JP2019055399A - 水処理方法および水処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】第二鉄イオンの還元反応を伴うフェントン反応を利用した水処理において、第二鉄イオンの還元反応を促進し、処理効率に優れる水処理方法を提供する。
【解決手段】下記工程(a−i)および工程(a−ii)を有する水処理方法。
(a−i)被酸化性の汚染物質を含む排水のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、フェントン反応を行って、被酸化性の汚染物質を酸化する酸化工程。
(a−ii)鉄還元触媒と、鉄以外の金属イオンの存在下で、前記酸化工程で得られた反応液中の第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元する還元工程。
【選択図】図1

Description

本発明は、水処理方法および水処理装置に関する。
フェントン反応は、第一鉄イオンに対し過酸化水素を反応させ、ヒドロキシラジカルを発生させる反応である。ヒドロキシラジカルは強力な酸化力を持ち、その強力な酸化力を利用して、殺菌、有害物質や難分解性の汚染物質の分解など、様々な分野に応用が期待されている。
フェントン反応で使用した第一鉄イオンは反応の進行に伴い酸化され、第二鉄イオンとなる。例えば、フェントン反応を利用して被酸化性の汚濁物質を含む排水を処理した場合、第二鉄化合物を含む汚泥が廃棄物となり、その処理コストが高いことが問題となっている。また、フェントン反応の進行に伴い、第一鉄イオンは消費されるので、処理中においても第一鉄イオンを発生させ続けなければならなかった。
フェントン反応で生成した第二鉄イオンの一部は、過酸化水素の存在下で、一部が第一鉄イオンに還元されることが知られている。しかしながら、この還元反応はフェントン反応と比較して非常に遅いことが知られている。これに対し、上記還元反応を促進させる鉄還元触媒を添加し、フェントン反応と上記還元反応を同時に行う手法が知られている。このような例として、鉄還元触媒として活性炭を添加する例が挙げられる(特許文献1および特許文献2)。
特許文献1および特許文献2に記載の処理方法によれば、フェントン反応のみを利用した水処理方法に比べて、廃棄物の処理にかかるコストを抑えることができる。また、上記還元反応により生成した第一鉄イオンを再利用することができるので、追加で発生させる第一鉄イオンの量を少なくすることができる。
特許文献1および特許文献2に記載の処理方法では、固体の活性炭を反応系に添加している。この際、活性炭が凝集しやすく、生じた活性炭の凝集体を解きほぐす手間がかかることがあった。そのため、特許文献1および特許文献2に記載の処理方法は、作業性が低いことがあった。また、一度凝集した活性炭は、反応系中で分散されにくいことがあった。
これに対し、活性炭を水などの分散媒中に懸濁させてから反応系に添加する方法が知られている(特許文献3)。特許文献3に記載の処理方法によれば、活性炭を上記分散媒中に懸濁させて得られる懸濁液を廃液に供給(添加)することができる。そのため、特許文献3に記載の処理方法は、操作性に優れている。
特開昭56−48290号公報 特許第5215578号公報 特開2003−245678号公報
しかしながら、特許文献3に記載の処理方法は、固体の活性炭を反応系に添加する方法と比べて、廃液の処理効率が低いことがあった。
また、活性炭以外の鉄還元触媒を使用する場合においても、上記と同様の課題が生じることがあった。
一方、特許文献1および特許文献2に記載の方法では、第二鉄イオンの還元反応が阻害されることがあった。その場合、水処理における処理効率が低下することがあった。
そこで、本発明の一態様は、第二鉄イオンの還元反応を伴うフェントン反応を利用した水処理において、第二鉄イオンの還元反応を促進し、処理効率に優れる水処理方法、およびそれに用いる水処理装置を提供する。
本発明の他の一態様は、第二鉄イオンの還元反応を伴うフェントン反応を利用した水処理において、処理効率を維持しつつ、作業性に優れる水処理方法、およびそれに用いる水処理装置を提供する。
なお、本明細書において、水処理における処理効率は、全有機炭素の除去率および過酸化水素の消費量により評価される。
発明者らは、第二鉄イオンの還元反応を促進し、水処理における処理効率を向上させるべく、鋭意検討した。その結果、第二鉄イオンを、鉄還元触媒と、鉄以外の金属イオンと共存させ、下記条件(A)で第二鉄イオンの還元反応を行うことにより、排水基準を満足させながら、第二鉄イオンの還元反応が促進されることを見出した。そして、第二鉄イオンの還元反応が促進されることで、水処理における処理効率が向上することを見出し、本発明を完成させた。
一方、発明者らは、水処理における処理効率が低下する原因が、鉄還元触媒が水中で分散されることで水に溶け込んだ空気と接触しやすくなり、鉄還元触媒が失活したことであると推測した。
発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、第一鉄塩、第一鉄酸化物、第二鉄塩および第二鉄酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つと、鉄還元触媒とが水中で混合した混合物を反応系中に添加することで、鉄還元触媒の失活を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記態様を有する。
[1]下記工程(a−i)および工程(a−ii)を有する水処理方法。
(a−i)被酸化性の汚染物質を含む排水のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、フェントン反応を行って、前記被酸化性の汚染物質を酸化する酸化工程。
(a−ii)鉄還元触媒と、鉄以外の金属イオンの存在下で、前記酸化工程で得られた反応液中の第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元する還元工程。
[2]前記還元工程における、前記鉄以外の金属イオンのモル量/前記鉄還元触媒の質量で表される比Xが、0.3mmоl/g以上、60mmоl/g以下である[1]の水処理方法。
[3]前記還元工程では、前記鉄以外の金属イオンを発生させる金属試薬を用い、
前記金属試薬は、2価の金属、2価の金属塩および2価の金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つである[1]または[2]の水処理方法。
[4]前記金属試薬は、マンガン、マンガン塩、マンガン酸化物、銅、銅塩および銅酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つである[3]の水処理方法。
[5]前記酸化工程では、第一鉄塩、第一鉄酸化物、第二鉄塩および第二鉄酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの鉄試薬を用いて前記被酸化性の汚染物質を酸化し、
前記酸化工程に先立って、前記鉄還元触媒、前記金属試薬および前記鉄試薬からなる群のうち少なくとも二つを混合する混合工程を有する[3]または[4]の水処理方法。
[6]下記工程(b−i)および工程(b−ii)を有し、前記工程(b−i)は下記工程(A)を含む水処理方法。
(b−i)被酸化性の汚染物質を含む排水のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、フェントン反応を行って、前記被酸化性の汚染物質を酸化する酸化工程。
(b−ii)鉄還元触媒の存在下で、前記工程(b−i)で得られた反応液中の第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元する還元工程。
(A)前記排水に、第一鉄塩、第一鉄酸化物、第二鉄塩および第二鉄酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つと、前記鉄還元触媒とが水中で混合した混合物を添加する添加工程。
[7]下記工程(iii)〜(v)を有する[1]〜[6]のいずれかの水処理方法。
(iii)前記酸化工程で得られた反応液のpHを6.0以上10.0以下に調整し、第一鉄イオン、および前記フェントン反応により生成した第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物を生成する不溶化工程。
(iv)前記第一鉄化合物および前記第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を、少なくとも前記第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離して、前記汚泥が濃縮された前記懸濁液を得る濃縮工程。
(v)前記懸濁液の少なくとも一部を前記酸化工程に返送する懸濁液返送工程。
[8]前記濃縮工程において、濾過膜を用いて前記懸濁液を得る[7]の水処理方法。
[9]ナノ濾過膜または逆浸透膜を用いて、前記処理水を、前記処理水に含まれる前記被酸化性の汚染物質と透過水とに分離する分離工程を有する[7]または[8]の水処理方法。
[10]前記鉄還元触媒は、活性炭およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも一つである[1]〜[9]のいずれかの水処理方法。
[11]前記酸化工程において、酸を用いて前記排水のpHを1.0以上4.0以下に調整する[1]〜[10]のいずれかの水処理方法。
[12]下記(a−1)を備える、水処理装置。
(a−1)排水に含まれる被酸化性の汚染物質をフェントン反応により酸化するとともに、鉄還元触媒と、鉄以外の金属イオンの存在下で、前記フェントン反応により生成した第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元する反応槽。
[13]前記反応槽における、前記鉄以外の金属イオンのモル量/前記鉄還元触媒の質量で表される比Xが、0.3mmоl/g以上、60mmоl/g以下である、[12]の水処理装置。
[14]前記反応槽に、第一鉄塩、第一鉄酸化物、第二鉄塩および第二鉄酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの鉄試薬を添加する鉄試薬添加手段と、
前記反応槽に、前記鉄還元触媒を添加する触媒添加手段と、
前記反応槽に、前記鉄以外の金属イオンを発生させるための金属試薬を添加する金属試薬添加手段と、を有する[12]または[13]の水処理装置。
[15]前記反応槽に流入される前記排水の全量に対する前記鉄以外の金属イオンの濃度を測定する金属イオン濃度測定部を有し、
前記金属試薬添加手段は、前記金属イオン濃度測定部の測定結果に基づいて前記金属試薬を添加する[14]の水処理装置。
[16]前記反応槽の上流に、前記鉄試薬、前記鉄還元触媒および前記金属試薬からなる群のうち少なくとも二つを混合して、混合物を得る混合手段を有する[14]または[15]の水処理装置。
[17]前記混合物を貯留するとともに、貯留した前記混合物を前記反応槽に供給する中間槽を有する[16]の水処理装置。
[18]下記(b−1)および(b−2)を備える、水処理装置。
(b−1)排水に含まれる被酸化性の汚染物質をフェントン反応により酸化するとともに、前記フェントン反応により生成した第二鉄イオンを、鉄還元触媒により第一鉄イオンに還元する反応槽。
(b−2)前記反応槽に、第一鉄塩、第一鉄酸化物、第二鉄塩および第二鉄酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つと、鉄還元触媒とが水中で混合した混合物を添加する混合物添加手段。
[19]前記第一鉄塩、第一鉄酸化物、第二鉄塩および第二鉄酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つと、前記鉄還元触媒とを水中で混合する混合手段を有する[18]の水処理装置。
[20]前記混合物を貯留する中間槽を備える[18]または[19]の水処理装置。
[21]下記(3)〜(5)を備える、[12]〜[20]のいずれかの水処理装置。
(3)前記反応槽から供給される反応液に含まれる前記第一鉄イオンおよび前記第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物を生成する不溶化槽。
(4)前記第一鉄化合物および前記第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を、少なくとも前記第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離して、前記汚泥が濃縮された前記懸濁液を得る濃縮装置。
(5)前記懸濁液の少なくとも一部を前記反応槽に返送する懸濁液返送手段。
[22]前記反応槽に酸またはアルカリを供給して前記排水のpHを調整する第一pH調整装置と、
前記不溶化槽にアルカリを供給して前記反応液のpHを調整する第二pH調整装置と、を備える[21]の水処理装置。
[23]前記酸は、硫酸または塩酸である[22]の水処理装置。
[24]前記濃縮装置は、濾過膜を有し、
前記濾過膜を用いて、前記懸濁液を得る[21]〜[23]のいずれかの水処理装置。
[25]前記濃縮装置は、前記不溶化槽内に設けられている[21]〜[24]のいずれかの水処理装置。
[26]ナノ濾過膜または逆浸透膜を有し、前記ナノ濾過膜または前記逆浸透膜を用いて、前記処理水を、前記処理水に含まれる前記被酸化性の汚染物質と透過水とに分離する分離装置を備える[21]〜[25]のいずれかの水処理装置。
本発明の一態様によれば、第二鉄イオンの還元反応を伴うフェントン反応を利用した水処理において、第二鉄イオンの還元反応を促進し、処理効率に優れる水処理方法、およびそれに用いる水処理装置が提供される。
本発明の他の一態様によれば、第二鉄イオンの還元反応を伴うフェントン反応を利用した水処理において、処理効率を維持しつつ、作業性に優れる水処理方法、およびそれに用いる水処理装置を提供する。
第1実施形態の水処理装置の概略構成を示す図。 第2実施形態の水処理装置の概略構成を示す図。 第3実施形態の水処理装置の概略構成を示す図。 水処理試験2における過酸化水素の消費速度を表すグラフ。
≪本発明の一態様≫
以下、本発明の一態様の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
<第1実施形態>
第1実施形態の水処理方法は、下記工程(a−i)、下記工程(a−ii)、下記工程(iii)、下記工程(iv)および下記工程(v)を有する。
(a−i)被酸化性の汚染物質を含む排水のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、フェントン反応を行って、被酸化性の汚染物質を酸化する酸化工程。
(a−ii)鉄還元触媒と、鉄以外の金属イオンの存在下で、前記酸化工程で得られた反応液中の第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元する還元工程。
(iii)酸化工程で得られた反応液のpHを6.0以上10.0以下に調整し、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物を生成する不溶化工程。
(iv)前記第一鉄化合物および前記第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を、少なくとも前記第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離して、汚泥が濃縮された懸濁液を得る濃縮工程。
(v)前記懸濁液の少なくとも一部を酸化工程に返送する懸濁液返送工程。
以下、「鉄以外の金属イオン」を単に「金属イオン」と称することがある。第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを合わせて「鉄イオン」と称することがある。第一鉄化合物および第二鉄化合物を合わせて「鉄化合物」と称することがある。
前記汚泥は、典型的には、第二鉄化合物とともに第一鉄化合物を含む。
本実施形態において、不溶化工程は、酸化工程で得られた反応液のpHを6.0以上10.0以下に調整し、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物を生成するとともに、金属イオンを不溶化させ、金属化合物を生成する工程であってよい。この場合、濃縮工程で汚泥と処理水とに分離される懸濁液は、鉄化合物および金属化合物が懸濁したものとなり、前記汚泥は、鉄化合物とともに金属化合物を含む。
[水処理装置]
以下、第1実施形態の水処理方法に用いる水処理装置の構成について説明する。図1は、第1実施形態の水処理装置の概略構成を示す図である。図1に示す水処理装置1は、反応槽11と、不溶化槽21と、調整槽41と、貯留槽61と、を備える。
なお、本明細書では、反応槽11から貯留槽61へ向かう水の流れを想定したとき反応槽11側を「上流」とし、貯留槽61側を「下流」と呼ぶことがある。
水処理装置1は、反応槽11にpH調整装置14と、鉄試薬添加手段15と、過酸化水素添加手段16と、触媒添加手段17と、金属試薬添加手段18と、を備える。
水処理装置1は、不溶化槽21にpH調整装置24を備える。また、不溶化槽21内には、濃縮装置22が設けられている。
本明細書において、pH調整装置14は、特許請求の範囲における第一pH調整装置に相当する。また、pH調整装置24は、特許請求の範囲における第二pH調整装置に相当する。
水処理装置1は、反応槽11の上流に金属イオン濃度測定部19を備える。
水処理装置1は、不溶化槽21と反応槽11との間に懸濁液返送手段32を備える。
水処理装置1は、調整槽41と貯留槽61との間に分離装置42を備える。
(排水)
水処理装置1による水処理では、被酸化性の汚染物質を含む排水を、フェントン反応を利用して酸化処理する。被酸化性の汚染物質としては、生物処理による分解が困難な有機物、または、亜リン酸や次亜リン酸などの無機物が挙げられる。
上記有機物としては、例えば1,4−ジオキサンなどの有機溶剤、フミン物質、ならびに有機溶剤およびフミン物質のいずれにも該当しないアルデヒド類などが挙げられる。フミン物質とは、土壌を水酸化ナトリウムなどのアルカリで抽出した分画、あるいは土壌を天然水で抽出した抽出液をXAD樹脂(スチレンまたはアクリルとジビニルベンゼンの共重合体)に吸着させ、さらにその吸着したものから希アルカリ水溶液で溶出される分画のことをいう。
アルデヒド類としては、例えばプロピオンアルデヒドが挙げられる。
亜リン酸や次亜リン酸は、めっき工場の工場排水などに含まれている。
(反応槽)
反応槽11では、排水に含まれる被酸化性の汚染物質をフェントン反応により酸化するとともに、鉄還元触媒と、金属イオンの存在下で、フェントン反応により生成した第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元する。反応槽11は、少なくとも過酸化水素と、第一鉄イオン(Fe2+)を発生させる鉄試薬と、鉄還元触媒と、金属イオンを発生させる金属試薬と、を充填するものである。なお、本明細書において、金属試薬とは、鉄以外の金属を含む試薬を指す。
反応槽11には、第一の流路12および第二の流路13が接続されている。第一の流路12は、被酸化性の汚染物質を含む排水を反応槽11に流入(供給)させるものである。第二の流路13は、反応槽11から排出された反応液を不溶化槽21に流入(供給)させるものである。
本実施形態においては、第一の流路12の途中に金属イオン濃度測定部19を備える。金属イオン濃度測定部19については後述する。
図1に示す水処理装置1において、反応槽11から不溶化槽21に反応液を供給する方法は特に限定されず、ポンプを用いて反応液を供給してもよいし、オーバーフローを利用して反応液を供給してもよい。
なお、図1に示す水処理装置1において、反応槽11が一つ設けられている例を示したが、複数の反応槽11が直列に配置されていてもよい。その場合、フェントン反応にかかる時間を長くすることができるので、過酸化水素をフェントン反応で十分消費させることができる。
また、反応槽11が複数配置されている場合、第一反応槽から第二反応槽に送液する方法は特に限定されず、ポンプを用いて送液してもよいし、オーバーフローを利用して送液してもよい。なお、本明細書において、第一反応槽および第二反応槽は、特許請求の範囲における反応槽を構成している。
(鉄試薬添加手段)
鉄試薬添加手段15は、反応槽11内に鉄試薬を添加するものである。
鉄試薬としては、水に溶解して第一鉄イオンを発生させるものであれば特に限定されない。この発生した第一鉄イオンにより排水に含まれる被酸化性の汚染物質を酸化する。鉄試薬としては、第一鉄塩、第一鉄酸化物、第二鉄塩および第二鉄酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、第一鉄塩と第一鉄酸化物との少なくとも一方であることが好ましい。なかでも、排水基準内で管理する必要がなく、溶解性に優れることから、硫酸鉄または塩化鉄が好ましい。また汎用性が高く、腐食性が少ないことから、硫酸鉄がより好ましい。
また、本実施形態では、鉄還元触媒により第二鉄イオンが還元されて第一鉄イオンが再生するため、鉄試薬として第二鉄化合物を用いることもできる。
鉄試薬としては、固体状態のものを反応槽11内に添加してもよいし、鉄試薬の水溶液のように液体状態にしたものを反応槽11内に添加してもよい。
(過酸化水素添加手段)
過酸化水素添加手段16は、反応槽11内に過酸化水素を添加するものである。
反応槽11内では、過酸化水素に第一鉄イオンが反応して、ヒドロキシラジカルが発生する。排水中に含まれる被酸化性の汚染物質が有機物である場合、発生したヒドロキシラジカルにより有機物が酸化分解される。また、亜リン酸や次亜リン酸等の無機物の場合、ヒドロキシラジカルによりそれぞれ酸化され、亜リン酸はオルトリン酸に、次亜リン酸は亜リン酸やオルトリン酸となる。
一方、反応槽11内では、第一鉄イオンが過酸化水素の作用により酸化されて第二鉄イオンとなる。
本実施形態においては、過酸化水素はフェントン反応のほかに、フェントン反応により生成した第二鉄イオンの還元反応にも使われる。そのため、過酸化水素添加手段16から添加する過酸化水素の量をフォントン反応で使用する理論値よりも多くすることが好ましい。
反応槽11が複数配置されている場合、過酸化水素添加手段16から過酸化水素を添加する反応槽11は、最下流の反応槽11以外の槽とすることが好ましい。過酸化水素を添加する反応槽11が上流であるほど、フェントン反応にかかる時間をより長くすることができるので、過酸化水素をフェントン反応で十分消費させることができる。したがって、反応槽11の下流の不溶化槽21および調整槽41に未反応の過酸化水素の漏出を抑制することができる。また、未反応の過酸化水素による処理水中の化学的酸素要求量の上昇を抑制することができる。
(第一pH調整装置)
pH調整装置14は、槽内のpHに応じて、反応槽11内に酸またはアルカリを添加し、反応槽11内のpHを調整するものである。
反応槽11内は、鉄試薬を水に溶解させて第一鉄イオンを発生させ、かつ、ヒドロキシラジカルを発生させることが可能なpHの範囲に調整される。本実施形態において、反応槽11内は、酸性であり、具体的には1.0以上4.0以下の範囲に調整される。反応槽11内のpHが1.0以上4.0以下であると、水に対する鉄試薬の溶解性を良好に保ちつつ、第二鉄イオンと鉄還元触媒との接触効率を高めることができる。反応槽11内のpHは、2.0以上3.0以下が好ましく、2.5以上3.0以下がより好ましい。
また、反応槽11には、槽内のpHを測定する測定機器(図示略)を設置することが好ましい。
酸の種類としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、シュウ酸、クエン酸、ギ酸、酢酸などの有機酸が挙げられる。なかでも、硫酸または塩酸が好ましく、フェントン反応で生成するヒドロキシラジカルを捕捉しにくいことから硫酸がより好ましい。これらの酸は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルカリの種類としては、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。なかでも、汎用性が高く、フェントン反応で生成する物質と反応しないことから水酸化ナトリウムが好ましい。
これらのアルカリは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(触媒添加手段)
触媒添加手段17は、反応槽11内に鉄還元触媒を添加するものである。
鉄還元触媒としては、フェントン反応を実質的に阻害しないとともに、過酸化水素により第二鉄イオンが還元されて第一鉄イオンが再生する反応を促進するものであればよい。鉄還元触媒としては、活性炭およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましく、触媒効率や廃触媒の処理の観点から、活性炭がより好ましい。
鉄還元触媒は、基材に担持されていてもよい。
反応液全量に対する鉄還元触媒の質量濃度は、50000mg/L以下であることが好ましい。鉄還元触媒の質量濃度が50000mg/L以下であることにより、鉄還元触媒による過酸化水素の分解反応が抑制される。また、後述する濃縮装置を用いて鉄イオンを不溶化させた鉄化合物を含む汚泥を濃縮するのが容易になる。さらに、この条件で反応槽11に懸濁液を返送すると、反応槽11内のpH調整に酸を用いる場合、その酸の使用量が抑えられる。
鉄還元触媒が基材に担持されている場合、鉄還元触媒の質量は、前記基材の質量を除いたものである。
鉄還元触媒の形状としては、触媒効率の観点から粉体状であることが好ましい。また、鉄還元触媒の粒径としては、触媒を回収しやすいことから0.05μm〜100μmが好ましい。
(金属試薬添加手段)
金属試薬添加手段18は、反応槽11内に金属試薬を添加するものである。
従来、第二鉄イオンの還元反応を伴うフェントン反応を利用した水処理において、第二鉄イオンの還元反応が阻害されることがあった。その場合、水処理における処理効率が低下することがあった。
本明細書において、水処理における処理効率は、全有機炭素(以下、TOC)の除去率および過酸化水素の消費量により評価される。
TOCとは、水中の酸化されうる有機物の全量を炭素の量で示したものである。TOC除去率は、排水(原水)中のTOC濃度、および、水処理後に得られた処理水中のTOC濃度から式(S1)に基づいて算出される。
Figure 2019055399
本実施形態においては、一定時間に処理されるTOC除去率が高いほど、処理効率に優れるといえる。
また、過酸化水素の消費量は、処理水全量に対する過酸化水素の質量濃度により求められる。
処理水全量に対する過酸化水素の質量濃度の測定方法としては、処理水をサンプリングし、サンプリングした処理水の過酸化水素を、ヨウ化カリウムを用いて発色させ、吸光光度計(例えば、株式会社共立理化学研究所製、製品名「デジタルパックテスト」)により測定する方法が挙げられる。また、別の方法としては、サンプリングした処理水の相対屈折率を屈折率計により測定し、相対屈折率から過酸化水素の質量濃度を算出する方法が挙げられる。また、サンプリングした処理水の密度を密度計により測定し、密度から過酸化水素の質量濃度を算出する方法も挙げられる。さらに、酸素電極法により過酸化水素の質量濃度を測定する方法も挙げられる。
本実施形態においては、一定時間処理した後の処理水全量に対する過酸化水素の質量濃度が低いほど、過酸化水素の消費量が高く、処理効率に優れるといえる。
本実施形態においては、TOC除去率と、処理水全量に対する過酸化水素の質量濃度とのいずれか一方または両方により評価される。
上記課題を解決するため、発明者らは鋭意検討した。その結果、鉄還元触媒と、金属イオンとを共存させることで、第二鉄イオンが第一鉄イオンに効率的に還元されることを見出し、本態様の発明を完成させた。
本実施形態で用いられる金属試薬としては、水に溶解して金属イオンを発生させるものであれば特に限定されない。金属試薬が発生させる金属イオンは、フェントン反応を実質的に阻害しないとともに、過酸化水素および鉄還元触媒による第二鉄イオンの還元反応を促進するものである。
本実施形態で用いられる金属試薬としては、2価の金属塩および2価の金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。また、安価かつ入手が容易であるとともに、排水基準内で管理することが容易であることから、金属試薬は、マンガン塩、マンガン酸化物、銅塩および銅酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。さらに、排水基準内で管理する必要がなく、溶解性に優れることから、本実施形態で用いられる金属試薬は、硫酸塩または塩酸塩であることが好ましい。
本実施形態における金属試薬としては、固体状態のものを反応槽11内に添加してもよいし、金属試薬の水溶液のように液体状態にしたものを反応槽11内に添加してもよい。
反応槽11における、金属イオンのモル量/鉄還元触媒の質量で表される比Xは、0.3mmоl/g以上、60mmоl/g以下であることが好ましい。すなわち、反応槽11内の反応液全量に対する鉄還元触媒の質量濃度が1000mg/Lであるとき、反応槽11内の反応液全量に対する金属イオンのモル濃度を、0.3mmol/L以上60mmol/L以下とすることが好ましい。比Xが上記範囲内であると、第二鉄イオンの還元反応を促進し、かつ排水基準内で管理することができる。
比Xが0.3mmol/g以上であると、第二鉄イオンの還元反応を促進する効果が十分に得られる。また、比Xが60mmol/g以下であると、処理水中の金属イオンを排水基準内で管理できる。
一方、比Xが60mmоl/gを超える場合、特に、金属試薬がマンガン塩またはマンガン酸化物である場合、マンガンイオンが過酸化水素の分解反応を促進するおそれがある。その結果、フェントン反応や第二鉄イオンの還元反応に使用できる過酸化水素の量が少なくなる。そのため、水処理における処理効率が低下するおそれがある。
比Xは、好ましくは5mmol/g以上、より好ましくは15mmol/g以上、さらに好ましくは30mmol/g以上である。また、比Xは、好ましくは50mmol/g以下、より好ましくは45mmol/g以下、さらに好ましくは40mmol/g以下である。
本実施形態の比Xにおける上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。比Xは、例えば、5mmоl/g以上、50mmоl/g以下であってよく、15mmol/g以上、45mmol/g以下であってよく、30mmol/g以上、40mmol/g以下であってよい。
(金属イオン濃度測定部)
金属イオン濃度測定部19は、反応槽11に流入される排水の全量に対する本実施形態の金属イオンの濃度を測定するものである。本実施形態の金属試薬添加手段は、金属イオン濃度測定部19の測定結果に基づいて、反応槽11内の反応液全量に対する本実施形態に係る金属イオンのモル濃度が上記範囲となるように、金属試薬を添加する。
本実施形態における金属イオンの濃度の測定方法としては、排水をサンプリングし、サンプリングした排水に含まれる本実施形態の金属イオンを、比色試薬を用いて発色させ、吸光光度計(例えば、株式会社共立理化学研究所製、製品名「デジタルパックテストマルチ」)により測定する方法が挙げられる。
また、本実施形態における金属イオンの濃度の測定方法としては、上記方法に限定されず、例えば、JIS K 0102:2013「工場排水試験方法」に準拠したフレーム原子吸光法、電気加熱原子吸光法、ICP発光分光分析法、ICP質量分析法を用いることも可能である。
(不溶化槽)
不溶化槽21は、反応液に含まれる第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを反応液から除去するために不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物を生成するものである。また、不溶化槽21は、反応液に含まれる金属イオンを不溶化させ、金属化合物を生成するものである。
本実施形態において、第一鉄化合物、第二鉄イオンおよび本実施形態の金属イオンは、酸化物、水酸化物または塩化物となって不溶化する。
(第二pH調整装置)
pH調整装置24は、槽内のpHに応じて、不溶化槽21内にアルカリを添加し、不溶化槽21内のpHを調整するものである。不溶化槽21内は、第一鉄イオン、第二鉄イオンおよび本実施形態の金属イオンを不溶化させることが可能なpHの範囲に調整される。不溶化槽21内のpHは、6.0以上10.0以下の範囲に調整される。不溶化槽21内のpHは、7.0以上9.0以下となることが好ましく、7.5以上8.5以下がより好ましく、7.8以上8.3以下がさらに好ましい。
また、不溶化槽21には、槽内のpHを測定する測定機器(図示略)を設置することが好ましい。
添加するアルカリの種類としては、pH調整装置14で添加することができるアルカリと同様のものが挙げられる。
排水中に含まれる被酸化性の汚染物質が亜リン酸や次亜リン酸等の無機物である場合、アルカリとして水酸化カルシウムを添加すると、反応液中の亜リン酸と水酸化カルシウムが反応して沈殿物を形成する。そのため、後述する濃縮装置22において、亜リン酸を含む沈殿物と、処理水とに沈殿分離することができる。また、反応液中のオルトリン酸は、第二鉄イオンと反応して沈殿物を形成する。そのため、後述する濃縮装置22において、オルトリン酸を含む沈殿物と、処理水とに沈殿分離することができる。
(濃縮装置)
濃縮装置22は、第一鉄化合物、第二鉄化合物および金属化合物が懸濁した懸濁液を、第一鉄化合物、第二鉄化合物、金属化合物および鉄還元触媒を含む汚泥と処理水とに固液分離して、汚泥が濃縮された懸濁液を得るものである。濃縮装置22は、第一膜モジュール23を用いた全量濾過方式を採用している。第一膜モジュール23を用いることにより、懸濁液に汚泥が高濃度で含まれる場合においても、高い分離能で分離することができる。
第一膜モジュール23は、濾過膜を備える。この濾過膜としては、例えば精密濾過膜または限外濾過膜などが挙げられる。精密濾過膜としては、モノリス型膜が挙げられる。限外濾過膜としては、中空糸膜、平膜、チューブラ膜が挙げられる。なかでも、容積充填率が高いことから、中空糸膜が好ましく用いられる。
第一膜モジュール23に中空糸膜を用いる場合、その材質としては、セルロース、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデンジフロライド(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)などが挙げられる。なかでも、中空糸膜の材質としては、耐薬品性やpH変化に強い点から、ポリフッ化ビニリデンジフロライド(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)が好ましい。
第一膜モジュール23にモノリス型膜を用いる場合、セラミック製の膜を用いることが好ましい。
濾過膜に形成される微細孔の平均孔径は、0.01μm〜1.0μmが好ましく、0.05μm〜0.45μmがより好ましい。前記微細孔の平均孔径が下限値以上であれば、固液分離に要する圧力を十分小さく抑えられる。一方、前記微細孔の平均孔径が上限値以下であれば、鉄化合物、金属化合物および鉄還元触媒を含む汚泥が処理水中に漏出するのを抑えることができる。
本実施形態において、反応槽11内の反応液全量に対する鉄還元触媒の質量濃度を基準としたときの懸濁液全量に対する鉄還元触媒の質量濃度の倍率(以下、これを「濃縮倍率」と称することがある。)が4〜20倍程度となるように濃縮することが好ましい。濃縮倍率が4倍以上の条件で反応槽11に懸濁液を返送すると、反応槽11内のpH調整に酸を用いる場合、その酸の使用量が抑えられる。また、濃縮倍率が20倍以下であれば、濃縮装置22を用いた汚泥の濃縮および懸濁液返送手段32を用いた懸濁液の返送が容易になる。
第一膜モジュール23には、第三の流路31が接続されている。第三の流路31は、第一膜モジュール23の濾過膜を透過した処理水を濃縮装置22から排出し、調整槽41に流入させるものである。第三の流路31には、ポンプ31aが設置されている。これにより、上記処理水を不溶化槽21から排出できるようになっている。
また、第三の流路31には、処理水中の全鉄濃度を測定する測定装置が設けられていることが好ましい。当該測定装置により、処理水中の全鉄濃度が0.04mg/Lを超えていると判断される場合には、不溶化槽21内のpH、もしくは第一膜モジュール23での固液分離またはその両方が適切になるように適宜対応する。
なお、本明細書において、全鉄とは、総鉄とも呼ばれ、第一鉄イオンまたは第二鉄イオンのようなイオン状態の鉄(溶存鉄)と、第一鉄化合物または第二鉄化合物のような水に溶解しない鉄(懸濁鉄)との総称である。すなわち、全鉄濃度とは、これらの鉄の合計の濃度である。また、後述する「全マンガン」や「全銅」も同様の意味で用いられる。
また、濃縮装置22には、第一膜モジュール23の下方に配置された膜面洗浄用の曝気手段を備えてもよい。前記曝気手段としては、公知のものを採用できる。
さらに、濃縮装置22は、第一膜モジュール23のほかに別の分離手段を併用してもよい。別の分離手段としては、例えば、砂濾過、加圧浮上分離、遠心分離、ベルトプレス、沈殿池による沈殿などが挙げられる。
(懸濁液返送手段)
懸濁液返送手段32は、不溶化槽21から反応槽11に汚泥が濃縮された懸濁液の少なくとも一部を返送するものである。懸濁液返送手段32は、第五の流路33を備える。第五の流路33は、懸濁液の少なくとも一部を不溶化槽21から排出し、反応槽11に流入(供給)させるものである。
第五の流路33には、ポンプ33aが設置されている。これにより、不溶化槽21内の懸濁液の少なくとも一部を不溶化槽21から反応槽11に返送することができる。
反応槽11が複数配置されている場合、不溶化槽21から懸濁液の少なくとも一部を返送する反応槽11は、最下流の反応槽11以外の槽とすることが好ましい。懸濁液の少なくとも一部を返送する反応槽11が上流であるほど、懸濁液中の第二鉄化合物が溶解して第二鉄イオンとなり、さらに第一鉄イオンに還元されてからフェントン反応に使用されるまでの時間をより長くすることができる。したがって、返送した懸濁液中の第二鉄化合物をフェントン反応に効果的に再利用することができる。
本実施形態では、フェントン反応を利用した水処理では廃棄されていた第二鉄化合物を再利用することができる。そのため、第二鉄化合物の処理にかかる費用を削減できるほか、鉄試薬添加手段15から添加する鉄試薬の量を少なくすることができる。
(調整槽)
調整槽41は、不溶化槽21から第三の流路31を介して供給される処理水を貯留するものである。
調整槽41には、第七の流路55が接続されている。第七の流路55は、調整槽41に貯留した処理水を排出し、分離装置42に流入させるものである。第七の流路55には、ポンプ55aおよび調整バルブ55bが設置されている。これにより、上記処理水を調整槽41から排出できるようになっている。
分離装置42は、濃縮工程で分離した処理水を、処理水に含まれる被酸化性の汚染物質と、透過水とに膜分離するものである。分離装置42は、第二膜モジュール43を用いたクロスフロー濾過方式を採用している。クロスフロー濾過方式を採用することにより、膜表面への被酸化性の汚染物質の堆積を抑制することができ、濾過流束を維持することができる。
第二膜モジュール43には、ナノ濾過膜または逆浸透膜を備える。第二膜モジュール43にナノ濾過膜を用いる場合、その材質としては、ポリエチレン系、芳香族ポリアミド系や架橋ポリアミド系を含むポリアミド系、脂肪族アミン縮合系ポリマー、複素環ポリマー系、ポリビニルアルコール系、酢酸セルロース系ポリマーなどが挙げられる。
第二膜モジュール43に逆浸透膜を用いる場合、その材質としては、ポリアミド、ポリスルホン、セルロースアセテートなどが挙げられ、芳香族ポリアミドまたは架橋芳香族ポリアミドを含むポリアミドが好ましい。
第二膜モジュール43には、第四の流路51が接続されている。第四の流路51は、第二膜モジュール43のナノ濾過膜または逆浸透膜を透過した透過水を分離装置42から排出し、貯留槽61に流入させるものである。上述したポンプ55aにて第二膜モジュール43の濾過面側(上流側)に圧力をかけることにより、上記透過水を調整槽41から排出し、分離装置42にて膜分離できるようになっている。流量の調整は、ポンプ55aの出力調整により行うことができる。
(貯留槽)
貯留槽61は、分離装置42から第四の流路51を介して供給される透過水を貯留するものである。貯留槽61に貯留された透過水は、例えば、排水を放出した工場等に返送され、再利用されるか、場合によっては工業用水などで希釈され、河川などに放流されてもよい。
[水処理方法]
図1に示す水処理装置1を用いる水処理方法について説明する。本実施形態の水処理方法では、最初に、反応槽11において、排水のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、排水に含まれる被酸化性の汚染物質をフェントン反応により酸化する(酸化工程)。
次いで、不溶化槽21において、酸化工程で得られた反応液のpHを6.0以上10.0以下に調整し、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物を生成する。また、反応液に含まれる金属イオンを不溶化させ、金属化合物を生成する(不溶化工程)。
さらに、第一鉄化合物、第二鉄化合物および金属化合物が懸濁した懸濁液を、濃縮装置22により、第一鉄化合物、第二鉄化合物、金属化合物および鉄還元触媒を含む汚泥と処理水とに固液分離して、汚泥が濃縮された懸濁液を得る(濃縮工程)。
次いで、濃縮工程で分離した処理水を調整槽41に貯留する。そして、処理水を調整槽41から分離装置42に流出させ、分離装置42により膜分離する(分離工程)。分離工程において、処理水を、処理水に含まれる被酸化性の汚染物質と、透過水とに分離する。さらに、貯留槽61において、分離工程で分離した透過水を貯留する。
また、懸濁液返送手段32において、濃縮工程で濃縮した懸濁液を、不溶化槽21から反応槽11に返送する(懸濁液返送工程)。
反応槽11に返送された懸濁液中の第二鉄化合物は、反応槽11内で溶解して第二鉄イオンとなり、鉄還元触媒と、金属イオンとの存在下で、過酸化水素により第一鉄イオンに還元される(還元工程)。
本実施形態では、還元工程における、金属イオンのモル量/鉄還元触媒の質量で表される比Xを0.3mmol/g以上、60mmol/g以下とすることが好ましい。比Xがこの範囲内であると、フェントン反応を実質的に阻害しないとともに、過酸化水素および鉄還元触媒による第二鉄イオンの還元反応を促進できる。また、処理水中の金属イオンを排水基準内で管理できる。より好ましい比Xは前記のとおりである。
以上のことから、本実施形態の水処理装置を用いる水処理方法によれば、第二鉄イオンの還元反応を促進し、処理効率に優れる水処理が可能である。
<第2実施形態>
[水処理装置]
以下、第2実施形態の水処置方法に用いる水処理装置について説明する。図2は、第2実施形態の水処理装置の概略構成を示す図である。
図2に示す水処理装置2は、反応槽11の上流に中間槽71を備える。また、図2の中間槽71内には、混合手段72が設けられている。
(混合手段)
図2に示す混合手段72は、鉄試薬、鉄還元触媒および金属試薬からなる群のうち少なくとも二つを混合して、混合物を得るものである。混合手段72としては、鉄試薬、鉄還元触媒および金属試薬からなる群のうち少なくとも二つが均一に分散または混合できる限り特に限定されない。図2では、鉄試薬、鉄還元触媒および金属試薬からなる群のうち少なくとも二つを水中で分散または混合する様子を表している。混合物が固体状態の場合、混合手段72として、例えば撹拌機が用いられる。混合物が液体状態の場合、混合手段72として、例えば撹拌機または曝気装置が用いられる。
(中間槽)
図2に示す中間槽71は、混合手段72により混合した混合物を貯留するとともに、貯留した混合物を反応槽11に供給するものである。
中間槽71には、供給路73が接続されている。供給路73は、混合物を中間槽71から反応槽11に供給させるものである。
図2に示す水処理装置2において、中間槽71から反応槽11に混合物を供給する方法は特に限定されない。混合物が固体状態の場合、例えばキャリアガスを用いて混合物を搬送(供給)する方法が挙げられる。また、混合物が液体状態の場合、例えばポンプを用いて混合物を供給する方法が挙げられる。
なお、図2に示す水処理装置2において、中間槽71が一つ設けられている例を示したが、複数の中間槽71を備えてもよい。
また、本実施形態では、中間槽71内に混合手段72を備える例を示したが、これに限定されない。中間槽71とは別体に、中間槽71の上流に混合手段72を備えてもよい。
[水処理方法]
図2に示す水処理装置2を用いる水処理方法は、酸化工程に先立って、鉄還元触媒、金属試薬および鉄試薬からなる群のうち少なくとも二つを混合する混合工程を有する。
以上のことから、本実施形態の水処理装置を用いる水処理方法によれば、第1実施形態と同様に、第二鉄イオンの還元反応を促進し、処理効率に優れる水処理が可能である。
なお、本発明の一態様の水処理装置および水処理方法は、上述した実施形態に限定されない。例えば、水処理装置1において、調整槽41および分離装置42を省略して分離工程を行わなくてもよい。その場合、濃縮装置22を通過した処理水を直接貯留槽61に貯留してもよい。
また例えば、上記実施形態において、濃縮装置22を用いた汚泥の濃縮方法は、必ずしも第一膜モジュール23を利用した方法でなくてよい。例えば、上述した砂濾過、加圧浮上分離、遠心分離、ベルトプレス、沈殿池による沈殿などを利用してもよい。
さらに、濃縮装置22を不溶化槽21内に設ける例を示したが、濃縮装置22を不溶化槽21内に設けなくてもよい。その場合、不溶化槽21と調整槽41との間に別の槽を配置し、この槽内に濃縮装置22を設けてもよい。
濃縮装置22を不溶化槽21内に設けない場合、第一膜モジュール23の構成として以下に示す構成であってもよい。例えば、ハウジング内に濾過膜(精密濾過または限外濾過)の一次側と二次側が隔離されるように濾過膜が固定される。そして、ハウジング内における濾過膜の一次側が、鉄化合物および鉄還元触媒を含む汚泥および処理水を含有する懸濁液が貯留された貯留タンクと循環流路により連通し、濾過膜の二次側が吸引ポンプと接続されてもよい。
さらに、上記実施形態において、金属イオン濃度測定部19を第一の流路12の途中に備える例を示したが、これに限定されない。また、金属イオン濃度測定部19を備えなくてもよい。
≪本発明の他の一態様≫
次に、本発明の他の一態様の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<第3実施形態>
本実施形態の水処理方法は、下記工程(b−i)、下記工程(b−ii)、下記工程(iii)、下記工程(iv)および下記工程(v)を有する。
(b−i)被酸化性の汚染物質を含む排水のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、フェントン反応を行って、前記被酸化性の汚染物質を酸化する酸化工程。
(b−ii)鉄還元触媒の存在下で、前記酸化工程で得られた反応液中の第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元する還元工程。
(iii)酸化工程で得られた反応液のpHを6.0以上10.0以下に調整し、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物を生成する不溶化工程。
(iv)前記第一鉄化合物および前記第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を、少なくとも前記第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離して、前記汚泥が濃縮された前記懸濁液を得る濃縮工程。
(v)前記懸濁液の少なくとも一部を酸化工程に返送する懸濁液返送工程。
さらに、本実施形態において、工程(b−i)は、下記工程(A)を含む。
(A)前記排水に、第一鉄塩、第一鉄酸化物、第二鉄塩および第二鉄酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つと、前記鉄還元触媒とが水中で混合した混合物を添加する添加工程。
[水処理装置]
以下、本実施形態の水処理方法に用いる水処理装置の構成について説明する。図3は、本実施形態の水処理装置の概略構成を示す図である。図3に示す水処理装置3は、反応槽11と、不溶化槽21と、調整槽41と、貯留槽61と、を備える。
水処理装置3は、反応槽11にpH調整装置14と、過酸化水素添加手段16と、混合物添加手段78と、を備える。
混合物添加手段78は、中間槽71と、鉄試薬添加手段15と、触媒添加手段17と、を備える。中間槽71内には、混合手段72が設けられている。
水処理装置3は、不溶化槽21にpH調整装置24を備える。また、不溶化槽21内には、濃縮装置22が設けられている。
前記のとおり、pH調整装置14は、特許請求の範囲における第一pH調整装置に相当する。また、pH調整装置24は、特許請求の範囲における第二pH調整装置に相当する。
水処理装置3は、不溶化槽21と反応槽11との間に懸濁液返送手段32を備える。
水処理装置3は、調整槽41と貯留槽61との間に分離装置42を備える。
(排水)
水処理装置3による水処理では、被酸化性の汚染物質を含む排水を、フェントン反応を利用して酸化処理する。被酸化性の汚染物質としては、生物処理による分解が困難な有機物、または、亜リン酸や次亜リン酸などの無機物が挙げられる。
上記有機物としては、例えば前記したように、1,4−ジオキサンなどの有機溶剤、フミン物質、ならびに有機溶剤およびフミン質のいずれにも該当しないアルデヒド類などが挙げられる。
(反応槽)
反応槽11では、排水に含まれる被酸化性の汚染物質をフェントン反応により酸化するとともに、フェントン反応により生成した第二鉄イオンを鉄還元触媒により第一鉄イオンに還元する。反応槽11は、少なくとも第一鉄イオン(Fe2+)を発生させる鉄試薬、過酸化水素および鉄還元触媒を充填するものである。
反応槽11には、第一の流路12および第二の流路13が接続されている。第一の流路12は、被酸化性の汚染物質を含む排水を反応槽11に流入(供給)させるものである。第二の流路13は、反応槽11から排出された反応液を不溶化槽21に流入(供給)させるものである。
図3に示す水処理装置3において、反応槽11から不溶化槽21に反応液を供給する方法は特に限定されず、ポンプを用いて反応液を供給してもよいし、オーバーフローを利用して反応液を供給してもよい。
なお、図3に示す水処理装置3において、反応槽11が一つ設けられている例を示したが、複数の反応槽11が直列に配置されていてもよい。その場合、フェントン反応にかかる時間を長くすることができるので、過酸化水素をフェントン反応で十分消費させることができる。
また、反応槽11が複数配置されている場合、第一反応槽から第二反応槽に送液する方法は特に限定されず、ポンプを用いて送液してもよいし、オーバーフローを利用して送液してもよい。なお、本明細書において、第一反応槽および第二反応槽は、特許請求の範囲における反応槽を構成している。
(第一pH調整装置)
pH調整装置14は、槽内のpHに応じて、反応槽11内に酸またはアルカリを添加し、反応槽11内のpHを調整するものであり、第1実施形態のpH調整装置14と同様である。
(過酸化水素添加手段)
過酸化水素添加手段16は、反応槽11内に過酸化水素を添加するものであり、第1実施形態の過酸化水素添加手段16と同様である。
(混合物添加手段)
混合物添加手段78は、反応槽11に、鉄試薬と鉄還元触媒とが水中で混合した混合物を添加するものである。本実施形態においては、中間槽71に貯留された混合物を反応槽11に添加する。
従来、鉄還元触媒である活性炭を水などの分散媒中に懸濁させてから反応系に添加する方法では、固体の活性炭を反応系に添加する場合と比べて、水処理における処理効率が低いことがあった。
発明者らは、水処理における処理効率が低下する原因が、鉄還元触媒が水中で分散されることで水に溶け込んだ空気と接触しやすくなり、鉄還元触媒が失活したことであると推測した。
そこで、発明者らは、水処理における処理効率を維持しつつ、作業性に優れる水処理方法について、鋭意検討した。その結果、発明者らが、第一鉄塩、第一鉄酸化物、第二鉄塩および第二鉄酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つと、鉄還元触媒とが水中で混合した混合物を反応系中に添加することで、鉄還元触媒の失活を抑制できることを見出し、本態様の発明を完成させた。
本実施形態においては、一定時間に処理されるTOC除去率が高いほど、水処理における処理効率に優れるといえる。
(中間槽)
中間槽71は、鉄試薬と鉄還元触媒とが水中で混合した混合物を貯留するものである。
中間槽71には、第六の流路82および第八の流路83が接続されている。第六の流路82は、鉄試薬および鉄還元触媒を分散または溶解させるための水を中間槽71に流入(供給)させるものである。第八の流路83は、中間槽71から排出された混合物を反応槽11に流入(供給)させるものである。
中間槽71では、混合手段72により、鉄試薬と鉄還元触媒とを水中で混合する。混合手段72としては、鉄試薬および鉄還元触媒が均一に分散または溶解できる限り特に限定されない。図3では、混合手段72は撹拌機である。混合手段72は、曝気装置であってもよい。
図3に示す水処理装置3において、中間槽71から反応槽11に混合物を供給する方法は特に限定されない。例えば、ポンプを用いて中間槽71から反応槽11に混合物を供給してもよい。
(鉄試薬添加手段)
鉄試薬添加手段15は、少なくとも中間槽71内に鉄試薬を添加するものである。
鉄試薬としては、前記と同様のものが挙げられる。鉄試薬の好ましい態様も前記と同様である。
本実施形態において、鉄試薬から発生する第一鉄イオンの大部分はフェントン反応に使われるが、一部は鉄還元触媒と結合する。そのため、発生した第一鉄イオンの量が、鉄還元触媒と結合する第一鉄イオンの量よりも多くなるように、鉄試薬を添加することが好ましい。例えば、第一鉄イオン/鉄還元触媒が質量比で0.01以上1以下となるように鉄試薬を添加することが好ましく、0.03以上0.5以下となるように鉄試薬を添加することがより好ましい。
また、本実施形態では、鉄還元触媒により第二鉄イオンが還元されて第一鉄イオンが再生するため、鉄試薬として第二鉄化合物を用いることもできる。
鉄試薬としては、固体状態のものを用いてもよいし、鉄試薬の水溶液のように液体状態にしたものを用いてもよい。
なお、鉄試薬添加手段15は、反応槽11内の反応液中の第一鉄イオンの濃度を調整するために、必要に応じて直接反応槽11に鉄試薬を添加してもよい。
(触媒添加手段)
触媒添加手段17は、少なくとも中間槽71内に鉄還元触媒を添加するものである。
鉄還元触媒としては、前記と同様のものが挙げられる。鉄還元触媒の好ましい態様も前記と同様である。
中間槽71内の混合物全量に対する鉄還元触媒の質量濃度は、特に限定されないが、2000mg/L以上200000mg/L以下であることが好ましい。
混合物全量に対する鉄還元触媒の質量濃度が2000mg/L以上の場合、同じ量の鉄還元触媒を添加しようとしたときの混合物の添加量を十分低減できる。これにより、水処理にかかる水量を十分低減できる。また、混合物全量に対する鉄還元触媒の質量濃度が200000mg/L以下の場合、混合物の粘度が十分低く、混合手段72により混合物が混合しやすい。これにより、中間槽71内の混合物の均一性を保ちやすい。
反応液全量に対する鉄還元触媒の濃度は、50000mg/L以下であることが好ましい。鉄還元触媒の質量濃度が50000mg/L以下であることにより、鉄還元触媒による過酸化水素の分解反応が抑制される。また、後述する濃縮装置を用いて第二鉄イオンを不溶化させた第二鉄化合物を含む汚泥を濃縮するのが容易になる。さらに、この条件で反応槽11に懸濁液を返送すると、反応槽11内のpH調整に酸を用いる場合、その酸の使用量が抑えられる。
鉄還元触媒の形状としては、触媒効率の観点から粉体状であることが好ましい。また、鉄還元触媒の粒径としては、触媒を回収しやすいことから0.05μm〜100μmが好ましい。
なお、触媒添加手段17は、反応槽11内の反応液中の鉄還元触媒の濃度を調整するために、必要に応じて直接反応槽11に鉄還元触媒を添加してもよい。
(不溶化槽)
不溶化槽21は、第一鉄イオン、およびフェントン反応により生成した第二鉄イオンを反応液から除去するために不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物を生成するものである。
本実施形態において、第一鉄イオンおよび第二鉄イオンは、酸化鉄、水酸化鉄または塩化鉄などの鉄化合物となって不溶化する。
(第二pH調整装置)
pH調整装置24は、第1実施形態のpH調整装置24と同様である。
(濃縮装置)
濃縮装置22は、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を、第一鉄化合物、第二鉄化合物および鉄還元触媒を含む汚泥と処理水とに固液分離して、汚泥が濃縮された懸濁液を得るものである。濃縮装置22は、第一膜モジュール23を用いた全量濾過方式を採用している。第一膜モジュール23を用いることにより、懸濁液に汚泥が高濃度で含まれる場合においても、高い分離能で分離することができる。
第一膜モジュール23は、第1実施形態の第一膜モジュール23と同様である。
本実施形態において、濃縮装置22での好ましい濃縮倍率は、前記と同様である。
第一膜モジュール23には、第1実施形態と同様に、第三の流路31が接続されている。第三の流路31には、ポンプ31aが設置されている。これにより、上記処理水を不溶化槽21から排出できるようになっている。
また、第三の流路31には、処理水中の全鉄濃度を測定する測定装置が設けられていることが好ましい。当該測定装置により、処理水中の全鉄濃度が0.04mg/Lを超えていると判断される場合には、不溶化槽21内のpH、もしくは第一膜モジュール23での固液分離またはその両方が適切になるように適宜対応する。
また、濃縮装置22には、第一膜モジュール23の下方に配置された膜面洗浄用の曝気手段を備えてもよい。前記曝気手段としては、公知のものを採用できる。
さらに、濃縮装置22は、第一膜モジュール23のほかに別の分離手段を併用してもよい。別の分離手段としては、例えば前記したように、砂濾過、加圧浮上分離、遠心分離、ベルトプレス、沈殿池による沈殿などが挙げられる。
(懸濁液返送手段)
懸濁液返送手段32は、不溶化槽21から反応槽11に汚泥が濃縮された懸濁液の少なくとも一部を返送するものであり、第1実施形態の懸濁液返送手段32と同様である。
本実施形態では、フェントン反応を利用した水処理では廃棄されていた第二鉄化合物を再利用することができる。そのため、第二鉄化合物の処理にかかる費用を削減できるほか、鉄試薬添加手段15から添加する鉄試薬の量を少なくすることができる。
(調整槽)
調整槽41は、不溶化槽21から第三の流路31を介して供給される処理水を貯留するものである。
調整槽41には、第1実施形態と同様に、第七の流路55が接続されている。第七の流路55には、ポンプ55aおよび調整バルブ55bが設置されている。これにより、上記処理水を調整槽41から排出できるようになっている。
分離装置42は、濃縮工程で分離した処理水を、処理水に含まれる被酸化性の汚染物質と、透過水とに膜分離するものである。分離装置42は、第1実施形態の分離装置42と同様に、第二膜モジュール43を用いたクロスフロー濾過方式を採用している。
第二膜モジュール43には、第1実施形態と同様に、第四の流路51が接続されている。上述したポンプ55aにて第二膜モジュール43の濾過面側(上流側)に圧力をかけることにより、上記透過水を調整槽41から排出し、分離装置42にて膜分離できるようになっている。流量の調整は、ポンプ55aの出力調整により行うことができる。
(貯留槽)
貯留槽61は、分離装置42から第四の流路51を介して供給される透過水を貯留するものである。貯留槽61に貯留された透過水は、例えば、排水を放出した工場等に返送され、再利用されるか、場合によっては工業用水などで希釈され、河川などに放流されてもよい。
[水処理方法]
図3に示す水処理装置3を用いる水処理方法について説明する。本実施形態の水処理方法では、最初に、反応槽11において、排水のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、排水に含まれる被酸化性の汚染物質をフェントン反応により酸化する(酸化工程)。同時に、排水に、鉄試薬と鉄還元触媒とが水中で混合した混合物を添加する(添加工程)。添加工程で使用する鉄試薬は、上述した通りである。
鉄還元触媒を予め水中に分散させることで、鉄還元触媒が凝集しにくい。したがって、本実施形態の水処理方法は作業性に優れる。また、鉄試薬の存在下で、鉄還元触媒を水と混合することにより、鉄還元触媒の失活を抑制できる。
次いで、不溶化槽21において、酸化工程で得られた反応液のpHを6.0以上10.0以下に調整し、第一鉄イオン、およびフェントン反応により生成した第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物を生成する(不溶化工程)。
さらに、第一鉄化合物および第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を、濃縮装置22により、第一鉄化合物、第二鉄化合物および鉄還元触媒を含む汚泥と処理水とに固液分離して、汚泥が濃縮された懸濁液を得る(濃縮工程)。
次いで、濃縮工程で分離した処理水を調整槽41に貯留する。そして、処理水を調整槽41から分離装置42に流出させ、分離装置42により膜分離する(分離工程)。分離工程において、処理水を、処理水に含まれる被酸化性の汚染物質と、透過水とに分離する。さらに、貯留槽61において、分離工程で分離した透過水を貯留する。
また、懸濁液返送手段32において、濃縮工程で濃縮した懸濁液を、不溶化槽21から反応槽11に返送する(懸濁液返送工程)。
反応槽11に返送された懸濁液中の第二鉄化合物は、反応槽11内で溶解して第二鉄イオンとなり、過酸化水素および鉄還元触媒により第一鉄イオンに還元される(還元工程)。上述したように、本実施形態の水処理方法は、鉄還元触媒の失活を抑制できるので、第二鉄イオンの還元反応が効率的に進行する。その結果、十分な量の第一鉄イオンが供給されるので、十分な処理効率が得られる。
以上のことから、本実施形態の水処理装置を用いる水処理方法によれば、処理効率を維持しつつ、作業性に優れる水処理が可能である。
なお、本発明の他の一態様の水処理装置および水処理方法は、上述した実施形態に限定されない。例えば、水処理装置3において、混合物添加手段78が必ずしも中間槽71を備えなくてもよい。その場合、混合物を直接反応槽11に添加してもよい。この混合物は、予め調製されてもよいし、反応槽11に接続された流路内で鉄試薬、鉄還元触媒および水が自然混合することにより調製されてもよい。
また、例えば、水処理装置3において、混合手段72を中間槽71内に設ける例を示したが、混合手段72を中間槽71とは別体に設けてもよい。その場合、新たに槽を配置し、この槽内に混合手段72を設けてもよい。この槽内で混合物を調製した後、中間槽71を介して反応槽11に混合物を添加してもよいし、この槽から直接反応槽11に混合物を添加してもよい。
また例えば、水処理装置3において、調整槽41および分離装置42を省略して分離工程を行わなくてもよい。その場合、濃縮装置22を通過した処理水を直接貯留槽61に貯留してもよい。
また例えば、上記実施形態において、濃縮装置22を用いた汚泥の濃縮方法は、必ずしも第一膜モジュール23を利用した方法でなくてよい。例えば、上述した砂濾過、加圧浮上分離、遠心分離、ベルトプレス、沈殿池による沈殿などを利用してもよい。
さらに、濃縮装置22を不溶化槽21内に設ける例を示したが、濃縮装置22を不溶化槽21内に設けなくてもよい。その場合、不溶化槽21と調整槽41との間に別の槽を配置し、この槽内に濃縮装置22を設けてもよい。
濃縮装置22を不溶化槽21内に設けない場合、第一膜モジュール23の構成として以下に示す構成であってもよい。例えば、ハウジング内に濾過膜(精密濾過または限外濾過)の一次側と二次側が隔離されるように濾過膜が固定される。そして、ハウジング内における濾過膜の一次側が、第一鉄化合物、第二鉄化合物および鉄還元触媒を含む汚泥および処理水を含有する懸濁液が貯留された貯留タンクと循環流路により連通し、濾過膜の二次側が吸引ポンプと接続されてもよい。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。以下の試験において、各成分の濃度の測定を以下のようにして行った。
[過酸化水素の質量濃度の測定]
「測定1」
反応液を少量サンプリングし、マッハライ・ナーゲル製のクアントフィックスパーオキサイド25の試験紙をサンプリングした反応液に浸し、試験紙が青色を呈するか否かを目視により確認した。測定1において、試験紙が青色を呈する場合には、反応液中の過酸化水素の質量濃度は25mg/Lより多いことを意味する。
「測定2」
処理水中の過酸化水素を、ヨウ化カリウムを用いて発色させ、吸光光度計(株式会社共立理化学研究所製、製品名「デジタルパックテスト」)により測定した。
[全鉄濃度の測定]
処理水中の鉄イオンまたは鉄化合物を、オルト−フェナントロリンを用いて発色させ、吸光光度計(株式会社共立理化学研究所製、製品名「デジタルパックテストマルチ」)により測定した。
[全銅濃度の測定]
処理水中の銅イオンまたは銅化合物を、バソクプロインを用いて発色させ、吸光光度計(株式会社共立理化学研究所製、製品名「デジタルパックテストマルチ」)により測定した。
[全マンガン濃度の測定]
処理水中のマンガンイオンまたはマンガン化合物を、過ヨウ素酸カリウムを用いて発色させ、吸光光度計(株式会社共立理化学研究所製、製品名「デジタルパックテストマルチ」)により測定した。
[TOC濃度の測定]
処理水中のTOC濃度の測定は、JIS K0102「22.有機体炭素(TOC)」に従い、燃焼式全有機炭素分析装置(株式会社三菱化学アナリテック製、型番「TOC−300V」)により測定した。
以下では、原水(排水)中のTOC濃度および処理水中のTOC濃度を用い、式(S1)に基づいてTOC除去率を算出した。
Figure 2019055399
本実施例では、鉄還元触媒、鉄試薬および金属試薬として以下の材料を用いた。
鉄還元触媒:活性炭(三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社製 DiaFellow CT)。
鉄試薬:硫酸鉄(II)七水和物(FeSO・7HO)。
金属試薬:硫酸マンガン(II)五水和物(MnSO・5HO)、硫酸銅(II)五水和物(CuSO・5HO)。
<水処理試験1>
100mLの容器に、反応液全量に対するTOC濃度を324mg/Lに調整した、エタノールと水との混合液を入れ、これをモデル排水とした。このモデル排水の水処理試験を実施した。
水処理試験1において、処理時間は次のように定義される。上述の「過酸化水素の質量濃度の測定」の「測定1」において試験紙が呈色しなくなった時点を反応終了とし、反応終了までに経過した時間を処理時間とした。また、反応開始から180分間経過後も「測定1」において試験紙が呈色する場合、処理時間を180分間とした。
[実施例A1〜A13、比較例A1〜A4]
モデル排水に、硫酸を添加してpHを2.8に調整した。次いで、容器内に鉄還元触媒、鉄試薬および金属試薬を添加した。この溶液を撹拌することにより、モデル排水中に鉄還元触媒、鉄試薬および金属試薬を十分に分散または溶解させた。
次いで、この溶液を撹拌しながら、容器内に反応液全量に対する過酸化水素の質量濃度が3000mg/Lとなるように過酸化水素を添加し、これを反応液とした。この反応液を撹拌しながら、フェントン反応を進行させた(酸化工程)。
反応停止後の反応液を撹拌しながら、水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応液のpHを8.0となるように調整し、不溶化液とした(不溶化工程)。
次いで、不溶化液の撹拌を止め、シリンジフィルター(Rephile社製、製品名「PephiQuik Nylon Non−sterile Syringe Filter」、孔径0.45μm)を用いて、不溶化液を固液分離した。詳しくは、不溶化液を、鉄化合物、鉄還元触媒および金属化合物を含む汚泥と処理水とに分離した(濃縮工程)。このようにして、モデル排水の水処理を実施した。
水処理試験1の実施例A1〜A13、比較例A1〜A4における反応液全量に対する各試薬の質量濃度、および金属イオンのモル量/鉄還元触媒の質量で表される比Xを表1に示す。また、水処理試験1の実施例A1〜A13、比較例A1〜A4におけるTOC除去率の算出結果、処理時間、処理水中の過酸化水素の質量濃度、全マンガン濃度および全銅濃度の測定結果を表1に示す。なお、処理水中の過酸化水素の質量濃度は、上述の「過酸化水素の質量濃度の測定」の「測定2」により測定した。
Figure 2019055399
TOC除去率は48%以上であることが好ましい。
処理水全量に対する過酸化水素の質量濃度は6mg/L以下であることが好ましい。処理水全量に対する過酸化水素の質量濃度が低いほど、過酸化水素の消費量が高いといえる。
処理水は排水基準を満たすことが好ましい。詳しくは、処理水中の全マンガン濃度が10mg/L以下であり、全銅濃度が3mg/L以下であることが好ましい。
表2に示すように、本発明を適用した実施例A1〜A13の水処理方法では、処理時間あたりのTOC除去率が高く、かつ過酸化水素の消費量も高かった。すなわち、実施例A1〜A13の水処理方法では、処理効率に優れていた。
また、金属イオンのモル量/前記鉄還元触媒の質量で表される比Xが0.3mmоl/g以上60mmоl/g以下である実施例A1〜A9の水処理方法では、排水基準内で管理できることが示された。すなわち、実施例A1〜A9の水処理方法は、処理水を再利用または河川に放流するような排水処理に適しているといえる。
一方、比較例A1の水処理方法では、過酸化水素の消費量が高いものの、TOC除去率が低かった。これは、マンガンイオンが過酸化水素の分解反応を促進した結果、TOCの除去に寄与する過酸化水素の量が少なくなったためであると推測される。
さらに、比較例A2の水処理方法では、TOC除去率が低く、かつ過酸化水素の消費量も低かった。すなわち、比較例A2の水処理方法では、処理効率に劣っていた。
さらに、比較例A3〜A4の水処理方法では、TOC除去率は高いものの、過酸化水素の消費量が低かった。すなわち、比較例A3〜A4の水処理方法では、処理効率に劣っていた。
<水処理試験2>
[実施例A14]
500mLの容器に、プロピオンアルデヒドを含む化学工場排水400mLを入れ、さらに、容器内に硫酸を添加してpHを2.8に調整した。次いで、容器内に、反応液全量に対する鉄還元触媒の質量濃度が1042mg/Lとなるように活性炭を添加した。また、反応液全量に対する鉄試薬の質量濃度が260mg/LとなるようにFeSO・7HOを添加した。さらに、反応液全量に対する金属イオンのモル濃度が0.40mmol/LとなるようにCuSO・5HOを添加した。このとき、鉄還元触媒の添加濃度1000mg/Lに対する金属イオンの含有濃度は、0.38mmol/Lであった。この溶液を撹拌することにより、モデル排水中に鉄還元触媒、鉄試薬および金属試薬を十分に分散または溶解させた。
次いで、この溶液を撹拌しながら、容器内に反応液全量に対する過酸化水素の質量濃度が2800mg/Lとなるように過酸化水素を添加した。さらに、全量が480mLとなるように超純水を添加し、これを反応液とした。この反応液を撹拌しながら、フェントン反応を進行させた(酸化工程)。
反応開始から4時間後および24時間後の反応液を少量サンプリングした。サンプリングした反応液に、水酸化ナトリウムを添加して反応液のpHを8.0となるように調整し、不溶化液とした(不溶化工程)。
次いで、水処理試験1と同様のシリンジフィルターを用いて、不溶化液を固液分離した。詳しくは、不溶化液を、鉄化合物、鉄還元触媒および金属化合物を含む汚泥と処理水とに分離した(濃縮工程)。
このようにして、化学工場排水の水処理を実施した。その結果、4時間後の処理水における過酸化水素の質量濃度は1900mg/Lであった。また、24時間後の処理水における過酸化水素の質量濃度は1100mg/Lであった。
[比較例A5]
金属試薬を添加しなかったこと以外は、実施例A14と同様に処理を行った。
このようにして、化学工場排水の水処理を実施した。その結果、4時間後の処理水における過酸化水素の質量濃度は2500mg/Lであった。また、24時間後の処理水における過酸化水素の質量濃度は2200mg/Lであった。
図4は、水処理試験2における過酸化水素の消費速度を表すグラフである。図4のグラフの横軸は処理時間を表し、グラフの縦軸は、処理水全量に対する過酸化水素の質量濃度を表す。図4のグラフの傾きが急であるほど過酸化水素の消費速度が速いことを表す。過酸化水素の消費速度が速いと、水処理における処理効率に優れる傾向があるといえる。
図4に示すように、本発明を適用した実施例A14の水処理方法では、過酸化水素の消費速度が速かった。一方、金属試薬を使用しなかった比較例A5の水処理方法では、過酸化水素の消費速度が遅かった。
[実施例B1]
250mLの容器Aに、反応液全量に対する全有機炭素濃度が254mg/Lとなるように調整したエタノール水溶液を入れ、さらに、容器内に硫酸を添加してpHを2.8に調整した。
また、別の100mLの容器Bに水を入れた後、容器内に混合物全量に対する鉄還元触媒の質量濃度が80000mg/Lとなるように鉄還元触媒を添加した。さらに、混合物全量に対する鉄試薬の質量濃度が60000mg/Lとなるように鉄試薬を添加した。その後、容器を密閉した状態で内容物を十分に撹拌し、鉄試薬と鉄還元触媒とが水中で混合した混合物を得た。
容器A内に、反応液全量に対する鉄還元触媒の質量濃度が667mg/Lであり、鉄試薬の質量濃度が第一鉄イオン換算で500mg/Lとなるように混合物を添加した(添加工程)。これらの混合液を撹拌することにより、モデル排水中に十分に分散・溶解させた。
次いで、この溶液を撹拌しながら、容器内に、反応液全量に対する過酸化水素の質量濃度が2770mg/Lとなるように過酸化水素を添加し、反応液とした。さらに、反応液を撹拌しながら、フェントン反応を2時間実施した(酸化工程)。
フェントン反応終了後の反応液を撹拌しながら、水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応液のpHを8.0となるように調製し、不溶化液とした(不溶化工程)。次いで、シリンジフィルター(Rephile社製、製品名「PephiQuik Nylon Non−sterile Syringe Filter」、孔径0.45μm)を用いて、得られた不溶化液を、鉄化合物および鉄還元触媒を含む汚泥と処理水とに分離した(第一分離工程)。
[TOC濃度の測定]に基づいて処理水のTOC濃度を測定したところ、115mg/Lであった。式(S1)に基づいてTOC除去率を算出した結果、55%であった。
[実施例B2]
容器B内において、混合物を撹拌しながら1日間曝気することで、混合物を空気と十分に接触させた。曝気後の混合物を容器A内に添加したこと以外は、実施例B1と同様に行った。
[TOC濃度の測定]に基づいて処理水のTOC濃度を測定したところ、116mg/Lであった。式(S1)に基づいてTOC除去率を算出した結果、54%であった。
[比較例B1]
混合物の調製と、鉄試薬の添加以外の操作は、実施例B2と同様に行った。詳しくは、容器Bに水を入れた後、容器内に混合物全量に対する鉄還元触媒の質量濃度が80000mg/Lとなるように鉄還元触媒を添加した。その後、容器を密閉した状態で内容物を十分に撹拌し、鉄還元触媒が水中で混合した混合物を得た。
容器A内に、反応液全量に対する鉄還元触媒の質量濃度が667mg/Lとなるように混合物を添加した。また、反応液全量に対する鉄試薬の質量濃度が第一鉄イオン換算で500mg/LとなるようにFeSO・7HO水溶液を添加した。
[TOC濃度の測定]に基づいて処理水のTOC濃度を測定したところ、124mg/Lであった。式(S1)に基づいてTOC除去率を算出した結果、51%であった。
[比較例B2]
予め混合物を調製せず、鉄試薬および鉄還元触媒をそれぞれ添加した以外は実施例1と同様に行った。詳しくは、容器A内に、反応液全量に対する鉄還元触媒の質量濃度が667mg/Lとなるように鉄還元触媒を添加した。また、反応液全量に対する鉄試薬の質量濃度が第一鉄イオン換算で500mg/LとなるようにFeSO・7HO水溶液を添加した。
[TOC濃度の測定]に基づいて処理水のTOC濃度を測定したところ、118mg/Lであった。式(S1)に基づいてTOC除去率を算出した結果、54%であった。
実施例B1〜B2および比較例B1〜B2の結果を表2に示す。
水処理における作業性の評価は、鉄還元触媒の凝集体が生じることなく、鉄還元触媒を均一に添加できたものを「○」とし、それ以外を「×」とした。また、水処理における処理効率の評価は、鉄還元触媒を粉体状態で添加した場合と比べて、TOC除去率が低かったものを「×」、それ以外を「○」とした。総合評価は、水処理における作業性および処理効率の評価結果が両方「○」だったものを「○」とし、それ以外を「×」とした。
Figure 2019055399
表2に示すように、本発明を適用した実施例B1および実施例B2は、鉄還元触媒を粉体状態で添加した比較例B2と比較して、水処理における処理効率が同等でありながら、水処理における作業性に優れていた。このことから、鉄試薬の存在下で、鉄還元触媒を水と混合することにより、鉄還元触媒の失活を抑制できたと考えられる。
一方、比較例B1は、鉄還元触媒を粉体状態で添加した比較例B2と比較して、水処理における作業性に優れていたが、水処理における処理効率が低下した。このことから、鉄還元触媒のみを水と混合した場合、鉄還元触媒の失活を抑制できず、水処理における処理効率が低下したと考えられる。
以上の結果により、本発明が有用であることが確かめられた。
1,2,3…水処理装置、11…反応槽、14,24…pH調整装置、15…鉄試薬添加手段、17…触媒添加手段、18…金属試薬添加手段、19…金属イオン濃度測定部、21…不溶化槽、22…濃縮装置、32…懸濁液返送手段、42…分離装置、61…貯留槽、71…中間槽、72…混合手段、78…混合物添加手段

Claims (26)

  1. 下記工程(a−i)および工程(a−ii)を有する水処理方法。
    (a−i)被酸化性の汚染物質を含む排水のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、フェントン反応を行って、前記被酸化性の汚染物質を酸化する酸化工程。
    (a−ii)鉄還元触媒と、鉄以外の金属イオンの存在下で、前記酸化工程で得られた反応液中の第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元する還元工程。
  2. 前記還元工程における、前記鉄以外の金属イオンのモル量/前記鉄還元触媒の質量で表される比Xが、0.3mmоl/g以上、60mmоl/g以下である請求項1に記載の水処理方法。
  3. 前記還元工程では、前記鉄以外の金属イオンを発生させる金属試薬を用い、
    前記金属試薬は、2価の金属、2価の金属塩および2価の金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1または2に記載の水処理方法。
  4. 前記金属試薬は、マンガン、マンガン塩、マンガン酸化物、銅、銅塩および銅酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項3に記載の水処理方法。
  5. 前記酸化工程では、第一鉄塩、第一鉄酸化物、第二鉄塩および第二鉄酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの鉄試薬を用いて前記被酸化性の汚染物質を酸化し、
    前記酸化工程に先立って、前記鉄還元触媒、前記金属試薬および前記鉄試薬からなる群のうち少なくとも二つを混合する混合工程を有する請求項3または4に記載の水処理方法。
  6. 下記工程(b−i)および工程(b−ii)を有し、前記工程(b−i)は下記工程(A)を含む水処理方法。
    (b−i)被酸化性の汚染物質を含む排水のpHを1.0以上4.0以下に調整するとともに、フェントン反応を行って、前記被酸化性の汚染物質を酸化する酸化工程。
    (b−ii)鉄還元触媒の存在下で、前記酸化工程で得られた反応液中の第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元する還元工程。
    (A)前記排水に、第一鉄塩、第一鉄酸化物、第二鉄塩および第二鉄酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つと、前記鉄還元触媒とが水中で混合した混合物を添加する添加工程。
  7. 下記工程(iii)〜(v)を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の水処理方法。
    (iii)前記酸化工程で得られた反応液のpHを6.0以上10.0以下に調整し、第一鉄イオン、および前記フェントン反応により生成した第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物を生成する不溶化工程。
    (iv)前記第一鉄化合物および前記第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を、少なくとも前記第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離して、前記汚泥が濃縮された前記懸濁液を得る濃縮工程。
    (v)前記懸濁液の少なくとも一部を前記酸化工程に返送する懸濁液返送工程。
  8. 前記濃縮工程において、濾過膜を用いて前記懸濁液を得る請求項7に記載の水処理方法。
  9. ナノ濾過膜または逆浸透膜を用いて、前記処理水を、前記処理水に含まれる前記被酸化性の汚染物質と透過水とに分離する分離工程を有する請求項7または8に記載の水処理方法。
  10. 前記鉄還元触媒は、活性炭およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1〜9のいずれか1項に記載の水処理方法。
  11. 前記酸化工程において、酸を用いて前記排水のpHを1.0以上4.0以下に調整する請求項1〜10のいずれか1項に記載の水処理方法。
  12. 下記(a−1)を備える、水処理装置。
    (a−1)排水に含まれる被酸化性の汚染物質をフェントン反応により酸化するとともに、鉄還元触媒と、鉄以外の金属イオンの存在下で、前記フェントン反応により生成した第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元する反応槽。
  13. 前記反応槽における、前記鉄以外の金属イオンのモル量/前記鉄還元触媒の質量で表される比Xが、0.3mmоl/g以上、60mmоl/g以下である、請求項12に記載の水処理装置。
  14. 前記反応槽に、第一鉄塩、第一鉄酸化物、第二鉄塩および第二鉄酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの鉄試薬を添加する鉄試薬添加手段と、
    前記反応槽に、前記鉄還元触媒を添加する触媒添加手段と、
    前記反応槽に、前記鉄以外の金属イオンを発生させるための金属試薬を添加する金属試薬添加手段と、を有する請求項12または13に記載の水処理装置。
  15. 前記反応槽に流入される前記排水の全量に対する前記鉄以外の金属イオンの濃度を測定する金属イオン濃度測定部を有し、
    前記金属試薬添加手段は、前記金属イオン濃度測定部の測定結果に基づいて前記金属試薬を添加する請求項14に記載の水処理装置。
  16. 前記反応槽の上流に、前記鉄試薬、前記鉄還元触媒および前記金属試薬からなる群のうち少なくとも二つを混合して、混合物を得る混合手段を有する請求項14または15に記載の水処理装置。
  17. 前記混合物を貯留するとともに、貯留した前記混合物を前記反応槽に供給する中間槽を有する請求項16に記載の水処理装置。
  18. 下記(b−1)および(b−2)を備える、水処理装置。
    (b−1)排水に含まれる被酸化性の汚染物質をフェントン反応により酸化するとともに、前記フェントン反応により生成した第二鉄イオンを、鉄還元触媒により第一鉄イオンに還元する反応槽。
    (b−2)前記反応槽に、第一鉄塩、第一鉄酸化物、第二鉄塩および第二鉄酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つと、鉄還元触媒とが水中で混合した混合物を添加する混合物添加手段。
  19. 前記第一鉄塩、第一鉄酸化物、第二鉄塩および第二鉄酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つと、前記鉄還元触媒とを水中で混合する混合手段を有する請求項18に記載の水処理装置。
  20. 前記混合物を貯留する中間槽を備える請求項18または19に記載の水処理装置。
  21. 下記(3)〜(5)を備える、請求項12〜20のいずれか1項に記載の水処理装置。
    (3)前記反応槽から供給される反応液に含まれる前記第一鉄イオンおよび前記第二鉄イオンを不溶化させ、第一鉄化合物および第二鉄化合物を生成する不溶化槽。
    (4)前記第一鉄化合物および前記第二鉄化合物が懸濁した懸濁液を、少なくとも前記第二鉄化合物を含む汚泥と処理水とに分離して、前記汚泥が濃縮された前記懸濁液を得る濃縮装置。
    (5)前記懸濁液の少なくとも一部を前記反応槽に返送する懸濁液返送手段。
  22. 前記反応槽に酸またはアルカリを供給して前記排水のpHを調整する第一pH調整装置と、
    前記不溶化槽にアルカリを供給して前記反応液のpHを調整する第二pH調整装置と、を備える請求項21に記載の水処理装置。
  23. 前記酸は、硫酸または塩酸である請求項22に記載の水処理装置。
  24. 前記濃縮装置は、濾過膜を有し、
    前記濾過膜を用いて、前記懸濁液を得る請求項21〜23のいずれか1項に記載の水処理装置。
  25. 前記濃縮装置は、前記不溶化槽内に設けられている請求項21〜24のいずれか1項に記載の水処理装置。
  26. ナノ濾過膜または逆浸透膜を有し、前記ナノ濾過膜または前記逆浸透膜を用いて、前記処理水を、前記処理水に含まれる前記被酸化性の汚染物質と透過水とに分離する分離装置を備える請求項21〜25のいずれか1項に記載の水処理装置。
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