JP6139258B2 - ポリエステルカーボネート共重合体 - Google Patents

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Description

本発明は、高透明、高屈折率および低複屈折であって且つ高流動性となるポリエステルカーボネート共重合体に関する。
近年、ビスフェノール類を原料とする樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂など)は、耐熱性、透明性、耐衝撃性等及び、高屈折率を備えた材料として広く使用されている。9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどのフルオレン誘導体からなる樹脂は、高透明で高屈折率な材料として有望であり、自動車用ヘッドランプレンズ、CD、CD−ROMピックアップレンズ、フレネルレンズ、レーザープリンター用fθレンズ、カメラレンズ、リアプロジェクションテレビ用投影レンズなどの光学材料などとして期待されている。
特に、光学用樹脂からなる光学レンズは、射出成形により大量生産が可能であるという利点からカメラレンズ用としてポリカーボネート樹脂等が使用されている。しかしながら、近年、製品の軽薄短小化により、高い屈折率の樹脂の開発が求められている。一般に光学材料の屈折率が高いと、同一の屈折率を有するレンズエレメントを、より曲率の小さい面で実現できるため、この面で発生する収差量を小さくでき、レンズの枚数を減らしたり、レンズの偏心感度を低減したり、レンズ厚みを薄くして軽量化することが可能になる。
光学用樹脂を光学レンズとして用いる場合、屈折率やアッベ数以外にも、耐熱性、透明性、低吸水性、耐薬品性、耐光性、低複屈折性、耐湿熱性が求められる。そのため、樹脂の特性バランスによって使用箇所が限定されるという弱点がある。特に近年、画素数の向上による解像度のアップに伴い結像性能の高い、より複屈折の低いカメラレンズが求められている。一般に、複屈折を小さくする方法として、符号の異なる正負の複屈折を持つ組成同士で、互いの複屈折を打ち消し合う手法が挙げられる。そのため、これら異符号の複屈折を持つ材料の構成比率は非常に重要となる。また、鮮明な画像を映し出すためには、可視光領域の全ての波長において高い透過率を維持する必要がある。
また、近年、電子機器の小型化に伴った光学レンズの小型・薄肉化が加速している。例えば、携帯電話用カメラレンズは、φ5mm、厚み0.3mm程度と非常に小型、薄肉であり、今後もさらなる小型化、薄肉化が進む事が予想される。このような小型薄肉レンズを射出成形する場合、樹脂の流動性が不十分であると、目的とする形状のレンズが得られないことがある。
そこで、高透明性、高屈折率、低複屈折であって、かつ成形流動性に優れたバランスの取れた樹脂の開発が行われてきた。例えば、フルオレン含有ジヒドロキシ化合物とジカルボン酸化合物からなるポリエステルカーボネートが提案されている(特許文献1)。しかし、該ポリエステルカーボネートは、低複屈折、且つ高流動性という特徴を有するが、光学レンズに用いるには屈折率が未だ低いという問題があった。
しかしながら、高透明性、高屈折率、低複屈折であって且つ高成形流動性の全ての特性をバランス良く満足する光学レンズ用ポリエステルカーボネート共重合体は、いまだ達成されていない。
特開平6−145317号公報
そこで本発明の目的は、高透明、高屈折率、低複屈折であって且つ高成形流動性の全ての特性をバランス良く満足する光学レンズ用ポリエステルカーボネート共重合体を提供することにある。
本発明者らはこの目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた。その結果、ビナフトール成分とフルオレン環を有するジオール成分および、ジカルボン酸を特定の組成比で共重合することにより、高透明、高屈折、低複屈折であって且つ高成形流動性の全ての特性をバランス良く満足する光学レンズ用ポリエステルカーボネート共重合体となることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
1.全構成単位を100モル%として、構成単位(I):(構成単位(II)+構成単位(III))の割合がモル比で10:90モル〜50:50であり、且つ、構成単位(II)と構成単位(III)との割合がモル比で50:10〜70:10であり、構成単位(I)を形成するジオール成分が、1,1’−ビ−2−ナフトールもしくは1,1’−チオビス(2−ナフトール)であり、構成単位(II)を形成するジオール成分が、9,9−ビス(4−2−(ヒドロキシエトキシ)フェニルフルオレンであり、構成単位(III)が下記式(III)であり
比粘度0.18〜0.35であるポリエステルカーボネート共重合体。
Figure 0006139258
式(III)に記載の構造中のWは、ナフタレンジカルボン酸由来、もしくは、テレフタル酸由来である。
.屈折率が1.640〜1.665である前記1に記載のポリエステルカーボネート共重合体。
.配向複屈折が0〜6×10−3である前記1または2に記載のポリエステルカーボネート共重合体。
.ガラス転移温度が、140〜170℃である前記1〜のいずれかに記載のポリエステルカーボネート共重合体。
.フェノール含有量が1〜500ppmである前記1〜のいずれかに記載のポリエステルカーボネート共重合体。
.前記1〜のいずれかに記載のポリエステルカーボネート共重合体からなる光学部材。
.前記1〜のいずれかに記載のポリエステルカーボネート共重合体からなる光学レンズ。
.中心部の厚みが0.05〜3.0mm、レンズ部の直径が1.0〜20.0mmの前記に記載の光学レンズ。
本発明の光学レンズ用ポリエステルカーボネート共重合体は、ビナフトール成分とフルオレン環を有するジオール成分および、ジカルボン酸成分を特定の組成比で共重合することにより、高透明、高屈折、低複屈折であって且つ高成形流動性の全ての特性をバランス有しているため、その奏する産業上の効果は、格別である。
〈ポリエステルカーボネート共重合体〉
以下、本発明の光学レンズ用ポリエステルカーボネート共重合体を構成する各成分、それらの配合割合、調整方法等について、順次具体的に説明する。
本発明のポリエステルカーボネート共重合体(以下、共重合体と略することがある)は、下記式(I)で表される単位を含有する。式(I)の単位の含有量は、2〜50モル%であり、好ましくは10〜40モル%である。2モル%より小さいと、屈折率が低下し好ましくない。また、50モル%より大きい場合は、ガラス転移温度が高くなり取り扱いが困難になる。
Figure 0006139258
(式中のR〜Rは、それぞれ水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数7〜17のアラルキル基を示す。Xは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。nは0〜10の整数である。Yは、単結合、炭素数1〜6のアルキレン基、エーテル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルフェン酸基、スルホン酸基である。)
本発明の共重合体における一般式(I)で表される構造において、R〜Rが水素である事が好ましい。
本発明の共重合体における一般式(I)で表される構造において、nが0である事が好ましい。
本発明の共重合体における一般式(I)で表される構造において、Yは単結合である事が好ましい。
本発明の共重合体における一般式(I)で表される構造において、酸素原子の結合位置は、特に限定されず、対称形でも非対称形でも良いが、対称形の方が構造制御、複屈折低減の面で好ましい。特に好ましくは、1,1−ビ−2−ナフチル構造である。ナフチル構造は、一つの結合の両側の環構造がお互いに立体障害をなり、同一平面内に存在せず、複屈折が低くなる。
本発明の共重合体は、下記式(II)で表される単位を含有する。式(II)の単位の含有量は、好ましくは96〜5モル%であり、より好ましくは90〜10モル%である。5モル%より小さい場合、もしくは、96モル%より大きい場合は、複屈折が生じ好ましくない。
Figure 0006139258
(式中、R、R10は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。Zは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。mは0〜10の整数である。)
本発明の共重合体における一般式(II)で表される構造において、R、R10が水素原子である事が好ましく、かつmが1である事が好ましい。
本発明の共重合は、下記式(II)中、R〜R10が水素原子であり、Xが炭素数2のエチレン基でありかつ、nおよびmが1である事が好ましい。
本発明の共重合体における、下記式(III)の単位の含有量は、好ましくは88〜1モル%であり、より好ましくは80〜1モル%である。1モル%より小さい場合、もしくは、88モル%より大きい場合は、複屈折が生じ好ましくない。
Figure 0006139258
(Wは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。)
本発明の共重合おける、下記式(III)中のWは、下記構造である事が好ましい。
Figure 0006139258
本発明の共重合体は、全構成単位を100モル%として、構成単位(I):(構成単位(II)+構成単位(III))の割合がモル比で2:98モル〜50:50であり、且つ、構成単位(II)と構成単位(III)との割合がモル比で98:2〜10:90である。構成単位(I)が、2モル%以下であると、屈折率が低くなり、50モル%以上では、流動性が低くなる。又、構成単位(II)と構成単位(III)との割合において構成単位(II)の割合が98モル%以上、もしくは、10モル以下であると複屈折が大きくなる。
本発明の共重合体は、より好ましくは、全構成単位を100モル%として、構成単位(I):(構成単位(II)+構成単位(III))の割合がモル比で10:90モル〜40:60であり、且つ、構成単位(II)と構成単位(III)との割合がモル比で98:2〜20:80である。該範囲外になると、屈折率、流動性が低くなるもしくは、複屈折が大きくなり、使用できる範囲が狭くなり、好ましくない。
本発明の共重合体の比粘度は、0.12〜0.40、好ましくは0.15〜0.35、さらに好ましくは0.18〜0.35の範囲である。比粘度は、0.7gの共重合体を100mlの塩化メチレンに溶解し20℃で測定する。比粘度が0.12未満では成形体が脆くなり、0.40より高くなると溶融粘度および溶液粘度が高くなり、流動性が低下し、充填不足等の射出成形不良になる。また、湿式成形時の溶剤への溶解性、安定性が低下し、溶剤から析出するなど湿式成形が出来なくなる。
本発明の共重合体の屈折率は、好ましくは1.640〜1.665、より好ましくは1.645〜1.665、さらに好ましくは1.650〜1.665の範囲である。屈折率は25℃、波長589nmにおいて測定する。屈折率1.635以上の場合、レンズの球面収差を低減でき、さらにレンズの焦点距離を短くする事が出来る為好ましい。
本発明の共重合体のアッベ数(ν)は、好ましくは19〜25、より好ましくは19〜24、さらに好ましくは21〜23の範囲である。アッベ数は25℃、波長486nm、589nm、656nmの屈折率から下記式を用いて算出する。
ν=(nD−1)/(nF−nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nF:波長656nmでの屈折率
nC:波長486nmでの屈折率
本発明の共重合体の配向複屈折(Δn)は、好ましくは0〜6×10−3、より好ましくは0〜4×10−3、さらに好ましくは0〜1×10−3の範囲である。配向複屈折(Δn)は、該共重合体より得られる厚さ100μmのキャストフィルムをその共重合体のガラス転移温度(Tg)+10℃で2倍延伸した時、波長589nmにおいて測定する。
本発明の共重合体の分光透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは81%以上、さらに好ましくは82%以上である。透過率は、厚さ0.1mmの成形板を波長395nmにおいて測定する。分光透過率が、80%以上出なければ、光学部材として好ましくない。
本発明の共重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは130〜165℃、より好ましくは135〜160℃、さらに好ましくは140〜160℃である。ガラス転移温度(Tg)は昇温速度20℃/minにて測定する。Tgが130℃未満では、該共重合体を用いて形成した光学部品の使用する用途によっては耐熱性が十分でなく、一方Tgが165℃より高い場合では溶融粘度が高くなり、成形体を形成する上での取扱いが困難となる。
本発明の共重合体は、熱安定性の指標として、昇温速度20℃/minにて測定した5%重量減少温度が350℃以上であることが好ましく、380℃以上であることがより好ましい。5%重量減少温度が350℃より低い場合は、成形の際の熱分解が激しく、良好な成形体を得ることが困難となるため好ましくない。
本発明の共重合体の280℃、せん断速度1000/secにおける溶融粘度は、好ましくは30〜300Pa・s、より好ましくは30〜250Pa・s、さらに好ましくは50〜200Pa・sである。
本発明の共重合体の残存フェノール含有量は、好ましくは1〜500ppm、より好ましくは1〜400ppm、さらに好ましくは1〜300ppmである。
フェノールの含有量は、高真空化つまり1.3kPa以下での反応時間により調整できる。1.3kPa以下の真空度での反応を行わない場合は、フェノールの含有量が多くなる。又、反応時間が長すぎると、樹脂の末端が分解し、フェノールの含有量が多くなる。
又、本発明の共重合体を得た後にフェノール含有量を調整しても良い。例えば、本発明の共重合体を有機溶媒に溶解させ、有機溶媒層を水で洗う方法や、一般に使用されている一軸または二軸の押出機、各種のニーダー等の混練装置を用い、133〜13.3Paの圧力、200〜320℃の温度で脱揮除去する方法を用いても良い。
本発明の共重合体における残存フェノールの含有量が、1〜500ppmの範囲であれば、耐熱性を損なうことなく、成形流動性を向上させる事ができる。しかし、500ppmより高くなると加熱溶融した際の熱安定性が乏しく、さらに樹脂射出成形時の金型汚染がひどくなり好ましく、耐湿熱性の低下を招き好ましくない。さらに、フェノールは、酸化されると着色する性質があり、共重合体中の色相が悪化する。また、1ppm未満では、成形流動性に劣り好ましくない。より好ましくは、300ppm以下、さらにより好ましくは、200ppm以下である。
本発明の共重合体における耐湿熱性の指標となる85℃、85%RHの条件下で2000時間放置した後、比粘度保持率は、好ましくは、80%以上であり、より好ましくは、85%以上、さらに好ましくは、90%以上である。比粘度保持率が、80%以上であると、湿熱環境下で使用した際も色相悪化や成形品の強度定価がなく、共重合体の使用環境に制限が無く好ましい。80%以下であると、比粘度低下に伴った強度が低下し、割れや変形が生じ好ましく、色相が悪化し好ましくない。
本発明の共重合における耐熱性の指標となる加熱滞留試験後の比粘度保持率は、好ましくは、70%以上であり、より好ましくは、80%以上、さらに好ましくは、90%以上である。比粘度保持率が、70%以上であると共重合体の成形に制限が無く好ましく、成形温度が高い薄物成形品を成形する事が可能であり好ましい。また、成形品の色相も悪化する事無く好ましい。70%以下であると、比粘度低下に伴った成形品の強度が低下し、割れや変形が生じ好ましく、成形品の色相も悪化し好ましくない。また、射出成形する際の成形条件が制限され好ましくない。
〈共重合体の製造方法〉
本発明の共重合体は、ジオール成分とカーボネート前駆体を反応させることにより製造することができる。
(ジオール成分)
本発明の共重合体におけるジオール成分の一つが下記式(V)で表されるジオールである。
Figure 0006139258
(式中のR13〜R20は、それぞれ水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数7〜17のアラルキル基を示す。Xは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。nは0〜10の整数である。Yは、単結合、炭素数1〜6のアルキレン基、エーテル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルフェン酸基、スルホン酸基を示す。)
該ジオールの含有量は、好ましくは50〜2モル%、より好ましくは45〜10モル%、さらに好ましくは45〜15モル%である。
本発明の共重合体における一般式(V)で表されるジオールは、R13〜R20が水素原子である事が好ましい。
本発明の共重合体における一般式(V)で表されるジオールは、Yが単結合である事が好ましい。
本発明の共重合体における一般式(V)で表されるジオールは、酸素原子の結合位置は、特に限定されず、対称形でも非対称形でも良いが、対称形の方が構造制御、複屈折低減の面で好ましい。特に好ましくは、1,1―ビ―2−ナフトールである。ナフチル構造は、一つの結合の両側の環構造がお互いに立体障害をなり、同一平面内に存在せず、複屈折が低くなる。
また、1,1−ビ−2−ナフトールは、R体、S体、ラセミ体のいずれでも良い。
本発明の共重合体におけるジオール成分の一つが下記式(VI)で表されるジオールである。
Figure 0006139258
(式中、R11、R12は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。zは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。oおよびpは0〜10の整数である。)
本発明の共重合体における一般式(VI)で表されるジオールは、R11〜R12が水素原子であり、Xが炭素数2のエチレン基でありかつ、Oが1である事が好ましい。
本発明の共重合体における一般式(VI)で表されるジオールは、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンである事が好ましい。
該ジオールの含有量は、好ましくは96〜5モル%であり、より好ましくは90〜10モル%である。
他のジオールとして、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、デカリン−2,6−ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン−1,3−ジメタノール、スピログリコール、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール、1,4:3,6−ジアンヒドロ−L−イジトール等の脂環式ジオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、α,ω−ビス[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ドロキシフェニル]−1−フェニルエタン、ビスフェノールA等の芳香族ジオール等が挙げられる。
本発明の共重合体におけるジカルボン酸誘導体の一つは、下記式(VII)で表される。
Figure 0006139258
(Wは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基、R13は、単独水素、炭素数1〜3のアルキル基、または、フェニル基)
本発明の共重合は、下記式(VIII)中のWは、下記構造である事が好ましい。
Figure 0006139258
該カルボン酸誘導体の含有量は、好ましくは88〜1モル%であり、より好ましくは80〜1モル%である。
本発明のポリエステルカーボネート共重合体におけるジカルボン酸化合物は主としてテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であるが、該ポリエステルカーボネート共重合体の特性を損なわない程度に他のジカルボン酸成分を加えても良い。例えばジカルボン酸化合物の80モル%以上、さらに90モル%以上がテレフタル酸もしくはナフタレンジカルボン酸であることが好ましい。上記ジカルボン酸と併用する他のジカルボン酸としては例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、tert−ブチルイソフタル酸等の単環式芳香族ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸等の多環式芳香族ジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸等のビフェニルジカルボン酸、1,4−シクロジカルボン酸、2,6−デカリンジカルボン酸等の脂還族ジカルボン酸が挙げられる。これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。また、これらの誘導体としては酸クロライドやエステル類が用いられる。
本発明の共重合体は、全構成単位を100モル%として、構成単位(VI):(構成単位(VII)+構成単位(VIII))の割合がモル比で2:98モル〜50:50であり、且つ、構成単位(VII):構成単位(VIII)との割合がモル比で98:2〜10:90である。
(カーボネート前駆体)
カーボネート前駆体として、ホスゲンや、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンのビスクロロホーメートや、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等の炭酸ジエステルが挙げられる。なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
(製造方法)
ジオールとホスゲンとの反応では、非水系で酸結合剤及び溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えばピリジン、ジメチルアミノピリジン、第三級アミン等が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレンやクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。分子量調節剤として例えばフェノールやp−tert−ブチルフェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間が好ましい。
エステル交換反応では、不活性ガス存在下にジオールとビスアリールカーボネートを混合し、アルカリ金属化合物触媒もしくはアルカリ土類金属化合物もしくはその双方からなる混合触媒の存在下にて、減圧下通常120〜350℃、好ましくは150〜300℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したアルコール類を系外に留去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
重合触媒としてはアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を主成分として用い、必要に応じて含窒素塩基性化合物を従成分として用いても良い。
触媒として使用するアルカリ金属化合物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ビスフェノールAのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属化合物としては水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
助触媒として使用する含窒素塩基性化合物としてはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
これらの触媒は単独で用いても、二種以上併用してもよく、これらの重合触媒の使用量はジオール成分の合計1モルに対して、10−9〜10−3モルの比率で用いられる。また、色相改善のために酸化防止剤や熱安定剤等を加えてもよい。
本実施形態のポリエステルカーボネート樹脂は、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物については、一般的に、公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの失活を行うとしては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn−プロピル、亜リン酸ジn−ブチル、亜リン酸ジn−ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類、ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類、ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p−トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸、塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。これらの失活剤は、触媒量に対して0.01〜50倍モル、好ましくは0.3〜20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。
触媒失活後、樹脂中の低沸点化合物を133〜13.3Paの圧力、200〜320℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良い。
〈光学レンズ〉
本発明の光学レンズは、本発明の共重合体を例えば、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、キャスティングして成形することができる。
本発明の光学レンズには、本発明の目的を損なわない範囲で各種特性を付与するために、各種添加剤を含有してもよい。添加剤として、離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、難燃剤、熱線遮蔽剤、蛍光染料(蛍光増白剤含む)、顔料、光拡散剤、強化充填剤、他の樹脂やエラストマー等を配合することができる。
離型剤中の前記エステルの量は、離型剤を100重量%とした時、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。
本発明の光学レンズ中の離型剤含有量は、共重合体100重量部に対して0.005〜2.0重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02〜0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤およびヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。
共重合体中のリン系熱安定剤の含有量は、共重合体100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
共重合体中の硫黄系熱安定剤の含有量は、共重合体100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
熱安定剤については、リン系安定剤もしくは、ヒンダードフェノール系熱安定剤が好ましい。リン安定剤もしくは、ヒンダードフェノール系熱安定剤を共重合体100重量部に対して0.001〜0.3重量部添加することで、熱安定性に加え、耐湿熱性も向上する。
リン系安定剤とヒンダードフェノール系熱安定剤は、併用することもできる。
紫外線吸収剤の含有量は、共重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜3.0重量部であり、より好ましくは0.02〜1.0重量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.8重量部である。かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、共重合体成形体に十分な耐候性を付与することが可能である。
ブルーイング剤としては、バイエル社のマクロレックスバイオレットBおよびマクロレックスブルーRR並びにクラリアント社のポリシンスレンブル−RLS等が挙げられる。ブルーイング剤は、共重合体の黄色味を消すために有効である。特に耐候性を付与した共重合体の場合は、一定量の紫外線吸収剤が配合されているため紫外線吸収剤の作用や色によって成形体が黄色味を帯びやすい現実があり、特にシートやレンズに自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の配合は非常に有効である。
ブルーイング剤の配合量は、共重合体に対して好ましくは0.05〜1.5ppmであり、より好ましくは0.1〜1.2ppmである。
本発明におけるポリエステルカーボネート共重合体に、各種添加剤を添加するには、周知の方法を用いることができる。たとえば、溶液状態で各成分を混合し、溶剤を蒸発させるか、溶剤中に沈殿させる方法が挙げられる。工業的見地からみると溶融状態で各成分を混練する方法が好ましい。溶融混練には一般に使用されている一軸または二軸の押出機、各種のニーダー等の混練装置を用いることができる。特に二軸の押出機が好ましい。溶融混練に際しては、混練装置のシリンダー設定温度は200〜340℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは250〜320℃である。320℃より高いと、ポリエステルカーボネート共重合体が分解し、着色や、分解物による成形不良が増加し好ましくない。さらに200℃未満では、ポリエステルカーボネート共重合体の粘度が高く、各種添加剤を均一分散する事が出来ない。又、溶融混練に際して、真空状態で行ってもよい。真空状態で溶融混練する事で、ポリエステルカーボネート共重合体の残存フェノール等低分子量体が減り、成形不良が低減でき好ましい。真空度は、13.3kPa以下の圧力が好ましく、さらには、1.3kPa以下が好ましい。
混練に際しては、各成分は予めタンブラーもしくはヘンシェルミキサーのような装置で
各成分を均一に混合してもよいし、必要な場合には混合を省き、混練装置にそれぞれ別個
に定量供給する方法も用いることができる。
また、本発明の光学レンズは、光学歪みが小さいことを特徴とする。一般的なビスフェノールAタイプのポリエステルカーボネート樹脂からなる光学レンズは光学歪みが大きい。成形条件によりその値を低減することも不可能ではないが、その条件幅は非常に小さく成形が非常に困難となる。本発明のポリエステルカーボネート共重合体は、樹脂の配向により生じる光学歪みが極めて小さく、また成形歪みも小さいため、成形条件を厳密に設定しなくても良好な光学素子を得ることができる。
本発明の光学レンズを射出成形で製造する場合、シリンダー温度260〜320℃、金型温度100〜140℃の条件にて成形することが好ましい。
本発明の光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形で用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
また、本発明の共重合体は、流動性が高いため、薄肉小型で複雑な形状である光学レンズの材料として特に有用である。具体的なレンズサイズとして、中心部の厚みが0.05〜3.0mm、より好ましくは0.05〜2.0mm、さらに好ましくは0.1〜2.0mmである。また、直径が1.0mm〜20.0mm、より好ましくは1.0〜10.0mm、さらに好ましくは3.0〜10.0mmである。また、その形状として片面が凸、片面が凹であるメニスカスレンズであることが好ましい。
本発明の光学レンズの表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていても良い。反射防止層は、単層であっても多層であっても良く、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。
また、本発明の光学レンズは、金型成形、切削、研磨、レーザー加工、放電加工、エッジングなど任意の方法により成形されてもよい。さらには、金型成形がより好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。
実施例1〜3、比較例1〜2
評価用サンプルは以下の方法で調製した。
(a)キャストフィルム:
得られたポリエステルカーボネート共重合体5gを塩化メチレン50mlに溶解させ、ガラスシャーレ上にキャストする。室温にて十分に乾燥させた後、該ポリエステルカーボネート共重合体のTg−20℃の温度にて8時間乾燥して。キャストフィルムを作成した。
(b)非球面レンズ:
得られたポリエステルカーボネート共重合体を120℃で8時間真空乾燥した後、成形温度Tg+110℃、金型温度Tg−10℃にて、住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いて厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、Φ5mmのレンズを射出成形した。
(c)成形片
上記(b)と同様に、幅2.5cm、長さ5cm、厚みがそれぞれ1、2、3mmの成形片を射出成形した。
評価は下記の方法によった。
(1)比粘度:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットを十分に乾燥し、該ペレット0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定した。
(2)共重合比:重合終了後に得られたポリエステルカーボネート共重合体ペレットを日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて測定した。図1に示すように3.2〜4.8ppmの9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンのエチレンに起因するピークと8.2〜8.0ppmのカルボン酸に起因するピーク8.6〜6ppm付近の1,1’−ビ−2−ナフトールと9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンとカルボン酸の芳香環に起因するピークの積分比から求めた。
(3)ガラス転移点(Tg):該ポリエステルカーボネート共重合体ペレットをデュポン社製910型DSCにより、昇温速度20℃/minで測定した。
(4)屈折率(nd)、アッベ数(ν):(c)の手法により射出成形し得られた厚さ0.3mmの円板をATAGO製DR−M2のアッベ屈折計を用いて、25℃における屈折率(波長:589nm)及びアッベ数を測定した。
(5)配向複屈折(Δn):(a)の手法により作成した厚さ100μmのキャストフィルムをTg+10℃で2倍延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM−220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折(Δn)を求めた。
Δn=Re/d
Δn:配向複屈折
Re:位相差
d:厚さ
(6)光学歪み:(b)の手法により成形した非球面レンズを二枚の偏光板の間に挟み直交ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより光学歪み評価した。評価は以下の基準で行った。
◎:殆ど光漏れがない。
○:僅かに光漏れが認められる。
×:光漏れが顕著である。
(7)成形性:(b)の手法により成形した非球面レンズの充填不良、各成形不良、レンズの脆さ、金型付着物の有無等を目視にて確認した。評価は、500枚成形した際に欠陥品となる確率が、1%未満(◎)、1〜5%(○)5〜20%(△)、20%以下(×)で分類した。
(8)残存フェノールの含有量
重合後得られたポリエステルカーボネート共重合体中のジオール含有量を野村化学製Develosil ODS−7のカラムにて溶離液アセトニトリル/0.2%酢酸水とアセトニトリルとの混合液を用いて、カラム温度30℃、検出器277nmでグラジエントプログラムにてHPLC分析した。フェノールは標品を用い、検量線を作成し定量した。測定は、概ポリエステルカーボネート共重合体1.5gを塩化メチレン15mlに溶解させた後、アセトニトリル135mlを加え攪拌し、エバポレーターで濃縮した後、0.2μmフィルターでろ過し、この測定溶液10μlを注入して行った。
(9)耐湿熱性:1mm厚の成形片を85℃、85%RHの条件下で2000時間放置した後、該成形片0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定し、湿熱試験後の比粘度保持率(分子量保持率)を求めた。該比粘度保持率(分子量保持率)を耐湿熱性の指標とした。
Δηsp=(ηsp1/ηsp0)×100
※Δηsp:比粘度保持率、ηsp0:試験前の比粘度、ηsp1:試験後の比粘度
(10)熱安定性(加熱滞留試験):住友重機械(株)製SE30DU射出成形機にて、成形温度Tg+110℃で10分間、該共重合を加熱溶融させた後、金型温度Tg−10℃にて、幅2.5cm、長さ5cm、厚み2mmの成形品を成形した。該成形片0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定し、比粘度保持率(分子量保持率)を求めた。該比粘度保持率(分子量保持率)を耐熱性の指標とした。
Δηsp=(ηsp1/ηsp0)×100
※Δηsp:比粘度保持率、ηsp0:試験前の比粘度、ηsp1:試験後の比粘度
実施例1
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(以下“BPEF”と省略する)87.70重量部、1,1’−ビ−2−ナフトール(以下“BN”と省略することがある)45.81重量部、ジメチルテレフタル酸(以下“DMT”と省略する)7.77重量部、ジフェニルカーボネート(以下“DPC”と省略する)70.61重量部、及びテトラチタンブトキシド2.0×10−2重量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気常圧下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、20分かけて減圧度を20〜30kPaに調整し、60℃/hrの速度で260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、260℃に保持したまま、120分かけて0.13kPa以下まで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で1時間攪拌下重合反応を行った。 該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとBNとDMTとのモル比が50:40:10であり、比粘度は0.220であった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。耐湿熱性は、良好で湿熱試験後の比粘度保持率は、90%であった。また、耐熱性も良好で耐熱性試験後の比粘度保持率は、80%であった。
実施例2
BPEF105.24重量部、BNと34.36重量部、DMT7.77g、DPC70.61重量部とする以外は、実施例1と同様に重合した。
該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとBNとのモル比が60:30:10であり、比粘度は0.22であった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。耐湿熱性は、良好で湿熱試験後の比粘度保持率は、90%であった。また、耐熱性も良好で耐熱性試験後の比粘度保持率は、85%であった。
実施例3
BPEF122.78重量部、BNと22.91重量部、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(以下“NDCM”と省略する)を9.77gとする以外は、実施例1と同様に重合した。
該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとBNとNDCMとのモル比が70:20:10であり、比粘度は0.21であった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。耐湿熱性は、良好で湿熱試験後の比粘度保持率は、93%であった。また、耐熱性も良好で耐熱性試験後の比粘度保持率は、85%であった。
実施例4
BPEF105.24重量部、BNと34.36重量部、NDCM9.77gとする以外は、実施例1と同様に重合した。
該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとBNとNDCMとのモル比が60:30:10であり、比粘度は0.22であった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。耐湿熱性は、良好で湿熱試験後の比粘度保持率は、94%であった。また、耐熱性も良好で耐熱性試験後の比粘度保持率は、90%であった。
実施例5
BPEF87.70重量部、BNと45.81重量部、NDCM9.77gとする以外は、実施例1と同様に重合した。
該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとBNとNDCMとのモル比が50:40:10であり、比粘度は0.21であった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。耐湿熱性は、良好で湿熱試験後の比粘度保持率は、94%であった。また、耐熱性も良好で耐熱性試験後の比粘度保持率は、90%であった。
実施例6
BPEF122.78重量部、1,1’−チオビス(2−ナフトール)(以下“TBN”と省略する)25.47重量部、NDCM9.77gとする以外は、実施例1と同様に重合した。
該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとTBNとNDCMとのモル比が70:20:10であり、比粘度は0.22であった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。耐湿熱性は、良好で湿熱試験後の比粘度保持率は、92%であった。また、耐熱性も良好で耐熱性試験後の比粘度保持率は、85%であった。
比較例1
BPEF140.32重量部、BN22.91重量部、DPC88.26g、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド9.1×10−3重量部、水酸化ナトリウム4.0×10−4重量部、260℃、0.13kPa以下の条件下での反応時間を0.5時間とするとする以外は、実施例1と同様に重合した。
該ポリカーボネート共重合体はBPEFとBNとのモル比が80:20であり、比粘度は0.22であった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。
比較例2
BPEF87.70重量部、ビスフェノールA(以下“BPA”と省略する)45.66重量部、DPC94.26g、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド9.1×10−3重量部、水酸化ナトリウム4.0×10−4重量部、260℃、0.13kPa以下の条件下での反応時間を3時間とするとする以外は、比較例1と同様に重合した。
該ポリカーボネート共重合体はBPEFとBPAとのモル比が50:50であり、比粘度は0.45であった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。
耐湿熱性は、良好で湿熱試験後の比粘度保持率は、85%であった。また、耐熱性も良好で耐熱性試験後の比粘度保持率は、75%であった。
比較例3
BN57.26重量部、DMT38.84重量部、テトラチタンブトキシド2.0×10−2重量部、260℃、0.13kPa以下の条件下での反応時間を2時間とする以外は、比較例1と同様に重合した。
該ポリエステル共重合体はBNとDMTとのモル比が50:50であり、比粘度は0.22であった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。
比較例4
BPEF131.55重量部、DMT19.42重量部、260℃、0.13kPa以下の条件下での反応時間を0.5時間とする以外は、実施例1と同様に重合した。
該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとDMTとのモル比が75:25であり、比粘度は0.20であった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。
比較例5
BPEF157.86重量部、NDCM9.77重量部、260℃、0.13kPa以下の条件下での反応時間を0.5時間とする以外は、実施例1と同様に重合した。
該ポリエステルカーボネート共重合体はBPEFとNDCMとのモル比が90:10であり、比粘度は0.19であった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。
比較例6
BPEF7.02重量部、BN58.41重量部、NDCM43.96重量部、260℃、DPC8.83重量部、0.13kPa以下の条件下での反応時間を0.5時間とする以外は、実施例1と同様に重合した。
該ポリエステル共重合体はBPEFとBNとNDCMとのモル比が4:51:45であり、比粘度は0.22であった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られる樹脂組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。
Figure 0006139258
実施例1〜6で得られたポリエステルカーボネート共重合は、高透明、高屈折率および低複屈折であって且つ高流動性その複屈折が極めて小さく、成形流動性が良好であるため、射出成形により得られる光学レンズの光学歪みが小さい。さらに、屈折率が高く、充分な耐熱性を有し光学レンズとして優れる。 これに対して、比較例1、2で得られたポリマーは、屈折率が低く、さらにシルバーストリーク等の成形不良が発生し、成形性に劣る。また、比較例2、3は、比粘度が高い為、流動性が低く光学歪、成形性に劣る。比較例4、5は、屈折率が充分ではなく、性能に劣る。また、比較例2は、耐湿熱試験、耐熱試験後の分子量保持率も悪く、使用できる用途が限られる。比較例6は、屈折率は高いが、光学歪が大きく、成形性に劣る。
本発明のポリカーボネート共重合体は、高透明、高屈折率および低複屈折であって且つ高流動性であり、光学レンズはデジタルビデオカメラ等の各種カメラ、望遠鏡、双眼鏡
テレビプロジェクター、プリズム等、従来、高価な高屈折率ガラスレンズが用いられていた分野に用いることができ極めて有用である。

Claims (8)

  1. 全構成単位を100モル%として、構成単位(I):(構成単位(II)+構成単位(III))の割合がモル比で10:90モル〜50:50であり、且つ、構成単位(II)と構成単位(III)との割合がモル比で50:10〜70:10であり、構成単位(I)を形成するジオール成分が、1,1’−ビ−2−ナフトールもしくは1,1’−チオビス(2−ナフトール)であり、構成単位(II)を形成するジオール成分が、9,9−ビス(4−2−(ヒドロキシエトキシ)フェニルフルオレンであり、構成単位(III)が下記式(III)であり
    比粘度0.18〜0.35であるポリエステルカーボネート共重合体。
    Figure 0006139258
    式(III)に記載の構造中のWは、ナフタレンジカルボン酸由来、もしくは、テレフタル酸由来である。
  2. 屈折率が1.640〜1.665である請求項1に記載のポリエステルカーボネート共重合体。
  3. 配向複屈折が0〜6×10−3である請求項1または2に記載のポリエステルカーボネート共重合体。
  4. ガラス転移温度が、140〜170℃である請求項1〜のいずれかに記載のポリエステルカーボネート共重合体。
  5. フェノール含有量が1〜500ppmである請求項1〜のいずれかに記載のポリエステルカーボネート共重合体。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載のポリエステルカーボネート共重合体からなる光学部材。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載のポリエステルカーボネート共重合体からなる光学レンズ。
  8. 中心部の厚みが0.05〜3.0mm、レンズ部の直径が1.0〜20.0mmの請求項に記載の光学レンズ。
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