JP3970187B2 - ポリ(チオ)エステル共重合体およびその用途 - Google Patents

ポリ(チオ)エステル共重合体およびその用途 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の繰り返し単位を含有してなるポリ(チオ)エステル共重合体、該共重合体からなる樹脂組成物、ならびに、これらを成形して得られる光学部品に関する。
【0002】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、透明性、光学特性[低色収差(高アッベ数)、高屈折率、低複屈折率]に優れ、且つ、熱的特性、機械的特性、耐薬品性が良好であり、
さらには、成形加工性が良好である特徴を有しており、視力矯正用眼鏡レンズ(眼鏡レンズ)、撮影機器用プラスチックレンズ、ピックアップレンズなどを代表とする各種プラスチック製光学用レンズ、情報記録用光ディスク基板、液晶セル用プラスチック基板、導光板、光ファイバー、光導波路などの各種光学部品用の成形材料として有用である。
【0003】
【従来の技術】
無機ガラスは、透明性に優れ、光学異方性が小さいなどの諸物性に優れていることから、透明性光学材料として広い分野で使用されている。しかしながら、重くて破損しやすいこと、生産性が悪い等の問題があり、近年、無機ガラスに代わる光学用樹脂(有機光学材料)の開発が盛んに行われている。
【0004】
光学用樹脂として基本的に最も重要な特性の一つは透明性である。現在までに透明性の良好な光学用樹脂として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ビスフェノールAポリカーボネート(BPA−PC)、ポリスチレン(PS)、メチルメタクリレート-スチレン共重合ポリマー(MS)、スチレン-アクリロニトリル共重合ポリマー(SAN)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)(TPX)、ポリシクロオレフィン(COP)、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート(EGAC)、ポリチオウレタン(PTU)などが知られている。
【0005】
PMMAは透明性、耐候性に優れ、かつ、成形性も良好であり、代表的な光学用樹脂の一つとして広く用いられている。しかしながら、屈折率(nd)が1.49と比較的低く、吸水性が大きいという欠点を有している。
BPA−PCは、透明性、耐熱性、耐衝撃性に優れ、比較的高屈折率(nd=1.59)であり、情報記録用光ディスク基板を代表とする光学用途において用いられているが、色収差(屈折率分散)、複屈折が比較的大きく、また溶融粘度が高く成形性がやや困難である等の欠点を有している。
【0006】
PSおよびMSは成形性、透明性、低吸水性および高屈折性に優れるものの、耐衝撃性、耐候性および耐熱性に劣る欠点を有しているため、光学用樹脂としてほとんど実用化されていない。また、SANは比較的、屈折率が高く、機械的物性もバランスがよいとされているが、耐熱性にやや難があり(熱変形温度:80〜90℃)、同様に光学用樹脂としてほとんど使用されていない。
【0007】
TPXおよびCOPは透明性、低吸水性、耐熱性に優れるものの、低屈折率(nd =1.47〜1.53)であり、光学用樹脂としての応用分野が限定される。
【0008】
EGACはモノマーであるジエチレングリコールビスアリルカーボネートを重合して得られる熱硬化性樹脂であり、一般汎用の眼鏡レンズ用途には最も多く使用されている。透明性、耐熱性が良好であり、色収差が極めて小さいといった特徴を有しているものの、屈折率が低く(nd =1.50)、耐衝撃性にやや劣るという欠点がある。
【0009】
PTUはジイソシアネート化合物とポリチオール化合物との反応で得られる熱硬化性樹脂であり、高屈折率の眼鏡レンズ用途において、現在、最も多く使用されている。透明性、耐衝撃性に優れ、かつ、高屈折率であって、色収差も比較的小さく、極めて優れた光学用樹脂である。しかしながら、唯一、眼鏡レンズを製造する工程において熱重合成形時間に長時間(1〜3日)を要するといった欠点があり、生産性の点で課題を残している。
【0010】
代表的な光学用樹脂の一つである上記ビスフェノールAポリカーボネート(BPA−PC、以下、汎用ポリカーボネートと称する)に見られた前記欠点を改良し、かつ、射出成形加工により短時間で高品質な光学部品を得る目的で、新規なポリカーボネート系の熱可塑性光学用樹脂が提案されている。例えば、脂環系ジヒドロキシ化合物から誘導される繰り返し構造単位を有する脂環系ポリカーボネート共重合体などのポリマーが比較的低色収差(高アッベ数)、低複屈折性であるいことが開示されており、光学用途での利用が提案されている(例えば、特開昭64−66234号公報、特開平1−223119号公報など)。これらの方法によれば、射出成形法を用いた短時間での光学部品の成形加工、製造が可能となり、かつ、得られた光学部品は高アッベ数であるか、あるいは、複屈折率が比較的低いなどの特徴を有しているものの、光学部品として実用上、十分満足されるものとは言い難かった。
【0011】
すなわち、例えば、視力矯正用眼鏡レンズとして用いた場合、光学特性が不十分(屈折率、アッベ数のバランスが悪く、両方が十分高くない)で、さらに、熱的特性(例えば、加熱変形温度など)、機械的物性(例えば、耐衝撃性など)、耐薬品性(例えば、耐溶剤性、耐油性など)が実用上、要求される性能のレベルに十分に達していない等、いくつかの問題点を残していた。
【0012】
以上のように、従来の光学用樹脂は用途に応じてその特徴を考慮して使用されているものの、それぞれに克服すべき欠点、問題点を有しているのが現状である。
【0013】
このような状況下にあって、透明性、光学特性に優れ(高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、機械的特性(例えば、耐衝撃性など)、熱的特性(例えば、熱変形温度など)、耐光性、耐薬品性が良好であり、かつ、溶融流動性に優れた新規な熱可塑性光学用樹脂の開発が切望されているのが現状である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上述したような従来の光学用樹脂の欠点を解決し、透明性、光学特性(高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)に優れ、機械的特性、熱的特性、耐光性、耐薬品性が良好であり、かつ、射出成形加工性の良好な新規熱可塑性光学用樹脂を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、
一般式(1−A)(化3)および一般式(2−A)(化4)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリ(チオ)エステル共重合体に関する。
【0016】
【化3】
Figure 0003970187
【0017】
【化4】
Figure 0003970187
【0018】
(式中、mは1〜4の整数を表し、R1、R2はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基またはハロゲン原子を表し、n、nはそれぞれ独立に、炭素数0〜4の整数を表す)
さらには、上記ポリ(チオ)エステル共重合体からなる樹脂組成物、ならびに、上記共重合体または樹脂組成物を成形して得られる光学部品に関するものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1−A)および一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリ(チオ)エステル共重合体である。
【0020】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、後で詳細に説明するが、代表的には、下記の式(1)(化5)でジチオール化合物と式(2)(化6)で表されるジヒドロキシ化合物との混合物を、式(3)(化7)で表されるジカルボン酸またはその誘導体(ジカルボン酸ハロゲン化物またはジカルボン酸エステル化合物を表す。以下、同様な意味を表す)と作用させ、(チオ)エステル化反応により共重合させることにより得られる。
【0021】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、式(1)で表されるジチオール化合物と式(3)で表されるジカルボン酸またはその誘導体とから得られる一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位と、式(2)で表されるジヒドロキシ化合物と式(3)で表されるジカルボン酸またはその誘導体とから得られる一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位の2つの繰り返し構造単位を、必須の繰り返し構造単位として有する共重合体であって、ランダム共重合体、交互共重合体あるいはブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0022】
【化5】
Figure 0003970187
【0023】
【化6】
Figure 0003970187
【0024】
(式中、mは1〜4の整数を表し、R1、R2はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基またはハロゲン原子を表し、n、nはそれぞれ独立に、炭素数0〜4の整数を表す)
【0025】
【化7】
Figure 0003970187
【0026】
これらのポリ(チオ)エステル共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)、熱的特性、機械的特性、成形加工性等の諸物性のバランスを考慮すると、一般式(1−A)および一般式(2−A)で表される全繰り返し構造単位中に含まれる一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜99モル%であり、好ましくは、3〜95モル%であり、より好ましくは、5〜90モル%である。
一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位が3モル%以上である場合、屈折率、アッベ数が高くなり、光学用樹脂として好適に使用される。
【0027】
一方、これらのポリ(チオ)エステル共重合体において、光学特性(屈折率、アッベ数)、耐熱性、成形加工性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、一般式(1−A)および一般式(2−A)で表される全繰り返し構造単位中に含まれる一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位の割合は、1〜99モル%であり、好ましくは、3〜95モル%であり、より好ましくは、5〜90モル%である。
一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位が3モル%以上である場合、熱的特性、機械的特性、耐薬品性などが向上し、光学用樹脂として好適に使用される。
【0028】
一般式(1−A)において、mは整数1〜3を表し、好ましくは、整数1〜2を表し、より好ましくは、整数1を表す。
【0029】
一般式(2−A)において、R1、R2はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基またはハロゲン原子を表す。
【0030】
該置換基R1、R2として、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、フッ素原子、塩素原子または臭素原子であり、より好ましくは、メチル基、臭素原子、メトキシ基またはフェニル基である。
【0031】
かかる置換基R1、R2として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェニル基、塩素原子または臭素原子などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
該置換基R1、R2として、さらに好ましくは、メチル基、フェニル基または臭素原子である。
【0032】
一般式(2−A)において、n、nはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは、0から3の整数であり、より好ましくは、0〜2の整数であり、さらに好ましくは、0〜1の整数である。
一般式(2−A)におけるn、nとして、共に整数0は特に好ましい。
【0033】
一般式(1−A)で表される繰り返し繰り返し構造単位の中でも、式(1−A−i)(化8)、式(1−A−ii)(化9)または式(1−A−iii)(化10)で表される繰り返し構造単位は好ましく、式(1−A−i)または式(1−A−ii)で表される繰り返し構造単位はより好ましく、式(1−A−i)で表される繰り返し構造単位は特に好ましい。
【0034】
【化8】
Figure 0003970187
【0035】
【化9】
Figure 0003970187
【0036】
【化10】
Figure 0003970187
【0037】
(式中、mは前記に同じ)
一般式(2−A)で表される繰り返し繰り返し構造単位の中でも、式(2−A−i)(化11)、式(2−A−ii)(化12)または式(2−A−iii)(化13)で表される繰り返し構造単位は好ましく、式(2−A−i)で表される繰り返し構造単位は、より好ましい。
【0038】
【化11】
Figure 0003970187
【0039】
【化12】
Figure 0003970187
【0040】
【化13】
Figure 0003970187
【0041】
(式中、R1、R2およびn、nは前記に同じ)
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体において、原料モノマーとなる式(2)で表されるジオール化合物が位置異性体、立体異性体を有している。
【0042】
さらにまた、式(3)で表されるジカルボン酸またはその誘導体が、位置異性体、立体異性体(エキソ体またはエンド体など)を有していることから、式(1−A)および式(2−A)で表される繰り返し構造単位において、それらに起因する位置および立体構造の異なる複数の繰り返し構造単位が存在する。
【0043】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、これらの複数の異性体構造を有する繰り返し構造単位の混合物であってもよく、あるいは、特定の一種類の異性体構造を有する繰り返し構造単位のみからなる重合体であってもよい。
【0044】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、前述したように、式(1)で表されるジチオール化合物と式(2)で表されるジヒドロキシ化合物を、式(3)で表されるジカルボン酸またはその誘導体(ジカルボン酸ハロゲン化物またはジカルボン酸エステル化合物)に作用させ(チオ)エステル化反応によって(共)重合することにより製造される。重合反応それ自体は、従来、公知のポリ(チオ)エステル重合の方法と同様にして好適に実施される。
【0045】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体を製造するに際して用いられる原料モノマーである式(1)で表されるジチオール化合物ならびに式(2)で表されるジヒドロキシ化合物は、それぞれ既知化合物であり、公知の方法により好適に製造され、あるいは、工業的に製造される化合物として入手可能である。
【0046】
すなわち、式(1)で表されるジチオール化合物は、例えば、Beilstein.,1巻(2)2455頁などに記載の方法により好適に製造される。
式(1)で表されるジチオール化合物としては、例えば、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス[2−(2’−メルカプトエチルチオ)エチル]スルフィド、ビス{2−[2−(2’−メルカプトエチルチオ)エチルチオ]エチル}スルフィドなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
式(2)で表されるジヒドロキシ化合物は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称、ビスフェノールA)またはその類縁体化合物であり、例えば、酸触媒の存在下にアセトンと各種フェノール類とを反応させることにより工業的に広く製造されており、工業原料として入手可能である。
【0048】
これらの化合物には二つのベンゼン環に結合したヒドロキシ基について、各々、位置異性体が存在するが、本発明において用いる式(2)で表される化合物として、いずれの位置異性体であってもよく、あるいは、これら位置異性体の混合物であってもよい。
【0049】
かかるジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、
2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称、ビスフェノールA〕、2-(4'−ヒドロキシフェニル)-2-(3'−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(2'−ヒドロキシフェニル)-2-(4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(2'−ヒドロキシフェニル)-2-(2'−ヒドロキシフェニル)プロパン、
【0050】
2,2-ビス(3'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−エチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−n−プロピル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−イソプロピル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−sec−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−シクロヘキシル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−アリル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3'−メトキシ−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3'−フェニル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3',5'−ジブロモ−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3',5'-ジメチル−4'−ヒドロキシフェニル) プロパン、2,2-ビス(2',3',5',6'-テトラメチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン
などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
式(3)で表されるジカルボン酸またはその誘導体としては、ジカルボン酸化合物、その酸ハロゲン化物(例えば、酸クロリド、酸ブロミドなど)またはそのエステル化合物(例えば、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、tert−ブチルエステルなどのアルキルエステル、フェニルエステルなどのアリールエステルなど)が包含される。かかる化合物は公知化合物であり、公知の方法、例えば、下記式(A)(化14)に示される合成経路等に従って、好適に製造される。
【0052】
すなわち、フタル酸エステル類を、ラネーニッケル等の触媒存在下に接触還元してシクロヘキサンジカルボン酸エステル化合物が得られ、さらに該エステル化合物を加水分解してシクロヘキサンジカルボン酸が得られる。さらにハロゲン化チオニル、塩化カルボニル、シュウ酸ジクロライド、オキシ塩化リン、五塩化リンなどの化合物を用いた公知の酸ハロゲン化法により、シクロヘキサンジカルボン酸の酸ハロゲン化物が、好適に製造される。
【0053】
【化14】
Figure 0003970187
【0054】
(式中、Xは塩素原子または臭素原子を表し、R3はアルキル基またはアリール基を表す)
本発明に係る式(3)で表されるジカルボン酸としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等である。
【0055】
これらのジカルボン酸またはその誘導体(その酸ハロゲン化物またはそのエステル化合物)には、上記位置異性体の他に、シス体、トランス体などの立体異性体が存在するが、本発明にかかるジカルボン酸またはその誘導体(その酸ハロゲン化物またはそのエステル化合物)としては、特に限定するものではなく、これらの位置異性体または立体異性体をそれぞれ単離して単独で使用してもよく、あるいは、これら位置異性体または立体異性体の混合物であってもよい。
【0056】
本発明に係る式(3)で表されるジカルボン酸またはその誘導体としては、シス体およびトランス体の混合物として使用されることが、通常、より好ましい。かかる場合、シス体とトランス体の比率は、特に限定されるものではない。
【0057】
本発明に関連する公知のポリマー化合物として、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸とビスフェノール化合物との反応により得られる繰り返し単にを有するポリマー化合物が示唆されている(例えば、特開平2001−242657号、Journal of Applied Polymer Science.,Vol.14,658〜698頁(1970年)、Journal of Applied Polymer Science.,Vol.11,227〜244頁(1967年)など)。
しかしながら、これらの文献に示されているポリマー化合物の光学特性に関する記載、あるいは該ポリマー化合物の光学用途への応用を示唆する記載はない。
【0058】
さらに、本発明者らが検討したところによれば、それらポリマー化合物を光学用材料として応用する場合、前の従来技術で述べたような光学用樹脂として求められている各種要求物性(透明性、光学特性、機械的特性、熱的特性、耐光性、耐薬品性、成形加工性など)を十分満たしているとは言えなかった。
【0059】
本発明者らが前述の課題を解決するため、鋭意検討した結果、一般式(1−A)および一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリ(チオ)エステル(共)重合体が、透明性、光学特性、機械的特性、熱的特性、成形加工性、耐薬品性などを具備するという驚くべき知見を見い出すにいたり、本発明に到達した。
【0060】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、反応自体は公知である各種ポリ(チオ)エステル重合方法[例えば、実験化学講座第4版 (28巻)高分子合成、217〜231頁、丸善出版(1988年)に記載の方法など]に従って、好適に製造される。
すなわち、代表的には、例えば、ジカルボン酸クロリド等を用いる溶融重合法、溶液重合法、界面重合法、エステル交換法、直接重合法などがの方法であり、より具体的には、
▲1▼式(1)で表されるジチオール化合物と式(2)で表されるジヒドロキシ化合物の混合物に、式(3)で表されるジカルボン酸の酸ハロゲン化物(例えば、酸クロリド、酸ブロミドなど)を、無溶媒または溶媒中で作用させて脱ハロゲン化水素して(チオ)エステル化反応を行い重合する方法;
▲2▼式(1)で表されるジチオール化合物と式(2)で表されるジヒドロキシ化合物の混合物に、式(3)で表されるジカルボン酸のエステル化合物を、無溶媒または溶媒中で作用させてエステル交換反応により(チオ)エステル化反応を行い重合する方法;
▲3▼式(1)で表されるジチオール化合物と式(2)で表されるジヒドロキシ化合物の混合物に、式(3)で表されるジカルボン酸化合物を、無溶媒または溶媒中で作用させて、脱水縮合して(チオ)エステル化反応を行い重合する方法などが挙げられる。
【0061】
これらの方法においては、反応を促進するために、必要に応じて、酸性化合物または塩基性化合物(無機の酸性または塩基性化合物、有機の酸性または塩基性化合物など)を使用して、その存在下に行うことが可能である。
【0062】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の分子量として、特に限定されるものではないが、通常、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定する標準ポリスチレン換算の分子量として、重量平均分子量が5000〜200000であり、好ましくは、10000〜180000であり、より好ましくは、20000〜150000である。
【0063】
また、重量平均分子量と数平均分子量の比として表される多分散性インデックスとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは、1.5〜20.0であり、より好ましくは、2.0〜15.0であり、さらに好ましくは、2.0〜10.0である。
【0064】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体または該重合体を成形して得られる光学部品(例えば、プラスチックレンズなど)のガラス転移温度は、特に限定するものではないが、通常、70℃以上であり、各種光学部品用として使用されるために、好ましくは、80℃以上であり、より好ましくは、90℃以上であり、さらに好ましくは、100℃以上である。
【0065】
一方、ガラス転移温度が高すぎると、成形加工性の点から好ましくない。すなわち、溶融流動開始温度、溶融粘度が相対的に高くなり、成形加工し難くなったり、視力矯正用レンズとして染色加工して用いる際に染色性が悪くなる等の問題が生じる。
【0066】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体のガラス転移温度としては、好ましくは、70℃〜200℃であり、より好ましくは、80℃〜180℃であり、さらに好ましくは、90〜170℃である。
【0067】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体または該重合体を成形して得られる光学部品(例えば、プラスチックレンズなど)の屈折率(nd)は、1.55以上であって、好ましくは、1.56以上であり、より好ましくは、1.57以上であり、さらに好ましくは、1.58以上である。
該重合体または該光学部品の屈折率(nd)が1.59以上であることは、特に好ましい。
また、ポリ(チオ)エステル重合体または該重合体を成形して得られる光学部品(例えば、プラスチックレンズなど)のアッベ数(νd)は、33以上であって、好ましくは、35以上であり、より好ましくは、36以上であり、さらに好ましくは、38以上である。
該重合体または該光学部品のアッベ数(νd)が40以上であることは、特に好ましい。
【0068】
本発明のポリ(チオ)エステル重合体および該重合体を成形して得られる光学部品のASTM D−0570に準じた吸水率測定による吸水率は、1.0%以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5%以下であり、さらに好ましくは、0.3%以下であり、該吸水率が0.2%以下であることは、特に好ましい。
【0069】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、一般式(1−A)で表される繰り返し構造単位であり、かつ、互いに異なる複数の繰り返し構造単位を含有していてもよい。
【0070】
また、本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位であって、互いに異なる複数の繰り返し構造単位を含有していてもよい。
【0071】
さらに、本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、本発明の所望の効果を損なわない範囲において、一般式(1−A)または一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位以外の、他の繰り返し構造単位を含有してなるポリ(チオ)エステル共重合体であってもよい。
【0072】
一般式(1−A)または一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位以外の、他の繰り返し構造単位としては、
▲1▼式(1)で表されるジチオール化合物以外の他のジチオール化合物、または、式(2)で表されるジヒドロキシ化合物以外の他のジヒドロキシ化合物と、一般式(3)で表されるジカルボン酸またはその誘導体から得られる繰り返し構造単位、
▲2▼式(3)で表されるジカルボン酸(またはその誘導体)以外の、他のジカルボン酸(またはその誘導体)から誘導される繰り返し構造単位などが挙げられる。
【0073】
式(1)で表されるジチオール化合物以外の他のジチオール化合物としては、各種公知の芳香族ジチオール化合物、ならびに、鎖状または環状の脂肪族ジチオール化合物が例示される。
具体的には、1,4-ベンゼンジチオール、1、3-ベンゼンジチオール、1,2-ベンゼンジチオール、4,4’-チオジベンゼンジチオール、p−キシリレンジチオール、m−キシリレンジチオール、o−キシリレンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオールなどのジチオール化合物が例示されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
式(2)で表されるジヒドロキシ化合物以外の他のジヒドロキシ化合物としては、式(2)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)およびその類縁体化合物以外の他の公知の芳香族ジヒドロキシ化合物、あるいは、鎖状脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物などを例示することができる。
【0075】
かかる式(2)で表されるジヒドロキシ化合物以外の他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1 ,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルメタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、
2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-3−メチルブタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) ペンタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) ヘキサン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) ヘプタン、4,4-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) ヘプタン、2,2-ビス(4'-ヒドロキシフェニル) トリデカン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)オクタン、
【0076】
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シアノメタン、1-シアノ-3,3−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1-ビス(3'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3',5'-ジメチル−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3',5'-ジクロロ−4'−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサン、1,1-ビス (4'−ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)アダマンタン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
4,4'- ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'- ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(ヒドロキシアリール)エーテル類;
4,4'- ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3'−ジシクロヘキシル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3'−ジフェニル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のビス(ヒドロキシアリール)スルフィド類;
4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド等のビス(ヒドロキシアリール)スルホキシド類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン〔通称、ビスフェノールS〕、4,4'- ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルスルホン等のビス(ヒドロキシアリール)スルホン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ケトン等のビス(ヒドロキシアリール)ケトン類;
さらには、7,7'−ジヒドロキシ−3,3',4,4'-テトラヒドロ−4,4,4',4'-テトラメチル-2,2'-スピロビ(2H−1−ベンゾピラン)、トランス-2,3- ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-2- ブテン、9,9-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)フルオレン、3,3-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-2- ブタノン、1,6-ビス(4'−ヒドロキシフェニル)-1,6- ヘキサンジオン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p-キシレン〔通称、ビスフェノールP〕、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m-キシレン〔通称、ビスフェノールM〕、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン等の芳香族ジヒドロキシ化合物;
1,2−ジヒドロキシエタン、1,3−ジヒドロキシプロパン、1,4−ジヒドロキシブタン、1,5−ジヒドロキシペンタン、3−メチル−1,5−ジヒドロキシペンタン、1,6−ジヒドロキシヘキサン、1,7−ジヒドロキシヘプタン、1,8−ジヒドロキシオクタン、1,9−ジヒドロキシノナン、1,10−ジヒドロキシデカン、1,11−ジヒドロキシウンデカン、1,12−ジヒドロキシドデカン、ジヒドロキシネオペンチル、2−エチル−1,2−ジヒドロキシヘキサン、2−メチル−1,3−ジヒドロキシプロパン等の鎖状脂肪族ジヒドロキシ化合物;
1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール等の脂環式ジヒドロキシ化合物;
o−ジヒドロキシキシリレン、m−ジヒドロキシキシリレン、p−ジヒドロキシキシリレン、1,4−ビス(2’−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−ビス(3’−ヒドロキシプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(4’−ヒドロキシブチル)ベンゼン、1,4−ビス(5’−ヒドロキシペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(6’−ヒドロキシヘキシル)ベンゼン、2,2−ビス〔4’−(2”−ヒドロキシエチルオキシ)フェニル〕プロパン等の芳香族基を含む脂肪族ジヒドロキシ化合物などが例示されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
式(3)で表されるジカルボン酸またはその誘導体以外の、他のジカルボン酸(またはその誘導体)としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5-チオフェンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;
1,4-シクロヘキサンジ酢酸などの脂環式ジカルボン酸;
コハク酸、マレイン酸、フマル酸、1,3-プロパンジカルボン酸、1,4-ブタンジカルボン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸化合物等が例示されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
さらに、一般式(1−A)または一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位以外の他の繰り返し構造単位として、上記化合物以外の2官能性化合物から誘導される繰り返し構造単位を含有していてもよい。かかる2官能性化合物を用いることにより、チオエステル基またはエステル基以外に、カーボネート基、イミノ基、エーテル基、イミド基、アミド基、ウレタン基、ウレア基等の結合基を含有するポリ(チオ)エステル共重合体が得られるが、本発明はかかるポリ(チオ)エステル共重合体も包含するものである。
【0079】
一般式(1−A)または一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位以外の他の繰り返し構造単位を含有する場合、全繰り返し構造単位中における、一般式(1−A)および一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位の占める割合は、本発明の所望の効果を損なわない範囲であれば、特に制限されるものではないが、通常、50モル%以上であり、好ましくは、70モル%以上であり、より好ましくは、90モル%以上である。
【0080】
本発明の所望の効果を最大限に得るためには、前記一般式(1−A)および一般式(2−A)で表される繰り返し構造単位のみからなるポリ(チオ)エステル二元共重合体は、より好ましい。
【0081】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体において、末端基は、前述したような式(1)、(2)または式(3)で表される原料モノマーに由来するチオール基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の末端基であってもよく、また、以下に説明するような分子量調節剤(例えば、1価のヒドロキシ化合物、1価のチオール化合物または1価のカルボン酸誘導体など)でポリマー主鎖の末端基が封止された重合反応に不活性な末端基であってもよい。
【0082】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体中での末端基の量は、特に制限はないが、通常、構造単位の総モル数に対して、0.001〜5モル%であり、好ましくは、0.01〜4モル%であり、より好ましくは、0.05〜3モル%である。
【0083】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体を、前記の方法に従い重合して製造する際に、分子量を調節する目的で分子量調節剤の存在下に重合を行うことは好ましいことである。
【0084】
かかる分子量調節剤としては特に限定されるものではなく、公知のポリ(チオ)エステル重合の際に使用される各種既知の分子量調節剤であればよく、例えば、1価の脂肪族ヒドロキシ化合物または芳香族ヒドロキシ化合物、1価の脂肪族チオール化合物または芳香族チオール化合物、もしくは、1価の脂肪族または芳香族カルボン酸誘導体(例えば、1価の脂肪族または芳香族カルボン酸ハロゲン化物、1価の脂肪族または芳香族カルボン酸エステル化物など)等が挙げられる。
【0085】
かかる化合物として、具体的には、メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、メトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキシルアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェノキシエタノール、フェノール、4-tert-ブチルフェノール、2-クレゾール、3-クレゾール、4-クレゾール、4-エチルフェノール、4-シクロヘキシルフェノール、4-メトキシフェノール、4-イソプロペニルフェノール、4-クロロフェノール、4-ブロモフェノール、4-クミルフェノール、4-フェニルフェノール、α−ナフトール、β−ナフトールなど1価の脂肪族ヒドロキシ化合物または芳香族ヒドロキシ化合物;
メタンチオール、エタンチオール、ブタンチオール、オクタンチオール、シクロヘキサンチオール、フェニルメタンチオール、ベンゼンチオールなどの1価の脂肪族または芳香族チオール化合物;
酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、安息香酸、4-メチル安息香酸、3-メチル安息香酸、2-メチル安息香酸、4-クロロ安息香酸、3-クロロ安息香酸、2-クロロ安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸などの1価の脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸などが挙げられるが、
これらに限定されるものではない。
【0086】
分子量調節剤の使用量は特に制限するものでなく、目的の分子量に調節するために所望に応じて用いればよいが、通常、重合するジヒドロキシ化合物の総モル数に対して、0.001〜5モル%であり、好ましくは、0.01〜4モル%であり、より好ましくは、0.05〜3モル%であり、さらに好ましくは、0.05〜2モル%である。
【0087】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、製造時あるいは成形時に、さらに公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤(例えば、リン原子含有化合物、フェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、硫黄原子含有化合物など)、紫外線吸収剤、離型剤(例えば、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル類など)、滑剤、難燃剤(例えば、有機ハロゲン系化合物など)、染料、流動性改良剤、熱安定剤(例えば、硫黄原子含有化合物など)等を併せて添加して使用することは差し支えない。
【0088】
また本発明のポリ(チオ)エステル共重合体に、例えば、帯電防止剤、充填剤(例えば、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維など)等を添加して、光学部品以外の各種成形用材料としても使用しても差し支えない。
【0089】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、製造時あるいは成形時に他のポリマーと混合して、成形材料として使用することが可能である。他のポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、パラオキシベンゾイル系ポリ(チオ)エステル、ポリアリーレート、ポリスルフィド等が挙げられる。
【0090】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体からなる樹脂組成物は、
(1)本発明のポリ(チオ)エステル共重合体、ならびに、
(2)酸化防止剤(例えば、リン原子含有化合物、フェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、硫黄原子含有化合物など)を必須成分として含有してなる組成物である。
【0091】
本発明の樹脂組成物に添加する酸化防止剤の量は、本発明のポリ(チオ)エステル共重合体100重量部に対して、通常、0.001〜5重量部であり、より好ましくは、0.005〜3重量部であり、さらに好ましくは、0.01〜2重量部である。
かかる酸化防止剤としては、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシルホスファイト)、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリス(2−クロロエチル)ホスファイト、トリス(2,3−ジクロロプロピルホスファイト)、トリシクロヘキシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、フェニル−ジデシルホスファイト、ジフェニル−イソオクチルホスファイト、ジフェニル−2−エチルヘキシルホスファイト、ジフェニル−デシルホスファイト、ジフェニル−トリデシルホスファイト、ビス(トリデシル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ジステアリル−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ジフェニル−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、テトラフェニル−ジプロピレングリコール−ジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニル−ジホスファイト、テトラ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ジフェニルホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスチリルテトラホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイトなどの亜リン酸類;
トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどのリン酸類;
テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイトなどの亜ホスホン酸類;
ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジイソプロピルなどのホスホン酸類などのリン原子含有化合物、
オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートなどの公知のフェノール系化合物が例示されるが、これらに限定されるものではない。これらの酸化防止剤は、単独で用いてもよく、あるいは、2種類以上併用しても差し支えない。
【0092】
また酸化防止剤以外にも、本発明の所望の効果を損なわない程度で、前述したような、紫外線吸収剤、離型剤(例えば、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル類など)、滑剤、難燃剤(例えば、有機ハロゲン系化合物など)、染料、流動性改良剤、熱安定剤(例えば、硫黄原子含有化合物など)を含有していても差し支えない。
【0093】
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定はなく、通常、樹脂組成物を製造する各種公知の方法により行うことができる。すなわち、 (1)ポリ(チオ)エステル溶液からポリ(チオ)エステルを固体として単離した後、該固体に対して上記酸化防止剤を添加して、さらに公知の各種混合装置(例えば、タンブラーミキサー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサーなど)により分散混合する方法、
あるいは、(2)前述の通り、各種混合機により分散混合した後、押出機、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法などが挙げられる。また、これらの方法を併用しても差し支えない。
【0094】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体または該共重合体を含有してなる樹脂組成物は、熱可塑性であり、溶融状態で射出成形、押出成形、ブロー成形、射出圧縮成形、さらには、溶液キャスティングなどの各種公知の成形方法により好適に成形加工される。
【0095】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体または該共重合体を含有してなる樹脂組成物を成形して光学部品を得るための成形方法として、好ましくは、射出成形、押出成形または射出圧縮成形であり、より好ましくは、射出成形または射出圧縮成形である。
【0096】
本発明のポリ(チオ)エステルを成形して光学部品を製造する際の成形条件としては、樹脂または樹脂組成物の熱的特性に応じて任意の条件で行えるが、通常、樹脂温度180〜350℃、金型温度25(室温)〜160℃の範囲であり、好ましくは、樹脂温度180〜300℃、金型温度50〜150℃の範囲であり、さらに好ましくは、樹脂温度180〜300℃、金型温度50〜150℃の範囲である。
【0097】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、透明性、光学特性に優れ(高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、熱的特性、機械的特性などが良好であり、かつ、成形加工性、生産性が良好であることから、各種光学部品用材料として有用である。
【0098】
本発明の光学部品としては、視力矯正用眼鏡レンズ、撮像機器(例えば、カメラ、VTRなど)用レンズ、ピックアップ用レンズ、コリメトリーレンズ、fΘレンズ、フレネルレンズなどの各種プラスチック光学レンズ、光ディスク基板、光磁気ディスク基板などの光記録媒体基板、液晶セル用プラスチック基板、光ファイバー、光導波路等の各種光学部品を挙げることができる。
【0099】
特に、本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の特性を考慮すると、本発明の光学部品として、視力矯正用眼鏡レンズが好ましい。
【0100】
また本発明のポリ(チオ)エステル共重合体または該共重合体を含有してなる樹脂組成物は、成形用材料として上記光学部品以外の用途、例えば、電気機器、電子部品、車両用部品、建材等に成形して用いられることも可能である。
【0101】
上記方法で得られる本発明の光学部品は、透明性、光学特性に優れ(高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、熱的特性、機械的特性、耐光性、耐薬品性などが良好であり、上記に例示したような用途で好適に使用される。
【0102】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例で製造したポリ(チオ)エステル共重合体、ならびに、該ポリ(チオ)エステル共重合体を含有してなる樹脂組成物の物性測定は、以下の方法により行われた。
[重量平均分子量の測定〕
以下、実施例で製造して得られたポリ(チオ)エステルの0.2重量%クロロホルム溶液を、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)〔昭和電工(株)製、System−11〕により測定し、重量平均分子量(Mw)を求めた。なお、測定値は標準ポリスチレンに換算した値である。
〔溶融流動開始温度および溶融粘度〕
島津高化式フローテスター(CFT500A)を使用し、荷重100kgで直径0.1cm、長さ1cmのオリフィスを用いて測定した。
[屈折率、アッベ数]
得られたポリ(チオ)エステル共重合体を240℃でプレス機によりプレス成形してシート状試験片を作成し、プルフリッヒ屈折計を用いて20℃で屈折率(nd)およびアッベ数(νd)を求めた。
[複屈折率]
実施例で製造したポリ(チオ)エステル共重合体の厚さ5μmの薄膜をシリコンウエハー上に作成した。すなわち、該ポリ(チオ)エステル共重合体の1,1,1−トリクロロエタン溶液(20%濃度)をテフロン(登録商標)製フィルター(ポア径0.45μm)で濾過した後、シリコンウエハー(直径5インチ)上に回転数2000rpm、5秒間の条件下でスピンコートした。その後、70℃で15分間乾燥して溶媒を留去させて、厚さ5μmの該成形材料の薄膜を作成した。プリズムカプラ(メトリコン社製モデル2020)を使用して632nmレーザー光源で、該薄膜のTEモード光およびTMモード光での屈折率を測定し、それらの差として複屈折率を求めた。
【0103】
<本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の製造および物性測定>
実施例1
撹拌装置、還流冷却管、温度計を設けた内容量3リットルのフラスコに、
ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド 15.43g(0.10モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 205.46g(0.90モル)およびキシレン 400gを秤取し、窒素雰囲気下、130℃で攪拌して溶解させた。この混合物の温度を130℃に保ちつつ、該混合物に対して、下記式(3−1)(化15)で表される1,4−シクロヘキサンジカルボン酸クロリド211.16g(1.01モル)を1時間かけて滴下した後、窒素気流下で副生する塩化水素を反応系外へ除去しながら、135℃で8時間反応させた。反応溶液のGPC分析を行ない、重量平均分子量が9.0×104(9.0万)となったことを確認した後、反応液を100℃に冷却して、その後、末端停止剤としてフェノール1.88g(0.020モル;ジヒドロキシ化合物およびジチオール化合物の総モル数に対して2モル%)を添加した。添加後、さらに100℃で2時間反応を続けた。反応溶液を室温まで放冷した後、メタノール2000gを加えて、析出したポリマーを濾過して集めた。60℃で20時間減圧乾燥して、白色粉末状固体として目的物のポリ(チオ)エステル共重合体 351.87g(収率98%)を得た。
得られたポリ(チオ)エステル共重合体は、GPC分析の標準ポリスチレン換算で重量平均分子量9.0×104(9.0万)であり、1H−NMR測定の結果から、該ポリ(チオ)エステル共重合体中の式(1−A−1)(化16)および式(2−A−1)(化17)で表される繰り返し構造単位のモル比は10:90であった。
前述の方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行った。
ガラス転移温度(Tg)は155℃を示した。溶融流動開始温度は260℃であり、溶融粘度は、280℃で1.3×103Pa・s(13×103Poise)であった。屈折率(nd)1.575、アッベ数(νd)35.0であり、汎用ポリカーボネートと比較して高アッベ数であった。また複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0104】
【化15】
Figure 0003970187
【0105】
【化16】
Figure 0003970187
【0106】
【化17】
Figure 0003970187
【0107】
実施例2
実施例1において、ジヒドロキシ化合物およびジチオール化合物として、
ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド 15.43g(0.10モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 205.46g(0.90モル)を使用する代わりに、
ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド 7.72g(0.05モル)、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 216.88g(0.95モル)を使用する以外は、実施例1と同様にして行った。
得られたポリ(チオ)エステル共重合体は、GPC分析の標準ポリスチレン換算で重量平均分子量8.0×104(8.0万)であり、1H−NMR測定の結果から、該ポリ(チオ)エステル共重合体中の式(1−A−1)および式(2−A−1)で表される繰り返し構造単位のモル比は、5:95であった。
前述の方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行った。
ガラス転移温度(Tg)は160℃を示した。溶融流動開始温度は270℃であり、溶融粘度は、280℃で1.5×103Pa・s(15×103Poise)であった。屈折率(nd)1.572、アッベ数(νd)34.5であり、汎用ポリカーボネートと比較して高アッベ数であった。また複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0108】
実施例3
実施例1において、ジヒドロキシ化合物およびジチオール化合物として、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド 15.43g(0.10モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 205.46g(0.90モル)を使用する代わりに、
ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド 77.16g(0.50モル)、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 114.15g(0.50モル)を使用する以外は、実施例1と同様にして行った。
得られたポリ(チオ)エステル共重合体は、GPC分析の標準ポリスチレン換算で重量平均分子量10.0×104(10.0万)であり、1H−NMR測定の結果から、該ポリ(チオ)エステル共重合体中の式(1−A−1)および式(2−A−1)で表される繰り返し構造単位のモル比は、50:50であった。
前述の方法に従い、得られた本発明のポリ(チオ)エステル共重合体の物性測定を行った。
ガラス転移温度(Tg)は120℃を示した。溶融流動開始温度は230℃であり、溶融粘度は、255℃で1.3×103Pa・s(13×103Poise)であった。屈折率(nd)1.589、アッベ数(νd)36.5であり、汎用ポリカーボネートと比較して高アッベ数であった。また複屈折率は汎用ポリカーボネートと比較して低い値を示した。
【0109】
比較例1(公知のポリメチルメタクリレートを用いた物性測定および光学部品の製造)
公知のポリメチルメタクリレート樹脂(一般光学用グレード)を用いて上記方法に従って、物性測定を行った。ガラス転移温度(Tg)は111℃であり、屈折率(nd)1.487、アッベ数(νd)54であり、複屈折率は1×10-4以下であった。
【0110】
比較例2(公知のポリカーボネートを用いた物性測定)
公知の汎用ポリカーボネート(光学ディスク用グレード;重量平均分子量3万)を用いて上記方法に従って、物性測定を行った。ガラス転移温度(Tg)は130℃であり、屈折率(nd)1.580、アッベ数(νd)30であった。複屈折率は70×10-4であり、比較的高い値であった。
【0111】
<本発明の光学部品用成形材料の製造>
実施例4
実施例1で製造したポリ(チオ)エステル共重合体100重量部、トリス(2,4−ジ−tert―ブチルフェニル)ホスファイト0.1重量部およびペンタエリスチリル[3−(3,5−ジ-tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.1重量部を、ヘンシェルミキサーにて混合した後、単軸押出機(65mm)にてシリンダー温度275℃で脱気しながら溶融混練して、押出ペレット化して、無色透明ペレットの光学部品用成形材料(樹脂組成物)を得た。
【0112】
実施例5
実施例2で製造したポリ(チオ)エステル共重合体100重量部、トリス(2,4−ジ−tert―ブチルフェニル)ホスファイト0.05重量部およびペンタエリスチリル[3−(3,5−ジ-tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.05重量部を、ヘンシェルミキサーにて混合した後、単軸押出機(65mm)にてシリンダー温度280℃で脱気しながら溶融混練して、押出ペレット化して、無色透明ペレットの光学部品用成形材料(樹脂組成物)を得た。
【0113】
<本発明の光学部品の製造>
実施例6
実施例4で得られた成形材料を用いて射出成形によりレンズ形状の成形品を製造した。すなわち、該成形材料のペレットを80℃で24時間減圧乾燥した後、射出成形機にて、成形温度285℃、金型温度120℃で射出成形して、無色透明、プラスレンズ(凸レンズ;直径75mm、中心厚4.2mm、コバ厚1.0mm、+2.00D)形状の成形体を得た。この成形体を偏光板の間において観察したところ、脈理、歪みなどは観察されず、複屈折が低く光学的に均質なものであった。このように本発明の成形材料を使用することにより、汎用ポリカーボネートなどと比較して低い温度で成形が可能で、かつ、光学的に均質な成形品を好適に製造することができた。
【0114】
実施例7
実施例5で得られた成形材料を用いて射出成形によりレンズ形状の成形品を製造した。すなわち、該成形材料のペレットを80℃で24時間減圧乾燥した後、射出成形機にて、成形温度290℃、金型温度120℃で射出成形して、無色透明、プラスレンズ(凸レンズ;直径75mm、中心厚4.2mm、コバ厚1.0mm、+2.00D)形状の成形体を得た。
この成形体を偏光板の間において観察したところ、脈理、歪みなどは観察されず、複屈折が低く光学的に均質なものであった。このように本発明の成形材料を使用することにより、汎用ポリカーボネートなどと比較して低い温度で成形が可能で、かつ、光学的に均質な成形品を好適に製造することができた。
上記実施例で得られた本発明のプラスチックレンズは、透明性、熱的特性(熱変形温度など)、機械的特性(耐衝撃性、引張り強度、曲げ強度など)、耐薬品性などの諸物性面で、実用上、良好な特性を示した。
【0115】
【発明の効果】
本発明のポリ(チオ)エステル共重合体は、光学特性に優れ(透明性、高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、機械的物性、熱的特性が良好であり、かつ、溶融流動性に優れ、生産性が良好であることから、各種光学部品用の成形材料として非常に有用である。
【0116】
また該ポリ(チオ)エステル共重合体を成形して得られる本発明の光学部品は、光学特性に優れ(透明性、高屈折率、高アッベ数、低複屈折率など)、熱的特性、機械的特性、耐薬品性が良好であり、有用である。

Claims (4)

  1. 一般式(1−A)(化1)および一般式(2−A)(化2)で表される繰り返し構造単位を含有してなるポリ(チオ)エステル(共)重合体。
    Figure 0003970187
    Figure 0003970187
    (式中、mは1〜4の整数を表し、R1、R2はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基またはハロゲン原子を表し、n、nはそれぞれ独立に、炭素数0〜4の整数を表す)
  2. 請求項1記載のポリ(チオ)エステル共重合体および酸化防止剤を含有する樹脂組成物であって、酸化防止剤の含有量が請求項1記載のポリ(チオ)エステル共重合体100重量部に対して0.001〜5重量部である、樹脂組成物。
  3. 請求項1記載のポリ(チオ)エステル共重合体を成形して得られる光学部品。
  4. 請求項2記載の樹脂組成物を成形して得られる光学部品。
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