JP4731680B2 - ポリエステル樹脂、及びそれを含んで構成されるレンズ - Google Patents

ポリエステル樹脂、及びそれを含んで構成されるレンズ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル樹脂、及びそれを含んで構成される光学部品に関し、より詳細には、低分散性(高いアッベ数)、高屈折性、耐熱性、高い透明性に優れ、溶融成形可能なポリエステル樹脂、及びそれを含んで構成される光学部品(例えば、レンズ(例えば、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、CDピックアップ用レンズ、自動車用ランプレンズ、OHP用レンズ等)、光ファイバー、光導波路、光フィルター、光学用接着剤、光ディスク基盤、ディスプレー基盤、コーティング材、プリズム等)に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高度情報化社会の実現に向けたオプトエレクトロニクスの研究が精力的に行われている。それと共に、光通信、光記録、光加工、光計測、光演算等、オプトエレクトロニクスの様々な展開を支える基礎材料として、有機光学材料、特に樹脂材料に対する期待が高まっている。光学用樹脂材料は、軽量で可とう性に優れる、電気的誘導を受けない、成形加工が容易であるなどの多くの特徴を有し、光ファイバー、光導波路、光ディスク基盤、光フィルター、レンズ、光学用接着剤等の用途に向けた展開が図られている。
【0003】
光学用樹脂材料には次のような特性が求められている。すなわち、低分散性(すなわち高いアッベ数)、高屈折性、耐熱性、無色透明性、クリーン性、易成形性、耐薬品性・耐溶剤性、軽量等である。
【0004】
代表的な溶融成形可能な熱可塑性樹脂としてポリエステル樹脂があり、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]、イソフタル酸、及びテレフタル酸を原料としたものは、透明性に優れているうえにガラスに比べて軽く、耐衝撃性に優れ、溶融成形性を有しているために大量生産が容易である等の特徴から、多くの分野において用いられており、また光学部品としての応用も図られている。また、光学用としてのポリエステル樹脂の開発も進められており、フルオレン骨格を有するポリエステル樹脂がその代表として挙げることができる(特開平06−25398、季刊化学総説No.39 透明ポリマーの屈折率制御 日本化学会編 学会出版センター 等)。このフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂は、そのフルオレン骨格の含有量等によって物性が異なるが、屈折率が1.60〜1.64と高く、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]から得られる最も汎用性が高いポリカーボネート樹脂の屈折率1.58や、ポリスチレンの屈折率1.59に比べて優れている。また、ガラス転移温度も100〜200℃程度の範囲にあり、高い耐熱性を有する。これらの特性を活かして、カメラのファインダー用レンズ等の光学用途への応用が図られている。しかし、上述のように屈折率は1.60〜1.64程度と高い値を有しているものの、屈折率の分散性の程度を表すアッベ数が24程度と極めて低く、屈折率と分散特性とのバランスが悪いため、光学部品を構成する樹脂として、その用途が限られているのが現状である。例えば光学部品の代表例である眼鏡レンズは、視覚機能を考慮すると眼鏡レンズ素材のアッベ数は40以上が望ましいことが知られており(季刊化学総説No.39 透明ポリマーの屈折率制御 日本化学会編、学会出版センター 等)、フルオレン骨格を有するポリエステル樹脂を適用することはできない。
【0005】
これらの問題点を解決しようとする多くの試みがこれまでになされており、ナフタレン骨格及びシクロヘキサン骨格を導入したポリエステル樹脂(特開平01−201324)等、特定骨格の構造を有するポリエステル樹脂が提案されている。これらのポリエステル樹脂は、前述のフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂等に比べ、屈折率を1.64〜1.65の高い水準に維持したまま、アッベ数を30前後まで向上させている。しかし提案されているいずれのポリエステル樹脂においても、アッベ数が35を超えるポリエステル樹脂はなく、例えば眼鏡レンズに適用した場合に視覚機能から必要であるアッベ数40以上を有するポリエステル樹脂は未だ見出されていない。
【0006】
一方において、特に眼鏡レンズを対象とした熱硬化性樹脂の開発が盛んに行われてきた。これまでに多くの樹脂が上市されており、その多くは1.60以上の高屈折率と40以上のアッベ数を併せ持った光学特性に大変優れたものである(季刊化学総説No.39 透明ポリマーの屈折率制御 日本化学会編 学会出版センター 等)。しかしながら、これら全ては熱硬化性樹脂であるため、その加工に煩雑な工程と数十時間以上の多大な時間を要するのが一般であり、これらは生産効率の面から非常に大きな問題となっている。
【0007】
従って、低分散性(高いアッベ数)、高屈折性、耐熱性、及び高い透明性を併せ持ち、溶融成形可能な樹脂と、それを含んで構成される光学部品の開発が望まれてきた。
【0008】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、(1)アッベ数40以上の低分散性、(2)1.58以上の高屈折性、(3)ガラス転移温度100℃以上の耐熱性、及び(4)光線透過率85%以上の透明性を併せ持ち、(5)溶融成形が可能である、ポリエステル樹脂、及びそれを含んで構成されるレンズを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定構造から成るポリエステル樹脂が、低分散性(高アッベ数)、高屈折性、耐熱性、及び透明性を併せ持った、溶融成形可能な樹脂であり、それを含んで構成される光学部品が、高屈折性、低分散性(高アッベ数)、耐熱性、及び透明性を併せ持ち、成形加工性に優れることを見い出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]に記載した事項により特定される。
【0011】
[1] 化学式(1)で表される繰り返し単位を主鎖骨格に有するポリエステル樹脂(化学式(1)において、Rは化学式(2)で表される2価の結合基を表し、これらから選ばれる1種または2種以上の結合基より構成される。また化学式(2)において、X1化学式(3)で表される2価の結合基を表。)。
【0012】
【化7】
Figure 0004731680
[2] 化学式(1)で表される繰り返し単位が、化学式(4)で表される繰り返し単位である[1]記載のポリエステル樹脂(化学式(4)において、Rは化学式(2)で表される2価の結合基を表し、これらから選ばれる1種または2種以上の結合基より構成される。また化学式(2)において、X1化学式(3)で表される2価の結合基を表。)。
【0013】
【化8】
Figure 0004731680
[3] 化学式(1)で表される繰り返し単位が、化学式(5)で表される繰り返し単位である[1]記載のポリエステル樹脂。
【0014】
【化9】
Figure 0004731680
[4] 化学式(1)で表される繰り返し単位が、化学式(6)で表される繰り返し単位である[1]記載のポリエステル樹脂。
【0015】
【化10】
Figure 0004731680
[5] 化学式(1)で表される繰り返し単位が、化学式(7)で表される繰り返し単位である[1]記載のポリエステル樹脂。
【0016】
【化11】
Figure 0004731680
[6] 化学式(1)で表される繰り返し単位が、化学式(8)で表される繰り返し単位である[1]記載のポリエステル樹脂。
【0017】
【化12】
Figure 0004731680
[7] [1]〜[6]の何れか記載のポリエステル樹脂を含んで構成されるレンズ。
[8] レンズが、光学機器用レンズであることを特徴とする[7]記載のレンズ。
[9] レンズが、オプトエレクトロニクス用レンズであることを特徴とする請求項[7]記載のレンズ。
[10] レンズが、眼鏡レンズ、レーザー用レンズ、CDピックアップ用レンズ、自動車用ランプレンズまたはOHP用レンズであることを特徴とする[7]記載のレンズ。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステル樹脂は、化学式(1)で表される繰り返し単位を主鎖骨格に有するポリエステル樹脂である。但し、化学式(1)において、Rは化学式(2)で表される2価の結合基を表し、これらから選ばれる1種または2種以上の結合基より構成される。また化学式(2)において、X1化学式(3)で表される2価の結合基を表
【0019】
【化13】
Figure 0004731680
本発明のポリエステル樹脂において、化学式(1)で表される繰り返し単位が、化学式(4)で表される繰り返し単位であることが好ましい。但し、化学式(4)において、Rは化学式(2)で表される2価の結合基を表し、これらから選ばれる1種または2種以上の結合基より構成される。また化学式(2)において、X1化学式(3)で表される2価の結合基を表
【0020】
【化14】
Figure 0004731680
本発明のポリエステル樹脂において、化学式(1)で表される繰り返し単位は、化学式(5)、化学式(6)、化学式(7)及び/または化学式(8)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0021】
【化15】
Figure 0004731680
本発明のポリエステル樹脂は、公知の製造方法を適用して製造することができ、その方法は特に限定されるものではない。その製造方法の詳細は、例えば、『新高分子実験学3 高分子の合成・反応(2) 縮合系高分子の合成 高分子学会編 共立出版株式会社 1996年』等を参考にすることができる。例えば、ジチオール化合物とジカルボン酸化合物を高温減圧下で直接エステル交換させる直接エステル交換法、ジカルボン酸化合物のエステル化合物、例えばジカルボン酸メチルエステル化合物とジチオールとを高温減圧下で反応させるエステル交換法、ジカルボン酸の無水化合物とジチオールから合成する方法、ジカルボン酸の酸クロライド化合物とジチオールとの反応から合成する方法等が挙げられる。幾つかの合成法においてジカルボン酸化合物は、ジカルボン酸化合物を原料として反応性の高いなどの特性を有する誘導体化合物、例えばジカルボン酸化合物を無水化合物や酸クロライド化合物などの誘導体化合物に変えた後に、それらを用いてポリエステル樹脂を合成する方法がとられている。ジカルボン酸化合物を無水化合物や酸クロライド化合物などの誘導体化合物に変える方法は、従来より一般的に行われている公知の方法を用いることができる。
【0022】
本発明においてポリエステル樹脂を合成する際にジチオール化合物を用いる場合、化学式(9)で表されるジチオール化合物を用いることができる。化学式(9)で表されるジチオール化合物の具体例としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジチオール、1,3−シクロヘキサンジチオール、1,4−シクロヘキサンジチオールが挙げられる。耐熱性や光学特性等の機能性を勘案して、化学式(10)で表される1,4−シクロヘキサンジチオールを用いることが好ましい。これらの純度は特に規定されるものではないが、90質量%以上のものを用いるのが好ましい。
【0023】
【化16】
Figure 0004731680
本発明においてポリエステル樹脂を合成する際にジカルボン酸化合物を用いる場合、化学式(11)で表されるジカルボン酸化合物を用いることができる。但し、化学式(11)において、X1化学式(12)で表される2価の結合基を表。化学式(11)で表されるジカルボン酸化合物の具体例としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、3,3’−ジシクロヘキサンジカルボン酸、3,4’−ジシクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキサンジカルボン酸、2,2−ビス(3−カルボキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−カルボキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(4−カルボキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(3−カルボキシシクロヘキシル)スルフィド、ビス(4−カルボキシシクロヘキシル)スルフィド、ビス(3−カルボキシシクロヘキシル)メタン、ビス(4−カルボキシクロヘキシル)メタン、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、2,6−ノルボルナンジカルボン酸、1,4−ノルボルナンジカルボン酸、2,3−ノルボルナンジカルボン酸、4,8−ビス(カルボキシメチル)トリシクロ[5,2,1,02,6]デカン等が挙げられる。耐熱性や光学特性等の機能性を勘案して、化学式(13)で表される1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、化学式(14)で表される1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、化学式(15)で表される4,4’−ジシクロヘキサンジカルボン酸、化学式(16)で表される2,2−ビス(4−カルボキシシクロヘキシル)プロパン、化学式(17)で表される2,6−ノルボルナンジカルボン酸、及び/または化学式(18)で表される2,5−ノルボルナンジカルボン酸を用いることが好ましい。これらは一種類のみを用いてもよく、また複数種類を用いてもよい。またこれらの純度は特に規定されるものではないが、90質量%以上のものを用いるのが好ましい。さらにはこれらを原料として、酸無水物化合物や酸クロライド化合物などの反応性が高い等の特性を有する誘導体に変えた後にポリエステル樹脂の合成に用いることもできる。
【0024】
【化17】
Figure 0004731680
本発明において、本発明の効果を損なわない範囲で上述の化学式(9)で表されるジチオール化合物、及び化学式(11)で表されるジカルボン酸化合物、並びにそれらから誘導される化合物以外のジチオール化合物、ジカルボン酸化合物、並びにそれらからの誘導体化合物を用いることができる。通常は、これらから導かれる単位構造の割合が、10モル%以下で用いることができる。用いることができるジチオール化合物、ジカルボン酸化合物、並びにそれらからの誘導体化合物の具体例としては、例えば、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジプロピル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジイソプロピル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジブロモ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラブロモ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’,6,6’−テトラクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジメチル−5,5’−ジブロモ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジエチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジプロピル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジ−tert−ブチル−6,6’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジブロモ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラブロモ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジブロモ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ビスフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ジカルボキシベンゼン[通称イソフタル酸]、1,4−ジカルボキシベンゼン[通称テレフタル酸]、4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジカルボキシビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,3’−ジプロピル−4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,3’−ジイソプロピル−4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチル−4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,3’−ジブロモ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラブロモ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、2,2’,6,6’−テトラクロロ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,3’−ジメチル−5,5’−ジブロモ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジエチル−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジプロピル−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチル−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジ−tert−ブチル−6,6’−ジメチル−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジブロモ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラブロモ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジブロモ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジエチル−4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジプロピル−4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,6−ジクロロ−4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−5−メチル−4−カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、ビス(4−カルボキシフェニル)−ビスフェニルメタン、ビス(4−カルボキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等、及びこれらの酸無水物並びに酸クロライド化合物が挙げられる。これらは一種類のみを用いてもよく、また複数種類を用いてもよい。また純度は特に規定されるものではないが、90質量%以上のものを用いるのが好ましい。
【0025】
本発明においては、複数種類の化合物を用いるが、これらの仕込方法は、いずれの方法で重合する際にも、特に規定されるものではないが、本発明の効果をよりよく得るためには、同時に仕込む方法が望ましい。また、一括して仕込んでも、連続的に仕込んでも問題はない。
【0026】
また、着色の抑制や溶融成形における流動性の改善などを目的として、メタノールやエタノール、フェノール、tert−ブチルフェノールなどのモノヒドロキシ化合物、酢酸や安息香酸などのモノカルボン酸化合物などの末端封止用化合物を併用してもよい。
【0027】
本発明のポリエステル樹脂の分子量に特に制限はなく、用途や加工方法に応じ、任意の分子量とすることができる。本発明のポリエステル樹脂は、用いるジチオール化合物、ジカルボン酸化合物等の量比、反応時間、反応温度などによって調節することができ、例えば、ポリエステル樹脂を0.5g/100ミリリットルの濃度でクロロホルムに溶解した後、35℃で測定した対数粘度の値を、0.1〜3.0デシリットル/gの任意の値とすることができる。
【0028】
本発明のポリエステル樹脂は、構成単位の繰り返しに特に制限はなく、交互構造、ランダム構造、ブロック構造等のいずれの場合でも良い。また、通常用いられる分子形状は線状であるが、分岐している形状を用いても良い。また、グラフト状でも良い。
【0029】
本発明のポリエステル樹脂は熱可塑性であり、通常の溶融成形により成形することができる。溶融成形が可能となるためには、樹脂の分解温度に比べて樹脂が流動する温度が十分に低いことが重要である。本発明において溶融成形が可能であるとは、具体的には、空気中において加熱により樹脂の5質量%が減少する温度、すなわち5%質量減少温度に比べ、0.1〜100パスカル・秒程度(100〜100000センチポアズ程度)の溶融粘度を有する温度が30℃以上、好ましくは50℃以上低いことをいう。本発明のポリエステル樹脂はいずれも溶融成形が可能であり、押し出し成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、圧縮成型、ブロー成形、カレンダー成形、積層成形等により、ディスク、ファイバー等の様々な成形体を得ることができる。
【0030】
本発明のポリエステル樹脂は、1.58以上の高い屈折率と、アッベ数40以上の低い分散性を併せ持つ。この光学特性は、これまでに開示されているポリエステル樹脂では達することのできなかった特性であり、本発明の特定構造がこの特性に寄与していることが考えられる。
【0031】
本発明のポリエステル樹脂は、1.58以上の高屈折性、アッベ数40以上の低分散性、ガラス転移温度100℃以上の耐熱性、及び光線透過率85%以上の透明性を併せ持つ光学特性に優れたポリエステル樹脂であり、光学部品に好適に使用できる。
【0032】
本発明のポリエステル樹脂を含んで構成される光学部品に特に制限はなく、例えば、部品の一部あるいは全部に使用することができ、高屈折性と低分散性が必要とされる部品、高い透明性を必要とされる部品、あるいは透明性と高屈折性を必要とされる部品等が挙げられる。より具体的には、例えば、レンズ(例えば、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、CDピックアップ用レンズ、自動車用ランプレンズ、OHP用レンズ等)、光ファイバー、光導波路、光フィルター、光学用接着剤、光ディスク基盤、ディスプレー基盤、コーティング材、プリズム等が挙げられる。
【0033】
本発明のポリエステル樹脂は溶融成形が可能であるため、従来用いられている熱硬化性樹脂に比べ、これら上述の光学部品を効率よく製造することができる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。尚、実施例中のポリエステル樹脂の物性及び光学特性は以下の方法により測定した。
▲1▼対数粘度[ηinh]:ポリエステル樹脂をクロロホルム溶媒に、0.5g/100ミリリットルの濃度で溶解した後、35℃において測定した。
▲2▼ガラス転移温度[Tg]:DSC(島津DT−40シリーズ,DSC−41M)により測定した。
▲3▼屈折率[nd]及びアッベ数[νd]:通常の熱プレス機を用いて厚さ約1mmの板上サンプルを作成し、アッベ屈折計(アタゴ社DR−M2)により測定した。屈折率は波長588nmのd線におけるものであり、またアッベ数は波長588nmのd線を基準としたものである。
▲4▼光線透過率:ポリエステル樹脂を加熱成形して厚さ3.2mmの基板を作成し、ASTM D1003に従って測定した。
▲5▼5%質量減少温度[Td5]:空気中でDTA−TG(島津DT−40シリーズ、DTG−40M)により測定した。
▲6▼溶融粘度:高化式フローテスター(島津CFT−500)で直径0.1cm、長さ1cmのオリフィスを用いて溶融粘度を測定した。所定の温度で5分間保った後、10万ヘクトパスカルの圧力で押し出した。
【0035】
なお、実施例の表中、用いたジチオール及びジカルボン酸は、以下の略号で示す。
CHDT:1,4−シクロヘキサンジチオール
BDT:1,4−ベンゼンジチオール
CHDO:1,4−シクロヘキサンジオール
1,3−CHDC:1,3−シクロヘキサンジカルボン酸
1,4−CHDC:1,4−シクロヘキサンジカルボン酸
DCHDC:4,4’−ジシクロヘキサンジカルボン酸
BCCHP:2,2−ビス(4−カルボキシシクロヘキシル)プロパン
2,6−NBDC:2,6−ノルボルナンジカルボン酸
2,5−NBDC:2,5−ノルボルナンジカルボン酸。
【0036】
<実施例1>
まず、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸を用い、従来公知の方法(Kenneth A. Burdett, Synthesis 1991 (6) 441〜442頁)に従い、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸クロライドを合成した。窒素導入ライン、攪拌機、温度計を備えた容器に1,3−シクロヘキサンジカルボン酸142.1g(0.826mol)、1,2−ジクロロエタン1.512リットル、及びベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.275g(1.2mmol)を仕込み、このスラリーを還流させた。その後、塩化チオニル127ミリリットル(1.75mol)を一括して投入し、還流条件を16時間維持した。得られた混合物を熱濾過し、結晶化により1,3−シクロヘキサンジカルボン酸クロライドの結晶を得た。この結晶をジエチルエーテルで洗浄した後に乾燥させ、収率85%で1,3−シクロヘキサンジカルボン酸クロライドを得た。HPLCの分析より、純度99.6%を確認した。
【0037】
次いで、窒素導入ライン、攪拌機、温度計を備えた容器に、得られた1,3−シクロヘキサンジカルボン酸クロライド6.69g(0.032mol)、1,4−シクロヘキサンジチオール4.74g(0.032mol)及びニトロベンゼン20ミリリットルを装入し、湯浴を用いて窒素雰囲気下でこの混合物をゆっくり加熱しながら、3時間かけて145℃とした。この温度で6時間維持して重合を行い、その後温度を維持したまま系内を減圧にしてニトロベンゼンを留去し、最終的には50パスカルの圧力で生成したポリエステル樹脂を2時間乾燥させた。ポリエステル樹脂は90%の収率で得られ、C、H、Sの元素分析を行ったところ、その含有量はそれぞれ59.7wt%、7.1wt%、22.2wt%であり、それぞれの理論値59.2wt%、7.0wt%、22.5wt%とほぼ同等であり、所望のポリエステル樹脂であることを確認した。
【0038】
得られたポリエステル樹脂について、上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度Tg、屈折率nd、アッベ数νd、光線透過率、5%質量減少温度、及び溶融粘度の評価を行い、結果を表1に示した。結果からわかるように、5%質量減少温度が335℃と高く、これに比べて100℃以上も低い220℃において、溶融成形を行うのに適した粘度を有している。以上より、このポリエステル樹脂は1.58以上の高屈折性、アッベ数40以上の低分散性、ガラス転移温度100℃以上の耐熱性、及び光線透過率85%以上の透明性を併せ持ち、溶融成形が可能な成形加工性に優れたポリエステル樹脂であり、光学部品に適した樹脂である。
【0039】
<実施例2>
1,3−シクロヘキサンジカルボン酸に代えて、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を用いた以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の合成を行った。
【0040】
得られたポリエステル樹脂について、実施例1と同様にして上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度Tg、屈折率nd、アッベ数νd、光線透過率、5%質量減少温度、および溶融粘度の評価を行い、結果を表1に示した。
【0041】
<実施例3>
1,3−シクロヘキサンジカルボン酸に代えて、4,4’−ジシクロヘキサンジカルボン酸を用いた以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の合成を行った。 得られたポリエステル樹脂について、実施例1と同様にして上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度Tg、屈折率nd、アッベ数νd、光線透過率、5%質量減少温度、および溶融粘度の評価を行い、結果を表1に示した。
【0042】
<実施例4>
1,3−シクロヘキサンジカルボン酸に代えて、2,2−ビス(4−カルボキシシクロヘキシル)プロパンを用いた以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の合成を行った。
【0043】
得られたポリエステル樹脂について、実施例1と同様にして上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度Tg、屈折率nd、アッベ数νd、光線透過率、5%質量減少温度、および溶融粘度の評価を行い、結果を表1に示した。
【0044】
<実施例5>
1,3−シクロヘキサンジカルボン酸に代えて、2,6−ノルボルナンジカルボン酸を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の合成を行った。
【0045】
得られたポリエステル樹脂について、実施例1と同様にして上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度Tg、屈折率nd、アッベ数νd、光線透過率、5%質量減少温度、および溶融粘度の評価を行い、結果を表1に示した。
【0046】
<実施例6>
1,3−シクロヘキサンジカルボン酸に代えて、2,5−ノルボルナンジカルボン酸を用いた以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂の合成を行った。
【0047】
得られたポリエステル樹脂について、実施例1と同様にして上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度Tg、屈折率nd、アッベ数νd、光線透過率、5%質量減少温度、および溶融粘度の評価を行い、結果を表1に示した。
【0048】
<比較例1>
1,4−シクロヘキサンジチオールに代えて、1,4−ベンゼンジチオールを用いた以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の合成を行った。
【0049】
得られたポリエステル樹脂について、実施例1と同様にして上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度Tg、屈折率nd、アッベ数νd、光線透過率、5%質量減少温度、および溶融粘度の評価を行い、結果を表1に示した。
【0050】
<比較例2>
1,4−シクロヘキサンジチオールに代えて、1,4−シクロヘキサンジオールを用いた以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の合成を行った。
【0051】
得られたポリエステル樹脂について、実施例1と同様にして上記の方法に従って対数粘度ηinh、ガラス転移温度Tg、屈折率nd、アッベ数νd、光線透過率、5%質量減少温度、および溶融粘度の評価を行い、結果を表1に示した。
【0052】
【表1】
Figure 0004731680
【0053】
【発明の効果】
本発明のポリエステル樹脂、及びそれを含んで構成される光学部品は、▲1▼アッベ数40以上の低分散性、▲2▼1.58以上の高屈折性、▲3▼ガラス転移温度100℃以上の耐熱性、及び▲4▼光線透過率85%以上の透明性を併せ持ち、▲5▼溶融成形が可能である、ポリエステル樹脂、及びそれを含んで構成される光学部品であり、例えば、レンズ(例えば、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、CDピックアップ用レンズ、自動車用ランプレンズ、OHP用レンズ等)、光ファイバー、光導波路、光フィルター、光学用接着剤、光ディスク基盤、ディスプレー基盤、コーティング材、プリズム等の用途に好適である。

Claims (10)

  1. 化学式(1)で表される繰り返し単位を主鎖骨格に有するポリエステル樹脂(化学式(1)において、Rは化学式(2)で表される2価の結合基を表し、これらから選ばれる1種または2種以上の結合基より構成される。また化学式(2)において、X1化学式(3)で表される2価の結合基を表。)。
    Figure 0004731680
  2. 化学式(1)で表される繰り返し単位が、化学式(4)で表される繰り返し単位である請求項1記載のポリエステル樹脂(化学式(4)において、Rは化学式(2)で表される2価の結合基を表し、これらから選ばれる1種または2種以上の結合基より構成される。また化学式(2)において、X1化学式(3)で表される2価の結合基を表。)。
    Figure 0004731680
  3. 化学式(1)で表される繰り返し単位が、化学式(5)で表される繰り返し単位である請求項1記載のポリエステル樹脂。
    Figure 0004731680
  4. 化学式(1)で表される繰り返し単位が、化学式(6)で表される繰り返し単位である請求項1記載のポリエステル樹脂。
    Figure 0004731680
  5. 化学式(1)で表される繰り返し単位が、化学式(7)で表される繰り返し単位である請求項1記載のポリエステル樹脂。
    Figure 0004731680
  6. 化学式(1)で表される繰り返し単位が、化学式(8)で表される繰り返し単位である請求項1記載のポリエステル樹脂。
    Figure 0004731680
  7. 請求項1〜請求項6の何れか一項記載のポリエステル樹脂を含んで構成されるレンズ。
  8. レンズが、光学機器用レンズであることを特徴とする請求項7記載のレンズ。
  9. レンズが、オプトエレクトロニクス用レンズであることを特徴とする請求項7記載のレンズ。
  10. レンズが、眼鏡レンズ、レーザー用レンズ、CDピックアップ用レンズ、自動車用ランプレンズまたはOHP用レンズであることを特徴とする請求項7記載のレンズ。
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