以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図面中に「前方」「後方」「左方」「右方」「上方」「下方」の注記がある場合は、明細書中の説明における「前方(前)」「後方(後)」「左方(左)」「右方(右)」「上方(上)」「下方(下)」とは、その注記された方向を指す。
<テープ印刷装置の概略構成>
まず、図1〜図4を参照しつつ、本実施形態に係わるテープ印刷装置の概略構成について説明する。
<筐体>
図1〜図4において、本実施形態のテープ印刷装置1(印刷物作成装置に相当)は、装置外郭を構成する筐体2を有している。筐体2は、筐体本体2aと、後方側開閉部8と、前方側開閉カバー9と、を備えている。
筐体本体2a内には、後方側に設けられた第1収納部3と、前方側に設けられた第2収納部5及び第3収納部4と、が備えられている。
後方側開閉部8は、筐体本体2aの後方側の上部に対し開閉可能に接続されている。この後方側開閉部8は、回動することで、第1収納部3の上方を開閉可能である。この後方側開閉部8は、第1開閉カバー8a及び第2開閉カバー8bにより構成されている。
第1開閉カバー8aは、筐体本体2aの後方側の上部に設けられた所定の回動軸心K1まわりに回動することで、第1収納部3のうち前方側の上方を開閉可能である。詳細には、第1開閉カバー8aは、第1収納部3のうち前方側の上方を覆う閉じ位置(図1、図2の状態)から、第1収納部3のうち前方側の上方を露出させる開き位置(図3、図4の状態)までの間で回動可能である。
第1開閉カバー8aの内部には、ヘッド保持体10が設けられている(図3も参照)。そして、第1開閉カバー8aは、上記の回動軸心K1まわりに回動することで、ヘッド保持体10に備えられたサーマルヘッド11を、筐体本体2aに設けられた搬送ローラ12に対して相対的に離反・近接可能である。詳細には、第1開閉カバー8aは、サーマルヘッド11が搬送ローラ12に対して近接した閉じ位置(図1、図2の状態)から、サーマルヘッド11が搬送ローラ12から離反した開き位置(図3、図4の状態)までの間で回動可能である。
第2開閉カバー8bは、上記第1開閉カバー8aよりも後方側に設けられており、筐体本体2aの後方側の上端部に設けられた所定の回動軸心K2まわりに回動することで、第1収納部3のうち後方側の上方を、上記第1開閉カバー8aの開閉とは別個に開閉可能である。詳細には、第2開閉カバー8bは、第1収納部3のうち後方側の上方を覆う閉じ位置(図1及び図2の状態)から、第1収納部3のうち後方側の上方を露出させる開き位置(図3及び図4の状態)までの間で回動可能である。
そして、これら第1開閉カバー8a及び第2開閉カバー8bは、それぞれが閉じ状態であるときに、当該第1開閉カバー8aの外周部18と当該第2開閉カバー8bの縁部19とが互いに略接触して、第1収納部3の上方の略全部を覆うように構成されている。
前方側開閉カバー9は、筐体本体2aの前方側の上部に対し開閉可能に接続されている。この前方側開閉カバー9は、筐体本体2aの前方側の上端部に設けられた所定の回動軸心K3まわりに回動することで、第3収納部4の上方を開閉可能である。詳細には、前方側開閉カバー9は、第3収納部4の上方を覆う閉じ位置(図1、図2の状態)から、第3収納部4の上方を露出させる開き位置(図3、図4の状態)までの間で回動可能である。
<被印字テープロール及びその周辺>
このとき、図2〜図4に示すように、筐体本体2aにおける、閉じ状態での前方側開閉カバー9の下方にある第1所定位置13には、テープカートリッジTK(図2参照)が着脱可能に装着される。このテープカートリッジTKは、軸心O1まわりに巻回形成された被印字テープロールR1を備えている。
すなわち、テープカートリッジTKは、図5に示すように、被印字テープロールR1と、連結アーム16とを備えている。連結アーム16は、後方側に設けられた左・右一対の第1ブラケット部20,20と、前方側に設けられた左・右一対の第2ブラケット部21,21とを備えている。
第1ブラケット部20,20は、上記被印字テープロールR1を、軸心O1に沿った左・右両側から挟みこむようにし、テープカートリッジTKが筐体本体2aに装着された状態では被印字テープロールR1を巻芯39(図2参照)のまわりに回転可能に保持する。これら第1ブラケット部20,20は、上端部において左右方向に略沿って延設された第1接続部22により被印字テープロールR1の外径との干渉を回避しつつ接続されている。
被印字テープロールR1は、テープカートリッジTKが筐体本体2aの内部に装着された際には回転自在となる。被印字テープロールR1は、繰り出しにより消費される被印字テープ150(被印字層154、基材層153、粘着剤層152、剥離材層151を備える。図2中拡大図参照)を、あらかじめ左右方向の軸心O1を備えた上記巻芯39まわりに巻回している。
第1収納部3には、上記テープカートリッジTKの装着によって、被印字テープロールR1が上方から受け入れられ、被印字テープ150の巻回の軸心O1が左右方向となる状態で収納される。そして、被印字テープロールR1は、第1収納部3に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において当該第1収納部3内で所定の回転方向(図2中のA方向)に回転することで、被印字テープ150を繰り出す。
本実施形態では、粘着性を備えた被印字テープ150が用いられる場合を例示している。すなわち、被印字テープ150は、被印字層154、基材層153、粘着剤層152、剥離材層151が、厚さ方向一方側(図2中の上方側)から他方側(図2中の下方側)へ向かって、この順序で積層されている。被印字層154は、上記サーマルヘッド11によるインクの熱転写によって所望の印字部155(図2中の部分拡大図参照)が形成される層である。粘着剤層152は、基材層153を適宜の被着体(図示省略)に貼り付けるための層である。剥離材層151は、粘着剤層152を覆う層である。
<搬送ローラ及びサーマルヘッド>
図2〜図4に戻り、筐体本体2aにおける第1収納部3及び第2収納部5の中間上方側には、上記搬送ローラ12が設けられている。搬送ローラ12は、筐体本体2aの内部に設けられた搬送用モータM1によりギア機構(図示省略)を介して駆動されることで、第1収納部3に収納された被印字テープロールR1から繰り出される被印字テープ150を、テープ幅方向が左右方向となるテープ姿勢で(所望の搬送速度で)搬送する。
また、第1開閉カバー8aに設けられた上記ヘッド保持部10には、上記サーマルヘッド11が備えられている。サーマルヘッド11は、上述したように、第1開閉カバー8aが回動軸心K1まわりに回動することで、搬送ローラ12に対して相対的に離間・近接可能である。すなわち、第1開閉カバー8aが閉じ状態となると、サーマルヘッド11が搬送ローラ12に近接し、第1開閉カバー8aが開き状態となると、サーマルヘッド11が搬送ローラ12から離間する。このサーマルヘッド11は、搬送ローラ12により搬送される被印字テープ150を当該搬送ローラ12と協働して挟持するように、ヘッド保持部10のうち閉じ状態での第1開閉カバー8aにおいて搬送ローラ12の上方に対向する位置に配置されている。したがって、第1開閉カバー8aが閉じ状態である場合には、サーマルヘッド11と搬送ローラ12とは、互いに上下方向に対向して配置される。そして、サーマルヘッド11は、搬送ローラ12との間に挟まれた状態の被印字テープ150の被印字層154に対し、後述するインクリボンカートリッジRKのインクリボンIBを用いて所望の印字を形成して、印字済みテープ150′とする。
<インクリボンカートリッジ>
図2及び図3に示すように、筐体本体2aにおける閉じ状態での第1開閉カバー8aの下方でかつテープカートリッジTKの上方となる第2所定位置14には、インクリボンカートリッジRKが着脱可能に装着される。インクリボンカートリッジRKの詳細構造を図6に示す。
図6に示すように、インクリボンカートリッジRKは、カートリッジ筐体80と、未使用のインクリボンIBを繰り出し可能に巻回したリボン繰り出しロールR4と、リボン巻き取りロールR5とを備えている。カートリッジ筐体80は、後方側の繰り出しロール収納部81と、前方側の巻き取りロール収納部82と、それら両収納部81,82を連結する連結部83と、を有している。連結部83は、リボン繰り出しロールR4から繰り出された上記インクリボンIBをカートリッジ筐体80外に露出させるようにしつつ、上記巻き取りロール収納部82と上記繰り出しロール収納部81とを連結する。
繰り出しロール収納部81は、略半円筒の上部81aと、下部81bと、が組み合わされることにより構成されている。リボン繰り出しロールR4は、繰り出しロール収納部81内において回転自在に支持されており、インクリボンカートリッジRKが装着された状態において所定の回転方向(図2中のD方向)に回転することで、サーマルヘッド11による印字形成を行うためのインクリボンIBを繰り出す。
巻き取りロール収納部82は、略半円筒の上部82aと、下部82bと、が組み合わされることにより構成されている。リボン巻き取りロールR5は、巻き取りロール収納部82内において回転自在に支持されており、インクリボンカートリッジRKが装着された状態において所定の回転方向(図2中のE方向)に回転することで、印字形成後の使用済みのインクリボンIBを巻き取る。
すなわち、図2において、リボン繰り出しロールR4から繰り出されるインクリボンIBは、サーマルヘッド11と搬送ローラ12との間に挟まれた状態の被印字テープ150のさらにサーマルヘッド11側に配置されてサーマルヘッド11の下方に接触する。そして、サーマルヘッド11からの加熱によりインクリボンIBのインクが、被印字テープ150の被印字層154に転写されて印字形成が実行された後、使用済みのインクリボンIBが、リボン巻き取りロールR5に巻き取られる。
<剥離材ロール及びその周辺>
図5に示すように、テープカートリッジTKの連結アーム16は、例えば略水平なスリット形状を含む引き剥がし部17を備えている。この引き剥がし部17は、被印字テープロールR1から繰り出されて前方側へと搬送される印字済みテープ150′から、剥離材層151を引き剥がす部位である。上記のようにして印字が形成された印字済みテープ150′は、図2に示すように、上記引き剥がし部17によって上記剥離材層151が引き剥がされることで、剥離材層151と、それ以外の被印字層154、基材層153及び粘着剤層152からなる印字済みテープ150″とに分離される。
テープカートリッジTKは、図2及び図5に示すように、上記引き剥がされた剥離材層151が軸心O3を備えた巻芯29まわりに巻回されることで形成される、上記剥離材ロールR3を有している。すなわち、上述したテープカートリッジTKの装着によって、剥離材ロールR3が上方から上記第2収納部5に受け入れられ、軸心O3が左右方向となる状態で収納される。そして、巻芯29は、第2収納部5に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において、筐体本体2a内に設けられた剥離紙巻取用モータM3によりギア機構(図示省略)を介して駆動され、第2収納部5内で所定の回転方向(図2中のC方向)に回転することで、剥離材層151を巻き取る。
このとき、図5に示すように、テープカートリッジTKの上記第2ブラケット部21,21は、上記剥離材ロールR3を、軸心O3に沿った左・右両側から挟みこむようにし、テープカートリッジTKが筐体本体2aに装着された状態では巻芯29(言い換えれば剥離材ロールR3)を当該軸心O3まわりに回転可能に保持する。これら第2ブラケット部21,21は、上端部において左右方向に略沿って延設された第2接続部23により接続されている。そして、後方側の第1ブラケット部20,20及び第1接続部22と、前方側の第2ブラケット部21,21及び第2接続部23とは、左・右一対のロール連結ビーム部24,24により連結されている。
また、図5中では、巻芯29のまわりに剥離材層151が巻回され剥離材ロールR3が形成される前の状態(未使用のテープカートリッジTKである場合)を示している。すなわち、当該剥離材層151の幅方向両側を挟み込むように設けられている略円形の上記ロールフランジ部f3,f4を図示するとともに、便宜的に剥離材ロールR3が形成される箇所に符号「R3」を付している。
<印字済みテープロール及びその周辺>
一方、図2及び図4に示すように、上記第3収納部4には、上記印字済みテープ150″を順次巻回するための巻芯41を備えた巻き取り機構40が上方から受け入れられる。巻き取り機構40は、印字済みテープ150″の巻回の軸心O2が左右方向となる状態で、上記巻芯41が軸心O2まわりに回転可能に支持されるように収納される。そして、巻き取り機構40が、第3収納部4に収納された状態において、筐体本体2aの内部に設けられた粘着巻き取り用モータM2により不図示のギア機構を介して巻芯41が駆動され、第3収納部4内で所定の回転方向(図2中のB方向)に回転することで、印字済みテープ150″を巻芯41の外周側に巻き取って積層する。これにより、巻芯41の外周側に印字済みテープ150″が順次巻回されることで、印字済みテープロールR2が形成される。
<カッター機構>
また、図2に示すように、テープ搬送方向に沿ってサーマルヘッド11の下流側でかつ印字済みテープロールR2の上流側に、カッター機構30が設けられている。
カッター機構30は、詳細な図示を省略するが、可動刃と、可動刃を支持しテープ幅方向(言い替えれば左右方向)に走行可能な走行体とを有している。そして、カッターモータMC(後述の図7参照)の駆動により走行体が走行し可動刃がテープ幅方向に移動することで、上記印字済みテープ150″を幅方向に切断する。
<テープ印刷装置の動作の概略>
次に、上記構成のテープ印刷装置1の動作の概略について説明する。
すなわち、上記第1所定位置13にテープカートリッジTKが装着されると、筐体本体2aの後方側に位置する第1収納部3に被印字テープロールR1が収納され、筐体本体2aの前方側に位置する第2収納部5に剥離材ロールR3を形成する軸心O3側が収納される。また、筐体本体2aの前方側に位置する第3収納部4には、印字済みテープロールR2を形成するための巻き取り機構40が収納される。
この状態で、ユーザが、被印字テープ150(この時点ではまだ印刷が始まっていない)から剥離材層151を手動で引き剥がし、基材層153及び粘着剤層152からなるテープの先端を、上記巻き取り機構40の巻芯41に取り付ける。そして、搬送ローラ12が駆動されると、第1収納部3に収納された被印字テープロールR1の回転により繰り出される被印字テープ150が、前方側へ(所望の搬送速度で)搬送される。そして、搬送される被印字テープ150の被印字層154に対し、サーマルヘッド11により所望の印字(上記印字部155)が形成されて、印字済みテープ150′となる。印字形成された印字済みテープ150′は、さらに前方側へ搬送されて引き剥がし部17まで搬送されると、当該引き剥がし部17において剥離材層151が引き剥がされて印字済みテープ150″となる。引き剥がされた剥離材層151は、下方側へ搬送されて第2収納部5へ導入され、当該第2収納部5内において巻回されて剥離材ロールR3が形成される。
一方、剥離材層151が引き剥がされた印字済みテープ150″は、さらに前方側へ搬送されて第3収納部4へ導入され、当該第3収納部4内の巻き取り機構40の巻芯41の外周側に巻回されて印字済みテープロールR2が形成される。その際、搬送方向下流側(すなわち前方側)に設けられたカッター機構30が印字済みテープ150″を切断する。これにより、ユーザの所望のタイミングで、印字済みテープロールR2に巻回されていく印字済みテープ150″を切断し、切断後は印字済みテープロールR2を第3収納部4から取り出すことができる。なお、この切断後において、印字済みテープロールR2に巻回されている印字済みテープ150″が各請求項記載の印刷物に相当している。
なおこのとき、図示による説明を省略するが、被印字テープロールR1に、非粘着テープ(上記粘着剤層152及び剥離材層151のないもの)が巻回されていても良い。この場合においても、第1収納部3には、テープカートリッジTKの装着によって、非粘着テープが巻回された被印字テープロールR1が上方から受け入れられ、非粘着テープの巻回の軸心O1が左右方向となる状態で収納される。そして、被印字テープロールR1は、第1収納部3に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において当該第1収納部3内で所定の回転方向(図2中のA方向)に回転することで、非粘着テープを繰り出す。
またこのとき、上記非粘着テープ(又は上記被印字テープ150でもよい)の搬送経路を、印字済みテープロールR2へ向かう側と排出口(図示省略)へ向かう側との相互間で切り替える、シュート15(図2参照)が配されていても良い。すなわち、切替レバー(図示省略)によるシュート15の切替操作でテープ経路を切り替えることで、印字形成後の非粘着テープ(又は印字済みテープ150″)を上記のように第3収納部4内において巻回することなく、筐体2の例えば第2開閉カバー8b側に設けた排出口(図示省略)から、そのまま筐体2外部へ排出するようにしても良い。
<制御系>
次に、図7を用いて、テープ印刷装置1の制御系について説明する。図7において、テープ印刷装置1には、所定の演算を行う演算部を構成するCPU212が備えられている。CPU212は、RAM213、及びROM214(記憶手段に相当)に接続されている。CPU212は、RAM213の一時記憶機能を利用しつつROM214に予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行い、それによってテープ印刷装置1全体の制御を行う。
また、CPU212は、上記搬送ローラ12を駆動する上記搬送用モータM1の駆動制御を行うモータ駆動回路218と、上記巻き取り機構40の巻芯41を駆動する上記粘着巻取用モータM2の駆動制御を行うモータ駆動回路219と、上記剥離材ロールR3を駆動する上記剥離紙巻取用モータM3の駆動制御を行うモータ駆動回路220と、上記サーマルヘッド11の発熱素子(図示省略)の通電制御を行うサーマルヘッド制御回路221と、上記可動刃を備えた走行体を走行させるカッターモータMCの駆動制御を行うモータ駆動回路222と、適宜の表示を行う表示部215と、ユーザが適宜に操作入力可能な操作部216と、サーマルヘッド11の温度を検出するヘッド温度センサSR1と、テープ印刷装置1の周囲の環境温度を検出する環境温度センサSR2と、に接続されている。なお、これらセンサSR1,SR2の検出結果は、例えば所定の周期で、随時、CPU212のクーリング制御部212Bに入力されている。
また、CPU212は、この例では、外部端末としてのPC217に接続されるが、テープ印刷装置1が(いわゆるオールインワンタイプで)単独で動作する場合には、接続されなくてもよい。なお、CPU212は、この例では、印字制御部212Aと、クーリング制御部212Bとを、機能的に備えている。印字制御部212Aは、後述の図10及び図11のフローを実行することで、サーマルヘッド11、搬送ローラ12、及びカッター機構30等を互いに連携制御する。クーリング制御部212Bは、後述の図12のフローを実行することで、上記印字制御部212Aに対して後述のクーリング開始信号やクーリング終了信号を出力する。
ROM214には、所定の制御処理を実行するための制御プログラム(後述する図10、図11、図12、図13、図14、図17、図18のフローの処理を実行するプログラムを含む)が記憶されている。RAM213には、例えば上記操作部216(又はPC217)での操作者の操作に対応して生成された印字データ(後述のステップS203参照)を、上記被印字層154の所定の印字領域に印字するためのドットパターンデータ(=1つの単位印字データに相当。詳細は後述)に展開して記憶する、イメージバッファ213aが備えられている。CPU212は、上記制御プログラムに基づき、搬送ローラ12により被印字テープ150を繰り出しつつ、イメージバッファ213aに記憶された上記ドットパターンデータに対応した1つのイメージ(=単位印字イメージに相当。詳細は後述)を、サーマルヘッド11によって被印字テープ150に対し繰り返して印刷する(詳細は後述)。そして、このとき、公知の手法により、CPU212の制御に基づき、サーマルヘッド11及び搬送ローラ12が互いに同期した印刷速度及び搬送速度によって印字形成及びテープ搬送をそれぞれ行う。
<実施形態の特徴>
ここで、本実施形態では、装置の健全性を確保するために、この例では上記ヘッド温度センサR1の検出結果に基づき、サーマルヘッド11がある程度高温になったら(温度が低下するまでの間)上記の印刷動作を中止するいわゆるクーリングの実行機能を有する(詳細は後述)。印字済みテープ150″の円滑な作成のためには、上記クーリングはなるべく実行しないことが好ましい。例えば装置周辺の環境温度(この例では上記環境温度SR2により検出される)が比較的高い場合、サーマルヘッド11による印字率(詳細は後述)が比較的高い場合、作成される印字済みテープ150″(すなわち上記印刷物)が長い場合、等においては、サーマルヘッド11が高温になりやすい傾向となる。そこで、本実施形態では、それら環境温度、印字済みテープ150″の長さ、及びサーマルヘッド11による上記印字率に応じて、上記印刷速度を増減調整することにより、サーマルヘッド11の温度上昇を抑制し、上記クーリングの実行の回避を図る。以下、その詳細を、順を追って説明する。
<印字率(オンドット数)の具体例>
上述したように、RAM213のイメージバッファ213aには、(上記1つの単位印字データに相当する)ドットパターンデータが展開され、一時的に記憶される。
図8(a)に上記ドットパターンデータの一例を示し、また図8(b)に当該ドットパターンデータにより生成された印字済みテープ150″(比較的狭い幅のテープの例)を示す。
図8(a)に示すドットパターンデータ(単位印字データ)は、テープ幅方向7ドット×テープ長さ方向15ドット=105のドット列のデータである。このドットパターンデータは、比較的小さなフォントのアルファベット「HHH」の文字とそれらを囲む枠線からなるイメージ(単位印字イメージ)を印字形成するために用いられる。このデータには、上記105のドット列のうち、A1〜G1ドット、A2ドット、G2ドット、A3ドット、C3〜E3ドット、G3ドット、A4ドット、D4ドット、G4ドット、A5ドット、C5〜E5ドット、G5ドット、A6ドット、G6ドット、A7ドット、C7〜E7ドット、G7ドット、A8ドット、D8ドット、G8ドット、A9ドット、C9〜E9ドット、G9ドット、A10ドット、G10ドット、A11ドット、C11〜E11ドット、G11ドット、A12ドット、D12ドット、G12ドット、A13ドット、C13〜E13ドット、G13ドット、A14ドット、G14ドット、A15〜G15ドット、の合計61ドットが(オンドット数として)含まれている。したがって、この場合の1ラインあたりの平均オンドット数は61/15=4.07となり、上記61ドット全体でみた印字率は、61/105=58.1[%]となる。
図8(c)に上記ドットパターンデータの別の例を示し、また図8(d)に当該ドットパターンデータにより生成された印字済みテープ150″(比較的広い幅のテープの例)を示す。
図8(c)に示すドットパターンデータ(単位印字データ)は、テープ幅方向12ドット×テープ長さ方向16ドット=192のドット列のデータである。このドットパターンデータは、比較的大きなフォントのアルファベット「A」の文字からなるイメージ(単位印字イメージ)を印字形成するために用いられる。このデータには、上記192のドット列のうち、J1〜L1ドット、I2〜J2ドット、H3〜I3ドット、F4〜H4ドット、E5〜H5ドット、C6〜E6ドット、G6〜H6ドット、B7〜C7ドット、G7〜H7ドット、A8〜B8ドット、G8〜H8ドット、A9〜B9ドット、G9〜H9ドット、B10〜C10ドット、G10〜H10ドット、C11〜E11ドット、G11〜H11ドット、E12〜H12ドット、F13〜H13ドット、H14〜I14ドット、I15〜J15ドット、及び、J16〜L16ドットの合計54ドットが(オンドット数として)含まれている。したがって、この場合の1ラインあたりの平均オンドット数は54/16=3.38となり、上記192ドット全体でみた印字率は、54/192=28.1[%]となる。
<印字率(オンドット数)等に基づく印刷速度の増減制御>
上述したように、本実施形態においては、上記のようなクーリングの実行を回避するために、上記環境温度(センサSR2により検出)、上記印字済みテープ150″の長さ、及び上記印字率の大小に応じて、CPU212によって印刷速度が増減制御される。すなわち、上記図8(a)や図8(c)中に■で示されたドット(オンドット)においては、1ラインを印刷するときの1つの印刷周期において、発熱素子は、ある一定時間だけON状態に駆動され(=通電時間)、その後に残りの時間はOFF状態となるように、通電制御される。
本実施形態では、例えば、上記環境温度が比較的高い場合、上記印字率が比較的高い場合、上記作成される印刷物が長い場合等においては、予め印刷速度を遅くした状態で印刷動作を開始する。印刷速度を遅くすることにより上記1印刷周期が長くなってサーマルヘッド11の発熱素子に対する通電オフ時間が長くなるので、サーマルヘッド11の温度上昇を抑制することができる。この結果、上記クーリング実行の回避を図ることができる。
<印刷速度増減の具体例>
本実施形態では、図9(a)に示すように、上記印刷速度を増減制御するために、低速側から高速側に向かって、「0」「1」「2」「3」「4」「5」の6段階の速度ランクが設定されている。各速度ランクの値とこれに対応する具体的な上記印刷周期の値は、例えばROM214に予め記憶されている。
そして、前述の手法を具体的に実行するために、本実施形態では、図9(b)に示すように、上記環境温度、上記印字済みテープ150″の長さ(以下適宜、「印刷物長さ」と略称する)、及び上記印字率と、上記印刷速度(詳細には上記速度ランクの値。以下同様)との相関テーブルが、上記ROM214に記憶されている。
この相関テーブルでは、概略的に、環境温度が高く、あるいは印刷物長さが長く、あるいは印字率が大きくなると、上記速度ランクがより小さい値となるように、予め設定されている。逆に環境温度が低く、あるいは印刷物長さが短く、あるいは印字率が小さくなると、上記速度ランクがより大きい値となるように、予め設定されている。
<環境温度0℃〜25℃未満の場合>
すなわち、図9(b)に示す例では、上記環境温度が0[℃]以上25[℃]未満(但し図中には単に「0℃」と略示)で、上記印刷物長さが20[m]以下(但し図中には単に「20m」と略示)の条件では、上記印字率が20[%]以下(但し図中には単に「20%」と略示。以下同様)となる場合には印刷速度は上記速度ランク「5」に設定されている。同様に、印字率が20[%]より大きく40[%]以下(但し図中には単に「40%」と略示。以下同様)となる場合には印刷速度は上記速度ランク「5」に設定されている。さらに同様に、印字率が40[%]より大きく60[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「4」に設定され、印字率が60[%]より大きく80[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「4」に設定され、印字率が80[%]より大きく100[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「3」に設定される。
また、上記環境温度が0[℃]以上25[℃]未満で、上記印刷物長さが20[m]より大きく40[m]以下(但し図中には単に「40m」と略示。以下同様)の条件では、印字率が20[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「5」に設定され、印字率が20[%]より大きく40[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「4」に設定され、印字率が40[%]より大きく60[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「4」に設定され、印字率が60[%]より大きく80[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「3」に設定され、印字率が80[%]より大きく100[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定される。
また、上記環境温度が0[℃]以上25[℃]未満で、上記印刷物長さが40[m]より大きく60[m]以下の条件では、印字率が20[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「4」に設定され、印字率が20[%]より大きく40[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「4」に設定され、印字率が40[%]より大きく60[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「3」に設定され、印字率が60[%]より大きく80[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定され、印字率が80[%]より大きく100[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定される。
そして、上記環境温度が0[℃]以上25[℃]未満で、上記印刷物長さが60[m]より大きく80[m]以下の条件では、印字率が20[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「4」に設定され、印字率が20[%]より大きく40[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「3」に設定され、印字率が40[%]より大きく60[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定され、印字率が60[%]より大きく80[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定され、印字率が80[%]より大きく100[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「1」に設定される。
<環境温度25℃〜40℃未満の場合>
上記同様、上記環境温度が25[℃]以上40[℃]未満で、上記印刷物長さが20[m]以下の条件では、印字率が20[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「4」に設定され、印字率が20[%]より大きく40[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「4」に設定され、印字率が40[%]より大きく60[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「3」に設定され、印字率が60[%]より大きく80[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「3」に設定され、印字率が80[%]より大きく100[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定される。
また、上記環境温度が25[℃]以上40[℃]未満で、上記印刷物長さが20[m]より大きく40[m]以下の条件では、印字率が20[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「4」に設定され、印字率が20[%]より大きく40[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「3」に設定され、印字率が40[%]より大きく60[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「3」に設定され、印字率が60[%]より大きく80[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定され、印字率が80[%]より大きく100[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定される。
また、上記環境温度が25[℃]以上40[℃]未満で、上記印刷物長さが40[m]より大きく60[m]以下の条件では、印字率が20[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「3」に設定され、印字率が20[%]より大きく40[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「3」に設定され、印字率が40[%]より大きく60[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定され、印字率が60[%]より大きく80[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定され、印字率が80[%]より大きく100[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「1」に設定される。
そして、上記環境温度が25[℃]以上40[℃]未満で、上記印刷物長さが60[m]より大きく80[m]以下の条件では、印字率が20[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「3」に設定され、印字率が20[%]より大きく40[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定され、印字率が40[%]より大きく60[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定され、印字率が60[%]より大きく80[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「1」に設定され、印字率が80[%]より大きく100[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「1」に設定される。
<環境温度40℃以上の場合>
上記同様、上記環境温度が40[℃]以上で、上記印刷物長さが20[m]以下の条件では、印字率が20[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「3」に設定され、印字率が20[%]より大きく40[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「3」に設定され、印字率が40[%]より大きく60[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定され、印字率が60[%]より大きく80[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定され、印字率が80[%]より大きく100[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「1」に設定される。
また、上記環境温度が40[℃]以上で、上記印刷物長さが20[m]より大きく40[m]以下の条件では、印字率が20[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「3」に設定され、印字率が20[%]より大きく40[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定され、印字率が40[%]より大きく60[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定され、印字率が60[%]より大きく80[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「1」に設定され、印字率が80[%]より大きく100[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「1」に設定される。
また、上記環境温度が40[℃]以上で、上記印刷物長さが40[m]より大きく60[m]以下の条件では、印字率が20[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定され、印字率が20[%]より大きく40[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定され、印字率が40[%]より大きく60[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「1」に設定され、印字率が60[%]より大きく80[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「1」に設定され、印字率が80[%]より大きく100[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「0」に設定される。
そして、上記環境温度が40[℃]以上で、上記印刷物長さが60[m]より大きく80[m]以下の条件では、印字率が20[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「2」に設定され、印字率が20[%]より大きく40[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「1」に設定され、印字率が40[%]より大きく60[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「1」に設定され、印字率が60[%]より大きく80[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「0」に設定され、印字率が80[%]より大きく100[%]以下となる場合には印刷速度は上記速度ランク「0」に設定される。
本実施形態では、CPU212は、以上のような内容の上記相関テーブルを参照しつつ、印刷速度の可変制御を行う。
<制御フロー(その1)>
上記環境温度、印刷物長さ、及び、印字率に応じた上記印刷速度の増減調整の手法を実現するために、CPU212の上記印字制御部212Aにより実行される処理内容を、図12のフローにより説明する。図10において、例えばユーザによりテープ印刷装置1の電源がオンにされることによって、このフローが開始される(「START」位置)。
まず、ステップS201で、印字制御部212Aは、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの上記印刷物の作成開始操作に対応した作成開始指示信号が入力されたか否かを判定する。ユーザの印刷物の作成開始の意図に対応した上記作成開始指示信号が入力されない場合はステップS201の判定が満たされず(S201:NO)ループ待機する。上記作成開始指示信号が入力されたらステップS201の判定が満たされ(S201:YES)、ステップS202に移る。
ステップS202では、印字制御部212Aは、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの操作に対応した、作成する上記印刷物の搬送方向に沿った全長を表す全長データ(長さ情報に相当)が入力されたか否かを判定する。ユーザの意図するテープ全長に対応した上記全長データが入力されない場合はステップS202の判定が満たされず(S202:NO)、上記ステップS201に戻って同様の手順を繰り返す。上記全長データが入力されたらステップS202の判定が満たされ(S202:YES)、ステップS203に移る。
ステップS203では、印字制御部212Aは、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの操作に基づく、上記被印字テープ150に繰り返し印字形成する上記1つの単位印字データ(上記図8(a)、図8(c)も参照)が入力されたか否かを判定する。単位印字データが入力されない場合はステップS203の判定が満たされず(S203:NO)上記ステップS201に戻って同様の手順を繰り返す。上記単位印字データが入力されたらステップS203の判定が満たされ(S203:YES)、ステップS204に移る。
ステップS204では、印字制御部212Aは、上記図9(b)に示した相関テーブルを用いることで、印刷速度の設定処理を行う(詳細は後述)。その後、ステップS210に移る。
ステップS210では、印字制御部212Aは、モータ駆動回路218,219,220に制御信号を出力し、搬送用モータM1、粘着巻取用モータM2(図中では「AD」モータと略示。以下同様)、及び剥離紙巻取用モータM3の駆動を開始して、上記被印字テープ150、印字済みテープ150′、及び印字済みテープ150″の搬送(以下適宜、単に「テープ搬送」と称する)、及び上記印字済みテープ150″の巻き取りを開始する。
そして、ステップS215で、印字制御部212Aは、上記ステップS203で取得された単位印字データに基づき、公知の手法により、対応する印字開始位置にサーマルヘッド11が対向する状態まで上記テープ搬送が到達したか否かを判定する。印字開始位置に到達していない場合、判定は満たされず(S215:NO)、この判定が満たされるまでループ待機する。印字開始位置に到達した場合、判定は満たされ(S215:YES)、ステップS220に移る。
ステップS220では、印字制御部212Aは、サーマルヘッド制御回路221に制御信号を出力しサーマルヘッド11の上記発熱素子に通電を行うことにより、上記テープ搬送速度と同期した印刷速度で、被印字テープ150に対し、上記単位印字データに対応した1つの単位印字イメージによる印字部155の形成を開始する。このときの印刷速度は、上記ステップS204で設定した値となるように、印字制御部212Aによって制御される。なお、後述のステップS238から戻ってステップS220が繰り返し実行されることで、結果として印字部155の繰り返し形成が行われることとなる。
その後、ステップS224では、印字制御部212Aは、前述のクーリングの実行を指示するクーリング開始信号(後述する図12のステップS165参照)が入力されたか否かを判定する。上記クーリング開始信号が入力されない場合はステップS224の判定が満たされず(S224:NO)、後述のステップS238に移る。上記クーリング開始信号が入力されたらステップS224の判定が満たされ(S224:YES)、ステップS232に移る。
ステップS232では、印字制御部212Aは、サーマルヘッド制御回路221に制御信号を出力し、サーマルヘッド11の発熱素子への通電を停止して、上記1つの単位印字イメージによる印字部155の形成を停止する。これと同時に印字制御部212Aはモータ駆動回路218,219,220に制御信号を出力し、搬送用モータM1、粘着巻取用モータM2、及び剥離紙巻取用モータM3の駆動を停止する。これにより、上記テープ搬送及び巻取りと印字形成動作が停止した状態で、装置全体が自然冷却されるまで待機した状態(=クーリング開始状態)となる。
その後、ステップS234で、印字制御部212Aは、上記クーリングの終了を指示するクーリング終了信号(後述する図12のステップS175参照)が入力されたか否かを判定する。上記クーリング終了信号が入力されない場合はステップS234の判定が満たされず(S234:NO)、この判定が満たされるまでループ待機する。上記クーリング終了信号が入力されたらステップS234の判定が満たされ(S234:YES)、ステップS236に移る。
ステップS236では、印字制御部212Aは、モータ駆動回路218,219,220に制御信号を出力し、搬送用モータM1、粘着巻取用モータM2、及び剥離紙巻取用モータM3の駆動を開始する。これと同時に印字制御部212Aはサーマルヘッド制御回路221に制御信号を出力し、サーマルヘッド11の発熱素子への通電を開始して、上記印字形成を再開する。これにより、前述のようにして中断した、上記テープ搬送及び巻取りと印字形成動作が再開される。
その後、ステップS238で、印字制御部212Aは、上記ステップS204で取得された単位印字データに基づき、公知の手法により、印字終了位置にサーマルヘッド11が対向する状態まで上記テープ搬送が到達したか否かを判定する。印字終了位置に到達していない場合、判定は満たされず(S238:NO)、ステップS220に戻り同様の手順を繰り返す。これにより、上述の繰り返し印字形成が続行される。一方、印字終了位置に到達した場合、判定は満たされ(S238:YES)、ステップS240に移る。
ステップS240では、印字制御部212Aは、サーマルヘッド制御回路221に制御信号を出力し、サーマルヘッド11の発熱素子への通電を停止して、上記被印字テープ150に対する印字部155の形成を停止する。このとき、テープ搬送は継続して行われている。これにより、それ以降の印字済みテープ150′は印字部155が存在しない空白状態となる。その後、ステップS255に移る。
ステップS255では、印字制御部212Aは、上記ステップS202で取得された全長データに対応した上記カッター機構30による切断位置(巻き取り機構40によって印字済みテープロールR2として巻回される印字済みテープ150″の、搬送方向に沿った全長が操作者の意図する長さとなるような切断位置)まで、上記テープ搬送が達したか否かを判定する。切断位置に到達していない場合、判定は満たされず(S255:NO)、ループ待機する。切断位置に到達した場合、判定は満たされ(S255:YES)、ステップS260に移る。
ステップS260では、印字制御部212Aは、モータ駆動回路218,219,220に制御信号を出力し、搬送用モータM1、粘着巻取用モータM2、及び剥離紙巻取用モータM3の駆動を停止する。これにより、上記被印字テープ150、印字済みテープ150′、及び印字済みテープ150″の搬送が停止する。
その後、ステップS265で、印字制御部212Aは、モータ駆動回路222に制御信号を出力して上記カッターモータMCを駆動し、上記カッター機構30の作動により印字済みテープ150″の切断を行う。
そして、ステップS270に移り、印字制御部212Aは、モータ駆動回路219に制御信号を出力し、粘着巻取用モータM2の駆動を開始して、印字済みテープ150″を巻き取り機構40の上記巻芯41のまわりに巻き取る。
その後、ステップS275で、印字制御部212Aは、上記ステップS265でのカッター機構30の切断動作から所定時間だけ経過したか否かを判定する。所定時間だけ経過していない場合、判定は満たされず(S275:NO)、ループ待機する。この所定時間は、印字済みテープ150″を巻取り機構40の巻芯41へと巻き取れるだけの時間でよい。所定時間が経過したらこの判定は満たされ(S275:YES)、ステップS280へ移る。
ステップS280では、印字制御部212Aは、モータ駆動回路219に制御信号を出力し、粘着巻取用モータM2の駆動を停止する。これにより上記切断により生じた印字済みテープ150″を確実に印字済みテープロールR2で巻き取ることができる。そして、このフローを終了する。
なお、上記ステップS201を実行する印字制御部212Aが各請求項記載の指示信号入力手段として機能し、上記ステップS202を実行する印字制御部212Aが各請求項記載の長さ取得手段として機能し、ステップS203を実行する印字制御部212Aが各請求項記載のデータ取得手段として機能する。また、ステップS232を実行する印字制御部212Aが各請求項記載の停止制御手段として機能し、ステップS236を実行する印字制御部212Aが各請求項記載の再開制御手段として機能する。そして、ステップS210、ステップS215、ステップS220、ステップS232、ステップS236、ステップS238、ステップS240を実行する印字制御部212Aが、各請求項記載の連携制御手段として機能する。
上記ステップS204の印刷速度設定処理の詳細内容を表すフローチャートを、図11に示す。
図11において、まず、ステップS115で、印字制御部212Aは、上記ステップS203で入力された上記単位印字データに基づき、上記イメージバッファ213aに展開して記憶された上記1つの単位印字データの、上記印字率を算出する(前述の図8(a)及び図8(c)参照)。なお、このステップS115を実行する印字制御部212Aが、各請求項記載の印字率算出手段として機能する。
その後、ステップS120では、印字制御部212Aは、上記環境温度センサSR2の検出結果に基づき、テープ印刷装置1の周囲の上記環境温度を取得する。このステップS120を実行する印字制御部212Aが、各請求項記載の環境温度検出手段として機能する。
そして、ステップS125で、印字制御部212Aは、上記ステップS120で検出した環境温度と、上記ステップS115で算出した印字率と、上記ステップS202で取得された印刷物長さと、に応じて、上記図9(b)に示した相関テーブルを用いて、対応する印刷速度を可変に設定する。なお、このステップS125を実行する印字制御部212Aが、各請求項記載の速度制御手段として機能する。ステップS125の処理が終了すると、上記図10のステップS210に移行する。
<制御フロー(その2)>
上記図10及び図11のフローとは別に、CPU212のクーリング制御部212Bによって実行される上記クーリング制御の処理内容を表すフローチャートを、図12に示す。なお、この図12に示すフローは、図10及び図11のフローと同時並行してCPU212によって実行される。このような同時並行処理は、例えば、コンピュータのOS等でしばしば行われる、「マルチタスク処理」と同様の公知の方式により、1つのCPU212によって行わせることができる。
図12において、クーリング制御部212Bは、まずステップS150及びステップS155で、サーマルヘッド11による印字形成を停止する印字停止温度T1、及び、停止後に再び印字形成を再開するための印字再開温度T2、をそれぞれ設定する。この設定は、予め適宜の記憶手段に記憶されていた値を読み出してRAM213に格納してもよいし、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの操作に対応した値を取得してRAM213に格納してもよい。その後、ステップS160に移る。
ステップS160では、クーリング制御部212Bは、上記ヘッド温度センサSR1の検出結果に基づき、サーマルヘッド11の温度Tが上記印字停止温度T1以上となったか(T≧T1となったか)否か、を判定する。T<T1である間はステップS160の判定が満たされず(S160:NO)、ループ待機する。T≧T1となったらステップS160の判定が満たされ(S160:YES)、ステップS165に移る。
ステップS165では、クーリング制御部212Bは、上述のクーリング開始信号を印字制御部212Aに出力する。これにより、上記印字制御部212Aによる上記図10のフローのステップS224の判定が満たされ、ステップS232の手順が実行されてテープ搬送・印字形成の一時停止によりクーリング(停止待機による自然冷却)が行われる。
その後、ステップS170で、クーリング制御部212Bは、上記ヘッド温度センサSR1の検出結果に基づき、サーマルヘッド11の温度Tが上記再開温度T2以下となったか(T≦T2となったか)否か、を判定する。T>T2である間はステップS170の判定が満たされず(S170:NO)ループ待機する。T≦T2となったらステップS170の判定が満たされ(S170:YES)、ステップS175に移る。
ステップS175では、クーリング制御部212Bは、上述のクーリング終了信号を印字制御部212Aに出力する。これにより、印字制御部212Aによる上記図10のフローのステップS234の判定が満たされ、ステップS236以降の手順が実行されて前述と同様のテープ搬送・印字形成を再開する制御が行われる。その後、このフローを終了する。
<実施形態による効果>
以上、説明したように、本実施形態においては、環境温度、1つの単位印字データにおける印字率、及び、印刷物長さ、に応じて、上記印刷速度を可変に設定する。これにより、サーマルヘッド11が高温になりやすい傾向となる、環境温度が比較的高い場合、印字率が比較的高い場合、作成される上記印刷物が長い場合等においては、予め印刷速度を遅く補正した状態で印刷動作を開始することができる(図9(b)のテーブル参照)。印刷速度を遅くすることにより、印刷周期が長くなってサーマルヘッド11の発熱素子に対する通電オフ時間が長くなるので、サーマルヘッド11の温度上昇を抑制することができる。この結果、クーリング実行回避を図ることができる。
また、本実施形態では特に、予め環境温度、印字率、及び印刷物長さと印刷速度との相関がテーブルとしてROM214に記憶されており(図9(b)参照)、CPU212は、この相関を用いて印刷速度の可変制御が行われる(ステップS125参照)。これにより、簡易な制御で円滑に印刷速度を可変に調整し、クーリング回避を図ることができる。なお、このような相関を用いることなく、適宜の手法で、環境温度、印字率、及び印刷物長さに応じて印刷速度印刷速度を可変に制御してもよい。
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
(1)ヘッド温度と環境温度に応じてテーブルを補正する場合
テープ印刷装置1において例えば新たに上記印刷物の作成を開始しようとするとき、前回の印刷物作成作業からあまり時間が経過していない場合には、その際の残留熱によりサーマルヘッド11の温度が比較的高いままとなっている(すなわち、環境温度よりもかなり温度が高くなっている)場合がある。このような場合は、たとえ環境温度が比較的低温であっても、そのままでは上記新たな印刷物の作成開始後、ある程度の時間でクーリング開始となってしまう可能性が高い。
本変形例では、このような可能性に対応し、サーマルヘッド11の温度(ヘッド温度センサSR1により検出)と上記環境温度(環境温度センサSR2により検出)に応じて、前述の図9(b)に示す相関テーブルを補正し、その補正した相関テーブルを用いて上記印刷速度の制御が行われる。上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
図13は、本変形例における、CPU212の印字制御部212Aが実行するテープ印刷装置1の制御手順を表すフローチャートである(クーリング制御部212Bでは、上記実施形態と同様、図12のフローが実行される)。図13において、本変形例によるフローチャートでは、上記図10に示すステップS204に替えてステップS204′が設けられるとともに、ステップS232とステップS234の間にステップS233が新たに設けられる。
図13において、上記図10と同様のステップS201〜ステップS203を経た後、新たに設けたステップS204′に移る。ステップS204′では、CPU212の印字制御部212Aが、上記図9のテーブルを補正して置き換えたものに相当する、後述の図15に示すテーブル)を用いることで、印刷速度を可変に設定する。
ステップS204′の詳細内容を表すフローチャートを、図14に示す。図14において、図11と同様のステップS115、ステップS120を経た後、新たに設けたステップS120に移る。ステップS122では、CPU212の印字制御部212Aは、上記ヘッド温度センサSR1の検出結果に基づき、サーマルヘッド11の温度Tを取得する。そして、その後のステップS125では、上記図11と同様、上記ステップS120で検出した環境温度と、上記ステップS115で算出した印字率と、上記ステップS202で取得された印刷物長さと、に応じて、上記図9(b)に示した相関テーブルを用いて、対応する印刷速度を可変に設定する。その後、新たに設けたステップS130に移る。
ステップS130では、CPU212の印字制御部212Aは、上記ステップS122で取得されたサーマルヘッド11の温度と、上記ステップS120で取得された環境温度との差が、所定のしきい値(この例では10℃)以上であるか否かを判定する。10℃未満であった場合、ステップS130の判定が満たされず(S130:NO)、このフローを終了し、上記図13に示すステップS210に移行する。10℃以上である場合はステップS130の判定が満たされ(S130:YES)、新たに設けたステップS135に移る。
ステップS135では、CPU212の印字制御部212Aは、上記図9(b)に示す相関テーブルを補正する。図15は、この補正後の相関テーブルを表す図である。
すなわち、補正された図15に示す相関テーブルでは、図9の相関テーブルにおける、以下の場合の速度ランクがそれぞれ1つずつ小さい値に補正されている。すなわち、環境温度が0[℃]以上25[℃]未満の条件では、印刷物長さが20[m]以下であって印字率が20[%]より大きく40[%]以下の場合と印字率が60[%]より大きく80[%]以下の場合、印刷物長さが20[m]より長く40[m]以下であって印字率が20[%]以下の場合と印字率が40[%]より大きく60[%]以下の場合、印刷物長さが40[m]より長く60[m]以下であって印字率が20[%]より大きく40[%]以下の場合、印刷物長さが60[m]より長く80[m]以下であって印字率が20[%]以下の場合に、それぞれ速度ランクがそれぞれ1つずつ小さい値に補正されている。
また、環境温度が25[℃]以上40[℃]未満の条件では、印刷物長さが20[m]以下であって印字率が20[%]より大きく40[%]以下の場合と印字率が60[%]より大きく80[%]以下の場合、印刷物長さが20[m]より長く40[m]以下であって印字率が20[%]以下の場合と印字率が40[%]より大きく60[%]以下の場合と印字率が80[%]より大きく100[%]以下の場合、印刷物長さが40[m]より長く60[m]以下であって印字率が20[%]より大きく40[%]以下の場合と印字率が60[%]より大きく80[%]以下の場合、印刷物長さが60[m]より長く80[m]以下であって印字率が20[%]以下の場合と印字率が40[%]より大きく60[%]以下の場合、にそれぞれ速度ランクがそれぞれ1つずつ小さい値に補正されている。
また、環境温度が40[℃]以上の条件では、印刷物長さが20[m]以下であって印字率が20[%]より大きく40[%]以下の場合と印字率が60[%]より大きく80[%]以下の場合、印刷物長さが20[m]より長く40[m]以下であって印字率が20[%]以下の場合と印字率が40[%]より大きく60[%]以下の場合、印刷物長さが40[m]より長く60[m]以下であって印字率が20[%]より大きく40[%]以下の場合、印刷物長さが60[m]より長く80[m]以下であって印字率が20[%]以下の場合、にそれぞれ速度ランクがそれぞれ1つずつ小さい値に補正されている。
なお、上記した以外の場合では速度ランクの値は図9と同一となっている。
このステップS135では、上記図15のように相関テーブルにおける各速度ランクの値を補正する。その後、このフローを終了し、上記図13に示すステップS210に移行する。ステップS210に移行する。
なお、図14のステップS122を実行する印字制御部212Aが、各請求項記載のヘッド温度検出手段として機能する。また、ステップS135を実行する印字制御部212Aが、各請求項記載の第1相関補正手段として機能する。
図13に戻り、上記図10と同様のステップS210、ステップS215、ステップS220で繰り返し印字が実行される。このときの印刷速度は、上記のようにして補正された後の図15の速度ランクの値を用いて制御される。その後、ステップS224を経て、前述のクーリング開始信号が入力されてステップS224の判定が満たされたら、図10と同様のステップS232を経て、新たに設けたステップS233に移り、印刷速度の補正が行われる。このステップS233を設けた意義は以下のようである。
すなわち、前述の手法によりクーリング実行の回避を図った場合であっても、テープ印刷装置1が使用されるときの状況によってはクーリングが実行されてしまう可能性もあり得る。そのような場合、(当該1回目のクーリング実行は仕方ないにしても)クーリングが完了して印刷動作が再開された後に再度2回目のクーリングが実行されることだけは、極力回避しなければならない。そこで、本変形例では、上記ステップS224及びステップS232のクーリング(印字形成及び搬送の停止)が実行された場合には、その後の上記ステップS233において上記相関テーブル(上記図15に示すテーブル)をさらに補正し、その補正した相関テーブルを用いて上記印刷速度の制御が行われる。
図16は、上記ステップS233における補正後の相関テーブルを表す図である。すなわち、補正された図16に示す相関テーブルでは、上記図15の相関テーブルにおける、すべての速度ランクが一律に1つずつ小さい値に補正されている(但し、図15において速度ランク「0」となっていたものを除く)。このステップS233を実行するCPU212の印字制御部212Aが、各請求項記載の第2相関補正手段として機能する。なお、このステップS233での後、ステップS236での再開後の印字形成動作と、さらにステップS238の判定が満たされずに戻って実行されるステップS220では、上記ステップS233で補正された後の印刷速度を用いて制御される。したがって、本変形例では、上記図14のステップS125と、上記ステップS236と、ステップS220とを実行する印字制御部212Aが、各請求項記載の速度制御手段として機能することとなる。なお、上述のように、図14のステップS135でいったん補正した相関テーブル(図15参照)をステップS233で再補正するのではなく、ステップS135での補正がなされていない相関テーブル(すなわち図9(b)の相関テーブル)をステップS233で補正するようにしてもよい。
上記ステップS233の後、ステップS234〜ステップS280の処理内容は、上記した図10の処理内容と同等であり、説明を省略する。
本変形例においても、上記実施形態と同様、クーリング実行の回避を図ることができる。特に、本変形例においては、サーマルヘッド11の温度と上記環境温度との差に応じて上記相関テーブルが補正され(上記図15参照)、その補正した相関テーブルを用いて上記印刷速度の制御が行われる。これにより、上記のようにサーマルヘッド11の温度と環境温度との差が大きい場合には、印刷速度をさらに遅くすることができる。この結果、サーマルヘッド11の温度上昇をさらに抑制することができるので、確実に上記クーリング実行の回避を図ることができる。
また、本変形例では、特に、上記クーリング(印字形成及び搬送の停止)が実行されてしまった場合に、ステップS233でそれまでの相関テーブルがさらに補正され(上記図16参照)、その補正した相関テーブルを用いて印刷速度の制御が行われる。これにより、いったんクーリングが実行されてしまった場合に、印刷速度をさらに遅くすることができる。この結果、1回目のクーリング後の動作再開時にサーマルヘッド11の温度上昇を確実に抑制することができるので、確実に上記2回目のクーリング実行の回避を図ることができる。
(2)ヘッド温度に応じてクーリング時間を補正する場合
既に述べたように、前述の手法によりクーリング実行の回避を図った場合であっても、テープ印刷装置1が使用されるときの状況によってはクーリングが実行されてしまう可能性もあり得る。そのような場合、(当該1回目のクーリング実行は仕方ないにしても)クーリングが完了して印刷動作が再開された後に再度2回目のクーリングが実行されることだけは、極力回避しなければならない。そこで、本変形例では、印刷物作成動作の開始前に、クーリング時間をサーマルヘッド11の温度に応じて予め補正する。上記実施形態及び各変形例と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
図17は、本変形例のCPU212のクーリング制御部212Bが実行する処理手順を表すフローチャートである(印字制御部212Aでは、上記実施形態と同様、図10及び図11のフローが実行される)。図17において、クーリング制御部212Bは、上記図12と同様のステップS150の後、上記図12のステップS155に代えて設けたステップS151で、クーリング時間tcを設定する。この設定は、予め適宜の記憶手段に記憶されていた値を読み出してRAM213に格納してもよいし、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの操作に対応した値を取得してRAM213に格納してもよい。その後、新たに設けたステップS152に移る。
ステップS152では、クーリング制御部212Bは、前述のようにしてヘッド温度センサSR1から取得されたサーマルヘッド11の温度と、環境温度センサSR2から取得された環境温度との差が、所定のしきい値(この例では10℃)以上であったか否かを判定する。10℃未満であった場合、ステップS152の判定が満たされず(S152:NO)、後述のステップS160に移行する。10℃以上であった場合はステップS152の判定が満たされ(S152:YES)、新たに設けたステップS153に移る。
ステップS153では、クーリング制御部212Bは、上記ステップS151で設定したクーリング時間tcに対し、上記サーマルヘッド11の温度と上記環境温度との温度差に応じた時間Δtを加える。このステップS153を実行するCPU212のクーリング制御部212Bが、各請求項記載のクーリング補正手段として機能する。
その後、上記図12と同様のステップS160で、クーリング制御部212Bは、上記サーマルヘッド11の温度Tが、上記印字停止温度T1以上となったか否か、を判定する。T≧T1となったらステップS160の判定が満たされ(S160:YES)、上記図12と同様のステップS165でクーリング開始信号を印字制御部212Aに出力し、新たに設けたステップS166に移る。
ステップS166では、クーリング制御部212Bは、上記ステップS165の後、上記ステップS151で設定したクーリング時間tcが経過したか否かを判定する。クーリング時間tcが経過していなければステップS166の判定が満たされず(S166:NO)、この判定が満たされるまでループ待機する。クーリング時間tcが経過したらステップS166の判定が満たされ(S166:YES)、ステップS175に移る。
ステップS175では、上記図12と同様、クーリング制御部212Bは、クーリング終了信号を印字制御部212Aに出力し、このフローを終了する。
本変形例においても、上記実施形態と同様、クーリング実行の回避を図ることができる。特に、本変形例においては、上記クーリング時間tcを印刷物の作成開始前に事前に長くしておくことで、仮に上記印刷物の作成開始後にクーリングが実行されてしまった場合であっても、より低い温度までサーマルヘッド11を冷却可能となるように図ることができる。この結果、1回目のクーリング後の動作再開時に(図10のステップS236以降を参照)、サーマルヘッド11の温度上昇を確実に抑制することができるので、確実に上記2回目のクーリング実行の回避を図ることができる。
(3)ヘッド温度と環境温度との差が大きいときは作成開始しない場合
例えば、テープ印刷装置1により新たに印刷物の作成を開始しようとする際、前回の印刷物作成作業からあまり時間が経過していない場合には、その際の残留熱によりサーマルヘッド11の温度が比較的高いままとなっている(すなわち、環境温度との温度差が大きい)場合がある。このような場合は、そのままでは上記新たな印刷物の作成開始後、ある程度の時間でクーリング開始となってしまう可能性が高い。
そこで本変形例では、(前述の作成指示信号が入力されて)新たに印刷物を作成開始しようとする際、サーマルヘッド11の温度と環境温度との差が所定のしきい値より大きい場合には、当該しきい値未満となるまで、上記印刷物の作成を行わないようにする。上記実施形態や各変形例と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
図18は、この変形例において、CPU212の印字制御部212Aが実行する制御手順を表すフローチャートである(クーリング制御部212Bでは、上記(1)の変形例と同様、図14のフローが実行される)。図18において、印字制御部212Aは、上記図10と同様のステップS201、ステップS202、ステップS203を経た後、ステップS204′で、上記図14に示した手順と同様の処理で印刷速度設定を実行する。その後、新たに設けたステップS205に移る。
ステップS205では、印字制御部212Aは、上記図14のステップS122で取得されたサーマルヘッド11の温度と、上記図14のステップS120で取得された環境温度との差が、所定のしきい値(この例では20℃)以上であるか否かを判定する。20℃未満であった場合はステップS205の判定が満たされず(S205:NO)、ステップS210に移行する。20℃以上であったらステップS205の判定が満たされ(S205:YES)、ステップS204′に戻って同じ処理を繰り返す。
ステップS210及びそれ以降までのステップS280の処理手順は、上記した図10の処理内容と同様であり、説明を省略する。
なお、本変形例では、ステップS205、ステップS210、ステップS215、ステップS220、ステップS232、ステップS236、ステップS238、ステップS240を実行する印字制御部212Aが、各請求項記載の連携制御手段として機能する。
本変形例においても、上記実施形態と同様、クーリング実行の回避を図ることができる。また、本変形例では特に、作成指示信号が入力されて新たに印刷物を作成開始しようとする際、サーマルヘッド11の温度と環境温度との差が所定のしきい値より大きい場合には、(当該しきい値未満となるまで)上記印刷物の作成が行われない(ステップS205参照)。これにより、サーマルヘッド11の温度が十分に冷えて環境温度との差が小さくなった状態で、印刷物作成を開始することができる。この結果、さらに確実に上記クーリング実行の回避を図ることができる。
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。但し、例えばしきい値(各図のフローチャート参照)や基準値等、所定の判定基準となる値あるいは区切りとなる値の記載がある場合は、それらに対しての「同一」「等しい」「異なる」等は、上記とは異なり、厳密な意味である。
なお、以上において、図7に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
また、図10、図11、図12、図13、図14、図17、図18等に示すフローチャートは、本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用してもよい。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。