JP6251480B2 - 車両用空調ダクト及び鉄道車両 - Google Patents

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Description

本発明は、車両に搭載された空気調和装置の吸込み側への又は吹出し側からの空気を案内する車両用空調ダクト、及びこのような空調ダクトを備えた鉄道車両に関する。
一般に、鉄道車両は、空気調和装置から吹き出された調和空気や空気調和装置に吸引される戻り空気を案内するため、空調ダクトを備えている。空調ダクトは気密性や断熱性を有するように求められるところ、特に鉄道車両の空調ダクトは、例えば難燃性や軽量性のように、特有の設計要求を併せて満足する必要がある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示されている空調ダクトは、自立する程度に硬いグラスウールで四角筒形状に形成されたダクト本体と、アルミ箔層及び樹脂層の二層構造を有してダクト本体の一表面(内面又は外面)に貼り付けられたフィルム材とを備えている。フィルム材は、空調ダクト全体としての一表面を形成し、ダクト内からダクト外への空気流れを遮断する。
ダクト本体が自立する程度に硬いので、空調ダクト全体としての形状安定性を保つことができる。ダクト本体が吸音性及び不燃性を有するグラスウール製であるので、空調ダクトの設計要求をいくつか満足できる。薄いフィルム材が空気流れを遮断すべくグラスウール製ダクト本体の表面に貼り付けられるので、グラスウール中の連続空気室によってもたらされる高断熱性を維持して結露を防止すると共に構造の大型化を避けながら、空調ダクト全体としての気密性を高くすることができる。空調ダクトが、グラスウール製ダクト本体及び薄いフィルム材で構成されるので、金属製ダクト本体を備えたものより軽量になる。
特許第3462147号公報
上記空調ダクトを製造するときには、グラスウールがダクト本体への適用に際して十分な硬さを有するように、ガラス繊維を堅く固める工程を必要とする。また、二層構造のフィルム材を準備し、当該フィルム材をダクト本体に貼り付ける工程を必要とする。上記空調ダクトは、鉄道車両用途における種々の設計要求(例えば、形状安定性、吸音性、不燃性、高断熱性、気密性、軽量性など)を同時に満足するものであり、そのため優れた効能を発揮し得るが、製造工程の簡略化その他の設計要求に照らして改善すべき余地もある。
そこで本発明は、種々の設計要求(例えば、形状安定性、軽量性、気密性、断熱性及び製造工程簡略化等)を同時に満足するように改善された車両用空調ダクト及びこれを備えた鉄道車両を提供することを目的とする。
本発明に係る車両用空調ダクトは、車両に搭載された空気調和装置の吸込み側への又は吹出し側からの空気を案内する車両用空調ダクトであって、ダクト外表面とダクト内表面とを形成する筒状のダクト壁を備え、前記ダクト壁が、ポリスチレン樹脂とポリオレフィン樹脂とを含有した複合発泡樹脂材で構成される。
本発明に係る鉄道車両は、吸い込んだ空気を温度調整して吹き出す空気調和装置と、前記空気調和装置の吸込み側への又は吹出し側からの空気を案内する空調ダクトと、を備え、前記空調ダクトが、ダクト外表面とダクト内表面とを形成する筒状のダクト壁を備え、前記ダクト壁が、ポリスチレン樹脂とポリオレフィン樹脂とを含有した複合発泡樹脂材で構成される。
前記構成によれば、ダクト外表面とダクト内表面とを形成するダクト壁を複合発泡樹脂材で構成しているので、空調ダクトが、グラスウール製ダクト本体を備えるものと同等に又はそれより軽量になる。また、ダクト壁が単体で気密性を保つことができる。よって、気密性を確保するためにダクト壁に他の部材を組み付ける工程や当該他の部材を準備する工程を省略してもよくなり、当該ダクト壁がダクト外表面もダクト内表面も形成するようにして空調ダクトを構成するのを許容される。また、複合発泡樹脂材がポリスチレン樹脂にポリオレフィン樹脂を含有させたものであるので、ダクト壁は、複合発泡樹脂材単体で、ポリスチレン樹脂が有する高剛性及び高断熱性と、ポリオレフィン樹脂が有する高耐衝撃性及び高靱性とを兼ね備えることができ、それにより形状安定性も確保される。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、種々の設計要求(例えば、形状安定性、軽量性、気密性、断熱性及び製造工程簡略化等)を同時に満足するように改善された車両用空調ダクト及びこれを備えた鉄道車両を提供することができる。
実施形態に係る鉄道車両の概略構成を示し、正面視概略断面図である。 図1に示す鉄道車両の概略構成を示し、側方視概略断面図である。 図1に示す屋根構体近傍の断面図である。 図3に示す空調ダクトの製造工程を示す図である。 図3に示す内部空間に収納された左右の空調ダクト及びラインフローファンを下から見て示す底面図である。 図3及び図5に示すダクト取付具14の斜視図である。 図5のVII−VII線に沿って切断して示す空調ダクトの断面図である。 図5のVIII−VIII線に沿って切断して示す空調ダクトの断面図である。 変形例に係る鉄道車両の概略構成を示し、側方視概略断面図である。 図9に示す鉄道車両の概略構成を示し、正面視概略断面図である。
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、同一又は対応する要素には全図を通じて同一符号を付して重複説明を省略する。
図1は、実施形態に係る鉄道車両1の概略構成を示し、正面視概略断面図である。図1に示すように、鉄道車両1の車体2は、その上部に屋根構体3を有している。屋根構体3は、外板である屋根板4と、屋根板4よりも下方に位置し、車室天井の車幅方向中央部を構成する天井板5と、天井板5の左端部及び右端部それぞれから連続し、車室天井の車幅方向外側部を構成する一対の側天井6とを有している。屋根構体3は、その内部に、屋根板4、天井板5及び一対の側天井6で囲まれた内部空間3aを形成しており、屋根板4は内部空間3aの上壁を成し、天井板5及び一対の側天井6は内部空間3aの底壁を成す。
内部空間3aは艤装空間として活用され、例えば給電用の配線体7や、車室天井に備え付けられる車内設備(例えば、室内灯8及び吊り手棒受け9)を支持するための構造や、空調システム10の構成要素などを収容する。なお、配線体7は、内部空間3aの上部且つ車幅方向中央部において車長方向に延在していてもよい。室内灯8及び吊り手棒受け9は、左右に対を成していてもよく、その場合、左右の室内灯8及び左右の吊り手棒受け9がいずれも、車幅方向において天井板5と左右の側天井6それぞれとの間に配置されていてもよい。
鉄道車両1は、車室内の空気環境を快適に保つため空調システム10を搭載している。本実施形態では、空調システム10が、主として、複数のラインフローファン11と、1以上の空気調和装置12と、1以上の空調ダクト13とを備える。各ラインフローファン11は、屋根構体3の内部空間3aに収容される。各ラインフローファン11は、内部空間3aのうち車幅方向中央部且つ下部に配置されており、本実施形態では配線体7よりも下方に配置される。複数のラインフローファン11は車長方向に並べられ、各ラインフローファン11は車長方向に延在する(図5も参照)。各ラインフローファン11から吹き出された空気は、天井板5の車幅方向中央部に設けられたグリル(図示略)を介して車室内へと送られる。
図2は、図1に示す鉄道車両1の概略構成を示し、側方視概略断面図である。図2に示すように、本実施形態では、空調システム10がいわゆる天井集中型であり、単一の空気調和装置12が、屋根構体3の上であって車体2の車長方向中央部に配置される。空気調和装置12は、車室から空気を吸い込み、吸い込んだ空気を温度調整し、温度調整された空気(以下、「調和空気」と称する場合もある)を吹き出す。吹き出された調和空気は、空調ダクト13内に送り込まれる。空調ダクト13は、空気調和装置12の吹出し側からの調和空気を案内して車室内へと供給する。
図1に示すように、空調ダクト13(13L,13R)は、屋根構体3の内部空間3aに収容されており、左右に対を成してラインフローファン11を車幅方向に挟むように配置されている。左空調ダクト13Lは、右空調ダクト13Rと車幅方向に対称の構造を有している。図2に示すように、各空調ダクト13(図2では一方の空調ダクト13Rのみを図示)は、内部空間3aにおいて、その前端部から後端部にわたって車長方向に延在している。各空調ダクト13は、車長方向に間隔をおいて複数の吹出し口13d(図3〜5参照)を有し、各吹出し口13dは、空調ダクト13の底壁に設けられている。天井板5には、吹出し口13dと平面視でオーバーラップする部位(すなわち、天井板5の車幅方向左端部及び右端部それぞれ)にグリル(図示略)が設けられている。調和空気は、空調ダクト13を通流し、吹出し口13dを介して空調ダクト13外に流出し、グリルを介して車室内へと供給される。なお、当該グリルは、ラインフローファン11と上下に対向する前述のグリルと一体であってもよいし別体であってもよい。
図3は、図1に示す屋根構体3近傍の断面図である。図3に示すように、空調ダクト13は、空気を案内及び通流させるダクト通路13aを区画するように筒状に形成されたダクト壁21を有する。本実施形態では、当該ダクト壁21が、上壁、底壁及び左右の側壁を含み、断面長方形状に形成されている。ただし、空調ダクト13の断面形状は、例えば台形状及び三角形状など、確保された空間の形状に応じて適宜変更可能である。
筒状のダクト壁21は、ダクト通路13aを規定するダクト内表面13bを形成すると共に、空調ダクト13全体としての外表面であるダクト外表面13cを形成している。従来、ダクト壁は、アルミニウム合金製の板金の内面に平板状の断熱材を貼り付けたものや、グラスウールの内表面又は外表面に金属及び樹脂の複合材フィルムを貼り付けたものが用いられていたところ、本実施形態に係るダクト壁21は、発泡樹脂材で構成され、板厚方向において単一の材料で製作される。発泡倍率は10〜40倍で適宜変更可能であり、成形法にはビーズ型内発泡成形法を適用可能である。
このようにダクト壁21を発泡樹脂材単体で構成すると、気密性及び断熱性を確保することができる。また、板金で構成される従来型よりも軽量になるし(8分の1〜5分の1程度)、グラスウール及びフィルムで構成される従来型よりも軽量になる(2分の1〜3分の1程度)。また、従来型で必要とされた2部品の貼付け工程を省略することができ、空調ダクト13の製造を省力化できる。また、発泡樹脂材は遮音性能を有していることから、遮音性に優れた空調ダクト13を実現できる。
発泡樹脂材には、特にポリスチレン樹脂とポリオレフィン樹脂とを含有する複合樹脂発泡材料を好適に用いることができる。これにより、ダクト壁21が複合樹脂発泡材単体で構成されても、ダクト壁21が、ポリスチレン樹脂が有する高剛性及び高断熱性と、ポリオレフィン樹脂が有する高耐衝撃性及び高靱性とを兼ね備えることができ、それにより形状安定性も確保される。なお、ポリスチレン樹脂及びポリオレフィン樹脂の含有比率は、板厚方向において勾配を有していてもよい。例えば、外表面及び内表面付近でポリオレフィン樹脂の含有比率が高くてもよく、これによりダクト壁21の耐衝撃性を向上できる。
複合樹脂発泡材は難燃処理を施してもよく、そうすれば鉄道車両用途で要求される難燃性を担保しやすい。難燃処理には、発泡処理前又は発泡処理中に難燃剤を(必要により難燃助剤も)添加して複合樹脂発泡材に練り込む方式を用いてもよいし、発泡処理後の面板材表面に難燃剤を塗布する方式を用いてもよい。
図4は、図3に示す空調ダクト13の製造工程を示す図である。図4(a)に示すように、まず、発泡樹脂材で製作された面板材25が準備される。本実施形態では、2つの面板材25が準備され(図4(a)では1つのみ図示する)、いずれの面板材25も、第1フランジ25a及び第2フランジ25bを有して断面L状に形成されている。図4(a)に示す第1の面板材25では、第1フランジ25aが、完成状態でダクト壁21(図3参照)の上壁及び底壁のいずれか一方(本実施形態では底壁)を形成し、第2フランジ25bが、完成状態でダクト壁21の左右の側壁のいずれか一方(本実施形態では車幅方向内側の側壁)を形成する。逆に図4(a)で図示省略した第2の面板材では、第1フランジが、第1の面板材25の第1フランジ25aに対向する壁(本実施形態では上壁)を形成して、第2フランジが、第1の面板材25の第2フランジ25bに対向する壁(本実施形態では車幅方向外側の側壁)を形成する。
次に、図4(a)に一点鎖線で示すように、面板材25に切断加工及び穿孔加工が施される。面板材25は発泡樹脂材製であるので、給電により発熱可能なカッター等の工具を用いて容易に切断及び穿孔することができる。例えば、完成状態におけるダクト通路13aの断面形状が所要形状となり且つ断面積が所要値となるよう、第1フランジ25a及び/又は第2フランジ25bが切断される。側壁高さを短くする場合には第2フランジ25bに切断加工が施される。本実施形態ではダクト通路13aの断面形状が長方形であるので、2つの面板材25間で第1フランジ25a同士の長さが等しくされ、第2フランジ25b同士の長さも等しくされる。前述のように、空調ダクト13の断面形状は、内部空間3aで確保されるスペースが車両によって異なるので、これに応じて変更される。この空調ダクト13は容易に切断加工可能な面板材25で構成されるので、車両ごとの形状変化に容易に対応可能である。また、完成状態でダクト壁21の底壁を形成する第1フランジ25aには吹出し口13dが貫通形成される。なお、断面L字状の各面板材を組み合わせて空調ダクト13を構成したが、断面コ字状の面板材を組み合わせても良いし、矩形の平板を組み合わせても良い。
次に、図4(b)に示すように、加工済の面板材26A,26Bを組み合わせ、発泡樹脂材で構成されたダクト壁21により筒状に形成されるダクト体27を構成する。本実施形態では、それぞれ断面L状の第1面板材26A及び第2面板材26Bが点対称に配置され、第1面板材26Aの第1フランジ26aの端縁部が第2面板材の第2フランジ26bの端縁部と接合され、第1面板材26Aの第2フランジ26bの端縁部が第2面板材26Bの第1フランジ26aの端縁部と接合される。接合には、例えば発泡樹脂材に適した接着剤が用いられる。気密性を確保するため、接着剤がシール材を兼ねていてもよい。
次に、図4(c)に示すように、複数のダクト体27を長手方向に繋ぎ合わせ、空調ダクト13を構成する。ダクト体27の一端部は、隣接するダクト体27の他端部と継手部28を介して接合される。本実施形態では、継手部28において、一方のダクト体27の一端部の矩形端面が、他方のダクト体27の他端部の矩形端面と突き合わせられ、一方のダクト体27の外表面及び内表面が、他方のダクト体27の外表面及び内表面それぞれと面一に配置される。そして、帯状のテープ28aが、2つのダクト体27のパーティング線28bを覆い且つ2つのダクト体27に跨るようにして、ダクト体27の外面上で少なくとも1周巻き付けられる。このテープ28aには、無溶剤接着剤を適用したアルミテープを好適に採用することができ、これにより接合強度の確保と気密性の確保とを達成できる。
なお、継手部28では、単に突き合わせるだけでなく、一方のダクト体27の一端部に係止爪などの突起部を設け、他方のダクト体27の他端部にスリット等の凹部を設け、突起部を凹部に係止してもよい。これにより継手強度が向上するし、テープ28aの巻付け作業が簡便になる。
空調ダクト13の長手方向末端に配置されるダクト体27zの矩形端面には、当該矩形端面で囲まれた末端開口を閉塞する閉塞材29が取り付けられる。この閉塞材29は、面板材25と同様にして発泡樹脂材で構成されていてもよい。閉塞材29が吸音材(例えばグラスウール)であると、空調騒音が車室内に伝わるのを抑制することができるので有益である。
図5は、図3に示す内部空間3aに収納された左右の空調ダクト13及びラインフローファン11を下から見て示す底面図である。図5に示すように、空調ダクト13は、車体2の車長方向中央部にて、空気調和装置12と上下方向にオーバーラップする。そこで空調ダクト13のうち空気調和装置12とオーバーラップする部位に限り、ダクト壁21の内表面又は外表面に吸音性を有した材料を貼り付けてもよい。これにより空気調和装置12で発生する空調騒音が車室内に伝わるのを抑制することができる。
空調ダクト13は、その底壁に複数の吹出し口13dを有し、これら吹出し口13dが、空調ダクト13の長手方向に一直線状に並べられている。吹出し口13dは、底壁のうち車幅方向外縁部に配置されており、それにより左空調ダクト13の吹出し口13dと右空調ダクト13の吹出し口13dとが車幅方向に極力離れて配置される。
各空調ダクト13は、複数のダクト取付具14を介して車体2(本実施形態では屋根構体3)に取り付けられる。複数の取付具14は、空調ダクト13の長手方向に間隔をおいて配置される。前述のとおり、空調ダクト13は従来型に比して軽量であるので、ダクト取付具14を軽量化したりダクト取付具14の配置間隔を広げたりすることも可能になる。このため、車体2の軽量化と屋根構体3での艤装作業の省力化とを達成できる。
なお、本実施形態ではダクト取付具14がダクト体27に一対一で設けられている。空調ダクト13は長手方向に15000〜20000mm程度の寸法を有する一方、ダクト体27は長手方向に700〜1200mm程度の寸法を有している。このため、ダクト取付具14の配置間隔をダクト体21の長手方向の寸法と同等にすることができる。なお、図5に示すように配置間隔が不等間隔であれば、配置間隔の一部をダクト体27の長手方向の寸法よりも広げることも可能である。
図6は、図3及び図5に示すダクト取付具14の斜視図である。ダクト取付具14は、アルミニウム等の帯状板金で構成されており、軽量化と剛性確保との両立が図られている。ダクト取付具14は、空調ダクト13に外側から係合する係合部31と、係合部31から互いに車幅方向において反対側に突出して屋根構体3に結合される一対の結合部32,33とを有する。どちらの結合部32,33も、ボルト等の取外し可能な結合具15を用いて屋根板4の下面側に結合される。空調ダクト13は、これら結合部32,33間に位置する係合部31に係合され、屋根板4に吊下げ支持された状態で屋根構体3の内部空間3aに収容される。
ダクト取付具14は枠状に形成され、空調ダクト13の外表面上で1周巻き付けられる。このため、空調ダクト13が上下方向又は車幅方向に移動するのを規制することができ、空調ダクト13の屋根構体3に対する位置が安定する。
ダクト取付具14は、少なくとも係合部31において分割された2以上の部品を組み合わせることで構成される。本実施形態では、係合部31が上下割りされる帯板状の第1部品34と第2部品35とで構成される。これにより、長尺の空調ダクト13に複数のダクト取付具14を係合させるにあたり、枠状の係合部31をダクト末端から順次嵌め込んでいく必要がなく、ダクト取付具14の空調ダクト13への組立て作業を簡便に行うことができる。
第1部品34は、係合部31の下部を構成してU状に形成され、空調ダクト13のダクト壁21のうち少なくとも底壁の外底面と左右の側壁の外側面下部とに係合する。本実施形態では、車幅方向内側の結合部32が係合部31よりも上に配置される関係で、車幅方向内側壁の外側面に上下方向全体にわたって係合している。第2部品35は、係合部31の上部を構成しており、ダクト壁21のうち少なくとも上壁の外上面に係合している。本実施形態では、車幅方向外側の結合部33が上下方向において係合部31の上端部と下端部との間に配置される関係で、第2部品35が、係合部31を構成する部位において逆L状に形成され、車幅方向外側壁の上部にも係合している。第2部品35が上壁及び側壁に係合するので、ダクト取付具14を空調ダクト13に組み付けるときに第2部品35を空調ダクト13に対して車幅方向に位置決めすることができ、組付け作業が簡便になる。
第1部品34の一端は、ダクト壁21の車幅方向内側壁に係合する部位から更に上方に突出し、その後屈曲して車幅方向内側に延びている。そして、第2部品35の一端は、ダクト壁21の上壁に係合する部位の車幅方向内側端部で屈曲し、第1部品34と重ねられて上方に突出して立設部38を構成し、その後屈曲して第1部品34と重ねられて車幅方向内側に延びている。結合部32は、この積層状態で車幅方向内側に延在する部分によって構成されている。一方、第1部品34の他端は、ダクト壁21の車幅方向内側壁に係合する部位の上端部で屈曲して車幅方向外側に延びている。そして、第2部品35の他端は、ダクト壁21の車幅方向外側壁に係合する部位の下端部で屈曲し、第1部品34と重ねられて車幅方向外側に延びている。結合部33は、この積層状態で車幅方向外側に延在する部分によって構成されている。
第1部品34及び第2部品35は、脱着可能な固定具36,37を用いて互いに結合され、それによりダクト取付具14を屋根構体3からは自由な状態であって係合部31で空調ダクト13にしっかりと係合した状態にすることができる。そして、結合具15を用いて結合部32,33を屋根構体3に取り付ける際に、空調ダクト13と係合したダクト取付具14の屋根構体3への組付けと同時に、当該結合具15で積層状態の第1部品34及び第2部品35が共締めされて複数部品からなるダクト取付具14を強固に組み立てることができる。
図5に戻り、複数のダクト取付具14は不等間隔をおいて配置され、この配置間隔には、第1配置間隔Δ1と、これよりも大きい第2配置間隔Δ2とが含まれる。複数のダクト取付具14は、第1配置間隔Δ1、第2配置間隔Δ2及び第2配置間隔Δ2からなる配置間隔群ΔGが順次繰り返されるようにして、長手方向に間隔をおいて配置され、配置間隔群ΔGの総和は3個ダクト体27の長手方向の寸法に相当する。
このため、第1配置間隔Δ1を介して隣接する2つのダクト取付具14が近接取付具群14Aを構成し、2つの近接取付具群14Aの間に単一のダクト取付具14(以降、「単一取付具14B」と称す)が配置される。当該単一取付具14Bは、一方の近接取付具群14Aとも他方の近接取付群14Aとも第2配置間隔Δ2だけ離れて配置される。
図3に戻り、屋根構体3の内部空間3aは、車幅中心線上又はその付近に配置される中央部艤装体40Cと、天井板5よりも車幅方向外側に配置される左右の側部艤装体40R,40Lとを収容している。左右の空調ダクト13は、車幅方向において中央部艤装体40Cを挟むように配置され、また、車幅方向において中央部艤装体40Cと左右の側部艤装体40R,40Lそれぞれとの間に挟まれるように配置されている。
例えば中央部艤装体40Cは、前述の配線体7及びラインフローファン11と、配線取付け金具41とを含む。配線取付け金具41は、内部空間3a上部で車長方向に延在し、上壁及び左右の側壁を有して断面逆U字状に形成され、車体2の車幅中心線を基準にして車幅方向に対称である。配線取付け金具41は、その上壁が左縁部及び右縁部それぞれにおいて屋根板4の下面車幅方向中央部に対して、垂木あるいは天井内部骨組を介して締結されることによって屋根構体3に組み付けられる。配線体7は、配線取付け金具41の上壁下面に吊下げ支持されて配線取付け金具41で取り囲まれている。ラインフローファン11は、配線取付け金具41の下方且つ天井板5の上方に配置されている。
例えば右側部艤装体40Rは、前述の右室内灯8を含む。右室内灯8は、天井板5の車幅方向外側縁部(右縁部)と右側天井6の車幅方向内側縁部との間に配置されている。右室内灯8と電気及び機械的に接続されるソケット(不図示)を含むハウジング42が、天井板5と右側天井6との間において下から内部空間3aに収納される。右室内灯8の上方では、屋根板4の下方に対して、垂木あるいは天井内部骨組を介して固定された吊り手取付け金具43が設けられており、前述の右吊り手棒受け9(図1参照)は、屋根板4に支持され、天井板5及び右側天井6との間から車室内へと垂下する。左側部艤装体40Lもこれと同様である。各艤装体40C,40R,40Lの下記構成要素は一例に過ぎず、各艤装体40C,40R,40Lは他の部材又は装置を含んでいてもよい。
ダクト壁21の車幅方向内側壁は直立するように配置され、配線取付け金具41の側壁も直立するように配置される。ダクト壁21に係合する係合部31は、配線取付け金具41の側壁と密着し又は近接対向している。このため、車体2の振動時に、ダクト壁21が上下方向軸線周りに回転変位しようとしても、車長方向軸線周りに回転変位しようとしても、車幅方向に並進変位しようとしても、かかる変位を配線取付け金具41で規制することができる。
車幅方向内側の結合部32は、配線取付け金具41の上壁上面に載置され、結合具15を用いて配線取付け金具41と共締めされる。これにより屋根構体3への艤装作業を省力化することができる。ダクト取付具14の第1部品34及び第2部品35は、車幅方向内側において固定具36を用いて組み付けられるところ、配線取付け金具41の上壁及び側壁の連続部分における曲率は、ダクト取付具14の立設部38と結合部32との連続部分における曲率よりも小さく、そのため、ダクト取付具14と配線取付け金具41との間には、係合部31を配線取付け金具41に密着又は近接対向させつつも、間隙が形成される。固定具36はこの間隙内に収容されるように立設部38に取り付けられ、そのためダクト取付具14を屋根構体3に組み付けるときに固定具36が中央部艤装体40Cに干渉しない。
空調ダクト13は、緩衝材16を介して天井板5の上面上に支持される。緩衝材16は、空調ダクト13の外底面と天井板5との間に介装され、車体2の振動時に空調ダクト13が追従振動するのを抑制する。緩衝材16は弾力性を有するのが好ましい。緩衝材16は、空調ダクト13の外底面上で吹出し口13dの車幅方向外側縁部に沿って車長方向に延びる外側部と、当該外底面上で吹出し口13dの車幅方向内側縁部に沿って車長方向に延びる内側部とを含み、吹出し口13dからの調和空気は、緩衝材16の外側部及び内側部の間隙を通過し、天井板5のグリルを介して車室内へと供給される。空調ダクト13からの調和空気が内部空間3aに漏えいするのを抑制するため、緩衝材16は気密性を有するのが好ましい。弾力性及び気密性の確保のため、緩衝材16には例えば合成スポンジ、ゴムスポンジを適用することができる。
吹出し口13dはダクト壁21の底壁の車幅方向外縁部に設けられており、空調ダクト13の下部は車幅方向外縁部において緩衝材16を介して天井板5に支持される。空調ダクト13の上部は前述のとおり車幅方向内側部で配線取付け金具の側壁で支持され得る。このように断面をとったときに対角状に位置する2点で空調ダクト13が支持されるので、空調ダクト13の内部空間3aでの位置を安定させることができる。
ダクト壁21の車幅方向外側壁は、側部艤装体40R,40Lと若干のスペースをあけて配置されている。車幅方向外側の結合部33は、当該スペースを車幅方向に通過して吊り手取付け金具43の上面に載置され、結合部33を用いて吊り手取付け金具43と共締めされる。これにより屋根構体3への艤装作業を省力化することができる。ダクト取付具14の第1部品34及び第2部品35は、車幅方向外側において固定具37を用いて組み付けられるところ、結合部33は前述のスペースを通過するように配置される。そこで固定具36は当該スペース内で取り付けられており、それによりダクト取付具14を屋根構体3に組み付けるときに固定具37が側部艤装体40R,40Lに干渉しない。
これまで実施形態について説明したが、上記構成は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更、追加又は削除可能である。
図9は、変形例に係る鉄道車両101の概略構成を示し、側方視概略断面図、図10は、正面視概略断面図である。図9及び図10に示す鉄道車両101は、いわゆる床下集中型の空調システム110を搭載しており、その空気調和装置112が車体102の床下に配置されている。当該空調システム110は、車室から空気を取り込み、取り込んだ空気を空気調和装置112の吸込み側へ案内する戻しダクト113Aと、空気調和装置112の吹出し側からの調和空気を案内して車室内へと供給する供給ダクト113Bとを有する。供給ダクト113Bは、床下に配置され、空気調和装置112からの調和空気を案内する床下ダクト113Cと、床中で車幅方向に分かれて配置され、床下ダクト113Cからの調和空気を案内する左右の床中ダクト113Dと、側構体102aに配置されて上下方向に延在し、床中ダクト113Dからの調和空気を上向きに案内する立上げダクト113Eと、屋根構体103の内部空間103aに配置されて車長方向に延在し、立上げダクト113Eからの調和空気を案内する天井ダクト113Fとを含む。調和空気は、天井ダクト113に設けられた吹出し口113Fdを通って車室内へと供給される。
上記実施形態では、発泡樹脂材で構成されたダクト壁を有する空調ダクトが、当該変形例で言うところの天井ダクト113Fと類似の配置及び機能を有するダクトに適用された場合を例示したが、かかるダクト壁は、戻しダクト113Aに適用されてもよいし、供給ダクト113Bのうち床下ダクト113C、床中ダクト113D又は立上げダクト113Eに適用されてもよい。
また、空調ダクトは、鉄道車両におけるその他形式(天井分散型及びスプリット型など)の空調システムにも適用可能である。また、空調ダクトは、鉄道車両に限られず、航空機、船舶、バス等の大型車両にも適用可能である。
本発明は、種々の設計要求(例えば、形状安定性、軽量性、気密性、断熱性及び製造工程簡略化等)を同時に満足するように改善された車両用空調ダクト及びこれを備えた鉄道車両を提供することができるとの作用効果を奏し、空気調和装置を備える車両に広く適用することができる。
1,101 鉄道車両
2,102 車体
3,103 屋根構体
3a,103a 内部空間
10,110 空調システム
12,112 空気調和装置
13 空調ダクト
113A 戻しダクト
113B 供給ダクト
13b ダクト内表面
13c ダクト外表面
14 ダクト取付具
21 ダクト壁
27 ダクト体
29 閉塞材

Claims (5)

  1. 車両に搭載された空気調和装置の吸込み側への又は吹出し側からの空気を案内する車両用空調ダクトであって
    ダクト外表面とダクト内表面とを形成する筒状のダクト壁と、前記車両に前記ダクト壁を取り付けるための複数のダクト取付具と、を備え、
    前記ダクト壁が、ポリスチレン樹脂とポリオレフィン樹脂とを含有した複合発泡樹脂材で構成され、
    前記ダクト取付具は、前記ダクト壁に外側から係合する枠状の係合部と、前記係合部から互いに車幅方向において反対側に突出する結合部とを有し、前記係合部および前記結合部が、上下割りされる帯板状の第1部品と第2部品とで構成され、前記結合部において前記第1部品と前記第2部品は積層され、前記結合部が固定具で前記車両に取り付けられる際に積層状態の前記第1部品および前記第2部品が当該固定具で共締めされる、車両用空調ダクト。
  2. 前記ダクト壁の長手方向末端部に取り付けられた閉塞材を備え、閉塞材が吸音材で構成される、請求項1に記載の車両用空調ダクト。
  3. 吸い込んだ空気を温度調整して吹き出す空気調和装置と、
    前記空気調和装置の吸込み側への又は吹出し側からの空気を案内する空調ダクトと、を備え、
    前記空調ダクトが、ダクト外表面とダクト内表面とを形成する筒状のダクト壁と、車両に前記ダクト壁を取り付けるための複数のダクト取付具とを備え、
    前記ダクト壁が、ポリスチレン樹脂とポリオレフィン樹脂とを含有した複合発泡樹脂材で構成され、
    前記ダクト取付具は、前記ダクト壁に外側から係合する枠状の係合部と、前記係合部から互いに車幅方向において反対側に突出する結合部とを有し、前記係合部および前記結合部が、上下割りされる帯板状の第1部品と第2部品とで構成され、前記結合部において前記第1部品と前記第2部品は積層され、前記結合部が固定具で前記車両に取り付けられる際に積層状態の前記第1部品および前記第2部品が当該固定具で共締めされる、鉄道車両。
  4. 車体に形成されて前記空調ダクトを配置する内部空間を更に備え、
    前記空調ダクトが、それぞれ前記ダクト壁で筒状に形成されて長手方向に繋ぎ合わされた複数のダクト体を備え、
    前記複数のダクト取付具が、前記複数のダクト体に一対一で対応付けられる、請求項3に記載の鉄道車両。
  5. 前記ダクト体は、長手方向に700mm〜1200mmの寸法を有する、請求項4に記載の鉄道車両。
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