JP3789379B2 - 含硫ジアセテート化合物および該化合物を用いたジヒドロキシ化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環状内に硫黄原子を有する新規なジアセテート化合物、及びこの化合物を加水分解することを特徴とするジヒドロキシ化合物の製造方法、並びにこれを含む特定の繰り返し単位を含有してなるポリマー、該重合体からなる光学部品用樹脂組成物、並びにこれらを成形して得られる光学部品に関する。
本発明の新規なジアセテート化合物を原料とすることにより、簡便で高収率かつ高純度なジヒドロキシ化合物を製造することが出来る。また、得られるジヒドロキシ体を含有してなる(共)重合体は、透明性、機械物性、耐熱性等が良好であり、かつ低色収差(高アッベ数)、低複屈折率であり、さらには溶融流動性に富み成形加工性が良好であって、視力矯正用眼鏡レンズ、ピックアップレンズなどを代表とするプラスチック光学レンズ、情報記録用光ディスク基板、液晶セル用プラスチック基板、プリズム、光ファイバー、光導波路などの各種光学部品用の樹脂組成物として有用である。
【0002】
【従来の技術】
無機ガラスは、透明性に優れ、光学異方性が小さいなどの諸物性に優れていることから、透明性光学材料として広い分野で使用されている。しかしながら、重くて破損しやすいこと、生産性が悪い等の問題があり、近年、無機ガラスに代わる光学用樹脂の開発が盛んに行われている。
光学用樹脂として基本的に最も重要な特性の一つは透明性である。現在までに透明性の良好な光学用樹脂として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ビスフェノールAポリカーボネート(BPA−PC)、ポリスチレン(PS)、メチルメタクリレート−スチレン共重合ポリマー(MS)、スチレン−アクリロニトリル共重合ポリマー(SAN)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)(TPX)、ポリシクロオレフィン(COP)、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート(EGAC)、ポリチオウレタン(PTU)などが知られている。
【0003】
PMMAは透明性、耐候性に優れ、かつ成形性も良好であり、代表的な光学用樹脂のひとつとして広く用いられている。しかしながら、屈折率(nd)が1.49と比較的低く、吸水性が大きいという欠点を有している。
BPA−PCは、透明性、耐熱性、耐衝撃性に優れ、比較的高屈折率(nd=1.59)であり、情報記録用光ディスク基板を代表とする光学用途において用いられているが、色収差(屈折率分散)、複屈折が比較的大きく、また溶融粘度が高く成形性に乏しい等の欠点を有していることから、光学用樹脂としての利用分野が限定されている。
PS及びMSは成形性、透明性、低吸水性および高屈折性に優れるものの、耐衝撃性、耐候性および耐熱性に劣る欠点を有しているため、光学用樹脂として殆ど実用化されていない。また、SANは比較的屈折率が高く、機械的物性もバランスがよいとされているが、耐熱性にやや難があり(熱変形温度:80〜90℃)、同様に光学樹脂として殆ど使用されていない。
TPX、及びCOPは、透明性、低吸水性、耐熱性に優れるものの、低屈折率(nd=1.49〜1.53)であり、また耐衝撃性、ガスバリヤー性、染色性が悪いという問題点を有している。
EGACは、モノマーであるジエチレングリコールビスアリルカーボネートを重合して得られる熱硬化性樹脂であり、一般汎用の眼鏡レンズ用途には最も多く使用されている。透明性、耐熱性が良好であり、色収差が極めて小さいといった特徴を有しているものの、屈折率が低く(nd=1.50)、耐衝撃性にやや劣るという欠点がある。
PTUは、ジイソシアネート化合物とポリチオール化合物との反応で得られる熱硬化性樹脂であり、高屈折のプラスチック眼鏡レンズ用途において、現在最もおおく使用されている。透明性、耐衝撃性に特に優れ、かつ高屈折率であって、色収差も比較的小さく、極めて優れた光学用樹脂である。しかしながら、唯一、眼鏡レンズを製造する工程において熱重合成形時間に長時間(1〜3日)を要する欠点があり、生産性の面で課題を残している。
【0004】
代表的な光学用樹脂の一つである上記ビスフェノールAポリカーボネート(BPA−PC、以下、汎用ポリカーボネートと称する)に見られた前記欠点を改良し、かつ、射出成形加工により短時間で高品質な光学部品を得る目的で、新規なポリカーボネート系の熱可塑性光学用樹脂が提案されている。例えば、脂環式系ジヒドロキシ化合物から誘導される繰り返し構造単位を有する脂環系ポリカーボネート共重合体などのポリマーが比較的低色収差(高アッベ数)、低複屈折性であることが開示されており、光学用途での利用が提案されている(例えば、特開昭64−66234号公報、特開平1−223119号公報など)。これらの方法によれば、射出成形法を用いた短時間での光学部品の成形加工、製造が可能となり、かつ、得られた光学部品は高アッベ数であるか、或いは、複屈折率が比較的低いなどの特徴を有しているものの、光学部品として実用上、十分満足されるものとは言い難かった。即ち、例えば、眼鏡レンズとして用いた場合、屈折率がやや低く、耐熱性も十分であるとは言い難い等、いくつかの実用上の問題点を残していた。
【0005】
以上のように、従来の光学用樹脂は用途に応じてその特徴を考慮して使用されているものの、それぞれに克服するべき欠点、問題点を有しているのが現状である。このような状況下にあって、光学特性に優れ(透明性、高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、機械的特性、熱的特性が良好であり、かつ、溶融流動性に優れ、生産性が良好な新規な熱可塑性光学用樹脂の開発が切望されているのが現状である。
【0006】
また、一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物の製法として、2,6−ジクロルチアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタンを加水分解して2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタンを得る方法が知られているが(例えば、Journal of Organic Chemistry、vol.34 p3998〜 p4002 (1968)など)、重合物が副生するため、収率は極めて低く(24%)、工業的製法として適しているとはいい難い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、良好な光学物性、特に高い屈折率を有し、かつ成形性に優れ、射出成形が可能な熱可塑性樹脂を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、これらの課題を解決するために鋭意検討を行った結果、新たなジアセテート化合物ならびに該化合物を用いた2官能のジヒドロキシ化合物の効率的な製造方法を見出した。
かかるジアセテート化合物は、容易に2官能のジヒドロキシ化合物に誘導でき、さらに、誘導されたジヒドロキシ化合物を含む(共)重合体は優れた物性を有しているため、上記課題を一挙に解決するに至った。
即ち、本発明は、一般式(1)で表される環状内に硫黄原子を有する新規なジアセテート化合物、と該化合物より誘導されるジヒドロキシ化合物の製造方法、並びに該化合物の構造を繰り返し構造単位に有する(共)重合体及びその用途(光学部品用樹脂組成物、光学部品)に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1)(化4)で表される化合物は、環状内に硫黄原子を有する新規なジアセテート化合物である。
【0010】
【化4】
【0011】
(式中、R1からR4のうち、いずれか二つが互いに結合してスルフィド基を形成し、かつ他の二つはアセトキシ基を示し、R5からR8はそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基を示す)
具体的には、一般式(1)において、R3とR4が互いに結合してスルフィド基を形成し、R1、R2がアセトキシ基である式(5)(化5)化合物 2,6−ビス(アセトキシ)−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタンをはじめ、式(6)(化6)で表される化合物 2,5−ビス(アセトキシ)−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,6] オクタンや、式(7)(化7)で表される化合物 5,6−ビス(アセトキシ)−8−チアトリシクロ[2.2.1.12,3] オクタン(化8)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
【化5】
【0013】
【化6】
【0014】
【化7】
【0015】
該ジアセテート化合物には、上述したようなトリシクロ環に結合した二つのアセトキシル基についての位置異性体の他に、立体異性体(シス体またはトランス体)が存在し、さらにはexo体またはendo体の立体異性体が存在するが、本発明の一般式(1)で表されるジアセテート化合物には、これらいずれの異性体も含まれる。
一般式(1)で表されるジアセテート化合物は、一般式(8)(化8)
【0016】
【化8】
【0017】
(式中、R1からR4のうち、いずれか二つが互いに結合してスルフィド基を形成し、かつ他の二つはフルオロ基、クロル基、ブロム基、ヨード基のいずれかを示し、R5からR8はそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基を示す)で表されるジハロゲノ化合物を、プロトン性極性溶媒中において酢酸塩と反応させることにより得られる。かかる反応において使用されるプロトン性極性溶媒としては、具体的には、酢酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられられる。酢酸塩としては、酢酸銀、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
得られた一般式(1)で表されるジアセテート化合物を用い、プロトン性極性溶媒中、アルカリ金属またはアルカリ金属塩を使用して加水分解することにより、一般式(2)(化9)で表されるジヒドロキシ化合物が得られる。
【0019】
【化9】
【0020】
(式中、R1からR4のうち、いずれか二つが互いに結合してスルフィド基を形成し、かつ他の二つはヒドロキシ基を示し、R5からR8はそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基を示す)
かかる加水分解反応において使用するプロトン性極性溶媒としては、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノールなどが挙げられる。アルカリ金属、アルカリ金属塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が使用できるが、通常のアルカリ加水分解で使用される条件であれば、一向に差し支えない。
【0021】
一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物を用いて得られる(共)重合体としては、一般式(3)(化10)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリカーボネート(共)重合体、一般式(4)(化11)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリエステル共重合体が挙げられる。
【0022】
【化10】
【0023】
(式中Aは、脂環式炭化水素基、芳香族基、縮合多環式芳香族基、或いは芳香族基が直接または架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基を示し、mは0〜4の整数、nは1〜4の整数を示す)
【0024】
【化11】
【0025】
(式中Bは、脂環式炭化水素基、芳香族基、縮合多環式芳香族基、或いは芳香族基が直接または架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基を示す)
一般式(2)におけるAならびに一般式(3)におけるBは、脂環式炭化水素基、芳香族基、縮合多環式芳香族基、或いは芳香族基が直接または架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基を示す。ここで、一般式(2)におけるAは、組み合わされる2官能の水酸基を有する化合物から誘導され、一般式(3)におけるBは、組み合わされる2官能のカルボン酸化合物から誘導される。
【0026】
ポリカーボネート(共)重合体は、公知の各種ポリカーボネート重合方法〔例えば、実験化学講座第4版、(28)高分子合成、231〜242頁、丸善出版(1988年)に記載の方法で、例えば、溶液重合法、エステル交換法または界面重合法など〕により製造が可能であるが、代表的には、一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物を単独、或いは2官能の水酸基を有する化合物と併用してホスゲン化することにより得られる。
【0027】
また、本発明のポリエステル共重合体は、反応それ自体は公知の各種ポリエステル重合方法[例えば、実験化学講座第4版 (28巻)高分子合成、217〜231頁、丸善出版(1988年)に記載の方法など]に従って、好適に製造される。すなわち、例えば、ジカルボン酸クロリド等を用いる溶融重合法、溶液重合法、界面重合法、エステル交換法、直接重合法などの方法により製造される。
【0028】
それぞれの(共)重合体の製造において、併用する2官能の水酸基を有する化合物としては、芳香族ジヒドロキシ化合物、脂肪族ジヒドロキシ化合物などが挙げられる。
かかる芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、これらに限定されるものではないが、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルメタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2-(4'−ヒドロキシフェニル)-2-(3'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-3−メチルブタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) ペンタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) ヘキサン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) ヘプタン、4,4-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) ヘプタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) トリデカン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(3'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−エチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−n−プロピル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−イソプロピル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−sec−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−シクロヘキシル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−アリル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−メトキシ−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3',5'-ジメチル−4'−ヒドロキシフェニル) プロパン、2,2-ビス(2',3',5',6'-テトラメチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シアノメタン、1-シアノ-3,3−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1-ビス(3'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3',5'-ジメチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3',5'-ジクロロ−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサン、1,1-ビス (4'−ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)アダマンタン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
【0029】
4,4'- ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'- ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(ヒドロキシアリール)エーテル類;
4,4'- ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3'−ジシクロヘキシル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3'−ジフェニル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のビス(ヒドロキシアリール)スルフィド類;
4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド等のビス(ヒドロキシアリール)スルホキシド類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'- ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルスルホン等のビス(ヒドロキシアリール)スルホン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ケトン等のビス(ヒドロキシアリール)ケトン類;
さらには、7,7'−ジヒドロキシ−3,3',4,4'-テトラヒドロ−4,4,4',4'-テトラメチル-2,2'-スピロビ(2H−1−ベンゾピラン)、トランス-2,3- ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-2- ブテン、9,9-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)フルオレン、3,3-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-2- ブタノン、1,6-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-1,6- ヘキサンジオン、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン等が挙げられる。
【0030】
また、かかる脂肪族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、これらに限定されるものではないが、1,2−ジヒドロキシエタン、1,3−ジヒドロキシプロパン、1,4−ジヒドロキシブタン、1,5−ジヒドロキシペンタン、3−メチル−1,5−ジヒドロキシペンタン、1,6−ジヒドロキシヘキサン、1,7−ジヒドロキシヘプタン、1,8−ジヒドロキシオクタン、1,9−ジヒドロキシノナン、1,10−ジヒドロキシデカン、1,11−ジヒドロキシウンデカン、1,12−ジヒドロキシドデカン、ジヒドロキシネオペンチル、2−エチル−1,2−ジヒドロキシヘキサン、2−メチル−1,3−ジヒドロキシプロパン等の鎖状脂肪族ジヒドロキシ化合物;
1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール等の環状脂肪族ジヒドロキシ化合物;
o−ジヒドロキシキシリレン、m−ジヒドロキシキシリレン、p−ジヒドロキシキシリレン、1,4−ビス(2’−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−ビス(3’−ヒドロキシプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(4’−ヒドロキシブチル)ベンゼン、1,4−ビス(5’−ヒドロキシペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(6’−ヒドロキシヘキシル)ベンゼン、2,2−ビス〔4’−(2”−ヒドロキシエチルオキシ)フェニル〕プロパン等の芳香族基を含む脂肪族ジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
【0031】
なかでも、一般式(2)におけるAを誘導する好ましい2官能の水酸基を有する化合物としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)エタン、2-(4'−ヒドロキシフェニル)-2-(3'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(2',3',5',6'-テトラメチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1-ビス(3'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3',5'-ジメチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサン、1,1-ビス (4'−ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)アダマンタン4,4'- ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'- ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、7,7'−ジヒドロキシ−3,3',4,4'-テトラヒドロ−4,4,4',4'-テトラメチル-2,2'-スピロビ(2H−1−ベンゾピラン)、9,9-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、1,2−ジヒドロキシエタン、1,3−ジヒドロキシプロパン、1,4−ジヒドロキシブタン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、o−ジヒドロキシキシリレン、m−ジヒドロキシキシリレン、p−ジヒドロキシキシリレン、2,2−ビス〔4’−(2”−ヒドロキシエチルオキシ)フェニル〕プロパン等であり、更に好ましくはビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1-ビス(3',5'-ジメチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、4,4'- ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、9,9-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)フルオレン、ハイドロキノン、レゾルシン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、o−ジヒドロキシキシリレン、m−ジヒドロキシキシリレン、p−ジヒドロキシキシリレンである。
【0032】
また、一般式(4)で表されるポリエステル共重合体の製造において使用される2官能のジカルボン酸化合物としては、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが使用される。
該脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の鎖状脂肪族ジカルボン酸化合物;
シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、ノルボルネン−2,5−ジカルボン酸、ノルボルネン−2,6−ジカルボン酸、アダマンテン−1,3−ジカルボン酸等の環状脂肪族ジカルボン酸化合物等が挙げられる。
【0033】
該芳香族ジカルボン酸の具体例としてはテレフタル酸、イソフタル酸等、フタル酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−1,8−ジカルボン酸、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
なかでも、一般式(3)におけるBを誘導する好ましい2官能のカルボン酸化合物としては、マロン酸、コハク酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、ノルボルネン−2,5−ジカルボン酸、ノルボルネン−2,6−ジカルボン酸、アダマンテン−1,3−ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等であり、更に好ましくは、マロン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、ノルボルネン−2,5−ジカルボン酸、ノルボルネン−2,6−ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸である。
【0035】
本発明の(共)重合体は、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、製造時あるいは成形時に、さらに公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤(例えば、リン原子含有化合物、フェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、硫黄原子含有化合物など)、紫外線吸収剤、離型剤(例えば、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル類など)、滑剤、難燃剤(例えば、有機ハロゲン系化合物など)、染料、流動性改良剤、熱安定剤(例えば、硫黄原子含有化合物など)等を併せて添加して使用してもよい。
また本発明の(共)重合体に、例えば、帯電防止剤、充填剤(例えば、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維など)等を添加して、光学部品以外の各種成形用材料としても使用してもよい。
【0036】
本発明の(共)重合体は、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、製造時あるいは成形時に他のポリマーと混合して、成形可能な樹脂組成物として使用することが可能である。他のポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、パラオキシベンゾイル系ポリ(チオ)エステル、ポリアリーレート、ポリスルフィド等が挙げられる。
【0037】
本発明において、樹脂組成物は、本発明の(共)重合体および各種任意の添加剤からなるが、好ましくは(1)本発明の(共)重合体 (2)酸化防止剤を必須成分として含有する樹脂組成物である。
【0038】
本発明の樹脂組成物に添加される酸化防止剤の量は、本発明のポリカーボネート共重合体100重量部に対して、通常、0.0001〜10重量部であり、より好ましくは、0.01〜5重量部であり、さらに好ましくは、0.05〜3重量部である。
【0039】
かかる酸化防止剤としては、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシルホスファイト)、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリス(2−クロロエチル)ホスファイト、トリス(2,3−ジクロロプロピルホスファイト)、トリシクロヘキシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、フェニル−ジデシルホスファイト、ジフェニル−イソオクチルホスファイト、ジフェニル−2−エチルヘキシルホスファイト、ジフェニル−デシルホスファイト、ジフェニル−トリデシルホスファイト、ビス(トリデシル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ジステアリル−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ジフェニル−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、テトラフェニル−ジプロピレングリコール−ジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニル−ジホスファイト、テトラ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ジフェニルホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスチリルテトラホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイトなどの亜リン酸類;
トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどのリン酸類;
【0040】
テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイトなどの亜ホスホン酸類;
ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジイソプロピルなどのホスホン酸類などのリン原子含有化合物、
オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートなどの公知のフェノール系化合物が例示されるが、これらに限定されるものではない。これらの酸化防止剤は、単独で用いてもよく、あるいは、2種類以上併用しても差し支えない。
【0041】
さらに本発明において、溶融成形時の金型からの離型性などを改良する目的で、さらに添加剤として一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル類を添加することはより好ましい。
本発明の樹脂組成物中に添加される高級脂肪酸エステル類の添加量は、本発明のポリカーボネート共重合体100重量部に対して、通常、0.0001〜2重量部であり、好ましくは、0.001〜1重量部であり、より好ましくは、0.01〜0.5重量部である。
【0042】
かかる高級脂肪酸エステル類として、より好ましくは、炭素数1〜20の一価または多価アルコールと炭素数10〜30の飽和脂肪酸の部分エステルまたは全エステルである。該高級脂肪酸エステル類として具体的には、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヒニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、2―エチルヘキシルステアレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの高級脂肪酸エステル類は、単独で用いてもよく、あるいは、2種類以上併用しても差し支えない。
【0043】
本発明において(共)重合体に、上記の酸化防止剤、高級脂肪酸エステル類など各種添加剤を添加して樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定はなく、各種公知の方法により行うことができる。すなわち
(1)溶液または溶融状態の(共)重合体に対して添加剤を添加した後、重合体を固体として単離する方法、
(2)溶液または溶融状態の(共)重合体から該(共)重合体を固体として単離した後、該固体に対して添加剤を添加して、さらに公知の各種混合装置(例えば、タンブラーミキサー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサーなど)により分散混合する方法、
(3)前記と同様に各種混合装置により分散混合した後、押出機、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法
などが挙げられる。また、これらの方法を併用しても差し支えない。
【0044】
本発明の(共)重合体または該(共)重合体を含有してなる樹脂組成物は、熱可塑性であり、溶融状態で射出成形、押出成形、ブロー成形、射出圧縮成形、さらには、溶液キャスティングなどの各種公知の成形方法により好適に成形加工される。
本発明の(共)重合体および樹脂組成物を成形して光学部品を得るための成形方法として好ましくは、射出成形、押出成形または射出圧縮成形であり、より好ましくは、射出成形または射出圧縮成形である。
【0045】
本発明の(共)重合体および樹脂組成物を成形して光学部品を製造する際の成形条件としては、(共)重合体および樹脂組成物の熱的特性に応じて任意の条件で行えるが、通常、樹脂温度180〜350℃、金型温度25(室温)〜160℃の範囲であり、好ましくは、樹脂温度180〜300℃、金型温度50〜150℃の範囲であり、さらに好ましくは、樹脂温度180〜300℃、金型温度50〜150℃の範囲である。
【0046】
本発明の(共)重合体および樹脂組成物は、透明性、光学特性に優れ(高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、熱的特性、機械的特性などが良好であり、かつ、成形加工性、生産性が良好であることから、各種光学部品用材料として有用である。
本発明の光学部品としては、視力矯正用眼鏡レンズ、撮像機器(例えば、カメラ、VTRなど)用レンズ、ピックアップ用レンズ、コリメトリーレンズ、fΘレンズ、フレネルレンズなどの各種プラスチック光学レンズ、光ディスク基板、光磁気ディスク基板などの光記録媒体基板、液晶セル用プラスチック基板、光ファイバー、光導波路等の各種光学部品を挙げることができる。
また本発明の(共)重合体および樹脂組成物は、成形用材料として上記光学部品以外の用途、例えば、電気機器、電子部品、車両用部品、建材等に成形して用いられることも可能である。
【0047】
上記方法で得られる本発明の光学部品は、透明性、光学特性に優れ(高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、熱的特性、機械的特性などが良好であり、上記に例示したような用途で好適に使用される。
【0048】
【実施例】
以下、実施例によって具体的に説明するが、本発明の方法は実施例により限定されるものではない。
以下の実施例で製造した重合体の物性測定は以下の方法により行った。
[重量平均分子量の測定〕
以下、実施例で製造して得られたポリカーボネート共重合体の0.2重量%クロロホルム溶液を、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)〔昭和電工(株)製、System−11〕により測定し、重量平均分子量(Mw)を求めた。なお、測定値は標準ポリスチレンに換算した値である。
[屈折率、アッベ数]
得られたポリカーボネート共重合体を加熱プレス機によりプレス成形してシート状試験片を作成し、プルフリッヒ屈折計を用いて20℃で屈折率(nd)およびアッベ数(νd)を求めた。
【0049】
実施例1
2,6−ビス(アセトキシ)−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタンの合成
攪拌装置を備えた1Lのフラスコに、2,6−ジクロル−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタン114g(0.60モル)と酢酸360gを装入し、攪拌しながら、酢酸ナトリウム144g(1.7モル)を加え、60℃に昇温し11時間保温した。室温まで冷却後、残渣をろ過して濾液を捕集した。
次に、1500mLの水を攪拌している中に、上記濾液を排出し、ジクロルメタン900mLで抽出し、有機層を水酸化ナトリウム水溶液にて中和後、水洗し、エバポレーターにて濃縮して白色結晶を得た。
続いて、得られた白色結晶を少量の酢酸エチルに溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン)のショートカラムを通し、抽出液を濃縮、乾燥し、2,6−ビス(アセトキシ)−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタン(化12)を得た。収量は119.4g(収率84.3%)であった。
【0050】
【化12】
【0051】
MS:242(M+)
1H−NMR(δ,ppm、DMSO):1.63(s,2H)、1.99(s,6H)、2.92(bs,1H)、3.04−3.05(bd,2H)、3.83−3.87(bt,1H)、5.15(s,2H)
【0052】
実施例2
2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタンの合成
攪拌装置を備えた1Lのフラスコに、2,6−ビス(アセトキシ)−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタン110g(0.56モル)とメタノール600mLを装入し、攪拌しながら、炭酸水素ナトリウム84g(1.0モル)を加え、メタノール還流状態まで加熱し4時間保温した。室温まで冷却後、残渣をろ過した。
次に、濾液をエバポレーターを用いて濃縮後、濃縮溶液にアセトニトリル1200g、活性炭4gを加えて、80℃まで加熱後、冷却、濾過し、濾液をエバポレーターにて濃縮させ、淡黄色結晶を得た。続いて、アセトニトリル160gを用いて、再び加熱溶解させ、冷却して再結晶させ、濾過、乾燥後、白色結晶の2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタン(化13)を得た。収量は61.6g(収率85%)であった。得られた2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタンをガスクロマトグラフィーにて純度を測定したところ、99.8%であった。
【0053】
【化13】
【0054】
実施例3
2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタンのホスゲン化によるポリカーボネート重合体の製造
攪拌装置を備えた1Lのフラスコに、2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタン20g(0.13モル)、ピリジン50g(0.63モル)、ジクロルメタン100gを装入し、窒素通気下0℃まで冷却し、ホスゲン19.8g(0.20モル)をジクロルメタン150gに吹き込んだ溶液を、5時間かけて滴下した。滴下後、更に0℃で2時間保温後、ベンジルアルコール0.14g(0.0013モル)を加え、更に1時間保温した後、水100gを装入し、pHが1になるまで36%塩酸水溶液を滴下した。下層部有機層を抜き出し、水洗を繰り返した。
次に、攪拌装置、ディーンシュタックを備えた3Lのフラスコにメタノール1500mLを装入して40℃まで加熱後、窒素通気下、前記の有機層を2時間かけて滴下し、沈殿させた。固形分を濾過、メタノール洗浄後、乾燥させ、24.2gの粉末状の白色固体を得た。この固体の一部をクロロホルムに溶解させ、GPCで分子量を確認したところ、MW:36000であった(PS換算)。
試料0.5gを秤量し、UPILEXフィルムを内側に入れてスペーサーで挟み込み、熱プレス装置で8分間加熱溶融させた。溶融後、プレス機で50kg/cm2で加圧冷却し、フィルムを調整した。得られたフィルムは無色透明であり、光学物性は屈折率(nd)は1.594、アッベ数(νd)は48.2であった。溶融流動性および溶融粘度は問題無く、成形加工性は良好であった。
【0055】
参考例1
2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタンとシクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸ジクロライドとの縮合によるポリエステル共重合体の製造
攪拌装置を備えた500mLのフラスコに、2,5−ジ(ヒドロキシメチル)−1,4−ジチアン22.2g(0.14モル)、ピリジン66.4g(0.84モル)、o−ジクロルベンゼン(ODCB)80gを装入し、窒素通気下60℃まで昇温した。70℃に保温した滴下ロートにて、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸ジクロライド29.3g(0.14モル)を2時間かけて前記のフラスコに滴下した。滴下後、80℃で12時間保温した時点で反応溶液の増粘が観測された為、ODCB20gを追加した後、保温を3時間継続した。その後、ベンゾイルクロライド0.20g(0.0014モル)を装入し、1時間保温後、ベンジルアルコール0.76g(0.007モル)を装入し、1時間保温した後、10℃まで冷却した。
次に、氷冷下、反応溶液に水150g、ジクロルメタン150gを加え、36%塩酸水溶液で反応溶液のpHを1にした。静置後、下層の有機層を抜き出し、水洗を3回繰り返した。
n−ヘキサン1500mLをホモミキサーで激しく攪拌している中に、上記有機層を2時間かけて滴下して沈殿させた。得られた固形分を濾過後、ジクロルメタン150gを加えて溶解させ、メタノール1500mLをホモミキサーで激しく攪拌している中に、上記ジクロルメタン溶液を2時間かけて滴下し、再沈殿させた。
得られた沈殿物を濾過して、メタノールで洗浄後、乾燥させ、粉末状の白色固体39.5gを得た。この固体の一部をクロロホルムに溶解し、GPCで分子量を確認したところ、MW:67000であった(PS換算)。
実施例3と同様にしてフィルムを調整したところ、得られたフィルムは無色透明であり、光学物性は屈折率(nd)は1.574、アッベ数(νd)は50.8であった。溶融流動性および溶融粘度は問題無く、成形加工性は良好であった。
【0056】
比較例1
2,6−ジクロル−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタンを原料とする2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタンの合成
攪拌装置を備えた300mLのフラスコに、2,6−ジクロル−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタン39g(0.2モル)と水200mLを装入し、硫化ナトリウム九水和物52.8g(0.22モル)を加えて、80℃まで昇温し1時間保温した。冷却後、濾過して重合物を取り除いた。
濾液にジエチルエーテル200mLを加えて抽出後、水洗を2回繰り返した後、有機層をエバポレーターを用いて濃縮し、淡黄色結晶の2,6−ジヒドロキシ−8−チアトリシクロ[2.2.1.13,5] オクタンを得た。収量は6.8g(収率21.5%)であった。ガスクロマトグラフィーにて純度を測定したところ、94.3%であった。
【0057】
比較例2
ビスフェノールAポリカーボネート(BPA−PC)重合体の製造
実施例2と同様にしてフィルムを調整したところ、得られたフィルムは無色透明であり、光学物性は屈折率(nd)は1.586、アッベ数(νd)は31.1であり、実施例3と比較して、アッベ数が低く、光学物性で劣っていた。
【0058】
【発明の効果】
本発明の新規な環状内に硫黄原子を有するジアセテート化合物を用いれば、ジヒドロキシ化合物を高純度かつ高収率で得ることが出来る。また、このジヒドロキシ化合物を含有してなる(共)重合体は、透明性、機械物性、耐熱性等が良好であり、かつ低色収差(高アッベ数)、低複屈折率であり、さらには溶融流動性に富み成形加工性が良好な光学部品を提供できる。
Claims (5)
- 請求項1又は2記載の(共)重合体と添加剤からなる樹脂組成物。
- 請求項3記載の樹脂組成物を成形して得られる光学部品。
- 請求項4記載の光学部品が、プラスチック光学レンズ、情報記録用光ディスク基板、液晶セル用プラスチック基板、プリズム、光ファイバーまたは光導波路用部品である成形物。
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