、成形加工が損なわれない程度において、高分子同士が、非常に部分的に架橋していることは差し支えなく、この場合、実質的に線状とする。
【0065】
式(1−A)において、R11は環状アルキレン基、もしくは、スルフィド基の硫黄原子を少なくとも1個以上含む鎖状、環状またはこれらを組み合てなるアルキレン基を表す。但し、X11およびX12が酸素原子である場合、R11はスルフィド基の硫黄原子を少なくとも1個以上含む鎖状、環状またはこれらを組み合てなるアルキレン基を表す。
【0066】
11として、好ましくは、総炭素数6〜12の環状アルキレン基、もしくは、スルフィド基の硫黄原子を含む総炭素数1〜20の鎖状、環状またはこれらの組み合わせからなるアルキレン基であり、
より好ましくは、シクロヘキシレン基、スルフィド基の硫黄原子を少なくとも1個以上含む、総炭素数1〜12の鎖状アルキレン基、総炭素数5〜12の環状アルキレン基、または、これらを組み合てなる総炭素数6〜15のアルキレン基であり、
さらに好ましくは、スルフィド基の硫黄原子を少なくとも1個以上含む、総炭素数1〜8の鎖状アルキレン基、総炭素数5〜10の環状アルキレン基、または、これらを組み合てなる総炭素数6〜12のアルキレン基である。
【0067】
11中は、硫黄原子の他に、酸素原子などのヘテロ原子を含有していてもよい。本発明の所望の効果である、高屈折率、高アッベ数を得るために、スルフィド基の硫黄原子が少なくとも1個以上含まれていることは好ましく、スルフィド基の硫黄原子が少なくとも2個以上含まれていることは、より好ましい。
【0068】
11基として、さらに好ましくは、
【0069】
【化47】
Figure 0003560955
で表される基のいずれかであり、これらの中でも
【0070】
【化48】
Figure 0003560955
で表される基は、特に好ましい。
【0071】
上記式中、kは1〜4の整数を表し、好ましくは、1〜3の整数であり、より好ましくは、1または2である。かかるkとして、1は特に好ましい。
【0072】
lは0〜3の整数を表し、好ましくは、0〜2の整数であり、より好ましくは、0または1である。かかるlとして、1は特に好ましい。
【0073】
13およびR14は水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子またはメチル基である。該R13またはR14として、水素原子は、特に好ましい。
【0074】
式(1−A)において、R12は単環状または多環状脂肪族ジカルボン酸残基、あるいは、芳香族ジカルボン酸残基を表す。
【0075】
該R12として、好ましくは、総炭素数5〜20の単環状または多環状脂肪族ジカルボン酸残基、あるいは、芳香族ジカルボン酸残基であり、より好ましくは、総炭素数6〜12の単環状または多環状脂肪族ジカルボン酸残基、あるいは、芳香族ジカルボン酸残基である。
【0076】
かかる単環状または多環状脂肪族ジカルボン酸残基の具体例としては、例えば、
【0077】
【化49】
Figure 0003560955
が挙げられる。
【0078】
芳香族ジカルボン酸残基としては、例えば、
【0079】
【化50】
Figure 0003560955
が挙げられる。
【0080】
本発明の所望の効果(高アッベ数)を明確に得るためには、かかるR12として、好ましくは、総炭素数6〜12の単環または多環状脂肪族ジカルボン酸残基であり、より好ましくは、
【0081】
【化51】
Figure 0003560955
で表される単環状または多環状脂肪族ジカルボン酸残基のいずれかである。これらの中でも、R12として、
【0082】
【化52】
Figure 0003560955
で表される二価の単環状または多環状脂肪族ジカルボン酸残基は、特に好ましい。
【0083】
本発明の式(1−A)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリ(チオ)エステル(共)重合体は、反応それ自体は公知の各種ポリ(チオ)エステル重合方法[例えば、実験化学講座第4版(28巻)高分子合成、217〜231頁、丸善出版(1988年)に記載の方法など]に従って、好適に製造される。
【0084】
すなわち、代表的には、例えば、ジカルボン酸クロリド等を用いる溶融重合法、溶液重合法または界面重合法、エステル交換法、直接重合法などの方法であり、より具体的には、
【0085】
(I) 式(1)で表されるジチオール化合物または/およびジヒドロキシ化合物に、式(2)で表されるジカルボン酸の酸ハロゲン化物(例えば、酸クロリド、酸ブロミドなど)を、無溶媒または溶媒中で作用させて脱ハロゲン化水素して(チオ)エステル化反応を行い重合する方法;
【0086】
(II) 式(1)で表されるジチオール化合物または/およびジヒドロキシ化合物に、式(2)で表されるジカルボン酸のエステル化合物(例えば、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、tert−ブチルエステルなどのアルキルエステル、フェニルエステルなどのアリールエステルなど)を、無溶媒または溶媒中で作用させてエステル交換反応により(チオ)エステル化反応を行い重合する方法;
【0087】
(III) 式(1)で表されるジチオール化合物または/およびジヒドロキシ化合物に、式(2)で表されるジカルボン酸を無溶媒または溶媒中で作用させて、脱水縮合して(チオ)エステル化反応を行い重合する方法;などが挙げられる。
【0088】
これらの方法においては、反応を効率的に行うために、必要に応じて、酸または塩基(無機の酸または塩基、有機の酸または塩基など)を使用して、その存在下に行うことが可能である。
【0089】
【化53】
Figure 0003560955
(式中、R11、R12、X11およびX12は前記に同じ)
【0090】
一般式(1)で表されるジチオール化合物またはジヒドロキシ化合物としては、工業的に入手可能な化合物、あるいは、公知の方法に従って合成可能な各種化合物などが好適に使用される。該化合物として例えば、1,4−シクロヘキサンジチオール、1,3−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、
1,4−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、
ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、
2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、
2−メルカプトメチル−6−メルカプト−1,4−ジチアシクロヘプタン、
3,7−ジメルカプト−1,5−ジチアシクロオクタン
2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、
2−ヒドロキシメチル−6−ヒドロキシ−1,4−ジチアシクロヘプタン、
3,7−ジヒドロキシ−1,5−ジチアシクロオクタン
2,4−ビス(メルカプトメチル)−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(メルカプトメチル)−1,3−ジチアン
2,4−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−ジチアン
2−メルカプトメチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジチオラン、2,6−ジメルカプト−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタン、
2,5−ジメルカプト−8−チアトリシクロ[2.2.1.12,3]オクタン、
2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタン、
2,5−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.12,3]オクタンなどが例示されるが、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
【0091】
一般式(1)で表されるジチオール化合物またはジヒドロキシ化合物の製造法について、代表的な方法をいくつか説明する。例えば、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアンなどのジチオール化合物は、例えば、特開平3−236836号公報、Journal of Organic Chemistry.,34巻、3389〜3391頁(1969年)などに記載の方法により好適に製造される。
【0092】
2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジチアン、3−ヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−1,5−ジチアシクロヘプタン、3,7−ジヒドロキシ−1,5−ジチアシクロオクタン、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアンなどのジヒドロキシ化合物は、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアンなどの前記ジチオール化合物を製造する際の中間体である下記式(3)のジハロゲン化合物をプロトン性極性溶媒中、アルカリ金属またはアルカリ金属塩を使用して加水分解する方法などにより製造される。
【0093】
【化54】
Figure 0003560955
(式中、R31、R32、R33、R34はそれぞれ独立に水素またはアルキル基を示し、X31はフルオロ基、クロル基、ブロム基またはヨード基を示す)
【0094】
かかる加水分解において使用するプロトン性極性溶媒としては、具体的には、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、アルカリ金属、アルカリ金属塩としては、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が使用できるが、通常のアルカリ加水分解で使用される条件であれば、差し支えない。
【0095】
但し、上記式(3)で表されるジハロゲン化合物を加水分解して得られる生成物は、条件によって、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジチアンの他に、3−ヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−1,5−ジチアシクロヘプタン、3,7−ジヒドロキシ−1,5−ジチアシクロオクタンなどのジヒドロキシ化合物が副生して混合物となるので、各々の化合物はカラムクロマトグラフィー、精密蒸留等の方法で分離、精製され製造される。
【0096】
また、例えば、2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタン、2,5−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.12,3]オクタンなどのジヒドロキシ化合物は、公知の方法[例えば、Journal of Organic Chemistry、vol.34 p3998〜 p4002 (1968)などに記載の方法]に従い、例えば、2,6−ジクロロ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタン、2,5−ジクロロ−8−チアトリシクロ[2.2.1.12,3]オクタンなどのジハロゲン化合物を加水分解することによって製造される。
【0097】
これまでに述べた環状脂肪族ジチオール化合物またはジヒドロキシ化合物の中には、シス(cis)体、トランス(trans)体、あるいは、エキソ(exo)体、エンド(endo)体などの立体異性体が存在するものがあるが、本発明にかかる環状脂肪族ジチオール化合物またはジヒドロキシ化合物としては、これら立体異性体のいずれのものであってもよい。また、これらの立体異性体をそれぞれ単離して単独で使用してもよく、あるいは、これら立体異性体の混合物として使用してもよい。
【0098】
一般式(2)で表されるジカルボン酸としては、工業的に入手可能あるいは公知の方法に従って合成することが可能な各種化合物が好適に使用される。
【0099】
かかる化合物としては、例えば、
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などの単環状脂肪族ジカルボン酸類;
ノルボルナン−2,5−ジカルボン酸、ノルボルナン−2,6−ジカルボン酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸などの多環状脂肪族ジカルボン酸類;
テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;
などが例示されるが、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
【0100】
上記環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体(その酸ハロゲン化物またはそのエステル化合物)の中には、位置異性体の他に、シス(cis)体、トランス(trans)体、あるいは、エキソ(exo)体、エンド(endo)体、などの立体異性体が存在するものがあるが、本発明にかかる環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体(その酸ハロゲン化物またはそのエステル化合物)としては、これら立体異性体のいずれのものであってもよい。また、これらの立体異性体をそれぞれ単離して単独で使用してもよく、あるいは、これら立体異性体の混合物として使用してもよい。
【0101】
本発明に係る一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位として、以下に示される繰り返し構造単位が、より好ましい。
【0102】
【化55】
Figure 0003560955
【0103】
【化56】
Figure 0003560955
【0104】
【化57】
Figure 0003560955
【0105】
【化58】
Figure 0003560955
【0106】
【化59】
Figure 0003560955
【0107】
【化60】
Figure 0003560955
【0108】
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体は、式(1−A)で表される繰り返し構造単位であって、互いに異なる複数の繰り返し構造単位を含有してなる二元共重合体または三元共重合体以上の多元共重合体であってもよい。
【0109】
また、本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体においては、原料モノマーとなる式(1)で表されるジチオール/ジヒドロキシ化合物が立体異性体を有している場合があり、また、式(2)で表される単環状又は多環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体が位置異性体、立体異性体を有していることから、一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位において、通常、それらに起因する位置および立体構造の異なる複数の繰り返し構造単位が存在する。本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体は、これらの混合物であってもよく、あるいは、特定の一種類の異性体構造を有する繰り返し構造単位のみからなる重合体であってもよい。
【0110】
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体は、式(1−A)で表される繰り返し構造単位を必須構造単位として含有することが特徴であるが、光学部品として要望されている諸物性を満たすために、式(1−A)以外の繰り返し構造単位を同時に含有することは、好ましいことである。
【0111】
すなわち、本発明の所望の効果を得るために、本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体の中でも、式(1−A)で表される繰り返し構造単位、ならびに、式(1−A)以外の繰り返し構造単位を含有してなる二元共重合体は、好ましい。
【0112】
該ポリ(チオ)エステル共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体あるいはブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0113】
かかる式(1−A)以外の繰り返し構造単位としては、好ましくは、下記式(1−B)で表される繰り返し構造単位である。
【0114】
【化61】
Figure 0003560955
(式中、R15は二価の環状脂肪族炭化水素基を表し、R16は環状脂肪族ジカルボン酸残基または芳香族ジカルボン酸残基を表す)
【0115】
上記式(1−B)における、R15は二価の環状脂肪族炭化水素基を表し、好ましくは、総炭素数6〜20の二価の環状脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは、総炭素数6〜12の環状脂肪族炭化水素基である。
【0116】
上記式(1−B)において、R16は環状脂肪族ジカルボン酸残基または芳香族ジカルボン酸残基を表し、具体的には、前記R12と同じ意味を表す。該R16基として、好ましくは、環状脂肪族ジカルボン酸残基であり、より好ましくは、
【0117】
【化62】
Figure 0003560955
で表される基のいずれかである。又、ベンゼンジカルボン酸(イソフタル酸、テレフタル酸等)の残基であるフェニレン基も好ましいものとして例示できる。
【0118】
かかる式(1−B)で表される繰り返し構造単位は、前述した一般式(2)で表される環状脂肪族ジカルボン酸または芳香族ジカルボン酸と、一般式(4)で表される公知の環状脂肪族ジヒドロキシ化合物から得られる繰り返し構造単位である。
【0119】
【化63】
Figure 0003560955
(式中、R15は前記と同じ意味を表す)
【0120】
かかる環状脂肪族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、2,5−ジメチル−1,4−シクロヘキサンジオール、
1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、
1,2−シクロヘキサンジメタノール、
2,2−ビス(4’−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン(通称、水素化ビスフェノールF)、
2,2−ビス(4’−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(通称、水素化ビスフェノールA)、
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルシクロヘキシル)プロパン、
2,5−ジヒドロキシノルボルナン、2,6−ジヒドロキシノルボルナン、2,3−ジヒドロキシノルボルナン、
2,5−ビス(ヒドロキシメチル)ノルボルナン、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)ノルボルナン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ノルボルナン、
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
かかるポリ(チオ)エステル共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)耐熱性、成形加工性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、式(1−A)および式(1−B)で表される全繰り返し構造単位中に含まれる式(1−A)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜99%であり、好ましくは、5〜95モル%であり、より好ましくは、10〜90モル%であり、さらに好ましくは、20〜80モル%である。
【0122】
式(1−A)で表される繰り返し構造単位が5%以上の場合、屈折率、アッベ数共に、光学用樹脂として使用するのに十分な性能を有したものとなる。
【0123】
一方、これらのポリ(チオ)エステル共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)、耐熱性、成形加工性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、式(1−A)および式(1−B)で表される全繰り返し構造単位中に含まれる式(1−B)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜99%であり、好ましくは、5〜95モル%であり、より好ましくは、10〜90モル%であり、さらに好ましくは、20〜80モル%である。式(1−B)で表される繰り返し構造単位が5%以上の場合、耐熱性、成形加工性の面で、光学用樹脂として使用するのに、十分な性能を有している。
【0124】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体としては、以下のポリ(チオ)エステル共重合体<1>〜<6>が、具体的な好ましい例として挙げられる。以下、該ポリ(チオ)エステル共重合体について各々説明する。
【0125】
<1> 式(2−A)および式(2−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリ(チオ)エステル共重合体について説明する。
【0126】
【化64】
Figure 0003560955
(式中、R21はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R22はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、nはそれぞれ0〜4の整数を表す)
【0127】
かかるポリ(チオ)エステル共重合体は、代表的な方法としては、下記式(5)で表されるジチオール化合物と下記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物との混合物を、下記式(7)で表される環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体(その酸ハロゲン化物またはそのエステル化合物)と作用させ、(チオ)エステル化反応により共重合させることにより得られるものである。
【0128】
該ポリ(チオ)エステル共重合体は、式(5)で表されるジチオール化合物と式(7)で表される環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体とから得られる一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位と、式(6)で表されるジヒドロキシ化合物と式(7)で表される環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体とから得られる一般式(2−B)で表される繰り返し構造単位の2つの繰り返し構造単位を、必須の繰り返し構造単位として有する共重合体であって、ランダム共重合体、交互共重合体あるいはブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0129】
【化65】
Figure 0003560955
(式中、R21、R22、mおよびnは前記に同じ)
【0130】
これらのポリ(チオ)エステル共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)耐熱性、成形加工性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、一般式(2−A)および一般式(2−B)で表される全繰り返し構造単位中に含まれる一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜99%であり、好ましくは、5〜95モル%であり、より好ましくは、10〜90モル%であり、さらに好ましくは、20〜80モル%である。
【0131】
特に一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位が5%以上の場合、屈折率、アッベ数ともに、光学用樹脂として使用するのに十分な性能を有したものとなり好ましい。
【0132】
一方、これらのポリ(チオ)エステル共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)、耐熱性、成形加工性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、一般式(2−A)および一般式(2−B)で表される全繰り返し構造単位中に含まれる一般式(2−B)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜99%であり、好ましくは、5〜95モル%であり、より好ましくは、10〜90モル%であり、さらに好ましくは、20〜80モル%である。一般式(2−B)で表される繰り返し構造単位が5%以上の場合、耐熱性、成形加工性等の面で、光学用樹脂として使用するのに十分な性能を有しているため好ましい。
【0133】
一般式(2−A)において、R21はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、より好ましくは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0134】
該置換基R21として、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが例示される。
【0135】
かかる置換基R21として、さらに好ましくは、水素原子またはメチル基であり、該置換基R21として、水素原子は特に好ましい。
【0136】
一般式(2−A)において、mは整数0〜4を表し、好ましくは、整数0〜3を表し、より好ましくは、0又は1を表す。一般式(2−A)におけるmとして、1は特に好ましい。
【0137】
一般式(2−B)において、R22はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表す。
【0138】
該置換基R22として、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基)、炭素数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基)またはフッ素原子、塩素原子または臭素原子である。かかる置換基R22として、より好ましくは、メチル基である。
【0139】
一般式(2−B)において、nは0〜4の整数を表し、好ましくは、0〜3の整数であり、より好ましくは、0〜2の整数であり、さらに好ましくは、0または1である。一般式(2−B)におけるnとして、0は特に好ましい。
【0140】
一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位の中でも、下記式(2−A−i)または式(2−A−ii)で表される繰り返し構造単位は、より好ましい。
【0141】
【化66】
Figure 0003560955
【0142】
一般式(2−B)で表される繰り返し構造単位の中でも、下記式(2−B−i)または式(2−B−ii)で表される繰り返し構造単位はより好ましい。
【0143】
【化67】
Figure 0003560955
【0144】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<1>においては、原料モノマーとなる式(6)で表されるジオール化合物が立体異性体を有しており、また、式(7)で表される脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体が位置異性体、立体異性体を有していることから、式(2−A)および式(2−B)で表される繰り返し構造単位において、通常、それらに起因する位置および立体構造の異なる複数の繰り返し構造単位が存在する。本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<1>は、これらの混合物であってもよく、あるいは、特定の一種類の異性体構造を有する繰り返し構造単位のみからなる重合体であってもよい。
【0145】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<1>を製造するに際して、用いられる原料モノマーである、式(5)で表されるジチオール化合物ならびに式(6)で表されるジヒドロキシ化合物はそれぞれ公知化合物であり、公知の方法により好適に製造され、工業的に入手可能である。
【0146】
すなわち、式(5)で表されるジチオール化合物は、例えば、特開平3−236836号公報、Journal of Organic Chemistry.,34巻、3389〜3391頁(1969年)などに記載の方法により好適に製造される。
【0147】
かかる式(5)で表されるジチオール化合物としては、例えば、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアンなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0148】
式(6)で表されるジヒドロキシ化合物は、例えば、Beilstein 6巻、741頁に記載の方法により製造され、工業原料として入手可能である。これらの化合物は、シクロヘキサン環に結合した二つのヒドロキシ基について、シス体またはトランス体の立体異性体が存在するが、本発明においては、これらいずれ立体異性体であってもよく、あるいは、これら立体異性体の混合物であってもよい。
【0149】
かかる式(6)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、2,5−ジメチル−1,4−シクロヘキサンジオールなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0150】
式(7)で表される環状脂肪族ジカルボン酸、その酸ハロゲン化物(例えば、酸クロリド、酸ブロミドなど)またはそのエステル化合物(例えば、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、tert−ブチルエステルなどのアルキルエステル、フェニルエステルなどのアリールエステルなど)は公知化合物であり、公知の方法、例えば、下記式(A)に示される合成経路等に従って、好適に製造される。
【0151】
【化68】
Figure 0003560955
(式中、X71は塩素原子または臭素原子を表し、R71はアルキル基またはアリール基を表す)
【0152】
かかる式(7)で表される環状脂肪族ジカルボン酸として、例えば、ノルボルナン−2,5−ジカルボン酸、ノルボルナン−2,6−ジカルボン酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸などのジカルボン酸化合物が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0153】
本発明に係る式(7)で表される環状脂肪族カルボン酸として、好ましくは、式(7−i)または式(7−ii)で表される環状脂肪族ジカルボン酸である。
【0154】
【化69】
Figure 0003560955
【0155】
これら環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体(その酸ハロゲン化物またはそのエステル化合物)には、上記位置異性体の他に、exo体、endo体などの立体異性体が存在するが、本発明にかかる環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体(その酸ハロゲン化物またはそのエステル化合物)としては、これらの位置異性体または立体異性体をそれぞれ単離して単独で使用してもよく、あるいは、これら位置異性体または立体異性体の混合物であってもよい。
【0156】
<2> 次に、式(2−A)および式(3−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリ(チオ)エステル共重合体について、説明する。
【0157】
【化70】
Figure 0003560955
(式中、R21はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R23はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、pはそれぞれ0〜4の整数を表す)
【0158】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<2>は、後で詳細に説明するが、代表的には、前記式(5)で表されるジチオール化合物と下記式(8)で表されるジヒドロキシ化合物との混合物を、前記式(7)で表される環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体(その酸ハロゲン化物またはそのエステル化合物)と作用させ、(チオ)エステル化反応により共重合させることにより得られるものである。
【0159】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<2>は、式(5)で表されるジチオール化合物と式(7)で表される環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体とから得られる一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位と、式(8)で表されるジヒドロキシ化合物と式(7)で表される環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体とから得られる一般式(3−B)で表される繰り返し構造単位の2つの繰り返し構造単位を、必須の繰り返し構造単位として有する共重合体であって、ランダム共重合体、交互共重合体あるいはブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0160】
【化71】
Figure 0003560955
(式中、R23およびpは前記に同じ)
【0161】
これらのポリ(チオ)エステル共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)耐熱性、成形加工性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、一般式(2−A)および一般式(3−B)で表される全繰り返し構造単位中に含まれる一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜99%であり、好ましくは、5〜95モル%であり、より好ましくは、10〜90モル%であり、さらに好ましくは、20〜80モル%である。一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位が5%以上の場合、屈折率、アッベ数ともに、光学用樹脂として使用するのに十分な性能を有したものとなり好ましい。
【0162】
一方、これらのポリ(チオ)エステル共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)耐熱性、成形加工性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、一般式(2−A)および一般式(3−B)で表される全繰り返し構造単位中に含まれる一般式(3−B)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜99%であり、好ましくは、5〜95モル%であり、より好ましくは、10〜90モル%であり、さらに好ましくは、20〜80モル%である。一般式(3−B)で表される繰り返し構造単位が5%以上の場合、耐熱性、成形加工性等の面で、光学用樹脂として使用するのに十分な性能を有しているため好ましい。
【0163】
一般式(3−B)において、R23はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表す。該置換基R23として、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基)、炭素数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基)またはフッ素原子、塩素原子または臭素原子である。かかる置換基R23として、より好ましくは、メチル基である。
【0164】
一般式(3−B)において、pは0〜4の整数を表し、好ましくは、0から3の整数であり、より好ましくは、0〜2の整数であり、さらに好ましくは、0又は1であり、特に0が好ましい。
【0165】
一般式(3−B)で表される繰り返し構造単位の中でも、下記式(3−B−i)または式(3−B−ii)で表される繰り返し構造単位はより好ましい。
【0166】
【化72】
Figure 0003560955
【0167】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<2>においては、原料モノマーとなる式(8)で表されるジヒドロキシ化合物が立体異性体を有しており、また、式(7)で表される脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体が位置異性体、立体異性体を有していることから、式(2−A)および式(3−B)で表される繰り返し構造単位において、通常、それらに起因する位置および立体構造の異なる複数の繰り返し構造単位が存在する。本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<2>は、これらの混合物であってもよく、あるいは、特定の一種類の異性体構造を有する繰り返し構造単位のみからなる重合体であってもよい。
【0168】
該ポリ(チオ)エステル共重合体<2>を製造するに際して、用いられる原料モノマーである式(8)で表されるジヒドロキシ化合物はそれぞれ公知化合物であり、公知の方法により好適に製造され、工業的に入手可能である。
【0169】
すなわち、式(8)で表されるジヒドロキシ化合物は、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを水素化することにより製造され、工業原料として入手可能である。これらの化合物は、各々のシクロヘキサン環に結合したヒドロキシ基とイソプロピリデン基について、各々、シス体またはトランス体の立体異性体が存在するが、本発明において用いる式(8)で表されるジヒドロキシ化合物は、いずれの立体異性体であってもよく、あるいは、これら立体異性体の混合物であってもよい。
【0170】
かかる式(8)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルシクロヘキシル)プロパンなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0171】
<3> 次に、式(3−A)および式(4−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリ(チオ)エステル共重合体について説明する。
【0172】
【化73】
Figure 0003560955
(式中、R21はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R22はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、nはそれぞれ0〜4の整数を表す)
【0173】
かかる本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<3>は、代表的には、前記式(5)で表されるジチオール化合物と前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物との混合物を、下記式(9)で表される環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体(その酸ハロゲン化物またはそのエステル化合物)と作用させ、(チオ)エステル化反応により共重合させることにより得られるものである。
【0174】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<3>は、式(5)で表されるジチオール化合物と式(9)で表される環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体とから得られる一般式(3−A)で表される繰り返し構造単位と、式(6)で表されるジヒドロキシ化合物と式(9)で表される環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体とから得られる一般式(4−B)で表される繰り返し構造単位の2つの繰り返し構造単位を、必須の繰り返し構造単位として有する共重合体であって、ランダム共重合体、交互共重合体あるいはブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0175】
【化74】
Figure 0003560955
【0176】
かかるポリ(チオ)エステル共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)耐熱性、成形加工性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、一般式(3−A)および一般式(4−B)で表される全繰り返し構造単位中に含まれる一般式(3−A)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜99%であり、好ましくは、5〜95モル%であり、より好ましくは、10〜90モル%であり、さらに好ましくは、20〜80モル%である。一般式(3−A)で表される繰り返し構造単位が5%以上の場合、屈折率の点において光学用樹脂として使用するのに十分な性能を有したものとなり好ましい。
【0177】
一方、該ポリ(チオ)エステル共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)耐熱性、成形加工性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、一般式(3−A)および一般式(4−B)で表される全繰り返し構造単位中に含まれる一般式(4−B)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜99%であり、好ましくは、5〜95モル%であり、より好ましくは、10〜90モル%であり、さらに好ましくは、20〜80モル%である。一般式(4−B)で表される繰り返し構造単位が5%以上の場合、耐熱性、成形加工性等の面で、光学用樹脂として使用するのに十分な性能を有しているため好ましい。
【0178】
一般式(3−A)において、R21およびmは、前記一般式(2−A)におけるR21およびmと同じ意味を表す。
【0179】
一般式(4−B)において、R22およびnは、前記一般式(2−B)におけるR22およびnと同じ意味を表す。
【0180】
一般式(3−A)で表される繰り返し構造単位の中でも、下記式(3−A−i)、(3−A−ii)または式(3−A−iii)で表される繰り返し構造単位は、より好ましい。
【0181】
【化75】
Figure 0003560955
【0182】
一般式(4−B)で表される繰り返し構造単位の中でも、下記式(4−B−i)、(4−B−ii)または式(4−B−iii)で表される繰り返し構造単位はより好ましい。
【0183】
【化76】
Figure 0003560955
【0184】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<3>においては、原料モノマーとなる式(6)で表されるジヒドロキシ化合物が立体異性体を有しており、また、式(9)で表される環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体が位置異性体、立体異性体を有していることから、式(3−A)および式(4−B)で表される繰り返し構造単位において、通常、それらに起因する位置および立体構造の異なる複数の繰り返し構造単位が存在する。本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<3>は、これらの混合物であってもよく、あるいは、特定の一種類の異性体構造を有する繰り返し構造単位のみからなる重合体であってもよい。
【0185】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<3>は、前述したように、上記一般式(5)で表されるジチオール化合物と上記一般式(6)で表されるジヒドロキシ化合物を、式(9)で表される環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体(その酸ハロゲン化物またはそのエステル化合物)に作用させ(チオ)エステル化反応によって(共)重合することにより製造される。重合反応それ自体は、従来、公知のポリ(チオ)エステル重合の方法と同様にして好適に実施される。
【0186】
式(9)で表される環状脂肪族ジカルボン酸、その酸ハロゲン化物(例えば、酸クロリド、酸ブロミドなど)またはそのエステル化合物(例えば、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、tert−ブチルエステルなどのアルキルエステル、フェニルエステルなどのアリールエステルなど)は公知化合物であり、公知の方法、例えば、下記式(B)に示される合成経路により、好適に製造される。すなわち、フタル酸エステル類を、ラネーニッケル等の触媒存在下に接触還元してシクロヘキサンジカルボン酸エステル化合物が得られ、さらに該エステル化合物を加水分解してシクロヘキサンジカルボン酸が得られる。さらにハロゲン化チオニル等を用いた公知の酸ハロゲン化法により、シクロヘキサンジカルボン酸ハロゲン化物が、好適に製造される。
【0187】
【化77】
Figure 0003560955
(式中、X91は塩素原子または臭素原子を表し、R91はアルキル基またはアリール基を表す)
【0188】
本発明に係る式(9)で表される環状脂肪族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等である。
【0189】
これら環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体(その酸ハロゲン化物またはそのエステル化合物)には、上記位置異性体の他に、シス体、トランス体などの立体異性体が存在するが、本発明にかかる環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体(その酸ハロゲン化物またはそのエステル化合物)としては、これらの位置異性体または立体異性体をそれぞれ単離して単独で使用してもよく、あるいは、これら位置異性体または立体異性体の混合物であってもよい。
【0190】
<4> 次に、式(3−A)および式(5−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリ(チオ)エステル共重合体について、説明する。
【0191】
【化78】
Figure 0003560955
(式中、R21はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R23はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、pはそれぞれ0〜4の整数を表す)
【0192】
かかるポリ(チオ)エステル共重合体は、代表的には、前記式(5)で表されるジチオール化合物と上記式(8)で表されるジヒドロキシ化合物との混合物を、前記式(9)で表される環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体(その酸ハロゲン化物またはそのエステル化合物)と作用させ、(チオ)エステル化反応により共重合させることにより得られるものである。
【0193】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<4>は、式(5)で表されるジチオール化合物と式(9)で表される環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体とから得られる一般式(3−A)で表される繰り返し構造単位と、式(8)で表されるジヒドロキシ化合物と式(9)で表される環状脂肪族カルボン酸またはその誘導体とから得られる一般式(5−B)で表される繰り返し構造単位の2つの繰り返し構造単位を、必須の繰り返し構造単位として有する共重合体であって、ランダム共重合体、交互共重合体あるいはブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0194】
これらのポリ(チオ)エステル共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)、熱的特性、機械的特性、成形加工性等の諸物性のバランスを考慮すると、一般式(3−A)および一般式(5−B)で表される全繰り返し構造単位中に含まれる一般式(3−A)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜99%であり、好ましくは、5〜95モル%であり、より好ましくは、10〜90モル%であり、さらに好ましくは、20〜80モル%である。一般式(3−A)で表される繰り返し構造単位が5%以上の場合、屈折率、アッベ数ともに、光学用樹脂として使用するのに十分な性能を有したものとなり好ましい。
【0195】
一方、これらのポリ(チオ)エステル共重合体<4>において、光学特性(屈折率、アッベ数)、耐熱性、成形加工性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、一般式(3−A)および一般式(5−B)で表される全繰り返し構造単位中に含まれる一般式(5−B)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜99%であり、好ましくは、5〜95モル%であり、より好ましくは、10〜90モル%であり、さらに好ましくは、20〜80モル%である。一般式(5−B)で表される繰り返し構造単位が5%以上の場合、熱的特性、成形加工性等の面で、光学用樹脂として使用するのに十分な性能を有しているため好ましい。
【0196】
一般式(3−A)において、R21およびmは、前記一般式(2−A)におけるR21およびmと同じ意味を表す。一般式(5−B)において、R23およびpは、前記一般式(3−B)におけるR23およびpと同じ意味を表す。
【0197】
式(5−B)で表される繰り返し構造単位の中でも、下記式(5−B−i)または式(5−B−ii)および式(5−B−iii)で表される繰り返し構造単位はより好ましい。
【0198】
【化79】
Figure 0003560955
【0199】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<4>においては、原料モノマーとなる式(8)で表されるジヒドロキシ化合物が立体異性体を有しており、また、式(9)で表される環状脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体が位置異性体、立体異性体を有していることから、式(3−A)および式(5−B)で表される繰り返し構造単位において、通常、それらに起因する位置および立体構造の異なる複数の繰り返し構造単位が存在する。本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、これらの混合物であってもよく、あるいは、特定の一種類の異性体構造を有する繰り返し構造単位のみからなる重合体であってもよい。
【0200】
<5> 次に、式(4−A)および式(6−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリ(チオ)エステル共重合体について説明する。
【0201】
【化80】
Figure 0003560955
(式中、R21はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R22はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、nはそれぞれ0〜4の整数を表す)
【0202】
かかるポリ(チオ)エステル共重合体は、代表的には、前記式(5)で表されるジチオール化合物と前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物との混合物を、下記式(10)で表されるフタル酸またはその誘導体(その酸ハロゲン化物またはそのエステル化合物)と作用させ、(チオ)エステル化反応により共重合させることにより得られるものである。
【0203】
該ポリ(チオ)エステル共重合体は、式(5)で表されるジチオール化合物と式(10)で表されるフタル酸またはその誘導体とから得られる一般式(4−A)で表される繰り返し構造単位と、式(6)で表されるジヒドロキシ化合物と式(10)で表されるフタル酸またはその誘導体とから得られる一般式(6−B)で表される繰り返し構造単位の2つの繰り返し構造単位を、必須の繰り返し構造単位として有する共重合体であって、ランダム共重合体、交互共重合体あるいはブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0204】
【化81】
Figure 0003560955
【0205】
これらのポリ(チオ)エステル共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)耐熱性、成形加工性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、一般式(4−A)および一般式(6−B)で表される全繰り返し構造単位中に含まれる一般式(4−A)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜99%であり、好ましくは、5〜95モル%であり、より好ましくは、10〜90モル%であり、さらに好ましくは、20〜80モル%である。一般式(4−A)で表される繰り返し構造単位が5%以上の場合、屈折率の点で、光学用樹脂として使用するのに十分な性能を有したものとなり好ましい。
【0206】
一方、これらのポリ(チオ)エステル共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)耐熱性、成形加工性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、一般式(4−A)および一般式(6−B)で表される全繰り返し構造単位中に含まれる一般式(6−B)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜99%であり、好ましくは、5〜95モル%であり、より好ましくは、10〜90モル%であり、さらに好ましくは、20〜80モル%である。一般式(6−B)で表される繰り返し構造単位が5%以上の場合、耐熱性、成形加工性等の面で、光学用樹脂として使用するのに十分な性能を有しているため好ましい。
【0207】
一般式(4−A)において、R21およびmは、前記一般式(2−A)におけるR21およびmと同じ意味を表す。
一般式(6−B)において、R22およびnは、前記一般式(2−B)におけるR22およびnと同じ意味を表す。
【0208】
一般式(4−A)で表される繰り返し構造単位の中でも、下記式(4−A−i)、(4−A−ii)または式(4−A−iii)で表される繰り返し構造単位は、より好ましい。
【0209】
【化82】
Figure 0003560955
【0210】
一般式(6−B)で表される繰り返し構造単位の中でも、下記式(6−B−i)、(6−B−ii)または式(6−B−iii)で表される繰り返し構造単位はより好ましい。
【0211】
【化83】
Figure 0003560955
【0212】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<5>においては、原料モノマーとなる式(6)で表されるジヒドロキシ化合物が立体異性体を有しており、また、式(10)で表されるフタル酸またはその誘導体が位置異性体を有していることから、式(4−A)および式(6−B)で表される繰り返し構造単位において、通常、それらに起因する位置および立体構造の異なる複数の繰り返し構造単位が存在する。本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<5>は、これらの混合物であってもよく、あるいは、特定の一種類の異性体構造を有する繰り返し構造単位のみからなる重合体であってもよい。
【0213】
式(10)で表されるフタル酸、その酸ハロゲン化物(例えば、酸クロリド、酸ブロミドなど)またはそのエステル化合物(例えば、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、tert−ブチルエステルなどのアルキルエステル、フェニルエステルなどのアリールエステルなど)は公知化合物であり、公知の方法、例えば、下記式(C)に示される合成経路により、好適に製造され、工業的に入手可能である。すなわち、o,p,m体の各種キシレンを重金属触媒下に酸化することにより、各種フタル酸が好適に製造される。さらにハロゲン化チオニル等を用いた公知の酸ハロゲン化法により、各種フタル酸ハロゲン化物が、好適に製造される。そして、さらに、アルコール類を使用した、公知のエステル化法により、フタル酸エステル化物が、好適に製造される。
【0214】
【化84】
Figure 0003560955
(式中、X101は塩素原子または臭素原子を表し、R101はアルキル基またはアリール基を表す)
【0215】
本発明に係る式(10)で表されるフタル酸とは、テレフタル酸、イソフタル酸、またはフタル酸である。
【0216】
本発明に係るフタル酸またはその誘導体(その酸ハロゲン化物またはそのエステル化合物)としては、これらの位置異性体を単独で使用してもよく、あるいは、これら位置異性体の混合物であってもよい。
【0217】
<6> 次に、式(4−A)および式(7−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリ(チオ)エステル共重合体について説明する。
【0218】
【化85】
Figure 0003560955
(式中、R21はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R23はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、pはそれぞれ0〜4の整数を表す)
【0219】
かかるポリ(チオ)エステル共重合体は、代表的には、前記式(5)で表されるジチオール化合物と前記式(8)で表されるジヒドロキシ化合物との混合物を、前記式(10)で表されるフタル酸またはその誘導体(その酸ハロゲン化物またはそのエステル化合物)と作用させ、(チオ)エステル化反応により共重合させることにより得られるものである。
【0220】
該ポリ(チオ)エステル共重合体は、式(5)で表されるジチオール化合物と式(10)で表されるフタル酸またはその誘導体とから得られる一般式(4−A)で表される繰り返し構造単位と、式(8)で表されるジヒドロキシ化合物と式(10)で表されるフタル酸またはその誘導体とから得られる一般式(7−B)で表される繰り返し構造単位の2つの繰り返し構造単位を、必須の繰り返し構造単位として有する共重合体であって、ランダム共重合体、交互共重合体あるいはブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0221】
これらのポリ(チオ)エステル共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)耐熱性、成形加工性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、一般式(4−A)および一般式(7−B)で表される全繰り返し構造単位中に含まれる一般式(4−A)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜99%であり、好ましくは、5〜95モル%であり、より好ましくは、10〜90モル%であり、さらに好ましくは、20〜80モル%である。一般式(4−A)で表される繰り返し構造単位が5%以上の場合、屈折率の点で、光学用樹脂として使用するのに十分な性能を有したものとなり好ましい。
【0222】
一方、これらのポリ(チオ)エステル共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)耐熱性、成形加工性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、一般式(4−A)および一般式(7−B)で表される全繰り返し構造単位中に含まれる一般式(7−B)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜99%であり、好ましくは、5〜95モル%であり、より好ましくは、10〜90モル%であり、さらに好ましくは、20〜80モル%である。一般式(7−B)で表される繰り返し構造単位が5%以上の場合、耐熱性、成形加工性等の面で、光学用樹脂として使用するのに十分な性能を有しているため好ましい。
【0223】
一般式(4−A)において、R21およびmは、前記一般式(2−A)におけるR21およびmと同じ意味を表す。
一般式(7−B)において、R23およびpは、前記一般式(3−B)におけるR23およびpと同じ意味を表す。
【0224】
一般式(7−B)で表される繰り返し構造単位の中でも、下記式(7−B−i)、(7−B−ii)または式(7−B−iii)で表される繰り返し構造単位はより好ましい。
【0225】
【化86】
Figure 0003560955
【0226】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<6>においては、原料モノマーとなる式(8)で表されるジヒドロキシ化合物が立体異性体を有しており、また、式(10)で表されるフタル酸またはその誘導体が位置異性体を有していることから、式(4−A)および式(7−B)で表される繰り返し構造単位において、通常、それらに起因する位置および立体構造の異なる複数の繰り返し構造単位が存在する。本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<6>は、これらの混合物であってもよく、あるいは、特定の一種類の異性体構造を有する繰り返し構造単位のみからなる重合体であってもよい。
【0227】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体<1>〜<6>は、各々、上述したような式(2−A)〜式(7−B)で表される繰り返し構造単位を各々必須繰り返し構造単位として含有する際に、その必須繰り返し構造単位とは異なる式(2−A)〜式(7−B)で表される複数の繰り返し構造単位を含有してなる三元共重合体、あるいは、三元以上の多元共重合体であってもよい。さらに、式(2−A)〜式(7−B)で表される繰り返し構造単位以外の式(1−A)および式(1−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなる三元共重合体、あるいは、三元以上の多元共重合体であってもよい。
【0228】
また本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、本発明の所望の効果を損なわない範囲において、各々、上述したような式(1−A)および式(1−B)で表される繰り返し構造単位を必須繰り返し構造単位として含有する以外に、さらに、他の繰り返し構造単位を含有してなるポリ(チオ)エステル共重合体であってもよい。
【0229】
すなわち、式(1−A)、式(1−B)で表される繰り返し構造単位以外の他の繰り返し構造単位を含有していてもよく、例えば、式(1)で表されるジチオール化合物/ジヒドロキシ化合物以外のジチオール化合物またはジヒドロキシ化合物と式(2)で表されるジカルボン酸誘導体以外の他のジカルボン酸誘導体から誘導される繰り返し構造単位、式(1)及び式(1−B)の原料モノマーとなる公知の環状脂肪族ジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物と式(2)で表されるジカルボン酸誘導体から誘導される繰り返し構造単位、あるいは、これらのジチオール化合物又はジヒドロキシ化合物と式(2)で表されるジカルボン酸誘導体以外の他のジカルボン酸誘導体から誘導される繰り返し構造単位である。
【0230】
ポリ(チオ)エステル共重合体の中でも、かかる三元共重合体ないし多元共重合体は、前述したポリ(チオ)エステル共重合体の方法と同様にして好適に実施される。すなわち、例えば、相当するモノマーを作用させ(チオ)エステル化反応によって共重合することにより製造される。
【0231】
式(1)で表されるジチオール化合物以外のジチオール化合物としては、各種公知の芳香族ジチオール化合物または鎖状脂肪族ジチオール化合物を例示することができる。具体的には、1,4−ベンゼンジチオール、1、3−ベンゼンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、4,4’−チオジベンゼンジチオール、p−キシリレンジチオール、m−キシリレンジチオール、o−キシリレンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオールなどのジチオール化合物が例示されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0232】
該ジヒドロキシ化合物としては、各種公知の芳香族ジヒドロキシ化合物、あるいは、鎖状または環状脂肪族ジヒドロキシ化合物を例示することができる。
【0233】
該芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔”ビスフェノールA”〕、2−(4’−ヒドロキシフェニル)−2−(3’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、4,4−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)トリデカン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−エチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−n−プロピル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−イソプロピル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−sec−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−シクロヘキシル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−アリル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2’,3’,5’,6’−テトラメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シアノメタン、1−シアノ−3,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0234】
1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3’,5’−ジクロロ−4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)アダマンタン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、
【0235】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(ヒドロキシアリール)エーテル類;
【0236】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジシクロヘキシル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のビス(ヒドロキシアリール)スルフィド類;
【0237】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド等のビス(ヒドロキシアリール)スルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のビス(ヒドロキシアリール)スルホン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ケトン等のビス(ヒドロキシアリール)ケトン類;
【0238】
さらには、7,7’−ジヒドロキシ−3,3’,4,4’−テトラヒドロ−4,4,4’,4’−テトラメチル−2,2’−スピロビ(2H−1−ベンゾピラン)、トランス−2,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン、3,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン、1,6−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン等が挙げられる。
【0239】
該脂肪族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、1,2−ジヒドロキシエタン、1,3−ジヒドロキシプロパン、1,4−ジヒドロキシブタン、1,5−ジヒドロキシペンタン、3−メチル−1,5−ジヒドロキシペンタン、1,6−ジヒドロキシヘキサン、1,7−ジヒドロキシヘプタン、1,8−ジヒドロキシオクタン、1,9−ジヒドロキシノナン、1,10−ジヒドロキシデカン、1,11−ジヒドロキシウンデカン、1,12−ジヒドロキシドデカン、ジヒドロキシネオペンチル、2−エチル−1,2−ジヒドロキシヘキサン、2−メチル−1,3−ジヒドロキシプロパン等の鎖状脂肪族ジヒドロキシ化合物;
【0240】
1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、等の環状脂肪族ジヒドロキシ化合物;
【0241】
o−ジヒドロキシキシリレン、m−ジヒドロキシキシリレン、p−ジヒドロキシキシリレン、1,4−ビス(2’−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−ビス(3’−ヒドロキシプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(4’−ヒドロキシブチル)ベンゼン、1,4−ビス(5’−ヒドロキシペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(6’−ヒドロキシヘキシル)ベンゼン、2,2−ビス〔4’−(2”−ヒドロキシエチルオキシ)フェニル〕プロパン等の芳香族基を含む脂肪族ジヒドロキシ化合物を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0242】
これら公知のジヒドロキシ化合物の中でも、光学特性(屈折率、アッベ数など)、熱的特性などを考慮すると、好ましくは、芳香族ジヒドロキシ化合物または脂肪族環状ジヒドロキシ化合物であり、より好ましくは、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称、”ビスフェノールA”〕、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン〔通称、”ビスフェノールZ”〕、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン[通称、ビスフェノールP]、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン[通称、“ビスフェノールM”]、
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物である。
【0243】
前記ジカルボン酸誘導体としては、各種公知の芳香族ジカルボン酸誘導体、あるいは、鎖状または環状脂肪族ジカルボン酸誘導体を例示することができる。
【0244】
かかるジカルボン酸誘導体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−チオフェンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジ酢酸などの環状脂肪族ジカルボン酸化合物;
【0245】
コハク酸、マレイン酸、フマル酸、1,3−プロパンジカルボン酸、1,4−ブタンジカルボン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸などの鎖状脂肪族ジカルボン酸化合物等が例示されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0246】
中でも、かかる繰り返し構造単位としては、下記式(1−C)で表される繰り返し構造単位であることが好ましい。
【0247】
【化87】
Figure 0003560955
(式中、R17は二価の芳香族炭化水素基を表し、R18は環状脂肪族ジカルボン酸残基または芳香族ジカルボン酸残基を表す)
【0248】
すなわち、本発明の所望の効果を得るために、本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の中でも、式(1−A)、式(1−B)ならびに式(1−C)で表される繰り返し構造単位を含有してなる共重合体は、より好ましい。
【0249】
該ポリ(チオ)エステル共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体あるいはブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0250】
上記式(1−C)における、R17は二価の芳香族炭化水素基を表し、好ましくは、総炭素数6〜25の二価の芳香族炭化水素基であり、より好ましくは、総炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である。
上記式(1−C)において、R18は環状脂肪族ジカルボン酸残基または芳香族ジカルボン酸残基を表し、具体的には、前記R12と同じ意味を表す。
該R18として、好ましくは、環状脂肪族ジカルボン酸残基であり、より好ましくは、
【0251】
【化88】
Figure 0003560955
で表される基のいずれかである。又、ベンゼンジカルボン酸の残基であるフェニレン基も好ましいものとして例示できる。
【0252】
かかる式(1−C)で表される繰り返し構造単位は、前記一般式(2)で表される環状脂肪族または芳香族ジカルボン酸と、一般式(11)で表される公知の芳香族ジヒドロキシ化合物から得られる繰り返し構造単位である。
【0253】
【化89】
Figure 0003560955
(式中、R17は前記と同じ意味を表す)
【0254】
かかる芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、
例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔”ビスフェノールA”〕、2−(4’−ヒドロキシフェニル)−2−(3’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、4,4−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)トリデカン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−エチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−n−プロピル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−イソプロピル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−sec−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−シクロヘキシル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−アリル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2’,3’,5’,6’−テトラメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シアノメタン、1−シアノ−3,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0255】
1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3’,5’−ジクロロ−4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)アダマンタン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、
4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(ヒドロキシアリール)エーテル類;
【0256】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジシクロヘキシル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のビス(ヒドロキシアリール)スルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド等のビス(ヒドロキシアリール)スルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のビス(ヒドロキシアリール)スルホン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ケトン等のビス(ヒドロキシアリール)ケトン類;
さらには、7,7’−ジヒドロキシ−3,3’,4,4’−テトラヒドロ−4,4,4’,4’−テトラメチル−2,2’−スピロビ(2H−1−ベンゾピラン)、トランス−2,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン、3,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン、1,6−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン等が挙げられる。
【0257】
これら芳香族ジヒドロキシ化合物の中でも、光学特性(屈折率、アッベ数など)、熱的特性などを考慮すると、より好ましくは、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称、”ビスフェノールA”〕、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン〔通称、”ビスフェノールZ”〕、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン[通称、ビスフェノールP]、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン[通称、“ビスフェノールM”]、
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物である。
【0258】
ポリ(チオ)エステル共重合体の中でも、かかる三元共重合体ないし多元共重合体は、前述したポリ(チオ)エステル共重合体の方法と同様にして好適に実施される。すなわち、例えば、上述したようなモノマーを作用させ(チオ)エステル化反応によって共重合することにより製造される。
【0259】
該ポリ(チオ)エステル共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)耐熱性、成形加工性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、全繰り返し構造単位中に含まれる一般式(1−C)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜80%であり、好ましくは、5〜70モル%であり、より好ましくは、5〜60モル%であり、さらに好ましくは、5〜50モル%である。
【0260】
さらに、本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体は、所望の効果を損なわない範囲において、チオエステル基またはエステル基以外に、カーボネート基、イミノ基、エーテル基、イミド基、アミド基、ウレタン基、ウレア基等の結合基を含有していてもよい。
【0261】
かかる共重合体は、上記ジカルボン酸化合物、ジチオール化合物またはジヒドロキシ化合物以外の2官能性化合物(例えば、ジアミン化合物、ジイソシアナート化合物など)を、重合反応の際に共存させることにより製造される。
【0262】
しかしながら、本発明の効果を最大限に得るためには、式(1−A)、(1−B)または式(1−C)で表される繰り返し構造単位のみからなる重合体または共重合体は特に好ましい。
【0263】
〔ポリマー末端基について〕
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体において、末端基は、前述したような原料モノマーに由来するチオール基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の末端基であってもよく、また、以下に説明するような分子量調節剤(例えば、1価のヒドロキシ化合物、1価のチオール化合物または1価のカルボン酸誘導体など)でポリマー主鎖の末端基が封止された不活性な末端基であってもよい。
【0264】
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体中での末端基の量は、特に制限はないが、通常、構造単位の総モル数に対して、0.001〜5モル%であり、好ましくは、0.01〜4モル%であり、より好ましくは、0.05〜3モル%である。
【0265】
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体を、前記の方法に従い重合して製造する際に、分子量を調節する目的で分子量調節剤の存在下に重合を行うことは好ましいことである。
【0266】
かかる分子量調節剤としては特に限定されるものではなく、公知のポリ(チオ)エステル重合の際に使用される各種既知の分子量調節剤であればよく、例えば、1価の脂肪族ヒドロキシ化合物または芳香族ヒドロキシ化合物、1価の脂肪族チオール化合物または芳香族チオール化合物、もしくは、1価の脂肪族または芳香族カルボン酸誘導体(例えば、1価の脂肪族または芳香族カルボン酸ハロゲン化物、1価の脂肪族または芳香族カルボン酸エステル化物など)等が挙げられる。
【0267】
かかる化合物として、具体的には、メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、メトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキシルアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェノキシエタノール、フェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−クレゾール、3−クレゾール、4−クレゾール、4−エチルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、4−メトキシフェノール、4−イソプロペニルフェノール、4−クロロフェノール、4−ブロモフェノール、4−クミルフェノール、4−フェニルフェノール、α−ナフトール、β−ナフトールなど1価の脂肪族ヒドロキシ化合物または芳香族ヒドロキシ化合物;
メタンチオール、エタンチオール、ブタンチオール、オクタンチオール、シクロヘキサンチオール、フェニルメタンチオール、ベンゼンチオールなどの1価の脂肪族または芳香族チオール化合物;
酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、安息香酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、2−メチル安息香酸、4−クロロ安息香酸、3−クロロ安息香酸、2−クロロ安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸などの1価の脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0268】
分子量調節剤の使用量は特に制限するものでなく、目的の分子量に調節するために所望に応じて用いればよいが、通常、重合するジヒドロキシ化合物の総モル数に対して、0.001〜5モル%であり、好ましくは0.01〜4モル%であり、より好ましくは、0.05〜3モル%であり、さらに好ましくは、0.05〜2モル%である。
【0269】
〔ポリマーの物性値の規定〕
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体または該(共)重合体を成形して得られる光学部品(例えば、プラスチックレンズなど)の分子量としては、特に限定されるものではないが、通常、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定する標準ポリスチレン換算の分子量として、質量平均分子量が5000〜200000であり、好ましくは、10000〜180000であり、より好ましくは、20000〜150000である。
【0270】
また、質量平均分子量と数平均分子量の比として表される多分散性インデックスとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは、1.5〜20.0であり、より好ましくは、2.0〜15.0であり、さらに好ましくは、2.0〜10.0である。
【0271】
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体または該(共)重合体を成形して得られる光学部品(例えば、プラスチックレンズなど)のガラス転移温度は、特に限定するものではないが、通常、70℃以上であり、各種光学部品用として使用されるために、好ましくは、80℃以上であり、より好ましくは、90℃以上であり、さらに好ましくは、100℃以上である。
【0272】
一方、ガラス転移温度が高すぎると、成形加工性の点から好ましくない。すなわち、溶融流動開始温度、溶融粘度が相対的に高くなり、成形加工し難くなったり、視力矯正用レンズとして染色加工して用いる際に染色性が悪くなる等の問題が生じる。
【0273】
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体のガラス転移温度としては、好ましくは、70℃〜200℃であり、より好ましくは、80℃〜180℃であり、さらに好ましくは、90〜170℃である。
【0274】
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体を成形して得られる光学部品は、透明性、機械的特性(例えば、耐衝撃性など)、熱的特性が良好であり、且つ、従来公知の熱可塑性光学用樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、メチルメタクリレート樹脂などと比較して、屈折率、アッベ数の両方がバランスよく高いことが特徴である。
【0275】
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体または該(共)重合体を成形して得られる光学部品(例えば、プラスチックレンズなど)の屈折率(nd)は、1.55以上であって、好ましくは、1.56以上であり、より好ましくは、1.57以上であり、さらに好ましくは、1.58以上である。該(共)重合体または該光学部品の屈折率(nd)が1.59以上であることは、特に好ましい。
【0276】
また、ポリ(チオ)エステル(共)重合体または該(共)重合体を成形して得られる光学部品(例えば、プラスチックレンズなど)のアッベ数(νd)は、35以上であって、好ましくは、36以上であり、より好ましくは、37以上であり、さらに好ましくは、38以上である。該(共)重合体または該光学部品のアッベ数(νd)が40以上であることは、特に好ましい。
【0277】
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体は、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、製造時あるいは成形時に、さらに公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤(例えば、リン原子含有化合物、フェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、硫黄原子含有化合物など)、紫外線吸収剤、離型剤(例えば、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル類など)、滑剤、難燃剤(例えば、有機ハロゲン系化合物など)、染料、流動性改良剤、熱安定剤(例えば、硫黄原子含有化合物など)等を併せて添加して使用してもよい。
【0278】
また本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体に、例えば、帯電防止剤、充填剤(例えば、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維など)等を添加して、光学部品以外の各種成形用材料としても使用してもよい。
【0279】
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体は、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、製造時あるいは成形時に他のポリマーと混合して、成形材料として使用することが可能である。他のポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、パラオキシベンゾイル系ポリ(チオ)エステル、ポリアリーレート、ポリスルフィド等が挙げられる。
【0280】
〔樹脂組成物および成形方法、光学部品について〕
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体を含有してなる樹脂組成物は、必須構成成分として、
(1)本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体、
を含有してなる組成物であり、好ましくはさらに、
(2)酸化防止剤(例えば、リン原子含有化合物、フェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、硫黄原子含有化合物など)
を含有してなる組成物である。
【0281】
本発明の樹脂組成物に添加する酸化防止剤の量は、本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体100質量部に対して、通常、0.0001〜10質量部であり、より好ましくは、0.01〜5質量部であり、さらに好ましくは、0.05〜3質量部である。
【0282】
かかる酸化防止剤としては、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリス(2−クロロエチル)ホスファイト、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、フェニル−ジデシルホスファイト、ジフェニル−イソオクチルホスファイト、ジフェニル−2−エチルヘキシルホスファイト、ジフェニル−デシルホスファイト、ジフェニル−トリデシルホスファイト、ビス(トリデシル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ジステアリル−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ジフェニル−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、テトラフェニル−ジプロピレングリコール−ジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニル−ジホスファイト、テトラ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ジフェニルホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスチリルテトラホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイトなどの亜リン酸類;
【0283】
トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどのリン酸類;
テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイトなどの亜ホスホン酸類;
ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジイソプロピルなどのホスホン酸類などのリン原子含有化合物、
【0284】
オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートなどの公知のフェノール系化合物が例示されるが、これらに限定されるものではない。これらの酸化防止剤は、単独で用いてもよく、あるいは、2種類以上併用しても差し支えない。
【0285】
また酸化防止剤以外にも、本発明の所望の効果を損なわない程度で、前述したような、紫外線吸収剤、離型剤(例えば、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル類など)、滑剤、難燃剤(例えば、有機ハロゲン系化合物など)、染料、流動性改良剤、熱安定剤(例えば、硫黄原子含有化合物など)を含有していても差し支えない。
【0286】
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定はなく、通常、樹脂組成物を製造する各種公知の方法により行うことができる。すなわち、▲1▼ポリ(チオ)エステル(共)重合体の溶液からポリ(チオ)エステル(共)重合体を固体として単離した後、該固体に対して上記酸化防止剤を添加して、さらに公知の各種混合装置(例えば、タンブラーミキサー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサーなど)により分散混合する方法、
【0287】
あるいは、▲2▼前述の通り、各種混合機により分散混合した後、押出機、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法などが挙げられる。また、これらの方法を併用しても差し支えない。
【0288】
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体または該(共)重合体を含有してなる樹脂組成物は、熱可塑性であり、溶融状態で射出成形、押出成形、ブロー成形、射出圧縮成形、さらには、溶液キャスティングなどの各種公知の成形方法により好適に成形加工される。
【0289】
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体または該(共)重合体を含有してなる樹脂組成物を成形して光学部品を得るための成形方法として、好ましくは、射出成形、押出成形または射出圧縮成形であり、より好ましくは、射出成形または射出圧縮成形である。
【0290】
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体を成形して光学部品を製造する際の成形条件としては、樹脂または樹脂組成物の熱的特性に応じて任意の条件で行えるが、通常、樹脂温度180〜350℃、金型温度25(室温)〜160℃の範囲であり、好ましくは、樹脂温度180〜300℃、金型温度50〜150℃の範囲であり、さらに好ましくは、樹脂温度180〜300℃、金型温度50〜150℃の範囲である。
【0291】
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体は、透明性、光学特性に優れ(高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、熱的特性、機械的特性などが良好であり、かつ、成形加工性、生産性が良好であることから、各種光学部品用材料として有用である。
【0292】
本発明の光学部品としては、視力矯正用眼鏡レンズ、撮像機器(例えば、カメラ、VTRなど)用レンズ、ピックアップ用レンズ、コリメトリーレンズ、fθレンズ、フレネルレンズなどの各種プラスチック光学レンズ、光ディスク基板、光磁気ディスク基板などの光記録媒体基板、液晶セル用プラスチック基板、光ファイバー、光導波路等の各種光学部品を挙げることができる。
【0293】
上記方法で得られる本発明の光学部品は、透明性、光学特性に優れ(高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、熱的特性、機械的特性などが良好であり、上記に例示したような用途で好適に使用される。
【0294】
また本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体または該(共)重合体を含有してなる樹脂組成物は、成形用材料として上記光学部品以外の用途、例えば、電気機器、電子部品、車両用部品、建材等に成形して用いることも可能である。
【0295】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0296】
以下の実施例で製造したポリ(チオ)エステル(共)重合体、ならびに、該ポリ(チオ)エステル(共)重合体を含有してなる樹脂組成物の物性測定は、以下の方法により行った。
【0297】
〔質量平均分子量の測定〕
以下、実施例で製造して得られたポリ(チオ)エステル(共)重合体の0.2質量%クロロホルム溶液を、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)〔昭和電工(株)製、「System−11」〕により測定し、質量平均分子量(Mw)を求めた。なお、測定値は標準ポリスチレンに換算した値である。
【0298】
〔溶融流動開始温度および溶融粘度〕
島津高化式フローテスター(CFT500A)を使用し、荷重100kgで直径0.1cm、長さ1cmのオリフィスを用いて測定した。
【0299】
〔屈折率、アッベ数〕
得られたポリ(チオ)エステル共重合体を220℃でプレス機によりプレス成形してシート状試験片を作成し、プルフリッヒ屈折計を用いて20℃で屈折率(nd)およびアッベ数(νd)を求めた。
【0300】
〔複屈折率〕
実施例で製造したポリ(チオ)エステル(共)重合体の厚さ5μmの薄膜をシリコンウエハー上に作成した。すなわち、該ポリ(チオ)エステル(共)重合体の1,1,1−トリクロロエタン溶液(20%濃度)をフッ素樹脂(「テフロン」)製フィルター(ポア径0.45μm)で濾過した後、シリコンウエハー(直径5インチ)上に回転数2000rpm、5秒間の条件下でスピンコートした。その後、70℃で15分間乾燥して溶媒を留去させて、厚さ5μmの該成形材料の薄膜を作成した。プリズムカプラ(メトリコン社製モデル2020)を使用して632nmレーザー光源で、該薄膜のTEモード光およびTMモード光での屈折率を測定し、それらの差として複屈折率を求めた。
【0301】
〔ポリ(チオ)エステル重合体(ホモポリマー)の合成〕
参考製造例1 {2,6−ビス(アセトキシ)−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタンの合成}
攪拌装置を備えた1Lのフラスコに、2,6−ジクロル−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタン114g(0.60モル)と酢酸360gを装入し、攪拌しながら、酢酸ナトリウム144g(1.7モル)を加え、60℃に昇温し11時間保温した。室温まで冷却後、残渣をろ過して濾液を捕集した。
【0302】
次に、1500mLの水を攪拌している中に、上記濾液を排出し、ジクロルメタン900mLで抽出し、有機層を水酸化ナトリウム水溶液にて中和後、水洗し、エバポレーターにて濃縮して白色結晶を得た。
【0303】
続いて、得られた白色結晶を少量の酢酸エチルに溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン)のショートカラムを通し、抽出液を濃縮、乾燥し、下記式(a)で表される2,6−ビス(アセトキシ)−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタンを得た。収量は119.4g(収率84.3%)であった。
【0304】
MS:242(M+)
H−NMR δ(ppm、DMSO):1.63(s,2H)、1.99(s,6H)、2.92(bs,1H)、3.04−3.05(bd,2H)、3.83−3.87(bt,1H)、5.15(s,2H)
【0305】
【化90】
Figure 0003560955
【0306】
参考製造例2{2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタンの合成}
攪拌装置を備えた1Lのフラスコに、上記参考製造例1で得られた2,6−ビス(アセトキシ)−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタン110g(0.56モル)とメタノール600mLを装入し、攪拌しながら、炭酸水素ナトリウム84g(1.0モル)を加え、メタノール還流状態まで加熱し4時間保温した。室温まで冷却後、残渣を濾過した。
【0307】
次に、エバポレーターを用いて濾液を濃縮後、濃縮溶液にアセトニトリル1200g、活性炭4gを加えて、80℃まで加熱後、冷却、濾過し、濾液をエバポレーターにて濃縮させ、淡黄色結晶を得た。続いて、アセトニトリル160gを用いて、再び加熱溶解させ、冷却して再結晶させ、濾過、乾燥後、白色結晶の下記式(1−1)の2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタンを得た。収量は61.6g(収率85%)であった。得られた2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタンをガスクロマトグラフィーにて純度を測定したところ、99.8%であった。
【0308】
【化91】
Figure 0003560955
【0309】
実施例1 {2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタンと1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドとの縮合によるポリエステル重合体の製造}
攪拌装置を備えた500mLのフラスコに、上記参考製造例2で得られた2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5]オクタン 22.2g(0.14モル)、ピリジン66.4g(0.84モル)、o−ジクロルベンゼン(ODCB)80gを装入し、窒素通気下60℃まで昇温した。70℃に保温した滴下漏斗にて、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド29.3g(0.14モル)を2時間かけて前記のフラスコに滴下した。滴下後、80℃で12時間保温した時点で反応溶液の増粘が観測された為、ODCB20gを追加した後、保温を3時間継続した。その後、ベンゾイルクロリド0.20g(0.0014モル)を装入し、1時間保温後、ベンジルアルコール0.76g(0.007モル)を装入し、1時間保温した後、10℃まで冷却した。
【0310】
次に、氷冷下、反応溶液に水150g、ジクロルメタン150gを加え、36%塩酸水溶液で反応溶液のpHを1にした。静置後、下層の有機層を抜き出し、水洗を3回繰り返した。
【0311】
n−ヘキサン1500mLをホモジナイザーで激しく攪拌している中に、上記有機層を2時間かけて滴下して沈殿させた。得られた固形分を濾過後、ジクロルメタン150gを加えて溶解させ、メタノール1500mLをホモジナイザーで激しく攪拌している中に、上記ジクロルメタン溶液を2時間かけて滴下し、再沈殿させた。
【0312】
得られた沈殿物を濾過して、メタノールで洗浄後、乾燥させ、粉末状白色固体として式(1−A−1)で表される繰り返し構造単位のポリエステル重合体39.5gを得た。GPC分析を行ったところ、質量平均分子量6.7万であった。
ポリマー試料0.5gを秤量し、「UPILEX」(宇部興産製ポリイミド樹脂の商品名)のフィルムを内側に入れて金属製スペーサーで挟み込み、熱プレス装置で8分間加熱溶融させた。溶融後、プレス機を用いて4.9MPa(50kg/cm)で加圧冷却し、フィルム状試験片を作製した。得られた試験片は無色透明であり、屈折率(nd)1.574、アッベ数(νd)50.8であった。溶融流動性および溶融粘度は問題無く、成形加工性は良好であった。
【0313】
【化92】
Figure 0003560955
【0314】
参考製造例3 {2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジチアンの合成}
攪拌装置を備えた3Lのフラスコに、2,5−ビス(アセトキシメチル)−1,4−ジチアン450g(1.7モル)とメタノール1500mLを装入し、攪拌しながら、重炭酸ナトリウム314.6g(3.7モル)を加え、メタノール還流条件下に加熱し5時間攪拌した。その後、室温まで冷却後、残渣を濾過した。次に、攪拌装置を備えた3Lのフラスコに濾液を移液し、活性炭20gを加えて、再びメタノール還流条件下で30分加熱した後、室温まで冷却して濾過した。濾液をエバポレーターにて濃縮させ、無色オイル状物を得た。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/n−ヘキサン)により精製して、下記式(1−2)で表される2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジチアンを得た。収量は298g(収率97%)であった。得られた2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジチアンをガスクロマトグラフィーにて純度を測定したところ、99.9%であった。
【0315】
【化93】
Figure 0003560955
【0316】
MS:180(M+)
IR(KBr、cm−1):1201.3(C−O伸縮)、1411.9(C−S変角)
H−NMR: δ(ppm、DO):2.85−2.90(d,4H)、2.88−2.96(m,2H)、3.62−3.67(dd,2H)、3.72−3.77(dd,2H)
【0317】
参考製造例4 {2,5−ビス(クロルメチル)−1,4−ジチアンの加水分解によるジヒドロキシ体混合物[2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジチアン、3−ヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−1,5−ジチアシクロヘプタン、3,7−ジヒドロキシ−1,5−ジチアシクロオクタン混合物]の合成}
攪拌装置、窒素バブリング管を備えたフラスコに純水68.6gを装入し、2,5−ビス(クロルメチル)−1,4−ジチアン 34.3g(0.16モル)にアセトニトリル102gを加えた溶液を、室温で1時間を要して滴下した。77℃まで昇温後、同温度で10時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却後、酸化マグネシウム 4gを装入して中和した。中和溶液を濾別後、濾液をエバポレーターにて濃縮させ、無色オイル状物を得た。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン)のショートカラムを通し、抽出液を濃縮、乾燥し、ジヒドロキシ化合物の混合物[下記式(1−3)で表される2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジチアン、式(1−4)で表される3−ヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−1,5−ジチアシクロヘプタン、ならびに、式(1−5)で表される3,7−ジヒドロキシ−1,5−ジチアシクロオクタン]を得た。収量は18.2g(収率64%)であった。
【0318】
【化94】
Figure 0003560955
【0319】
MS:180(M+)
IR(KBr、cm−1):1201.3(C−O伸縮)、1411.9(C−S変角)
13C−NMR δ(ppm、DO):29.2、36.1、39.4、39.5、41.7、52.0、63.9、64.7、62.8
【0320】
実施例2 [2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジチアンと1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリドとの縮合によるポリエステル重合体の製造]
攪拌装置を備えた500mLのフラスコに、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジチアン27.1g(0.15モル)、ピリジン71.3g(0.90モル)、o−ジクロルベンゼン(ODCB)100gを装入し、窒素通気下60℃まで昇温した。70℃に保温した滴下ロートにて、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド31.4g(0.15モル)を2時間かけて前記のフラスコに滴下した。滴下後、60℃で8時間保温した時点で反応溶液の増粘が観測された為、ODCB40gを追加した後、保温を3時間継続した。その後、ベンゾイルクロリド0.21g(0.0015モル)を装入し、1時間保温後、ベンジルアルコール0.81g(0.0075モル)を装入し、1時間保温した後、10℃まで冷却した。
【0321】
次に、氷冷下、反応溶液に水160g、ジクロルメタン160gを加え、36%塩酸水溶液で反応溶液のpHを1にした。静置後、下層の有機層を抜き出し、水洗を3回繰り返した。n−ヘキサン1500mLをホモジナイザーで激しく攪拌している中に、上記有機層を2時間かけて滴下して沈殿させた。得られた固形分を濾過後、ジクロルメタン150gを加えて溶解させ、メタノール1500mLをホモジナイザーで激しく攪拌している中に、上記ジクロルメタン溶液を2時間かけて滴下し、再沈殿させた。
【0322】
得られた沈殿物を濾過して、メタノールで洗浄後、乾燥させ、白色粉末状固体の式(1−A−2)で表されるポリチオエステル重合体 41.9gを得た。GPC分析を行ったところ、質量平均分子量7.5万であった。
【0323】
実施例1と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムは無色透明であり、光学物性は屈折率(nd) 1.566、アッベ数(νd) 48.0であった。溶融流動性および溶融粘度は問題無く、成形加工性は良好であった。
【0324】
【化95】
Figure 0003560955
【0325】
実施例3[本発明のポリチオエステル重合体の製造および物性測定]
撹拌装置、還流冷却管、温度計を設けた内容量3リットルのフラスコに、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン 358.99g(1.69モル)およびクロルベンゼン 500gを秤取し、窒素雰囲気下で攪拌して溶解させた。一方、下記式(3−1)で表されるノルボルナンジカルボン酸クロリド(異性体混合物)375.84g(1.70モル)を100℃で1時間を要して滴下した後、窒素気流下で副生する塩化水素を反応系外へ除去しながら、130℃で8時間反応させた。GPC分析で質量平均分子量9.0万であることを確認した後、100℃で、分子量調節剤(末端停止剤)としてp−tert−ブチルフェノール 8.43g(0.0248モル:3.5モル%)を添加し、同温度で1時間反応させた。反応溶液を室温まで放冷した後、クロロホルム3900gを加えて溶解させた。得られたポリチオエステル重合体のクロロホルム溶液を3回に分けて、それぞれ10リットル容量のホモジナイザーを用いてメタノール4500g対して滴下して、ポリマーを微粒状固体として析出させた。このポリマーを濾過して集め、80℃で20時間減圧乾燥して、白色粉末状固体として目的とする下記式(1−A−3)で表される繰り返し構造単位を有するポリ(チオ)エステル共重合体 670g(収率99%)を得た。
【0326】
【化96】
Figure 0003560955
【0327】
前記方法により、得られたポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は104℃であり良好であった。屈折率(nd)1.631、アッベ数(νd)37.7であり、汎用ポリカーボネートと比較して高屈折率、高アッベ数であった。また複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0328】
実施例4
実施例3において、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアンを使用する代わりに、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィドを使用する以外は、実施例3と同様にして行い、式(1−A−4)で表される繰り返し構造単位を有するポリチオエステル重合体を得た。
【0329】
前記方法により、得られたポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は80℃以上を示し問題なかった。屈折率(nd)1.613、アッベ数(νd)39.0であり、汎用ポリカーボネートと比較して高屈折率、高アッベ数であった。また複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0330】
【化97】
Figure 0003560955
【0331】
実施例5
実施例3において、ノルボルナンジカルボン酸クロリドを使用する代わりに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸クロリドを使用する以外は、実施例3と同様にして行い、式(1−A−5)で表される繰り返し構造単位を有するポリチオエステル重合体を得た。
【0332】
前記方法により、得られたポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は95℃であった。屈折率(nd)1.631、アッベ数(νd)38.0であり、汎用ポリカーボネートと比較して高アッベ数であった。また複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0333】
【化98】
Figure 0003560955
【0334】
実施例6
実施例3において、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアンを使用する代わりに、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィドを使用し、かつ、ノルボルナンジカルボン酸クロリドを使用する代わりに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸クロリドを使用する以外は、実施例3と同様にして行い、式(1−A−6)で表される繰り返し構造単位を有するポリチオエステル重合体を得た。
【0335】
前記方法により、得られたポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は80℃以上を示し問題なかった。屈折率(nd)1.635、アッベ数(νd)39.0であり、汎用ポリカーボネートと比較して高屈折率、高アッベ数であった。また複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0336】
【化99】
Figure 0003560955
【0337】
実施例7
実施例3において、ノルボルナンジカルボン酸クロリドを使用する代わりに、テレフタル酸クロリドを使用する以外は、実施例3と同様にして行い、式(1−A−7)で表される繰り返し構造単位を有するポリチオエステル重合体を得た。
【0338】
前記方法により、得られたポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は200℃以上を示し、非常に耐熱性が優れていた。屈折率(nd)1.685、アッベ数(νd)30.2であり、汎用ポリカーボネートと比較して高屈折率であった。また複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0339】
【化100】
Figure 0003560955
【0340】
実施例8
実施例3において、ノルボルナンジカルボン酸クロリドを使用する代わりに、イソフタル酸クロリドを使用する以外は、実施例3と同様にして行い、式(1−A−8)で表される繰り返し構造単位を有するポリチオエステル重合体を得た。
【0341】
前記方法により、得られたポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は105℃であり良好であった。屈折率(nd)1.685、アッベ数(νd)30.2であり、汎用ポリカーボネートと比較して高屈折率であった。また複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0342】
【化101】
Figure 0003560955
【0343】
実施例9
実施例3において、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアンを使用する代わりに、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィドを使用し、かつ、ノルボルナンジカルボン酸クロリドを使用する代わりに、テレフタル酸クロリドを使用する以外は、実施例3と同様にして行い、式(1−A−9)で表される繰り返し構造単位を有するポリチオエステル重合体を得た。
【0344】
前記方法により、得られたポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は100℃以上を示し、良好であった。屈折率(nd)1.680、アッベ数(νd)30.5であり、汎用ポリカーボネートと比較して高屈折率であった。また複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0345】
【化102】
Figure 0003560955
【0346】
実施例10
実施例3において、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアンを使用する代わりに、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィドを使用し、かつ、ノルボルナンジカルボン酸クロリドを使用する代わりに、イソフタル酸クロリドを使用する以外は、実施例3と同様にして行い、式(1−A−10)で表される繰り返し構造単位を有するポリチオエステル重合体を得た。
【0347】
前記方法により、得られたポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は80℃以上を示し問題なかった。屈折率(nd)1.680、アッベ数(νd)30.5であり、汎用ポリカーボネートと比較して高屈折率であった。また複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0348】
【化103】
Figure 0003560955
【0349】
実施例11
実施例3において、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアンを使用する代わりに、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィドを使用し、かつ、ノルボルナンジカルボン酸クロリドを使用する代わりに、下記式(2−2)で表されるテトラシクロドデセンジカルボン酸クロリドを使用する以外は、実施例3と同様にして行い、式(1−A−11)で表される繰り返し構造単位を有するポリチオエステル重合体を得た。
【0350】
前記方法により、得られたポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は80℃以上を示し問題なかった。屈折率(nd)1.601、アッベ数(νd)41.9であり、汎用ポリカーボネートと比較して高屈折率、高アッベ数であった。また複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0351】
【化104】
Figure 0003560955
【0352】
実施例12[実施例3で得られたポリチオエステル共重合体からなる光学部品用成形材料の製造]
実施例3で製造したポリチオエステル共重合体100質量部、トリス(2,4−ジ−tert―ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:「イルガフォス618」、チバスペシャルティケミカルズ製)0.2質量部およびオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:「イルガノックス1076」、チバスペシャルティケミカルズ製)0.2質量部を、ヘンシェルミキサーにて混合した後、単軸押出機(65mm)にてシリンダー温度210℃で脱気しながら溶融混練および押出しペレット化を行い、無色透明ペレットの光学部品用成形材料(樹脂組成物)を得た。
【0353】
実施例13[光学部品(プラスチックレンズ)の製造]
上記実施例12で得られた成形材料(樹脂組成物)を用いて射出成形によりレンズ形状の成形品を製造した。すなわち、該成形材料のペレットを80℃で24時間減圧乾燥した後、射出成形機にて、成形温度230℃、金型温度60℃で射出成形して、無色透明、プラスレンズ(凸レンズ;直径75mm、中心厚4.2mm、コバ厚1.0mm、+2.00D)形状の成形体を得た。この成形体を偏光板の間において観察したところ、脈理、歪みなどは観察されず、複屈折が低く光学的に均質なものであった。このように本発明の成形材料を使用することにより、比較的低温(230℃)で成形が可能で、かつ、光学的に均質な成形品を好適に製造することができた。また、こうして得られた本発明のプラスチックレンズは、透明性、機械的特性(耐衝撃性、引っ張り強度、曲げ強度など)、熱的特性(熱変形温度など)、耐光性等の諸物性面で良好な特性を示した。
【0354】
〔ポリ(チオ)エステル共重合体(二元)の製造〕
実施例14[本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の製造および物性測定]
撹拌装置、還流冷却管、温度計を設けた内容量2リットルのフラスコに、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン 155.1g(0.73モル)、1,4−シクロヘキサンジオール 84.8g(0.73モル)およびo−ジクロルベンゼン 440gを秤取し、窒素雰囲気下、80℃で攪拌して溶解させた。一方、前記式(3−1)で表されるノルボルナンジカルボン酸クロリド(異性体混合物)320.6g(1.446モル)を80〜105℃で1時間15分を要して滴下した後、窒素気流下で副生する塩化水素を反応系外へ除去しながら、105℃で4時間反応させ、質量平均分子量4.7万となったところで、o−ジクロルベンゼン350gを追加した。引き続き140℃で5時間反応させた後、o−ジクロルベンゼン 370gを追加し、さらに160℃で2時間反応させてGPC分析したところ、質量平均分子量は8.2万であった。この後、分子量調節剤(末端停止剤)として安息香酸クロリド 3.5g(0.0248モル)を添加し、同温度で1時間反応させた。反応溶液を室温まで放冷した後、クロロホルム3000gを加えて溶解させて得られた溶液を2回に分けて、それぞれ10リットル容量のホモジナイザー中の貧溶媒(メタノール)に対して滴下して、析出したポリマーを濾過して集め、80℃で20時間減圧乾燥した。白色粉末状固体として生成物のポリ(チオ)エステル共重合体 540g(収率99%)を得た。
【0355】
【化105】
Figure 0003560955
【0356】
得られたポリ(チオ)エステル共重合体の1質量%重水素化クロロホルム溶液のH−NMR(400MHz)を測定した結果を下記に示した。
H−NMR δ(CDCl):
1.20〜2.05(m,20H)、2.25〜3.10(m,14H)、3.15〜3.30(m,4H)、4.70〜4.90(br,2H)
【0357】
上記H−NMR測定の結果から、式(1−A−3)で表される繰り返し構造単位中の1,4−ジチアン環における2位および5位に結合したチオメチレン基の水素(3.15〜3.30ppm)と、式(1−B−1)で表される繰り返し構造単位中のシクロヘキサン環における1位および4位のメチン水素(4.70〜4.90ppm)との積分比を求めることにより、得られたポリ(チオ)エステル共重合体中の下記式(1−A−3)で表される繰り返し構造単位と、下記式(1−B−1)で表される繰り返し構造単位とのモル比は50:50であることが確認された。
【0358】
前記方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は117℃を示した。溶融流動開始温度は210℃であり、溶融粘度は、240℃で1200Pa・s(12000ポイズ)であった。屈折率(nd)1.581、アッベ数(νd)44であり、汎用ポリカーボネートと比較して高アッベ数であった。また複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0359】
実施例15
実施例14において、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン155.1g(0.73モル)、1,4−シクロヘキサンジオール 84.8g(0.73モル)を使用する代わりに、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン 123.2g(0.58モル)、1,4−シクロヘキサンジオール102.2g(0.88モル)を使用する以外は、実施例14と同様にして行った。
【0360】
得られたポリ(チオ)エステル共重合体は、GPC分析の標準ポリスチレン換算で質量平均分子量6.6万であり、H−NMR測定の結果から得られたポリ(チオ)エステル共重合体中の上記式(1−A−3)で表される繰り返し構造単位と、上記式(1−B−1)で表される繰り返し構造単位とのモル比は40:60であった。
【0361】
前記方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は124℃であった。溶融流動開始温度は195℃であり、溶融粘度は250℃で980Pa・s(9800ポイズ)を示した。屈折率(nd)1.565、アッベ数(νd)45であり、複屈折率は非常に低かった。
【0362】
実施例16[実施例14で得られたポリ(チオ)エステル共重合体からなる本発明の光学部品用成形材料の製造]
実施例14で製造したポリ(チオ)エステル共重合体100質量部、トリス(2,4−ジ−tert―ブチルフェニル)ホスファイト0.1質量部およびペンタエリスチリル[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.1質量部を、ヘンシェルミキサーにて混合した後、単軸押出機(65mm)にてシリンダー温度215℃で脱気しながら溶融混練して、押し出しペレット化して、無色透明ペレットの光学部品用成形材料(樹脂組成物)を得た。
【0363】
実施例17[本発明の光学部品の製造]
上記実施例16で得られた成形材料を用いて射出成形によりレンズ形状の成形品を製造した。すなわち、該成形材料のペレットを100℃で24時間減圧乾燥した後、射出成形機にて、成形温度250℃、金型温度80℃で射出成形して、無色透明、プラスレンズ(凸レンズ;直径75mm、中心厚4.2mm、コバ厚1.0mm、+2.00D)形状の成形体を得た。この成形体を偏光板の間において観察したところ、脈理、歪みなどは観察されず、複屈折が低く光学的に均質なものであった。このように本発明の成形材料を使用することにより、汎用ポリカーボネートと比較して低い温度(250℃)で成形が可能で、かつ、光学的に均質な成形品を好適に製造することができた。また、こうして得られた本発明のプラスチックレンズは、透明性、機械的特性(耐衝撃性、引っ張り強度、曲げ強度など)、熱的特性(熱変形温度など)、耐光性等の諸物性面で、実用上、良好な特性を示した。
【0364】
実施例18[本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の製造および物性測定]
撹拌装置、還流冷却管、温度計を設けた内容量2リットルのフラスコに、2,5−メルカプトメチル−1,4−ジチアン 155.1g(0.73モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン 175.5(0.73モル)およびo−ジクロルベンゼン 440gを秤取し、窒素雰囲気下、80℃で攪拌して溶解させた。一方、前記式(3−1)で表されるノルボルナンジカルボン酸クロリド(異性体混合物)320.6g(1.446モル)を80〜105℃で1時間15分を要して滴下した後、窒素気流下で副生する塩化水素を反応系外へ除去しながら、105℃で4時間反応させ、質量平均分子量4.5×10となったところで、o−ジクロルベンゼン350gを追加した。引き続き140℃で5時間反応させた後、o−ジクロルベンゼン 370gを追加し、さらに160℃で2時間反応させてGPC分析したところ、質量平均分子量は7.4×10であった。この後、分子量調節剤(末端停止剤)として安息香酸クロリド3.5g(0.0248モル)を添加し、同温度で1時間反応させた。反応溶液を室温まで放冷した後、クロロホルム3000gを加えて溶解させて得られた溶液を2回に分けて、それぞれ10リットル容量のホモジナイザー中の貧溶媒(メタノール)に対して滴下して、析出したポリマーを濾過して集め、80℃で20時間減圧乾燥した。白色粉末状固体として目的とする本発明のポリ(チオ)エステル共重合体 536.5g(収率99%)を得た。GPC分析法による質量平均分子量は7.4×10であった。
【0365】
得られたポリ(チオ)エステル共重合体の1質量%重水素化クロロホルム溶液のH−NMR(400MHz)を測定した結果を下記に示した。
H−NMR δ(CDCl):
0.65(m,6H)、〜3.10(m,43H)、3.20〜3.35(m、4H)、4.50〜5.05(2H)
【0366】
上記H−NMR測定の結果から、式(1−A−3)で表される繰り返し構造単位中の1,4−ジチアン環の2位および5位に結合しているチオメチル基の水素と、式(1−B−2)で表される繰り返し構造単位中のシクロヘキサン環上で酸素原子で置換されている4位のメチン水素とのプロトン積分比を求めることにより、得られたポリ(チオ)エステル共重合体中の下記式(1−A−3)で表される繰り返し構造単位と、下記式(1−B−2)で表される繰り返し構造単位とのモル比は50:50であることが確認された。
【0367】
【化106】
Figure 0003560955
【0368】
前記方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は130℃を示した。溶融流動開始温度は210℃であり、溶融粘度は、260℃で360Pa・s(3600ポイズ)であった。屈折率(nd)1.578、アッベ数(νd)46であり、比較的高屈折率であって、かつ、高アッベ数であった。また、複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0369】
実施例19
実施例18において、2,5−メルカプトメチル−1,4−ジチアン 155.1g(0.73モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン 175.5(0.73モル)を使用する代わりに、2,5−メルカプトメチル−1,4−ジチアン 187.0g(0.88モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン 139.4g(0.58モル)を使用する以外は、実施例18と同様にして行った。
【0370】
得られたポリ(チオ)エステル共重合体は、GPC分析の標準ポリスチレン換算で質量平均分子量6.6万であり、H−NMR測定の結果から得られたポリ(チオ)エステル共重合体中の上記式(1−A−3)で表される繰り返し構造単位と、上記式(1−B−2)で表される繰り返し構造単位とのモル比は60:40であった。
【0371】
前記方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は130℃であった。溶融流動開始温度は190℃であり、溶融粘度は250℃で1200Pa・s(12000ポイズ)を示した。屈折率(nd)1.587、アッベ数(νd)45であり、複屈折率は非常に低かった。
【0372】
実施例20[実施例18で得られたポリ(チオ)エステル共重合体を含有してなる樹脂組成物の製造]
実施例18で製造したポリ(チオ)エステル共重合体100質量部、トリス(2,4−ジ−tert―ブチルフェニル)ホスファイト0.1質量部およびペンタエリスチリル[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.1質量部を、ヘンシェルミキサーにて混合した後、単軸押出機(65mm)にてシリンダー温度220℃で脱気しながら溶融混練して、押し出しペレット化して、無色透明ペレットの光学部品用成形材料(樹脂組成物)を得た。
【0373】
実施例21[本発明の光学部品の製造]
上記実施例20で得られた成形材料(樹脂組成物)を用いて射出成形によりレンズ形状の成形品を製造した。すなわち、該成形材料のペレットを100℃で24時間減圧乾燥した後、射出成形機にて、成形温度250℃、金型温度80℃で射出成形して、無色透明、プラスレンズ(凸レンズ;直径75mm、中心厚4.2mm、コバ厚1.0mm、+2.00D)形状の成形体を得た。この成形体を偏光板の間において観察したところ、脈理、歪みなどは観察されず、複屈折の低い光学的に均質なものであった。このように本発明の成形材料を使用することにより、汎用ポリカーボネートと比較して低い温度(250℃)で成形が可能で、かつ、光学的に均質な成形品を好適に製造することができた。また、こうして得られた本発明のプラスチックレンズは、透明性、機械物性、耐候性(耐熱性、耐湿性、耐光性など)等の諸物性面で、実用上、良好な特性を示した。
【0374】
実施例22[本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の製造および物性測定]
撹拌装置、還流冷却管、温度計を設けた内容量300ミリリットルのフラスコに、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン 15.93g(0.075モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン 18.03(0.075モル)およびo−ジクロルベンゼン 44gを秤取し、窒素雰囲気下、80℃で攪拌して溶解させた。一方、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸クロリド 31.21g(0.1493モル)を95〜100℃で1時間30分を要して滴下した後、窒素気流下で副生する塩化水素を反応系外へ除去しながら、105℃で3時間反応させ、質量平均分子量4.1×10となったところで、o−ジクロルベンゼン30gを追加した。引き続き140℃で5時間反応させた後、o−ジクロルベンゼン 40gを追加し、さらに160℃で2時間反応させてGPC分析したところ、質量平均分子量は8.8×10であった。この後、分子量調節剤(末端停止剤)として安息香酸クロリド0.42g(0.008モル)を添加し、同温度で1時間反応させた。反応溶液を室温まで放冷した後、クロロホルム300gを加えて溶解させて得られた溶液を、1.5リットル容量のホモジナイザー中の貧溶媒(メタノール)に対して滴下して、析出したポリマーを濾過して集め、80℃で20時間減圧乾燥した。白色粉末状固体として目的とする本発明のポリ(チオ)エステル共重合体 53.3g(収率98%)を得た。GPC分析法による質量平均分子量は8.6×10であった。
【0375】
得られたポリ(チオ)エステル共重合体の1質量%重水素化クロロホルム溶液のH−NMR(400MHz)を測定した結果を下記に示した。
H−NMR δ(CDCl):
0.74(m,6H)、〜3.15(m,43H)、3.20〜3.35(m、4H)、4.55〜5.05(2H)
【0376】
上記H−NMR測定の結果から、式(1−A−5)で表される繰り返し構造単位中の1,4−ジチアン環の2位および5位に結合しているチオメチル基の水素と、式(1−B−3)で表される繰り返し構造単位中のシクロヘキサン環上で酸素原子で置換されている4位のメチン水素とのプロトン積分比を求めることにより、得られたポリ(チオ)エステル共重合体中の下記式(1−A−5)で表される繰り返し構造単位と、下記式(1−B−3)で表される繰り返し構造単位とのモル比は50:50であることが確認された。
【0377】
【化107】
Figure 0003560955
【0378】
前記方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は132℃を示した。溶融流動開始温度は240℃であり、溶融粘度は、260℃で1200Pa・s(12000ポイズ)であった。屈折率(nd)1.577、アッベ数(νd)46であり、比較的高屈折率であって、かつ、高アッベ数であった。また、複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0379】
実施例23
実施例22において、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン15.93g(0.075モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン 18.03(0.075モル)を使用する代わりに、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン 19.12g(0.09モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン 14.42g(0.06モル)を使用する以外は、実施例22と同様にして行った。
【0380】
得られたポリ(チオ)エステル共重合体は、GPC分析の標準ポリスチレン換算で質量平均分子量6.0万であり、H−NMR測定の結果から得られたポリ(チオ)エステル共重合体中の前記式(1−A−5)で表される繰り返し構造単位と、前記式(1−B−3)で表される繰り返し構造単位とのモル比は60:40であった。
【0381】
前記方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は125℃であった。溶融流動開始温度は210℃であり、溶融粘度は250℃で1050Pa・s(10500ポイズ)を示した。屈折率(nd)1.586、アッベ数(νd)41であり、高屈折率であって、かつ、高アッベ数であった。また、複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0382】
実施例24[実施例22で得られたポリ(チオ)エステル共重合体を含有してなる樹脂組成物の製造]
実施例22で製造したポリ(チオ)エステル共重合体100質量部、トリス(2,4−ジ−tert―ブチルフェニル)ホスファイト0.1質量部およびペンタエリスチリル[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.1質量部を、ヘンシェルミキサーにて混合した後、単軸押出機(65mm)にてシリンダー温度220℃で脱気しながら溶融混練して、押し出しペレット化して、無色透明ペレットの光学部品用成形材料(樹脂組成物)を得た。
【0383】
実施例25[本発明の光学部品の製造]
上記実施例24で得られた成形材料(樹脂組成物)を用いて射出成形によりレンズ形状の成形品を製造した。すなわち、該成形材料のペレットを100℃で24時間減圧乾燥した後、射出成形機にて、成形温度250℃、金型温度80℃で射出成形して、無色透明、プラスレンズ(凸レンズ;直径75mm、中心厚4.2mm、コバ厚1.0mm、+2.00D)形状の成形体を得た。この成形体を偏光板の間において観察したところ、脈理、歪みなどは観察されず、複屈折の低い光学的に均質なものであった。このように本発明の成形材料を使用することにより、汎用ポリカーボネートと比較して低い温度(250℃)で成形が可能で、かつ、光学的に均質な成形品を好適に製造することができた。また、こうして得られた本発明のプラスチックレンズは、透明性、機械物性、耐候性(耐熱性、耐湿性、耐光性など)等の諸物性面で、実用上、良好な特性を示した。
【0384】
実施例26[本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の製造および物性測定]
撹拌装置、還流冷却管、温度計を設けた内容量2リットルのフラスコに、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン 155.1g(0.73モル)、1,4−シクロヘキサンジオール 84.8g(0.73モル)およびo−ジクロルベンゼン 440gを秤取し、窒素雰囲気下、80℃で攪拌して溶解させた。一方、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸クロリド302.3g(1.446モル)を80〜105℃で1時間15分を要して滴下した後、窒素気流下で副生する塩化水素を反応系外へ除去しながら、105℃で4時間反応させ、質量平均分子量4.7万となったところで、o−ジクロルベンゼン350gを追加した。引き続き140℃で5時間反応させた後、o−ジクロルベンゼン 370gを追加し、さらに160℃で2時間反応させてGPC分析したところ、質量平均分子量は7.5万であった。この後、分子量調節剤(末端停止剤)として安息香酸クロリド 3.5g(0.0248モル)を添加し、同温度で1時間反応させた。反応溶液を室温まで放冷した後、クロロホルム3000gを加えて溶解させて得られた溶液を2回に分けて、それぞれ10リットル容量のホモジナイザー中の貧溶媒(メタノール)に対して滴下して、析出したポリマーを濾過して集め、80℃で20時間減圧乾燥した。白色粉末状固体として目的とする本発明のポリ(チオ)エステル共重合体 434.2g(収率99%)を得た。
【0385】
得られたポリ(チオ)エステル共重合体の1質量%重水素化クロロホルム溶液のH−NMR(400MHz)を測定した結果を下記に示した。
H−NMR δ(CDCl):
1.20〜2.05(m,20H)、2.25〜3.10(m,14H)、3.15〜3.30(m,4H)、4.70〜4.90(br,2H)
【0386】
上記H−NMR測定の結果から、式(1−A−5)で表される繰り返し構造単位中の1,4−ジチアン環における2位および5位に結合したチオメチレン基の水素(3.15〜3.30ppm)と、式(1−B−4)で表される繰り返し構造単位中のシクロヘキサン環における1位および4位のメチン水素(4.70〜4.90ppm)との積分比を求めることにより、得られたポリ(チオ)エステル共重合体中の下記式(1−A−5)で表される繰り返し構造単位と、下記式(1−B−4)で表される繰り返し構造単位とのモル比は50:50であることが確認された。
【0387】
【化108】
Figure 0003560955
【0388】
前記方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は106℃を示した。溶融流動開始温度は215℃であり、溶融粘度は、260℃で900Pa・s(9000ポイズ)であった。屈折率(nd)1.591、アッベ数(νd)44であり、汎用ポリカーボネートと比較して高アッベ数であった。また複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0389】
実施例27
実施例26において、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン155.1g(0.73モル)、1,4−シクロヘキサンジオール 84.8g(0.73モル)を使用する代わりに、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン 123.2g(0.58モル)、1,4−シクロヘキサンジオール102.2g(0.88モル)を使用する以外は、実施例26と同様にして行った。
【0390】
得られたポリ(チオ)エステル共重合体は、GPC分析の標準ポリスチレン換算で質量平均分子量6.6万であり、H−NMR測定の結果から得られたポリ(チオ)エステル共重合体中の前記式(1−A−5)で表される繰り返し構造単位と、前記式(1−B−4)で表される繰り返し構造単位とのモル比は40:60であった。
【0391】
前記方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は116℃であった。溶融流動開始温度は190℃であり、溶融粘度は250℃で690Pa・s(6900ポイズ)を示した。屈折率(nd)1.580、アッベ数(νd)47であり、高屈折率であって、かつ、高アッベ数であった。また、複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0392】
実施例28[実施例1で得られたポリ(チオ)エステル共重合体からなる本発明の光学部品用成形材料の製造]
実施例26で製造したポリ(チオ)エステル共重合体100質量部、トリス(2,4−ジ−tert―ブチルフェニル)ホスファイト0.1質量部およびペンタエリスチリル[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.1質量部を、ヘンシェルミキサーにて混合した後、単軸押出機(65mm)にてシリンダー温度215℃で脱気しながら溶融混練して、押し出しペレット化して、無色透明ペレットの光学部品用成形材料(樹脂組成物)を得た。
【0393】
実施例29[本発明の光学部品の製造]
上記実施例28で得られた成形材料を用いて射出成形によりレンズ形状の成形品を製造した。すなわち、該成形材料のペレットを100℃で24時間減圧乾燥した後、射出成形機にて、成形温度250℃、金型温度80℃で射出成形して、無色透明、プラスレンズ(凸レンズ;直径75mm、中心厚4.2mm、コバ厚1.0mm、+2.00D)形状の成形体を得た。この成形体を偏光板の間において観察したところ、脈理、歪みなどは観察されず、複屈折が低く光学的に均質なものであった。このように本発明の成形材料を使用することにより、汎用ポリカーボネートと比較して低い温度(250℃)で成形が可能で、かつ、光学的に均質な成形品を好適に製造することができた。また、こうして得られた本発明のプラスチックレンズは、透明性、機械的特性(耐衝撃性、引っ張り強度、曲げ強度など)、熱的特性(熱変形温度など)、耐光性等の諸物性面で、実用上、良好な特性を示した。
【0394】
実施例30[本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の製造および物性測定]
撹拌装置、還流冷却管、温度計を設けた内容量2リットルのフラスコに、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン 107.3g(0.505モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン 121.4(0.505モル)およびo−ジクロルベンゼン 200gを秤取し、窒素雰囲気下、80℃で攪拌して溶解させた。一方、テレフタル酸クロリド209.0g(1モル)をo−ジクロルベンゼン 100gに溶解させ、この溶液を95〜100℃で1時間を要して滴下した後、窒素気流下で副生する塩化水素を反応系外へ除去しながら、150℃で3時間反応させ、質量平均分子量2.6×10となったところで、o−ジクロルベンゼン200gを追加した。引き続き160℃で5時間反応させた後、o−ジクロルベンゼン 200gを追加し、さらに160℃で2時間反応させてGPC分析したところ、質量平均分子量は8.0×10であった。この後、分子量調節剤(末端停止剤)として安息香酸クロリド3.5g(5モル%)を添加し、同温度で1時間反応させた。反応溶液を室温まで放冷した後、クロロホルム1500gを加えて溶解させて得られた溶液を、8リットル容量のホモジナイザー中の貧溶媒(メタノール)に対して滴下して、析出したポリマーを濾過して集め、80℃で20時間減圧乾燥した。白色粉末状固体として目的とする本発明のポリ(チオ)エステル共重合体373g(収率97%)を得た。GPC分析法による質量平均分子量は7.6×10 であった。
【0395】
得られたポリ(チオ)エステル共重合体の1質量%重水素化クロロホルム溶液のH−NMR(400MHz)を測定した結果を下記に示した。
H−NMR δ(CDCl ):
0.74〜0.88(m,6H)、〜3.22(m,24H)、3.41〜3.54(m、4H)、4.92〜5.32(m,2H)、7.15〜8.72(m,8H)
【0396】
上記H−NMR測定の結果から、式(1−A−7)で表される繰り返し構造単位中の1,4−ジチアン環の2位および5位に結合しているチオメチル基の水素と、式(1−B−5)で表される繰り返し構造単位中のシクロヘキサン環上で酸素原子で置換されている4位のメチン水素とのプロトン積分比を求めることにより、得られたポリ(チオ)エステル共重合体中の下記式(1−A−7)で表される繰り返し構造単位と、下記式(1−B−5)で表される繰り返し構造単位とのモル比は50:50であることが確認された。
【0397】
【化109】
Figure 0003560955
【0398】
前記方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は170℃を示した。溶融流動開始温度は230℃であり、溶融粘度は、270℃で1250Pa・s(12500ポイズ)であった。屈折率(nd)1.613、アッベ数(νd)36であり、比較的高屈折率であって、かつ、高アッベ数であった。また、複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0399】
実施例31
実施例30において、テレフタル酸クロリド209.0g(1モル)を使用する代わりに、イソフタル酸クロリド209.0g(1モル)を使用する以外は、実施例1と同様にして行い、白色粉末状固体として目的とする本発明のポリ(チオ)エステル共重合体377g(収率98%)を得た。は、GPC分析の標準ポリスチレン換算で質量平均分子量7.0万であり、H−NMR測定の結果から得られたポリ(チオ)エステル共重合体中の前記式(1−A−8)で表される繰り返し構造単位と、前記式(1−B−6)で表される繰り返し構造単位とのモル比は50:50であった。
【0400】
【化110】
Figure 0003560955
【0401】
前記方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は124℃であった。溶融流動開始温度は170℃であり、溶融粘度は260℃で1150Pa・s(11500ポイズ)を示した。屈折率(nd)1.609、アッベ数(νd)36であり、高屈折率であって、かつ、高アッベ数であった。また、複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0402】
実施例32[実施例30で得られたポリ(チオ)エステル共重合体を含有してなる樹脂組成物の製造]
実施例30で製造したポリ(チオ)エステル共重合体100質量部、トリス(2,4−ジ−tert―ブチルフェニル)ホスファイト0.1質量部およびペンタエリスチリル[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.1質量部を、ヘンシェルミキサーにて混合した後、単軸押出機(65mm)にてシリンダー温度220℃で脱気しながら溶融混練して、押し出しペレット化して、無色透明ペレットの光学部品用成形材料(樹脂組成物)を得た。
【0403】
実施例33[本発明の光学部品の製造]
上記実施例32で得られた成形材料を用いて射出成形によりレンズ形状の成形品を製造した。すなわち、該成形材料のペレットを100℃で24時間減圧乾燥した後、射出成形機にて、成形温度250℃、金型温度80℃で射出成形して、無色透明、プラスレンズ(凸レンズ;直径75mm、中心厚4.2mm、コバ厚1.0mm、+2.00D)形状の成形体を得た。この成形体を偏光板の間において観察したところ、脈理、歪みなどは観察されず、複屈折の低い光学的に均質なものであった。このように本発明の成形材料を使用することにより、汎用ポリカーボネートと比較して低い温度(250℃)で成形が可能で、かつ、光学的に均質な成形品を好適に製造することができた。また、こうして得られた本発明のプラスチックレンズは、透明性、機械物性、耐候性(耐熱性、耐湿性、耐光性など)等の諸物性面で、実用上、良好な特性を示した。
【0404】
実施例34[本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の製造および物性測定]
撹拌装置、還流冷却管、温度計を設けた内容量2リットルのフラスコに、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン 155.1g(0.73モル)、1,4−シクロヘキサンジオール 84.8(0.73モル)およびo−ジクロルベンゼン 440gを秤取し、窒素雰囲気下、80℃で攪拌して溶解させた。一方、前記式(3−1)で表されるテレフタル酸クロリド293.57g(1.446モル)を95〜100℃で1時間30分を要して滴下した後、窒素気流下で副生する塩化水素を反応系外へ除去しながら、105℃で3時間反応させ、質量平均分子量4.1×10となったところで、o−ジクロルベンゼン30gを追加した。引き続き140℃で5時間反応させた後、o−ジクロルベンゼン 40gを追加し、さらに160℃で2時間反応させてGPC分析したところ、質量平均分子量は7.8×10であった。この後、分子量調節剤(末端停止剤)として安息香酸クロリド3.5g(0.0248モル)を添加し、同温度で1時間反応させた。反応溶液を室温まで放冷した後、クロロホルム3000gを加えて溶解させて得られた溶液を2回に分けて、それぞれ10リットル容量のホモジナイザー中の貧溶媒(メタノール)に対して滴下して、析出したポリマーを濾過して集め、80℃で20時間減圧乾燥した。白色粉末状固体として目的とする本発明のポリ(チオ)エステル共重合体 417.2g(収率98%)を得た。GPC分析法による質量平均分子量は7.9×10であった。
【0405】
得られたポリ(チオ)エステル共重合体の1質量%重水素化クロロホルム溶液のH−NMR(400MHz)を測定した結果を下記に示した。
H−NMR δ(CDCl ):
1.62〜2.22(m,8H)、2.86〜3.38(m、6H)、3.41〜3.54(m,4H),5.20(s,2H),7.18〜8.76(m,8H)
【0406】
上記H−NMR測定の結果から、式(1−A−7)で表される繰り返し構造単位中の1,4−ジチアン環の2位および5位に結合しているチオメチル基の水素と、式(1−B−7)で表される繰り返し構造単位中のシクロヘキサン環上で酸素原子で置換されている4位のメチン水素とのプロトン積分比を求めることにより、得られたポリ(チオ)エステル共重合体中の下記式(1−A−7)で表される繰り返し構造単位と、下記式(1−B−7)で表される繰り返し構造単位とのモル比は50:50であることが確認された。
【0407】
【化111】
Figure 0003560955
【0408】
前記方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行い、ガラス転移温度(Tg)は150℃を示した。溶融流動開始温度は240℃であり、溶融粘度は、260℃で1200Pa・s(12000ポイズ)であった。屈折率(nd)1.640、アッベ数(νd)33であり、比較的高屈折率であって、かつ、高アッベ数であった。また、複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0409】
実施例35
実施例34において、テレフタル酸クロリド 293.57g(1.446モル)を使用する代わりに、イソフタル酸クロリド 293.57g(1.446モル)を使用する以外は、実施例34と同様にして行った。
【0410】
得られたポリ(チオ)エステル共重合体は、GPC分析の標準ポリスチレン換算で質量平均分子量6.0万であり、H−NMR測定の結果から得られたポリ(チオ)エステル共重合体中の下記式(1−A−8)で表される繰り返し構造単位と、下記式(1−B−8)で表される繰り返し構造単位とのモル比は50:50であった。
【0411】
【化112】
Figure 0003560955
【0412】
前記方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は117℃であった。溶融流動開始温度は215℃であり、溶融粘度は250℃で1050Pa・s(10500ポイズ)を示した。屈折率(nd)1.639、アッベ数(νd)33であり、高屈折率であって、かつ、高アッベ数であった。また、複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0413】
実施例36[実施例34で得られたポリ(チオ)エステル共重合体を含有してなる樹脂組成物の製造]
実施例34で製造したポリ(チオ)エステル共重合体100質量部、トリス(2,4−ジ−tert―ブチルフェニル)ホスファイト0.1質量部およびペンタエリスチリル[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.1質量部を、ヘンシェルミキサーにて混合した後、単軸押出機(65mm)にてシリンダー温度220℃で脱気しながら溶融混練して、押し出しペレット化して、無色透明ペレットの光学部品用成形材料(樹脂組成物)を得た。
【0414】
実施例37[本発明の光学部品の製造]
上記実施例36で得られた成形材料を用いて射出成形によりレンズ形状の成形品を製造した。すなわち、該成形材料のペレットを100℃で24時間減圧乾燥した後、射出成形機にて、成形温度250℃、金型温度80℃で射出成形して、無色透明、プラスレンズ(凸レンズ;直径75mm、中心厚4.2mm、コバ厚1.0mm、+2.00D)形状の成形体を得た。この成形体を偏光板の間において観察したところ、脈理、歪みなどは観察されず、複屈折の低い光学的に均質なものであった。このように本発明の成形材料を使用することにより、汎用ポリカーボネートと比較して低い温度(250℃)で成形が可能で、かつ、光学的に均質な成形品を好適に製造することができた。また、こうして得られた本発明のプラスチックレンズは、透明性、機械物性、耐候性(耐熱性、耐湿性、耐光性など)等の諸物性面で、実用上、良好な特性を示した。
【0415】
〔ポリ(チオ)エステル共重合体(三元)の製造〕
実施例38[本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の製造および物性測定]
撹拌装置、還流冷却管、温度計を設けた内容量2リットルのフラスコに、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン 84.9g(0.40モル)、1,4−シクロヘキサンジオール 58.1g(0.50モル)、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン 29.0g(0.10モル)および混合キシレン 280gを秤取し、窒素雰囲気下90℃で攪拌して溶解させた。一方、前記式(3−1)で表されるノルボルナンジカルボン酸クロリド(異性体混合物)223.3g(1.01モル)を90〜95℃で1時間15分を要して滴下した後、窒素気流下で副生する塩化水素を反応系外へ除去しながら、130℃で6時間反応させた後、GPC分析を行ったところ、質量平均分子量は8.8×10であった。この後、分子量調節剤(末端停止剤)としてp−tert−ブチルフェノール 4.5g(0.03モル;全てのジヒドロキシ化合物の総モル数に対して3モル%)を添加し100℃で1時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却した後、混合キシレン2000gを加えて溶解させて得られたポリチオエステル重合体のキシレン溶液を2回に分けて、それぞれ10リットル容量のホモジナイザーを用いてメタノール3500g対して滴下して、ポリマーを微粒状固体として析出させた。白色粉末状固体として生成物のポリ(チオ)エステル共重合体 315.0g(収率98%)を得た。GPC分析の結果、得られたポリ(チオ)エステル共重合体の質量平均分子量は8.7×10であった。
【0416】
得られたポリ(チオ)エステル共重合体の1質量%重水素化クロロホルム溶液のH−NMR(400MHz)を測定した結果により、得られたポリ(チオ)エステル共重合体中の下記式(1−A−3)で表される繰り返し構造単位、下記式(1−B−1)で表される繰り返し構造単位、ならびに、下記式(1−C−1)とのモル比は40:50:10であることが確認された。
【0417】
【化113】
Figure 0003560955
【0418】
前記方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行い、ガラス転移温度(Tg)は136℃を示した。溶融流動開始温度は205℃であり、溶融粘度は、240℃で6.3×10 Pa・s(6.3×10ポイズ)であった。屈折率(nd)1.578、アッベ数(νd)41.6であり、汎用ポリカーボネートと比較して高アッベ数であった。また複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0419】
実施例39
実施例38において、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン 29.0g(0.10モル)を使用する代わりに、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン 22.8g(0.10モル)を使用する以外は、実施例38と同様にして行った。得られたポリ(チオ)エステル共重合体は、GPC分析の標準ポリスチレン換算で質量平均分子量8.0×10であり、H−NMR測定の結果、得られたポリ(チオ)エステル共重合体中の上記式(1−A−3)で表される繰り返し構造単位、上記式(1−B−1)で表される繰り返し構造単位、ならびに、下記式(1−C−2)で表される繰り返し構造単位のモル比は40:50:10であった。
【0420】
【化114】
Figure 0003560955
【0421】
前記方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は126℃であった。溶融流動開始温度は200℃であり、溶融粘度は230℃で1.8×10Pa・s(1.8×10ポイズ)を示した。屈折率(nd)1.570、アッベ数(νd)45.3であり、複屈折率は非常に低かった。
【0422】
実施例40
実施例38において、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン 29.0g(0.10モル)を使用する代わりに、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン 34.6g(0.10モル)を使用する以外は、実施例38と同様にして行った。得られたポリ(チオ)エステル共重合体は、GPC分析の標準ポリスチレン換算で質量平均分子量7.8×10であり、H−NMR測定の結果、得られたポリ(チオ)エステル共重合体中の上記式(1−A−3)で表される繰り返し構造単位、上記式(1−B−1)で表される繰り返し構造単位、ならびに、下記式(1−C−3)で表される繰り返し構造単位のモル比は40:50:10であった。
【0423】
【化115】
Figure 0003560955
【0424】
前記方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は138℃であった。屈折率(nd)1.572、アッベ数(νd)45.3であり、複屈折率は非常に低かった。
【0425】
実施例41[実施例38で得られたポリ(チオ)エステル共重合体からなる本発明の光学部品用成形材料の製造]
実施例38で製造したポリチオエステル共重合体100質量部、トリス(2,4−ジ−tert―ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:「イルガフォス618」、チバスペシャルティケミカルズ製)0.2質量部およびオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:「イルガノックス1076」、チバスペシャルティケミカルズ製)0.2質量部を、ヘンシェルミキサーにて混合した後、単軸押出機(65mm)にてシリンダー温度220℃で脱気しながら溶融混練および押出しペレット化を行い、無色透明ペレットの光学部品用成形材料(樹脂組成物)を得た。
【0426】
実施例42[光学部品(プラスチックレンズ)の製造]
上記実施例41で得られた成形材料(樹脂組成物)を用いて射出成形によりレンズ形状の成形品を製造した。すなわち、該成形材料のペレットを80℃で24時間減圧乾燥した後、射出成形機にて、成形温度230℃、金型温度110℃で射出成形して、無色透明、プラスレンズ(凸レンズ;直径75mm、中心厚4.2mm、コバ厚1.0mm、+2.00D)形状の成形体を得た。この成形体を偏光板の間において観察したところ、脈理、歪みなどは観察されず、複屈折が低く光学的に均質なものであった。このように本発明の成形材料を使用することにより、比較的低温(230℃)で成形が可能で、かつ、光学的に均質な成形品を好適に製造することができた。また、こうして得られた本発明のプラスチックレンズは、透明性、機械的特性(耐衝撃性、引っ張り強度、曲げ強度など)、熱的特性(熱変形温度など)、耐光性等の諸物性面で良好な特性を示した。
【0427】
比較例1(公知のポリメチルメタクリレートを用いた物性測定および光学部品の製造)
公知のポリメチルメタクリレート樹脂(一般光学用グレード)を用いて上記方法に従って、物性測定を行った。ガラス転移温度(Tg)は111℃であり、屈折率(nd)1.487、アッベ数(νd)54であり、複屈折率は1×10−4以下であった。
【0428】
比較例2(公知のポリカーボネートを用いた物性測定)
公知のポリカーボネート樹脂(光学ディスク用グレード;質量平均分子量3万)を用いて上記方法に従って、物性測定を行った。ガラス転移温度(Tg)は130℃であり、屈折率(nd)1.580、アッベ数(νd)30であった。複屈折率は70×10−4であり、高い値であった。
【0429】
【発明の効果】
本発明のポリ(チオ)エステル(共)重合体を成形して得られる光学部品は、従来公知の各種光学用樹脂のそれと比較して、透明性、機械的特性(例えば、耐衝撃性など)、熱的特性が良好であり、且つ、高屈折率、低色収差(高アッベ数)、低複屈折率である。また、溶融流動性、成形加工性が良好であり、視力矯正用眼鏡レンズ(眼鏡レンズ)、ピックアップレンズ、撮影機器、複写機器用光学レンズなどを代表例とするプラスチック光学用レンズ等の各種光学部品用成形材料として有用である。

Claims (24)

  1. 式(1−A)で表される繰り返し構造単位を必須構造単位として含有してなるポリ(チオ)エステル(共)重合体。
    Figure 0003560955
    [式中、R11は環状アルキレン基、もしくは、スルフィド基の硫黄原子を少なくとも1個以上含む鎖状、環状またはこれらを組み合てなるアルキレン基を表し、R12は単環状または多環状脂肪族ジカルボン酸残基を表し、X11およびX12はそれぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表し、但し、X11およびX12が酸素原子の場合、R11はスルフィド基の硫黄原子を少なくとも1個以上含む鎖状、環状またはこれらを組み合てなるアルキレン基を表す。]
  2. 式(1−A)におけるR12
    Figure 0003560955
    で表される基のいずれかである請求項記載のポリ(チオ)エステル(共)重合体。
  3. 式(1−A)におけるR11が、スルフィド基の硫黄原子を少なくとも1個以上含む鎖状、環状またはこれらを組み合てなるアルキレン基である、請求項1又は2に記載のポリ(チオ)エステル(共)重合体。
  4. 式(1−A)におけるR11
    Figure 0003560955
    (式中、kは1〜4の整数を表し、lは0〜3の整数を表し、R13およびR14は水素原子またはアルキル基を表す)で表される基のいずれかである請求項に記載のポリ(チオ)エステル(共)重合体。
  5. 式(1−A)において、R12
    Figure 0003560955
    で表される基のいずれかであり、R11
    Figure 0003560955
    (式中、kは1〜4の整数を表し、lは0〜3の整数を表し、R13およびR14は水素原子またはアルキル基を表す)で表される基のいずれかであり、X11およびX12が硫黄原子である請求項に記載のポリ(チオ)エステル(共)重合体。
  6. 式(1−A)で表される繰り返し構造単位を必須構造単位として含有してなるポリ(チオ)エステル(共)重合体。
    Figure 0003560955
    [式中、R 11
    Figure 0003560955
    (式中、kは1〜4の整数を表し、lは0〜3の整数を表し、R 13 およびR 14 は水素原子またはアルキル基を表す)で表される基のいずれかであり、R 12 は芳香族ジカルボン酸残基を表し、X 11 およびX 12 はそれぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表す。]
  7. 式(1−A)において、R 12
    Figure 0003560955
    で表される基であり、R 11
    Figure 0003560955
    (式中、kは1〜4の整数を表し、lは0〜3の整数を表し、R 13 およびR 14 は水素原子またはアルキル基を表す)で表される基のいずれかであり、X 11 およびX 12 が硫黄原子である請求項6記載のポリ(チオ)エステル(共)重合体。
  8. 式(1−A)で表される繰り返し構造単位と、式(1−B)で表される繰り返し構造単位とを含有してなるポリ(チオ)エステル共重合体。
    Figure 0003560955
    [式中、R 11 は環状アルキレン基、もしくは、スルフィド基の硫黄原子を少なくとも1個以上含む鎖状、環状またはこれらを組み合てなるアルキレン基を表し、R 12 は単環状または多環状脂肪族ジカルボン酸残基、あるいは、芳香族ジカルボン酸残基を表し、X 11 およびX 12 はそれぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表し、但し、X 11 およびX 12 が酸素原子の場合、R 11 はスルフィド基の硫黄原子を少なくとも1個以上含む鎖状、環状またはこれらを組み合てなるアルキレン基を表す。]
    Figure 0003560955
    (式中、R 15 は二価の環状脂肪族炭化水素基を表し、R 16 は環状脂肪族ジカルボン酸残基または芳香族ジカルボン酸残基を表す)
  9. 式(1−A)におけるR 12 が単環状または多環状脂肪族ジカルボン酸残基である請求項8記載のポリ(チオ)エステル共重合体。
  10. 式(1−A)におけるR 12
    Figure 0003560955
    で表される基のいずれかである請求項9記載のポリ(チオ)エステル共重合体。
  11. 式(1−A)におけるR 11 が、スルフィド基の硫黄原子を少なくとも1個以上含む鎖状、環状またはこれらを組み合てなるアルキレン基である、請求項8乃至10の何れかに記載のポリ(チオ)エステル共重合体。
  12. 式(1−A)におけるR 11
    Figure 0003560955
    (式中、kは1〜4の整数を表し、lは0〜3の整数を表し、R 13 およびR 14 は水素原子またはアルキル基を表す)で表される基のいずれかである請求項11に記載のポリ(チオ)エステル共重合体。
  13. 式(1−A)において、R 12
    Figure 0003560955
    で表される基のいずれかであり、R 11
    Figure 0003560955
    (式中、kは1〜4の整数を表し、lは0〜3の整数を表し、R 13 およびR 14 は水素原子またはアルキル基を表す)で表される基のいずれかであり、X 11 およびX 12 が硫黄原子である請求項12に記載のポリ(チオ)エステル共重合体。
  14. 式(1−A)において、R 12
    Figure 0003560955
    で表される基であり、R 11
    Figure 0003560955
    (式中、kは1〜4の整数を表し、lは0〜3の整数を表し、R 13 およびR 14 は水素原子またはアルキル基を表す)で表される基のいずれかであり、X 11 およびX 12 が硫黄原子である請求項8に記載のポリ(チオ)エステル共重合体。
  15. 式(2−A)および式(2−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなる請求項8のポリ(チオ)エステル共重合体。
    Figure 0003560955
    (式中、R 21 はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R 22 はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、nはそれぞれ0〜4の整数を表す)
  16. 式(2−A)および式(3−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなる請求項8のポリ(チオ)エステル共重合体。
    Figure 0003560955
    (式中、R 21 はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R 23 はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、pはそれぞれ0〜4の整数を表す)
  17. 式(3−A)および式(4−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなる請求項8のポリ(チオ)エステル共重合体。
    Figure 0003560955
    (式中、R 21 はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、 R 22 はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、nはそれぞれ0〜4の整数を表す)
  18. 式(3−A)および式(5−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなる請求項8のポリ(チオ)エステル共重合体。
    Figure 0003560955
    (式中、R 21 はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R 23 はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、pはそれぞれ0〜4の整数を表す)
  19. 式(4−A)および式(6−B)で表される繰り返し構造単位を含有してなる請求項8のポリ(チオ)エステル共重合体。
    Figure 0003560955
    (式中、R 21 はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R 22 はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、nはそれぞれ0〜4の整数を表す)
  20. 式(4−A)および式(7−B)で表される繰り返し構造単位を含 有してなる請求項8のポリ(チオ)エステル共重合体。
    Figure 0003560955
    (式中、R 21 はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R 23 はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、mはそれぞれ0〜3の整数を表し、pはそれぞれ0〜4の整数を表す)
  21. ポリ(チオ)エステル共重合体が、さらに式(1−C)で表される繰り返し構造単位を含有してなる共重合体である請求項8乃至20の何れか1項に記載のポリ(チオ)エステル共重合体。
    Figure 0003560955
    (式中、R 17 は二価の芳香族炭化水素基を表し、R 18 は環状脂肪族ジカルボン酸残基または芳香族ジカルボン酸残基を表す)
  22. 請求項1乃至7の何れか1項に記載のポリ(チオ)エステル(共)重合体、又は請求項8乃至21の何れか1項に記載のポリ(チオ)エステル共重合体を含有してなる樹脂組成物。
  23. 請求項1乃至7の何れか1項に記載のポリ(チオ)エステル(共)重合体、又は請求項8乃至21の何れか1項に記載のポリ(チオ)エステル共重合体からなる光学部品。
  24. 請求項22記載の樹脂組成物を成形して得られる光学部品。
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