JP6331186B2 - 廃水の処理装置、処理方法、および廃水処理システム - Google Patents

廃水の処理装置、処理方法、および廃水処理システム Download PDF

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Description

本発明は、重金属を含む廃水を処理するための廃水の処理装置、処理方法、および廃水処理システムに関する。
本願は、2011年1月20日に、日本に出願された特願2011−009902号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
従来、電解メッキ工程から排出されるメッキ廃水など、重金属を含む廃水中から重金属を除去する方法としては、以下に示す方法が一般的であった。
例えば図6に示すように、まず、貯留槽11に一旦貯留された廃水Wを不溶化槽31にて不溶化処理する。具体的には、水酸化剤(アルカリ剤)や硫化剤等の不溶化剤を廃水に添加し、重金属を水に難溶解性の水酸化物や硫化物等の不溶化物とする。この不溶化物は粒子径が小さいため、凝集槽71にて不溶化処理された廃水に無機凝集剤(例えばポリ塩化アルミニウム(PAC)など)や高分子凝集剤等の凝集剤を添加して、不溶化物を凝集させる。ついで、沈殿槽61にて凝集させた不溶化物を沈降分離し、必要に応じて上澄み液Wを砂濾過装置等の濾過器45にて濾過し、さらに濾過水WをpH調整槽51にて中和してから処理水Wとして排出する。
近年、無電解ニッケルメッキなどの無電解メッキが広く行われている。無電解メッキは還元剤を用いることを特徴とし、この還元剤の電子を利用して金属を析出させるものである。この方法によれば、不導体の物質に対してもメッキが可能である。
しかし、この無電解メッキ工程から排出される廃水を処理する場合、上述した従来の方法では十分な処理が困難であり、廃水中の重金属濃度を低減しにくかった。
これは、無電解ニッケルメッキなどの無電解メッキにおいては、メッキ液中に重金属と配位結合して金属錯体を形成する化合物(例えばキレート剤など)が含まれていることが一因と考えられる。
上述したように、メッキ廃水を処理する際は、廃水に不溶化剤を添加して不溶化処理を行う。廃水中にキレート剤などの金属錯体を形成する化合物(以下、「錯体形成化合物」という場合がある。)が含まれていると、ニッケル等の重金属が錯体形成化合物と金属錯体を形成し、廃水中に溶解する。このため、この金属錯体が濾過器で濾別されることなくリークするため処理効率が低下すると考えられる。
また、酸性亜鉛メッキを行う場合においても、浴中にアンモニアが多量に含まれており、重金属がアンモニアとアンミン錯体を形成するため、処理効率が低下すると考えられる。
そこで、重金属イオンや、重金属とキレート剤との重金属錯体等を含む廃水を処理する方法として、廃水に不溶化剤を添加して不溶化物を生成させた後、膜分離装置に供給することによって固液分離する方法が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
また、廃水中の鉄、マンガン、シリカ、ふっ素などの複数の微量成分を一挙に除去する方法として、処理槽に貯留した廃水に硫酸アルミニウム(凝集剤)と酸化剤を添加した後、処理槽内に浸漬した分離膜フィルターによって生じた固形物を膜濾過する方法が報告されている(例えば特許文献3参照)。
さらに、銅等の低濃度重金属を含む廃水を処理する方法として、硫化剤による不溶化処理の後に、酸化剤による酸化処理を行い、スラッジの凝集性を向上される方法が報告されている。(例えば特許文献4参照)。
特許第3111508号公報 特開平2−157090号公報 特開2010−36180号公報 特開2007−69068号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法であっても、廃水中に錯体形成化合物が含まれている場合、除去対象となる重金属が錯体形成化合物と金属錯体を形成するため、不溶化剤による不溶化反応が阻害されやすく、十分な処理効果が得られにくかった。
特許文献3に記載の方法では、凝集剤を添加するため薬剤費用が増える。また、凝集剤を添加するとスラッジが発生するため、スラッジを処分するための費用もかかる。
また、特許文献3に記載の方法では、分離膜フィルターが浸漬した処理槽に酸化剤を添加するため、廃水中の重金属が酸化され、分離膜フィルターの表面に析出しやすかった。
金属酸化物が膜表面に析出すると膜の細孔が閉塞されるため、膜濾過流束が低下するといった問題があった。さらに、樹脂製の分離膜フィルターを用いた場合には、膜が酸化剤によって劣化する恐れもあった。
特許文献4に記載の方法では、発生したスラッジの凝集性を向上することはできても、廃水中に錯体形成化合物が含まれている場合は重金属が錯体形成化合物と金属錯体を形成するため、硫化剤による不溶化反応が阻害されやすく、十分な処理効果が得られにくかった。
また、廃水中の重金属濃度を十分に低減するためには、硫化剤や凝集剤を多量に添加する必要があるが、薬剤費用が増えたり、スラッジが多量に発生するためスラッジの処分費用が増えたりする。
メッキ加工業、および金属表面処理業では、加工対象の金属表面を洗浄する工程(金属表面洗浄工程)が必ず設けられている。
この金属表面洗浄工程は、純水等で表面を洗浄するリンス工程や、洗浄成分を含む水で表面の油分を洗浄する油分洗浄工程などが含まれる。
メッキ加工業、および金属表面処理業から排出される排水を、従来技術(凝集、または砂濾過)で処理した場合に、この処理水を前記金属表面洗浄工程にて再利用すると、以下の問題が生じる。
(1)砂濾過処理しただけでは、SS分や未反応凝集剤が残存しており、加工対象品にこれらが付着する。
(2)金属イオンが十分に除去できてないため、金属成分が加工対象品に付着する。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、重金属および金属錯体を形成する化合物を含む廃水に対して、凝集剤を添加しなくても高度に処理でき、重金属濃度を十分に低減できる廃水の処理装置、処理方法、および廃水処理システムを提供する。
本発明の廃水の処理装置は、重金属、および前記重金属と配位結合して金属錯体を形成する化合物を少なくとも含む廃水を処理する装置であって、廃水中の前記金属錯体を形成する化合物を酸化処理する酸化処理手段と、酸化処理した廃水中の重金属を不溶化処理する不溶化処理手段と、不溶化処理した廃水を膜分離する膜分離手段とを備える。
さらに、前記不溶化処理手段と膜分離手段との間に、不溶化処理した廃水中の重金属を沈降分離する沈降分離手段を備えることが好ましい。
さらに、前記酸化処理工程が、次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、およびこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化剤の添加手段を備えることが好ましい。
さらに、前記酸化処理手段が、廃水のpHを調整するpH調整手段を備えることが好ましい。
また、本発明の廃水の処理方法は、重金属、および前記重金属と配位結合して金属錯体を形成する化合物を少なくとも含む廃水を処理する方法であって、廃水中の前記金属錯体を形成する化合物を酸化処理する酸化処理工程と、酸化処理した廃水中の重金属を不溶化処理する不溶化処理工程と、不溶化処理した廃水を膜分離する膜分離工程とを有する。
さらに、前記不溶化処理工程と膜分離工程との間に、不溶化処理した廃水中の重金属を沈降分離する沈降分離工程を有することが好ましい。
また、前記酸化処理工程が、次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、およびこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化剤の添加によりなされることが好ましい。
さらに、前記酸化処理工程において、廃水のpHを4以上8以下に調整した後酸化剤を添加するであることを特徴とすることが好ましい。
さらに、前記酸化剤の廃水への添加終了点を酸化還元電位にて検知することが好ましい。
また、本発明の廃水処理システムは、本発明の処理装置により処理された処理水を、メッキ加工または金属表面処理の、金属表面洗浄工程にて再利用することを特徴とする。
本発明の廃水の処理装置および処理方法によれば、重金属および金属錯体を形成する化合物を含む廃水に対して、凝集剤を添加しなくても高度に処理でき、重金属濃度を十分に低減できる。
本発明の廃水の処理装置および処理方法で得られた処理水は、金属含有量が極めて少ない。また廃水処理に凝集剤を使用しないため、未反応凝集物の流出が、処理水に混入することも無い。
従って、本発明の廃水処理システムによれば、本発明の処理装置および処理方法を用いて処理した処理水を、排水発生元である前記金属表面洗浄工程に循環することによって、加工対象品に影響を与えることなく、処理水を有効に利用することが可能となる。
本発明の廃水の処理装置の一例を示す概略構成図である。 本発明の廃水の処理装置の他の例を示す概略構成図である。 本発明の廃水の処理装置の他の例を示す概略構成図である。 本発明の廃水の処理装置の他の例を示す概略構成図である。 試験例の結果を示すグラフである。 従来の廃水の処理に用いる装置の一例を示す概略構成図である。 本発明の廃水処理システムの一例を示す概略構成図である。 本発明の廃水処理システムの他の例を示す概略構成図である。 本発明の廃水処理システムの他の例を示す概略構成図である。 本発明の廃水処理システムの他の例を示す概略構成図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
[廃水の処理装置]
図1は、本発明の廃水の処理装置の一例を示す概略構成図である。この例の廃水の処理装置1は、上流側から順に、廃水Wを一旦貯留する貯留手段10と、酸化処理手段20と、不溶化処理手段30と、膜分離手段40と、pH調整手段50とを具備して構成されている。
なお、図2〜4において、図1と同じ構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する場合がある。
<廃水>
本発明の処理対象となる廃水Wは、例えばメッキ工場等の金属表面処理工場などから発生した廃液(被処理水)であり、重金属、および前記重金属と配位結合して金属錯体を形成する化合物(以下、「錯体形成化合物」という。)を含む。
重金属としては、クロム、銅、亜鉛、カドミウム、ニッケル、水銀、鉛、鉄、およびマンガンなどが挙げられる。これら重金属は単独で含まれていてもよいが、通常は複数の重金属が混合された状態で含まれている。
一方、錯体形成化合物は、前記重金属のいずれかと配位結合して、重金属原子を中心とする金属錯体を形成する化合物である。錯体形成化合物の例としては、クエン酸、グルコン酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、シアンおよびこれらの塩等の酸性洗浄成分;EDTA、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、およびアンモニア(アンモニウム塩を含む)等のアミン類などが挙げられる。なお、金属錯体にはキレート錯体も含まれることから、錯体形成化合物には、酒石酸やEDTAなどのキレート剤も当然に該当する。
なお、廃水W中には、重金属および錯体形成化合物の他に、洗浄成分や、pH調整成分として界面活性剤、錯体形成化合物以外のルイス酸などが含まれていてもよい。
<貯留手段>
貯留手段10は、金属表面処理工場などから発生した廃水Wを一旦貯留する手段である。
貯留手段10は貯留槽11を備える。貯留槽11としては、廃水Wを貯留できるものであれば特に制限されない。
<酸化処理手段>
酸化処理手段20は、廃水W中の錯体形成化合物を酸化処理する手段である。
この例の酸化処理手段20は、貯留手段10から送られた廃水Wを溜める酸化槽21と、酸化槽21中の廃水Wに酸化剤を添加する酸化剤添加手段22と、酸化槽21中の廃水Wの水質を検査する水質計23と、酸化槽21中の廃水Wを攪拌する攪拌翼24とを備える。
酸化剤添加手段としては、酸化剤を添加できるものであれば特に制限されないが、具体的には電磁定量ポンプ、ダイヤフラムポンプ、およびマグネットポンプなどが挙げられる。これらのポンプのなかでも電磁定量ポンプがより好ましい。これらポンプの接液部構成部品は耐薬品性を有する素材で構成される。耐薬品性を有する素材の具体例としては、PVC(塩化ビニル)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ABS、PS(ポリスチレン)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、セラミック などが挙げられる。
酸化槽21としては、廃水Wを貯留できるものであれば特に制限されないが、酸化剤によって劣化しにくい材質のものが好ましい。
酸化剤添加手段22としては、酸化剤を添加できるものであれば特に制限されない。
水質計23は、酸化槽21中の廃水Wの水質を検査するものである。水質を検査することで、酸化剤の添加量の過不足を把握でき、特に、酸化剤の過剰添加を抑制するのに有効である。
水質計23としては、酸化還元電位計、酸化剤濃度計などが挙げられる。また、これらの電位計や濃度計に代えて、あるいはこれらと併用して、錯体形成化合物の濃度を測定するための濃度計を用いることも可能である。ただし、錯体形成化合物の濃度を測定するための濃度計は、アンモニアなど濃度測定が可能な錯体形成化合物を含む廃水Wを処理する場合に用いる。
なお、この例の酸化処理手段20は1つの水質計23を備えているが、水質の検査方法に応じて複数種類の水質計を備えていてもよい。
水質計の具体的手段としては、一般的に酸化還元電位計を用いる。
酸化剤の具体例としては、次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、およびこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化剤が挙げられる。
また、酸化処理手段20は、廃水のpHを調整するpH調整手段を備えていてもよい。pH調整手段は、後述するpH調整手段50と同様の手段を採用することができる。また、pHの調整は、酸化剤を添加する前に行うことが好ましい。
酸化処理手段20における廃水のpHは、4〜8とすることが好ましく、4〜6がより好ましい。これにより塩素ガスを発生させることなく、酸化剤による酸化力を向上させることができる。
<不溶化処理手段>
不溶化処理手段30は、酸化処理手段20にて酸化処理した廃水W中の重金属を不溶化処理する手段である。なお、不溶化とは、廃水W中に遊離している重金属イオンを難溶解性化合物(不溶化物)とすることによって析出させることである。ここで不溶化物とは、水酸化物、硫化物など、溶解度が非常に低い状態のものをいう。
この例の不溶化処理手段30は、酸化処理手段20から送られた廃水Wを溜める不溶化槽31と、不溶化槽31中の廃水Wに不溶化剤を添加する不溶化剤添加手段32と、不溶化槽31中の廃水Wの水質を検査する水質計33と、不溶化槽31中の廃水Wを攪拌する攪拌翼34とを備える。
不溶化槽31としては、廃水Wを貯留できるものであれば特に制限されないが、不溶化剤によって劣化しにくい材質のものが好ましい。不溶化剤によって劣化しにくい材質としては、具体的には、ステンレス、FRP、PVC(塩化ビニル)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ABS、PS(ポリスチレン)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、セラミックが挙げられる。
不溶化処理手段の具体的手段としては、貯留タンク、不溶化剤添加手段、攪拌機およびpH計を用いる。
不溶化剤添加手段32としては、不溶化剤を添加できるものであれば特に制限されない。
不溶化剤添加手段の具体的手段としては、水酸化物法を用いる場合には、耐薬品性を有する水酸化ナトリウム溶液貯留タンクと、耐薬品性を有する電磁定量ポンプ、ダイヤフラムポンプ、またはマグネットポンプなどが用いられる。硫化物法を用いる場合には、耐薬品性を有する硫化ナトリウム溶液貯留タンクと、耐薬品性を有する電磁定量ポンプ、ダイヤフラムポンプ、またはマグネットポンプなどが用いられる。
水質計33は、不溶化槽31中の廃水Wの水質を検査するものである。水質を検査することで、不溶化剤の添加量の過不足を把握でき、特に、不溶化剤の過剰添加を抑制するのに有効である。
水質計33としては、pH計などが挙げられる。
なお、この例の不溶化処理手段30は1つの水質計33を備えているが、水質の検査方法に応じて複数種類の水質計を備えていてもよい。
<膜分離手段>
膜分離手段40は、不溶化処理手段30にて不溶化処理した廃水Wを濾過水Wと膜分離濃縮水Wに膜分離する手段である。
この例の膜分離手段40は、加圧ポンプP1によって加圧する方式であり、濾過膜41を備える。
濾過膜41としては、中空糸膜、平膜、チューブラ膜、およびモノリス型膜などが挙げられるが、容積充填率が高いことから中空糸膜が好ましい。
濾過膜41として中空糸膜を用いる場合、その材質としては、セルロース、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデンジフロライド(PVDF)、およびポリ四フッ化エチレン(PTFE)などが挙げられる。中空糸膜の材質としては、上記のなかでもポリフッ化ビニリデンジフロライド(PVDF)、およびポリ四フッ化エチレン(PTFE)が好ましい。
濾過膜41としてモノリス型膜を用いる場合は、セラミック性の膜を用いることができる。
膜分離手段の具体的手段としては、膜分離としてポリフッ化ビニリデンジフロライド製の中空糸膜エレメントを水槽内に浸漬し、膜エレメントの2次側(濾過水側)と濾過ポンプを接続したものを用いる。また膜エレメントの下方には、膜面洗浄用の曝気手段を設けたものを用いる。
濾過膜41に形成される微細孔の平均孔径としては、一般に限外濾過膜と呼ばれる膜で平均孔径0.001〜0.1μm、一般に精密濾過膜と呼ばれる膜で平均孔径0.1〜1μmであり、本発明においてはこれらの膜を用いることが好ましい。
なお、重金属を不溶化処理することで生成された不溶化物の粒子径は、一般的に0.1〜100μmであるため、濾過膜41の微細孔の平均孔径は0.03μm以上であることが好ましい。平均孔径が0.03μm未満であると、膜分離に要する圧力が大きくなるため、運転エネルギーが過大となる。濾過膜41の微細孔の平均孔径は、より好ましくは0.1μm以上である。一方、濾過膜41の微細孔の平均孔径は3μm以下が好ましい。平均孔径が3μmを超えると、濾過膜41の二次側(濾過水W中)に漏出する重金属の不溶化物の粒子の割合が増加し、濾過水W中の金属濃度が上昇しやすくなる。濾過膜41の微細孔の平均孔径は、より好ましくは10μm以下である。
膜分離手段40により、廃水Wは不溶化物が除去された濾過水Wと、不溶化物が濃縮物された膜分離濃縮水Wとに分離される。
濾過水Wは、後述のpH調整手段に移され、pH調整される。一方、膜分離濃縮水Wは、通常、脱水手段(図示略)により脱水され、脱水ケーキ等の産業廃棄物として処理される。
<pH調整手段>
pH調整手段50は、膜分離手段40にて膜分離した濾過水WのpHを、河川等への放流に適したpHに調整する手段であり、pHを調整された濾過水Wは処理水Wとして排出される。
なお、膜分離手段40によって不溶化物を十分に除去しているので、濾過水WのpHを中和しても重金属が再溶解するおそれがない。
pH調整手段50は、pH調整槽51と、pH計(図示略)と、酸添加装置およびアルカリ添加装置(いずれも図示略)とを備える。
pH調整槽51としては、濾過水Wを貯留できるものであれば特に制限されない。pH調整槽51の素材としては、具体的にはステンレス、FRP、PVC(塩化ビニル)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ABS、PS(ポリスチレン)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、セラミックが挙げられる。また、pH計、酸添加装置およびアルカリ添加装置についても、pH調整に用いられるものであれば特に制限されない。
pH調整手段の具体的手段としては、貯留タンク、酸添加手段、アルカリ添加手段、攪拌機およびpH計を用いる。
酸添加装置(酸添加手段)の具体的手段としては、耐薬品性を有する薬品貯留タンクと、耐薬品性を有する電磁定量ポンプ、ダイヤフラムポンプ、またはマグネットポンプなどが用いられる。
アルカリ添加装置(アルカリ添加手段)の具体的手段としては、耐薬品性を有する薬品貯留タンクと、耐薬品性を有する電磁定量ポンプ、ダイヤフラムポンプ、またはマグネットポンプなどが用いられる。
<作用効果>
以上説明した本発明の廃水の処理装置1は、上流側から順に酸化処理手段20、不溶化処理手段30、膜分離手段40を備えるので、廃水Wは酸化処理された後に不溶化処理および膜分離される。すなわち、廃水W中の錯体形成化合物は、不溶化処理の前に酸化処理手段20にて酸化処理されるので、後段の不溶化処理手段30において不溶化処理が錯体形成化合物によって阻害されにくい。よって、本発明の廃水の処理装置1であれば、廃水Wを高度に処理でき、処理水W中の重金属濃度を十分に低減できる。
また、本発明の廃水の処理装置1は、酸化処理手段20により廃水W中の錯体形成化合物を酸化処理できるので、凝集剤を添加しなくても不溶化処理手段30により生成される重金属の不溶化物の粒子径を粗大化できる。従って、後段の膜分離手段40の濾過膜41が不溶化物により閉塞しにくく、膜分離手段40を長期間にわたって安定に運転することが可能である。
本発明の廃水の処理装置1は、重金属および錯体形成化合物を含む廃水Wを処理する装置であるが、特に無電解ニッケルメッキなどの無電解メッキ工程から排出される廃水を処理するのに好適である。
<他の実施形態>
本発明の廃水の処理装置は図1に示す処理装置1に限定されない。例えば図1の処理装置1では、pH調整手段50を備えているが、濾過水WのpHが河川等への放流に適したpHであれば、pH調整手段50を備えていなくてもよい。
また、酸化処理手段20において、酸化剤添加手段22から塩素系の酸化剤を添加する場合には、塩素ガスまたはアンモニア酸化によるクロラミンなど、臭気成分が発生する場合がある。従って、発生濃度に応じてガス回収手段を適宜設置するのが望ましい。
ガス回収手段の具体的手段としては、スクラバー、または活性炭式ガス浄化装置が挙げられる。
また、図1の処理装置1では、全量式の膜分離手段40を備えているが、図2に示すように、クロスフロー式の膜分離手段40でもよい。
なお、図2に示す廃水の処理装置2では、膜分離手段40により分離された膜分離濃縮水Wの一部を前段の不溶化処理手段30の不溶化槽31に返送しているが、膜分離濃縮水Wの一部は酸化処理槽20の酸化槽21や、貯留手段10の貯留槽11に返送してもよい。
図1、2に示す廃水の処理装置1、2に備わる膜分離手段40は、いずれも加圧式であるが、膜分離手段40としては、図3に示すように、浸漬式でもよい。
図3に示す廃水の処理装置3の膜分離手段40は、不溶化処理手段30から送られた廃水Wを溜める膜分離槽42と、膜分離槽42内に設けられた膜モジュール43と、膜洗浄用の散気手段44とを備える。膜モジュール43には吸引ポンプP2が接続され、散気手段44にはブロワーBが接続されている。
膜モジュール43としては、水処理等の分離操作に用いられる通常の膜モジュールが挙げられる。膜モジュール43では、吸引ポンプP2により膜分離槽42内の廃水Wを膜モジュール43の濾過膜の細孔を介して吸引ろ過することで廃水Wを濾過水Wと膜分離濃縮水Wとに分離する。
一方、散気手段44は膜モジュール43の下方に設けられ、ブロワーBより送気された空気を膜分離槽42内に放出する。これにより、散気手段44から連続的もしくは断続的に散気された気泡が、廃水Wの液中を通って膜モジュール43に達し、その後、水面から放出される。このとき、濾過膜が洗浄される。
なお、膜分離手段40により分離された膜分離濃縮水Wの一部を、不溶化槽31や、酸化槽21、貯留槽11に返送してもよい。
また、本発明の廃水の処理装置は、例えば図4に示すように、不溶化処理手段30と膜分離手段40との間に、不溶化処理手段30にて不溶化処理された廃水W中の重金属を沈降分離する沈降分離手段60を備えるのが好ましい。
図4に示す廃水の処理装置4の沈降分離手段60は、不溶化処理手段30から送られた廃水Wを溜める沈殿槽61を備える。
沈殿槽61の構造については特に制限されず、沈殿槽61内部に傾斜板を設置して有効表面積を増やしてもよい。
また、沈殿槽61の容積については、処理対象液の固形分濃度や処理対象粒子(重金属の不溶化物)の大きさによって、適宜設定すればよい。
沈降分離手段60により、廃水Wは上澄み液Wと沈殿濃縮水Wとに分離される。
上澄み液Wは、後段の膜分離手段40に移され、濾過水Wと膜分離濃縮水Wとにさらに膜分離される。上澄み液Wには沈降分離手段60によって完全に沈降除去されなかった微細な重金属の不溶化物が存在するが、膜分離手段40によって微細な不溶化物は除去される。
一方、沈殿濃縮水Wは、通常、脱水手段(図示略)により脱水され、脱水ケーキ等の産業廃棄物として処理される。
図4に示す廃水の処理装置4のように、不溶化処理手段30と膜分離手段40との間に、沈降分離手段60を備えれば、膜分離手段40にて膜分離する前に、不溶化した廃水W中の重金属の大部分を廃水Wから除去できる。従って、膜分離手段40にて除去する粒子量が削減されるので、膜分離手段40の負担が軽減され、より安定した濾過運転を継続できる。
なお、図4に示す廃水の処理装置4は、膜分離手段40として図1に示す処理装置1と同じものを備えているが、図2、3に示す処理装置2、3の膜分離手段40と同じものでもよい。
このように、本発明の廃水の処理装置であれば、廃水に凝集剤を添加して不溶化物を凝集させる凝集手段を備えなくても廃水を高度に処理でき、重金属濃度を十分に低減できるが、必要であれば凝集手段を備えてもよい。ただし、凝集手段にて廃水に添加する凝集剤の添加量が少ないほど、薬剤費用を削減できるとともに、発生するスラッジ量を軽減できるので、スラッジの処分費用をも削減できる。従って、凝集手段を備えなくても目標の処理水質を達成できる場合には、凝集手段は備えない方が好ましい。なお、目標の処理水質とは、例えばニッケルであれば0.1mg/L以下である。
なお、凝集手段を備える場合、その設置場所は不溶化処理手段と膜分離手段との間であり、沈降分離手段を備える場合には不溶化処理手段と沈降分離手段との間である。凝集手段の具体例としてはポリ塩化アルミニウムなどの無機凝集剤や高分子凝集剤などを添加する方法が挙げられる。
[廃水の処理方法]
本発明の廃水の処理方法は、廃水中の錯体形成化合物を酸化処理する酸化処理工程と、酸化処理した廃水中の重金属を不溶化処理する不溶化処理工程と、不溶化処理した廃水を膜分離する膜分離工程とを有する。
以下、図1に示す廃水の処理装置1を用いて、本発明の廃水の処理方法の一例について具体的に説明する。
<酸化処理工程>
まず、廃水Wを貯留手段10の貯留槽11に一旦貯留する。
ついで、貯留槽11に貯留された廃水Wを酸化処理手段20の酸化槽21に移し、酸化剤を添加して廃水W中の錯体形成化合物を酸化処理する。
酸化処理工程で用いる酸化剤としては、次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸もしくはこれらの塩、および過酸化水素などが挙げられる。これらの中でも、次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸もしくはこれらの塩、またはこれらの混合溶液が好ましく、取り扱い性、入手容易性の観点から次亜塩素酸ナトリウム溶液が特に好ましい。
次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸もしくはこれらの塩、またはこれらの混合溶液を酸化剤として用いれば、酸化反応が速やかに進行しやすくなり、全体の処理速度を速めることができる。また、これらは、EDTA、酒石酸などのキレート作用を有する錯体形成化合物の分解効率が高いことから、後述する不溶化処理工程において錯体形成化合物による不溶化物の凝集阻害を防ぐことができ、不溶化処理をより効率的に行うことができる。
また、特に次亜塩素酸ナトリウムまたはその溶液を酸化剤として用いると、不溶化処理工程において生成する重金属の不溶化物の粒子径が大きくなる傾向にある。不溶化物の粒子径が大きい方が、後述する膜分離工程において濾過膜の細孔が閉塞されるのを抑制でき、膜の流束を高く維持できる。
さらに、廃水Wが無電解ニッケルメッキ廃水など、重金属としてニッケルを含む廃水の場合、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤の添加によって、溶解しているニッケルイオンがオキシ水酸化ニッケル(NiO(OH))に酸化される。オキシ水酸化ニッケルは、一般的に水酸化ニッケル(Ni(OH))と比較して溶解度が低くなるため、高度な排水処理を行う場合には、次亜塩素酸ナトリウムまたはその溶液が酸化剤として特に好ましい。
なお、廃水Wへの酸化剤の添加は、廃水W中に含まれる錯体形成化合物を酸化処理することが目的であり、過剰に酸化剤を添加することは、薬品の過剰消費となる。また、酸化剤を過剰に添加すると、残存した酸化剤により、後述する膜分離工程で用いる濾過膜を酸化させるおそれがある。加えて、酸化剤を過剰に添加すると、最終的に発生するスラッジ量が増加する傾向にある。
以上のことより、酸化処理工程では廃水W中に含まれる錯体形成化合物を全て酸化した時点で、廃水W中への酸化剤の添加を停止することが望ましく、過剰添加を制御するのがよい。
酸化剤の添加終了点を検知する方法としては、水質計23を用いた酸化還元電位のモニタリング、酸化剤濃度のモニタリング、または錯体形成化合物の濃度のモニタリング、といった方法が挙げられる。
<酸化還元電位のモニタリング>
廃水W中に錯体形成化合物が残存している状態であれば、添加した酸化剤は錯体形成化合物との酸化還元反応により消費される。酸化剤が錯体形成化合物の酸化により消費されている間は廃水Wの酸化還元電位は低く、酸化分解可能な錯体形成化合物が全て酸化されて酸化剤が残存すると廃水Wの酸化還元電位は高くなる。
よって、水質計(酸化還元電位計)23により酸化槽21中の廃水Wの酸化還元電位をモニタリングすれば、酸化還元電位が上昇した時点で、廃水W中の酸化分解可能な錯体形成化合物は全て酸化されたものと容易に判断でき、この時点で酸化剤の添加を停止すればよい。
<酸化剤濃度のモニタリング>
廃水W中に錯体形成化合物が残存している状態であれば、添加した酸化剤は消費される。すなわち、酸化剤を連続的に添加している過程において、酸化処理すべき錯体形成化合物が残存している間は、酸化剤濃度は低濃度かつ、ほぼ一定で推移する。
よって、水質計(酸化剤濃度計)23により酸化槽21中の酸化剤の濃度をモニタリングすれば、酸化剤濃度が上昇した時点で、廃水W中の酸化分解可能な錯体形成化合物は全て酸化されたものと容易に判断でき、この時点で酸化剤の添加を停止すればよい。
なお、酸化剤として次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸もしくはこれらの塩等を用いる場合、酸化剤濃度は、残留塩素濃度を測定することでも求められる。
<錯体形成化合物の濃度のモニタリング>
廃水W中の錯体形成化合物がアンモニアなど、水質計でモニタリング可能な物質であれば、前記物質を連続的にモニタリングし、錯体形成化合物の濃度が十分に低下した時点で酸化剤の添加を停止すればよい。
上述した酸化剤の添加終了点の検知方法の中でも、水質計23として用いる酸化還元電位計は、その使用が簡便である点で、酸化還元電位のモニタリングが好ましい。また、酸化還元電位のモニタリングは連続式(連続測定)に対応できるのに対し、酸化剤濃度や錯体形成化合物の濃度のモニタリングはバッチ式(一定間隔でサンプルを採取して測定)に対応しているため、酸化還元電位のモニタリングの方が、他の方法よりも酸化剤の添加終了点をより瞬時に検知できる。
酸化還元電位のモニタリングにより酸化剤の添加終了点を検知する場合は、以下のようにするのが好ましい。
すなわち、酸化剤濃度が上昇する(酸化剤の添加が過剰となる)タイミングにおける酸化還元電位を予め測定しておくのが好ましい。これにより、事前に測定した酸化還元電位の値を判断基準とできるので、より容易に酸化剤の添加停止のタイミングを見極めることができる。
なお、酸化還元電位のモニタリングや酸化剤濃度のモニタリングでは、酸化剤の添加量が不足しているかどうかを判断するのは困難である。このような場合は、廃水W中の錯体形成化合物の濃度などから、全ての錯体形成化合物を酸化処理するのに必要な酸化剤量を予測し、その予測量よりも多い量の酸化剤を添加する。そして、酸化還元電位のモニタリングや酸化剤濃度のモニタリングにより、酸化剤が過剰と判断されれば酸化剤の添加を停止したり、添加量を減らしたりすればよい。
また、酸化処理工程は、廃水のpHを調整するpH調整工程を備えていてもよい。pH調整手段は、後述するpH調整工程と同様の手段を採用することができる。また、pHの調整は、酸化剤を添加する前に行うことが好ましい。
酸化処理工程における廃水のpHは、4〜8とすることが好ましく、4〜6がより好ましい。これにより塩素ガスを発生させることなく、酸化剤による酸化力を向上させることができる。
<不溶化処理工程>
不溶化処理工程では、酸化処理された廃水Wを不溶化処理手段30の不溶化槽31に移し、不溶化剤を添加して廃水W中の重金属を不溶化処理する。
不溶化処理の方法としては、水酸化剤を用いた水酸化物法と、硫化剤を用いた硫化物法がある。なお、硫化物法の場合は硫化水素発生のおそれがあるため、不溶化処理としては水酸化物法が好ましい。
水酸化物法は、水酸化剤(水酸化物イオン)と対象金属とを反応させ、溶解度の低い金属水酸化物として析出させる方法である。
水酸化剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、および水酸化マグネシウムなどが用いられる。水酸化ナトリウムを用いるとスラッジ発生量が少なくなるためより好ましい。
一方、硫化物法は、硫化剤(硫化物イオン)と対象金属を反応させ、溶解度の低い金属硫化物として析出させる方法である。
硫化剤としては、硫化ナトリウム、および硫化水素などが用いられる。
なお、水酸化物法によって不溶化処理を行う場合、重金属は各金属種によって溶解度が最も低くなるpH領域が異なる。そのため、重金属の除去率を高めるために、溶解度が最も低くなるpHになるまで、不溶化剤(水酸化剤)を添加する。
その際、不溶化剤の添加量の制御は、水質計33による不溶化槽31中の廃水WのpH測定によって行われる。
ただし、廃水の処理装置に供給される廃水W中の重金属の組成および濃度が、常時一定であることが判明している場合には、不溶化剤を一定量注入することによって制御することもできる。
また、同じ重金属であっても、共存する他の成分によって、溶解度が最も低くなるpH領域が異なることがある。よって、実際には処理対象の廃水Wを用いた事前試験を行い、最も適したpH領域となるように不溶化剤を添加して、pHを制御することが望ましい。事前試験とは不溶化剤使用量が最も少なく、かつ目標処理水質を達成することができるpH条件を決定する試験のことである。
<膜分離工程>
膜分離工程では、不溶化処理された廃水Wを膜分離手段40に移し、濾過膜41により不溶化物が除去された濾過水Wと、不溶化物が濃縮された膜分離濃縮水Wとに膜分離する。
濾過水Wは、必要に応じて後述のpH調整工程によりpH調整される。一方、膜分離濃縮水Wは、通常、脱水され、脱水ケーキ等の産業廃棄物として処理される。
<pH調整工程>
pH調整工程では、濾過水WをpH調整手段50のpH調整槽51に移し、濾過水WのpHを河川等への放流に適したpHに調整する。特に、不溶化処理工程において水酸化物法を用いた場合、通常、濾過水Wはアルカリ性となっているため中和するのがよい。pHを調整された濾過水Wは処理水Wとして排出される。
pH調整工程では、中和用のpH調整剤として、塩酸、硫酸、および炭酸ガス等の酸などが用いられる。pH調整工程において酸を過剰に添加した場合には、pH調整剤として水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、および水酸化マグネシウム等のアルカリを添加して、中性領域になるようにpHを再調整する。
なお、膜分離工程によって不溶化物を十分に除去しているので、濾過水WのpHを中和しても重金属が再溶解するおそれがない。
<作用効果>
以上説明した本発明の廃水の処理方法によれば、不溶化処理工程の前に酸化処理工程を行い、廃水中の錯体形成化合物を酸化処理するので、不溶化処理工程での不溶化処理が錯体形成化合物によって阻害されにくい。よって、廃水を高度に処理でき、処理水中の重金属濃度を十分に低減できる。
ところで、一般的に、不溶化処理工程において水酸化物法を用いた場合、これより生成する重金属の不溶化物の粒子は微細であり、沈降速度が非常に遅くなる傾向にある。また、膜分離工程において微細な粒子を濾過すると、膜の細孔が閉塞されやすくなるため、膜濾過を長期間安定して継続することが困難になる。
しかし、本発明の廃水の処理方法であれば、不溶化処理工程の前に酸化処理工程により廃水中の錯体形成化合物を酸化処理するので、凝集剤を添加しなくても不溶化処理工程により生成される重金属の不溶化物の粒子径を粗大化できる。従って、不溶化処理工程の後に行われる膜分離工程において濾過膜が不溶化物により閉塞しにくく、膜分離工程を長期間にわたって安定に行うことが可能である。
本発明の廃水の処理方法は、重金属および錯体形成化合物を含む廃水を処理する方法であるが、特に無電解ニッケルメッキなどの無電解メッキ工程から排出される廃水を処理するのに好適である。
<他の実施形態>
本発明の廃水の処理方法は、上述した方法に限定されない。例えば上述した方法では、膜分離工程の後にpH調整工程を行うが、濾過水WのpHが河川等への放流に適したpHであれば、pH調整工程は行わなくてもよい。
また、上述した方法では、酸化処理工程での酸化処理方法として酸化剤添加法を例示したが、例えばオゾン酸化法、光触媒法、または生物酸化法などでもよい。ただし、制御の簡便性や反応速度の観点から、酸化処理方法としては酸化剤添加法が好ましい。なお、オゾン酸化法とは、オゾン発生装置などから生じたオゾンの酸化力を用いて、有機物を酸化分解する方法のことである。光触媒法とは、二酸化チタンなどの光触媒に紫外線照射した際に発生する酸化力を用いて有機物を酸化分解する方法のことである。生物酸化法とは、活性汚泥法など、微生物による酸化作用を用いて有機物を酸化分解する方法のことである。
なお、酸化処理方法として、塩素系の酸化剤を用いた酸化剤添加法を採用する場合には、塩素ガスまたはアンモニア酸化によるクロラミンなど、臭気成分が発生するため、発生濃度に応じてガス回収を行うのが望ましい。
また、上述した方法では、膜分離工程での膜分離方法として図1に示すような全量式の膜分離手段40を用いた方法を例示したが、例えば図2に示すようなクロスフロー式の膜分離手段40や、浸漬式の膜分離手段40を用いてもよい。
図1に示す全量式の膜分離手段40や、図2に示すクロスフロー式の膜分離手段40は加圧式を採用しており、濾過膜41を容器に封入した状態で膜の一次側を高い圧力で加圧できる。そのため、高い透過流束で膜分離でき、必要膜面積を低減できる。ただし、処理対象液の不溶化物濃度(濁質濃度)が高い場合には濾過膜41が閉塞しやすい傾向にあるため、処理対象液の不溶化物濃度が低い場合に実施するのが好ましい。
一方、図3に示す浸漬式の膜分離手段40は、膜モジュール43を処理対象液中に浸漬し、膜の二次側を負圧にすることによって濾過を行う。そのため、加圧式と比較して透過流束が低くなるが、不溶化物濃度が高くても、濾過膜が閉塞することなく膜分離できる。
さらに、本発明の廃水の処理方法は、例えば図4に示す処理装置4を用い、不溶化処理工程と膜分離工程との間に、不溶化処理した廃水W中の重金属を沈降分離する沈降分離工程を有することが好ましい。
沈降分離工程では、不溶化処理された廃水Wを沈降分離手段60の沈殿層61に移し、重金属の不溶化物を沈殿させ、上澄み液Wと沈殿濃縮水Wとに分離する。
上澄み液Wは、膜分離工程に移され、濾過水Wと膜分離濃縮水Wとにさらに膜分離される。上澄み液Wには沈降分離工程によって完全に沈降除去されなかった微細な重金属の不溶化物が存在するが、膜分離工程によって微細な不溶化物は除去される。
一方、沈殿濃縮水Wは、通常、脱水され、脱水ケーキ等の産業廃棄物として処理される。
不溶化処理工程と膜分離工程との間に、沈降分離工程を行えば、膜分離工程にて膜分離する前に、不溶化した廃水中の重金属の大部分を廃水から除去できる。従って、膜分離工程にて除去する粒子量が削減されるので、濾過膜の負担が軽減され、より安定した濾過運転を継続できる。
なお、上述したように、不溶化処理工程において水酸化物法を用いた場合、これより生成する重金属の不溶化物の粒子は微細であり、沈降速度が非常に遅くなる傾向にある。そのため、沈殿に長時間を要してしまい、沈殿槽を大型化する必要があった。
しかし、本発明の廃水の処理方法であれば、不溶化処理工程の前に酸化処理工程により廃水中の錯体形成化合物を酸化処理するので、凝集剤を添加しなくても不溶化処理工程により生成される重金属の不溶化物の粒子径を粗大化でき、沈降速度を高くすることができる。従って、沈降分離工程において短時間で重金属を沈殿させることができるので、沈殿槽を大型化する必要がない。
このように、本発明の廃水の処理方法であれば、凝集剤を添加しなくても廃水を高度に処理でき、重金属濃度を十分に低減できるが、必要であれば凝集剤を添加してもよい。ただし、凝集剤の添加量が少ないほど、薬剤費用を削減できるとともに、発生するスラッジ量を軽減できるので、スラッジの処分費用をも削減できる。従って、凝集剤を添加しなくても目標の処理水質を達成できる場合には、凝集剤は添加しない方が好ましい。なお、目標の処理水質とは、例えばニッケルであれば0.1mg/L以下である。
なお、凝集剤を添加する場合、凝集剤の添加のタイミングは不溶化処理工程と膜分離工程との間であり、沈降分離工程を行う場合には不溶化処理工程と沈降分離工程との間である。
[廃水処理システム]
図7は、本発明の廃水処理システムの一例を示す概略構成図である。図7の廃水処理システムは、図1で表される廃水処理装置から得られた処理水を、加工対象品の金属表面を洗浄する工程(金属表面洗浄工程)に再利用するシステムである。金属表面洗浄工程は、加工対象品をメッキ加工する前に洗浄するための油分洗浄槽と、加工対象品をメッキ加工後に洗浄するための一次洗浄槽および二次洗浄槽とを有する。各洗浄槽で発生した廃水は、貯留手段10において一旦貯留され、その後廃水処理装置によって処理される。得られた処理水は、金属表面洗浄工程において再利用される。処理水は、メッキ加工前および加工後のいずれに用いてもよい。
図8〜10に示すように、図2〜4の廃水処理装置を用いて得られた処理水を再利用するシステムとしてもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
廃水として、無電解ニッケルメッキ工程より排出されたニッケル含有廃水を用いた。廃水中のニッケル濃度は6.5mg/Lであった。また、この廃水中には、錯体形成化合物としてアンモニアを含んでいた。アンモニアの濃度は、アンモニア態窒素(NH−N)濃度として3.8mg/Lであった。
上記ニッケル含有排水500mLに、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度12質量%)を0.5mL添加し、15分間攪拌して、アンモニアを酸化処理した(酸化処理工程)。
その後、酸化処理した廃水中に、不溶化剤として0.1mol/Lに調整した水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを10に調整し、30分間攪拌して、ニッケルの不溶化物を生成した(不溶化処理工程)。
ついで、不溶化処理した廃水を、ポリフッ化ビニリデン製の中空糸膜(三菱レイヨン株式会社製、「ステラポアーSADF」、公称孔径0.4μm)を用いて、濾過水と膜分離濃縮水に膜分離した(膜分離工程)。
得られた濾過水中のニッケル(Ni)およびアンモニア態窒素(NH−N)の濃度を測定した。結果を表1に示す。
また、不溶化処理工程により生成したニッケルの不溶化物について、粒子分布を測定した。測定は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、「LA−920」)を用い、粒子径は体積を基準として、頻度分布を計測した。不溶化物のモード径(出現比率がもっとも大きい粒子径)を表1に示す。
[実施例2]
実施例1と同様にして、酸化処理工程を行った。
酸化処理工程後のニッケル含有廃水に、不溶化剤として0.1mol/Lに調整した硫化ナトリウム9水和物水溶液を2.5mL添加し、30分間攪拌して、ニッケルの不溶化物を生成した(不溶化処理工程)。
ついで、実施例1と同様にして膜分離工程を行い、濾過水中のニッケルおよびアンモニア態窒素の濃度を測定し、ニッケルの不溶化物について、粒子分布を測定した。これらの結果を表1に示す。
[実施例3]
膜分離工程において、濾過膜としてポリエチレン製の多孔質中空糸膜(三菱レイヨン株式会社製、分画孔径0.03μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして酸化処理工程、不溶化処理工程、膜分離工程を行い、濾過水中のニッケルの濃度を測定した。結果を表1に示す。
[実施例4]
不溶化処理工程と膜分離工程の間に、無機系凝集剤としてポリ塩化アルミニウムを、廃水中の凝集剤濃度が300mg/Lになるように添加して、15分間穏やかに攪拌した以外は、実施例1と同様にして酸化処理工程、不溶化処理工程、膜分離工程を行い、濾過水中のニッケルの濃度を測定した。結果を表1に示す。
[比較例1]
酸化処理工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして不溶化処理工程および膜分離工程を行い、濾過水中のニッケルおよびアンモニア態窒素の濃度を測定し、ニッケルの不溶化物について、粒子分布を測定した。これらの結果を表1に示す。
[比較例2]
酸化処理工程を行わなかった以外は、実施例2と同様にして不溶化処理工程および膜分離工程を行い、濾過水中のニッケルおよびアンモニア態窒素の濃度を測定し、ニッケルの不溶化物について、粒子分布を測定した。これらの結果を表1に示す。
[比較例3]
不溶化処理工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして酸化処理工程および膜分離工程を行い、濾過水中のニッケルおよびアンモニア態窒素の濃度を測定した。これらの結果を表1に示す。
Figure 0006331186
表1中の略号は以下の通りである。
・NaClO:次亜塩素酸ナトリウム
・NaOH:水酸化ナトリウム
・NaS:硫化ナトリウム
表1から明らかなように、実施例1〜3の場合、濾過水中のニッケル濃度はいずれも低い値であり、ニッケルを十分に除去することができた。また、実施例1、2の結果より、濾過水中のアンモニア態窒素の濃度が低いことから、ニッケルに対し金属錯体を形成する錯体形成化合物であるアンモニアが分解されたことが示された。さらに、不溶化物の粒子径はそれぞれ8.8μm、10μmと大きな値を示した。
なお、凝集剤を添加した実施例4の場合も、濾過水中のニッケル濃度は低い値であり、ニッケルを十分に除去することができた。ただし、実施例1〜3に比べてスラッジ量が多かった。
また、実施例3、4では、実施例1、2と同様に、アンモニアが分解されることが容易に推測できたので、濾過水中のアンモニア態窒素の濃度の測定は行わなかった。さらに、実施例3、4では、実施例1、2と同様に、不溶化物の粒子径が大きい値を示すことが容易に推測できたので、不溶化物の粒子径の測定は行わなかった。
一方、酸化処理工程を行わなかった比較例1、2の場合、濾過水中のニッケル濃度が実施例1、2に比べて高く、ニッケルを十分に除去できなかった。また、濾過水中のアンモニア態窒素の濃度が高く、錯体形成化合物であるアンモニアが十分に分解されていないことが示された。さらに、不溶化物の粒子径はそれぞれ3.9μm、5.1μmであり、実施例1、2に比べて粒子径が小さかった。
また、不溶化処理工程を行わなかった比較例3の場合、濾過水中のニッケル濃度が比較例1、2よりもさらに高く、ニッケルを殆ど除去することができなかった。また、濾過水中のアンモニア態窒素の濃度は廃水中のアンモニア態窒素の濃度と同じであり、錯体形成化合物であるアンモニアが分解されていないことが示された。なお、比較例3では、比較例1、2と同様に、不溶化物の粒子径が小さい値を示すことが容易に推測できたので、不溶化物の粒子径の測定は行わなかった。
[試験例1]
廃水として、無電解ニッケル工程より排出された、ニッケル濃度1900mg/L、アンモニア態窒素(NH−N)濃度820mg/Lのニッケル含有廃水を用いた。
上記ニッケル含有排水500mLに、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度12質量%)を5mLから50mLまで添加していった。
各量の次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加後、5分間攪拌してから、廃水の遊離残留塩素濃度、アンモニア態窒素(NH−N)濃度、酸化還元電位およびpHを測定した。これらの結果を表2、図5に示す。
なお、廃水の酸化還元電位は、ポータブルORP計(東亜ディーケーケー株式会社製、「RM−30P」)を用いて測定した。
Figure 0006331186
表2、図5から明らかなように、次亜塩素酸ナトリウムを添加するにつれて廃水中のアンモニアが分解した。
また、次亜塩素酸ナトリウムの添加量が5mLから20mLまでは、酸化還元電位はおよそ630mVと一定で推移しており、その間は遊離残留塩素濃度も1.5mg/L以下と低濃度で推移した。
しかしながら、次亜塩素酸ナトリウムの添加量が30mLになると、酸化還元電位が1113mVと急上昇し、遊離残留塩素濃度も16mg/Lに増加した。
これらの結果より、試験例1で用いた廃水の場合には、酸化処理工程において廃水の酸化還元電位を測定し、酸化還元電位が650mVに達した時点で次亜塩素酸ナトリウムの添加を停止すれば、遊離残留塩素濃度を30mg/L以下にすることが可能となり、酸化剤(次亜塩素酸ナトリウム)の過剰添加を容易に抑制することができる。
本発明の廃水の処理装置および処理方法によれば、重金属および金属錯体を形成する化合物を含む廃水に対して、凝集剤を添加しなくても高度に処理でき、重金属濃度を十分に低減できる。
本発明の廃水の処理装置および処理方法で得られた処理水は、金属含有量が極めて少ない。また廃水処理に凝集剤を使用しないため、未反応凝集物の流出が、処理水に混入することも無い。
従って、本発明の廃水処理システムによれば、本発明の処理装置および処理方法を用いて処理した処理水を、排水発生元である前記金属表面洗浄工程に循環することによって、加工対象品に影響を与えることなく、処理水を有効に利用することが可能となる。
1、2、3、4 廃水の処理装置
10 貯留手段
20 酸化処理手段
23、33 水質計
30 不溶化処理手段
40 膜分離手段
50 pH調整手段
60 沈降分離手段
廃水
濾過水
膜分離濃縮水
処理水
上澄み液
沈殿濃縮水

Claims (7)

  1. 重金属、および前記重金属と配位結合して金属錯体を形成する化合物を少なくとも含む廃水を処理する装置であって、
    廃水中の前記金属錯体を形成する化合物を、廃水のpHを4以上以下に調整した後酸化剤を添加することで酸化処理する酸化処理手段と、酸化処理した廃水中の重金属を不溶化処理する不溶化処理手段と、不溶化処理した廃水を膜分離する膜分離手段とを備え
    前記酸化処理手段が、次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、およびこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化剤の添加手段を備え、
    前記不溶化処理手段が、硫化ナトリウムの添加手段を備える廃水の処理装置。
  2. 前記不溶化処理手段と膜分離手段との間に、不溶化処理した廃水中の重金属を沈降分離する沈降分離手段を備える、請求項1に記載の廃水の処理装置。
  3. 前記酸化処理手段が、廃水のpHを調整するpH調整手段を備える請求項1または2に記載の廃水の処理装置。
  4. 重金属、および前記重金属と配位結合して金属錯体を形成する化合物を少なくとも含む廃水を処理する方法であって、
    廃水中の前記金属錯体を形成する化合物を、廃水のpHを4以上以下に調整した後酸化剤を添加することで酸化処理する酸化処理工程と、酸化処理した廃水中の重金属を不溶化処理する不溶化処理工程と、不溶化処理した廃水を膜分離する膜分離工程とを有し、
    前記酸化処理工程が、次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、およびこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化剤の添加によりなされ、
    前記不溶化処理工程が、硫化ナトリウムの添加によりなされる廃水の処理方法。
  5. 前記不溶化処理工程と膜分離工程との間に、不溶化処理した廃水中の重金属を沈降分離する沈降分離工程を有する、請求項に記載の廃水の処理方法。
  6. 前記酸化剤の廃水への添加終了点を酸化還元電位にて検知する、請求項4または5に記載の廃水の処理方法。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の処理装置により処理された処理水を、メッキ加工または金属表面処理の、金属表面洗浄工程にて再利用することを特徴とする、廃水処理システム。
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