JP4171358B2 - 視力矯正用眼鏡レンズ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は特定の繰り返し構造単位を含有してなる熱可塑性のポリヒドロキシエーテル重合体を含有してなる樹脂組成物を成形して得られる視力矯正用眼鏡レンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
無機ガラスは透明性に優れ、光学異方性が小さいなどの諸物性に優れていることから、透明性光学材料として広い分野で使用されている。しかしながら、重くて破損しやすいこと、加工して光学部品などを製造する際に生産性に劣る等の短所があり、無機ガラスに代わる素材として透明性有機高分子材料(光学用樹脂)の開発が盛んに行われている。近年では光学用樹脂の高機能化、高品質化が進展し、かかる光学用樹脂を成形加工して得られる光学部品は、例えば、視力矯正用眼鏡レンズ、CD、DVDなどの情報記録機器におけるピックアップレンズ、デジタルカメラなど撮影機器用のプラスチックレンズなどの用途分野で実用化され普及を見せている。
【0003】
光学用樹脂として最も重要な基本的特性の一つは透明性である。現在までに透明性の良好な光学用樹脂として、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(BPA−PC)、ポリスチレン(PS)、メチルメタクリレート-スチレン共重合ポリマー(MS)、スチレン-アクリロニトリル共重合ポリマー(SAN)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)(TPX)、ポリシクロオレフィン(COP)、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート重合体(DAC)、ポリチオウレタン(PTU)などが知られている。
これら光学用樹脂の中でもポリメチルメタクリレート(PMMA)は透明性に優れ、光学異方性が小さく(低複屈折率)、かつ、成形性、耐候性などが良好である等々の特性を有し、代表的な光学用樹脂の一つとして広く用いられている。しかしながら、屈折率(nd)が1.49と低く、吸水率が高い等の欠点を有している。
【0004】
同様に代表的な光学用樹脂の一つであるポリカーボネート(BPA−PC)は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、通称のビスフェノールAと記す)とカーボネート化合物(例えば、塩化カルボニル、ジフェニルカーボネート等)の縮重合反応により得られ、透明性、耐熱性、耐衝撃性に優れ、比較的高屈折率(nd=1.59)である等の特性を有し、情報記録用光ディスク基板をはじめとする光学用途において広く用いられている。しかしながら、色収差(屈折率分散)、複屈折率が比較的高く、また溶融粘度が高いため成形性にやや劣る等の欠点を有しており、さらなる性能、特性の改良が続けられている。
【0005】
ジエチレングリコールビスアリルカーボネート重合体(DAC)はモノマーであるジエチレングリコールビスアリルカーボネートを注型ラジカル重合して得られる架橋高分子構造の熱硬化性樹脂であり、透明性、耐熱性が良好で、色収差が低いといった特徴を有しており、汎用の視力矯正用プラスチック眼鏡レンズ用途において最も多く使用されている。しかしながら、屈折率が低く(nd=1.50)、耐衝撃性にやや劣るという欠点を有する。
【0006】
ポリチオウレタン(PTU)はジイソシアネート化合物とポリチオール化合物との反応で得られる架橋高分子構造の熱硬化性樹脂であり、透明性、耐衝撃性に優れ、高屈折率(nd≧1.6)で、かつ、色収差も比較的低いなどの特徴を有する極めて優れた光学用樹脂である。薄厚、軽量の高品質な視力矯正用プラスチック眼鏡レンズの用途で現在、最も多く使用されているが、唯一、眼鏡レンズを製造する工程において熱重合成形時間に長時間(数十時間〜数日)を要する生産性面での改良の余地を残している。
【0007】
前述の光学用樹脂に見られた欠点、問題点を改良し、射出成形や射出圧縮成形により短時間で生産性よく、高機能、高品質の光学部品を得る目的で、新規な熱可塑性光学用樹脂が提案されている。例えば、ジシクロペンタジエン構造を有するジヒドロキシ化合物から誘導される特定の繰り返し構造単位を有する脂環系ポリカーボネート共重合体が比較的低い色収差(高アッベ数)を有し、光学用途での利用が提案されている(特許文献1〜2など)。
また例えば、テレフタル酸誘導体と特定構造の含硫化合物より得られる芳香族ポリエステル共重合体が高屈折率の熱可塑性光学用樹脂として有用であることが示唆されている(特許文献3〜4など)。
さらに例えば、フルオレンビスフェノール構造を有するジヒドロキシ化合物から得られる特定の繰返し構造単位を有する熱可塑性ポリエステル共重合体が高屈折率、低複屈折率などの特徴を有し、光学用途に有用であることが開示されている(特許文献5など)。
【0008】
しかしながら、これらに開示された方法では、射出成形または射出圧縮成形により短時間で光学部品の製造が可能となるものの、得られた光学部品は実用面で要求される種々の物性を十分満たしているとは言い難かった。
すなわち、例えば視力矯正用眼鏡レンズとして用いようとした場合、例えば、・屈折率、アッベ数の何れかが極端に低い、
・加熱変形温度が低く高温環境下で変形が生じる、
・耐衝撃性などの機械的強度に乏しく外部からの種々の衝撃、応力などによって
レンズ割れ等が発生する、
・油脂、溶剤などの付着によりレンズ表面が変質したり物性変化をきたす
等、光学特性、熱的特性、機械的特性、耐薬品性などの特性面において、実用上の欠点、問題点を残していた。
【0009】
以上のように、従来の光学用樹脂は用途に応じてその特徴を考慮して使用されているものの、それぞれに克服すべき欠点、問題点を有しているのが現状である。
特に視力矯正用眼鏡レンズを代表例とするプラスチックレンズ用途においては、射出成形などの成形方法により短時間で製造することが可能であり、透明性、光学特性に優れ(高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、機械的特性(例えば、耐衝撃性など)、熱的特性(例えば、熱変形温度など)、耐薬品性(例えば、耐油脂性、耐溶剤性など)が良好な光学用樹脂、ならびに、該光学用樹脂を成形して得られる光学部品の開発が望まれている。
【0010】
【特許文献1】
特開昭64−66234号公報
【特許文献2】
特開平1−223119号公報
【特許文献3】
特開平3−43415号公報
【特許文献4】
特開平2−245030号公報
【特許文献5】
特開平7−196751号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、従来知られている光学用樹脂における問題点を解決して、透明性、光学特性に優れ、かつ、機械的特性、熱的特性、耐薬品性に優れる光学部品用樹脂組成物、ならびに、該樹脂組成物を成形して得られる光学部品を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、一般式(1)で表される繰り返し構造単位のみを繰り返し構造単位として含有するポリヒドロキシエーテル重合体を含有してなる樹脂組成物を成形して得られる視力矯正用眼鏡レンズに関する。
【0013】
【化2】
【0014】
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基またはハロゲン原子を表し、mおよびnはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、R3は水素原子またはアルキル基を表す)
さらには、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定した標準ポリスチレン換算での前記ポリヒドロキシエーテル重合体の重量平均分子量が30000〜150000である視力矯正用眼鏡レンズに関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の視力矯正用眼鏡レンズは、一般式(1)で表される繰り返し構造単位のみを繰り返し構造単位として含有してなる熱可塑性のポリヒドロキシエーテル重合体を射出成形、射出圧縮成形などの方法により成形して得られるものである。
本発明に係るポリヒドロキシエーテル重合体は、後で詳細に説明するが、代表的には、下記の一般式(2)で表されるビスフェノール化合物と一般式(3)で表されるエピハロヒドリン化合物との反応により重合を行なうことで得られる。
【0016】
本発明の一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有するポリヒドロキシエーテル化合物それ自体は、公知化合物であって、例えば、Journal of Applied Polymer Science,80巻, 1697〜1709頁(2001年)、Journal of Polymer Materials,15巻,45−49頁 (1998年)などに開示されている。
【0017】
しかしながら、これら文献に記載または示唆されている当該化合物は、末端に分子量が数千程度のオリゴマー化合物であり、末端基にエポキシ基を有する化合物として熱硬化性の架橋樹脂の原料化合物として利用されるものであって、それ自体を熱可塑性ポリマーとして利用は開示されていない。
さらに、該化合物に関する透明性、光学特性に関する記述は一切なく、当然のことながら光学用樹脂としてプラスチックレンズなど光学部品に応用することを示唆する記載は見られない。
【0018】
また、特開昭63−156825号公報、特開平3−52925号公報には、特定構造のポリヒドロキシエーテル重合体が光記録媒体用基体として有用であることが開示されている。しかしながら、例えば、ハイドロキノン類を原料モノマー化合物として得られるポリヒドロキシエーテル重合体をプラスチックレンズなどの光学部品として用いようとした場合、ガラス転移温度(Tg)92℃と耐熱性が不十分であり、また、応力下に油脂類、溶剤が付着すると容易にクラックが生じるなど油脂類、溶剤類に対する耐性(耐薬品性)について問題があった。加えてこれら公報においては、一般式(1)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリヒドロキシエーテル重合体について示唆はされているものの、具体的な合成例、物性について全く記載されていなかった。
【0019】
本発明者らが前記課題を解決するべく鋭意検討を続けていたところ、全く予測し得なかったことに、一般式(1)で表されるポリヒドロキシエーテル重合体を成形して得られる光学部品が透明性、光学特性、機械的特性、熱的特性、耐薬品性などの諸物性面で良好な特性を示していることを見い出した。特に驚くべきことに、透明性、熱的特性、機械的特性が良好であって、かつ、油脂、溶剤に対する耐性(耐薬品性)に極めて優れている特性を兼ね備えていることを見い出すに至り、本発明に到達した。
【0020】
本発明に係るポリヒドロキシエーテル重合体は、一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と一般式(3)で表されるエピハロヒドリン類とから得られる一般式(1)で表される繰り返し構造単位を必須構造単位として含有してなる重合体である。
【0021】
【化3】
【0022】
(式中、R1、R2、mおよびnは前記に同じを表す)
【0023】
【化4】
【0024】
(式中、R3は水素原子またはアルキル基を表し、Xは塩素原子または臭素原子を表す)
一般式(1)においてR1およびR2はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基またはハロゲン原子を表す。
【0025】
該置換基R1およびR2として、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、フッ素原子、塩素原子または臭素原子であり、より好ましくは、メチル基、臭素原子、メトキシ基またはフェニル基である。
かかる置換基R1およびR2として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェニル基、塩素原子または臭素原子などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
該置換基R1およびR2として、さらに好ましくは、メチル基、フェニル基または臭素原子である。
【0026】
一般式(1)において、m、nはそれぞれ0〜4の整数を表し、いずれも好ましくは、0から3の整数、より好ましくは、0〜2の整数、さらに好ましくは、0〜1の整数であり、整数0は特に好ましい。
なお、mが2以上の場合におけるR1間、あるいはnが2以上の場合におけるR2間においても、同じ置換基であっても異なる置換基であってもよい。
【0027】
本発明に係るポリヒドロキシエーテル重合体には、原料モノマーとなる一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物中の2つのヒドロキシ基が各々芳香環に結合する位置が異なって生じる位置異性体が存在するため、互いに位置異性構造となる異なる繰り返し構造単位が存在する。
【0028】
本発明に係るポリヒドロキシエーテル重合体は、それら全ての位置異性となる繰り返し構造単位を包含するものであり、特に限定するものではないが、一般式(1)で表される繰り返し構造単位の中でも、式(1−i)で表される繰り返し構造単位は、特に好ましい。
【0029】
【化5】
【0030】
(式中、R1、R2、R3、mおよびnは前記に同じを表す)
本発明に係るポリヒドロキシエーテル重合体の原料モノマーである一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物は工業的に製造される化合物として入手可能である。すなわち、一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物は、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンまたはその類縁体化合物であり、例えば、酸触媒の存在下にシクロヘキサノンとフェノール類とを反応させることにより工業的に製造されており入手可能である。
【0031】
かかるジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、
1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1-(3'−ヒドロキシフェニル)-1-(4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1-(2'−ヒドロキシフェニル)-1-(4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(2'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(3'−エチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(3'−n−プロピル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3'−イソプロピル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3'−sec−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3'−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3'−シクロヘキシル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3'−アリル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3'−メトキシ−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3'−フェニル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3’,5’−ジブロモ−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3',5'-ジメチル−4'−ヒドロキシフェニル) シクロヘキサン、1,1-ビス(2',3',5',6'-テトラメチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
本発明に係るポリヒドロキシエーテル重合体は、前述したような各種公知の文献、特許公報に記載の方法に従い製造される。すなわち、例えば、反応を促進する目的で酸性化合物または塩基性化合物の存在下、一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と一般式(3)で表される化合物を反応させることにより好適に製造される。
【0033】
本発明に係るポリヒドロキシエーテル重合体の分子量として、特に限定されるものではないが、通常、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が20000〜200000であり、好ましくは、30000〜150000であり、より好ましくは、50000〜120000である。
【0034】
また、重量平均分子量と数平均分子量の比として表される多分散性インデックスとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは、1.5〜20.0であり、より好ましくは、2.0〜15.0であり、さらに好ましくは、2.0〜10.0である。
【0035】
本発明に係るポリヒドロキシエーテル重合体において、末端基は特に限定するものではなく、前述したような原料モノマー化合物に由来する基であってもよく、分子量調節剤などで末端基処理された基であってもよい。
すなわち、一般式(2)のジヒドロキシ化合物に由来するヒドロキシ基、または、一般式(3)で表されるエピハロヒドリン類に由来するエポキシ基、ハロヒドリン基等の末端基であってもよく、あるいは、後述するような末端封止剤(例えば、1価のヒドロキシ化合物、1価のチオール化合物または1価のカルボン酸誘導体など)によってポリマー主鎖の末端の重合反応活性な末端基(ヒドロキシ基、エポキシ基)が封止処理された重合反応不活性な基であってもよい。
本発明のポリヒドロキシエーテル重合体中での末端基の量は、特に制限はないが、通常、構造単位の総モル数に対して、0.001〜5モル%であり、好ましくは、0.01〜4モル%であり、より好ましくは、0.05〜3モル%である。
【0036】
本発明に係るポリヒドロキシエーテル重合体を、前記の方法に従い重合して製造する際に、分子量を調節する目的で末端封止剤の存在下に重合を行うことは好ましいことである。
かかる末端封止剤として、特に限定はなく、ヒドロキシ基またはエポキシ基と反応することが出来る公知の各種単官能性化合物であればよく、例えば、1価の脂肪族ヒドロキシ化合物または芳香族ヒドロキシ化合物、1価の脂肪族チオール化合物または芳香族チオール化合物、もしくは、1価の脂肪族または芳香族カルボン酸化合物などが挙げられる。
【0037】
かかる化合物として、具体的には、メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、メトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキシルアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェノキシエタノール、フェノール、4-tert-ブチルフェノール、2-クレゾール、3-クレゾール、4-クレゾール、4-エチルフェノール、4-シクロヘキシルフェノール、4-メトキシフェノール、4-イソプロペニルフェノール、4-クロロフェノール、4-ブロモフェノール、4-クミルフェノール、4-フェニルフェノール、α−ナフトール、β−ナフトールなど1価の脂肪族ヒドロキシ化合物または芳香族ヒドロキシ化合物;
メタンチオール、エタンチオール、ブタンチオール、オクタンチオール、シクロヘキサンチオール、フェニルメタンチオール、ベンゼンチオールなどの1価の脂肪族または芳香族チオール化合物;
酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、安息香酸、4-メチル安息香酸、3-メチル安息香酸、2-メチル安息香酸、4-クロロ安息香酸、3-クロロ安息香酸、2-クロロ安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸などの1価の脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
末端停止剤の使用量は特に制限するものでなく、目的の分子量に調節するために所望に応じて用いればよいが、通常、重合するジヒドロキシ化合物の総モル数に対して、0.001〜5モル%であり、好ましくは、0.01〜4モル%であり、より好ましくは、0.05〜3モル%であり、さらに好ましくは、0.05〜2モル%である。
【0039】
本発明に係る樹脂組成物は、熱安定性、耐候性、耐光性などを高める目的で酸化防止剤を含有していることが好ましい。
かかる酸化防止剤として、酸化防止剤として公知の各種化合物が用いられ、例えば、リン酸エステル化合物、亜リン酸エステル類などのリン原子含有化合物、フェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、硫黄原子含有化合物などが用いられる。また酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよく、あるいは、2種類以上併用してもよい。
かかる酸化防止剤の量は、本発明に係るポリヒドロキシエーテル重合体100重量部に対して、通常、0.001〜5重量部であり、より好ましくは、0.005〜3重量部であり、さらに好ましくは、0.01〜2重量部である。
【0040】
かかる酸化防止剤としては、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリス(2−エチルエチルヘキシル)ホスファイト、
トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリス(2−クロロエチル)ホスファイト、トリス(2,3−ジクロロプロピルホスファイト)、トリシクロヘキシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(メチルフェニル)ホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、フェニル−ジデシルホスファイト、ジフェニル−イソオクチルホスファイト、ジフェニル−2−エチルヘキシルホスファイト、ジフェニル−デシルホスファイト、ジフェニル−トリデシルホスファイト、ビス(トリデシル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ジステアリル−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ジフェニル−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、テトラフェニル−ジプロピレングリコール−ジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニル−ジホスファイト、テトラ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ジフェニルホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスチリルテトラホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイトなどの亜リン酸類;
トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどのリン酸類;
テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイトなどの亜ホスホン酸類;
ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジイソプロピルなどのホスホン酸類などのリン原子含有化合物;
オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートなどの公知のフェノール系化合物が例示されるが、これらに限定されるものではない。これらの酸化防止剤は、単独で用いてもよく、あるいは、2種類以上併用してもよい。
【0041】
さらに本発明の所望の効果を損なわない範囲で、本発明の視力矯正用眼鏡レンズを製造する際に該ポリヒドロキシエーテル重合体に対して、紫外線吸収剤、離型剤(例えば、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル類など)、滑剤、難燃剤(例えば、有機ハロゲン系化合物など)、染料、流動性改良剤、熱安定剤(例えば、硫黄原子含有化合物など)等の各種添加剤を混合して用いても、差し支えない。かかる酸化防止剤または各種添加剤を配合する方法としては、特に方法に制限なく、各種公知の方法により実施される。すなわち、重合反応後のポリヒドロキシエーテル重合体の溶液からポリヒドロキシエーテル重合体を固体として単離した後、該固体に対して上記酸化防止剤を添加して、さらに公知の各種混合装置(例えば、タンブラーミキサー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサーなど)により分散混合する方法、あるいは、前述の通り、各種混合機により分散混合した後、押出機、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法などが挙げられる。またこれらの方法を併用しても差し支えない。
【0042】
本発明に係るポリヒドロキシエーテル重合体を含有してなる樹脂組成物は、熱可塑性であり、溶融状態で射出成形、押出成形、ブロー成形、射出圧縮成形、さらには、溶液キャスティングなどの各種公知の成形方法により好適に成形加工される。
本発明の視力矯正用眼鏡レンズを得るための成形方法として、好ましくは、射出成形、射出圧縮成形または押出成形であり、より好ましくは、射出成形または射出圧縮成形である。
【0043】
本発明の視力矯正用眼鏡レンズを製造する際の成形条件としては、使用するポリヒドロキシエーテル重合体の熱的特性に応じて任意の条件で行えるが、通常、樹脂温度200〜350℃、金型温度25(室温)〜150℃の範囲であり、好ましくは、樹脂温度200〜330℃、金型温度50〜120℃の範囲であり、さらに好ましくは、樹脂温度200〜320℃、金型温度50〜110℃の範囲である。
【0044】
上記方法で得られる本発明の視力矯正用眼鏡レンズは、射出成形により高生産性で製造され、透明性、光学特性に優れ(高屈折率、高アッベ数、低複屈折率)、かつ、熱的特性、機械的特性、耐薬品性などに優れている。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例で得られたポリヒドロキシエーテル重合体の物性測定は下記の方法により行なった。
[重量平均分子量の測定〕
ポリヒドロキシエーテル重合体の0.2重量%クロロホルム溶液を、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)〔昭和電工(株)製、System−11〕により測定し、重量平均分子量(Mw)を求めた。なお、測定値は標準ポリスチレンに換算した値である。
〔溶融流動開始温度および溶融粘度〕
島津高化式フローテスター(CFT500A)を使用し、荷重100kgで直径0.1cm、長さ1cmのオリフィスを用いて測定した。
[屈折率、アッベ数]
ポリヒドロキシエーテル重合体を250℃でプレス機によりプレス成形してシート状試験片(20mm×50mm、厚さ3mm)を作成し、プルフリッヒ屈折計を用いて20℃で屈折率(nd)およびアッベ数(νd)を求めた。
[複屈折率]
ポリヒドロキシエーテル重合体の厚さ5μmの薄膜をシリコンウエハー上に作成した。すなわち、該ポリヒドロキシエーテル重合体の1,1,1−トリクロロエタン溶液(20%濃度)をパーフルオロポリエチレン製フィルター(孔径0.45μm)で濾過した後、シリコンウエハー(直径5インチ)上に回転数2000rpm、5秒間の条件下でスピンコートした。その後、70℃で15分間乾燥して溶媒を留去させて、厚さ5μmの該重合体成形材料の薄膜を作成した。プリズムカプラ(メトリコン社製モデル2020)を使用して632nmレーザー光源で該薄膜のTEモード光およびTMモード光での屈折率を測定して、それらの差として複屈折率を求めた。
【0046】
<ポリヒドロキシエーテル重合体の製造>
製造例1[式(1−1)で表されるポリヒドロキシエーテル重合体の製造]
撹拌装置、還流冷却管、温度計を設けた内容量5リットルのフラスコに、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン 268.4g(1.00モル)、エピクロロヒドリン92.5g(1.00モル)、イソプロパノール450gを秤取した。窒素雰囲気下、60℃で攪拌しながら該混合物に対して25%水酸化ナトリウム水溶液 176.0g(NaOHとして1.10モル)を20分要して滴下した。さらに80℃で4時間加熱して反応を続けた後、GPC分析を行ない重量平均分子量8.6万であることを確認した。その後、反応溶液を室温に冷却し、デカンテーションにより溶媒(イソプロパノール/水)をとり除いた。残査の固形分をクロロホルム4000gに溶解させた後、tert−ブチルフェノール7.5g(0.05モル)を加えて60℃で2時間反応させて末端封止処理を行なった。室温に冷却して析出した無機塩を濾別した後、希塩酸水で中和、洗浄した後、水層が中性になるまで水洗、分液を繰返した。その後、有機層(クロロホルム溶液)を取出して、ホモジナイザーを用いてメタノール4000gに対して有機層を滴下、再沈殿させて粉末状固体を得た。さらに、メタノール3000gを用いてスラッジした後、濾過して固形分を集めた。60℃で24時間減圧乾燥して、白色粉末状固体のポリヒドロキシエーテル重合体を得た。GPC分析の標準ポリスチレン換算で重量平均分子量 9.3×104(9.3万)であった。1H−NMRおよびIRによるスペクトル構造解析を行ない、式(1−1)の構造であることを確認した。
前述の方法に従い、該ポリヒドロキシエーテル重合体の物性測定を行った。 ガラス転移温度(Tg)は120℃を示し、溶融流動開始温度は225℃であった。屈折率(nd)1.610、アッベ数(νd)34.5であった。
また該重合体の複屈折率は汎用のポリカーボネート樹脂と比較して低い値を示した。
【0047】
【化6】
【0048】
比較例1(公知のポリメチルメタクリレート樹脂の物性測定)
既知であり市販品のポリメチルメタクリレート樹脂(一般光学用グレード)を用いて、上記方法に従って物性測定を行った。
ガラス転移温度(Tg)は111℃であり、屈折率(nd)1.487、アッベ数(νd)54であり、複屈折率は1×10-4以下の非常に低い値であった。
【0049】
比較例2(公知のポリカーボネート樹脂の物性測定)
既知であり市販品のポリカーボネート樹脂(汎用グレード;重量平均分子量5万)を用いて、上記方法に従って物性測定を行った。
ガラス転移温度(Tg)は150℃であり、屈折率(nd)1.584、アッベ数(νd)29.5であった。複屈折率は70×10-4であり高い値であった。
【0050】
<樹脂組成物ならびに光学部品の製造>
実施例1
製造例1で製造したポリヒドロキシエーテル重合体 100重量部、トリス(2,4−ジ−tert―ブチルフェニル)ホスファイト 0.05重量部およびペンタエリスチリル[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート] 0.05重量部をヘンシェルミキサーにて混合した後、単軸押出機(65mm)を使用してシリンダー温度230℃で脱気しながら溶融混練し、押出ペレット化して無色透明ペレット状の樹脂組成物を得た。
該樹脂組成物を用いて、射出成形によってレンズ形状を有する成形品を製造した。すなわち、ペレット状の樹脂組成物を100℃で24時間減圧乾燥した後、射出成形機にて成形温度260℃、金型温度100℃で射出成形して、無色透明のプラスチックレンズ(凸レンズ;直径75mm、中心厚4.2mm、コバ厚1.0mm、+2.00D)を得た。得られた成形体を偏光板の間において観察したところ、脈理、歪みなどは観察されず、複屈折が低く光学的に均質なものであった。得られたレンズ形状の成形品は、透明性、熱的特性(熱変形温度など)、機械的特性(耐衝撃性など)、耐薬品性に優れ、視力矯正用眼鏡レンズとして要求される諸物性面で良好な特性を示した。
【0051】
【発明の効果】
本発明に係る樹脂組成物を成形して得られる視力矯正用眼鏡レンズは、射出成形によって高生産性で製造され、かつ、光学特性に優れ(高透明性、高屈折率、高アッベ数、低複屈折率)、機械的物性、熱的特性、耐薬品性が良好である。
Claims (2)
- 一般式(1)で表される繰り返し構造単位のみを繰り返し構造単位として含有するポリヒドロキシエーテル重合体を含有してなる樹脂組成物を成形して得られる視力矯正用眼鏡レンズ。
- ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定した標準ポリスチレン換算での前記ポリヒドロキシエーテル重合体の重量平均分子量が30000〜150000である請求項1記載の視力矯正用眼鏡レンズ。
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