以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図面中に「前方」「後方」「左方」「右方」「上方」「下方」の注記がある場合は、明細書中の説明における「前方(前)」「後方(後)」「左方(左)」「右方(右)」「上方(上)」「下方(下)」とは、その注記された方向を指す。
<テープ印刷装置の概略構成>
まず、図1〜図4を参照しつつ、本実施形態に係わるテープ印刷装置の概略構成について説明する。
<筐体>
図1〜図4において、本実施形態のテープ印刷装置1(印刷装置に相当)は、装置外郭を構成する筐体2を有している。筐体2は、筐体本体2aと、後方側開閉部8と、前方側開閉カバー9と、を備えている。
筐体本体2a内には、後方側に設けられた第1収納部3と、前方側に設けられた第2収納部5及び第3収納部4と、が備えられている。
後方側開閉部8は、筐体本体2aの後方側の上部に対し開閉可能に接続されている。この後方側開閉部8は、回動することで、第1収納部3の上方を開閉可能である。この後方側開閉部8は、第1開閉カバー8a及び第2開閉カバー8bにより構成されている。
第1開閉カバー8aは、筐体本体2aの後方側の上部に設けられた所定の回動軸心K1まわりに回動することで、第1収納部3のうち前方側の上方を開閉可能である。詳細には、第1開閉カバー8aは、第1収納部3のうち前方側の上方を覆う閉じ位置(図1、図2の状態)から、第1収納部3のうち前方側の上方を露出させる開き位置(図3、図4の状態)までの間で回動可能である。
第1開閉カバー8aの内部には、ヘッド保持体10が設けられている(図3も参照)。そして、第1開閉カバー8aは、上記の回動軸心K1まわりに回動することで、ヘッド保持体10に備えられた印字ヘッド11(サーマルヘッドに相当)を、筐体本体2aに設けられた搬送ローラ12に対して相対的に離反・近接可能である。詳細には、第1開閉カバー8aは、印字ヘッド11が搬送ローラ12に対して近接した閉じ位置(図1、図2の状態)から、印字ヘッド11が搬送ローラ12から離反した開き位置(図3、図4の状態)までの間で回動可能である。
第2開閉カバー8bは、上記第1開閉カバー8aよりも後方側に設けられており、筐体本体2aの後方側の上端部に設けられた所定の回動軸心K2まわりに回動することで、第1収納部3のうち後方側の上方を、上記第1開閉カバー8aの開閉とは別個に開閉可能である。詳細には、第2開閉カバー8bは、第1収納部3のうち後方側の上方を覆う閉じ位置(図1及び図2の状態)から、第1収納部3のうち後方側の上方を露出させる開き位置(図3及び図4の状態)までの間で回動可能である。
そして、これら第1開閉カバー8a及び第2開閉カバー8bは、それぞれが閉じ状態であるときに、当該第1開閉カバー8aの外周部18と当該第2開閉カバー8bの縁部19とが互いに略接触して、第1収納部3の上方の略全部を覆うように構成されている。
前方側開閉カバー9は、筐体本体2aの前方側の上部に対し開閉可能に接続されている。この前方側開閉カバー9は、筐体本体2aの前方側の上端部に設けられた所定の回動軸心K3まわりに回動することで、第3収納部4の上方を開閉可能である。詳細には、前方側開閉カバー9は、第3収納部4の上方を覆う閉じ位置(図1、図2の状態)から、第3収納部4の上方を露出させる開き位置(図3、図4の状態)までの間で回動可能である。
<被印字テープロール及びその周辺>
このとき、図2〜図4に示すように、筐体本体2aにおける、閉じ状態での前方側開閉カバー9の下方にある第1所定位置13には、テープカートリッジTK(図2参照)が着脱可能に装着される。このテープカートリッジTKは、軸心O1まわりに巻回形成された被印字テープロールR1を備えている。
すなわち、テープカートリッジTKは、図5に示すように、被印字テープロールR1と、連結アーム16とを備えている。連結アーム16は、後方側に設けられた左・右一対の第1ブラケット部20,20と、前方側に設けられた左・右一対の第2ブラケット部21,21とを備えている。
第1ブラケット部20,20は、上記被印字テープロールR1を、軸心O1に沿った左・右両側から挟みこむようにし、テープカートリッジTKが筐体本体2aに装着された状態では被印字テープロールR1を巻芯39(第1巻芯に相当。図2参照)のまわりに回転可能に保持する。これら第1ブラケット部20,20は、上端部において左右方向に略沿って延設された第1接続部22により被印字テープロールR1の外径との干渉を回避しつつ接続されている。
被印字テープロールR1は、テープカートリッジTKが筐体本体2aの内部に装着された際には回転自在となる。被印字テープロールR1は、繰り出しにより消費される被印字テープ150(後述する被印字層154、基材層153、粘着剤層152、剥離材層151を備える。図2中拡大図参照)を、あらかじめ左右方向の軸心O1を備えた上記巻芯39まわりに巻回している。
第1収納部3(収納部に相当)には、上記テープカートリッジTKの装着によって、被印字テープロールR1が上方から受け入れられ、被印字テープ150の巻回の軸心O1が左右方向となる状態で収納される。そして、被印字テープロールR1は、第1収納部3に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において当該第1収納部3内で所定の回転方向(図2中のA方向)に回転することで、被印字テープ150を繰り出す。
本実施形態では、粘着性を備えた被印字テープ150が用いられる場合を例示している。すなわち、被印字テープ150は、被印字層154、基材層153、粘着剤層152、剥離材層151が、厚さ方向一方側(図2中の上方側)から他方側(図2中の下方側)へ向かって、この順序で積層されている。被印字層154は、上記印字ヘッド11によるインクの熱転写によって所望の印字部155(図2中の部分拡大図参照)が形成される層である。粘着剤層152は、基材層153を適宜の被着体(図示省略)に貼り付けるための層である。剥離材層151は、粘着剤層152を覆う層である。
<搬送ローラ及び印字ヘッド>
図2〜図4に戻り、筐体本体2aにおける第1収納部3及び第2収納部5の中間上方側には、上記搬送ローラ12が設けられている。搬送ローラ12は、筐体本体2aの内部に設けられた、例えばパルスモータである搬送用モータM1(搬送駆動手段に相当)によりギア機構(図示省略)を介して駆動されることで、第1収納部3に収納された被印字テープロールR1から繰り出される被印字テープ150を、テープ幅方向が左右方向となるテープ姿勢で搬送する。
また、第1開閉カバー8aに設けられた上記ヘッド保持部10には、上記印字ヘッド11が備えられている。印字ヘッド11は、上述したように、第1開閉カバー8aが回動軸心K1まわりに回動することで、搬送ローラ12に対して相対的に離間・近接可能である。すなわち、第1開閉カバー8aが閉じ状態となると、印字ヘッド11が搬送ローラ12に近接し、第1開閉カバー8aが開き状態となると、印字ヘッド11が搬送ローラ12から離間する。この印字ヘッド11は、搬送ローラ12により搬送される被印字テープ150を当該搬送ローラ12と協働して挟持するように、ヘッド保持部10のうち閉じ状態での第1開閉カバー8aにおいて搬送ローラ12の上方に対向する位置に配置されている。したがって、第1開閉カバー8aが閉じ状態である場合には、印字ヘッド11と搬送ローラ12とは、互いに上下方向に対向して配置される。そして、印字ヘッド11は、搬送ローラ12との間に挟まれた状態の被印字テープ150の被印字層154に対し、後述するインクリボンカートリッジRKのインクリボンIBを用いて、公知の手法により被印字テープ150の搬送と同期した印刷速度で所望の印字を形成し、印字済みテープ150′とする。
<インクリボンカートリッジ>
図2及び図3に示すように、筐体本体2aにおける閉じ状態での第1開閉カバー8aの下方でかつテープカートリッジTKの上方となる第2所定位置14には、インクリボンカートリッジRKが着脱可能に装着される。インクリボンカートリッジRKの詳細構造を図6に示す。
図6に示すように、インクリボンカートリッジRKは、カートリッジ筐体80と、未使用のインクリボンIBを繰り出し可能に巻回したリボン繰り出しロールR4と、リボン巻き取りロールR5とを備えている。カートリッジ筐体80は、後方側の繰り出しロール収納部81と、前方側の巻き取りロール収納部82と、それら両収納部81,82を連結する連結部83と、を有している。連結部83は、リボン繰り出しロールR4から繰り出された上記インクリボンIBをカートリッジ筐体80外に露出させるようにしつつ、上記巻き取りロール収納部82と上記繰り出しロール収納部81とを連結する。
繰り出しロール収納部81は、略半円筒の上部81aと、下部81bと、が組み合わされることにより構成されている。リボン繰り出しロールR4は、繰り出しロール収納部81内において回転自在に支持されており、インクリボンカートリッジRKが装着された状態において所定の回転方向(図2中のD方向)に回転することで、印字ヘッド11による印字形成を行うためのインクリボンIBを繰り出す。
巻き取りロール収納部82は、略半円筒の上部82aと、下部82bと、が組み合わされることにより構成されている。リボン巻き取りロールR5は、巻き取りロール収納部82内において回転自在に支持されており、インクリボンカートリッジRKが装着された状態において所定の回転方向(図2中のE方向)に回転することで、印字形成後の使用済みのインクリボンIBを巻き取る。
すなわち、図2において、リボン繰り出しロールR4から繰り出されるインクリボンIBは、印字ヘッド11と搬送ローラ12との間に挟まれた状態の被印字テープ150のさらに印字ヘッド11側に配置されて印字ヘッド11の下方に接触する。そして、印字ヘッド11からの加熱によりインクリボンIBのインクが、被印字テープ150の被印字層154に転写されて印字形成が実行された後、使用済みのインクリボンIBが、リボン巻き取りロールR5に巻き取られる。
<剥離材ロール及びその周辺>
図5に示すように、テープカートリッジTKの連結アーム16は、例えば略水平なスリット形状を含む引き剥がし部17を備えている。この引き剥がし部17は、被印字テープロールR1から繰り出されて前方側へと搬送される印字済みテープ150′から、剥離材層151を引き剥がす部位である。上記のようにして印字が形成された印字済みテープ150′は、図2に示すように、上記引き剥がし部17によって上記剥離材層151が引き剥がされることで、剥離材層151と、それ以外の被印字層154、基材層153及び粘着剤層152からなる印字済みテープ150″とに分離される。
テープカートリッジTKは、図2及び図5に示すように、上記引き剥がされた剥離材層151が軸心O3を備えた巻芯29まわりに巻回されることで形成される、上記剥離材ロールR3を有している。すなわち、上述したテープカートリッジTKの装着によって、剥離材ロールR3が上方から上記第2収納部5に受け入れられ、軸心O3が左右方向となる状態で収納される。そして、巻芯29は、第2収納部5に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において、筐体本体2a内に設けられた剥離紙巻取用モータM3によりギア機構(図示省略)を介して駆動され、第2収納部5内で所定の回転方向(図2中のC方向)に回転することで、剥離材層151を巻き取る。
このとき、図5に示すように、テープカートリッジTKの上記第2ブラケット部21,21は、上記剥離材ロールR3を、軸心O3に沿った左・右両側から挟みこむようにし、テープカートリッジTKが筐体本体2aに装着された状態では巻芯29(言い換えれば剥離材ロールR3)を当該軸心O3まわりに回転可能に保持する。これら第2ブラケット部21,21は、上端部において左右方向に略沿って延設された第2接続部23により接続されている。そして、後方側の第1ブラケット部20,20及び第1接続部22と、前方側の第2ブラケット部21,21及び第2接続部23とは、左・右一対のロール連結ビーム部24,24により連結されている。
また、図5中では、巻芯29のまわりに剥離材層151が巻回され剥離材ロールR3が形成される前の状態(未使用のテープカートリッジTKである場合)を示している。すなわち、当該剥離材層151の幅方向両側を挟み込むように設けられている略円形の上記ロールフランジ部f3,f4を図示するとともに、便宜的に剥離材ロールR3が形成される箇所に符号「R3」を付している。
<印字済みテープロール及びその周辺>
一方、図2及び図4に示すように、上記第3収納部4には、上記印字済みテープ150″を順次巻回するための巻芯41(第2巻芯に相当)を備えた巻き取り機構40が上方から受け入れられる。巻き取り機構40は、印字済みテープ150″の巻回の軸心O2が左右方向となる状態で、上記巻芯41が軸心O2まわりに回転可能に支持されるように収納される。そして、巻き取り機構40が、第3収納部4に収納された状態において、筐体本体2aの内部に設けられた粘着巻き取り用モータM2(巻芯駆動手段に相当)により不図示のギア機構を介して巻芯41が駆動され、第3収納部4内で所定の回転方向(図2中のB方向)に回転することで、印字済みテープ150″を巻芯41の外周側に巻き取って積層する。これにより、巻芯41の外周側に印字済みテープ150″が順次巻回されることで、印字済みテープロールR2が形成される。
<カッター機構>
また、図2に示すように、テープ搬送方向に沿って印字ヘッド11の下流側でかつ印字済みテープロールR2の上流側に、カッター機構30(切断手段に相当)が設けられている。
カッター機構30は、詳細な図示を省略するが、可動刃と、可動刃を支持しテープ幅方向(言い替えれば左右方向)に走行可能な走行体とを有している。そして、カッターモータMC(後述の図7参照)の駆動により走行体が走行し可動刃がテープ幅方向に移動することで、上記印字済みテープ150″を幅方向に切断する。
<テープ印刷装置の動作の概略>
次に、上記構成のテープ印刷装置1の動作の概略について説明する。
すなわち、上記第1所定位置13にテープカートリッジTKが装着されると、筐体本体2aの後方側に位置する第1収納部3に被印字テープロールR1が収納され、筐体本体2aの前方側に位置する第2収納部5に剥離材ロールR3を形成する軸心O3側が収納される。また、筐体本体2aの前方側に位置する第3収納部4には、印字済みテープロールR2を形成するための巻き取り機構40が収納される。
この状態で、ユーザが、被印字テープ150(この時点ではまだ印刷が始まっていない)から剥離材層151を手動で引き剥がし、基材層153及び粘着剤層152からなるテープの先端を、上記巻き取り機構40の巻芯41に取り付ける。そして、搬送ローラ12が駆動されると、第1収納部3に収納された被印字テープロールR1の回転により繰り出される被印字テープ150が、前方側へ搬送される。そして、搬送される被印字テープ150の被印字層154に対し、印字ヘッド11により所望の印字(上記印字部155)が形成されて、印字済みテープ150′となる。印字形成された印字済みテープ150′は、さらに前方側へ搬送されて引き剥がし部17まで搬送されると、当該引き剥がし部17において剥離材層151が引き剥がされて印字済みテープ150″となる。引き剥がされた剥離材層151は、下方側へ搬送されて第2収納部5へ導入され、当該第2収納部5内において巻回されて剥離材ロールR3が形成される。
一方、剥離材層151が引き剥がされた印字済みテープ150″は、さらに前方側へ搬送されて第3収納部4へ導入され、当該第3収納部4内の巻き取り機構40の巻芯41の外周側に巻回されて印字済みテープロールR2が形成される。その際、搬送方向下流側(すなわち前方側)に設けられたカッター機構30が印字済みテープ150″を切断する。これにより、ユーザの所望のタイミングで、印字済みテープロールR2に巻回されていく印字済みテープ150″を切断し、切断後は印字済みテープロールR2を第3収納部4から取り出すことができる。なお、この切断後において、印字済みテープロールR2に巻回されている印字済みテープ150″が各請求項記載の印刷物に相当している。
なおこのとき、図示による説明を省略するが、被印字テープロールR1に、非粘着テープ(上記粘着剤層152及び剥離材層151のないもの)が巻回されていても良い。この場合においても、第1収納部3には、テープカートリッジTKの装着によって、非粘着テープが巻回された被印字テープロールR1が上方から受け入れられ、非粘着テープの巻回の軸心O1が左右方向となる状態で収納される。そして、被印字テープロールR1は、第1収納部3に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において当該第1収納部3内で所定の回転方向(図2中のA方向)に回転することで、非粘着テープを繰り出す。
またこのとき、上記非粘着テープ(又は上記被印字テープ150でもよい)の搬送経路を、印字済みテープロールR2へ向かう側と排出口(図示省略)へ向かう側との相互間で切り替える、シュート15(図2参照)が配されていても良い。すなわち、切替レバー(図示省略)によるシュート15の切替操作でテープ経路を切り替えることで、印字形成後の非粘着テープ(又は印字済みテープ150″)を後述のように第3収納部4内において巻回することなく、筐体2の例えば第2開閉カバー8b側に設けた排出口(図示省略)から、そのまま筐体2外部へ排出するようにしても良い。
<制御系>
次に、図7を用いて、テープ印刷装置1の制御系について説明する。図7において、テープ印刷装置1には、所定の演算を行う演算部を構成するCPU212が備えられている。CPU212は、RAM213及びROM214(記憶手段に相当)に接続されている。CPU212は、RAM213の一時記憶機能を利用しつつROM214に予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行い、それによってテープ印刷装置1全体の制御を行う。
また、CPU212は、上記搬送ローラ12を駆動する上記搬送用モータM1の駆動制御を行うモータ駆動回路218と、上記巻き取り機構40の巻芯41を駆動する上記粘着巻取用モータM2の駆動制御を行うモータ駆動回路219と、上記剥離材ロールR3を駆動する上記剥離紙巻取用モータM3の駆動制御を行うモータ駆動回路220と、上記印字ヘッド11の発熱素子(図示省略)の通電制御を行う印字ヘッド制御回路221と、上記可動刃を備えた走行体を走行させるカッターモータMCの駆動制御を行うモータ駆動回路222と、適宜の表示を行う表示部215と、ユーザが適宜に操作入力可能な操作部216と、テープ印刷装置1が配置された場所の周囲の環境温度を検出する環境温度センサSRと、に接続されている。また、CPU212は、この例では、外部端末としてのPC217に接続されるが、テープ印刷装置1が(いわゆるオールインワンタイプで)単独で動作する場合には、接続されなくてもよい。
ROM214には、所定の制御処理を実行するための制御プログラム(後述する図10、図11のフローの処理を実行するプログラムを含む)が記憶されている。なお、後述の図9、図12、図13に示すテーブルも、例えばこのROM214に記憶されている。
RAM213には、例えば上記操作部216(又はPC217)での操作者の操作に対応して生成された印字データ(後述のステップS204参照)を、上記被印字層154の所定の印字領域に印字するためのドットパターンデータ(=1つの単位印字データに相当。詳細は後述)に展開して記憶する、イメージバッファ213aが備えられている。CPU212は、上記制御プログラムに基づき、搬送ローラ12により被印字テープ150を繰り出しつつ、イメージバッファ213aに記憶された上記ドットパターンデータに対応した1つのイメージ(=単位印字イメージに相当。詳細は後述)を、印字ヘッド11によって被印字テープ150に対し繰り返して印刷する(詳細は後述)。
<実施形態の特徴>
以上のように構成された本実施形態の特徴は、何らかの理由で搬送ローラ12と被印字テープ150との間に滑りが生じた場合であっても、テープ搬送速度が上昇(又は低下)するのを防止し、印字品質の低下を防止する手法にある。以下、その詳細を、順を追って説明する。
<印刷速度に対応したローラ搬送速度>
上述したように、被印字テープロールR1の巻芯39から繰り出された被印字テープ150は、搬送用モータM1により駆動される搬送ローラ12によって搬送される。このとき、予め固定的に定められた所定の印刷速度で印字ヘッド11が被印字テープ150に対し所望の印字を形成することで、印字済みテープ150′が生成される。その後、印字済みテープ150′から剥離材層151が引き剥がされて生成された印字済みテープ150″は、粘着巻取用モータM2の駆動力によって駆動される巻芯41の外周側に、順次ロール状に巻き取られる。
上記のような搬送・巻き取り挙動において、被印字テープ150、印字済みテープ150′、印字済みテープ150″には、搬送ローラ12が接触して搬送するときの力と、巻芯41により巻き取りが行われるときの力と、の両方が作用する。本実施形態においては、これら2つの力のバランスを取りつつ円滑な搬送及び巻き取りが行われ、上述の印刷速度が実現するように、CPU212が、公知の手法により(印字ヘッド制御回路221による印字ヘッド11の駆動制御と同期する形で)モータ駆動回路220を介して搬送用モータM1の駆動を制御する。この結果、搬送ローラ12のローラ搬送速度(被印字テープ150と接するローラの最外周部分の周速)が、搬送ローラ12と被印字テープ150との間に滑りがない場合に対応した(=すなわち理論値である)所定の速度(第1速度に相当。以下適宜、「第1速度」と称する)となるように制御される。
<搬送ローラと被印字テープとの滑り>
ここで、上記のような第1速度を用いた搬送制御が行われる場合であっても、何らかの理由で搬送ローラ12と被印字テープ150との間に上記滑りが生じることがありうる。
例えば被印字テープ150のテープ幅が比較的狭い場合には、駆動される巻芯41による巻き取り力が印字済みテープ150″の狭い範囲に集中することから、テープ進み方向への滑りが生じやすい。また例えば被印字テープ150の種類が、布などの摩擦係数が比較的小さいものである場合には、接触する搬送ローラ12との間におけるテープ進み方向への滑りが生じやすい。さらに被印字テープロールR1におけるテープ残量が比較的多い場合には、ロールの外径側から比較的小さい力で被印字テープ150を引き出すことができることから、上記同様、搬送ローラ12との間においてテープ進み方向への滑りが生じやすい。また、上記巻芯41の外径が比較的小さい場合には、上記巻き取りが行われるときに印字済みテープ150″に与えるトルクが大きくなることから、上記同様、搬送ローラ12との間においてテープ進み方向への滑りが生じやすい。これらの場合、上記進み方向への滑りが生じることにより、本来前述のように同期しているはずの印刷速度とテープ搬送速度(実際にテープが搬送経路に沿って搬送される速度)とにおいて、テープ搬送速度のほうが若干速くなる。この結果、例えば図8(a)及び図8(b)に対比させて示すように、本来の印字形成態様(図8(a)参照)に比べ、搬送方向に間延びした態様で印字が形成され(図8(b))、いわゆる印字長が長くなる。図示の例では、「D−TEC]のテキストを含む1つの単位イメージの長さが、△Lだけ長くなっている。
<ローラ搬送速度補正の具体例>
上記に対応して、本実施形態では、CPU212により、上述した被印字テープ150のテープ幅、テープ種類、テープ残量、巻芯41の外径寸法等に応じて、搬送ローラ12のローラ搬送速度の補正が行われる(補正後のローラ搬送速度が第2速度に相当している)。この補正時の補正量を得るために、図9に示す補正量テーブルが用いられる。
<補正量テーブル>
すなわち、上記ROM214には、図9に示される、上記被印字テープ150のテープ幅、上記被印字テープ150のテープ種類、上記被印字テープロールR1における被印字テープ150のテープ残量、及び、上記巻芯41の外径、の組み合わせにそれぞれ応じた、上記ローラ搬送速度の補正量を表す、補正量テーブルが記憶されている。
すなわち、図9に示す例では、上記巻芯41の外径が75[mm]で、被印字テープ150の種類が紙材料(図中では「PP」と略示)からなるテープである場合には、上記テープ幅(この例では15mm、38mm、50mmの3種類が用意されている)ごとに、上記テープ残量の量に応じて、補正量(単位[%])が定められている。なお、この例では、未使用の被印字テープロールR1における被印字テープ150の全長(すなわち残量の最大値)が310[m]の場合を例にとっている。
すなわち、テープ幅が15[mm]の被印字テープ150が使用されるとき、テープ残量が0[m]以上50[m]未満である場合(図中では煩雑防止のために「0−49」と略示。以下同様)にはローラ搬送速度を2[%]減とし、テープ残量が50[m]以上100[m]未満である場合(図中では煩雑防止のために「50−99」と略示。以下同様)にはローラ搬送速度を5[%]減とし、テープ残量が100[m]以上150[m]未満である場合(図中では煩雑防止のために「100−149」と略示。以下同様)にはローラ搬送速度を6[%]減とし、テープ残量が150[m]以上200[m]未満である場合(図中では煩雑防止のために「150−199」と略示。以下同様)にはローラ搬送速度を6[%]減とし、テープ残量が200[m]以上250[m]未満である場合(図中では煩雑防止のために「200−249」と略示。以下同様)にはローラ搬送速度を6[%]減とし、テープ残量が250[m]以上310[m]以下である場合(図中では煩雑防止のために「250−310」と略示。以下同様)にはローラ搬送速度を9[%]減とする。
同様に、テープ幅が38[mm]の被印字テープ150が使用されるとき、テープ残量が0[m]以上50[m]未満である場合にはローラ搬送速度を1[%]減とし、テープ残量が50[m]以上100[m]未満である場合にはローラ搬送速度を2[%]減とし、テープ残量が100[m]以上150[m]未満である場合にはローラ搬送速度を2[%]減とし、テープ残量が150[m]以上200[m]未満である場合にはローラ搬送速度を3[%]減とし、テープ残量が200[m]以上250[m]未満である場合にはローラ搬送速度を3[%]減とし、テープ残量が250[m]以上310[m]以下である場合にはローラ搬送速度を3[%]減とする。
さらに同様に、テープ幅が50[mm]の被印字テープ150が使用されるとき、テープ残量が0[m]以上50[m]未満である場合にはローラ搬送速度を1[%]減とし、テープ残量が50[m]以上100[m]未満である場合にはローラ搬送速度を1[%]減とし、テープ残量が100[m]以上150[m]未満である場合にはローラ搬送速度を1[%]減とし、テープ残量が150[m]以上200[m]未満である場合にはローラ搬送速度を2[%]減とし、テープ残量が200[m]以上250[m]未満である場合にはローラ搬送速度を2[%]減とし、テープ残量が250[m]以上310[m]以下である場合にはローラ搬送速度を3[%]減とする。
一方、上記巻芯41の外径が30[mm]で(この例では巻芯外径は75mmと30mmの2種類のみが用意されている)、被印字テープ150の種類が上記紙材料からなるテープである場合も、上記同様、テープ幅ごとに、上記テープ残量の量に応じて、補正量(単位[%])が定められている。
すなわち、テープ幅が15[mm]の被印字テープ150が使用されるとき、テープ残量が0[m]以上50[m]未満である場合にはローラ搬送速度を4[%]減とし、テープ残量が50[m]以上100[m]未満である場合にはローラ搬送速度を7[%]減とし、テープ残量が100[m]以上150[m]未満である場合にはローラ搬送速度を8[%]減とし、テープ残量が150[m]以上200[m]未満である場合にはローラ搬送速度を8[%]減とし、テープ残量が200[m]以上250[m]未満である場合にはローラ搬送速度を8[%]減とし、テープ残量が250[m]以上310[m]以下である場合にはローラ搬送速度を11[%]減とする。
同様に、テープ幅が38[mm]の被印字テープ150が使用されるとき、テープ残量が0[m]以上50[m]未満である場合にはローラ搬送速度を3[%]減とし、テープ残量が50[m]以上100[m]未満である場合にはローラ搬送速度を4[%]減とし、テープ残量が100[m]以上150[m]未満である場合にはローラ搬送速度を4[%]減とし、テープ残量が150[m]以上200[m]未満である場合にはローラ搬送速度を5[%]減とし、テープ残量が200[m]以上250[m]未満である場合にはローラ搬送速度を5[%]減とし、テープ残量が250[m]以上310[m]以下である場合にはローラ搬送速度を5[%]減とする。
さらに同様に、テープ幅が50[mm]の被印字テープ150が使用されるとき、テープ残量が0[m]以上50[m]未満である場合にはローラ搬送速度を3[%]減とし、テープ残量が50[m]以上100[m]未満である場合にはローラ搬送速度を3[%]減とし、テープ残量が100[m]以上150[m]未満である場合にはローラ搬送速度を3[%]減とし、テープ残量が150[m]以上200[m]未満である場合にはローラ搬送速度を4[%]減とし、テープ残量が200[m]以上250[m]未満である場合にはローラ搬送速度を4[%]減とし、テープ残量が250[m]以上310[m]以下である場合にはローラ搬送速度を5[%]減とする。
なお、被印字テープ150の種類が樹脂材料(図中では「ET」と略示)からなるテープである場合や布材料(図中では「FA」と略示)からなるテープである場合も、上記同様、巻芯外径及びテープ幅ごとに、上記テープ残量の量に応じて、補正量(単位[%])が定められている(詳細な説明は省略)。なお、補正量の値は、各テープ種類ごとに若干違った値となっている。
本実施形態では、ローラ搬送速度が(上記第1速度よりも遅い)補正後の上記第2速度となるように、搬送ローラ12の駆動を制御することにより、上記テープ搬送速度の上昇を防止することができる。
<制御フロー>
上記手法を実現するためにCPU212により実行される処理内容を、図10のフローにより説明する。図10において、例えばユーザによりテープ印刷装置1の電源がオンにされることによって、このフローが開始される(「START」位置)。
まず、ステップS202において、CPU212は、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの上記印刷物の作成開始操作に対応した、上記印字済みテープ150″の作成開始指示信号が入力されたか否かを判定する。ユーザの印刷物の作成開始の意図に対応した上記作成開始指示信号が入力されない場合はステップS202の判定が満たされず(S202:NO)ループ待機する。上記作成開始指示信号が入力されたらステップS202の判定が満たされ(S202:YES)、ステップS203に移る。
ステップS203では、CPU212は、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの操作に対応した、作成する上記印字済みテープ150″の搬送方向に沿った全長を表す全長データが入力されたか否かを判定する。ユーザの意図するテープ全長に対応した上記全長データが入力されない場合はステップS203の判定が満たされず(S203:NO)、上記ステップS202に戻って同様の手順を繰り返す。上記全長データが入力されたらステップS203の判定が満たされ(S203:YES)、ステップS204に移る。
ステップS204では、CPU212は、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの操作に基づく、上記被印字テープ150に繰り返し印字形成する上記1つの単位印字データ(上記図8(a)も参照)が入力されたか否かを判定する。単位印字データが入力されない場合はステップS204の判定が満たされず(S204:NO)上記ステップS202に戻って同様の手順を繰り返す。上記単位印字データが入力されたらステップS204の判定が満たされ(S204:YES)、ステップS205に移る。
そして、ステップS205において、CPU212は、予め固定的に定められた所定の印刷速度が実現するように、公知の手法により(印字ヘッド11の駆動制御と同期する形で)搬送用モータM1による上記ローラ搬送速度を設定する。このときのローラ搬送速度は、搬送ローラ12と被印字テープ150との間に滑りがない場合に対応した上記第1速度(理論値)となるように、設定される。なお、詳細な説明を省略するが、この設定されたローラ搬送速度に対応して、上記粘着巻取用モータM2の駆動力による巻芯41の駆動速度、及び、剥離紙巻取用モータM3の駆動力による巻芯29の駆動速度、も併せて設定される。その後、ステップS100に移る。
ステップS100では、CPU212は、上記ステップS205で設定された上記第1速度を、前述した図9のテーブル中の該当する補正量を用いて補正することにより、対応する上記第2速度を決定する(詳細は後述の図11参照)。その後、ステップS210に移る。
ステップS210において、CPU212は、モータ駆動回路218,219,220に制御信号を出力し、上記ステップS205及びステップS210での設定・決定に沿った駆動速度となるように、搬送用モータM1、粘着巻取用(図中、単に「AD」と略示)モータM2、及び剥離紙巻取用モータM3の駆動を開始する。特に、搬送用モータM1は、搬送ローラ12によるローラ搬送速度が(上記第1速度を補正した後の)上記第2速度となるように、駆動制御される。この結果、上記被印字テープ150、印字済みテープ150′、及び印字済みテープ150″の搬送(以下適宜、単に「テープ搬送」と称する)、及び上記印字済みテープ150″の巻き取りが開始される。
そして、ステップS215で、CPU212は、上記ステップS204で取得された単位印字データに基づき、公知の手法により、対応する印字開始位置に印字ヘッド11が対向する状態まで上記テープ搬送が到達したか否かを判定する。印字開始位置に到達していない場合、判定は満たされず(S215:NO)、この判定が満たされるまでループ待機する。印字開始位置に到達した場合、判定は満たされ(S215:YES)、ステップS220に移る。
ステップS220では、CPU212は、印字ヘッド制御回路221に制御信号を出力し、印字ヘッド11の上記発熱素子に通電を行って、被印字テープ150に、上記単位印字データに対応した単位印字イメージの繰り返し印字形成を開始する。その後、ステップS238に移る。
ステップS238では、CPU212は、上記ステップS204で取得された単位印字データに基づき、公知の手法により、印字終了位置に印字ヘッド11が対向する状態まで上記テープ搬送が到達したか否かを判定する。印字終了位置に到達していない場合、判定は満たされず(S238:NO)、ステップS220に戻り同様の手順を繰り返す。これにより、上述の繰り返し印字形成が続行される。一方、印字終了位置に到達した場合、判定は満たされ(S238:YES)、ステップS240に移る。
ステップS240では、CPU212は、印字ヘッド制御回路221に制御信号を出力し、印字ヘッド11の発熱素子への通電を停止して、上記被印字テープ150に対する印字部155の形成を停止する。このとき、テープ搬送は継続して行われている。これにより、それ以降の印字済みテープ150′には、印字部155が存在しない空白状態となる。その後、ステップS255に移る。
ステップS255では、CPU212は、上記ステップS203で取得された全長データに対応した上記カッター機構30による切断位置(巻き取り機構40によって印字済みテープロールR2として巻回される印字済みテープ150″の、搬送方向に沿った全長が操作者の意図する長さとなるような切断位置)まで、上記テープ搬送が達したか否かを判定する。切断位置に到達していない場合、判定は満たされず(S255:NO)、ループ待機する。切断位置に到達した場合、判定は満たされ(S255:YES)、ステップS260に移る。
ステップS260では、CPU212は、モータ駆動回路218,219,220に制御信号を出力し、搬送用モータM1、粘着巻取用モータM2、及び剥離紙巻取用モータM3の駆動を停止する。これにより、上記被印字テープ150、印字済みテープ150′、及び印字済みテープ150″の搬送が停止する。
その後、ステップS265で、CPU212は、モータ駆動回路222に制御信号を出力して上記カッターモータMCを駆動し、上記カッター機構30の作動により印字済みテープ150″の切断を行う。
そして、ステップS270に移り、CPU212は、モータ駆動回路219に制御信号を出力し、粘着巻取用モータM2の駆動を開始して、印字済みテープ150″を巻き取り機構40の巻芯41のまわりに巻き取る。
その後、ステップS275で、CPU212は、上記ステップS265でのカッター機構30の切断動作から所定時間だけ経過したか否かを判定する。所定時間だけ経過していない場合、判定は満たされず(S275:NO)、ループ待機する。この所定時間は、印字済みテープ150″を取り機構40の巻芯41へと巻き取れるだけの時間でよい。所定時間が経過したらこの判定は満たされ(S275:YES)、ステップS280へ移る。
ステップS280では、CPU212は、モータ駆動回路219に制御信号を出力し、粘着巻取用モータM2の駆動を停止する。これにより上記切断により生じた印字済みテープ150″を確実に印字済みテープロールR2で巻き取ることができる。そして、このフローを終了する。
<搬送速度補正処理>
上記ステップS100の搬送速度補正処理の詳細手順を図11に示す。
図11において、まず、ステップS100で、CPU212は、上記巻芯41の外径を取得する。このとき、巻芯41の外径寸法情報は、適宜のセンサによって、装着された巻き取り機構40の種類を検出することによって取得するようにしてもよいし、操作者による上記操作部216又はPC217での操作入力結果に基づき取得するようにしてもよい。
その後、ステップS102で、CPU212は、被印字テープ150のテープ種別(種類)を取得する。このとき、被印字テープ150の種類情報は、適宜のセンサによって、装着されたテープカートリッジTKの種類を検出することによって取得するようにしてもよいし、操作者による上記操作部216又はPC217での操作入力結果に基づき取得するようにしてもよい。
そして、ステップS103で、CPU212は、被印字テープ150のテープ幅を取得する。このとき、被印字テープ150の幅情報は、上記同様、適宜のセンサによって、装着されたテープカートリッジTKの種類を検出することによって取得するようにしてもよいし、操作者による上記操作部216又はPC217での操作入力結果に基づき取得するようにしてもよい。
その後、ステップS105で、CPU212は、上記被印字テープロールR1における被印字テープ150の残量を取得する。このとき、被印字テープ150の残量情報は、適宜の公知の手法で取得すれば足り、例えば、適宜のセンサで被印字テープロールR1の外径寸法を検出しその検出結果に基づき算出して取得してもよいし、印字形成動作開始後の回転速度を光学式エンコーダ等の適宜の回転検出手段によって検出しその検出結果に基づき算出して取得する等でもよい。あるいはテープカートリッジTK側に設けられた記憶媒体に記憶されたテープ残量情報を有線又は無線通信を介して取得するようにしてもよい。さらには、操作者による上記操作部216又はPC217での操作入力結果に基づき取得するようにしてもよい。
その後、ステップS120で、CPU212は、上記環境温度センサSRの検出した、テープ印刷装置1の周辺の環境温度を取得する。その後、ステップS130に移る。
ステップS130では、CPU212は、前述の図12に示したテーブルを参照し、上記ステップS101で取得された巻芯外径と、上記ステップS102で取得されたテープ種類と、上記ステップS103で取得されたテープ幅と、上記ステップS105で取得されたテープ残量と、上記ステップS120で取得された環境温度と、に対応する、上記補正量を決定する。そして、CPU201は、決定したその補正量を用いて、上記ステップS205で決定された上記第1速度を補正し、上記第2速度とする。その後、このルーチンを終了し、上記図10のステップS210へと戻る。
なお、上記ステップS100を実行するCPU201が、各請求項記載の搬送補正手段として機能し、ステップS205、ステップS210、及びステップS260を実行するCPU212が、各請求項記載の搬送制御手段として機能する。
<本実施形態による効果>
以上説明したように、本実施形態によれば、前述のように、被印字テープ150のテープ幅・テープ種類・テープ残量、及び巻芯41の外径に応じて、上記第1速度を第2速度(上記の例では第1速度よりも遅い速度)に補正する。そして、搬送ローラ12によるローラ搬送速度が上記第2速度となるように、搬送ローラ12の駆動を制御する。これにより、そのままでは上述のように進み方向への滑り(スリップ)が生じうる場合であっても、テープ搬送速度の上昇を防止することができる。この結果、テープ搬送速度の上昇により生じうる前述の間延び態様の印字形成(図8(b)参照)を防止し、正しい態様の印字形成を実行することができる。
また、本実施形態においては、特に、図9に一例を示したような補正量テーブルを参照して上記第1速度を補正し、上記第2速度とする。すなわち、予め算出した種々の場合の補正量をテーブルとして記憶しておいて用いることにより、複雑な処理を行うことなく簡素な処理で迅速かつ信頼性の高い補正を行うことができる。また、例えば将来的に被印字テープ150の種類等が増え、補正量算出のためのパラメータ(上記の例ではテープ幅、テープ種類、テープ残量、巻芯51の外径等)が新たに加わったり値の範囲が拡張される場合であっても、テーブルのデータを補充又は更新するだけで容易に対応することができる。
また、本実施形態では特に、環境温度にも対応して上記第1速度を補正し上記第2速度とする。これには以下のような意義がある。すなわち、例えば環境温度が比較的高い場合には、動作時の機械的負荷が軽くなることから、上記同様、テープ進み方向への滑りが生じやすい傾向となる。本実施形態においては、このことに鑑みて、環境温度をも加味して上記第1速度を第2速度に補正する。これにより、上記テープ搬送速度の上昇をさらに確実に防止することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
(1)補正量の設定態様をシンプル化する場合
上記実施形態においては、被印字テープ150のテープ幅・テープ種類・テープ残量、及び巻芯41の外径のすべての各値に対応させた補正量により補正を行ったが、これに限られない。すなわち、補正量を、被印字テープ150のテープ幅・テープ種類・テープ残量、及び巻芯41の外径のうち、少なくとも1つに対応させて設定するようにしてもよい。
例えば図12には、被印字テープ150のテープ幅と巻芯41の外径との組み合わせにそれぞれ応じた上記補正量を表す補正量テーブルの例を示す。すなわち、図9に示す例では、上記巻芯41の外径が75[mm]の場合には、被印字テープ150のテープ幅が15[mm]のときにはローラ搬送速度を特に補正せず(0[%]補正)とし、テープ幅が38[mm]のときにもローラ搬送速度を特に補正せず(0[%]補正)とし、テープ幅が50[mm]のときにはローラ搬送速度を1[%]減とする。また、上記巻芯41の外径が30[mm]の場合には、被印字テープ150のテープ幅が15[mm]のとき、テープ幅が38[mm]のとき、テープ幅が50[mm]のとき、のいずれもローラ搬送速度を1[%]減とする。
さらには、図13の補正量テーブルに示すように、上記巻芯41の外径が75[mm]及び30[mm]の両方の場合において、被印字テープ150のテープ幅が15[mm]、38[mm]、50[mm]のいずれの場合であっても、ローラ搬送速度をすべて一律に1[%]減としている。
上記のような変形例においても、少なくとも上記のようなローラ搬送速度の補正を一切行わない場合に比べれば、上記同様、上記テープ搬送速度の上昇を防止することができる。
(2)テーブルを用いずに補正量の算出を行う場合
すなわち、上記実施形態や変形例(1)のように、補正量テーブルを参照して補正量を取得するのではなく、予め定められた計算式パラメータ(後述)を用いた演算によって、ローラ搬送速度の補正量を算出してもよい。そのような変形例の一例を図14に示す。
図14において、この例では、上記「被印字テープ150のテープ幅」「被印字テープ150のテープ残量」「被印字テープ150のテープ種類」「巻芯41の外径」それぞれについて、所定の計算式パラメータの値が数量的に対応づけられている。
すなわち、被印字テープ150のテープ幅が15[mm]の場合には、補正量に係わる計算式パラメータ(以下単に「パラメータ」という)△6[%]が対応づけられ、被印字テープ150のテープ幅が38[mm]の場合には、パラメータ△3[%]が対応づけられ、被印字テープ150のテープ幅が50[mm]の場合には、パラメータ△2[%]が対応づけられている。また、テープ残量に関しては、「現在のテープ残量/初期(印字開始時)のテープ残量」の値が、パラメータとして対応づけられている。
また、被印字テープ150のテープ種類が紙材料(図中では「OPP」と略示)のテープの場合には、パラメータ0[%]が対応づけられ、被印字テープ150のテープ種類が樹脂材料のテープ(図中では「PET」と略示)の場合には、パラメータ0[%]が対応づけられ、被印字テープ150のテープ幅が布材料(図中では「FAB」と略示)のテープの場合には、パラメータ△2[%]が対応づけられている。
さらに、巻芯41の外径が75[mm」の場合には、パラメータ0[%]が対応づけられ、巻芯41の外径が30[mm」の場合には、パラメータ△2[%]が対応づけられている。
そして、搬送ローラ12のローラ搬送速度の補正量を求める際には、「テープ幅」のパラメータの値に「テープ残量」のパラメータ値を乗算し、さらに、「テープ種類」のパラメータ値と「巻芯41の外径」のパラメータ値を加算することによって、算出を行う。図示の例では、被印字テープ150のテープ幅が15[mm](対応するパラメータの値は△6[%])、被印字テープ150のテープ残量が200[m](対応するパラメータの値は200/310)、被印字テープ150のテープ種類が布材料のテープ(対応するパラメータの値は△2[%])、巻芯41の外径が30[mm](対応するパラメータの値は△2[%])、となっており、この結果、最終的に求められる上記補正量は、6×(200/310)+2+2=8となり、ローラ搬送速度が8[%]減とされることとなる。
このような変形例の手法においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
(3)スルーアップ・スルーダウン制御への拡張
上述したように、搬送用モータM1にパルスモータが用いられる場合、印字ヘッド11に備えられる複数の発熱素子の通電とパルスモータの駆動とを連携して制御することにより、いわゆる脱調を回避するためのスルーアップ制御及びスルーダウン制御が行われる場合がある。すなわち、パルスモータが停止状態から加速して一定速度となるまでの間(スルーアップ時)、及び、パルスモータが上記一定速度から減速して停止状態となるまでの間(スルーダウン時)、上記パルスモータが回転駆動する際の当該パルスモータへのパルス信号の出力数と、ライン印刷データ(印刷データとしての上記ドットパターンデータを1つの印刷ライン単位に分割したもの)の印刷数との比率(=パルス・ドット比率)が、一定比率となるように、上記連携制御が行われる。
しかしながら、一般に、上記スルーアップ制御及びスルーダウン制御は、ローラ搬送速度が停止状態から上記第1速度(搬送ローラ12と被印字テープ150との間に滑りがない場合の理論値)になるまで、及び、上記第1速度から停止状態に戻るまで、を想定しつつ、上記脱調が起こらないような上記連携制御が実行される。したがって、上記実施形態や変形例(1)(2)のように上記第1速度から上記第2速度へのローラ搬送速度の補正を行った場合、図15(a)に比較例として示すように、例えばスルーアップ時には、停止状態から加速して一定の回転速度(上記第1速度に対応)になってから、その定速状態の途中で、さらに上記第2速度相当の一定の回転速度へと切り替わることとなる(スルーダウン時も同様)。その結果、その切り替わり部分で印字ムラが起きやすいという懸念が生じる。
そこで、本変形例では、図15(b)に示すように、CPU201の制御により、スルーアップ時において、パルスモータの速度を、停止状態から上記第2速度に対応した回転速度へと滑らかに加速するとともに、スルーダウン時も同様に上記第2速度に対応した回転速度から停止状態へと滑らかに減速する(連携制御手段としての機能)。これにより、パルスモータの脱調を防止しつつ、図15(a)に示すような速度段差をなくし、印字ムラの発生や印字長に誤差が生じるのを抑制することができる。
(4)テープ遅れ方向の滑りが発生する場合
なお、以上においては、搬送ローラ12と被印字テープ150との間にテープ進み方向の滑りが発生する場合を例にとって説明したが、これに限られず、逆に、搬送ローラ12と被印字テープ150との間にテープ進み方向の滑りが発生しない場合や、テープ遅れ方向の滑りが発生する場合もあり得る。
例えば、被印字テープ150のテープ幅が比較的広い場合には、駆動される巻芯41による巻き取り力が印字済みテープ150″の広い範囲に分散することから、テープ進み方向への滑りが生じにくい。また例えば被印字テープ150の種類が樹脂などの摩擦係数が比較的大きいものである場合には、接触する搬送ローラ12との間におけるテープ進み方向への滑りが生じにくい。この場合は印刷速度とテープ搬送速度とが比較的一致しており、良好な印字となる。
さらに被印字テープロールR1におけるテープ残量が比較的少ない場合には、ロールの外径側から被印字テープ150を引き出すために比較的大きな力が必要となることから、逆に、搬送ローラ12との間においてテープ遅れ方向への滑りが生じやすい。また、上記巻芯41の外径が比較的大きい場合には、上記巻き取りが行われるときに印字済みテープ150″に与える張力が小さくなることから、上記同様、搬送ローラ12との間においてテープ遅れ方向への滑りが生じやすい。また、環境温度が比較的低い場合には、動作時の機械的負荷が重くなることから、上記同様、テープ遅れ方向への滑りが生じやすい傾向となる。
上記のように上記遅れ方向への滑りが生じる場合、本来前述のように同期しているはずの印刷速度とテープ搬送速度とにおいて、テープ搬送速度のほうが若干遅くなる。この結果、本来の印字形成態様に比べ、搬送方向に寸詰まりとなった態様で印字が形成される(いわゆる印字長が短くなる)。
本変形例では、上記同様の手法で、搬送ローラ12のローラ搬送速度を、上記第1速度よりも速い上記第2速度に補正する。これにより、そのままでは上述の遅れ方向への滑り(スリップ)が生じうる場合であっても、上記テープ搬送速度の低下を防止することができる。この結果、上記寸詰まり態様の印字形成を防止し、正しい態様の印字形成を実行することができる。
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
但し、例えばしきい値や基準値等、所定の判定基準となる値あるいは区切りとなる値の記載がある場合は、それらに対しての「同一」「等しい」「異なる」等は、上記とは異なり、厳密な意味である。
なお、以上において、図7に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
また、図10、図11等に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用してもよい。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。